説明

映像品質客観評価装置及び方法及びプログラム

【課題】 基準映像と劣化映像の解像度、フォーマット形式、表示レートが異なる場合であっても、映像品質推定を行うことが可能なフルレファレンス型の映像品質客観評価装置を提供する。
【解決手段】 本発明は、基準映像と劣化映像の画素値を直接比較するのではなく、入力された基準映像と劣化映像の前後フレームの映像劣化量の違いを抽出する相対劣化特徴量抽出部と、相対劣化特徴量抽出部から出力される特徴量に基づいて、映像品質評価値を導出する映像品質推定部とを設けることにより、解像度やフォーマットが異なる場合でも映像品質を推定することを可能にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、映像品質客観評価装置及び方法及びプログラムに係り、特に、IPTV(Internet Protocol TeleVisiton)サービスや携帯電話を利用する映像配信サービス、テレビ電話サービスなどにおける映像品質を客観的に評価するための映像品質客観評価装置及び方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
通信回線の高速化、広帯域化や放送波を受信する端末の多様化に伴い、様々な端末を用いて映像サービスを享受できる環境が整いつつある。
【0003】
映像サービスには、映像にブロック状のひずみやボケ等の劣化が生じる。その原因は、一般的に送信帯域が制限されていることを利用して符号化が行われたたり、伝送路の品質低下に伴い、ビット誤りやパケット損失が発生することによる。
【0004】
そのため、良好な品質で映像サービスを提供していることを確認するためには、サービス提供前もしくは提供中にユーザが体験する映像の品質を測定し、ユーザに対して提供される映像の品質が良好であることを確認及び監視することが重要である。
【0005】
そこで、ユーザが体感する映像品質を適切に評価できる映像品質評価技術が必要である。
【0006】
映像品質を評価する手法には、主観評価法(例えば、非特許文献1参照)と客観評価法(例えば、非特許文献2)が存在する。
【0007】
主観評価法は、評価環境(室内照度や室内騒音など)が再現可能な施設において多数のユーザに映像を評価してもらう必要がある。そのため、高いコストとなり、評価に時間がかかるため品質をリアルタイムに評価する用途には向かない。そこで、映像信号から物理的な特徴量を導出して、映像品質評価値を出力する映像品質評価法の開発が望まれている。
【0008】
従来の客観評価法には、基準映像と劣化映像を入力として両者の映像信号(画素情報)を比較して、映像品質に影響を与える特徴量から映像品質を導出する評価技術がある(例えば、非特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】ITU-T勧告P. 910 "Subjective video quality assessment methods for multimedia applications".
【非特許文献2】ITU-T勧告J.247 "Objective perceptual multimedia video quality measurement in the presence of a full reference".
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上記特許文献2の技術は、基準映像と劣化映像の解像度やフォーマットが一致していることを前提としており、一致していない場合は品質評価ができない、という問題がある。具体的には、携帯端末向けの地上デジタルテレビ放送サービスのワンセグサービスにおいて、基準映像はHDTV(High Definition TeleVision)形式の映像であるが、廃止に字にはQVGA(Quarter Video Graphics Array)サイズ(320×240画素)を基本としているが、実際には携帯端末の上に表示される映像はメーカーや機種毎に解像度やアスペクト比が異なるなど、基準映像と劣化映像の解像度が異なり品質評価することが困難である。
【0011】
ここで、解像度やフォーマットを一致させるように基準映像や劣化映像に信号処理を加えて整合を取らせる方法も考えられる。しかし、この方法は、適用した信号処理の影響が出てしまい、適切な整合がとれず、品質推定ができないという問題がある。
【0012】
本発明は、上記の点に鑑みなされたもので、基準映像と劣化映像の解像度、フォーマット形式、表示レートが異なる場合であっても、高精度な映像品質評価値を推定することが可能なフルレファレンス型の映像品質客観評価装置及び方法及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明では、上記の目的を達成するため、従来技術のように基準映像と劣化映像の画素値を直接比較するのではなく、基準映像と劣化映像のそれぞれの前後フレームの映像劣化量の違いを抽出する相対劣化特徴量を導出し、その特徴量を利用することで、解像度やフォーマットが異なる場合でも映像品質評価が可能な映像品質客観評価装置及び方法及びプログラムを提供する。
【0014】
本発明(請求項1)は、映像品質を客観的に評価するための映像品質客観評価装置であって、
基準映像の前後のフレームの映像劣化量と劣化映像の前後フレームの映像劣化量の違いを抽出する相対劣化特徴量抽出手段と、
前記相対劣化特徴量抽出手段から抽出された特徴量と評価対象映像の定常品質値から映像品質評価値を導出する映像品質推定手段と、
を有することを特徴とする。
【0015】
また、本発明(請求項2)は、請求項1の前記相対劣化特徴量抽出手段において、
前記基準映像及び前記劣化映像のそれぞれの前後フレームの劣化特徴量における両者の変化が共に大きくなるタイミングを用いて該基準映像と該劣化映像の同期を合わせる第1の劣化特徴量比較手段、
または、
前記基準映像と前記劣化映像の画像の解像度が異なる場合に、対応フレーム毎の変化量を比較する第2の劣化特徴量比較手段、
または、
前記基準映像と前記劣化映像の表示フレームレートが異なる場合に単位時間当たりの変化量を比較する第3の劣化特徴量比較手段、
または、
前記基準映像と前記劣化映像の前後フレームの劣化特徴量として、前後フレーム画素値の差分量、前後フレームの画素の比、前後フレームのPSNR(画素差分量を基準映像の画素値で均一化した値)、あるいはそれらの分散値など統計処理した値を利用する第4の劣化特徴量比較手段、
のいずれかを有する。
【0016】
また、本発明(請求項3)は、請求項1の前記相対劣化特徴量抽出手段において、
前記基準映像の前後のフレームの劣化特徴量を導出する基準映像特徴量抽出手段と、
前記劣化映像の前後のフレームの劣化特徴量を導出する劣化映像特徴量抽出手段と、を含み、
前記基準映像特徴量抽出手段及び前記劣化映像特徴量抽出手段は、
前記基準映像と前記劣化映像の前後のフレームの劣化特徴量を導出する際に、差分フレーム間の全てではなく、画素間間引きあるいは特定領域の情報を利用する。
【0017】
また、本発明(請求項4)は、請求項1の前記相対劣化特徴量抽出手段において、
入力された基準映像に対してエンコーダ処理した映像を新たな基準映像として出力するエンコード処理手段を有する。
【0018】
また、本発明(請求項5)は、請求項1の前記映像品質推定手段において、
前記定常品質値として、
予め抽出しておいた評価対象映像の定常品質値を格納した定常品質値記憶手段から読み込む、または、前記基準映像と前記劣化映像間の画素情報を直接比較することにより得られた情報を用いる。
【0019】
また、本発明(請求項6)は、映像品質を客観的に評価するための映像品質客観評価方法であって、
基準映像の前後のフレームの映像劣化量と劣化映像の前後フレームの映像劣化量の違いを抽出する相対劣化特徴量抽出ステップと、
前記相対劣化特徴量抽出手段から抽出された特徴量と評価対象映像の定常品質値から映像品質評価値を導出する映像品質推定ステップと、を行うことを特徴とする。
【0020】
また、本発明(請求項7)は、請求項6の前記相対劣化特徴量抽出ステップにおいて、
前記基準映像及び前記劣化映像のそれぞれの前後フレームの劣化特徴量における両者の変化が共に大きくなるタイミングを用いて該基準映像と該劣化映像の同期を合わせる第1の劣化特徴量比較ステップ、
または、
前記基準映像と前記劣化映像の画像の解像度が異なる場合に、対応フレーム毎の変化量を比較する第2の劣化特徴量比較ステップ、
または、
前記基準映像と前記劣化映像の表示フレームレートが異なる場合に単位時間当たりの変化量を比較する第3の劣化特徴量比較ステップ、
または、
前記基準映像と前記劣化映像の前後フレームの劣化特徴量として、前後フレーム画素値の差分量、前後フレームの画素の比、前後フレームのPSNR(画素差分量を基準映像の画素値で均一化した値)、あるいはそれらの分散値など統計処理した値を利用する第4の劣化特徴量比較ステップ、のいずれかを行う。
【0021】
また、本発明(請求項8)は、請求項6の前記相対劣化特徴量抽出ステップにおいて、
前記基準映像の前後のフレームの劣化特徴量を導出する基準映像特徴量抽出ステップと、
前記劣化映像の前後のフレームの劣化特徴量を導出する劣化映像特徴量抽出ステップと、を行い、
前記基準映像特徴量抽出ステップ及び前記劣化映像特徴量抽出ステップにおいて、
前記基準映像と前記劣化映像の前後のフレームの劣化特徴量を導出する際に、差分フレーム間の全てではなく、画素間間引きあるいは特定領域の情報を利用する。
【0022】
また、本発明(請求項9)は、請求項6の前記相対劣化特徴量抽出ステップにおいて、
入力された基準映像に対してエンコーダ処理した映像を新たな基準映像として出力するステップを行う。
【0023】
また、本発明(請求項10)は、請求項6の前記映像品質推定ステップにおいて、
前記定常品質値として、
予め抽出しておいた評価対象映像の定常品質値を格納した定常品質値記憶手段から読み込む、または、前記基準映像と前記劣化映像間の画素情報を直接比較することにより得られた情報を用いる。
【0024】
また、本発明(請求項11)は、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の映像品質客観評価装置を構成する各手段としてコンピュータを機能させるための映像品質客観評価プログラムである。
【発明の効果】
【0025】
上記のように、本発明によれば、基準映像と劣化映像の解像度、フォーマット形式、表示レートが異なる場合であっても、基準映像と劣化映像のそれぞれの前後のフレームの映像劣化量の違いを抽出する相対劣化特徴量を利用することで、従来、直接画素を比較する品質評価が困難であった点を改善し、簡便かつ高精度に映像サービスにおける映像品質値を推定することができる。
【0026】
したがって、映像サービスの提供者は、本発明によりユーザが実際に視聴する映像サービスの映像品質を監視可能となるため、提供サービスがユーザに対して適切な品質で提供されているか確認することができる。
【0027】
これにより、映像サービスの提供者は、提供前及び提供中のサービスの品質実態を適切に把握、管理できる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の第1の実施の形態における映像品質客観評価装置の構成図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態における定常品質DBの例である。
【図3】本発明の第1の実施の形態におけるフレーム間差分特徴量を示す図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態における基準/劣化フレーム間差分特徴量の同期合わせ方法である。
【図5】本発明の第1の実施の形態における基準/劣化フレーム間差分特徴量の単位時間比較の方法である。
【図6】本発明の第2の実施の形態における映像品質客観評価装置の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下図面と共に、本発明の実施の形態を説明する。
【0030】
[第1の実施の形態]
本発明の実施の形態に係る映像品質客観評価装置は、図1に示すように、基準映像信号10と劣化映像信号20を利用して映像品質評価値60を導出するフルレファレンス型の映像品質客観評価装置を実現するものである。
【0031】
図1は、本発明の第1の実施の形態における映像品質客観評価装置は、相対劣化特徴量抽出部100Aと、品質推定部200と、定常品質データベース300とから構成されている。
【0032】
定常品質データベース300は、図2に示すように、エンコーダ条件、定常品質値、係数、評価式を含む定常品質データを格納する。
【0033】
相対劣化特徴量抽出部100Aは、基準映像特徴量抽出部110、劣化映像特徴量抽出部120、劣化特徴量比較部130から構成されている。
【0034】
基準映像特徴量抽出部110は、基準映像信号10が入力されると、図3に示すようにフレーム間差分情報を抽出し、基準フレーム間差分特徴量15を劣化特徴量比較部130に出力する。図3(a)は基準映像フレーム間差分を示し、図3(b)は劣化映像フレーム間差分を示す。ここで、基準フレーム間差分特徴量15として色差情報やRGB情報を利用してもよい。ここで色差情報やRGB情報を利用してもよい。
【0035】
【数1】

上記の、△R(i,j,k)はkフレーム目の画素(i,j)の基準映像の差分輝度値、R(i,j,k)はkフレーム目の画素(i,j)の基準映像の輝度値を表す。
【0036】
劣化映像特徴量抽出部120は、劣化映像信号20が入力されると、基準映像特徴量抽出部110と同様の処理により、劣化フレーム間差分特徴量25を劣化特徴量比較部130に出力する。ここで、劣化フレーム間差分特徴量25として、輝度値を利用した以下の差分フレームを用いる。ここで色差情報やRGB情報を利用してもよい。
【0037】
【数2】

ここで、△P(i,j,k)はkフレーム目の画素(i,j)の基準映像の差分輝度値、P(i,j,k)はkフレーム目の画素(i,j)の基準映像の輝度値を表す。
【0038】
なお、基準映像特徴量抽出部110及び劣化映像特徴量抽出部120で行うフレーム間差分情報の導出においては、全ての画素を使うことを前提としているが、処理量を減らすことで実装の容易性確保や、処理速度の向上を促し、リアルタイム化を図るため、画素の間引きや特定の映像領域の画素を利用することができる。
【0039】
劣化特徴量比較部130は、基準フレーム間差分特徴量15と劣化フレーム間差分特徴量25とを比較することで、相対劣化特徴量30を出力する。
【0040】
劣化特徴量比較部130は、基準フレーム間差分特徴量15と劣化フレーム間差分特徴量25を比較するため、基準映像と劣化映像の同期を合わせる必要がある。このため、図4に示すようにシーンチェンジ等によって基準映像及び劣化映像の前後フレームの劣化特徴量にそれぞれ大きな変化がでるタイミングを用いて同期を合わせることとする。図4(a)は基準映像の特徴量のピークAを示し、同図(b)は劣化映像の特徴量のピークBを示している。同図において、基準映像のシーンチェンジで発生した特徴量のピークAに劣化映像で発生したシーンチェンジで発生した特徴量のピークBをあわせて同期させる。
【0041】
また、基準フレーム間差分特徴量15と劣化フレーム間差分特徴量25を比較する単位は、図5に示すように、1/15秒毎のように基準フレーム間差分特徴量と劣化フレーム間差分特徴量を合わせた単位時間あたりの変化量を比較する。これにより、基準映像と劣化映像の表示フレームレートが異なる場合やパケット損失等によりフレームが欠落した場合でも評価が可能である。
【0042】
さらに、相対劣化特徴量30としては、下記の(1)〜(3)の特徴量及びそれらを組み合わせたものを導出する。これらの特徴量は、フレーム間の差分値を画素平均として正規化を行い、基準映像と劣化映像の映像サイズの違いの影響を考慮している。
【0043】
(1)前後フレーム画素値の差分量(MSE):
【0044】
【数3】

但し、kフレーム目を対象とする。また、基準映像の解像度は水平方向X画素、垂直方向にY画素とし、劣化映像の解像度は水平方向X'画素、垂直方向にY'画素とする。
【0045】
(2)前後のフレームの画素値の比:
【0046】
【数4】

但し、kフレーム目を対象とする。また、基準映像の解像度は水平方向X画素、垂直方向にY画素とし、劣化映像の解像度は水平方向X'画素、垂直方向にY'画素とする。
【0047】
(3)前後フレームのSN比(PSNR):
【0048】
【数5】

但し、PSNRは、画素差分量を基準映像の画素値で均一化した値であり、MAXは△Rがとりうる最大画素値であり、1輝度値を何bitで構成しているかによって変化する。複数フレームのSN比はフレーム毎のSN比の平均として求まるが、例えば、式(5)のようにフレーム毎に導出するのではなく、式(6)に示すように複数フレームPSNRを計算する際に複数フレームの差分和を先に計算してから導出することもできる。
【0049】
【数6】

但し、Mは測定対象とするフレーム数、MAXは△Rがとりうる最大画素値であり、1輝度値を何bitで構成しているかによって変化する。
【0050】
さらに、特徴量としては上記の分散値、最大値、最小値などの統計量を利用することができる。
【0051】
品質推定部200では、劣化特徴量比較部130から相対劣化特徴量30を受け取ると共に、既知の劣化映像信号の符号化条件やサービス条件を定常品質データベース300に送り、定常品質値や係数を含む定常品質データ40を受け取り、以下の計算を行う。
【0052】
【数7】

但し、Qは映像品質評価値30、αSはS番目の相対劣化特徴量でSの最大値はPとする。また、βは定常品質値、a,b,cは係数とする。
【0053】
また、定常品質データベース300は、定常品質値のみを返す場合もありうるが、評価式自体を受け渡すこともある。さらに、符号化方式が不変な状態が続くのであれば、定常品質データ40の導出要求は随時行わなくてもよい。
【0054】
[第2の実施の形態]
以下、図面を用いて第2の実施の形態を説明する。
【0055】
以下では、前述の第1の実施の形態と異なる部分のみ説明することとする。
【0056】
図6は、本発明の第2の実施の形態における映像品質客観評価装置の構成を示す。同図において、図1と同一構成部分には同一符号を付し、その説明を省略する。
【0057】
本実施の形態における映像品質客観評価装置は、相対劣化特徴量抽出部100Bと、品質推定部200、定常品質抽出部400から構成されている。
【0058】
相対劣化特徴量抽出部100Bは、エンコード処理部105、基準映像特徴量抽出部110、劣化映像特徴量抽出部120、劣化特徴量比較部130から構成される。
【0059】
エンコード処理部105は、基準映像信号10が入力されると、それをエンコードしたエンコード処理基準映像信号12を基準映像特徴量抽出部110に出力する。これは、劣化映像の比較対象として基準映像そのものの差分特徴量では符号化による劣化の影響が適切にとれないことがあることを改善するものである。エンコード処理部105ではエンコード処理としているが、当該エンコードに相当する適切なフィルタリング処理でもよい。
【0060】
基準映像特徴量抽出部110は、エンコード処理基準映像信号12が入力されると、第1の実施の形態と同様の処理を行うことで、基準フレーム間差分特徴量15を出力する。
【0061】
定常品質抽出部400は、相対劣化特徴量の基準を導出するため、基準映像信号10と劣化映像信号20の画素情報を直接比較して定常品質データ50を導出するものである。この方法は、映像解像度などの影響で直接品質推定は困難だが、平均的な品質情報をとして利用する。定常品質抽出部400で利用する特徴量は、特徴量比較部130の本来の入力である基準フレーム間差分特徴量15と劣化フレーム間差分特徴量25の代わりに、基準映像信号10と劣化映像信号20とし、定常品質抽出部400は、これらから直接画素差分を導出する。また、映像解像度や表示フレームレートが異なる場合は、定常品質抽出部400で解像度やレートを整合させる処理を行うことにより対応する。
【0062】
なお、上記の第1、第2の実施の形態における映像品質客観評価装置の構成要素をプログラムとして構築し、映像品質客観評価装置として利用されるコンピュータにインストールして実行させる、または、ネットワークを介して流通させることが可能である。
【0063】
また、構築されたプログラムを、ハードディスク、フレキシブルディスク、CD−ROM等の可搬記憶媒体に格納し、コンピュータにインストールする、または、配布することが可能である。
【0064】
なお、本発明は、上記の実施の形態に限定されることなく、特許請求の範囲内において、種々変更・応用が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明は、映像配信拠点であるヘッドにおける、送出映像の映像品質の推定や、VODサービスにおいて送出前の品質確認に利用、及び、端末側における受信後の品質推定や確認を行う際に適用可能である。
【符号の説明】
【0066】
10 基準映像信号
20 劣化映像信号
12 エンコード処理基準映像信号
15 基準フレーム間差分特徴量
25 劣化フレーム間差分特徴量
30 相対劣化特徴量
40 定常品質データ要求
50 定常品質データ
60 映像品質評価値
100A,100B 相対劣化特徴量抽出部
105 エンコード処理部
110 基準映像特徴量抽出部
120 劣化映像特徴量抽出部
130 劣化特徴量比較部
200 品質推定部
300 定常品質DB
400 定常品質抽出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
映像品質を客観的に評価するための映像品質客観評価装置であって、
基準映像の前後のフレームの映像劣化量と劣化映像の前後フレームの映像劣化量の違いを抽出する相対劣化特徴量抽出手段と、
前記相対劣化特徴量抽出手段から抽出された特徴量と評価対象映像の定常品質値から映像品質評価値を導出する映像品質推定手段と、
を有することを特徴とする映像品質客観評価装置。
【請求項2】
前記相対劣化特徴量抽出手段は、
前記基準映像及び前記劣化映像のそれぞれの前後フレームの劣化特徴量における両者の変化が共に大きくなるタイミングを用いて該基準映像と該劣化映像の同期を合わせる第1の劣化特徴量比較手段、
または、
前記基準映像と前記劣化映像の画像の解像度が異なる場合に、対応フレーム毎の変化量を比較する第2の劣化特徴量比較手段、
または、
前記基準映像と前記劣化映像の表示フレームレートが異なる場合に単位時間当たりの変化量を比較する第3の劣化特徴量比較手段、
または、
前記基準映像と前記劣化映像の前後フレームの劣化特徴量として、前後フレーム画素値の差分量、前後フレームの画素の比、前後フレームのPSNR(画素差分量を基準映像の画素値で均一化した値)、あるいはそれらの分散値など統計処理した値を利用する第4の劣化特徴量比較手段、
のいずれかを有する請求項1記載の映像品質客観評価装置。
【請求項3】
前記相対劣化特徴量抽出手段は、
前記基準映像の前後のフレームの劣化特徴量を導出する基準映像特徴量抽出手段と、
前記劣化映像の前後のフレームの劣化特徴量を導出する劣化映像特徴量抽出手段と、を含み、
前記基準映像特徴量抽出手段及び前記劣化映像特徴量抽出手段は、
前記基準映像と前記劣化映像の前後のフレームの劣化特徴量を導出する際に、差分フレーム間の全てではなく、画素間間引きあるいは特定領域の情報を利用する
請求項1記載の映像品質客観評価装置。
【請求項4】
前記相対劣化特徴量抽出手段は、
入力された基準映像に対してエンコーダ処理した映像を新たな基準映像として出力するエンコード処理手段を有する
請求項1記載の映像品質客観評価装置。
【請求項5】
前記映像品質推定手段は、
前記定常品質値として、
予め抽出しておいた評価対象映像の定常品質値を格納した定常品質値記憶手段から読み込む、または、前記基準映像と前記劣化映像間の画素情報を直接比較することにより得られた情報を用いる
請求項1記載の映像品質客観評価装置。
【請求項6】
映像品質を客観的に評価するための映像品質客観評価方法であって、
基準映像の前後のフレームの映像劣化量と劣化映像の前後フレームの映像劣化量の違いを抽出する相対劣化特徴量抽出ステップと、
前記相対劣化特徴量抽出手段から抽出された特徴量と評価対象映像の定常品質値から映像品質評価値を導出する映像品質推定ステップと、
を行うことを特徴とする映像品質客観評価方法。
【請求項7】
前記相対劣化特徴量抽出ステップにおいて、
前記基準映像及び前記劣化映像のそれぞれの前後フレームの劣化特徴量における両者の変化が共に大きくなるタイミングを用いて該基準映像と該劣化映像の同期を合わせる第1の劣化特徴量比較ステップ、
または、
前記基準映像と前記劣化映像の画像の解像度が異なる場合に、対応フレーム毎の変化量を比較する第2の劣化特徴量比較ステップ、
または、
前記基準映像と前記劣化映像の表示フレームレートが異なる場合に単位時間当たりの変化量を比較する第3の劣化特徴量比較ステップ、
または、
前記基準映像と前記劣化映像の前後フレームの劣化特徴量として、前後フレーム画素値の差分量、前後フレームの画素の比、前後フレームのPSNR(画素差分量を基準映像の画素値で均一化した値)、あるいはそれらの分散値など統計処理した値を利用する第4の劣化特徴量比較ステップ、
のいずれかを行う請求項6記載の映像品質客観評価方法。
【請求項8】
前記相対劣化特徴量抽出ステップにおいて、
前記基準映像の前後のフレームの劣化特徴量を導出する基準映像特徴量抽出ステップと、
前記劣化映像の前後のフレームの劣化特徴量を導出する劣化映像特徴量抽出ステップと、を行い、
前記基準映像特徴量抽出ステップ及び前記劣化映像特徴量抽出ステップにおいて、
前記基準映像と前記劣化映像の前後のフレームの劣化特徴量を導出する際に、差分フレーム間の全てではなく、画素間間引きあるいは特定領域の情報を利用する
請求項6記載の映像品質客観評価方法。
【請求項9】
前記相対劣化特徴量抽出ステップにおいて、
入力された基準映像に対してエンコーダ処理した映像を新たな基準映像として出力するステップを行う
請求項6記載の映像品質客観評価方法。
【請求項10】
前記映像品質推定ステップにおいて、
前記定常品質値として、
予め抽出しておいた評価対象映像の定常品質値を格納した定常品質値記憶手段から読み込む、または、前記基準映像と前記劣化映像間の画素情報を直接比較することにより得られた情報を用いる
請求項6記載の映像品質客観評価方法。
【請求項11】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の映像品質客観評価装置を構成する各手段としてコンピュータを機能させるための映像品質客観評価プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−4840(P2012−4840A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−137758(P2010−137758)
【出願日】平成22年6月16日(2010.6.16)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】