説明

映像データ及びマルチメディアデータをディスプレイに表示する携帯端末、放送装置及びプログラム

【課題】ディスプレイの表示領域全体に映像データを表示し、マルチメディアデータを重畳的に表示した場合であっても、視聴者における映像内容の理解を妨げることが無いようにすることができる携帯端末、放送装置及びプログラムを提供する。
【解決手段】放送データ受信手段と、映像データをデコードする第1のデコード手段と、マルチメディアデータをデコードする第2のデコード手段と、映像データ及び/又はマルチメディアデータを表示するディスプレイとを有する。また、携帯端末は、映像データの全表示領域をマルチメディアデータの表示サイズで区分し、複数の区分領域について視聴者における当該映像内容の理解に与える影響度を算出し、その影響度が最も低い区分領域を検出する映像分析手段と、映像データをディスプレイの全領域に表示し、区分領域に、マルチメディアデータを重畳的に表示するレンダリング手段とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、映像データ及びマルチメディアデータをディスプレイに表示する携帯端末、放送装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、日本国内では、地上デジタルテレビ放送(ARIB(社団法人電波産業会) ISDB-T)が提供されている。地上デジタルテレビ放送は、UHF帯470MHz〜770MHzを50チャネル(13〜62)に区分し、1チャネルの周波数帯域幅6MHzを13セグメントに区分した構造を有する。
【0003】
また、携帯端末を対象として、「携帯電話・移動体端末向けの1セグメント部分受信サービス」(以下「ワンセグ(1seg)」という」)が提供されている。携帯端末は、一般に、ディスプレイが小さく(対角線長2.4〜3.0インチ程度)、且つ、パーソナルコンピュータなどと比較して処理能力が低い。そのため、ワンセグ放送では、携帯端末用に1セグメントを割り当て、低解像度(320×240/320×180)で放送する。
【0004】
更に、ワンセグ放送では、データ放送も提供されている。データ放送は、一般のテレビ放送(映像データ及び音声データ)に同期したマルチメディアデータ(テキスト、音声、静止画像及び/又は動画像)であって、例えば字幕である。携帯端末ではディスプレイが小さいために、ワンセグ放送の映像内容が視聴者に理解されにくい。そのため、ワンセグ放送の内容を補完する字幕を表示することによって、視聴者が映像内容を理解しやすくする。
【0005】
以下は、ワンセグ放送及びデータ放送の伝送規格である。
[ワンセグ放送]
変調方式 :QPSK(Quadrature Phase Shift Keying)
ビットレート :416kbps(例)
動画規格 :H.264/MPEG−4 AVC
解像度 :320×240(4:3)/320×180(16:9)
フレームレート :15フレーム/秒
音声規格 :MPEG−2 AAC
[データ放送]
記述規格 :ARIB TR−B14 Cプロファイル
【0006】
図1は、従来技術における携帯電話機の表示画面である。
【0007】
携帯電話機では、ディスプレイを縦長に配置し、テンキー及びソフトキーについても、ディスプレイに合わせて縦長に配置した設計としている。
【0008】
図1(a)の携帯電話機によれば、ワンセグ放送の映像データが、縦長のディスプレイに表示されている。ワンセグ放送の映像素材は、最大解像度320×240の横長である。そのため、ディスプレイの幅に合わせて、横長の映像データを表示する際には、映像が縮小表示されることとなり、視聴者から見て臨場感に乏しい。
【0009】
図1(b)の携帯電話機によれば、ディスプレイは、旋回させることによって、縦長又は横長に切り替えることができる。
【0010】
図1(c)の携帯電話機によれば、ワンセグ放送の映像データが、横長のディスプレイ全体に表示されている。図1(a)と比較して、図1(c)によれば、視聴者から見て臨場感が得られる。
【0011】
図1(d)の携帯電話機によれば、縦長のディスプレイに、ワンセグ放送(映像データ)とデータ放送(マルチメディアデータ)とが、上下2画面に表示されている。通常、2つの放送データをディスプレイに表示する場合、このように表示される。
【0012】
これに対し、映像データにデータ放送を重畳的に表示する技術もある(例えば特許文献1参照)。この技術によれば、映像データに文字データを重畳的に表示し、ユーザの設定によって文字データの輝度又は色彩を変更する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2003−076455号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
従来技術における図1(c)によれば、横長のディスプレイの表示領域全体に、映像データが表示される。そのために、利用者は、映像データを、臨場感を持って視聴することができる。しかしながら、図1(c)の場合、映像データと同時に、マルチメディアデータを視聴することはできない。単に、映像データに、マルチメディアデータを重畳的に表示すると、視聴者における映像内容の理解を妨げる場合が生じる。映像内容の理解に重要な部分が、マルチメディアデータの裏に位置する場合があるからである。
【0015】
そこで、本発明は、ディスプレイの表示領域全体に映像データを表示し、マルチメディアデータを重畳的に表示した場合であっても、視聴者における映像内容の理解を妨げることが無いようにすることができる携帯端末、放送装置及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明によれば、
放送データを受信する放送データ受信手段と、
放送データの映像データをデコードする第1のデコード手段と、
放送データのマルチメディアデータをデコードする第2のデコード手段と、
第1のデコード手段から出力された映像データ、及び/又は、第2のデコード手段から出力されたマルチメディアデータを表示するディスプレイと
を有する携帯端末において、
映像データの全表示領域をマルチメディアデータの表示サイズで区分し、複数の区分領域について視聴者における当該映像内容の理解に与える影響度を算出し、該影響度が最も低い区分領域を検出する映像分析手段と、
映像データをディスプレイの全領域に表示し、区分領域に、マルチメディアデータを重畳的に表示するレンダリング手段と
を有すること特徴とする。
【0017】
本発明の携帯端末における他の実施形態によれば、
映像データについて、当該視聴者における映像内容の理解を妨げない空間周波数パターンを予め蓄積したサンプルパターン蓄積手段を更に有し、
映像分析手段は、空間周波数パターンに近い区分領域ほど、影響度を低く割り当てることも好ましい。
【0018】
本発明の携帯端末における他の実施形態によれば、
映像分析手段は、映像データの全表示領域の中で、周囲位置にある区分領域ほど、影響度を低く割り当てることも好ましい。
【0019】
本発明の携帯端末における他の実施形態によれば、
映像分析手段は、肌色の空間周波数に近い区分領域ほど、影響度を高く割り当てることも好ましい。
【0020】
本発明の携帯端末における他の実施形態によれば、
映像分析手段は、動き補償フレーム間予測の動きベクトルが大きい区分領域ほど、影響度を高く割り当てることも好ましい。
【0021】
本発明の携帯端末における他の実施形態によれば、
ディスプレイは、縦長表示又は横長表示に切り替え可能であり、
ディスプレイが横長表示に切り替えられた際に、映像分析手段及びレンダリング手段が機能するように制御する表示制御手段を更に有することも好ましい。
【0022】
本発明の携帯端末における他の実施形態によれば、
映像データは、デジタル放送で配信される映像データであり、
マルチメディアデータは、データ放送の動画像、静止画像又はテキスト等である
ことも好ましい。
【0023】
本発明によれば、映像データと共に、該映像データに同期したマルチメディアデータを含む放送データを放送する放送装置において、
映像データの全表示領域をマルチメディアデータの表示サイズで区分し、複数の区分領域について視聴者における当該映像内容の理解に与える影響度を算出し、該影響度が最も低い区分領域を検出する映像分析手段と、
マルチメディアデータに区分領域を指定する表示位置情報を含め、該マルチメディアデータを放送するデータ放送手段と
を有すること特徴とする。
【0024】
本発明によれば、
放送データを受信する放送データ受信手段と、
放送データの映像データをデコードする第1のデコード手段と、
放送データのマルチメディアデータをデコードする第2のデコード手段と、
第1のデコード手段から出力された映像データ、及び/又は、第2のデコード手段から出力されたマルチメディアデータを表示するディスプレイと
を有する携帯端末に搭載されたコンピュータを機能させるプログラムにおいて、
映像データの全表示領域をマルチメディアデータの表示サイズで区分し、複数の区分領域について視聴者における当該映像内容の理解に与える影響度を算出し、該影響度が最も低い区分領域を検出する映像分析手段と、
映像データをディスプレイの全領域に表示し、区分領域に、マルチメディアデータを重畳的に表示するレンダリング手段と
してコンピュータを機能させること特徴とする。
【発明の効果】
【0025】
本発明の携帯端末、放送装置及びプログラムによれば、ディスプレイの表示領域全体に映像データを表示し、マルチメディアデータを重畳的に表示した場合であっても、視聴者における映像内容の理解を妨げることが無いようにすることができる。これにより、ディスプレイを横長に配置した場合であっても、ディスプレイの全領域に映像データを表示した上で、マルチメディアデータも視聴することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】従来技術における携帯電話機の表示画面である。
【図2】本発明における携帯電話機の表示画面である。
【図3】第2の放送データの表示位置を決定する説明図である。
【図4】本発明における携帯電話機の機能構成図である。
【図5】本発明における放送装置の機能構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。
【0028】
図2は、本発明における携帯電話機の表示画面である。
【0029】
図2(a)によれば、ワンセグ放送の映像データが、横長のディスプレイ全体に表示されている。
【0030】
図2(b)によれば、データ放送におけるマルチメディアデータの表示領域が表されている。マルチメディアデータは、例えば、ARIB TR−B14 Cプロファイルで記述されたテキスト、音声、静止画像又は動画像のデータであってもよい。また、例えば、FLASHコンテンツであってもよい。FLASHとは、音声又はベクタグラフィックスのアニメーションを組み合わせたコンテンツをいう。
【0031】
図2(c)によれば、映像データの全表示領域を、マルチメディアデータの表示サイズで区分している。このとき、正確な表示サイズで、映像データの全表示領域を区分することまで要しない。この表示サイズは、映像データのどの位置にマルチメディアデータを表示すれば良いかを判定するために適切なサイズであればよい。
【0032】
図2(d)によれば、影響度が最も低い区分領域が選択されている。
【0033】
複数の区分領域について、視聴者における当該映像内容の理解に与える影響度を算出する。この影響度は、区分領域毎に、例えば以下の4つの分析によって判定される。
[1]空間周波数分析に基づく影響度
[2]中央表示に基づく影響度
[3]肌色分析に基づく影響度
[4]動きベクトルに基づく影響度
【0034】
4つの分析の中で、いずれか1つの影響度のみで判定してもよいし、複数の影響度の組み合わせ(例えば合計値)によって判定してもよい。
【0035】
影響度が高い区分領域は、視聴者における映像内容の理解に重要な領域である。その領域にマルチメディアデータが重畳された場合、視聴者がその映像内容を理解しにくくなる。一方で、影響度が低い区分領域は、視聴者における映像内容の理解に重要でない領域である。その領域にマルチメディアデータが重畳されても、視聴者はその映像内容を十分に理解することができる。
【0036】
図2(e)によれば、映像データをディスプレイの全領域に表示し、選択された区分領域に、マルチメディアデータを重畳的に表示している。
【0037】
例えば、映像データが「野球中継」である場合、マルチメディアデータは、例えば「バッター詳細情報」である。ディスプレイの全表示領域に「野球中継」が表示され、その視聴者における映像内容の理解を妨げない位置に「バッター詳細情報」が表示される。
【0038】
尚、映像データの表示領域におけるマルチメディアデータの表示位置は、放送データの受信側となる携帯端末によって決定される。また、マルチメディアデータの表示位置が、送信側となる放送装置によって決定されてもよい。この場合、マルチメディアデータに、表示位置情報が含まれる。
【0039】
図3は、4つの映像分析方法を表す説明図である。
【0040】
図3(a)は、[1]空間周波数分析に基づく影響度を説明する。
【0041】
空間周波数(spatial frequency)とは、視覚系特性を正弦波縞によって表したものであり、単位長あたりの変化の多さを表す。空間周波数が異なると、視聴者からの見え方が異なる。高い空間周波数の部分は、くっきりとした輪郭を表し、低い空間周波数の部分は、ぼんやりした面を表す。
【0042】
本発明によれば、複数のサンプルパターンを有する。サンプルパターンは、視聴者における映像内容の理解を妨げないような空間周波数パターンである。例えば、映像内容が「人が海岸を歩くシーン」であると想定する。この場合、映像の比較的広い範囲で表示されるであろう「海」の部分は、視聴者における映像内容の理解にそれほど影響を与えない。そこで、「海」の映像の空間周波数パターンを、サンプルパターンとして予め蓄積しておく。
【0043】
携帯端末は、映像データの全表示領域を、マルチメディアデータの表示サイズで区分する。そして、複数の区分領域について、空間周波数パターンに一致又は近い区分領域ほど、影響度を低く割り当てる。例えば、「海」の映像の空間周波数パターンに一致するか又は近い区分領域ほど、低い影響度が割り当てられる。この場合、「海」の映像の区分領域ほど、マルチメディアデータが重畳的に表示されやすくなる。
【0044】
図3(b)は、[2]中央表示に基づく影響度を説明する。
【0045】
携帯端末は、複数の区分領域について、映像データの周辺の区分領域ほど、影響度を低く割り当て、映像データの中心領域ほど、影響度を高く割り当てる。これは、映像データの中心ほど、視聴者における映像内容の理解に重要であるという考えに基づく。映像データの周辺の表示領域ほど、マルチメディアデータが重畳的に表示されやすくなる。
【0046】
図3(c)は、肌色分析に基づく影響度を説明する。
【0047】
携帯端末は、複数の区分領域について、肌色の空間周波数に近い区分領域ほど、影響度を高く割り当てる。これは、人間の顔などが表示されている領域ほど、視聴者における映像内容の理解に重要であるという考えに基づく。この場合、映像データの肌色成分が多い区分領域ほど、マルチメディアデータが重畳的に表示されにくくなる。
【0048】
例えば、映像データが「ニュース映像」であると想定する。このとき、アナウンサの顔の部分の映像は、重要である。アナウンサの顔の領域ほど、マルチメディアデータが重畳的に表示されにくくなる。
【0049】
図3(d)は、動きベクトルに基づく影響度を説明する。
【0050】
携帯端末は、複数の区分領域について、動き補償フレーム間予測の動きベクトルが大きい区分領域ほど、影響度を高く割り当てる。これは、動きベクトルが大きい領域ほど、視聴者における映像内容の理解に重要であるという考えに基づく。逆に、動きベクトルの小さい領域ほど、マルチメディアデータを重畳的に表示しても、視聴者における映像内容の理解を妨げない。
【0051】
映像の符号化方式として、H.264/AVC方式の動き補償フレーム間予測について、基準となるIフレームから見て、その差分移動量となるPフレーム及びBフレームの動きベクトルを用いる。この場合、単純に全時間の全ピクセル情報を記述するよりも、圧倒的にデータの記述量を削減することができる。区分領域毎に、動きベクトルの大きさが大きいほど、影響度を高く割り当てる。
【0052】
前述した4つの映像分析方法によって算出された影響度(スコア)の合計値が低い区分領域ほど、視聴者における映像内容の理解を妨げないと判断される。そして、映像データにおけるその区分領域に、マルチメディアデータを重畳的に表示する。尚、映像分析方法毎に、異なる重み係数を影響度に乗じることもできる。
【0053】
図4は、本発明における携帯電話機の機能構成図である。
【0054】
図4によれば、携帯電話機1は、ハードウェアとして、放送データ受信部100と、ディスプレイ101と、スピーカ102とを有する。また、携帯電話機1は、映像デコーダ部112と、マルチメディアデコーダ部122と、音声デコーダ部132と、映像分析部141と、レンダリング部142と、サンプルパターン蓄積部143と、表示制御部144とを更に有する。これら機能構成部は、携帯電話機に搭載されたコンピュータを機能させるプログラムを実行することによって実現される。
【0055】
放送データ受信部100は、映像データ、音声データ及びマルチメディアデータが多重化された放送データを受信する。ここで、放送データ受信部100は、アンテナと、チューナ(フィルタ)と、OFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)復調部と、多重分離部とを含む。放送データ受信部100は、映像データを映像デコーダ部112へ出力し、マルチメディアデータをマルチメディアデコーダ部122へ出力し、音声データを音声デコーダ部132へ出力する。
【0056】
ディスプレイ101は、映像データ及びマルチメディアデータを表示する。携帯電話機の場合、ディスプレイ101は、対角線長2.4〜3.0インチの液晶画面である場合が多い。ここで、ディスプレイ101は、縦長表示又は横長表示に切り替え可能であることも好ましい。ディスプレイ101は、縦長表示/横長表示の情報を、表示制御部144へ出力する。ディスプレイ101が横長表示にされた場合、その全表示領域に、例えば解像度320×240の映像データを表示することができる。
【0057】
映像デコーダ部112は、放送データ受信部100から受信した映像データを、デコードする。例えば、MPEG−4
AVC/H.264の復号機能を有する。デコードされた映像データは、表示制御部144を介して、映像分析部141又はディスプレイ101へ出力される。
【0058】
マルチメディアデコーダ部122は、放送データ受信部100から受信したマルチメディアデータを、デコードする。デコードされたマルチメディアデータは、表示制御部144を介して、映像分析部141又はディスプレイ101へ出力される。
【0059】
尚、マルチメディアデータに、区分領域を指定する表示位置情報が予め含められていてもよい。この場合、放送データの送信元となる放送装置が、マルチメデイアデータの表示位置を指定する。
【0060】
音声デコーダ部132は、放送データ受信部100から受信した音声データを、デコードする。例えば、MPEG−2
AACの復号機能を有する。デコードされた音声データは、スピーカ102へ出力される。
【0061】
映像分析部141は、前述した図3の映像分析処理を実行する。映像分析部141は、映像データの全表示領域を、マルチメディアデータの表示サイズで区分し、複数の区分領域について視聴者における当該映像内容の理解に与える影響度を算出し、該影響度が最も低い区分領域を検出する。
【0062】
レンダリング部142は、映像データをディスプレイの全領域に表示し、映像分析部141によって検出された区分領域に、マルチメディアデータを重畳的に表示する。表示位置は、座標(1〜320,1〜240)によって特定されるものであってもよい。重畳された映像データは、ディスプレイ101へ出力される。
【0063】
サンプルパターン蓄積部143は、映像データについて、当該視聴者における映像内容の理解を妨げない空間周波数パターンを予め蓄積する。サンプルパターンは、映像分析部141によって、空間周波数分析に用いられる。
【0064】
表示制御部144は、ディスプレイが横長表示に切り替えられた際に、映像分析部141及びレンダリング部142が機能するように制御する。ディスプレイが横長表示に切り替えられた際に、映像データ及びマルチメディアデータは映像分析部141へ出力される。
【0065】
一方で、ディスプレイが縦長表示に切り替えられた際に、映像データ及びマルチメディアデータはディスプレイ101へ出力される。このとき、図1(d)のように、映像データ及びマルチメディアデータを重畳することなく、上下2画面に表示する。
【0066】
図5は、本発明における放送装置の機能構成図である。
【0067】
図5によれば、放送装置2は、放送コンテンツデータベース200と、放送データ送信部201と、映像エンコーダ部212と、マルチメディアエンコーダ部222と、音声エンコーダ部232と、映像分析部241と、サンプルパターン蓄積部243と、表示位置挿入部245と、多重化部246とを有する。
【0068】
放送コンテンツデータベース200は、放送データを蓄積する。放送データは、ワンセグ放送としての映像データ及び音声データと、データ放送としてのマルチメディアデータとを含む。映像データは、映像分析部241を介して映像エンコーダ部212へ出力される。マルチメディアデータは、映像分析部241を介してマルチメディアエンコーダ部222へ出力される。音声データは、音声エンコーダ部へ出力される。
【0069】
映像分析部241は、図4の映像分析部141と同様に機能する。映像分析部241は、影響度が最も低い区分領域を検出する。検出された区分領域の位置情報は、表示位置挿入部245へ出力される。サンプルパターン蓄積部243も、図4のサンプルパターン蓄積部143と同様に機能する。
【0070】
映像エンコーダ部212は、エンコードした映像データを多重化部246へ出力し、音声エンコーダ部232は、エンコードした音声データを多重化部246へ出力する。マルチメディアエンコーダ部222は、エンコードしたマルチメディアデータを、表示位置挿入部245へ出力する。表示位置挿入部は、マルチメディアデータに、映像分析部241から受信した表示位置情報を、XML(Extensible Markup Language)等によって挿入する。表示位置情報が挿入されたマルチメディアデータは、多重化部246へ出力される。
【0071】
多重化部246は、OFDM変調機能を有し、映像データと、マルチメディアデータと、音声データとを多重化した放送データを生成する。生成された放送データは、放送データ送信部201から放送される。
【0072】
以上、詳細に説明したように、本発明の携帯端末、放送装置及びプログラムによれば、ディスプレイの表示領域全体に映像データを表示し、マルチメディアデータを重畳的に表示した場合であっても、視聴者における映像内容の理解を妨げることが無いようにすることができる。これにより、ディスプレイを横長に配置した場合であっても、ディスプレイの全領域に映像データを表示した上で、マルチメディアデータも視聴することができる。
【0073】
前述した本発明の種々の実施形態において、本発明の技術思想及び見地の範囲の種々の変更、修正及び省略は、当業者によれば容易に行うことができる。前述の説明はあくまで例であって、何ら制約しようとするものではない。本発明は、特許請求の範囲及びその均等物として限定するものにのみ制約される。
【符号の説明】
【0074】
1 携帯電話機、携帯端末
100 放送データ受信部
101 ディスプレイ
102 スピーカ
112 映像デコーダ部
122 マルチメディアデコーダ部
132 音声デコーダ部
141 映像分析部
142 レンダリング部
143 サンプルパターン蓄積部
144 表示制御部
2 放送装置
200 放送コンテンツデータベース
201 放送データ送信部
212 映像エンコーダ部
222 マルチメディアエンコーダ部
232 音声エンコーダ部
241 映像分析部
243 サンプルパターン蓄積部
245 表示位置挿入部
246 多重化部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放送データを受信する放送データ受信手段と、
前記放送データの映像データをデコードする第1のデコード手段と、
前記放送データのマルチメディアデータをデコードする第2のデコード手段と、
第1のデコード手段から出力された映像データ、及び/又は、第2のデコード手段から出力されたマルチメディアデータを表示するディスプレイと
を有する携帯端末において、
前記映像データの全表示領域を前記マルチメディアデータの表示サイズで区分し、複数の区分領域について視聴者における当該映像内容の理解に与える影響度を算出し、該影響度が最も低い区分領域を検出する映像分析手段と、
前記映像データを前記ディスプレイの全領域に表示し、前記区分領域に、前記マルチメディアデータを重畳的に表示するレンダリング手段と
を有すること特徴とする携帯端末。
【請求項2】
前記映像データについて、当該視聴者における映像内容の理解を妨げない空間周波数パターンを予め蓄積したサンプルパターン蓄積手段を更に有し、
前記映像分析手段は、前記空間周波数パターンに近い区分領域ほど、前記影響度を低く割り当てることを特徴とする請求項1に記載の携帯端末。
【請求項3】
前記映像分析手段は、前記映像データの全表示領域の中で、周囲位置にある区分領域ほど、前記影響度を低く割り当てることを特徴とする請求項1又は2に記載の携帯端末。
【請求項4】
前記映像分析手段は、肌色の空間周波数に近い区分領域ほど、前記影響度を高く割り当てることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の携帯端末。
【請求項5】
前記映像分析手段は、動き補償フレーム間予測の動きベクトルが大きい区分領域ほど、前記影響度を高く割り当てることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の携帯端末。
【請求項6】
前記ディスプレイは、縦長表示又は横長表示に切り替え可能であり、
前記ディスプレイが横長表示に切り替えられた際に、前記映像分析手段及び前記レンダリング手段が機能するように制御する表示制御手段を更に有することを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の携帯端末。
【請求項7】
前記映像データは、デジタル放送で配信される映像データであり、
前記マルチメディアデータは、データ放送の動画像、静止画像又はテキスト等である
ことを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の携帯端末。
【請求項8】
映像データと共に、該映像データに同期したマルチメディアデータを含む放送データを放送する放送装置において、
前記映像データの全表示領域を前記マルチメディアデータの表示サイズで区分し、複数の区分領域について視聴者における当該映像内容の理解に与える影響度を算出し、該影響度が最も低い区分領域を検出する映像分析手段と、
前記マルチメディアデータに前記区分領域を指定する表示位置情報を含め、該マルチメディアデータを放送するデータ放送手段と
を有すること特徴とする放送装置。
【請求項9】
放送データを受信する放送データ受信手段と、
前記放送データの映像データをデコードする第1のデコード手段と、
前記放送データのマルチメディアデータをデコードする第2のデコード手段と、
第1のデコード手段から出力された映像データ、及び/又は、第2のデコード手段から出力されたマルチメディアデータを表示するディスプレイと
を有する携帯端末に搭載されたコンピュータを機能させるプログラムにおいて、
前記映像データの全表示領域を前記マルチメディアデータの表示サイズで区分し、複数の区分領域について視聴者における当該映像内容の理解に与える影響度を算出し、該影響度が最も低い区分領域を検出する映像分析手段と、
前記映像データを前記ディスプレイの全領域に表示し、前記区分領域に、前記マルチメディアデータを重畳的に表示するレンダリング手段と
してコンピュータを機能させること特徴とする携帯端末用のプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−226433(P2010−226433A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−71534(P2009−71534)
【出願日】平成21年3月24日(2009.3.24)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.FLASH
【出願人】(000208891)KDDI株式会社 (2,700)
【Fターム(参考)】