説明

易開封性及び酸素バリア性を有する多層積層フィルム

【課題】容器の蓋材として使用されたときに、開封性に優れ、酸素バリア性を有し、さらにピール部の糸引きなどにより外観を損ねることなく、実用性と美観性を両立した多層積層フィルム、及びそれを蓋材として用いる包装容器の提供。
【解決手段】シール層(A)、並びにその上に順に積層された基材層(B)及び(C)を有する多層積層フィルムにおいて、シール層(A)は10〜60重量部の高密度ポリエチレンと40〜90重量部のポリプロピレンの混合物からなり、その層厚は1〜20μmであり、基材層(B)はエチレン・無水マレイン酸グラフト共重合体又はプロピレン・無水マレイン酸グラフト共重合体からなり、その層厚は1〜20μmであり、そして基材層(C)はエチレン・ビニルアルコール共重合体からなり、その層厚は5〜30μmであることを特徴とする多層積層フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軟包装の分野で、主に食品、化成品等の包装容器の蓋材に使用される多層積層フィルムであって、充分な密封性を有すると共に開封性に優れ、食品の長期保存に必要な酸素バリア性を有し、さらにピール部の糸引きなどにより外観を損ねることなく、実用性と美観性を両立した多層積層フィルム、及びそれを蓋材として用いる包装容器に関するものである。
また、本発明の多層積層フィルムは、当業者に既知の種々の方法により製造することができるが、特に、インフレーション製膜法により好適に製造することができる。
【背景技術】
【0002】
近年、包装容器は内容物の保護や保存のために、充分な密封性が要求されると共に、消費時に容易に開封できる易開封性(イージーピール性)も要求されている。そして、実用的な密封性と易開封性を兼ね備えた包装フィルムとして各種の提案がされている。
【0003】
例えば、易開封性を目的としたフィルムとして、各種アクリル酸共重合体とポリエチレン等とのブレンド層の2層からなるヒートシール性積層フィルム(特許文献1参照)や、ポリプロピレンからなる基材層に、ポリブテン、ポリプロピレン、ポリエチレンの3成分系ブレンド層を積層したフィルム(特許文献2参照)、メタクリル酸共重合体とポリプロピレンとの混合物からなる層とポリエチレンのシーラント層を有する多層フィルム(特許文献3参照)が開発されている。
【特許文献1】特開平5−212835号公報
【特許文献2】特開平6−328639号公報
【特許文献3】特開2002−283513公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の易開封性を目的としたフィルムは、材料コストが高く、製膜条件における自由度(ブレンド条件など)が低く、また、低温シール性を高める等の目的でポリブテンのような耐熱性に劣る物質を含むため、ピール部に糸引きを生じて外観が損なわれるものであった。さらに、これらのフイルムは、食品の長期保存に必要な酸素バリア性を有しないため、食品包装に用いる場合は、新たに酸素バリア性フィルムをラミネートする必要があり、製造にかかるコスト負担が大きいものであった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは上記の問題点を解決すべく検討した結果、易開封性及び酸素バリア性を有する包装容器の蓋材用多層積層フィルムとして、シール層(A)、並びにその上に順に積層された基材層(B)及び(C)を有する多層積層フィルムにおいて、シール層(A)は10〜60重量部の高密度ポリエチレンと40〜90重量部のポリプロピレンの混合物からなり、その層厚は1〜20μmであり、基材層(B)はエチレン・無水マレイン酸グラフト共重合体又はプロピレン・無水マレイン酸グラフト共重合体からなり、その層厚は1〜20μmであり、そして基材層(C)はエチレン・ビニルアルコール共重合体からなり、その層厚は5〜30μmであることを特徴とする多層積層フィルムを開発した。
【発明の効果】
【0006】
本発明の包装容器の蓋材用多層積層フィルムは、優れた易開封性を有するだけでなく、食品の長期保存に必要な酸素バリア性を有し、またピール部の糸引きが少ないため、開封面が美しく、実用性と美観性の両面において優れたものである。
【0007】
本発明の多層積層フィルムのシール層(A)は、非相溶の高密度ポリエチレンとポリプロピレンからなり、これらの樹脂のうちの成分比率の高い方が海、成分比率の低い方が島を形成する海島構造をとる。
本発明においては、上記樹脂のMFR(メルトマスフローレイト)をコントロールすることにより海島構造を制御して、所望の凝集破壊強度を達成することができる。また、このような構成をとることにより、本発明は、従来の易開封フィルムに比べて、製造にかかるコストを削減することができる。
本発明の多層積層フィルムの基材層(C)は、エチレン・ビニルアルコール共重合体からなる。そして、この樹脂は、酸素の透過を阻止する酸素バリア性を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明について、以下に詳しく説明する。
本発明の多層積層フィルムは、シール層(A)、並びにその上に順に積層された基材層(B)及び(C)、並びに場合によりさらに基材層(D)及び(E)を有する。図1は、シール層(A)上に、基材層(B)〜(E)が積層された5層構造の多層積層フィルムを示すものである。
【0009】
<1> シール層(A)
以下、本発明において使用される樹脂名は、業界において慣用されるものが用いられる。また、本発明において、密度は「JIS K 7112」に準拠して測定した。
(1)シール層(A)を構成する高密度ポリエチレン
本発明において、ポリエチレンには、エチレン・ホモポリマー、及びエチレンと他のα−オレフィン(例えばプロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン等)とのブロック又はランダム共重合体が包含される。
シール層(A)を構成する高密度ポリエチレンは、密度が0.945〜0.965g/cm3であり、そしてMFR(190℃)が1〜7g/10分である比較的溶融粘度の高い樹脂を使用する。
【0010】
上記において、密度が0.945g/cm3未満であると、糸引きが生じ易くなり、また0.965g/cm3を超えると、低温シール性がなくなるため好ましくない。
そして、MFR(190℃)が1g/10分未満であると、流れ性が低下するために製造が困難になり、その上、高MFRのポリプロピレンとの相溶性不良を起こして目に見えるムラが生じるため好ましくない。また7g/10分を超えると、ポリプロピレンのMFRとの差がなくなるため、相互分散度が高くなり、目的の易開封性が得られないため好ましくない。ここで、MFR(190℃)は「JIS K6922」に準拠して測定した。
本発明で使用するのに好適な高密度ポリエチレンとしては、例えばプライムポリマー(株)製のハイゼックス3300Fが挙げられる。
【0011】
(2)シール層(A)を構成するポリプロピレン
本発明において、ポリプロピレンには、プロピレン・ホモポリマー、及びプロピレンと他のα−オレフィンとのブロック又はランダム共重合体が包含される。
シール層(A)を構成するポリプロピレンとしては、密度が0.9〜0.91g/cm3であり、そしてMFR(230℃)が5〜30g/10分である樹脂を使用する。適度なシール強度を得るためには、エチレン・プロピレンランダム共重合体が特に好ましい。ブロック共重合体は、ポリプロピレンがブロック状で存在するため、接着強度が高くなりすぎて良好な易開封性が得られない場合がある。
【0012】
上記において、MFR(230℃)が5g/10分未満であると、シール強度が高くな
って蓋の剥離が困難となり、また、MFR(230℃)が30g/10分を超えると、インフレーション製膜が困難になるため好ましくない。ここで、MFR(230℃)は「JIS K6921」に準拠して測定した。
本発明で使用するのに好適なポリプロピレンとしては、例えば日本ポリプロ(株)製のエチレン・プロピレンランダム共重合体(FL03H及びFL02C)が挙げられる。
【0013】
(3)ブレンド比率
シール層(A)の高密度ポリエチレンとポリプロピレンのブレンド比率は、10〜60重量部の高密度ポリエチレンと、40〜90重量部のポリプロピレンとからなることが好ましいが、要求される接着強度に応じて、ブレンド比率を変更することができる。
ポリプロピレンの比率が上記の範囲より高いと接着強度が高くなりすぎて良好な易開封性が得られず、また比率が低いと十分な接着強度が得られず、包装容器としての密封性が満足できない。
【0014】
<2> 基材層
本発明の多層積層フィルムの基材層は、シール層(A)と相俟って易開封性に寄与するだけでなく、食品の長期保存に必要な酸素バリア性、包装容器の蓋材として機能を果たすための強度、ボイル処理等の加熱処理に耐え得る耐熱性、及び製膜安定性も要求される。
【0015】
(1)基材層(B)
本発明の多層積層フィルムの基材層(B)を構成する樹脂としては、エチレン・無水マレイン酸グラフト共重合体又はプロピレン・無水マレイン酸グラフト共重合体が使用される。この樹脂は、基材層(A)と(C)を強固に接着することができる接着性樹脂として機能する。本発明で使用する好適なエチレン・無水マレイン酸グラフト共重合体又はプロピレン・無水マレイン酸グラフト共重合体は、例えばプライムポリマー(株)製のエチレン・無水マレイン酸グラフト共重合体(アドマーNF548)、及びプライムポリマー(株)製のプロピレン・無水マレイン酸グラフト共重合体(アドマーQF551)等が挙げられる。
【0016】
(2)基材層(C)
本発明の多層積層フィルムの基材層(C)を構成する樹脂としては、エチレン・ビニルアルコール共重合体が使用される。この樹脂は、酸素の透過を阻止する酸素バリア性を有する。本発明で使用するのに好適なエチレン・ビニルアルコール共重合体としては、例えばクラレ(株)製のエバールE151が挙げられる。
【0017】
(3)基材層(D)及び(E)
本発明の多層積層フィルムにおいて、基材層(C)の上にさらに、接着性樹脂からなる基材層(D)、及びその上に最表層として基材層(E)を積層することができる。基材層(D)を構成する樹脂としては、上述の基材層(B)に挙げたものを使用することができる。また、基材層(E)を構成する樹脂としては、ポリエチレン又はエチレン・プロピレン共重合体が使用される。その理由は、最外層は後工程のラミネート工程においてコロナ処理を行うが、その際、接着性樹脂が最外層であると、コロナ処理によって樹脂由来の臭いが強くなるためである。
本発明で使用するのに好適なポリエチレン又はエチレン・プロピレン共重合体としては、例えば日本ポリプロ(株)製のエチレン・プロピレンランダム共重合体(ノバテックFW4BT)等が挙げられる。
【0018】
インフレーション製膜法により製造する場合、基材層(B)、(D)及び(E)を構成する樹脂はいずれも、MFR(230℃)が1〜20g/10分であり、そして基材層(C)を構成するエチレン・ビニルアルコール共重合体はMFR(190℃)が1〜10g/10分であることが好ましい。この範囲に規定することにより、良好なインフレーション製膜が可能となる。
【0019】
<3> 層厚
シール層(A)に関しては層厚が20μm以下、好ましくは10μm以下であるものが良い。ここで規定する範囲以下であると、ヒートシール時にシール層が流出し、基材層(B)と容器が接触し、高シール強度になる恐れがあり、またこの範囲以上であると、蓋材剥離時に容器シール跡が毛羽立ちが目立ち、剥離外観に悪影響を及ぼすため好ましくない。
【0020】
また、基材層(B)及び(D)は層厚1〜20μmであることが好ましく、基材層(C)は層厚5〜30μmであることが好ましく、基材層(E)は層厚5〜50μmであることが好ましい。バリア層については、ここで規定する範囲以下にすると十分なバリア性が得られなくなり、一方、この範囲以上に厚くすると高コストになるため好ましくない。接着樹脂層については、ここで規定する範囲以下にすると十分な接着性が得られなくなり、一方、この範囲以上に厚くすると、高コストならびに樹脂由来の臭いのため、包装用フィルムとして用いることができなくなる。また、接着樹脂層については、ここで規定する範囲以下にすると十分な接着性が得られなくなり、一方、この範囲以上に厚くすると、高コストならびに樹脂由来の臭いのため、包装用フィルムとして用いることができなくなる。
【0021】
<4> 物性
次に、本発明の包装容器の蓋材用多層積層フィルムに要求される物性を設定する際の要因について説明する。
(1)凝集破壊強度
本発明の包装容器の蓋材用多層積層フィルムの易開封性又は凝集破壊強度のコントロールは、シール層(A)に用いる高密度ポリエチレン樹脂とポリプロピレン樹脂の配合比を変更することで行う。
(2)酸素バリア性
酸素の透過を阻止する酸素バリア性は、基材層(C)として、エチレン・ビニルアルコール共重合体からなる層を積層することにより得られる。食品の長期保存に充分な酸素バリア性を得るためには、基材層(C)は少なくとも5μmの層厚を有するべきである。また、本発明の多層積層フィルムにおいて、基材層(C)は最大30μmの層厚を有する。層厚をこれよりも厚くすると、コストがかかりすぎるために好ましくない場合がある。
【0022】
<5> 蓋材の構成
次に、図2に示す例により、本発明の多層積層フィルムを用いた包装容器の蓋材の構成を説明する。図2の包装容器の蓋材は、本発明によるシール層(A)及び基材層(B)及び(C)を有する多層積層フィルム上に、必要に応じて印刷を施したラミネート接着剤層を積層し、その上にさらに延伸フィルムとしてポリエステルやポリアミドなどからなる透明な包装資材の基材を積層したものである。
【0023】
<6> 包装容器
本発明の多層積層フィルムは包装容器の蓋材用シーラントフィルム等に使用される。具体的には、ポリプロピレンで形成された容器の開口部に、シール層(A)が接するように重ねられた状態でヒートシールされ、開封時には、該シール層(A)の凝集破壊が起こる。
【実施例】
【0024】
本発明について実施例を挙げて更に具体的に説明する。
実施例1
(1)シール層(A)
高密度ポリエチレン(プライムポリマー(株)製ハイゼックス3300F:密度=0.950g/cm3、MFR(190℃)=1.1g/10分)30重量部と、エチレン・プロピレンランダム共重合体(日本ポリプロ(株)製ノバテックFL02C:密度=0.9g/cm3、MFR(230℃)=18g/10分)70重量部を十分に混錬し、シール層(A)用樹脂組成物を調製した。
【0025】
(2)基材層(B)
エチレン・無水マレイン酸グラフト共重合体(プライムポリマー(株)製アドマーQF551:密度=0.89g/cm3、MFR(230℃)=5.7g/10分)100重量部からなる基材層(B)用樹脂組成物を調製した。
【0026】
(3)基材層(C)
エチレン・ビニルアルコール共重合体(クラレ(株)製エバールE151:密度=1.14g/cm3、MFR(230℃)=1.6g/10分)100重量部からなる基材層(C)用樹脂組成物を調製した。
【0027】
上吹き空冷インフレーション共押出製膜機を用いて、総厚30μmの多層積層フィルム(シール層(A)5μm/基材層(B)5μm/基材層(C)20μm)を製造した。
【0028】
シール層(A)とは反対側の基材層(C)表面にコロナ処理を施し、その表面に2液硬化型ウレタン接着剤(主剤:ポリエステルポリオール、硬化剤:脂肪族イソシアネート)を塗布し、ポリエステルフィルム2枚を積層した(最初に東洋紡(株)製二軸延伸PETフィルム[E5200](両面コロナ処理):厚さ12μmを、次いで東洋紡(株)製二軸延伸PETフィルム[E5100](片面コロナ処理):厚さ12μmを積層した)。得られた多層積層フィルムは、(シール層(A)/基材層(B)/基材層(C)/DL/ポリエステルフィルム層/DL/ポリエステルフィルム層)の構造を有する(DLは接着剤部分を意味する)。
上記で製造した多層積層フィルムをポリプロピレンからなるカップ状容器(外寸90mm×90mm、フランジ幅5mm、容積120cc)の蓋材として、平シールからシール温度190℃、3kg/cm2、1秒の条件でヒートシールした。ヒートシール後、蓋材の剥離及びシール後退は認められなかった。また、カップ状容器から蓋材を引き剥がしたところ、適度な強度で剥離することができ、剥離面も綺麗であった。
【0029】
実施例2
(1)シール層(A)
高密度ポリエチレン(プライムポリマー(株)製ハイゼックス3300F:密度=0.950g/cm3、MFR(190℃)=1.1g/10分)30重量部と、エチレン・プロピレンランダム共重合体(日本ポリプロ(株)製ノバテックFL02A:密度=0.9g/cm3、MFR(230℃)=20g/10分)70重量部を十分に混錬し、シール層(A)用樹脂組成物を調製した。
【0030】
(2)基材層(B)
プロピレン・無水マレイン酸グラフト共重合体(プライムポリマー(株)製アドマーNF558:密度=0.913g/cm3、MFR(230℃)=4.2g/10分)100重量部からなる基材層(B)用樹脂組成物を調製した。
【0031】
(3)基材層(C)
エチレン・ビニルアルコール共重合体(クラレ(株)製エバールEU151:密度=1.14g/cm3、MFR(230℃)=1.6g/10分)100重量部からなる基材層(C)用樹脂組成物を調製した。
【0032】
(4)基材層(D)
プロピレン・無水マレイン酸グラフト共重合体(プライムポリマー(株)製アドマーNF551:密度=0.89g/cm3、MFR(230℃)=5.7g/10分)100重量部からなる基材層(D)用樹脂組成物を調製した。
【0033】
(5)基材層(E)
エチレン・プロピレンランダム共重合体(日本ポリプロ(株)製ノバテックFW4BT:密度=0.90g/cm3、MFR(230℃)=6.5g/10分)100重量部からなる基材層(E)用樹脂組成物を調製した。
【0034】
上吹き空冷インフレーション共押出製膜機を用いて、総厚55μmの多層積層フィルム(シール層(A)5μm/基材層(B)5μm/基材層(C)20μm/基材層(D)5μm/基材層(E)20μm)を製造した。
【0035】
シール層(A)とは反対側の基材層(E)表面にコロナ処理を施し、その表面に2液硬化型ウレタン接着剤(主剤:ポリエステルポリオール、硬化剤:脂肪族イソシアネート)を塗布し、ポリエステルフィルム2枚を積層した(最初に東洋紡(株)製二軸延伸PETフィルム[E5200](両面コロナ処理):厚さ12μmを、次いで東洋紡(株)製二軸延伸PETフィルム[E5100](片面コロナ処理):厚さ12μmを積層した)。得られた多層積層フィルムは、(シール層(A)/基材層(B〜E)/DL/ポリエステルフィルム層/DL/ポリエステルフィルム層)の構造を有する(DLは接着剤部分を意味する)。
以下実施例1と同様にして、同様の結果を得た。
【0036】
結果
上記の実施例1〜2の多層積層フィルムにおける各物性評価は下記の様に実施した。
(1)層厚:SONY(株)製μ−メータにより測定した。
(2)酸素透過度:温度23℃、湿度90%RHの条件下で、オクストラン(OXTRAN2/20、モコン(MOCON)社製、米国)の測定器を用いて測定した。
(3)シール強度:ポリプロピレン製カップへ、平シールからシール温度190℃、3kg/cm2、1秒の条件でシールした。引張試験機から15mm幅の短冊状試験片を切出し、300mm/分で引張試験を実施した。
【0037】
【表1】

【0038】
実施例1及び2の多層積層フィルムは、いずれも好適なシール強度でヒートシールされ、優れた易開封性を示した。また、いずれも、非常に低い酸素透過度を示し、したがって、優れた酸素バリア性を有していた。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の多層積層フィルムの層構成を示す断面図である。
【図2】本発明の多層積層フィルムを用いた蓋材(多層積層フィルム+包装基材)の層構成を示す断面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シール層(A)、並びにその上に順に積層された基材層(B)及び(C)を有する多層積層フィルムにおいて、シール層(A)は10〜60重量部の高密度ポリエチレンと40〜90重量部のポリプロピレンの混合物からなり、その層厚は1〜20μmであり、基材層(B)はエチレン・無水マレイン酸グラフト共重合体又はプロピレン・無水マレイン酸グラフト共重合体からなり、その層厚は1〜20μmであり、そして基材層(C)はエチレン・ビニルアルコール共重合体からなり、その層厚は5〜30μmであることを特徴とする多層積層フィルム。
【請求項2】
基材層(C)の上にさらに、基材層(D)及び(E)が順に積層された多層積層フィルムであって、基材層(D)はエチレン・無水マレイン酸グラフト共重合体又はプロピレン・無水マレイン酸グラフト共重合体からなり、その層厚は1〜20μmであり、そして基材層(E)はポリエチレン又はエチレン・プロピレン共重合体からなり、その層厚は5〜50μmである、請求項1に記載の多層積層フィルム。
【請求項3】
シール層(A)を構成するポリプロピレンがエチレン・プロピレンランダム共重合体である、請求項1又は2に記載の多層積層フィルム。
【請求項4】
シール層(A)を構成する高密度ポリエチレンのMFR(190℃)が1〜7g/10分である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の多層積層フィルム。
【請求項5】
シール層(A)を構成するポリプロピレンのMFR(230℃)が5〜30g/10分である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の多層積層フィルム。
【請求項6】
基材層(C)を構成するエチレン・ビニルアルコール共重合体のMFR(190℃)が1〜10g/10分であり、その他の基材層を構成する樹脂のMFR(230℃)が1〜20g/10分である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の多層積層フィルム。
【請求項7】
シール層(A)とは反対側の、基材層の最表面に延伸フィルムをラミネートした、請求項1〜6のいずれか1項に記載の多層積層フィルム。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の多層積層フィルムを蓋材として用いる包装容器であって、該蓋材のシール層(A)が、ポリプロピレンで形成された容器の開口部に接するように重ねられた状態でヒートシールされ、開封時に蓋材のシール層(A)が凝集破壊して開封される包装容器。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−83165(P2009−83165A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−252841(P2007−252841)
【出願日】平成19年9月28日(2007.9.28)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】