説明

映像処理装置および映像処理方法

【課題】簡易な手法でフレームレート変換後の各フレーム映像データとデプスデータとを正しく同期させる。
【解決手段】二次元または三次元の入力映像データの画像処理を行う画像処理手段2と、画像処理後の映像データの連続する二フレームのうち一方のフレームの映像データを第1のフレーム数だけ繰り返して出力し他方のフレームの映像データを第2のフレーム数だけ繰り返して出力するようにフレームレート変換を行うフレームレート変換手段3と、第1のフレーム数が前記第2のフレーム数よりも大きい場合に前記第1のフレーム数分の映像データを出力する前に第1の論理値から第2の論理値に変化する制御信号の論理値に応じて、フレームレート変換を行う各フレームの映像データに対応づけて、デプスデータを生成するデプスデータ生成手段4と、フレームレート変換後の各フレーム映像データと、各フレーム映像データに対応するデプスデータと、に基づいて、三次元映像データを生成する三次元データ生成手段5と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、フレームレートの変換を行う映像処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
映画コンテンツやアニメーションなどの映像データは24fps(フレーム数/秒)であるのが一般的であるのに対して、日本のTV放送データは約60fpsである。この他、30fpsの映像データも存在する。このため、24fpsや30fpsの映像データをTV受信機で再生するには、フレームレートを変換する必要がある。
【0003】
30fpsの映像データを60fpsの映像データに変換するには、各フレーム映像を二重に設けることで簡易に対処できるが、24fpsの映像データを60fpsの映像データに変換する、いわゆる2−3プルダウンを行うには、1つのフレーム映像を2フレーム分繰り返す処理と3フレーム分繰り返す処理とを交互に切り替える必要があり、各フレーム映像の繰り返し数は均等にならない。
【0004】
最近、三次元映像を表示する、いわゆる3DTVが急速に普及している。三次元映像データを作成するには、専用のビデオカメラが必要であり、コストがかかるという問題がある。また、二次元映像データに比べてデータ量が格段に増えるため、通常の放送電波で送信するのにも種々の制限がある。
【0005】
このように、3DTVを購入しても、三次元映像のコンテンツがそれほど普及しておらず、値段も高価であることから、立体映像表示を存分に楽しめないという問題があり、それが3DTVの普及の妨げになることが懸念されている。そこで、二次元映像データに奥行き情報(以下、デプス情報)を付加することで、擬似的な三次元映像データを生成して、3DTVで視聴できるようにする技術が提案されている。
【0006】
また、裸眼で立体映像を視認可能な3DTVでは、多視差データを必要としており、入力映像データに多視差データが含まれていない場合は、二次元映像データや二視差の三次元映像データに対応するデプス情報を生成して、このデプス情報に基づいて多視差データを生成している。
【0007】
二次元映像データや二視差の三次元映像データにデプス情報を付加する場合、各フレーム映像ごとにデプス情報を設ける必要がある。上述した2−3プルダウンによるフレームレートの変換を行う場合、映像データを2フレーム分繰り返す処理と3フレーム分繰り返す処理とを交互に行う必要がある。
【0008】
従来は、2−3プルダウンの処理とデプス情報生成処理とを非同期で行っていたため、デプス情報生成処理では、あるフレーム映像のデプス情報を2フレーム分繰り返すべきか、あるいは3フレーム分繰り返すべきかを正しく判別できず、2−3プルダウン処理で生成したフレーム映像に対応するデプス情報を正しく生成できないおそれがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平5−68268号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、簡易な手法でフレームレート変換後の各フレーム映像データとデプスデータとを正しく同期させることができる映像処理装置、映像処理装置および映像処理方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本実施形態に係る映像処理装置は、二次元または三次元の入力映像データの画像処理を行う画像処理手段と、
前記画像処理手段で画像処理した後の映像データの連続する二フレームのうち一方のフレームの映像データを第1のフレーム数だけ繰り返して出力し他方のフレームの映像データを第2のフレーム数だけ繰り返して出力するようにフレームレート変換を行うフレームレート変換手段と、
前記第1のフレーム数が前記第2のフレーム数よりも大きい場合に前記第1のフレーム数分の映像データを出力する前に第1の論理値から第2の論理値に変化する制御信号の論理値に応じて、前記フレームレート変換手段でフレームレート変換を行う各フレームの映像データに対応づけて、デプスデータを生成するデプスデータ生成手段と、
前記フレームレート変換手段でフレームレート変換を行った後の各フレーム映像データと、各フレーム映像データに対応するデプスデータと、に基づいて、三次元映像データを生成する三次元データ生成手段と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態に係る映像処理装置の概略構成を示すブロック図。
【図2】図1の映像処理装置の処理動作の一例を示すフローチャート。
【図3】図2のステップS3の詳細な処理手順の一例を示すフローチャート。
【図4】図2のステップS4の詳細な処理手順の一例を示すフローチャート。
【図5】図1の映像処理装置内の各部の動作タイミング図。
【図6】三次元映像データフォーマットの一つである1920×1080@23.976Hzフレームパッキングが入力された場合の図1の映像処理装置内の各部の動作タイミング図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら、本発明の一実施形態を説明する。
【0014】
図1は本発明の一実施形態に係る映像処理装置の概略構成を示すブロック図である。図1の映像処理装置1は、映像処理モジュール2と、フレームレート変換モジュール3と、デプスデータ生成モジュール4と、三次元データ生成モジュール5と、を備えている。
【0015】
映像処理モジュール2は、映像ソース10から提供される二次元映像データまたは三次元映像データに対して種々の画像処理を行う。画像処理とは、復号処理やノイズ除去などであり、画像処理の具体的な内容は問わない。映像ソース10は、インターネット等のネットワークを介して提供されるいわゆるネットコンテンツでもよいし、DVDやBD(ブルーレイディスク)に記録された映像コンテンツでもよいし、デジタル放送波で提供される放送コンテンツでもよい。映像処理モジュール2は、これらのコンテンツに含まれる二次元映像データまたは三次元映像データに対して種々の画像処理を行う。
【0016】
フレームレート変換モジュール3は、種々のフレームレートの変換を行うものであるが、以下では、一例として、24fpsから60fpsへの2−3プルダウンを行う場合について詳述する。
【0017】
デプスデータ生成モジュール4は、フレームレート変換モジュール3でフレームレートを変換した後に得られる各フレームごとにデプスデータを生成する。
【0018】
フレームレート変換モジュール3とデプスデータ生成モジュール4を合わせたものが、三次元情報生成準備手段に対応する。
【0019】
三次元データ生成モジュール5は、フレームレート変換モジュール3でフレームレートを変換した後の各フレームのフレーム映像データと、対応するデプスデータとに基づいて、三次元映像データを生成する。
【0020】
生成された三次元映像データは、図1に示す平面表示装置6に送られて、三次元(立体)映像が表示される。
【0021】
平面表示装置6は、マトリクス状に配列された画素を有する表示パネル7と、この表示パネル7に対向するように配置されて表示パネル7の各画素からの光線を制御する複数の射出瞳を有する光線制御素子8とを有する。表示パネル7としては、例えば液晶パネルや、プラズマディスプレイパネル、EL(ElectroLuminescence)パネル等を用いることができる。光線制御素子8は、一般的にはパララクスバリアまたは視差バリアとも呼ばれ、光線制御素子8の各射出瞳は、同一位置でも角度により異なる画像が見えるように光線を制御している。具体的には、左右視差(水平視差)のみを与える場合には、複数のスリットを有するスリット版またはレンチキュラーシート(シリンドリカルレンズアレイ)が用いられ、上下視差(垂直視差)も含める場合には、ピンホールアレイまたはレンズアレイが用いられる。すなわち、スリット板のスリットや、シリンドリカルレンズアレイのシリンドリカルレンズ、ピンホールアレイのピンホール、レンズアレイのレンズが各射出瞳になる。
【0022】
なお、本実施形態に係る平面表示装置6は、複数の射出瞳を有する光線制御素子8を備えているが、パララックスバリアを透過型液晶表示装置などで電子的に発生させ、バリアパターンの形状や位置などを電子的に可変制御する平面表示装置6を用いてもよい。すなわち、三次元データ生成モジュール5で生成した三次元映像データに基づいて立体映像を表示可能な表示装置であれば、平面表示装置6の具体的な構造や方式は問わない。
【0023】
本実施形態は、フレームレート変換モジュール3とデプスデータ生成モジュール4とを同期して動作させる。より具体的には、フレームレート変換モジュール3が、あるフレーム映像を2フレーム分繰り返している出力する間は、デプスデータ生成モジュール4がこのフレーム映像に対応するデプスデータを2フレーム分繰り返して出力するようにし、あるフレーム映像を3フレーム分繰り返して出力する間は、デプスデータ生成モジュール4がデプスデータを3フレーム分繰り返して出力するようにする。
【0024】
フレームレート変換モジュール3とデプスデータ生成モジュール4とを同期して動作させるために、フレームレート変換モジュール3からデプスデータ生成モジュール4にフレームレート変換制御信号Sig1が送られる。このフレームレート変換制御信号Sig1は、フレームレート変換モジュール3があるフレームのフレーム映像データを3フレーム分繰り返す処理を開始する直前にハイレベルに変化し、3フレーム分繰り返している最中にロウレベルに変化する。フレームレート変換制御信号Sig1は、フレームレート変換モジュール3があるフレームのフレーム映像データを2フレーム分繰り返す間はロウレベルのままである。
【0025】
このように、フレームレート変換制御信号Sig1は、これからフレーム映像データを3フレーム分繰り返す処理を開始することをデプスデータ生成モジュール4に通知する役割を行う。
【0026】
上述したフレームレート変換制御信号Sig1は、必ずしもフレームレート変換モジュール3で生成する必要はなく、映像処理装置1の外部から供給されてもよいし、映像処理装置1に含まれる別の制御信号生成部から供給されてもよい。外部から供給される場合も、フレームレート変換制御信号Sig1は、フレームレート変換モジュール3があるフレームのフレーム映像データを3フレーム分繰り返す処理を開始する直前にハイレベルに変化し、3フレーム分繰り返している最中にロウレベルに変化するタイミングを持つ。
【0027】
デプスデータ生成モジュール4は、フレームレート変換制御信号Sig1がハイレベルであれば、次のフレーム切替タイミングから3フレーム分、同じデプスデータを繰り返し出力する。一方、フレームレート変換制御信号Sig1がロウレベルであれば、次のフレーム切替タイミングから2フレーム分、同じデプスデータを繰り返し出力する。
【0028】
このように、デプスデータ生成モジュール4は、フレームレート変換モジュール3で生成したフレームレート変換制御信号Sig1の論理に応じて、デプスデータを2フレーム分繰り返すか、3フレーム分繰り返すかを決定するため、フレームレート変換モジュール3でフレーム映像を繰り返す数分のデプスデータを繰り返すことになり、フレームレート変換モジュール3とデプスデータ生成モジュール4の動作を完全に同期させることができる。
【0029】
図2は図1の映像処理装置1の処理動作の一例を示すフローチャートである。このフローチャートは、24fpsの二次元映像データまたは三次元映像データ(以下、単に映像データと呼ぶ)が映像ソース10から映像処理モジュール2に入力される例を示している。
【0030】
映像データが映像処理モジュール2に入力されると、映像処理モジュール2は、画像処理を行う(ステップS1)。画像処理としては、例えば復号化処理を行った後にノイズ除去処理を行う。映像処理モジュール2で画像処理を行った映像データは、フレームレート変換モジュール3とデプスデータ生成モジュール4の双方に入力される(ステップS2)。
【0031】
フレームレート変換モジュール3は、上述した2−3プルダウン処理を行って、60fpsの映像データを生成するとともに、上述したフレームレート変換制御信号Sig1を生成してデプスデータ生成モジュール4に供給する(ステップS3)。このステップS3の処理の詳細については後述する。
【0032】
デプスデータ生成モジュール4は、フレームレート変換モジュール3から送信されたフレームレート変換制御信号Sig1の論理に応じて、デプスデータを2フレーム分繰り返すか、3フレーム分繰り返すかを決定する(ステップS4)。
【0033】
次に、三次元データ生成モジュール5は、フレームレート変換モジュール3でフレームレートを変換した後のフレーム映像と、それに同期してデプスデータ生成モジュール4で生成されたデプスデータとに基づいて、三次元映像データを生成する(ステップS5)。
【0034】
ここで、三次元映像データは、右目用視差データと左目用視差データを含んでいる。また、3視差以上の多視差データを三次元映像データとして生成してもよい。多視差データを生成する場合、各視差に応じたデプスデータをデプスデータ生成モジュール4で生成する必要がある。より具体的には、デプスデータ生成モジュール4は、二つのフレーム映像から動き検出を行って奥行き情報を復元する処理と、フレーム映像に映っている構図を自動識別して奥行き情報を復元する処理と、フレーム映像に映っている人間の顔を検出して顔部分の奥行き情報を復元する処理とを行って、多視差データを生成する。
【0035】
三次元データ生成モジュール5で生成された三次元映像データは、平面表示装置6に送られて立体映像が表示される(ステップS6)。より具体的には、平面表示装置6の表示パネル7には、視差データに応じた画素表示がなされる。これにより、視域内にいる人間の目に立体映像が視認されることになる。ここで、視域とは、表示パネル7に表示された三次元(立体)映像を人間が観察可能な範囲を示す。視域の具体的な場所は、平面表示装置6の表示パラメータの組み合わせによって定まる。表示パラメータとしては、表示パネル7内の各表示素子と対応する光線制御素子8との相対位置、表示素子と対応する光線制御素子8との距離、表示パネル7の角度、表示パネル7の各画素ピッチなどが考えられる。
【0036】
図3は図2のステップS3の詳細な処理手順の一例を示すフローチャートである。初期化動作の後に、映像処理モジュール2で画像処理を行った映像データがフレームレート変換モジュール3に入力されると、まずはフレームレート変換制御信号Sig1をハイレベルにする(ステップS11)。引き続いて、映像データに含まれる1フレーム分のフレーム映像データを3フレーム分繰り返して出力する(ステップS12)。3フレーム分を繰り返し出力している最中に、フレームレート変換制御信号Sig1をロウレベルにする(ステップS13)。
【0037】
このように、フレームレート変換モジュール3は、図1の映像処理装置1が初期化動作を行った直後に、フレームレート変換制御信号Sig1をハイレベルにして、1フレーム分のフレーム映像データを2フレーム分繰り返して出力するようにしている。これは一例であり、初期化動作を行った直後に、フレームレート変換制御信号Sig1をロウレベルにして、1フレーム分のフレーム映像データを2フレーム分繰り返して出力するようにしてもよい。
【0038】
上述したステップS12における3フレーム分の繰り返し出力が終了したら、次のフレームのフレーム映像データを2フレーム分繰り返し出力する(ステップS14)。2フレーム分を繰り返し出力している最中に、フレームレート変換制御信号Sig1をハイレベルにする(ステップS15)。
【0039】
その後は、ステップS12に戻って、ステップS12〜S15の処理が繰り返し行われる。
【0040】
図4は図2のステップS4の詳細な処理手順の一例を示すフローチャートである。映像処理モジュール2で画像処理を行った映像データがデプスデータ生成モジュール4に入力されると、同モジュール4は、この映像データに対応するデプスデータを生成する(ステップS21)。
【0041】
デプスデータの具体的な生成方法は問わない。二視差データの場合は、必ずしもデプスデータは必要とされないが、本実施形態では、デプスデータを生成することを前提としている。デプスデータは、映像ソース10に予めデプスデータが含まれている場合は、それを利用してもよいし、上述したように、動き検出、構図識別および顔検出を行って、デプスデータを生成してもよい。
【0042】
次に、フレームレート変換モジュール3から送られてくるフレームレート変換制御信号Sig1がハイレベルか否かを判定する(ステップS22)。ハイレベルであれば、ステップS21で生成したデプスデータを3フレーム分繰り返し出力する(ステップS23)。一方、ロウレベルであれば、ステップS21で生成したデプスデータを2フレーム分繰り返し出力する(ステップS24)。
【0043】
ステップS22またはステップS23の処理が終わると、ステップS21に戻って、ステップS21〜S24の処理が繰り返し行われる。
【0044】
このように、デプスデータ生成モジュール4は、フレームレート変換モジュール3から送られてくるフレームレート変換制御信号Sig1の論理に応じて、デプスデータを3フレーム分繰り返し出力するか、2フレーム分繰り返し出力するかを決定する。フレームレート変換モジュール3とデプス生成モジュールは、垂直同期信号に同期して、フレーム周期でそれぞれの処理を行うため、結果として、フレームレート変換モジュール3が生成するフレーム映像データと、デプス生成モジュールが生成するデプスデータとは、完全に同期が取れた状態になる。以下、このことをタイミング図を用いて説明する。
【0045】
図5は図1の映像処理装置1内の各部の動作タイミング図である。図5には、垂直同期信号(V同期信号)と、映像処理モジュール2の出力信号と、フレームレート変換モジュール3の出力信号と、フレームレート変換制御信号Sig1と、デプスデータとのタイミング図が図示されている。
【0046】
垂直同期信号は、フレームごとに1回出力されるパルス信号である。映像処理モジュール2の出力信号は、垂直同期信号にほぼ同期して出力される。フレームレート変換モジュール3の出力信号は、映像処理モジュール2の出力信号よりも、少し遅れたタイミングで出力される。
【0047】
フレームレート変換制御信号Sig1は、初期化状態のときには必ずハイレベルになる。その後は、2フレームに1回の割合で、ハイレベルになる。ロウレベルからハイレベルになるタイミングは、垂直同期信号のパルスが出力される前である。図5からわかるように、フレームレート変換制御信号Sig1がハイレベルになると、次のフレーム映像データと対応するデプスデータは3フレーム分繰り返し出力される。
【0048】
このように、フレームレート変換モジュール3がフレーム映像データを3フレーム分繰り返し出力することを、フレームレート変換制御信号Sig1をハイレベルにして事前にデプスデータ生成モジュール4に通知するため、フレーム映像データが3フレーム分繰り返し出力する際には、必ず対応するデプスデータも3フレーム分繰り返し出力される。これにより、フレーム映像データとデプスデータは完全に同期が取られる。
【0049】
図5は映像ソース10から二次元映像データが映像処理モジュール2に入力される場合の動作タイミングを示しているが、上述したように、映像ソース10から提供される映像データは、三次元映像データの場合もありうる。1920×1080@23.976Hzフレームパッキングがその具体例である。この場合の動作タイミング図は図6のようになる。
【0050】
図6には、垂直同期信号(V同期信号)と、映像処理モジュール2の出力信号と、フレームレート変換モジュール3の出力信号と、フレームレート変換制御信号Sig1と、デプスデータ生成モジュール4の入力信号と、デプスデータ生成モジュール4の出力信号との動作タイミング図が示されている。
【0051】
映像処理モジュール2の出力信号には、左目用視差データと右目用視差データがフレームごとに交互に含まれている。フレームレート変換モジュール3は、左目用視差データのみを用いて、フレームレート変換を行い、左目用視差データからなるフレーム映像データを3フレーム分繰り返し出力する場合と、2フレーム分繰り返し出力する場合とを交互に切り替える。
【0052】
フレームレート変換制御信号Sig1は、図5のフレームレート変換制御信号Sig1と同様に、初期化状態でいったんハイレベルになった後は、フレームレート変換モジュール3の出力信号に同期して、ハイレベルとロウレベルを交互に切り替える。
【0053】
一方、デプスデータ生成モジュール4には、左目用視差データと右目用視差データの双方が入力され、これらのデータを利用してデプスデータが生成される。そして、デプスデータ生成モジュール4は、フレームレート変換制御信号Sig1の論理に応じて、デプスデータを3フレーム分繰り返し出力する場合と、2フレーム分繰り返し出力する場合とを交互に切り替える。
【0054】
このように、本実施形態では、24fpsから60fpsへの2−3プルダウン処理を行う際に、フレームレート変換モジュール3がフレーム映像データを3フレーム分繰り返し出力する処理を開始する前に、フレームレート変換制御信号Sig1をハイレベルにしてデプスデータ生成モジュール4に通知するため、デプスデータ生成モジュール4はデプスデータを3フレーム分繰り返し出力するタイミングを正確に把握できる。したがって、フレーム映像データとデプスデータとの対応づけを正しく行うことができ、フレーム映像データに対して、誤ったデプスデータを対応づけるおそれがなくなり、フレーム映像データとデプスデータとを正しく同期させることができ、三次元映像の表示品質を向上できる。
【0055】
ところで、2−3プルダウン処理を行う際の変換後のフレーム周波数はジャスト60fpsではなく、60fpsの近似値である。このため、数百フレームに1回は、2フレーム分繰り返し出力する処理を2回連続して行ったり、3フレーム分繰り返し出力する処理を2回連続して行う必要がある。すなわち、24fpsを60fpsに変換する場合であっても、常に2−3プルダウン処理を行うわけではない。例えば、フレームレート変換モジュール3とデプスデータ生成モジュール4が2フレーム分繰り返し出力する処理を行う場合は、その間は、フレームレート変換制御信号Sig1はハイレベルにならず、ロウレベル固定にすればよい。逆に、フレームレート変換モジュール3とデプスデータ生成モジュール4が3フレーム分繰り返し出力する処理を行う場合は、その間は、フレームレート変換制御信号Sig1はハイレベル固定にすればよい。
【0056】
また、上述した説明では、2−3プルダウン処理を行う例を説明したが、フレームレート変換は、24fpsから60fpsへの変換に限定されない。30fpsから60fpsのように、整数倍あるいは整数分の1へのフレームレート変換の場合は、フレーム映像データの繰り返し回数は常に一定であるため、上述したフレームレート変換制御信号Sig1を設ける必要はない。ところが、フレーム映像データの繰り返し回数が変化する場合は、上述したフレームレート変換制御信号Sig1の論理を切り替えることで、次に出力するフレーム映像データの繰り返し回数をフレームレート変換モジュール3からデプスデータ生成モジュール4に通知でき、両モジュールの動作を完全に同期させることができる。
【0057】
このように、本願発明は、2−3プルダウン処理を行わない場合であっても、フレーム映像データの繰り返し回数が変化する場合に、広く適用可能である。
【0058】
図1の映像処理装置1は、三次元データ生成モジュール5で生成した三次元映像データを平面表示装置6に供給する例、すなわち映像表示装置として実現する例を示したが、本実施形態に係る映像処理装置1は、三次元データ生成モジュール5で生成した三次元映像データを、DVDやBD、HDDなどに記録する記録装置として適用してもよい。あるいは、本実施形態に係る映像処理装置1は、DVDやBD等の光ディスクの映像ソース10を用いて三次元映像データを生成して再生する光ディスク再生装置として適用してもよい。あるいは、インターネットを介してダウンロードから取得したデジタル映像コンテンツを用いて三次元映像データを生成して再生するデジタルAV再生装置やPCとして適用してもよい。さらには、本実施形態は、スマートフォンや携帯電話、携帯型ゲーム機にも適用可能である。
【0059】
上述した実施形態で説明した映像処理装置1の少なくとも一部は、ハードウェアで構成してもよいし、ソフトウェアで構成してもよい。ソフトウェアで構成する場合には、映像処理装置1の少なくとも一部の機能を実現するプログラムをフレキシブルディスクやCD−ROM等の記録媒体に収納し、コンピュータに読み込ませて実行させてもよい。記録媒体は、磁気ディスクや光ディスク等の着脱可能なものに限定されず、ハードディスク装置やメモリなどの固定型の記録媒体でもよい。
【0060】
また、映像処理装置1の少なくとも一部の機能を実現するプログラムを、インターネット等の通信回線(無線通信も含む)を介して頒布してもよい。さらに、同プログラムを暗号化したり、変調をかけたり、圧縮した状態で、インターネット等の有線回線や無線回線を介して、あるいは記録媒体に収納して頒布してもよい。
【0061】
本発明の態様は、上述した個々の実施形態に限定されるものではなく、当業者が想到しうる種々の変形も含むものであり、本発明の効果も上述した内容に限定されない。すなわち、特許請求の範囲に規定された内容およびその均等物から導き出される本発明の概念的な思想と趣旨を逸脱しない範囲で種々の追加、変更および部分的削除が可能である。
【符号の説明】
【0062】
1 映像処理装置
2 映像処理モジュール
3 フレームレート変換モジュール
4 デプスデータ生成モジュール
5 三次元データ生成モジュール
10 映像ソース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
二次元または三次元の入力映像データの画像処理を行う画像処理手段と、
前記画像処理手段で画像処理した後の映像データの連続する二フレームのうち一方のフレームの映像データを第1のフレーム数だけ繰り返して出力し他方のフレームの映像データを第2のフレーム数だけ繰り返して出力するようにフレームレート変換を行うフレームレート変換手段と、
前記第1のフレーム数が前記第2のフレーム数よりも大きい場合に前記第1のフレーム数分の映像データを出力する前に第1の論理値から第2の論理値に変化する制御信号の論理値に応じて、前記フレームレート変換手段でフレームレート変換を行う各フレームの映像データに対応づけて、デプスデータを生成するデプスデータ生成手段と、
前記フレームレート変換手段でフレームレート変換を行った後の各フレーム映像データと、各フレーム映像データに対応するデプスデータと、に基づいて、三次元映像データを生成する三次元データ生成手段と、を備えることを特徴とする映像処理装置。
【請求項2】
前記フレームレート変換手段は、前記フレームレート変換を行うとともに、前記制御信号を生成することを特徴とする請求項1に記載の映像処理装置。
【請求項3】
前記デプスデータ生成手段は、前記制御信号が前記第2の論理値のときに新たに生成するデプスデータを前記第1のフレーム数分繰り返して出力し、前記制御信号が前記第1の論理値のときに新たに生成するデプスデータを前記第2のフレーム数分繰り返して出力することを特徴とする請求項1または2に記載の映像処理装置。
【請求項4】
前記入力映像データは、右目用映像データと左目用映像データとを含んでおり、
前記フレームレート変換手段は、右目用映像データと左目用映像データとのいずれか一方を用いてフレームレート変換を行い、
前記デプスデータ生成手段は、右目用映像データと左目用映像データとを用いてデプスデータを生成することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の映像処理装置。
【請求項5】
前記フレームレート変換手段は、前記制御信号を前記第1の論理値から前記第2の論理値に変化させた後、前記一方のフレームの映像データを第1のフレーム数だけ繰り返して出力する間に前記制御信号を前記第2の論理値から前記第1の論理値に変化させることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の映像処理装置。
【請求項6】
前記入力映像データが24フレーム/秒で、前記三次元データ生成手段で生成される三次元映像データが60フレーム/秒の場合は、前記第1のフレーム数は3であり、前記第2のフレーム数は2であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の映像処理装置。
【請求項7】
前記フレームレート変換手段でフレームレート変換を行った後の通常のフレームでは、前記第1のフレーム数は前記第2のフレーム数より多く、所定のフレーム数に1回の割合で、前記第1のフレーム数と前記第2のフレーム数とは等しくなることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の映像処理装置。
【請求項8】
放送波を受信して復調処理を行って前記入力映像データを生成する受信モジュールを備えることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の映像処理装置。
【請求項9】
光ディスクから読み出した前記入力映像データに対応する三次元映像データを前記三次元データ生成手段で生成して再生する請求項1乃至8のいずれかに記載の映像処理装置。
【請求項10】
前記三次元データ生成手段で生成した三次元映像データを記録する記録手段を備えた請求項1乃至9のいずれかに記載の映像処理装置。
【請求項11】
二次元または三次元の入力映像データの画像処理を行う画像処理手段と、
前記画像処理手段で画像処理した後の映像データの連続する二フレームのうち一方のフレームの映像データを第1のフレーム数だけ繰り返して他方のフレームの映像データを第2のフレーム数だけ繰り返すフレームレート変換を行うタイミングに同期させて、前記フレームレート変換で生成された各フレームごとに各映像データに対応するデプスデータを生成する三次元情報生成準備手段と、
フレームレート変換を行った後の映像データと、各映像データに対応する前記デプスデータと、に基づいて、三次元映像データを生成する三次元データ生成手段と、を備えることを特徴とする映像処理装置。
【請求項12】
二次元または三次元の入力映像データの画像処理を行うステップと、
画像処理した後の映像データの連続する二フレームのうち一方のフレームの映像データを第1のフレーム数だけ繰り返して出力し他方のフレームの映像データを第2のフレーム数だけ繰り返して出力するようにフレームレート変換を行うステップと、
前記第1のフレーム数が前記第2のフレーム数よりも大きい場合に前記第1のフレーム数分の映像データを出力する前に第1の論理値から第2の論理値に変化する制御信号の論理値に応じて、フレームレート変換を行う各フレームの映像データに対応づけて、デプスデータを生成するステップと、
フレームレート変換を行った後の映像データと、各映像データに対応する前記デプスデータと、に基づいて、三次元映像データを生成するステップと、を備えることを特徴とする映像処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−51620(P2013−51620A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−189518(P2011−189518)
【出願日】平成23年8月31日(2011.8.31)
【特許番号】特許第5100874号(P5100874)
【特許公報発行日】平成24年12月19日(2012.12.19)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】