易溶解性三酸化モリブデンの製造方法および易溶解性三酸化モリブデン
【課題】多成分混合溶液などの溶液への溶解性が高い三酸化モリブデンを製造できる易溶解性三酸化モリブデンの製造方法および易溶解性三酸化モリブデンを提供する。
【解決手段】モリブデン酸塩に対してアンモニア溶液を付着させるアンモニア供給工程と、アンモニア供給工程においてアンモニア溶液が噴霧されたモリブデン酸塩を焼成する焼成工程と、を順に行う。すると、製造される三酸化モリブデンは多孔質構造体となるので、多成分混合溶液などの溶液に溶解しやすくなる。そして、アンモニア供給工程において、モリブデン酸塩に対してアンモニア溶液を噴霧してモリブデン酸塩に対してアンモニア溶液を付着させると、適切な量のアンモニア溶液をモリブデン酸塩に付着させることができるので、製造される三酸化モリブデン粒子の構造を、適切な多孔質構造とすることができる。
【解決手段】モリブデン酸塩に対してアンモニア溶液を付着させるアンモニア供給工程と、アンモニア供給工程においてアンモニア溶液が噴霧されたモリブデン酸塩を焼成する焼成工程と、を順に行う。すると、製造される三酸化モリブデンは多孔質構造体となるので、多成分混合溶液などの溶液に溶解しやすくなる。そして、アンモニア供給工程において、モリブデン酸塩に対してアンモニア溶液を噴霧してモリブデン酸塩に対してアンモニア溶液を付着させると、適切な量のアンモニア溶液をモリブデン酸塩に付着させることができるので、製造される三酸化モリブデン粒子の構造を、適切な多孔質構造とすることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、易溶解性三酸化モリブデンの製造方法および易溶解性三酸化モリブデンに関する。さらに詳しくは、多成分混合液などの液体への溶解性の高い易溶解性三酸化モリブデンの製造方法および易溶解性三酸化モリブデンに関する。
【背景技術】
【0002】
石油精製所における脱硫塔では、脱硫触媒によって各種石油留分の水素化脱硫が行われるが、かかる脱硫触媒は、水素化脱硫作業を行うにつれその触媒活性が低下するので、触媒活性を失った脱硫触媒(廃触媒)は新しい脱硫触媒と交換される。
【0003】
ここで、脱硫触媒はモリブデンを含有しているので、廃触媒からモリブデンを回収して再利用することが行われている。
廃触媒からバナジウムやモリブデンを回収する方法として、有価金属を水に溶解する可溶性塩としてから回収することが行われている(例えば、特許文献1)。
具体的には、廃触媒と、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の塩(以下、両者を含めてソーダ灰という)とを、酸素が存在する雰囲気においてロータリーキルンによって焙焼する。すると、廃触媒中のモリブデンは、酸化しかつソーダ灰と反応(ソーダ化反応)して可溶性塩(水溶性化合物)となる。この可溶性塩となった有価金属を含む焙焼物を水浸出すると、モリブデンおよびバナジウムを含有する水溶液が得られるので、この水溶液について溶媒抽出を行えば、バナジウム、モリブデンをそれぞれ分離できる。そして、モリブデンを含有する水相について、塩析・酸沈法などを適用すればモリブデン酸アンモニウムなどのモリブデン酸塩の沈殿を生じさせることができ、このモリブデン酸塩の沈殿を焼成することによって、三酸化モリブデン(MoO3)の製品(固形物)を得ることができる。
【0004】
ここで、石油精製用の水素化脱硫触媒は、三酸化モリブデンを原料として製造される。具体的には、酸を添加してpHを調製した溶液に、モリブデン化合物を、ニッケル化合物やコバルト化合物などとともに溶解して含浸液(多成分混合溶解液)を形成する(例えば、特許文献2,3)。そして、耐火性酸化物を多成分混合溶解液に含浸させた後焼成して担持処理を行えば、モリブデンを含有する水素化脱硫触媒を製造することができる。
水素化脱硫触媒の性質は、担持処理に使用する多成分混合溶解液における各化合物の混合割合などの影響を受けるので、この混合割合を適切に維持するためにも、三酸化モリブデンには高い溶解性が要求される。
【0005】
一般的に、三酸化モリブデンなどの粒子について溶解性を高める方法として、粒子の比表面積を大きくする、粒子を多孔性とするなどの方法が考えられるが、現在のところ、溶解性の高い三酸化モリブデン粒子を効率よく形成する方法は開発されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−262181号公報
【特許文献2】特開平6−277520号公報
【特許文献3】特開平11−319567号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記事情に鑑み、多成分混合溶液などの溶液への溶解性が高い三酸化モリブデンを製造できる易溶解性三酸化モリブデンの製造方法を提供することを目的とする。
また、本発明は、前記方法によって製造された多成分混合溶液などの溶液への溶解性が高い三酸化モリブデンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(製造方法)
第1発明の易溶解性三酸化モリブデンの製造方法は、モリブデン酸塩に対してアンモニア溶液を供給し、アンモニア添加モリブデン酸塩を形成するアンモニア供給工程と、該アンモニア供給工程において得られた前記アンモニア添加モリブデン酸塩を焼成する焼成工程と、を順に行うことを特徴とする。
第2発明の易溶解性三酸化モリブデンの製造方法は、第1発明において、前記アンモニア供給工程において、モリブデン酸塩に対してアンモニア溶液を噴霧することを特徴とする。
第3発明の易溶解性三酸化モリブデンの製造方法は、第1または第2発明において、前記アンモニア供給工程において、前記アンモニア溶液を、モリブデン酸塩中のモリブデンに対するアンモニアのモル比が0.5以上となるように供給することを特徴とする。
第4発明の易溶解性三酸化モリブデンの製造方法は、第1、第2または第3発明において、炉内からアンモニアガスを除去しながら、前記モリブデン酸塩を焼成することを特徴とする。
(易溶解性三酸化モリブデン)
第5発明の易溶解性三酸化モリブデンは、モリブデン酸塩に対してアンモニア溶液を供給し、アンモニア添加モリブデン酸塩を形成するアンモニア供給工程と、該アンモニア供給工程において得られた前記アンモニア添加モリブデン酸塩を焼成する焼成工程と、を順に行って製造されたものであることを特徴とする。
第6発明の易溶解性三酸化モリブデンは、第5発明において、前記アンモニア供給工程において、モリブデン酸塩に対してアンモニア溶液を噴霧することを特徴とする。
第7発明の易溶解性三酸化モリブデンは、第5または第6発明において、前記アンモニア供給工程において、前記アンモニア溶液を、モリブデン酸塩中のモリブデンに対するアンモニアのモル比が0.5以上となるように供給することを特徴とする。
第8発明の易溶解性三酸化モリブデンは、第5、第6または第7発明において、炉内からアンモニアガスを除去しながら、前記モリブデン酸塩を焼成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
(製造方法)
第1発明によれば、アンモニア供給工程においてモリブデン酸塩にアンモニアを供給してアンモニア添加モリブデン酸塩を形成し、このアンモニア添加モリブデン酸塩を焼成する。すると、アンモニア添加モリブデン酸塩は多量にアンモニアを含有するので、製造された三酸化モリブデンは多孔質構造体となるから、多成分混合溶液などの溶液に溶解しやすくなる。
第2発明によれば、アンモニア溶液を噴霧することによってモリブデン酸塩にアンモニアを供給するので、適切な量のアンモニア溶液をモリブデン酸塩に添加することができる。したがって、製造される三酸化モリブデン粒子の構造を、適切な多孔質構造とすることができる。
第3発明によれば、各モリブデン酸塩粒子に対して十分な量のアンモニアが供給されるので、高アンモニア含有率のモリブデン酸塩を得ることができる。
第4発明によれば、アンモニア添加モリブデン酸塩を焼成する際に発生するガスなどによって、三酸化モリブデンが還元されて二酸化モリブデンとなることを防ぐことができる。すると、焼成された三酸化モリブデン中に、二酸化モリブデンとなっている粒子がほぼ無くなるので、製造された三酸化モリブデンを多成分混合溶液などの溶液に溶解しても、残渣をほとんど無くすことができる。
(易溶解性三酸化モリブデン)
第5発明によれば、アンモニア供給工程においてモリブデン酸塩にアンモニアを供給してアンモニア添加モリブデン酸塩を形成し、このアンモニア添加モリブデン酸塩を焼成する。すると、アンモニア添加モリブデン酸塩は多量にアンモニアを含有するので、製造された三酸化モリブデンは多孔質構造体となるから、多成分混合溶液などの溶液に溶解しやすくなる。
第6発明によれば、アンモニア溶液を噴霧することによってモリブデン酸塩にアンモニアを供給するので、適切な量のアンモニア溶液をモリブデン酸塩に添加することができる。したがって、製造される三酸化モリブデン粒子の構造を、適切な多孔質構造とすることができる。
第7発明によれば、各モリブデン酸塩粒子に対して十分な量のアンモニアが供給されるので、高アンモニア含有率のモリブデン酸塩を得ることができる。
第8発明によれば、アンモニア添加モリブデン酸塩を焼成する際に発生するガスなどによって、三酸化モリブデンが還元されて二酸化モリブデンとなることを防ぐことができる。三酸化モリブデン中に、二酸化モリブデンとなっている粒子がほぼ無くなるので、製造された三酸化モリブデンを多成分混合溶液などの溶液に溶解しても、残渣をほとんど無くすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の易溶解性三酸化モリブデンの製造方法の概略フローチャートである。
【図2】本発明の方法によって形成されたアンモニア添加モリブデン酸塩のX線回折結果である。
【図3】本発明の方法によって形成されたアンモニア添加モリブデン酸塩のSEM画像である。
【図4】酸沈法によって得られたモリブデン酸塩のX線回折結果である。
【図5】酸沈法によって得られたモリブデン酸塩のSEM画像である。
【図6】本発明の方法によって形成されたアンモニア添加モリブデン酸塩を焼成して得られた焼成物のX線回折結果である。
【図7】本発明の方法によって形成されたアンモニア添加モリブデン酸塩を焼成して得られた焼成物のSEM画像である。
【図8】酸沈法によって得られたモリブデン酸塩を焼成して得られた焼成物のSEM画像である。
【図9】(A)は本発明の方法によって形成されたアンモニア添加モリブデン酸塩を焼成して得られた焼成物における一次粒子の頻度分布を示した図であり、(B)は酸沈法によって得られたモリブデン酸塩を焼成して得られた焼成物における一次粒子の頻度分布を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
つぎに、本発明の実施形態を図面に基づき説明する。
本発明の易溶解性三酸化モリブデンの製造方法は、モリブデン酸塩を焼成して三酸化モリブデンを製造する方法であり、多成分混合溶液などに対する溶解性が高い三酸化モリブデンを製造できるようにしたことに特徴を有している。
【0012】
多成分混合溶液とは、複数の塩を酸や水などに溶解して形成された溶液を意味している。例えば、水、アルコール、エーテル等を溶媒として、遷移元素を含有する塩(例えば、硝酸塩、硫酸塩、炭酸塩、無機複合酸塩など)や、クエン酸、蟻酸、酢酸、リン酸、りんご酸などの有機酸化合物を、適宜選択して混合して溶解した溶液であるが、使用する塩、酸、溶媒はとくに限定されない。また、塩、酸、溶媒の混合割合もとくに限定されず、多成分混合溶液を使用して触媒を製造する場合であれば、製造された触媒において、各成分が所定の割合となるように調製されていればよい。
【0013】
なお、本発明の易溶解性三酸化モリブデンの製造方法(以下、単に本発明の方法という)において、原料となるモリブデン酸塩は、アンモニアを全く含有しないものや、アンモニア含有率の低いものなどであるが、とくに限定されない。また、市販のモリブデン酸塩を使用してもよいし、アンモニアを含有するモリブデン含有液(または、アンモニアを含有しないモリブデン含有液)から製造されたモリブデン酸塩を使用してもよい。
【0014】
アンモニアを含有するモリブデン含有液から製造されたモリブデン酸塩とは、石油精製に用いる水素化脱硫触媒から製造されたものを例示することができる。
例えば、石油精製に用いる水素化脱硫触媒からモリブデンをソーダ化して水浸出してモリブデン酸ナトリウムを含む溶液を形成する。この溶液について溶媒抽出などの方法を行ってモリブデン酸アンモニウムとした溶液(モリブデン酸アンモニウム溶液)を形成し、このモリブデン酸アンモニウム溶液に対して酸沈法などを適用してモリブデン酸塩を回収する。すると、このモリブデン酸塩を、本発明の方法で製造する三酸化モリブデンの原料として使用することができる。
【0015】
とくに、本発明の方法によって得られる三酸化モリブデンを純度の高いものとする上では、モリブデン酸アンモニウム溶液からモリブデン酸塩を回収する前に、モリブデン酸アンモニウム溶液に対して、モリブデン以外の不純物(例えば、リンやバナジウムなど)を除去する除去工程を行うことが好ましい。具体的には、モリブデン酸アンモニウム溶液に含まれる除去すべき不純物がリンやバナジウムの場合、鉄塩、マグネシウム塩を供給し、pHおよび温度等を適切な条件する。すると、不純物であるリンおよびバナジウムが鉄塩またはマグネシウム塩を形成して沈殿し除去され、不純物の少ないモリブデン酸アンモニウム溶液を得ることができるから、純度の高いモリブデン酸塩を得ることができる。そして、純度の高いモリブデン酸塩を焼成すれば、純度の高い三酸化モリブデンを得ることができる。
【0016】
(製造工程の説明)
つぎに、本発明の易溶解性三酸化モリブデンの製造方法を、図1に基づいて説明する。
まず、モリブデン酸塩の粒子に対してアンモニア溶液を供給し、アンモニア添加モリブデン酸塩を形成するアンモニア供給工程を行う。例えば、モリブデン酸塩粒子を混合容器内に入れてかき混ぜながら、モリブデン酸塩粒子に対してアンモニア溶液を供給する。すると、供給されたアンモニア溶液をモリブデン酸塩粒子の表面にほぼ均一に付着させることができる。その後、モリブデン酸塩を乾燥すれば、モリブデン酸塩粒子を、AHMなどの高アンモニア含有率のモリブデン酸塩(アンモニア添加モリブデン酸塩)の粒子とすることができる。
【0017】
ついで、アンモニア供給工程で得られたアンモニア添加モリブデン酸塩の粒子を焼成炉において焼成すると、モリブデン酸塩の粒子が分解され、固体の三酸化モリブデンの粒子が製造される。アンモニア添加モリブデン酸塩の粒子はアンモニア含有率が高いので、焼成によって製造された三酸化モリブデンの粒子は、アンモニアが添加されていないモリブデン酸塩の粒子をそのまま焼成する場合に比べて、より空隙率の高い多孔質構造体となる。
したがって、本発明の製造方法によって得られた三酸化モリブデンは、多成分混合溶液などの溶液に溶解しやすいものとなる。
【0018】
なお、アンモニア供給工程において、アンモニアによるモリブデン酸塩の溶解割合が高い場合には、アンモニア添加モリブデン酸塩は、半溶融したスラリー状となる場合がある。この場合には、そのまま焼成することが困難であるから、得られたスラリー状のアンモニア添加モリブデン酸塩を、例えば、ドラム乾燥器、回転乾燥器、トンネル型乾燥機、噴霧乾燥器などによって乾燥して固化させる。この固化したアンモニア添加モリブデン酸塩を解砕して粒子状とすれば、焼成炉において焼成することができる。
もちろん、アンモニア供給工程において得られるアンモニア添加モリブデン酸塩が、焼成可能な程度に粒子状の形態を維持している場合には、乾燥後解砕することは必ずしも必要ではない。しかし、この場合でも、アンモニア添加モリブデン酸塩の粒子を解砕すれば、粒子の粒径を適切な大きさに調整することができる。
【0019】
つぎに、各工程の条件について、詳細に説明する。
【0020】
(アンモニア供給工程)
上述したように、アンモニア供給工程では、原料となるモリブデン酸塩に対して、アンモニア溶液を供給して、モリブデン酸塩の表面にアンモニア溶液を付着させる。モリブデン酸塩の表面にアンモニア溶液が付着すると、アンモニア添加モリブデン酸塩を、例えば、AHMなどの高アンモニア含有率のモリブデン酸アンモニウムとすることができる。
【0021】
モリブデン酸塩の表面にアンモニア溶液を付着させることによってアンモニア添加モリブデン酸塩とできる理由は、以下のように推定される。
まず、モリブデン酸塩は、一次粒子が結合して二次粒子となった構造を有しているので、モリブデン酸塩粒子(二次粒子)は多孔質の構造を有している。つまり、モリブデン酸塩粒子には、その表面から内部までつながる空隙が多数存在する。
かかるモリブデン酸塩粒子の表面にアンモニア溶液を供給すると、アンモニア溶液は、粒子表面に付着するとともに、上述した空隙を通って粒子の内部に侵入し、粒子内部の一次粒子の表面にも付着する。一次粒子の表面に付着したアンモニア溶液は、一次粒子の表面を溶かして半溶解の状態とするので、一次粒子とアンモニアとが結合した状態となり、この一次粒子はアンモニア含有率が高くなる。すると、モリブデン酸塩粒子はアンモニア含有率が高い一次粒子を多数含む二次粒子となるので、モリブデン酸塩粒子(二次粒子)全体のアンモニア含有率も高くなるのである。
【0022】
(アンモニア溶液の供給方法)
アンモニア供給工程において、モリブデン酸塩に対してアンモニア溶液を供給する方法はとくに限定されない。
例えば、モリブデン酸塩をアンモニア溶液に浸漬してもよいし、モリブデン酸塩にアンモニア溶液のシャワーを浴びせてもよい。
【0023】
とくに、アンモニア溶液を噴霧しながら、モリブデン酸塩粒子に対してアンモニア溶液が均一付着するように、ミキサー(例えば、ナウターミキサー)などによってモリブデン酸塩粒子をかき混ぜることが好ましい。この場合、各モリブデン酸塩粒子に付着させるアンモニア溶液の量を適切な量に調整し易くなるので、モリブデン酸塩粒子中のモリブデンと、その粒子に供給されるアンモニアのモル比、言い換えれば、アンモニア添加モリブデン酸塩中のモリブデンとアンモニアのモル比を制御し易くなる。すると、アンモニア添加モリブデン酸塩粒子を焼成して製造される三酸化モリブデン粒子の構造を、適切な多孔質構造とすることができる。
【0024】
(アンモニア溶液)
モリブデン酸塩に対して供給するアンモニア溶液の量はとくに限定されないが、モリブデン酸塩中のモリブデンに対して、モリブデン(Mo)とアンモニア(NH3)のモル比(Mo/NH3)が0.5以上となる量を供給することが好ましい。かかる量を供給すれば、各モリブデン酸塩粒子に対して十分な量のアンモニアを供給できるので、高アンモニア含有率のモリブデン酸塩を得ることができる。
【0025】
(アンモニア溶液の濃度)
モリブデン酸塩に供給するアンモニア溶液におけるアンモニア濃度はとくに限定されない。
【0026】
例えば100gのモリブデン酸塩(H2MoO4)に、アンモニア濃度25%のアンモニア溶液を40mL噴霧すると、アンモニア添加モリブデン酸塩のアンモニア含有率を8.3重量%とすることができる。すると、焼成したときにおける粒子の減容率を18.4%とすることができるから、焼成された三酸化モリブデン粒子の比表面積を2m2/g以上とすることができる。
【0027】
なお、アンモニア溶液のアンモニア濃度は20%よりも低くなると、モリブデン酸塩の一部が完全にアンモニア溶液に溶解してしまう。すると、アンモニア溶液の濃度が薄まるので、アンモニア添加モリブデン酸塩がスラリー状となった後、回転式乾燥機などによって乾燥・固化させても、アンモニア添加モリブデン酸塩が固化するまでの時間が長くなる。すると、より大きな乾燥能力が必要となり乾燥機が大型化するし、乾燥固化に使用するエネルギ量も増加するので、アンモニア濃度は20%以上が好ましい。
【0028】
また、スラリー状となったモリブデン酸塩の乾燥には、スプレードライヤーを使用してもよい。この場合には、乾燥する過程において、モリブデン酸塩を粒子状とすることができ、しかも、その粒子の粒径をより小さくすることができる。
【0029】
(焼成温度)
焼成工程における焼成温度はとくに限定されないが、焼成温度が高くなると、製造される三酸化モリブデン粒子の結晶性が高くなり、溶解度が低下する。また、焼成温度が低くなると、モリブデン酸塩粒子が十分に分解されずモリブデン酸塩粒子に含まれるアンモニアが焼成された三酸化モリブデン粒子に残留してしまう。また、モリブデン酸塩粒子に付着したアンモニアも焼成された三酸化モリブデン粒子に残留してしまう可能性がある。かかるアンモニアの残留は、製品の純度を低下させる上、三酸化モリブデン粒子の溶解度を低下させる。
【0030】
したがって、モリブデン酸塩の再焼成は、モリブデン酸塩粒子が分解されモリブデン酸塩粒子に含まれるアンモニアが離脱する温度であって、焼成される粒子の結晶性が高くならない温度で行うことが好ましい。具体的には、焼成炉内の温度が400〜550度、好ましくは420〜480度で、3時間以上(好ましくは4時間程度)の期間、モリブデン酸塩を焼成することが好ましい。
【0031】
(焼成雰囲気)
また、モリブデン酸塩の再焼成は、焼成炉内の気体を排出しながら、言い換えれば、焼成炉内からアンモニアガスを除去しながら、モリブデン酸塩を焼成することが好ましい。
例えば、モリブデン酸塩粒子が分解するとアンモニアガスが発生するが、アンモニアガスが存在する状態でモリブデン酸塩粒子を焼成すると、焼成によって製造された三酸化モリブデン粒子が還元されて二酸化モリブデン粒子となる可能性がある。二酸化モリブデンは溶解性が低いので、二酸化モリブデン粒子が混入していると、三酸化モリブデン全体の溶解性が低くなる。
したがって、二酸化モリブデンが生成されることを防ぐために、焼成炉内からアンモニアガスを除去しながら、モリブデン酸塩を焼成することが好ましい。
【実施例1】
【0032】
実験では、本発明の方法によって得られるモリブデン酸塩(アンモニア添加モリブデン酸塩)が、原料となるモリブデン酸塩に比べてアンモニアの含有量が多いものとなっていることを確認した。
また、得られたアンモニア添加モリブデン酸塩を焼成して三酸化モリブデンを形成し、この三酸化モリブデンについて、溶解性を確認した。
【0033】
実験では、酸沈法によって得られたモリブデン酸塩を原料として、以下の方法でアンモニア添加モリブデン酸塩および三酸化モリブデンを形成した。
まず、トレイ上に載せたモリブデン酸塩にアンモニア溶液を噴霧しながらさじで掻き混ぜて(混練時間:20min)、スラリー状としたアンモニア添加モリブデン酸塩を形成した。
スラリー状となったアンモニア添加モリブデン酸塩をトレイ上で熱風乾燥(熱風温度60〜90℃)して固化したのち、スプーンで破砕することによって、アンモニア添加モリブデン酸塩粒子を形成した。そして、形成されたアンモニア添加モリブデン酸塩粒子を焼成して三酸化モリブデンを形成した。
【0034】
実験に使用した原料であるモリブデン酸塩、およびアンモニア溶液は、以下のとおりである。
モリブデン酸塩(試料量17g):Mo62.9重量%、NH32.3重量%
アンモニア溶液:添加量(7mL/17g−モリブデン酸塩)、アンモニア濃度25%
【0035】
また、焼成条件は、以下のとおりである。
焼成炉:マッフル炉(アドバンテック東洋社製:KM−800)
焼成温度:450℃
焼成時間:4時間
なお、焼成炉は炉内の気体を排気する条件で運転した。焼成炉の温度は、マッフル炉付設の熱電対によって測定した。
【0036】
(溶解度)
また、三酸化モリブデンの溶解性は、三酸化モリブデンを原料とする溶解液を形成して残渣率を測定した。残渣率測定に使用した溶解液は以下のとおりである。
溶解液:三酸化モリブデンと炭酸コバルトの混合溶液(有機酸添加)
溶解液温度:90℃
反応時間:60分
なお、溶解液の温度は、ガラス棒温度計によって測定した。
【0037】
なお、モリブデン酸塩、アンモニア添加モリブデン酸塩および三酸化モリブデンの同定は、X線回折(PANalytical社製:PertPRO)によって行った。
粒子の観察はSEM(日本電子製 JSM-6360LA)によって行った。
【0038】
実験結果を以下に示す。
【0039】
(アンモニア添加モリブデン酸塩の確認)
まず、本発明の方法により、20gのアンモニア添加モリブデン酸塩(Mo:54.7重量%、NH3:10.2重量%)を形成することができた。
このアンモニア添加モリブデン酸塩をX線回折によって確認したところ、モリブデン酸アンモニウム(AHM:((NH4)6Mo7O24・4H2O)となっていることが同定できた(図2)。つまり、本発明の方法を採用することによって、原料であるモリブデン酸塩(図4参照)をAHMとすることができたことが確認できた。
【0040】
図3に示すように、SEM写真でも、原料であるモリブデン酸塩では、100μmを超える粗粒が存在しているのに対し(図5参照)、本発明の方法で得られたAHMでは、100μmを超える粗粒がなくなり微粒化していることが確認できる。
【0041】
なお、回折X線強度は、原料であるモリブデン酸塩と比べて、アンモニア添加モリブデン酸塩の方が低くなっており、アンモニア添加モリブデン酸塩では、結晶性が低く、結晶が成長していないと考えられる。
【0042】
(焼成物の確認)
つぎに、本発明の方法によって形成されたアンモニア添加モリブデン酸塩を焼成して得られた焼成物をX線回折によって確認したところ、三酸化モリブデンとなっていることが確認できる(図6参照)。
【0043】
また、図7および図8に示すように、SEM写真から、原料であるモリブデン酸塩から焼成された三酸化モリブデン(比較例の三酸化モリブデン)では、焼成しても100μmを超える粗粒が残っているのに対し、アンモニア添加モリブデン酸塩から得られた三酸化モリブデン(実施例の三酸化モリブデン)では、焼成によって粒子は更に細かくなっていることが確認できる。
これは、アンモニア添加モリブデン酸塩では、アンモニアの含有量が多いので、アンモニアの分解・揮発により、焼成された粒子が更に細かくなったためであると考えられる。
また、アンモニア添加モリブデン酸塩では、原料であるモリブデン酸塩と比べて結晶性が低くなっていたため、アンモニアが分解・揮発した際における粒子の細径化が進み易かったと考えられる。
【0044】
実施例の三酸化モリブデンと比較例の三酸化モリブデンについて、一次粒子の粒径を、レーザ回折式粒度分布測定装置(島津株式会社製、SALD−3100)によって測定した。図9に示すように、実施例の三酸化モリブデンでは、ほとんどが5μm以下となっているのに対し、比較例の三酸化モリブデンではほとんどが5μm以上となっていることから、一次粒子の粒径の測定結果より実施例の三酸化モリブデンの方が溶解性が高くなることが推定される。
なお、比較例の三酸化モリブデンでは、測定の際に二次粒子が一次粒子に十分に分解しなかったため、粒径が大きくなったとも考えられる。しかし、二次粒子が一次粒子に十分に分解しにくい場合には溶解性が低くなると考えられる。すると、この結果は、本発明の方法によって、原料であるモリブデン酸塩から三酸化モリブデンを製造すれば、三酸化モリブデンの溶解性を高くできることを裏付けていると考えられる。つまり、本発明の方法によって原料であるモリブデン酸塩をアンモニア添加モリブデン酸塩とすることによって、このアンモニア添加モリブデン酸塩から製造される三酸化モリブデン粒子を一次粒子に分解し易い二次粒子することができるので、製造される三酸化モリブデン粒子の溶解性を高くできると考えられる。
【0045】
実施例の三酸化モリブデンと比較例の三酸化モリブデンの溶解性を確認したところ、アンモニア添加モリブデン酸塩の残渣率は、0.2%よりも少なかったのに対し、原料で使用したモリブデン酸塩の残渣率は、0.6%よりも多くなった。つまり、残渣率からも、アンモニア添加モリブデン酸塩から三酸化モリブデンを製造すれば溶解性を高くすることができることが確認できた。
【0046】
以上の結果より、本発明の方法を採用することによって、アンモニア含有率の高いモリブデン酸塩を形成でき、しかも、このモリブデン酸塩から製造される三酸化モリブデンは、溶解性の高いものとすることができることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明の易溶解性三酸化モリブデンの製造方法は、触媒などを製造する際に使用される易溶解性三酸化モリブデンの製造方法に適している。
【技術分野】
【0001】
本発明は、易溶解性三酸化モリブデンの製造方法および易溶解性三酸化モリブデンに関する。さらに詳しくは、多成分混合液などの液体への溶解性の高い易溶解性三酸化モリブデンの製造方法および易溶解性三酸化モリブデンに関する。
【背景技術】
【0002】
石油精製所における脱硫塔では、脱硫触媒によって各種石油留分の水素化脱硫が行われるが、かかる脱硫触媒は、水素化脱硫作業を行うにつれその触媒活性が低下するので、触媒活性を失った脱硫触媒(廃触媒)は新しい脱硫触媒と交換される。
【0003】
ここで、脱硫触媒はモリブデンを含有しているので、廃触媒からモリブデンを回収して再利用することが行われている。
廃触媒からバナジウムやモリブデンを回収する方法として、有価金属を水に溶解する可溶性塩としてから回収することが行われている(例えば、特許文献1)。
具体的には、廃触媒と、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の塩(以下、両者を含めてソーダ灰という)とを、酸素が存在する雰囲気においてロータリーキルンによって焙焼する。すると、廃触媒中のモリブデンは、酸化しかつソーダ灰と反応(ソーダ化反応)して可溶性塩(水溶性化合物)となる。この可溶性塩となった有価金属を含む焙焼物を水浸出すると、モリブデンおよびバナジウムを含有する水溶液が得られるので、この水溶液について溶媒抽出を行えば、バナジウム、モリブデンをそれぞれ分離できる。そして、モリブデンを含有する水相について、塩析・酸沈法などを適用すればモリブデン酸アンモニウムなどのモリブデン酸塩の沈殿を生じさせることができ、このモリブデン酸塩の沈殿を焼成することによって、三酸化モリブデン(MoO3)の製品(固形物)を得ることができる。
【0004】
ここで、石油精製用の水素化脱硫触媒は、三酸化モリブデンを原料として製造される。具体的には、酸を添加してpHを調製した溶液に、モリブデン化合物を、ニッケル化合物やコバルト化合物などとともに溶解して含浸液(多成分混合溶解液)を形成する(例えば、特許文献2,3)。そして、耐火性酸化物を多成分混合溶解液に含浸させた後焼成して担持処理を行えば、モリブデンを含有する水素化脱硫触媒を製造することができる。
水素化脱硫触媒の性質は、担持処理に使用する多成分混合溶解液における各化合物の混合割合などの影響を受けるので、この混合割合を適切に維持するためにも、三酸化モリブデンには高い溶解性が要求される。
【0005】
一般的に、三酸化モリブデンなどの粒子について溶解性を高める方法として、粒子の比表面積を大きくする、粒子を多孔性とするなどの方法が考えられるが、現在のところ、溶解性の高い三酸化モリブデン粒子を効率よく形成する方法は開発されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−262181号公報
【特許文献2】特開平6−277520号公報
【特許文献3】特開平11−319567号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記事情に鑑み、多成分混合溶液などの溶液への溶解性が高い三酸化モリブデンを製造できる易溶解性三酸化モリブデンの製造方法を提供することを目的とする。
また、本発明は、前記方法によって製造された多成分混合溶液などの溶液への溶解性が高い三酸化モリブデンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(製造方法)
第1発明の易溶解性三酸化モリブデンの製造方法は、モリブデン酸塩に対してアンモニア溶液を供給し、アンモニア添加モリブデン酸塩を形成するアンモニア供給工程と、該アンモニア供給工程において得られた前記アンモニア添加モリブデン酸塩を焼成する焼成工程と、を順に行うことを特徴とする。
第2発明の易溶解性三酸化モリブデンの製造方法は、第1発明において、前記アンモニア供給工程において、モリブデン酸塩に対してアンモニア溶液を噴霧することを特徴とする。
第3発明の易溶解性三酸化モリブデンの製造方法は、第1または第2発明において、前記アンモニア供給工程において、前記アンモニア溶液を、モリブデン酸塩中のモリブデンに対するアンモニアのモル比が0.5以上となるように供給することを特徴とする。
第4発明の易溶解性三酸化モリブデンの製造方法は、第1、第2または第3発明において、炉内からアンモニアガスを除去しながら、前記モリブデン酸塩を焼成することを特徴とする。
(易溶解性三酸化モリブデン)
第5発明の易溶解性三酸化モリブデンは、モリブデン酸塩に対してアンモニア溶液を供給し、アンモニア添加モリブデン酸塩を形成するアンモニア供給工程と、該アンモニア供給工程において得られた前記アンモニア添加モリブデン酸塩を焼成する焼成工程と、を順に行って製造されたものであることを特徴とする。
第6発明の易溶解性三酸化モリブデンは、第5発明において、前記アンモニア供給工程において、モリブデン酸塩に対してアンモニア溶液を噴霧することを特徴とする。
第7発明の易溶解性三酸化モリブデンは、第5または第6発明において、前記アンモニア供給工程において、前記アンモニア溶液を、モリブデン酸塩中のモリブデンに対するアンモニアのモル比が0.5以上となるように供給することを特徴とする。
第8発明の易溶解性三酸化モリブデンは、第5、第6または第7発明において、炉内からアンモニアガスを除去しながら、前記モリブデン酸塩を焼成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
(製造方法)
第1発明によれば、アンモニア供給工程においてモリブデン酸塩にアンモニアを供給してアンモニア添加モリブデン酸塩を形成し、このアンモニア添加モリブデン酸塩を焼成する。すると、アンモニア添加モリブデン酸塩は多量にアンモニアを含有するので、製造された三酸化モリブデンは多孔質構造体となるから、多成分混合溶液などの溶液に溶解しやすくなる。
第2発明によれば、アンモニア溶液を噴霧することによってモリブデン酸塩にアンモニアを供給するので、適切な量のアンモニア溶液をモリブデン酸塩に添加することができる。したがって、製造される三酸化モリブデン粒子の構造を、適切な多孔質構造とすることができる。
第3発明によれば、各モリブデン酸塩粒子に対して十分な量のアンモニアが供給されるので、高アンモニア含有率のモリブデン酸塩を得ることができる。
第4発明によれば、アンモニア添加モリブデン酸塩を焼成する際に発生するガスなどによって、三酸化モリブデンが還元されて二酸化モリブデンとなることを防ぐことができる。すると、焼成された三酸化モリブデン中に、二酸化モリブデンとなっている粒子がほぼ無くなるので、製造された三酸化モリブデンを多成分混合溶液などの溶液に溶解しても、残渣をほとんど無くすことができる。
(易溶解性三酸化モリブデン)
第5発明によれば、アンモニア供給工程においてモリブデン酸塩にアンモニアを供給してアンモニア添加モリブデン酸塩を形成し、このアンモニア添加モリブデン酸塩を焼成する。すると、アンモニア添加モリブデン酸塩は多量にアンモニアを含有するので、製造された三酸化モリブデンは多孔質構造体となるから、多成分混合溶液などの溶液に溶解しやすくなる。
第6発明によれば、アンモニア溶液を噴霧することによってモリブデン酸塩にアンモニアを供給するので、適切な量のアンモニア溶液をモリブデン酸塩に添加することができる。したがって、製造される三酸化モリブデン粒子の構造を、適切な多孔質構造とすることができる。
第7発明によれば、各モリブデン酸塩粒子に対して十分な量のアンモニアが供給されるので、高アンモニア含有率のモリブデン酸塩を得ることができる。
第8発明によれば、アンモニア添加モリブデン酸塩を焼成する際に発生するガスなどによって、三酸化モリブデンが還元されて二酸化モリブデンとなることを防ぐことができる。三酸化モリブデン中に、二酸化モリブデンとなっている粒子がほぼ無くなるので、製造された三酸化モリブデンを多成分混合溶液などの溶液に溶解しても、残渣をほとんど無くすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の易溶解性三酸化モリブデンの製造方法の概略フローチャートである。
【図2】本発明の方法によって形成されたアンモニア添加モリブデン酸塩のX線回折結果である。
【図3】本発明の方法によって形成されたアンモニア添加モリブデン酸塩のSEM画像である。
【図4】酸沈法によって得られたモリブデン酸塩のX線回折結果である。
【図5】酸沈法によって得られたモリブデン酸塩のSEM画像である。
【図6】本発明の方法によって形成されたアンモニア添加モリブデン酸塩を焼成して得られた焼成物のX線回折結果である。
【図7】本発明の方法によって形成されたアンモニア添加モリブデン酸塩を焼成して得られた焼成物のSEM画像である。
【図8】酸沈法によって得られたモリブデン酸塩を焼成して得られた焼成物のSEM画像である。
【図9】(A)は本発明の方法によって形成されたアンモニア添加モリブデン酸塩を焼成して得られた焼成物における一次粒子の頻度分布を示した図であり、(B)は酸沈法によって得られたモリブデン酸塩を焼成して得られた焼成物における一次粒子の頻度分布を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
つぎに、本発明の実施形態を図面に基づき説明する。
本発明の易溶解性三酸化モリブデンの製造方法は、モリブデン酸塩を焼成して三酸化モリブデンを製造する方法であり、多成分混合溶液などに対する溶解性が高い三酸化モリブデンを製造できるようにしたことに特徴を有している。
【0012】
多成分混合溶液とは、複数の塩を酸や水などに溶解して形成された溶液を意味している。例えば、水、アルコール、エーテル等を溶媒として、遷移元素を含有する塩(例えば、硝酸塩、硫酸塩、炭酸塩、無機複合酸塩など)や、クエン酸、蟻酸、酢酸、リン酸、りんご酸などの有機酸化合物を、適宜選択して混合して溶解した溶液であるが、使用する塩、酸、溶媒はとくに限定されない。また、塩、酸、溶媒の混合割合もとくに限定されず、多成分混合溶液を使用して触媒を製造する場合であれば、製造された触媒において、各成分が所定の割合となるように調製されていればよい。
【0013】
なお、本発明の易溶解性三酸化モリブデンの製造方法(以下、単に本発明の方法という)において、原料となるモリブデン酸塩は、アンモニアを全く含有しないものや、アンモニア含有率の低いものなどであるが、とくに限定されない。また、市販のモリブデン酸塩を使用してもよいし、アンモニアを含有するモリブデン含有液(または、アンモニアを含有しないモリブデン含有液)から製造されたモリブデン酸塩を使用してもよい。
【0014】
アンモニアを含有するモリブデン含有液から製造されたモリブデン酸塩とは、石油精製に用いる水素化脱硫触媒から製造されたものを例示することができる。
例えば、石油精製に用いる水素化脱硫触媒からモリブデンをソーダ化して水浸出してモリブデン酸ナトリウムを含む溶液を形成する。この溶液について溶媒抽出などの方法を行ってモリブデン酸アンモニウムとした溶液(モリブデン酸アンモニウム溶液)を形成し、このモリブデン酸アンモニウム溶液に対して酸沈法などを適用してモリブデン酸塩を回収する。すると、このモリブデン酸塩を、本発明の方法で製造する三酸化モリブデンの原料として使用することができる。
【0015】
とくに、本発明の方法によって得られる三酸化モリブデンを純度の高いものとする上では、モリブデン酸アンモニウム溶液からモリブデン酸塩を回収する前に、モリブデン酸アンモニウム溶液に対して、モリブデン以外の不純物(例えば、リンやバナジウムなど)を除去する除去工程を行うことが好ましい。具体的には、モリブデン酸アンモニウム溶液に含まれる除去すべき不純物がリンやバナジウムの場合、鉄塩、マグネシウム塩を供給し、pHおよび温度等を適切な条件する。すると、不純物であるリンおよびバナジウムが鉄塩またはマグネシウム塩を形成して沈殿し除去され、不純物の少ないモリブデン酸アンモニウム溶液を得ることができるから、純度の高いモリブデン酸塩を得ることができる。そして、純度の高いモリブデン酸塩を焼成すれば、純度の高い三酸化モリブデンを得ることができる。
【0016】
(製造工程の説明)
つぎに、本発明の易溶解性三酸化モリブデンの製造方法を、図1に基づいて説明する。
まず、モリブデン酸塩の粒子に対してアンモニア溶液を供給し、アンモニア添加モリブデン酸塩を形成するアンモニア供給工程を行う。例えば、モリブデン酸塩粒子を混合容器内に入れてかき混ぜながら、モリブデン酸塩粒子に対してアンモニア溶液を供給する。すると、供給されたアンモニア溶液をモリブデン酸塩粒子の表面にほぼ均一に付着させることができる。その後、モリブデン酸塩を乾燥すれば、モリブデン酸塩粒子を、AHMなどの高アンモニア含有率のモリブデン酸塩(アンモニア添加モリブデン酸塩)の粒子とすることができる。
【0017】
ついで、アンモニア供給工程で得られたアンモニア添加モリブデン酸塩の粒子を焼成炉において焼成すると、モリブデン酸塩の粒子が分解され、固体の三酸化モリブデンの粒子が製造される。アンモニア添加モリブデン酸塩の粒子はアンモニア含有率が高いので、焼成によって製造された三酸化モリブデンの粒子は、アンモニアが添加されていないモリブデン酸塩の粒子をそのまま焼成する場合に比べて、より空隙率の高い多孔質構造体となる。
したがって、本発明の製造方法によって得られた三酸化モリブデンは、多成分混合溶液などの溶液に溶解しやすいものとなる。
【0018】
なお、アンモニア供給工程において、アンモニアによるモリブデン酸塩の溶解割合が高い場合には、アンモニア添加モリブデン酸塩は、半溶融したスラリー状となる場合がある。この場合には、そのまま焼成することが困難であるから、得られたスラリー状のアンモニア添加モリブデン酸塩を、例えば、ドラム乾燥器、回転乾燥器、トンネル型乾燥機、噴霧乾燥器などによって乾燥して固化させる。この固化したアンモニア添加モリブデン酸塩を解砕して粒子状とすれば、焼成炉において焼成することができる。
もちろん、アンモニア供給工程において得られるアンモニア添加モリブデン酸塩が、焼成可能な程度に粒子状の形態を維持している場合には、乾燥後解砕することは必ずしも必要ではない。しかし、この場合でも、アンモニア添加モリブデン酸塩の粒子を解砕すれば、粒子の粒径を適切な大きさに調整することができる。
【0019】
つぎに、各工程の条件について、詳細に説明する。
【0020】
(アンモニア供給工程)
上述したように、アンモニア供給工程では、原料となるモリブデン酸塩に対して、アンモニア溶液を供給して、モリブデン酸塩の表面にアンモニア溶液を付着させる。モリブデン酸塩の表面にアンモニア溶液が付着すると、アンモニア添加モリブデン酸塩を、例えば、AHMなどの高アンモニア含有率のモリブデン酸アンモニウムとすることができる。
【0021】
モリブデン酸塩の表面にアンモニア溶液を付着させることによってアンモニア添加モリブデン酸塩とできる理由は、以下のように推定される。
まず、モリブデン酸塩は、一次粒子が結合して二次粒子となった構造を有しているので、モリブデン酸塩粒子(二次粒子)は多孔質の構造を有している。つまり、モリブデン酸塩粒子には、その表面から内部までつながる空隙が多数存在する。
かかるモリブデン酸塩粒子の表面にアンモニア溶液を供給すると、アンモニア溶液は、粒子表面に付着するとともに、上述した空隙を通って粒子の内部に侵入し、粒子内部の一次粒子の表面にも付着する。一次粒子の表面に付着したアンモニア溶液は、一次粒子の表面を溶かして半溶解の状態とするので、一次粒子とアンモニアとが結合した状態となり、この一次粒子はアンモニア含有率が高くなる。すると、モリブデン酸塩粒子はアンモニア含有率が高い一次粒子を多数含む二次粒子となるので、モリブデン酸塩粒子(二次粒子)全体のアンモニア含有率も高くなるのである。
【0022】
(アンモニア溶液の供給方法)
アンモニア供給工程において、モリブデン酸塩に対してアンモニア溶液を供給する方法はとくに限定されない。
例えば、モリブデン酸塩をアンモニア溶液に浸漬してもよいし、モリブデン酸塩にアンモニア溶液のシャワーを浴びせてもよい。
【0023】
とくに、アンモニア溶液を噴霧しながら、モリブデン酸塩粒子に対してアンモニア溶液が均一付着するように、ミキサー(例えば、ナウターミキサー)などによってモリブデン酸塩粒子をかき混ぜることが好ましい。この場合、各モリブデン酸塩粒子に付着させるアンモニア溶液の量を適切な量に調整し易くなるので、モリブデン酸塩粒子中のモリブデンと、その粒子に供給されるアンモニアのモル比、言い換えれば、アンモニア添加モリブデン酸塩中のモリブデンとアンモニアのモル比を制御し易くなる。すると、アンモニア添加モリブデン酸塩粒子を焼成して製造される三酸化モリブデン粒子の構造を、適切な多孔質構造とすることができる。
【0024】
(アンモニア溶液)
モリブデン酸塩に対して供給するアンモニア溶液の量はとくに限定されないが、モリブデン酸塩中のモリブデンに対して、モリブデン(Mo)とアンモニア(NH3)のモル比(Mo/NH3)が0.5以上となる量を供給することが好ましい。かかる量を供給すれば、各モリブデン酸塩粒子に対して十分な量のアンモニアを供給できるので、高アンモニア含有率のモリブデン酸塩を得ることができる。
【0025】
(アンモニア溶液の濃度)
モリブデン酸塩に供給するアンモニア溶液におけるアンモニア濃度はとくに限定されない。
【0026】
例えば100gのモリブデン酸塩(H2MoO4)に、アンモニア濃度25%のアンモニア溶液を40mL噴霧すると、アンモニア添加モリブデン酸塩のアンモニア含有率を8.3重量%とすることができる。すると、焼成したときにおける粒子の減容率を18.4%とすることができるから、焼成された三酸化モリブデン粒子の比表面積を2m2/g以上とすることができる。
【0027】
なお、アンモニア溶液のアンモニア濃度は20%よりも低くなると、モリブデン酸塩の一部が完全にアンモニア溶液に溶解してしまう。すると、アンモニア溶液の濃度が薄まるので、アンモニア添加モリブデン酸塩がスラリー状となった後、回転式乾燥機などによって乾燥・固化させても、アンモニア添加モリブデン酸塩が固化するまでの時間が長くなる。すると、より大きな乾燥能力が必要となり乾燥機が大型化するし、乾燥固化に使用するエネルギ量も増加するので、アンモニア濃度は20%以上が好ましい。
【0028】
また、スラリー状となったモリブデン酸塩の乾燥には、スプレードライヤーを使用してもよい。この場合には、乾燥する過程において、モリブデン酸塩を粒子状とすることができ、しかも、その粒子の粒径をより小さくすることができる。
【0029】
(焼成温度)
焼成工程における焼成温度はとくに限定されないが、焼成温度が高くなると、製造される三酸化モリブデン粒子の結晶性が高くなり、溶解度が低下する。また、焼成温度が低くなると、モリブデン酸塩粒子が十分に分解されずモリブデン酸塩粒子に含まれるアンモニアが焼成された三酸化モリブデン粒子に残留してしまう。また、モリブデン酸塩粒子に付着したアンモニアも焼成された三酸化モリブデン粒子に残留してしまう可能性がある。かかるアンモニアの残留は、製品の純度を低下させる上、三酸化モリブデン粒子の溶解度を低下させる。
【0030】
したがって、モリブデン酸塩の再焼成は、モリブデン酸塩粒子が分解されモリブデン酸塩粒子に含まれるアンモニアが離脱する温度であって、焼成される粒子の結晶性が高くならない温度で行うことが好ましい。具体的には、焼成炉内の温度が400〜550度、好ましくは420〜480度で、3時間以上(好ましくは4時間程度)の期間、モリブデン酸塩を焼成することが好ましい。
【0031】
(焼成雰囲気)
また、モリブデン酸塩の再焼成は、焼成炉内の気体を排出しながら、言い換えれば、焼成炉内からアンモニアガスを除去しながら、モリブデン酸塩を焼成することが好ましい。
例えば、モリブデン酸塩粒子が分解するとアンモニアガスが発生するが、アンモニアガスが存在する状態でモリブデン酸塩粒子を焼成すると、焼成によって製造された三酸化モリブデン粒子が還元されて二酸化モリブデン粒子となる可能性がある。二酸化モリブデンは溶解性が低いので、二酸化モリブデン粒子が混入していると、三酸化モリブデン全体の溶解性が低くなる。
したがって、二酸化モリブデンが生成されることを防ぐために、焼成炉内からアンモニアガスを除去しながら、モリブデン酸塩を焼成することが好ましい。
【実施例1】
【0032】
実験では、本発明の方法によって得られるモリブデン酸塩(アンモニア添加モリブデン酸塩)が、原料となるモリブデン酸塩に比べてアンモニアの含有量が多いものとなっていることを確認した。
また、得られたアンモニア添加モリブデン酸塩を焼成して三酸化モリブデンを形成し、この三酸化モリブデンについて、溶解性を確認した。
【0033】
実験では、酸沈法によって得られたモリブデン酸塩を原料として、以下の方法でアンモニア添加モリブデン酸塩および三酸化モリブデンを形成した。
まず、トレイ上に載せたモリブデン酸塩にアンモニア溶液を噴霧しながらさじで掻き混ぜて(混練時間:20min)、スラリー状としたアンモニア添加モリブデン酸塩を形成した。
スラリー状となったアンモニア添加モリブデン酸塩をトレイ上で熱風乾燥(熱風温度60〜90℃)して固化したのち、スプーンで破砕することによって、アンモニア添加モリブデン酸塩粒子を形成した。そして、形成されたアンモニア添加モリブデン酸塩粒子を焼成して三酸化モリブデンを形成した。
【0034】
実験に使用した原料であるモリブデン酸塩、およびアンモニア溶液は、以下のとおりである。
モリブデン酸塩(試料量17g):Mo62.9重量%、NH32.3重量%
アンモニア溶液:添加量(7mL/17g−モリブデン酸塩)、アンモニア濃度25%
【0035】
また、焼成条件は、以下のとおりである。
焼成炉:マッフル炉(アドバンテック東洋社製:KM−800)
焼成温度:450℃
焼成時間:4時間
なお、焼成炉は炉内の気体を排気する条件で運転した。焼成炉の温度は、マッフル炉付設の熱電対によって測定した。
【0036】
(溶解度)
また、三酸化モリブデンの溶解性は、三酸化モリブデンを原料とする溶解液を形成して残渣率を測定した。残渣率測定に使用した溶解液は以下のとおりである。
溶解液:三酸化モリブデンと炭酸コバルトの混合溶液(有機酸添加)
溶解液温度:90℃
反応時間:60分
なお、溶解液の温度は、ガラス棒温度計によって測定した。
【0037】
なお、モリブデン酸塩、アンモニア添加モリブデン酸塩および三酸化モリブデンの同定は、X線回折(PANalytical社製:PertPRO)によって行った。
粒子の観察はSEM(日本電子製 JSM-6360LA)によって行った。
【0038】
実験結果を以下に示す。
【0039】
(アンモニア添加モリブデン酸塩の確認)
まず、本発明の方法により、20gのアンモニア添加モリブデン酸塩(Mo:54.7重量%、NH3:10.2重量%)を形成することができた。
このアンモニア添加モリブデン酸塩をX線回折によって確認したところ、モリブデン酸アンモニウム(AHM:((NH4)6Mo7O24・4H2O)となっていることが同定できた(図2)。つまり、本発明の方法を採用することによって、原料であるモリブデン酸塩(図4参照)をAHMとすることができたことが確認できた。
【0040】
図3に示すように、SEM写真でも、原料であるモリブデン酸塩では、100μmを超える粗粒が存在しているのに対し(図5参照)、本発明の方法で得られたAHMでは、100μmを超える粗粒がなくなり微粒化していることが確認できる。
【0041】
なお、回折X線強度は、原料であるモリブデン酸塩と比べて、アンモニア添加モリブデン酸塩の方が低くなっており、アンモニア添加モリブデン酸塩では、結晶性が低く、結晶が成長していないと考えられる。
【0042】
(焼成物の確認)
つぎに、本発明の方法によって形成されたアンモニア添加モリブデン酸塩を焼成して得られた焼成物をX線回折によって確認したところ、三酸化モリブデンとなっていることが確認できる(図6参照)。
【0043】
また、図7および図8に示すように、SEM写真から、原料であるモリブデン酸塩から焼成された三酸化モリブデン(比較例の三酸化モリブデン)では、焼成しても100μmを超える粗粒が残っているのに対し、アンモニア添加モリブデン酸塩から得られた三酸化モリブデン(実施例の三酸化モリブデン)では、焼成によって粒子は更に細かくなっていることが確認できる。
これは、アンモニア添加モリブデン酸塩では、アンモニアの含有量が多いので、アンモニアの分解・揮発により、焼成された粒子が更に細かくなったためであると考えられる。
また、アンモニア添加モリブデン酸塩では、原料であるモリブデン酸塩と比べて結晶性が低くなっていたため、アンモニアが分解・揮発した際における粒子の細径化が進み易かったと考えられる。
【0044】
実施例の三酸化モリブデンと比較例の三酸化モリブデンについて、一次粒子の粒径を、レーザ回折式粒度分布測定装置(島津株式会社製、SALD−3100)によって測定した。図9に示すように、実施例の三酸化モリブデンでは、ほとんどが5μm以下となっているのに対し、比較例の三酸化モリブデンではほとんどが5μm以上となっていることから、一次粒子の粒径の測定結果より実施例の三酸化モリブデンの方が溶解性が高くなることが推定される。
なお、比較例の三酸化モリブデンでは、測定の際に二次粒子が一次粒子に十分に分解しなかったため、粒径が大きくなったとも考えられる。しかし、二次粒子が一次粒子に十分に分解しにくい場合には溶解性が低くなると考えられる。すると、この結果は、本発明の方法によって、原料であるモリブデン酸塩から三酸化モリブデンを製造すれば、三酸化モリブデンの溶解性を高くできることを裏付けていると考えられる。つまり、本発明の方法によって原料であるモリブデン酸塩をアンモニア添加モリブデン酸塩とすることによって、このアンモニア添加モリブデン酸塩から製造される三酸化モリブデン粒子を一次粒子に分解し易い二次粒子することができるので、製造される三酸化モリブデン粒子の溶解性を高くできると考えられる。
【0045】
実施例の三酸化モリブデンと比較例の三酸化モリブデンの溶解性を確認したところ、アンモニア添加モリブデン酸塩の残渣率は、0.2%よりも少なかったのに対し、原料で使用したモリブデン酸塩の残渣率は、0.6%よりも多くなった。つまり、残渣率からも、アンモニア添加モリブデン酸塩から三酸化モリブデンを製造すれば溶解性を高くすることができることが確認できた。
【0046】
以上の結果より、本発明の方法を採用することによって、アンモニア含有率の高いモリブデン酸塩を形成でき、しかも、このモリブデン酸塩から製造される三酸化モリブデンは、溶解性の高いものとすることができることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明の易溶解性三酸化モリブデンの製造方法は、触媒などを製造する際に使用される易溶解性三酸化モリブデンの製造方法に適している。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モリブデン酸塩に対してアンモニア溶液を供給し、アンモニア添加モリブデン酸塩を形成するアンモニア供給工程と、
該アンモニア供給工程において得られた前記アンモニア添加モリブデン酸塩を焼成する焼成工程と、を順に行う
ことを特徴とする易溶解性三酸化モリブデンの製造方法。
【請求項2】
前記アンモニア供給工程において、モリブデン酸塩に対してアンモニア溶液を噴霧する
ことを特徴とする請求項1記載の易溶解性三酸化モリブデンの製造方法。
【請求項3】
前記アンモニア供給工程において、前記アンモニア溶液を、モリブデン酸塩中のモリブデンに対する供給されたアンモニアのモル比が0.5以上となるように供給する
ことを特徴とする請求項1または2記載の易溶解性三酸化モリブデンの製造方法。
【請求項4】
炉内からアンモニアガスを除去しながら、前記モリブデン酸塩を焼成する
ことを特徴とする請求項1、2または3記載の易溶解性三酸化モリブデンの製造方法。
【請求項5】
モリブデン酸塩に対してアンモニアを供給して、アンモニア添加モリブデン酸塩を形成するアンモニア供給工程と、
該アンモニア供給工程において得られた前記アンモニア添加モリブデン酸塩を焼成する焼成工程と、を順に行って製造されたものである
ことを特徴とする易溶解性三酸化モリブデン。
【請求項6】
前記アンモニア供給工程において、モリブデン酸塩に対してアンモニア溶液を噴霧する
ことを特徴とする請求項5記載の易溶解性三酸化モリブデン。
【請求項7】
前記アンモニア供給工程において、前記アンモニア溶液を、モリブデン酸塩中のモリブデンに対するアンモニアのモル比が0.5以上となるように供給する
ことを特徴とする請求項5または6記載の易溶解性三酸化モリブデン。
【請求項8】
炉内からアンモニアガスを除去しながら、前記モリブデン酸塩を焼成する
ことを特徴とする請求項5、6または7記載の易溶解性三酸化モリブデン。
【請求項1】
モリブデン酸塩に対してアンモニア溶液を供給し、アンモニア添加モリブデン酸塩を形成するアンモニア供給工程と、
該アンモニア供給工程において得られた前記アンモニア添加モリブデン酸塩を焼成する焼成工程と、を順に行う
ことを特徴とする易溶解性三酸化モリブデンの製造方法。
【請求項2】
前記アンモニア供給工程において、モリブデン酸塩に対してアンモニア溶液を噴霧する
ことを特徴とする請求項1記載の易溶解性三酸化モリブデンの製造方法。
【請求項3】
前記アンモニア供給工程において、前記アンモニア溶液を、モリブデン酸塩中のモリブデンに対する供給されたアンモニアのモル比が0.5以上となるように供給する
ことを特徴とする請求項1または2記載の易溶解性三酸化モリブデンの製造方法。
【請求項4】
炉内からアンモニアガスを除去しながら、前記モリブデン酸塩を焼成する
ことを特徴とする請求項1、2または3記載の易溶解性三酸化モリブデンの製造方法。
【請求項5】
モリブデン酸塩に対してアンモニアを供給して、アンモニア添加モリブデン酸塩を形成するアンモニア供給工程と、
該アンモニア供給工程において得られた前記アンモニア添加モリブデン酸塩を焼成する焼成工程と、を順に行って製造されたものである
ことを特徴とする易溶解性三酸化モリブデン。
【請求項6】
前記アンモニア供給工程において、モリブデン酸塩に対してアンモニア溶液を噴霧する
ことを特徴とする請求項5記載の易溶解性三酸化モリブデン。
【請求項7】
前記アンモニア供給工程において、前記アンモニア溶液を、モリブデン酸塩中のモリブデンに対するアンモニアのモル比が0.5以上となるように供給する
ことを特徴とする請求項5または6記載の易溶解性三酸化モリブデン。
【請求項8】
炉内からアンモニアガスを除去しながら、前記モリブデン酸塩を焼成する
ことを特徴とする請求項5、6または7記載の易溶解性三酸化モリブデン。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【公開番号】特開2012−246155(P2012−246155A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−117356(P2011−117356)
【出願日】平成23年5月25日(2011.5.25)
【出願人】(000183303)住友金属鉱山株式会社 (2,015)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年5月25日(2011.5.25)
【出願人】(000183303)住友金属鉱山株式会社 (2,015)
【Fターム(参考)】
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