説明

星形重合体の製造方法

【課題】 本発明においては、星形重合体を製造する方法に関し、改善された方法を提供することを課題とする。
【解決手段】 本発明は、ビニル系モノマーの原子移動ラジカル重合をおこなってから、その重合終点付近で重合性の炭素―炭素二重結合を2つ以上有する化合物(イ)を添加する重合体の製造プロセスにおいて、遷移金属錯体である反応触媒(ロ)を開始剤に対して合計0.5モル当量以上、好ましくは1モル当量以上用いることを特徴とする星形ビニル系重合体の製造方法である。さらに、触媒の追加による方法も示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、星形の構造を有するビニル系重合体を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
星形重合体は、中央部から放射線状に直線上の腕となる重合体が伸びているものであり、直鎖の重合体とは異なる様々な性質を持つことが知られている。星形重合体の合成法としては、大きく分けて2種類の方法が挙げられる。1つは、中心となる化合物あるいは重合体から腕となる重合体を成長させる方法で、もう一つは、腕となる重合体をまずつくり、それを繋げて星形とする方法である。腕を繋げる方法としては、末端の官能基と反応する官能基を複数持つ化合物と反応させる方法と、重合性基を複数持つ化合物を腕の重合後に添加する方法が挙げられる。
【0003】
このような星形重合体を構成する重合体としては、ホモポリマー、コポリマーともにあり、その種類としては、ポリスチレン、ポリ(メタ)アクリレート、ポリジエン、ポリエーテル、ポリエステル、ポリシロキサン等様々なものがある。制御された星形構造を得る場合、どの方法で製造する場合でも、重合が制御されている必要があるため、アニオン重合、リビングカチオン重合あるいは縮重合が多く用いられる。
【0004】
上に例示した、イオン重合や縮重合で得られる重合体の一方で、ラジカル重合で得られるビニル系重合体で星形の構造を有するものは、まだほとんど実用化されていない。中でも、重合成長末端を結合することにより、鎖延長あるいは星形構造を構築する方法は、成功していない。ビニル系重合体の中でも、(メタ)アクリル系重合体は、高い耐候性、透明性等、上記のポリエーテル系重合体や炭化水素系重合体、あるいはポリエステル系重合体では得られない特性を有しており、アルケニル基や架橋性シリル基を側鎖に有するものは高耐候性の塗料等に利用されている。その一方で、アクリル系重合体の重合制御は、その副反応のために容易でなく、重合後の鎖延長あるいは星形構造の構築などは非常に困難である。
【0005】
最近、発明者らは、リビングラジカル重合においてビニル系モノマーを重合し、重合終点において、重合性の炭素−炭素二重結合を2つ以上有する化合物(イ)を添加することにより、鎖延長された重合体あるいは、星形重合体を製造する方法を見出した。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明においては、上記の星形重合体を製造する方法に関し、改善された方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、ビニル系モノマーの原子移動ラジカル重合の重合終点付近で、重合性の炭素−炭素二重結合を2つ以上有する化合物(イ)を加える重合体の製造プロセスにおいて、遷移金属触媒(ロ)を開始剤に対して合計0.5モル当量以上、好ましくは1モル当量以上用いることを特徴とする星形ビニル系重合体の製造方法である。
【0008】
発明者らは、ビニル系モノマーの原子移動ラジカル重合の重合終点付近で、重合性の炭素−炭素二重結合を2つ以上有する化合物(イ)を添加することにより星形ビニル系重合体を製造する方法においては、触媒量が重要であることを見出した。
【0009】
原子移動ラジカル重合においては、その触媒量をその生長末端と比べて少ない量(いわゆる触媒量)とした場合でも、重合反応が進行する。すなわち、生長末端よりも少ない触媒量でも、重合を制御することが可能である。しかし、その生長末端のラジカル同士がカップリングすると、触媒はそのカップリングした分だけ高酸化数の錯体となり、重合反応を減速させるようになる。通常の原子移動ラジカル重合系では、ラジカル−ラジカルカップリング反応はあまり発生しないためにあまり問題ではないが、本発明の星形重合体の製造においては、生長末端が束ねられることによりお互いに近づきカップリング反応が発生しやすくなる。そのため、触媒量が生長末端に対し、ある程度以上必要となる。
【0010】
一方、触媒量を増加させると、重合速度が高まり、発熱が大きくなるなどして、重合の制御が困難になる傾向がある。この問題を解決して、本発明の課題を達成するために、重合性の炭素−炭素二重結合を2つ以上有する化合物(イ)を加えた後に、追加の触媒(ニ)として、0価の銅、遷移金属化合物、又は、遷移金属錯体を加えることが好ましい。また、追加の触媒(ニ)の金属は、それまでビニル系モノマーの重合に用いていた遷移金属化合物(ハ)の金属よりも、酸化数が小さいことがさらに好ましい。
【0011】
遷移金属化合物(ハ)、及び/又は、追加の触媒(ニ)の遷移金属は、特に限定はされないが銅、ニッケル、ルテニウム、鉄が好ましく、特に銅が好ましい。追加の触媒(ニ)は、0価の銅、又は、0価の銅の錯体であることが好ましい。
【0012】
本発明の遷移金属化合物(ハ)とは、主としてビニル系モノマーの重合反応触媒を意味し、本発明においては、重合性の炭素−炭素二重結合を2つ以上有する化合物(イ)を添加する以前に重合反応系中に加えるものである。また、本発明の追加の触媒(ニ)とは、遷移金属化合物(ハ)を用いたビニル系モノマーの重合の終点付近で重合性の炭素−炭素二重結合を2つ以上有する化合物(イ)を添加した後に、反応系中に加える触媒である。
【0013】
また本発明においては、上記遷移金属化合物(ハ)と上記追加の触媒(ニ)との両方を含むものとして、遷移金属触媒(ロ)という言葉を用いている。本発明における遷移金属触媒(ロ)、遷移金属化合物(ハ)、追加の触媒(ニ)は、それぞれ同じ化合物であっても異なっていてもよい。
【0014】
本発明において、重合性の炭素−炭素二重結合を2つ以上有する化合物(イ)は、一般式1、2あるいは3から選ばれる化学式によって示される化合物であることが好ましい。
【0015】
【化1】

(上の式中、RはPh、CN、CO(Rは一価の有機基)から選ばれる基であり、且つ、Rは二価以上の有機基であり、nは2以上の整数である。)
【0016】
【化2】

(上の式中、RはH、Me、炭素数1から20の有機基から選ばれる基であり、且つ、Rは二置換以上のベンゼン基、ナフタレン基であり、nは2以上の整数である。)
【0017】
【化3】

(上の式中、RはH、Me、CN、炭素数1から20の有機基から選ばれる基であり、且つ、Rは二価以上の有機基であり、nは2以上の整数である。)これらの中でも、ジビニルベンゼンあるいはジイソプロペニルベンゼンが好ましい。
【0018】
本発明のビニル系モノマーは、特に限定はされないが、(メタ)アクリル系モノマー、アクリロニトリル系モノマー、芳香族ビニル系モノマー、フッ素含有ビニル系モノマー及びケイ素含有ビニル系モノマーであることが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、様々なラジカル重合性の単量体から、容易に構造を制御した星形構造を有する重合体を得る方法において、これまでの方法より反応をよりよく制御することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明は、ビニル系モノマーの原子移動ラジカル重合の重合終点付近で、重合性の炭素−炭素二重結合を2つ以上有する化合物(イ)を加える重合体の製造プロセスにおいて、遷移金属触媒(ロ)を開始剤に対して合計0.5モル当量以上用いることを特徴とする星形ビニル系重合体の製造方法に関する。
<モノマー>
本発明の重合に用いられるモノマーとしては特に限定されず、各種のものを用いることができる。例示するならば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸−n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸−n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸−tert−ブチル、(メタ)アクリル酸−n−ペンチル、(メタ)アクリル酸−n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸−n−ヘプチル、(メタ)アクリル酸−n−オクチル、(メタ)アクリル酸−2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸トルイル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸−2−メトキシエチル、(メタ)アクリル酸−3−メトキシブチル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸2−アミノエチル、γ−(メタクリロイルオキシプロピル)トリメトキシシラン、(メタ)アクリル酸のエチレンオキサイド付加物、(メタ)アクリル酸トリフルオロメチルメチル、(メタ)アクリル酸2−トリフルオロメチルエチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロエチルエチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロエチル−2−パーフルオロブチルエチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロエチル、(メタ)アクリル酸パーフルオロメチル、(メタ)アクリル酸ジパーフルオロメチルメチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロメチル−2−パーフルオロエチルメチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロヘキシルエチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロデシルエチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロヘキサデシルエチル等の(メタ)アクリル酸系モノマー;スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、クロルスチレン、スチレンスルホン酸及びその塩等のスチレン系モノマー;パーフルオロエチレン、パーフルオロプロピレン、フッ化ビニリデン等のフッ素含有ビニルモノマー;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等のケイ素含有ビニル系モノマー;無水マレイン酸、マレイン酸、マレイン酸のモノアルキルエステル及びジアルキルエステル;フマル酸、フマル酸のモノアルキルエステル及びジアルキルエステル;マレイミド、メチルマレイミド、エチルマレイミド、プロピルマレイミド、ブチルマレイミド、ヘキシルマレイミド、オクチルマレイミド、ドデシルマレイミド、ステアリルマレイミド、フェニルマレイミド、シクロヘキシルマレイミド等のマレイミド系モノマー;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のニトリル基含有ビニル系モノマー;アクリルアミド、メタクリルアミド等のアミド基含有ビニル系モノマー;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、安息香酸ビニル、桂皮酸ビニル等のビニルエステル類;エチレン、プロピレン等のアルケン類;ブタジエン、イソプレン等の共役ジエン類;塩化ビニル、塩化ビニリデン、塩化アリル、アリルアルコール等が挙げられる。 これらは、単独で用いても良いし、複数を共重合させても構わない。共重合させる場合は、ランダム共重合でもブロック共重合でも構わないが、ブロック共重合が好ましい。なかでも、生成物の物性等から、(メタ)アクリル系モノマー、アクリロニトリル系単量体、芳香族ビニル系モノマー、フッ素含有ビニル系モノマー及びケイ素含有ビニル系モノマーが好ましい。より好ましくは、アクリル酸エステル系単量体及びメタクリル酸エステル系単量体であり、更に好ましくは、アクリル酸ブチルである。本発明においては、これらの好ましいモノマーを他のモノマーと共重合させても構わなく、その際は、これらの好ましいモノマーが重量比で40%含まれていることが好ましい。なお上記表現形式で例えば(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸および/あるいはメタクリル酸を表す。
<原子移動ラジカル重合>
以下に本発明において用いられる原子移動ラジカル重合について説明する。
【0021】
リビングラジカル重合は、重合末端の活性が失われることなく維持されるラジカル重合である。リビング重合とは狭義においては、末端が常に活性を持ち続ける重合のことを示すが、一般には、末端が不活性化されたものと活性化されたものが平衡状態にある擬リビング重合も含まれる。本発明における定義も後者である。リビングラジカル重合は近年様々なグループで積極的に研究がなされている。その例としては、コバルトポルフィリン錯体(J.Am.Chem.Soc.1994、116、7943)やニトロキシド化合物などのラジカル捕捉剤を用いるもの(Macromolecules、1994、27、7228)、有機ハロゲン化物等を開始剤とし遷移金属錯体を触媒とする原子移動ラジカル重合(Atom Transfer Radical Polymerization)などがあげられる。原子移動ラジカル重合は、有機ハロゲン化物、またはハロゲン化スルホニル化合物等を開始剤、遷移金属を中心金属とする金属錯体を触媒として重合される。具体的には、Matyjaszewskiらの文献、J.Am.Chem.Soc.1995,117,5614,Macromolecules 1995,28,7901,Science 1996,272,866;あるいはSawamotoらの文献、Macromolecules 1995,28,1721、国際公開特許WO96/30421及びWO97/18247等が挙げられる。これらの方法によると一般的に非常に重合速度が高く、ラジカル同士のカップリングなどの停止反応が起こりやすいラジカル重合でありながら、重合がリビング的に進行し、分子量分布の狭い(すなわちMw/Mn値が1.1〜1.5程度である)重合体が得られ、分子量はモノマーと開始剤の仕込み比によって自由にコントロールすることができる。
【0022】
この原子移動ラジカル重合では、有機ハロゲン化物、特に、反応性の高い炭素−ハロゲン結合を有する有機ハロゲン化物(例えば、α位にハロゲンを有するエステル化合物や、ベンジル位にハロゲンを有する化合物)、あるいはハロゲン化スルホニル化合物を開始剤として用いることが好ましい。上記リビングラジカル重合の触媒として用いられる遷移金属化合物としては特に限定されず、好ましいものとして、遷移金属が7、8、9、10、11族の遷移金属化合物が、さらに好ましいものとして、遷移金属が0価の銅、1価の銅、2価のルテニウム、2価の鉄又は2価のニッケルの化合物が挙げられる。なかでも、銅の化合物が好ましい。1価の銅化合物を具体的に例示するならば、塩化第一銅、臭化第一銅、ヨウ化第一銅、シアン化第一銅、酸化第一銅、過塩素酸第一銅等である。銅化合物を用いる場合、触媒活性を高めるために2,2′−ビピリジル及びその誘導体、1,10−フェナントロリン及びその誘導体、テトラメチルエチレンジアミン、ペンタメチルジエチレントリアミン、ヘキサメチルトリス(2−アミノエチル)アミン等のポリアミン等の配位子が添加される。また、2価の塩化ルテニウムのトリストリフェニルホスフィン錯体(RuCl(PPh)も触媒として好適である。ルテニウム化合物を触媒として用いる場合は、活性化剤としてアルミニウムアルコキシド類が添加される。更に、2価の鉄のビストリフェニルホスフィン錯体(FeCl(PPh)、2価のニッケルのビストリフェニルホスフィン錯体(NiCl(PPh)、及び、2価のニッケルのビストリブチルホスフィン錯体(NiBr(PBu)も、触媒として好適である。
【0023】
原子移動ラジカル重合では、限定はされないが、開始剤として、有機ハロゲン化物(例えば、α位にハロゲンを有するエステル化合物や、ベンジル位にハロゲンを有する化合物)又はハロゲン化スルホニル化合物等を用いる。具体的に例示するならば、
−CHX、C−C(H)(X)CH、C−C(X)(CH
(ただし、上の化学式中、Cはフェニル基、Xは塩素、臭素、またはヨウ素)
−C(H)(X)−CO、R−C(CH)(X)−CO、R−C(H)(X)−C(O)R、R−C(CH)(X)−C(O)R
(式中、R及びRは、同一若しくは異なって、水素原子または炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、または炭素数7〜20のアラルキル基、Xは塩素、臭素、またはヨウ素)
−C−SOX、
(上記の各式において、R水素原子または炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、または炭素数7〜20のアラルキル基、Xは塩素、臭素、またはヨウ素)
等が挙げられる。
【0024】
原子移動ラジカル重合では、しばしば開始部位を2つ以上持った開始剤が用いられるが、本発明においては、1官能の開始剤が好ましい。
【0025】
原子移動ラジカル重合の開始剤として、重合を開始する官能基以外の官能基を有する有機ハロゲン化物又はハロゲン化スルホニル化合物を用いることもできる。このような場合、主鎖末端に官能基を有するビニル系重合体が製造され、本発明の方法によりこれをカップリングさせることにより、末端に官能基を持った重合体が得られる。このような官能基としては、アルケニル基、架橋性シリル基、ヒドロキシル基、エポキシ基、アミノ基、アミド基等が挙げられる。架橋性シリル基を有する開始剤を用いると、本発明の末端に架橋性シリル基を有する星形重合体が容易に得られる。また、その他の官能基を有する開始剤を用いてそれらの官能基を末端に有する星形重合体を製造し、その後、あとで述べる方法により架橋性シリル基に変換する方法もある。
【0026】
アルケニル基を有する有機ハロゲン化物としては限定されず、例えば、一般式6に示す構造を有するものが例示される。
1112C(X)−R13−R14−C(R10)=CH(6)
(式中、R10は水素、またはメチル基、R11、R12は水素、または、炭素数1〜20の1価のアルキル基、アリール基、またはアラルキル、または他端において相互に連結したもの、R13は、−C(O)O−(エステル基)、−C(O)−(ケト基)、またはo−,m−,p−フェニレン基、R14は直接結合、または炭素数1〜20の2価の有機基で1個以上のエーテル結合を含んでいても良い、Xは塩素、臭素、またはヨウ素)
置換基R11、R12の具体例としては、水素、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等が挙げられる。R11とR12は他端において連結して環状骨格を形成していてもよい。
【0027】
一般式6で示される、アルケニル基を有する有機ハロゲン化物の具体例としては、
XCHC(O)O(CHCH=CH、HCC(H)(X)C(O)O(CHCH=CH、(HC)C(X)C(O)O(CHCH=CH、CHCHC(H)(X)C(O)O(CHCH=CH
【0028】
【化4】

(上記の各式において、Xは塩素、臭素、またはヨウ素、nは0〜20の整数)
XCHC(O)O(CHO(CHCH=CH、HCC(H)(X)C(O)O(CHO(CHCH=CH、(HC)C(X)C(O)O(CHO(CHCH=CH、CHCHC(H)(X)C(O)O(CHO(CHCH=CH
【0029】
【化5】

(上記の各式において、Xは塩素、臭素、またはヨウ素、nは1〜20の整数、mは0〜20の整数)
o,m,p−XCH−C−(CH−CH=CH、o,m,p−CHC(H)(X)−C−(CH−CH=CH、o,m,p−CHCHC(H)(X)−C−(CH−CH=CH
(上記の各式において、Xは塩素、臭素、またはヨウ素、nは0〜20の整数)
o,m,p−XCH−C−(CH−O−(CH−CH=CH、o,m,p−CHC(H)(X)−C−(CH−O−(CH−CH=CH、o,m,p−CHCHC(H)(X)−C−(CH−O−(CHCH=CH
(上記の各式において、Xは塩素、臭素、またはヨウ素、nは1〜20の整数、mは0〜20の整数)
o,m,p−XCH−C−O−(CH−CH=CH、o,m,p−CHC(H)(X)−C−O−(CH−CH=CH、o,m,p−CHCHC(H)(X)−C−O−(CH−CH=CH
(上記の各式において、Xは塩素、臭素、またはヨウ素、nは0〜20の整数)
o,m,p−XCH−C−O−(CH−O−(CH−CH=CH、o,m,p−CHC(H)(X)−C−O−(CH−O−(CH−CH=CH、o,m,p−CHCHC(H)(X)−C−O−(CH−O−(CH−CH=CH
(上記の各式において、Xは塩素、臭素、またはヨウ素、nは1〜20の整数、mは0〜20の整数)
アルケニル基を有する有機ハロゲン化物としてはさらに一般式7で示される化合物が挙げられる。
C=C(R10)−R14−C(R11)(X)−R15−R12 (7)
【0030】
(式中、R10、R11、R12、R14、Xは上記に同じ、R15は、直接結合、−C(O)O−(エステル基)、−C(O)−(ケト基)、または、o−,m−,p−フェニレン基を表す)
14は直接結合、または炭素数1〜20の2価の有機基(1個以上のエーテル結合を含んでいても良い)であるが、直接結合である場合は、ハロゲンの結合している炭素にビニル基が結合しており、ハロゲン化アリル化物である。この場合は、隣接ビニル基によって炭素−ハロゲン結合が活性化されているので、R15としてC(O)O基やフェニレン基等を有する必要は必ずしもなく、直接結合であってもよい。R14が直接結合でない場合は、炭素−ハロゲン結合を活性化するために、R15としてはC(O)O基、C(O)基、フェニレン基が好ましい。
【0031】
式7の化合物を具体的に例示するならば、
CH=CHCHX、CH=C(CH)CHX、CH=CHC(H)(X)CH、CH=C(CH)C(H)(X)CH、CH=CHC(X)(CH、CH=CHC(H)(X)C、CH=CHC(H)(X)CH(CH、CH=CHC(H)(X)C、CH=CHC(H)(X)CH、CH=CHCHC(H)(X)−COR、CH=CH(CHC(H)(X)−COR、CH=CH(CHC(H)(X)−COR、CH=CH(CHC(H)(X)−COR、CH=CHCHC(H)(X)−C、CH=CH(CHC(H)(X)−C、CH=CH(CHC(H)(X)−C
(上記の各式において、Xは塩素、臭素、またはヨウ素、Rは炭素数1〜20のアルキル基、アリール基、アラルキル基)
等を挙げることができる。
【0032】
アルケニル基を有するハロゲン化スルホニル化合物の具体例を挙げるならば、
o−,m−,p−CH=CH−(CH−C−SOX、o−,m−,p−CH=CH−(CH−O−C−SOX、
(上記の各式において、Xは塩素、臭素、またはヨウ素、nは0〜20の整数)
等である。
【0033】
上記架橋性シリル基を有する有機ハロゲン化物としては特に限定されず、例えば一般式8に示す構造を有するものが例示される。
1112C(X)−R13−R14−C(H)(R10)CH−[Si(R162−b(Y)O]−Si(R173−a(Y)(8)
(式中、R10、R11、R12、R13、R14、Xは上記に同じ、R16、R17は、いずれも炭素数1〜20のアルキル基、アリール基、アラルキル基、または(R’)SiO−(R’は炭素数1〜20の1価の炭化水素基であって、3個のR’は同一であってもよく、異なっていてもよい)で示されるトリオルガノシロキシ基を示し、R16またはR17が2個以上存在するとき、それらは同一であってもよく、異なっていてもよい。Yは水酸基または加水分解性基を示し、Yが2個以上存在するときそれらは同一であってもよく、異なっていてもよい。aは0,1,2,または3を、また、bは0,1,または2を示す。mは0〜19の整数である。ただし、a+mb≧1であることを満足するものとする)
一般式8の化合物を具体的に例示するならば、
XCHC(O)O(CHSi(OCH、CHC(H)(X)C(O)O(CHSi(OCH、(CHC(X)C(O)O(CHSi(OCH、XCHC(O)O(CHSi(CH)(OCH、CHC(H)(X)C(O)O(CHSi(CH)(OCH、(CHC(X)C(O)O(CHSi(CH)(OCH
(上記の各式において、Xは塩素、臭素、ヨウ素、nは0〜20の整数、)
XCHC(O)O(CHO(CHSi(OCH、HCC(H)(X)C(O)O(CHO(CHSi(OCH、(HC)C(X)C(O)O(CHO(CHSi(OCH、CHCHC(H)(X)C(O)O(CHO(CHSi(OCH、XCHC(O)O(CHO(CHSi(CH)(OCH、HCC(H)(X)C(O)O(CHO(CH−Si(CH)(OCH、(HC)C(X)C(O)O(CHO(CH−Si(CH)(OCH、CHCHC(H)(X)C(O)O(CHO(CH−Si(CH)(OCH
(上記の各式において、Xは塩素、臭素、ヨウ素、nは1〜20の整数、mは0〜20の整数)
o,m,p−XCH−C−(CHSi(OCH、o,m,p−CHC(H)(X)−C−(CHSi(OCH、o,m,p−CHCHC(H)(X)−C−(CHSi(OCH、o,m,p−XCH−C−(CHSi(OCH、o,m,p−CHC(H)(X)−C−(CHSi(OCH、o,m,p−CHCHC(H)(X)−C−(CHSi(OCH、o,m,p−XCH−C−(CH−O−(CHSi(OCH、o,m,p−CHC(H)(X)−C−(CH−O−(CHSi(OCH、o,m,p−CHCHC(H)(X)−C−(CH−O−(CHSi(OCH、o,m,p−XCH−C−O−(CHSi(OCH、o,m,p−CHC(H)(X)−C−O−(CHSi(OCH、o,m,p−CHCHC(H)(X)−C−O−(CH−Si(OCH、o,m,p−XCH−C−O−(CH−O−(CH−Si(OCH、o,m,p−CHC(H)(X)−C−O−(CH−O−(CHSi(OCH、o,m,p−CHCHC(H)(X)−C−O−(CH−O−(CHSi(OCH
(上記の各式において、Xは塩素、臭素、またはヨウ素)
等が挙げられる。
【0034】
上記架橋性シリル基を有する有機ハロゲン化物としてはさらに、一般式9で示される構造を有するものが例示される。
(R173−a(Y)Si−[OSi(R162−b(Y)−CH−C(H)(R10)−R14−C(R11)(X)−R15−R12 (9)
(式中、R10、R11、R12、R14、R15、R16、R17、a、b、m、X、Yは上記に同じ)
このような化合物を具体的に例示するならば、
(CHO)SiCHCHC(H)(X)C、(CHO)(CH)SiCHCHC(H)(X)C、(CHO)Si(CHC(H)(X)−COR、(CHO)(CH)Si(CHC(H)(X)−COR、(CHO)Si(CHC(H)(X)−COR、(CHO)(CH)Si(CHC(H)(X)−COR、(CHO)Si(CHC(H)(X)−COR、(CHO)(CH)Si(CHC(H)(X)−COR、(CHO)Si(CHC(H)(X)−COR、(CHO)(CH)Si(CHC(H)(X)−COR、(CHO)Si(CHC(H)(X)−C、(CHO)(CH)Si(CHC(H)(X)−C、(CHO)Si(CHC(H)(X)−C、(CHO)(CH)Si(CHC(H)(X)−C
(上記の各式において、Xは塩素、臭素、またはヨウ素、Rは炭素数1〜20のアルキル基、アリール基、アラルキル基)
等が挙げられる。
【0035】
上記ヒドロキシル基を持つ有機ハロゲン化物、またはハロゲン化スルホニル化合物としては特に限定されず、下記のようなものが例示される。
HO−(CH−OC(O)C(H)(R)(X)
(上記の各式において、Xは塩素、臭素、またはヨウ素、Rは水素原子または炭素数1〜20のアルキル基、アリール基、アラルキル基、nは1〜20の整数)
上記アミノ基を持つ有機ハロゲン化物、またはハロゲン化スルホニル化合物としては特に限定されず、下記のようなものが例示される。
N−(CH−OC(O)C(H)(R)(X)
(上記の各式において、Xは塩素、臭素、またはヨウ素、Rは水素原子または炭素数1〜20のアルキル基、アリール基、アラルキル基、nは1〜20の整数)
上記エポキシ基を持つ有機ハロゲン化物、またはハロゲン化スルホニル化合物としては特に限定されず、下記のようなものが例示される。
【0036】
【化6】

(上記の各式において、Xは塩素、臭素、またはヨウ素、Rは水素原子または炭素数1〜20のアルキル基、アリール基、アラルキル基、nは1〜20の整数)
本発明のリビングラジカル重合は無溶剤または各種の溶剤中で行うことができる。上記溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン等の炭化水素系溶媒;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジフェニルエーテル、アニソール、ジメトキシベンゼン等のエーテル系溶媒;塩化メチレン、クロロホルム、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒;メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、n−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール等のアルコール系溶媒;アセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒;エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等のカーボネート系溶媒等が挙げられる。これらは、単独又は2種以上を混合して用いることができる。また、エマルジョン系もしくは超臨界流体COを媒体とする系においても重合を行うことができる。
【0037】
また、本発明の重合は、特に限定はされないが、0℃〜200℃の範囲で行うことができ、好ましくは室温〜150℃である。
<星形重合体の合成>
このような原子移動ラジカル重合の終点付近において、重合性の炭素−炭素二重結合を2つ以上有する化合物(イ)を添加すると、カップリング反応が起こり、星形構造を持つ重合体が生成する。重合の終点付近とは、単量体の好ましくは80%以上が反応した時点、さらに好ましくは90%以上が反応した時点、特に好ましくは95%以上が反応した時点、最も好ましくは99%以上が反応した時点である。
【0038】
重合性の炭素−炭素二重結合を2つ以上有する化合物(イ)としては、限定はされないが、一般式1、2、3に示される化合物から選ばれる。
【0039】
【化7】

(上の式中、RはPh、CN、CO(Rは一価の有機基)から選ばれる基であり、且つ、Rは二価以上の有機基であり、nは2以上の整数である。)
【0040】
【化8】

(上の式中、RはH、Me、炭素数1から20の有機基から選ばれる基であり、且つ、Rは二置換以上のベンゼン基、ナフタレン基であり、nは2以上の整数である。)
【0041】
【化9】

(上の式中、RはH、Me、CN、炭素数1から20の有機基から選ばれる基であり、且つ、Rは二価以上の有機基であり、nは2以上の整数である。)
上記各式において、R、R及びRで表される一価の有機基としては、特に限定されないが、以下のものが例示される。
−(CH−CH、−CH(CH)−(CH−CH、−CH(CHCH)−(CH−CH、−CH(CHCH、−C(CH−(CH−CH、−C(CH)(CHCH)−(CH−CH、−C、−C(CH)、−C(CH、−(CH−C、−(CH−C(CH)、−(CH−C(CH
(nは0以上の整数で、各基の合計炭素数は20以下)
上記各式において、R及びRは、二価以上の有機基であり、限定はされないが、以下のようなものが例示される。
−(CH−(nは、1〜20の整数を表す。);−CH(CH)−、−CH(CHCH)−、−C(CH−、−C(CH)(CHCH)−、−C(CHCH−、−CHCH(CH)−;−(CH−O−CH−(nは、1〜19の整数を表す。);−CH(CH)−O−CH−、−CH(CHCH)−O−CH−、−C(CH−O−CH−、−C(CH)(CHCH)−O−CH−、−C(CHCH−O−CH−、−(CH−OC(O)−;−(CH−OC(O)−(CH−(m及びnは、同一又は異なって、0〜19の整数を表す。ただし、0≦m+n≦19を満たす。);−(CH−C(O)O−(CH−(m及びnは、同一又は異なって、0〜19の整数を表す。ただし、0≦m+n≦19を満たす。);−CH−C(O)O−(CH−O−CH−、−CH(CH)−C(O)O−(CH−O−CH−、等が挙げられる。
【0042】
また、R及びRは、ベンゼン環を含んでいてもよい。この場合の具体例としては、o−,m−,p−C−、o−,m−,p−C−CH−、o−,m−,p−C−O−CH−、o−,m−,p−C−O−CH(CH)−、o−,m−,p−C−O−C(CH−;o−,m−,p−C−(CH−(nは、0〜14の整数を表す。);o−,m−,p−C−O−(CH)n−(nは、0〜14の整数を表す。);o−,m−,p−CH−C−、o−,m−,p−CH−C−CH−、o−,m−,p−CH−C−O−CH−、o−,m−,p−CH−C−O−CH(CH)−;o−,m−,p−CH−C−O−C(CH−;o−,m−,p−CH−C−(CH−(nは、0〜13の整数を表す。);o−,m−,p−CH−C−O−(CH−(nは、0〜13の整数を表す。);o−,m−,p−C(O)−C−C(O)O−(CH−(nは、0〜12の整数を表す。)等が挙げられる。
【0043】
上記化合物を具体的に例示するならば、特に限定はされないが、1,3−ジビニルベンゼン、1,4−ジビニルベンゼン、1,2−ジイソプロペニルベンゼン、1,3−ジイソプロペニルベンゼン、1,4−ジイソプロペニルベンゼン、1,3−ジビニルナフタレン、1,8−ジビニルナフタレン、2,4−ジビニルビフェニル、1,2−ジビニル−3,4−ジメチルベンゼン、1,3−ジビニル−4,5,8−トリブチルナフタレン、2,2′−ジビニル−4−エチル−4′−プロピルビフェニル等のポリビニル芳香族化合物、エチレングリコールジメタクリレート、エチレングリコールジアクリレート等のポリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの内では、ポリビニル芳香族化合物が好ましく、さらにジビニルベンゼンが好ましい。
【0044】
重合性のアルケニル基を2つ以上持つ化合物を添加する量は、特に限定はされないが、好ましくはそのオレフィンの数が、腕となる重合体の成長末端の数と同数以上である。少ない場合は、カップリングされない重合体が多量に残存してしまうことがある。さらに好ましくは、重合性のアルケニル基を2つ以上持つ化合物を添加する量は、特に限定はされないが、そのオレフィンの数が、腕となる重合体の成長末端の数の20倍以下、より好ましくは10倍以下、特に好ましくは5倍以下である。
【0045】
このカップリング剤添加後の反応条件は、特に限定はされないが、腕となる重合体の重合条件と同じで構わない。
<触媒量>
本発明は、ビニル系モノマーの原子移動ラジカル重合の重合終点付近で、重合性の炭素−炭素二重結合を2つ以上有する化合物(イ)を加える重合体の製造プロセスにおいて、遷移金属触媒(ロ)を開始剤に対して合計0.5モル当量以上、更に好ましくは0.7当量以上、より好ましくは1モル当量以上用いることを特徴とする星形ビニル系重合体の製造方法である。
【0046】
発明者らは、ビニル系モノマーの原子移動ラジカル重合をおこなってから、その重合終点付近で重合性の炭素−炭素二重結合を2つ以上有する化合物(イ)を添加する重合体の製造プロセスにおいては、触媒量が重要であることを見出した。
【0047】
原子移動ラジカル重合においては、その遷移金属化合物(ハ)の量をその生長末端と比べて少ない量(いわゆる触媒量)とした場合でも、重合反応が進行する。すなわち、生長末端よりも少ない触媒量でも、重合を制御することが可能である。しかし、その生長末端のラジカル同士がカップリングすると、遷移金属化合物(ハ)の金属はそのカップリングした分だけ高酸化数となり、重合反応を減速させるようになる。通常の原子移動ラジカル重合系では、ラジカル−ラジカルカップリング反応はあまり発生しないためにあまり問題ではないが、本発明の星形重合体の製造においては、生長末端が束ねられることによりお互いに近づきカップリング反応が発生しやすくなる。そのため、触媒量が生長末端に対し、ある程度以上必要となると考えられる。
【0048】
本発明において用いられる遷移金属触媒(ロ)及び/又は遷移金属化合物(ハ)及び/又は追加の触媒(ニ)は、原子移動ラジカル重合の説明の項で既に開示したものを好適に用いることができる。
【0049】
一方、遷移金属化合物(ハ)量を増加させると、重合速度が高まり、発熱が大きくなるなどして、重合の制御が困難になりがちである。この問題を解決して、本発明の課題を達成するために、重合性の炭素−炭素二重結合を2つ以上有する化合物(イ)を加えた後に、追加の触媒(ニ)として、0価の銅、遷移金属化合物、又は、遷移金属錯体を加えることが好ましい。追加の触媒(ニ)は、それまでビニル系モノマーの重合に用いていた遷移金属化合物(ハ)と同じ化合物であっても構わないが、より金属の酸化数が小さいことがさらに好ましい。
【0050】
遷移金属化合物(ハ)、及び/又は、追加の触媒(ニ)の遷移金属は、特に限定はされないが銅、ニッケル、ルテニウム、鉄が好ましく、特に銅が好ましい。
【0051】
追加の触媒(ニ)は、0価の銅、又は、0価の銅の錯体であることがさらに好ましい。
【0052】
本発明においては、追加の触媒(ニ)として0価の銅、遷移金属化合物、又は、遷移金属錯体そのものを添加しても構わないし、遷移金属化合物(ハ)の配位子となる化合物(ホ)だけを追加する方法をとっても構わない(これは本発明者らが発明した方法である)。これは、重合系中に必要量の遷移金属化合物(ハ)を最初から添加しておき、その金属と錯体を形成し触媒活性を生み出すことのできる配位子を後から必要に応じて添加する方法である。遷移金属化合物(ハ)の配位子となる化合物(ホ)には特に限定はないが、例えばヘキサメチルジエチレントリアミン等のアミン系の配位子が好ましい。具体的には、例えばあらかじめ重合系中に添加しておいたCuBr中に、ヘキサメチルジエチレントリアミンを添加していく方法等により、このトリアミンの添加量に応じた触媒活性を発現することができる。
【0053】
また、遷移金属化合物(ハ)の配位子となる化合物(ホ)としては、例えば2,2′−ビピリジル及びその誘導体、1,10−フェナントロリン及びその誘導体、テトラメチルエチレンジアミン、ペンタメチルジエチレントリアミン、ヘキサメチルトリス(2−アミノエチル)アミン等のポリアミン等が好ましい。
<生成物>
本発明の方法により製造された星形重合体は、限定はされないが、分子量分布、すなわち、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定した重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)が狭いという特徴も有する。分子量分布の値は好ましくは、3以下であり、更に好ましくは2以下であり、より好ましくは1.8以下であり、特に好ましくは1.6以下であり、特別に好ましくは1.4以下であり、最も好ましくは1.3以下である。本発明でのGPC測定においては、特に限定はされないが、通常、移動相としてクロロホルムを用い、測定はポリスチレンゲルカラムにて行う。数平均分子量等は、ポリスチレン換算で求めることができる。星形重合体のGPCで測定した分子量は一般に真の分子量よりも低く出ることが知られている。
<用途>
本発明において製造された重合体は、限定はされないが、潤滑油組成物等に使用され得る。また、末端に官能基をもつ重合体の場合、そのヒドロキシル基、架橋性シリル基、あるいは、アルケニル基などの官能基をそのまま利用する、あるいは架橋性シリル基などの他の官能基に変換して架橋反応を起こすことにより、エラストマーにすることができる。この具体的な用途を挙げるならば、シーリング材、接着剤、粘着材、弾性接着剤、塗料、粉体塗料、発泡体、電気電子用ポッティング材、フィルム、ガスケット、各種成形材料、人工大理石等である。
【実施例】
【0054】
以下に、この発明の具体的な実施例を示すが、この発明は、下記実施例に限定されるものではない。
【0055】
実施例1
100mLのガラス反応容器に、2ーブロモプロピオン酸メチル(0.97mL、1.46g、8.72mmol)を開始剤、臭化第一銅(1.00g、6.98mmol)を遷移金属化合物(ハ)、ペンタメチルジエチレントリアミン(0.12mL、0.56mmol)を配位子として、アクリル酸ブチル(50.0mL、44.7g、0.35mol)を、アセトニトリル(5mL)存在下、70℃で重合した。90分後に重合率が98%の時点で、ジビニルベンゼン(1.86mL、13.1mmol)を添加し、重合を継続しながら、逐次サンプリングを行った。390分後にペンタメチルジエチレントリアミン(0.40mL、1.92mmol)を追加し540分後にサンプリングし、更にペンタメチルジエチレントリアミン(0.80mL、3.83mmol)を追加し、720分後に反応を停止した。図1に重合系からのサンプリング物のGPC分析の経時変化を示す。ジビニルベンゼン添加前の直鎖重合体は数平均分子量Mn=6000、分子量分布Mw/Mn=1.38で、ジビニルベンゼンを添加しただけでは、あまり分子量の上昇は見られず、390分後でもMn=6200で単分散であった。ペンタメチルジエチレントリアミン追加後は、星形重合体の生成が確認され、540分後にMn=11000で2峰性になり、最終的には数平均分子量33000、分子量分布1.6の単峰性になった。ほぼ全ての直鎖重合体が星型重合体となり、しかも、生成した星形重合体は単分散で分子量分布が非常に狭いことが解る。この結果より、制御された星形重合体の合成には、触媒量が重要であり、さらに、腕部の重合の制御を勘案すると、ジビニルベンゼン添加後の化合物(ホ)の追加が好ましいことが明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】実施例1の方法で得られた星型重合体のGPCチャート(経時変化)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビニル系モノマーの原子移動ラジカル重合の重合終点付近で、重合性の炭素−炭素二重結合を2つ以上有する化合物(イ)を添加する重合体の製造プロセスにおいて、遷移金属触媒(ロ)を開始剤に対して合計0.5モル当量以上用いることを特徴とする星形ビニル系重合体の製造方法であって、
遷移金属化合物(ハ)を用いたビニル系モノマーの原子移動ラジカル重合の重合終点付近で、重合性の炭素−炭素二重結合を2つ以上有する化合物(イ)を加えた後に、追加の触媒(ニ)として、金属銅または遷移金属化合物を加えることを特徴とする星形ビニル系重合体の製造方法。
【請求項2】
追加の触媒(ニ)が遷移金属錯体である請求項1記載の星形ビニル系重合体の製造方法。
【請求項3】
遷移金属触媒(ロ)を、開始剤に対して合計1モル当量以上用いることを特徴とする請求項1または2に記載の星形ビニル系重合体の製造方法。
【請求項4】
遷移金属化合物(ハ)の金属と比べて、追加の触媒(ニ)の金属の酸化数が小さいことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の星形ビニル系重合体の製造方法。
【請求項5】
遷移金属化合物(ハ)、及び/又は、追加の触媒(ニ)の遷移金属が、銅、ニッケル、ルテニウム及び鉄からなる群より選ばれる1種以上の金属であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の星形ビニル系重合体の製造方法。
【請求項6】
遷移金属化合物(ハ)、及び/又は、追加の触媒(ニ)の遷移金属が銅であることを特徴とする請求項5記載の星形ビニル系重合体の製造方法。
【請求項7】
追加の触媒(ニ)が、金属銅、又は、0価の銅の錯体であることを特徴とする請求項4記載の星形ビニル系重合体の製造方法。
【請求項8】
重合性の炭素−炭素二重結合を2つ以上有する化合物(イ)が、一般式1、2及び3からなる群より選ばれる化学式によって表されることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の星形ビニル系重合体の製造方法。
【化1】

(上の式中、RはPh、CN、CO(Rは一価の有機基)から選ばれる基であり、且つ、Rは二価以上の有機基であり、nは2以上の整数である。)
【化2】

(上の式中、RはH、炭素数1から20の有機基から選ばれる基であり、且つ、Rは二置換以上のベンゼン基、ナフタレン基であり、nは2以上の整数である。)
【化3】

(上の式中、RはH、CN、炭素数1から20の有機基から選ばれる基であり、且つ、Rは二価以上の有機基であり、nは2以上の整数である。)
ただし、一般式1、2及び3において、Rにおける一価の有機基、RおよびRにおける炭素数1から20の有機基は、−(CH2n−CH3、−CH(CH3)−(CH2n−CH3、−CH(CH2CH3)−(CH2n−CH3、−CH(CH2CH32、−C(CH32−(CH2n−CH3、−C(CH3)(CH2CH3)−(CH2n−CH3、−C65、−C64(CH3)、−C63(CH32、−(CH2n−C65、−(CH2n−C64(CH3)、または−(CH2n−C63(CH32(nは0以上の整数で、各基の合計炭素数は20以下))から選ばれる基であり、RおよびRにおける二価以上の有機基は、−(CH2n −(nは、1〜20の整数を表す。)、−CH(CH3)−、−CH(CH2CH3)−、−C(CH32−、−C(CH3)(CH2CH3)−、−C(CH2CH32−、−CH2CH(CH3)−、−(CH2n−O−CH2−(nは、1〜19の整数を表す。)、−CH(CH3)−O−CH2−、−CH(CH2CH3)−O−CH2−、−C(CH32−O−CH2−、−C(CH3)(CH2CH3)−O−CH2−、−C(CH2CH32−O−CH2−、−(CH22−OC(O)−、−(CH2n−OC(O)−(CH2m−(m及びnは、同一又は異なって、0〜19の整数を表す。ただし、0≦m+n≦19を満たす。)、−(CH2n−C(O)O−(CH2m−(m及びnは、同一又は異なって、0〜19の整数を表す。ただし、0≦m+n≦19を満たす。)、−CH2−C(O)O−(CH22−O−CH2−、−CH(CH3)−C(O)O−(CH22−O−CH2−、o−,m−,p−C64−、o−,m−,p−C64−CH2−、o−,m−,p−C64−O−CH2−、o−,m−,p−C64−O−CH(CH3)−、o−,m−,p−C64−O−C(CH32−、o−,m−,p−C64−(CH2n−(nは、0〜14の整数を表す。)、o−,m−,p−C64−O−(CH2)n−(nは、0〜14の整数を表す。)、o−,m−,p−CH2−C64−、o−,m−,p−CH2−C64−CH2−、o−,m−,p−CH2−C64−O−CH2−、o−,m−,p−CH2−C64−O−CH(CH3)−;o−,m−,p−CH2−C64−O−C(CH32−、o−,m−,p−CH2−C64−(CH2n−(nは、0〜13の整数を表す。)、o−,m−,p−CH2−C64−O−(CH2n−(nは、0〜13の整数を表す。)、またはo−,m−,p−C(O)−C64−C(O)O−(CH2n−(nは、0〜12の整数を表す。)から選ばれる基である。
【請求項9】
重合性の炭素−炭素二重結合を2つ以上有する化合物(イ)がジビニルベンゼンあるいはジイソプロペニルベンゼンである請求項8記載の星形ビニル系重合体の製造方法。
【請求項10】
ビニル系モノマーが、(メタ)アクリル系モノマー、アクリロニトリル系モノマー、芳香族ビニル系モノマー、フッ素含有ビニル系モノマー及びケイ素含有ビニル系モノマーからなる群より選ばれる1種以上のモノマーである請求項1〜9記載の星形ビニル系重合体の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2007−231292(P2007−231292A)
【公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−125051(P2007−125051)
【出願日】平成19年5月9日(2007.5.9)
【分割の表示】特願平10−348197の分割
【原出願日】平成10年12月8日(1998.12.8)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】