説明

易開封性缶蓋

【課題】 開口性,落下強度を損なうことなく、脈動の発生しにくい流出性のよいステイオンタブ方式の易開封性缶蓋を提供する。
【解決手段】ステイオンタブ方式の易開封性缶蓋において、リベット部3とタブ7の中心を通る線を基準線Nとし、リベット部3の中心から開口予定領域4を隔ててリベット部3と反対側のスコア5と基準線Nとの交点であるスコア先端部bまでの長さを開口部長さ(L)、基準線Nと直交する方向の最大幅を開口部幅(W)とすると、リベット部3の位置を缶蓋本体の中心Oに対して基準線Nに沿って開口予定領域4と反対側に偏芯させ、及び/又は、スコア先端部bを缶蓋本体2の周縁部であるパネル周縁部21aに近づけて、開口部長さ(L)を23mm〜28mmの範囲に、かつ開口部幅(W)を27mm以下に設定したことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、いわゆるステイオンタブ方式の易開封性缶蓋に関し、特に開口部を拡大した易開封性缶蓋に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種のステイオンタブ方式の易開封性缶蓋としては、たとえば、図4(A),(B)に示すような、開口部を広口とした易開封性缶蓋が知られている。
この開封性缶蓋101は、缶蓋本体102の中心Oに突設されたリベット部103と缶蓋本体102の周縁部との間に、開口予定領域104を画定する環状のスコア105が刻設されている。スコア105のリベット部103近傍部分は一部開いて開口予定領域104内部と外部をつなぐヒンジ部106となっており、リベット部103に固定されたタブ107の先端部107aによって開口予定領域104を押し込み、スコア105をヒンジ部106の一端から他端まで開口予定領域104の周縁に沿って破断して開口部108を形成し、破断した開口片109をヒンジ部106にて屈曲させて缶内に折り込む構造となっている。
【0003】
開口予定領域104は、リベット部103とタブ107の中心を通る線を基準線Nとすると、基準線方向の開口部長さL1はリベット部103と缶蓋本体102の周縁によって制限されるので、基準線Nと直交する方向の最大幅である開口部幅W1を拡大して開口面積の増大が図られていた。
【0004】
しかしながら、このように広口としているにも関わらず、内容液を流出する際には詰まり気味で脈動が発生し、内容液の流出性が悪い。
【0005】
そこで、広口の開口部108をさらに拡大することが考えられるが、開口部108をさらに横に拡大しようとした場合、リベット部103の位置が缶蓋本体102のセンターのままでは開口性が悪くなる。十分な開口性を得るためには、スコア105の切り込み深さをかなり深くしなければならず、それではスコア加工による亀裂等の問題が発生してしまう。その結果、現行の206径,204径では、開口部幅W1を25mm程度まで拡大するのが限界であり、脈動を解消する十分な開口面積を確保することができなかった。
【0006】
一方、本出願人は、既に、図4(C)に示すように、リベット部203を缶蓋本体202の中心Oに対して開口予定領域204と反対側に偏芯させてオフセンターとし、開口部となる開口予定領域204の開口部幅W2と開口部長さL2を広口の開口部108と相似形で拡大することで、開口部幅W2を通常の広口の開口部幅W1の限界を越えて大きくしスコア205の開口性を損なうことなく開口面積を拡大した超広口の易開封性缶蓋を提案している(特許文献1参照)。
しかし、このように超広口タイプとした場合、大きな開口面積を確保することができ、脈動を解消することができるものの、落下強度が低下するという問題があった。
【特許文献1】特開2006−131236号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記した従来技術の問題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、開口性,落下強度を損なうことなく、脈動の発生しにくい流出性のよいステイオンタブ方式の易開封性缶蓋を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、請求項1に係る発明は、缶蓋本体に突設したリベット部と缶蓋本体の周縁部との間に開口予定領域を画定する環状のスコアを刻設すると共に、該スコアのリベット部近傍部分を一部開いて開口予定領域内部と外部をつなぐヒンジ部とし、
前記リベット部に固定され先端部が開口予定領域に当接するタブによって開口予定領域を押し込んでスコアをヒンジ部の一端からヒンジ部の他端まで開口予定領域の周縁に沿って破断して開口部を形成し、破断した開口片をヒンジ部にて屈曲させて缶内に折り込む構造の易開封性缶蓋において、
前記リベット部とタブの中心を通る線を基準線とし、前記リベット部の中心から開口予定領域を隔ててリベット部と反対側のスコアと基準線との交点であるスコア先端部までの長さを開口部長さ(L)、基準線と直交する方向の最大幅を開口部幅(W)とすると、前記リベット部の位置を缶蓋本体の中心に対して基準線に沿って開口予定領域と反対側に偏芯させ、及び/又はスコア先端部を缶蓋本体の周縁部に近づけて、前記開口部長さ(L)を23mm〜28mmの範囲に、かつ開口部幅(W)を27mm以下に設定したことを特徴とする易開封性缶蓋。
上記「及び/又は」というのは、リベット部を偏芯させないでスコア先端部のみを缶蓋本体の周縁部に近づける場合、リベット部を偏芯させかつスコア先端部を缶蓋本体の周縁部に近づける場合の2つの場合を意味する。
【0009】
請求項2に係る発明は、前記開口部長さ(L)を開口部幅(W)よりも長く設定したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に係る発明によれば、リベット部を反開口予定領域側に偏芯させ、及び/又はリベット部と反対側のスコア先端部を缶蓋本体の周縁部に近づけて、開口部長さ(L)を23mm〜28mmの範囲に、かつ開口部幅(W)を27mm以下に設定したので、開口性および物理的強度を損なうことなく開口面積を拡大することができ、流出時の脈動を押さえて流出性向上を図ることができる。
また、リベット部を偏芯させた場合には、飲用する際に、上唇とタブの間に隙間が形成され、上唇が自由になって飲みやすくなるという利点もある。
【0011】
請求項2に記載のように、開口部長さLを開口部幅Wよりも長くすることで、脈動が発生しにくく最適な流量でかつ開口性が良好な易開封性缶蓋が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下に本発明を図示の実施の形態に基づいて説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係る易開封性缶蓋を示している。
図に示すように、この易開封性缶蓋1は、缶蓋本体2に突設したリベット部3と缶蓋本体2の周縁部との間に開口予定領域4を画定する環状のスコア5を刻設すると共に、スコア5のリベット部3近傍部分を一部開いて開口予定領域4の内部と外部をつなぐヒンジ部6とし、リベット部3に固定され先端部が開口予定領域に当接するタブ7によって開口予定領域4を押し込んでスコア5をヒンジ部6の一端から他端まで開口予定領域4の周縁に沿って破断して開口部8を形成し、破断した開口片9をヒンジ部6にて屈曲させて缶内に折り込む構造となっている。
【0013】
缶蓋本体2は、円板状のパネル部21と、このパネル部周縁21aから環状凹部21bを介して立ち上がる周壁部22と、この周壁部22から外側に向かって延びて不図示の缶本体に巻き締められる巻締めカール部23と、を備えた構成となっている。缶蓋本体2のパネル部21には、開口予定領域4とタブ7を取り囲むように一段低くした扇状形状の段差25が設けられている。
【0014】
タブ7は剛性のある板状部材で、タブ7の先端部71は開口予定領域4内に延びて開口予定領域4を押圧する押圧作用部として機能し、タブ7の他端はリベット部3に対して開口予定領域4と反対側に延びる指掛け部72となっている。指掛け部72は指掛け孔72aを備えたリング形状となっている。リベット部3とタブ7の中心を通る線を基準線Nとすると、押圧作用部71は基準線N上に曲率中心を有する円弧形状に成形されている。
【0015】
スコア5は、主スコア51と主スコア51の内側に所定間隔でもって並行して形成される補助スコア52とを備えた二重構造で、前記リベット部3とタブ7の中心を通る線を基準線Nとすると、図2に示すように、リベット部3近傍に位置し基準線Nを横切るように設けられる初期破断部5Aと、初期破断部5Aの右端から開口予定領域4の周縁に沿って図中時計回り方向に延びるせん断破断部5Bとによって構成され、せん断破断部5Bの終端と初期破断部5Aの左端との間がヒンジ部6となっている。初期破断部5Aは中央部がリベット部3を迂回するように屈曲している。
【0016】
開口予定領域4の基準線Nと直交方向の最大幅である開口部幅Wは、開口性と物理的強度を考慮して選択されるもので、27mm以下、特に24mm程度が好適である。この開口部幅Wは、図4(A)に示した広口の易開封性缶蓋の開口部幅W1と同等である。開口部幅Wが17mmより小さくなるとスコアを開口できなくなることが経験的に知られており、開口部幅Wの下限は17mm程度である。
【0017】
一方、開口予定領域4の基準線N方向の長さである開口部長さ(L)は開口部幅(W)よりも長く設定されている。開口部長さ(L)は、図2に示すように、リベット部3の中心から開口予定領域4を隔ててリベット部3と反対側のスコア先端部b(せん断破断部5Bと基準線Nとの交点)までの距離によって規定される。図示例では、リベット部3の位置を缶蓋本体2の中心Oに対して基準線Nに沿って開口予定領域4と反対側に偏芯させ、及び/又は、図1に示すようにスコア先端部bを缶蓋本体2の周縁部であるパネル周縁部21aに近づけて開口部長さ(L)を可及的に長くしている。パネル周縁部21aは、パネル部21と環状凹部21bとの角部アールの起点位置とする。
偏芯量Xは、蓋の径サイズ、求める開口部の大きさ、タブの長さ等により決定されるもので、206径の缶蓋では、5.5mm程度まで偏芯させることが可能である。偏芯量Xが5.5mmを越えると、タブ7が周縁部に近付き、開口機構上問題がある。指掛かり性を考慮すると、偏芯量Xの好適長さは2〜3mmである。
また、スコア先端部bとパネル周縁部21aまでの距離は、2.5mm程度まで近づけることが可能であり、開口部長さ(L)としては、23mm〜28mmの範囲とすることが好適である。
204径の缶蓋では、偏芯量Xは、4.4mm程度まで偏芯させることが可能である。また、スコア先端部bとパネル周縁部21aまでの距離は、206径と同様に、2.5mm程度まで近づけることが可能であり、開口部長さ(L)としては、23mm〜26mmの範囲とすることが好適である。
また、スコア5の残厚は、缶蓋本体2の材質、直径、肉厚等によって適宜設定されるが、基本的には、図4(A)に示した従来の広口の缶蓋の場合と同等である。
【0018】
本実施の形態の易開封性缶蓋によれば、開口部長さ(L)を23mm〜28mmの範囲に、かつ開口部幅(W)を27mm以下に設定したので、開口性および物理的強度を損なうことなく開口面積を拡大することができ、流出時の脈動を押さえて流出性向上を図ることができる。特に、開口部長さLを開口部幅Wよりも長くすることで、脈動が発生しにくくなり、最適な流量で開口性が良好な易開封性缶蓋が得られる。
また、リベット部3を偏芯させているので、飲用する際に、上唇とタブ7の間に隙間が形成され、上唇が自由になって飲みやすい。
【0019】
表1,表2及び図3には、206径で材質がアルミニウム合金である本発明の缶蓋サンプルT−6と、比較例として図4(A)に示した同径,同材質の従来の通常の広口タイプの缶蓋サンプルT−0、図4(C)に示した同径,同材質の超広口タイプの缶蓋サンプルT−1についての流出量・残液量測定結果を示している。
各缶蓋サンプルの、開口部幅,開口部長さ、開口面積は次の通りである。
本発明の缶蓋サンプルT−6は、開口部幅Wが24mm、リベット部3の偏芯量Xが2.4mmで開口部長さLが25mm、開口面積が477mm2 である。
【0020】
広口タイプの缶蓋サンプルT−0は、開口幅W1が24mm、リベット部の偏芯量が0、開口部長さL1が20mm、開口面積が371mm2である。
超広口の缶蓋サンプルT−1は、開口部幅W2が31mm、リベット部の偏芯量が2.4mmで開口部長さL2が25mm、開口面積は630mm2ある。
評価試験は、各缶蓋サンプルを装着した容量350mlの試験容器を傾けてその流量を検出するもので、70°に傾けた場合(内容量半分程度で、飲用(注ぎ動作)を止めた状況)、120°傾けた場合(最後まで飲用した(注いだ)状況)について評価した。初期速度は40[deg/sec]、保持時間は10秒である。
【0021】
保持角度70°の評価試験1では、本発明の缶蓋サンプルT−6は、最大流量で9.65[ml/0.125sec]と、超広口の缶蓋サンプルT−1ほどではないが、広口タイプの缶蓋サンプルT−0に比べて1.75倍程度まで増大し、脈動も認められなかった(表1,図3(A)乃至(C)参照)。缶内残液量、蓋上残液量も、広口タイプの缶蓋サンプルT−0よりも減少した(表1参照)。
【0022】
また、保持角度120°の評価試験2では、本発明の缶蓋サンプルT−6は、最大流量で11.72[ml/0.125sec]と、超広口の缶蓋サンプルT−1ほどではないが、広口タイプの缶蓋サンプルT−0に比べて1.56倍程度まで増大し、脈動も認められなかった(表2,図3(D)乃至(F)参照)。缶内残液量、蓋上残液量は、超広口タイプT−1と同等レベルであり、開口部長さを長くした影響、すなわち、リベット部3の偏芯以外に、スコア先端部bの位置が、従来蓋よりもパネル周縁部21aに近くなっていることに起因している。
【0023】
次に、表3は、所定数の缶をケースに梱包した状態でケースを倒立状態で落下させるケース落下試験の結果を示している。
本願発明の開口部幅(W)が24mmの缶蓋サンプルT−6の場合、スコア残厚が下限値の場合でも110cmをクリアした。開口部幅(W)が最大径の27mmの缶蓋サンプルT−7についても、実用上支障の無いレベルである80cmをクリアした。
【0024】
一方、開口力については、本願発明の缶蓋サンプルT−6の場合、通常の広口タイプT−0の場合と同等である。
【0025】
【表1】

【0026】
【表2】

【0027】
【表3】

【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】図1(A)は本発明の実施の形態に係る易開封性缶蓋の開口前の状態の平面図、同図(B)は同図(A)の開口状態の平面図、同図(C)は同図(A)のスコア先端付近の基準線に沿った部分断面図である。
【図2】図2は図1の缶蓋のスコア形状を示す図である。
【図3】図3は本発明と従来の易開封性缶蓋の流出量・残液量測定結果を示すグラフである。
【図4】図4(A)は従来の通常の広口の易開封性缶蓋の開口状態の平面図、同図(B)は同図(A)の開口状態の平面図、同図(C)は従来の超広口タイプの易開封性缶蓋の平面図である。
【符号の説明】
【0029】
1 易開封性缶蓋
2 缶蓋本体
21 パネル部、22 周壁部、23 巻締めカール部
21a パネル周縁部(缶蓋本体の周縁部)、21b 環状凹部
3 リベット部
4 開口予定領域
5 スコア
51 主スコア、52 補助スコア
5A 初期破断部、
6 ヒンジ部
7 タブ
71 先端部、72 指掛け部、72a 指掛け孔
8 開口部
9 開口片
b スコア先端部
L 開口部長さ
W 開口部幅
N 基準線
O 缶蓋本体の中心
X リベット部の偏芯量

【特許請求の範囲】
【請求項1】
缶蓋本体に突設したリベット部と缶蓋本体の周縁部との間に開口予定領域を画定する環状のスコアを刻設すると共に、該スコアのリベット部近傍部分を一部開いて開口予定領域内部と外部をつなぐヒンジ部とし、
前記リベット部に固定され先端部が開口予定領域に当接するタブによって開口予定領域を押し込んでスコアをヒンジ部の一端からヒンジ部の他端まで開口予定領域の周縁に沿って破断して開口部を形成し、破断した開口片をヒンジ部にて屈曲させて缶内に折り込む構造の易開封性缶蓋において、
前記リベット部とタブの中心を通る線を基準線とし、前記リベット部の中心から開口予定領域を隔ててリベット部と反対側のスコアと基準線との交点であるスコア先端部までの長さを開口部長さ(L)、基準線と直交する方向の最大幅を開口部幅(W)とすると、
前記リベット部の位置を缶蓋本体の中心に対して基準線に沿って開口予定領域と反対側に偏芯させ、及び/又は前記スコア先端部を缶蓋本体の周縁部に近づけて、前記開口部長さ(L)を23mm〜28mmの範囲に、かつ開口部幅(W)を27mm以下に設定した
ことを特徴とする易開封性缶蓋。
【請求項2】
前記開口部長さ(L)を開口部幅(W)よりも長く設定したことを特徴とする請求項1に記載の易開封性缶蓋。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate