説明

映像処理装置及び映像処理方法

【課題】 再生のタイミングが不明である動画像データを滑らかに再生できる映像処理装置を実現する。
【解決手段】 コンテンツ復号部32は、動画像データ111AをGOP単位で復号し、処理対象のGOPに表示タイミングに関する情報が含まれているかどうかを判定する。処理対象のGOPに表示タイミングに関する情報が含まれている場合、表示タイミング算出部33は、この情報に基づいて、処理対象のGOPに含まれるピクチャの表示タイミングを決定する。処理対象のGOPに表示タイミングに関する情報が含まれていない場合、表示タイミング算出部33は、処理対象のGOPの一つ前に位置する再生済みのGOPのピクチャ数、ピクチャ構造等に基づいて、処理対象のGOPの表示タイミングを決定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動画像データを再生する映像処理装置及び映像処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、パーソナルコンピュータ、ビデオレコーダ等の電子機器で動画像データを再生し、視聴する機会が増加している。再生される動画像データには、DVDに収録された動画像データやテレビジョン放送信号によって放送される放送番組データを録画した動画像データの他、インターネット上の動画像データ共有サイト等から入手された動画像データ等がある。このため、パーソナルコンピュータ、ビデオレコーダ等の電子機器には、MPEG−2(H.262|MPEG−2),MPEG−4,MPEG−4 AVC(H.264|MPEG−4 AVC)等、さまざまな形式の動画像データに対応した再生機能が要求される。
【0003】
特許文献1には、ビデオデータに記載されているフレームレートを使用しないで、オーディオとビデオの同期合わせを制御できるオーディオ・ビデオ同期再生方法が開示されている。このオーディオ・ビデオ同期再生方法は、ビデオデータ内においてタイムスタンプが付加されたフレームを用いて、最新のタイムスタンプと一つ前のタイムスタンプとの間の差分時間及びフレーム数を算出し、これら差分時間とフレーム数とを用いて、フレームレートを算出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−355726号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、動画像データに対して、再生のタイミングに関する情報をGOPのような処理単位毎に付加することは、動画像データの形式によっては必須でない場合がある。例えば、MPEG−4 AVC(H.264|MPEG−4 AVC)の動画像データは、再生のタイミングに関する情報を含まないGOPも使用し得る。このため、例えば、ライブストリームのような動画像データを途中から再生する場合、ピクチャの表示タイミングが分からず、滑らかに再生することができない可能性がある。
【0006】
また、インターネット上で配信された動画像データ等には、厳密には規格に準拠しておらず、再生のタイミングに関する情報が付加されていない動画像データが存在する可能性がある。このような動画像データも、再生のタイミングが不明であるため、滑らかに再生することが困難である。
【0007】
本発明は上述の事情を考慮してなされたものであり、再生のタイミングが不明である動画像データを滑らかに再生できる映像処理装置及び映像処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の課題を解決するため、本発明の映像処理装置は、所定の再生時間に対応する複数のピクチャをそれぞれ含む複数の処理単位から構成される符号化された動画像データを復号する復号手段と、前記復号手段によって前記動画像データ内の再生対象の処理単位が復号される際に、前記再生対象の処理単位内に含まれるピクチャをカウントすることによってピクチャの数を検出する検出手段と、前記再生対象の処理単位内にタイミング情報が含まれていない場合、前記再生対象の処理単位の一つ前の再生済みの処理単位の復号時に前記検出手段によって検出されたピクチャの数と、前記所定の再生時間とに基づいて再生フレームレートを算出するフレームレート算出手段と、前記算出された再生フレームレートに基づいて、前記再生対象の処理単位内に含まれる複数のピクチャの表示タイミングを決定する表示タイミング決定手段とを具備する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、再生のタイミングが不明である動画像データを滑らかに再生できる映像処理装置および映像処理方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施形態に係る映像処理装置の外観の例を示す斜視図。
【図2】同実施形態の映像処理装置の構成例を示すブロック図。
【図3】同実施形態の映像処理装置で用いられる映像処理アプリケーションの機能構成の例を示すブロック図。
【図4】同実施形態の映像処理装置に入力される動画像データの構成例を示す図。
【図5】図5の動画像データの具体的な構成例を示す図。
【図6】図5の動画像データの表示タイミングを算出する方法を説明するための図。
【図7】図5の動画像データの表示タイミングを算出する具体例を示す図。
【図8】図5の動画像データの表示タイミングを算出する別の具体例を示す図。
【図9】同実施形態の映像処理装置によって実行される表示タイミング算出処理の手順を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。
【0012】
まず、図1および図2を参照して、本発明の一実施形態に係る映像処理装置の構成を説明する。本実施形態の映像処理装置は、例えば、情報処理装置として機能するノートブック型の携帯型パーソナルコンピュータ10から実現されている。
【0013】
このパーソナルコンピュータ10は、放送番組データ、外部機器から入力されるビデオデータ、インターネットのようなネットワークを通じて配信されるビデオデータといった、映像コンテンツデータ(オーディオビジュアルコンテンツデータ)を再生することができる。
【0014】
図1はコンピュータ10のディスプレイユニットを開いた状態における斜視図である。本コンピュータ10は、コンピュータ本体11と、ディスプレイユニット12とから構成されている。ディスプレイユニット12には、TFT−LCD(Thin Film Transistor Liquid Crystal Display)17から構成される表示装置が組み込まれている。
【0015】
ディスプレイユニット12は、コンピュータ本体11に対し、コンピュータ本体11の上面が露出される開放位置とコンピュータ本体11の上面を覆う閉塞位置との間を回動自在に取り付けられている。コンピュータ本体11は薄い箱形の筐体を有しており、その上面にはキーボード13、本コンピュータ10をパワーオン/パワーオフするためのパワーボタン14、入力操作パネル15、タッチパッド16、およびスピーカ18A,18Bなどが配置されている。
【0016】
次に、図2を参照して、本コンピュータ10のシステム構成について説明する。
【0017】
本コンピュータ10は、図2に示されているように、CPU101、ノースブリッジ102、主メモリ103、サウスブリッジ104、グラフィクスプロセッシングユニット(GPU)105、ビデオメモリ(VRAM)105A、サウンドコントローラ106、BIOS−ROM109、LANコントローラ110、ハードディスクドライブ(HDD)111、DVDドライブ112、ビデオプロセッサ113、メモリ113A、ネットワークコントローラ114、IEEE 1394コントローラ115、エンベデッドコントローラ/キーボードコントローラIC(EC/KBC)116、TVチューナ117、およびEEPROM118等を備えている。
【0018】
CPU101は本コンピュータ10の動作を制御するプロセッサであり、ハードディスクドライブ(HDD)111から主メモリ103にロードされる、オペレーティングシステム(OS)201、および映像処理アプリケーションプログラム202のような各種アプリケーションプログラムを実行する。映像処理アプリケーションプログラム202は動画像データを再生するためのソフトウェアである。この映像処理アプリケーションプログラム202は、TVチューナ117によって受信された放送番組データを記録した動画像データ、HDD111やDVDドライブ112に格納されたDVD等に記録された動画像データ、LANコントローラ110によって受信されるネットワーク上のサーバから配信される動画像データ等を再生することができる。また、CPU101は、BIOS−ROM109に格納されたBIOS(Basic Input Output System)も実行する。BIOSはハードウェア制御のためのプログラムである。
【0019】
ノースブリッジ102はCPU101のローカルバスとサウスブリッジ104との間を接続するブリッジデバイスである。ノースブリッジ102には、主メモリ103をアクセス制御するメモリコントローラも内蔵されている。また、ノースブリッジ102は、PCI EXPRESS規格のシリアルバスなどを介してGPU105との通信を実行する機能も有している。
【0020】
GPU105は、本コンピュータ10のディスプレイモニタとして使用されるLCD17を制御する表示コントローラである。このGPU105によって生成される表示信号はLCD17に送られる。また、GPU105は、HDMI制御回路3およびHDMI端子2を介して、外部ディスプレイ装置1にデジタル映像信号を送出することもできる。
【0021】
HDMI端子2は外部ディスプレイ接続端子である。HDMI端子2は、非圧縮のデジタル映像信号と、デジタルオーディオ信号とを一本のケーブルでテレビのような外部ディスプレイ装置1に送出することができる。HDMI制御回路3は、HDMIモニタと称される外部ディスプレイ装置1にデジタル映像信号をHDMI端子2を介して送出するためのインタフェースである。
【0022】
サウスブリッジ104は、LPC(Low Pin Count)バス上の各デバイス、およびPCI(Peripheral Component Interconnect)バス上の各デバイスを制御する。また、サウスブリッジ104は、ハードディスクドライブ(HDD)111およびDVDドライブ112を制御するためのIDE(Integrated Drive Electronics)コントローラを内蔵している。さらに、サウスブリッジ104は、サウンドコントローラ106との通信を実行する機能も有している。
【0023】
またさらに、サウスブリッジ104には、PCI EXPRESS規格のシリアルバスなどを介してビデオプロセッサ113が接続されている。
【0024】
サウンドコントローラ106は音源デバイスであり、再生対象のオーディオデータをスピーカ18A,18BまたはHDMI制御回路3に出力する。
【0025】
LANコントローラ110は、例えばIEEE 802.3規格の通信を実行する通信デバイスである。ネットワークコントローラ114は、たとえばIEEE 802.11規格の無線通信を実行する無線通信デバイスである。IEEE 1394コントローラ115は、IEEE 1394規格のシリアルバスを介して外部機器との通信を実行する。
【0026】
エンベデッドコントローラ/キーボードコントローラIC(EC/KBC)116は、電力管理のためのエンベデッドコントローラと、キーボード(KB)13およびタッチパッド16を制御するためのキーボードコントローラとが集積された1チップマイクロコンピュータである。このエンベデッドコントローラ/キーボードコントローラIC(EC/KBC)116は、ユーザによるパワーボタン14の操作に応じて本コンピュータ10をパワーオン/パワーオフする機能を有している。さらに、エンベデッドコントローラ/キーボードコントローラIC(EC/KBC)116は、リモコンユニットインタフェース20との通信を実行する機能を有している。
【0027】
TVチューナ117はテレビジョン(TV)放送信号によって放送される放送番組データを受信する受信装置であり、アンテナ端子19に接続されている。このTVチューナ117は、例えば、地上波デジタルTV放送のようなデジタル放送番組データを受信可能なデジタルTVチューナとして実現されている。また、TVチューナ117は、外部機器から入力されるビデオデータをキャプチャする機能も有している。
【0028】
図3は、映像処理アプリケーションプログラム202の構成を示すブロック図である。映像処理アプリケーションプログラム202は、上述したように、TVチューナ117によって受信された放送番組データを記録した動画像データ、HDD111やDVDドライブ112に格納されたDVD等に記録された動画像データ、インターネット上のサーバから配信される動画像データ等を再生することができる。以下では、HDD111に格納された動画像データ111Aを再生する場合の例について説明する。
【0029】
映像処理アプリケーションプログラム202は、符号化(圧縮符号化)された動画像データ111Aを復号および再生する。動画像データ111Aは、例えば、H.264|MPEG−4 AVC(以下、H.264/AVCと云う)やMPEG−2,MPEG−4のような符号化方式で符号化された動画像ストリームから構成されている。この動画像データ111Aは複数のGOPから構成されている。各GOPは、所定の再生時間に対応する複数のピクチャを含む処理単位である。映像処理アプリケーションプログラム202は、制御部31、コンテンツ復号部32、表示タイミング算出部33、再生処理部34、データ保存部35、ピクチャ群情報検出部36、及びフレームレート算出部37を備える。
【0030】
制御部31は、映像処理アプリケーションプログラム202内の各部を制御する。コンテンツ復号部32は、HDD111内に格納されている圧縮符号化された動画像データ111Aを読み出し、読み出した動画像データ111Aを復号する。動画像データ111Aの復号は例えばGOP単位で実行することができる。
【0031】
図4は、動画像データ111Aの構成の例を示す図である。動画像データ111Aは、GOP(Group of Pictures)41と呼ばれる単位で構成される。GOP41は、所定の期間中(例えば、0.5秒間)に再生される複数のピクチャのデータを含む。GOP41は、複数のアクセスユニット(AU)42で構成される。
【0032】
アクセスユニット42は、符号化された動画像データのビット・ストリーム中の情報をピクチャ毎にアクセスするための単位である。各アクセスユニット42は、複数のNALユニット43で構成される。
【0033】
各NALユニット43は、NALヘッダ431と圧縮された動画像データ432とを含む。NALヘッダ431は、そのNALユニットが参照ピクチャであるかどうか示す情報であるnal_ref_idcと、NALユニットの種類を示す識別子であるnal_unit_typeとを含む。
【0034】
なお、NALユニット43には、VCL NALユニットと非VCL NALユニットとがある。VCL NALユニットは、画像データであるピクチャ(スライス)のデータを含むNALユニットである。非VCL NALユニットは、SPS(Sequence Parameter Set)やPPS(Picture Parameter Set)等のパラメータ・セット、SEI(Supplemental Enhancement Information)、AUデリミタなどのメタデータを含むNALユニットである。
【0035】
図5は、アクセスユニット42に含み得る幾つかのNALユニット51の例を示す図である。
【0036】
アクセスユニット42は、AUデリミタ511、SPS512、PPS513、SEI514、主ピクチャ515、冗長ピクチャ516、EOS(End of Sequence)517、EOS(End of Stream)518等から構成される。
【0037】
AUデリミタ511は、アクセスユニットの先頭を示す開始符号である。SPS512は、プロファイル、レベルやシーケンス全体の符号化モード等、シーケンス全体の符号化に関わる情報を含むヘッダである。但し、SPS512は、シーケンスの先頭に付加されるわけではなく、シーケンスの先頭までに送られたSPS512がヘッダ情報として用いられる。PPS513は、ピクチャ全体の符号化モード(例えば、エントロピー符号化モード、ピクチャ単位の量子化パラメータ初期値等)を示すヘッダ情報である。但し、PPS513は、全てのピクチャに付加されるわけではなく、PPS513がない場合には、ピクチャの先頭までに送られたPPS513がヘッダ情報として用いられる。SEI514は、シーケンスの復号に必須ではない付加情報を示す。例えば、ピクチャのタイミング情報、ランダム・アクセスに用いられる情報、ユーザにより定義される情報等が記述される。主ピクチャ515は、通常のピクチャの情報を含む。主ピクチャ515に含まれる情報を復号することで、シーケンス内のピクチャを復元することができる。冗長ピクチャ516は、伝送エラー等が発生した場合に利用されるピクチャの情報を含む。したがって、冗長ピクチャ516は、伝送エラー等により主ピクチャ515のデータの一部が失われた際等に利用される。EOS517は、ひとつのシーケンスの終端を示す符号である。EOS518は、ストリームの終端を示す符号である。
【0038】
コンテンツ復号部32は、動画像データ111Aを復号して、上述のようなGOP41、アクセスユニット42、NALユニット43等の構造を解析し、解析結果を表示タイミング算出部33へ出力する。また、コンテンツ復号部32内に設けられたピクチャ群情報検出部36は、再生対象のGOPが復号される時に、その再生対象のGOPに含まれるピクチャ群に関するピクチャ群情報を検出する。ピクチャ群情報は、再生対象のGOPに含まれるピクチャの数、及びその再生対象の処理単位内に含まれるプログレッシブ方式のフレームピクチャとインターレース方式のフィールドピクチャとの割合、等を示す。ピクチャ群情報検出部36は、検出したピクチャ群情報をデータ保存部35へ出力する。
【0039】
データ保存部35は、入力されたピクチャ群情報を主メモリ103等へ保存する。ピクチャ群情報は、再生対象のGOPが復号される度に保存される。したがって、データ保存部35は、前の再生対象のGOPのピクチャ群情報が保存されている場合、このピクチャ群情報を、新たな再生対象のGOPのピクチャ群情報で更新する。
【0040】
表示タイミング算出部33は、コンテンツ復号部32による解析結果に基づき、再生対象のGOP内のピクチャそれぞれの表示タイミングを決定する。表示タイミング算出部33は、アクセスユニット423を再生する場合、SPS512やSEI514に含まれるパラメータに基づき、主ピクチャ515に格納されたピクチャを表示するタイミングを決定する。表示タイミングは、例えば、SEI514の一部であるPicture Timing SEIと、SPS512の一部であるVUI(Video Usability Information)とを用いて算出される。
【0041】
Picture Timing SEIには、ピクチャの構造情報等が記述される。Picture Timing SEIには、例えば、pic_structの情報が記述される。
【0042】
pic_structには、ピクチャの構造が記述される。例えば、インターレース方式の奇数ラインに対応するピクチャと偶数ラインに対応するピクチャのデータ内での順序や、各ピクチャの表示回数等が記述される。
【0043】
VUIには、ビデオの表示情報に関連するパラメータが記述される。VUIには、例えば、time_scale及びnum_units_in_tickの値が設定される。time_scaleは、1秒間の時間単位の数を示す。例えば、27MHzのクロックの場合、time_scaleには27000という値が設定される。
【0044】
また、num_units_in_tickは、クロック動作周波数time_scale[Hz]での時間単位の数を示す。この値がクロックカウンタ(clock tick counter)での1インクリメントとなる。1clock tickは、符号化データ内で表現可能な時間の最小単位となる。例えば、ビデオのクロック周波数が30000/1001[Hz]である場合、time_scaleには30000が設定され、num_units_in_tickには1001が設定される。
【0045】
表示タイミング算出部33は、上述したPicture Timing SEIのpic_struct,VUIのtime_scale及びnum_units_in_tick等を用いることで、複数のアクセスユニット42から構成される、GOP41に含まれるピクチャそれぞれの表示タイミングを決定する。
【0046】
しかし、アクセスユニット42に必須のNALユニットは主ピクチャ515のみであり、SPS512やSEI514等の他のNALユニットは必要に応じてアクセスユニットに格納されるオプションのNALユニットである。つまり、動画像データ111Aに対して、再生のタイミングに関する情報をアクセスユニット42毎又はGOP41毎に付加することは必須ではない。また、インターネット上で配信された動画像データ等には、厳密には規格に準拠しておらず、再生のタイミングに関する情報が適切に付加されていないアクセスユニット42やGOP41が存在する可能性がある。したがって、ライブストリームのような動画像データを途中から再生する場合や、アクセスユニット42(GOP41)に再生のタイミングの情報が格納されたNALユニットが含まれていない場合には、ピクチャの表示タイミングが分からず、滑らかに再生することは困難である。
【0047】
このため、コンテンツ復号部32は、復号された再生対象のGOPが表示タイミングに関する情報を含んでいるかどうかを判定する。再生対象のGOPが表示タイミングに関する情報を含んでいない場合、表示タイミング算出部33は、処理対象のGOPの一つ前の再生済みのGOP(一つ前のGOP)の情報(ピクチャ群情報)を利用して、処理対象のGOPの表示タイミング(タイムスタンプの値)を算出する。
【0048】
一つ前のGOPの情報は、データ保存部35により主メモリ103等に格納される。一つ前のGOPの情報は、上述したように、一つ前のGOPに含まれるピクチャ数、一つ前のGOPに含まれるフレームピクチャとフィールドピクチャとの割合、等である。また、一つ前のGOPの情報は、例えば、一つ前のGOPの再生時間、ピクチャの表示回数等の情報をさらに含み得る。
【0049】
表示タイミング算出部33に設けられたフレームレート算出部37は、例えば、図6に示すような一つ前のGOP411の再生時間と一つ前のGOP411に含まれるピクチャ数とに基づき、一つ前のGOP411のフレームレート、つまり単位時間当たりの再生フレーム数[フレーム/秒]を次式により算出する。
【0050】
一つ前のGOPに含まれるピクチャ数/一つ前のGOPの再生時間
このように、フレームレート算出部37は、データ保存部35によって主メモリ103等に格納されたピクチャ群情報(一つ前のGOPのピクチャ群情報)を用いて、フレームレートを算出する。
【0051】
図7は、一つ前のGOP411の再生時間とピクチャ数とに基づいて、表示タイミングを決定する例を示す。図7に示す例では、一つ前のGOP411の再生時間は0.5秒であり、一つ前のGOP411に含まれるピクチャ61の数は15枚である。なお、一つ前のGOP411に含まれるピクチャ61が、全てプログレッシブ方式のピクチャ(フレームピクチャ)である場合を想定する。
【0052】
この場合、単位時間当たりの再生フレーム数は30フレーム/秒となる。表示タイミング算出部33は、算出した単位時間当たりの再生フレーム数に基づいて、処理対象のGOPに含まれるピクチャの表示タイミングを決定する。表示タイミング算出部33は、単位時間当たりの再生フレーム数が30フレーム/秒である場合には、1/30秒毎にピクチャが表示されるように表示タイミングを決定する。
【0053】
また、図8は、表示タイミング算出部33により表示タイミングを決定する別の例を示す。図8に示す例では、一つ前のGOP411の再生時間は0.5秒である。一つ前のGOP411に含まれるピクチャ71は、奇数ラインを表示するための12枚のピクチャと偶数ラインを表示するための12枚のピクチャからなる、24枚のインターレース方式のフィールドピクチャ71である。1フレームの表示には、奇数ラインのピクチャと偶数ラインのピクチャの2枚のピクチャが使用される。このため、24枚のインターレース方式のピクチャ71により、12フレームの画像がLCD17に表示される。したがって、単位時間当たりの再生フレーム数は24フレーム/秒となる。表示タイミング算出部33は、単位時間当たりの再生フレーム数が24フレーム/秒である場合には、1/24秒毎に奇数ラインのピクチャと偶数ラインのピクチャとが表示されるように表示タイミングを決定する。
【0054】
また、図8下部に、一つ前のGOP411に含まれるピクチャ71が3:2プルダウン方式で表示される場合のピクチャ72を示す。図に示すように、一部のピクチャを二度表示することで、表示されるフレーム数を増加させている。このため、0.5秒の再生時間中に、15フレームの画像がLCD17に表示される。したがって、単位時間当たりの再生フレーム数は30フレーム/秒となる。表示タイミング算出部33は、単位時間当たりの再生フレーム数が30フレーム/秒である場合には、1/30秒毎に奇数ラインのピクチャと偶数ラインのピクチャとが表示されるように表示タイミングを決定する。
【0055】
表示タイミング算出部33は、決定した表示タイミングの情報を再生処理部34へ出力する。
【0056】
再生処理部34は、決定された表示タイミングの情報に基づいて、処理対象のGOPに含まれるピクチャをLCD17に表示する。つまり、再生処理部34は、処理対象のGOPに含まれるピクチャに、表示タイミングに基づくタイムスタンプ情報を付加する。ピクチャは、付加されたタイムスタンプ情報に応じてLCD17に表示される。
【0057】
以上の構成により、表示タイミングに関する情報が付加されていないGOPを再生する場合にも、構造が同一、又は類似すると推定される一つ前のGOP411の情報を用いて、処理対象のGOPの表示タイミングを推定し、推定した表示タイミングに従って、処理対象のGOPに含まれるピクチャを再生することで、動画像データ111Aを滑らかに再生することができる。
【0058】
図9は、映像処理アプリケーション202による表示タイミング算出処理の手順を示すフローチャートである。
【0059】
まず、映像処理アプリケーション202は、動画像データ111A内の再生対象のGOPを復号し、その復号したGOPにPicture Timing SEIやVUI等の表示タイミングに関する情報が含まれているかどうかを判定する(ステップS101)。また、再生対象のGOPの復号時には、映像処理アプリケーション202は、再生対象のGOPに含まれるピクチャ数をカウントする処理と、再生対象のGOPに含まれるフレームピクチャ数およびフィールドピクチャ数をカウントする処理とを実行する。
【0060】
再生対象のGOPに表示タイミングに関する情報が含まれている場合(ステップS101のYES)、映像処理アプリケーション202は、Picture Timing SEI及びVUI等を用いて、再生対象のGOPに含まれるピクチャの表示タイミングを算出する(ステップS102)。
【0061】
再生対象のGOPに表示タイミングに関する情報が含まれていない場合(ステップS101のNO)、映像処理アプリケーション202は、再生対象のGOPの一つ前に位置する再生済みのGOP(一つ前のGOP)411の情報(ピクチャ群情報)に基づいて、表示タイミングを算出する(ステップS103)。映像処理アプリケーション202は、保存された一つ前のGOP411の再生時間、ピクチャ枚数、及びピクチャ構造(フレームピクチャとフィールドピクチャとの割合)に基づいて、表示タイミングを算出する。具体的には、映像処理アプリケーション202は、一つ前のGOP411の再生時間と、この再生時間中にLCD17に表示されるフレーム数とから、単位時間当たりのフレーム数(フレームレート)を算出する。そして、映像処理アプリケーション202は、各ピクチャがプログレッシブ方式のピクチャであるかインターレース方式のピクチャであるか等を考慮して、各ピクチャを表示するタイミングを決定する。
【0062】
そして、映像処理アプリケーション202は、算出された表示タイミングに合わせて、再生対象のGOPに含まれるピクチャをLCD17に表示する(ステップS104)。つまり、映像処理アプリケーション202は、再生対象のGOPに含まれるピクチャに表示タイミングに応じたタイムスタンプ情報を付加する。再生対象のGOPに含まれるピクチャは、タイムスタンプ情報に従って再生される。
【0063】
また、映像処理アプリケーション202は、再生対象のGOPに含まれるピクチャ枚数とピクチャ構造の情報とを、ピクチャ群情報として主メモリ103等に保存する(ステップS105)。
【0064】
次いで、映像処理アプリケーション202は、動画像データ111Aに、再生対象のGOPの次のGOPが存在するかどうかを判定する(ステップS106)。
【0065】
再生対象のGOPの次のGOPが存在する場合(ステップS106のYES)、この次のGOPを新たな再生対象のGOPに設定し(ステップS107)、ステップS101以降の処理を実行する。
【0066】
再生対象のGOPの次のGOPが存在しない場合(ステップS106のNO)、動画像データ111Aが最後まで再生されたと判断し、処理を終了する。
【0067】
以上の処理により、再生対象のGOPに表示タイミングに関する情報が含まれていない場合にも、動画像データ111Aを滑らかに再生することができる。映像処理アプリケーション202は、再生対象のGOPに表示タイミングに関する情報が含まれている場合には、その情報を用いてピクチャの表示タイミングを算出し、再生対象のGOPに表示タイミングに関する情報が含まれていない場合には、構造が同一、又は類似すると推定される一つ前のGOP411の情報を用いて、再生対象のGOPの表示タイミングを算出する。
【0068】
なお、再生対象のGOPが、動画像データ111Aのシーケンスの先頭のGOPである場合には、所定の表示タイミングに従ってGOPに含まれるピクチャを表示し、以降のGOPを表示する場合に、再生済みの一つ前のGOPのピクチャ枚数、ピクチャ構造等を用いて表示タイミングを決定し、処理対象のGOPに含まれるピクチャを表示してもよい。
【0069】
以上説明したように、本実施形態によれば、再生のタイミングが不明である動画像データを滑らかに再生できる。映像処理アプリケーション202の表示タイミング算出部33は、再生対象のGOPに表示タイミングに関する情報が含まれている場合には、この情報を用いて再生対象のGOPに含まれるピクチャの表示タイミングを決定し、再生対象のGOPに表示タイミングに関する情報が含まれていない場合には、再生対象のGOPの一つ前に位置する再生済みのGOPを再生した際に得られた一つ前のGOPのピクチャ数、ピクチャ構造等に基づいて、再生対象のGOPに含まれるピクチャの表示タイミングを決定する。
【0070】
再生対象のGOPと再生対象のGOPの一つ前のGOPとは、ピクチャの表示タイミングが同一又は類似しているものと推定される。このため、再生対象のGOPに表示タイミングに関する情報が含まれていない場合に、一つ前のGOP411のピクチャ数、ピクチャ構造等に基づいて表示タイミングを決定し、決定した表示タイミングに従って、再生対象のGOPに含まれるピクチャを表示することで、再生のタイミングが不明である動画像データを滑らかに再生することができる。
【0071】
なお、動画像データ111Aの再生にはリアルタイムでの処理が要求されるため、本実施形態では、再生対象のGOPを復号する毎にその再生対象のGOPのピクチャ数、ピクチャ構造を検出し、現在の再生対象のGOPに表示タイミング情報が含まれない場合には、再生済みの一つ前のGOPの復号時に検出されたピクチャ数、ピクチャ構造等の情報に基づいて、現在の再生対象のGOPの表示タイミングを算出している。したがって、ネットワークを介して動画像データを受信しながら再生するといったストリーミング再生を行う場合やライブストリームのような動画像データを途中から再生する場合であっても、動画像データをリアルタイム且つ滑らかに再生することができる。
【0072】
また、本実施形態の表示タイミング算出処理の手順は全てソフトウェアによって実行することができる。このため、表示タイミング算出処理の手順を実行するプログラムをコンピュータ読み取り可能な記憶媒体を通じて通常のコンピュータにインストールして実行するだけで、本実施形態と同様の効果を容易に実現することができる。
【0073】
また本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素からいくつかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0074】
202…映像処理アプリケーション、31…制御部、32…コンテンツ解析部、33…表示タイミング算出部、34…再生処理部、35…データ保存部、36…ピクチャ群情報検出部、37…フレームレート算出部、111…HDD、111A…動画像データ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の再生時間に対応する複数のピクチャをそれぞれ含む複数の処理単位から構成される符号化された動画像データを復号する復号手段と、
前記復号手段によって前記動画像データ内の再生対象の処理単位が復号される際に、前記再生対象の処理単位内に含まれるピクチャをカウントすることによってピクチャの数を検出する検出手段と、
前記再生対象の処理単位内にタイミング情報が含まれていない場合、前記再生対象の処理単位の一つ前の再生済みの処理単位の復号時に前記検出手段によって検出されたピクチャの数と、前記所定の再生時間とに基づいて再生フレームレートを算出するフレームレート算出手段と、
前記算出された再生フレームレートに基づいて、前記再生対象の処理単位内に含まれる複数のピクチャの表示タイミングを決定する表示タイミング決定手段とを具備する映像処理装置。
【請求項2】
前記表示タイミング決定手段は、前記再生対象の処理単位内に前記タイミング情報が含まれている場合、前記タイミング情報に基づいて前記表示タイミングを決定する請求項1記載の映像処理装置。
【請求項3】
前記検出手段は、前記再生対象の処理単位内に含まれるプログレッシブ方式のフレームピクチャとインターレース方式のフィールドピクチャとの割合をさらに検出し、
前記フレームレート算出手段は、前記一つ前の再生済みの処理単位の復号時に前記検出手段によって検出されたピクチャの数及び前記プログレッシブ方式のフレームピクチャとインターレース方式のフィールドピクチャとの割合と、前記所定の再生時間とに基づいて、再生フレームレートを算出する請求項1記載の映像処理装置。
【請求項4】
前記検出されたピクチャの数をメモリに保存する保存手段をさらに具備し、
前記フレームレート算出手段は、前記メモリに保存されたピクチャの数と前記所定の再生時間とに基づいて前記再生フレームレートを算出する請求項1記載の映像処理装置。
【請求項5】
所定の再生時間に対応する複数のピクチャをそれぞれ含む複数の処理単位から構成される符号化された動画像データを復号し、
前記復号することによって前記動画像データ内の再生対象の処理単位が復号される際に、前記再生対象の処理単位内に含まれるピクチャをカウントすることによってピクチャの数を検出し、
前記再生対象の処理単位内にタイミング情報が含まれていない場合、前記再生対象の処理単位の一つ前の再生済みの処理単位の復号時に前記検出することによって検出されたピクチャの数と、前記所定の再生時間とに基づいて再生フレームレートを算出し、
前記算出された再生フレームレートに基づいて、前記再生対象の処理単位内に含まれる複数のピクチャの表示タイミングを決定する映像処理方法。
【請求項6】
前記決定することは、前記再生対象の処理単位内に前記タイミング情報が含まれている場合、前記タイミング情報に基づいて前記表示タイミングを決定する請求項5記載の映像処理方法。
【請求項7】
前記検出することは、前記再生対象の処理単位内に含まれるプログレッシブ方式のフレームピクチャとインターレース方式のフィールドピクチャとの割合をさらに検出し、
前記算出することは、前記一つ前の再生済みの処理単位の復号時に前記検出することによって検出されたピクチャの数及び前記プログレッシブ方式のフレームピクチャとインターレース方式のフィールドピクチャとの割合と、前記所定の再生時間とに基づいて、前記再生フレームレートを算出する請求項5記載の映像処理方法。
【請求項8】
前記検出されたピクチャの数をメモリに保存することをさらに具備し、
前記算出することは、前記メモリに保存されたピクチャの数と前記所定の再生時間とに基づいて前記再生フレームレートを算出する請求項5記載の映像処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−172252(P2011−172252A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−66570(P2011−66570)
【出願日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【分割の表示】特願2009−150043(P2009−150043)の分割
【原出願日】平成21年6月24日(2009.6.24)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】