説明

映像表示システム

【課題】映像作成者の意図した明るさにより近い明るさで映像を表示できる映像表示システムを提供する。
【解決手段】映像を投影する映像投影部1と、映像投影部1により投影された映像を表示する映像表示部2と、を備える映像表示システムであって、映像投影部1から投影される映像の明るさを調整する光量調節部3と、映像投影部1により投影される映像のシーンに応じて、光量調節部3を制御して映像の明るさを調節する制御部4と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、投影部から投影された映像を表示部で表示する映像表示システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、投影部から投影された映像を表示部で表示する映像表示システムが発明されてきた。また、周囲の環境などによっては、表示される映像の明るさを変えたいという要望もあったため、投影部から投影される映像の明るさを変更可能な映像表示システムも発明されている。例えば、特許文献1に記載のプロジェクション映像表示装置は、複数個の光源を二次元配列して1つの光源とし、複数個の光源のうちの点灯個数を変えることで、映像の明るさを変更するものである。このプロジェクション映像表示装置は、映像信号のピーク値を検出し、このピーク値を用いて明るさを変化させることにより、映像信号のピーク値に比例して明るさを調整することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−184567号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した技術を利用したプロジェクション映像表示装置では、映像信号のピーク値に比例して明るさを調整することはできるものの、映像内の状況における明るさと投影される映像の明るさとの関係が十分考慮されておらず、使用者が映像内の状況における明るさを把握しにくいという問題が存在した。
【0005】
本願発明は、このような従来の課題を解決するものであり、映像作成者の意図した明るさにより近い明るさで映像を表示できる映像表示システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願発明の映像表示システムは、映像を投影する映像投影部と、映像投影部により投影された映像を表示する映像表示部と、を備える映像表示システムである。そして、映像投影部から投影される映像の明るさを調整する光量調節部と、映像投影部により投影される映像のシーンに応じて、光量調節部を制御して映像の明るさを調節する制御部と、を備えることを特徴とする。
【0007】
この映像表示システムは、使用者の瞳孔の大きさを計測する瞳孔計測部を備え、制御部は、映像のシーンと、瞳孔計測部により計測された瞳孔の大きさと、に応じて光量調節部を制御して映像の明るさを調節してもよい。
【発明の効果】
【0008】
本願発明の映像表示システムは、投影される映像のシーンに応じた光量で映像を表示するので、映像作成者の意図した明るさにより近い明るさで映像を表示できるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本願発明の実施形態にかかる映像表示システムの概略図
【図2】本願発明の実施形態にかかる映像表示システムの構成図
【図3】本願発明の実施形態にかかる映像表示システムの光量参照テーブル
【図4】本願発明の実施形態にかかる映像表示システムのフローチャート
【図5】本願発明の実施形態にかかる映像表示システムの別の例を示す概略図
【図6】本願発明の実施形態にかかる映像表示システムの別の例を示す構成図
【図7】本願発明の実施形態にかかる映像表示システムの別の例を示す構成図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本願発明に係る実施形態について図面を用いて説明する。なお、各図において同一の符号を付した構成は、同一の構成であることを示し、その説明を省略する。ただし、以下の実施形態は本願発明の実施例を示したに過ぎず、本願発明はこれに限定されるものではない。
<実施形態>
本願発明の実施形態を図1、図2に示す。本実施形態の映像表示システムは、映像を投影する映像投影部1と、映像投影部1により投影された映像を表示する映像表示部2と、を備える映像表示システムである。そして、この映像表示システムは、映像投影部1から投影される映像の明るさを調整する光量調節部3と、映像投影部1により投影される映像のシーンに応じて、光量調節部3を制御して映像の明るさを調節する制御部4と、を備えることを特徴とする。
【0011】
この映像表示システムは、さらに、使用者の瞳孔径を計測する瞳孔径計測部5を備え、制御部4は、映像のシーンと、瞳孔径計測部5により計測された瞳孔径と、に応じて光量調節部3を制御して映像の明るさを調節する。
【0012】
より詳しく述べると、この映像表示システムは、使用者に到達する光量の希望値を、映像のシーンに対応させて記憶する記憶部(図示せず)を備える。このとき、制御部4は、この記憶部を参照し、映像投影部1により投影される映像のシーンに対応する希望値の光量が使用者に照射されるよう、光量調節部3を制御して映像の明るさを調節する。そして、この映像表示システムは、さらに、使用者の瞳孔の大きさを計測する瞳孔計測部5を備える。このとき、制御部4は、瞳孔計測部5により計測された瞳孔の大きさから推測される、使用者に照射されている光量と、映像投影部1により投影される映像のシーンに対応する希望値の光量が一致するよう光量調節部3を制御して映像の明るさを調節する。
【0013】
ここから、本実施形態の映像表示システムを具体的に説明する。この映像表示システムは、プロジェクタ101、スクリーン102、制御装置103、センサ104によって構成される。
【0014】
映像投影部1は、プロジェクタ101に備えられ、制御部4から受け取った映像信号に基づいて光を照射することにより映像を投影する。
【0015】
映像表示部2は、投影面を有するスクリーン102であり、プロジェクタ101から照射される光を投影面で散乱させることにより投影面に映像を表示する。
【0016】
光量調節部3は、プロジェクタ101に備えられ、プロジェクタ101から照射される光量を変化させる。光量調節部3は、例えば、個別に点灯制御可能な複数の光源からなる発光部や、光源からの照射光量を調節可能な絞りなどを有して構成され、これらを制御してプロジェクタ101から照射される光量を調節することで、投影される映像の明るさを調整する。
【0017】
制御部4は、制御装置103に備えられ、映像情報を取得して加工し、映像信号としてプロジェクタ101に送り、映像投影部1から映像を投影させる。また、制御部4は、映像投影部1により投影される映像のシーンとセンサ104からの情報とに応じて、光量調節部3を制御して映像の明るさを調整する。ここでは、映像のシーンは照明が点灯している場面である照明シーンのことであり、例えば室内で照明装置を点灯した場合の、室内の状態を映像にしたものである。なお、パソコンなどを制御装置103として用いてもよい。
【0018】
映像情報は、映像の照明シーンの中の状況において、実際にどの程度の光量が観察者(カメラに対応する位置)に照射されるかについての情報を、光量情報として有している。この光量情報は、シミュレーションや実験等によって、あるいは使用者の所望の光量が入力されて、取得され、映像情報に組み込まれている。
【0019】
制御部4は記憶部を備え、光量と、その光量の光を受けたときの瞳孔径とを対応させて、光量瞳孔径対応データとして記憶部にあらかじめ記憶させている。制御部4は、プロジェクタ101からある光量(A)の光を照射させたときに使用者に照射される光量(B)を、センサ104により計測された使用者の瞳孔径と光量瞳孔径対応データとを用いて決定する。そして、制御部4は、プロジェクタ101からの照射光量(A)と使用者に照射される光量(B)とを対応させて、図3に示すような光量参照テーブルとして記憶部に記憶させる。なお、プロジェクタ101における光量参照テーブルがすでに存在する場合には、制御部4は光量参照テーブルを取得して記憶部に記憶させるだけでよい。
【0020】
制御部4は、光量参照テーブルから、映像情報中の光量情報にある光量(C)が使用者に照射される光量(B)となる場合のプロジェクタ101からの照射光量(A)を抽出し、その光量(A)の光が照射されるよう、映像信号を決定する。なお、記憶部が保持している情報の中に、参照したい光量に合致するものがない場合、例えば数式1に示すような補完式で近傍値から求めた光量A’を用いてもよい。ここで、Bkを光量情報中の光量(使用者に照射される光量)、Akを、光量参照テーブルで光量情報中の光量がBkのときのプロジェクタ101からの照射光量として、AkおよびAkはAkの上下の近傍値、Bk、BkはBkの上下の近傍値である。
【0021】
【数1】

【0022】
また、制御部4は、映像表示中にも、映像情報中の光量情報にある光量(C)と、センサ104が計測する瞳孔径および光量瞳孔径対応データから判断される、実際に使用者に照射されている光量(D)と、を比較する。そして、制御部4は、例えばPID制御などのフィードバック制御を行い、光量情報にある光量(C)と実際に使用者に照射されている光量(D)とが同等になるよう映像信号を調整する。なお、PID制御とは、入力値の制御を 出力値と目標値との偏差、その積分、および微分の3つの要素によって行う方法のことである。ここでは、光量情報にある光量(C)を目標値α(t)とし、実際に使用者に照射されている光量(D)を出力値β(t)として、両者の偏差u(t)に対し、数式2から求めた出力y(t)を用いて映像投影部を調整することで実現する。なお、L[]、L−1[]は、それぞれラプラス変換、逆ラプラス変換であり、K、K、Kは定数で、それぞれ比例ゲイン、積分ゲイン、微分ゲインである。
【0023】
【数2】

【0024】
瞳孔計測部5は、センサ104に備えられ、使用者の瞳孔の大きさとして、瞳孔径を計測する。瞳孔計測部5は、CCDカメラと画像処理部とを有し、CCDカメラで瞳孔を撮像し、画像処理を行って瞳孔径を判断する。
【0025】
次に、上述のように構成された映像表示システムの動作について、図4に示すフローを用いて説明する。
【0026】
まず、制御装置103が映像情報を取得する(ステップS1)。そして、制御装置103によってプロジェクタ101から照射される光量が決定され(ステップS2)、映像信号が制御装置103からプロジェクタ101に送られる(ステップS3)。プロジェクタ101は、映像信号に基づき、ステップS2で決定された光量で光を照射することにより映像を投影する(ステップS4)。プロジェクタ101から照射された光は、スクリーン102上で散乱されることで投影される。このとき、散乱された光は使用者に到達し、使用者に映像として認識される。つまり、プロジェクタ101から照射された光は、スクリーン102を経由して使用者に照射される。センサ104は、使用者の瞳孔径を計測し(ステップS5)、制御装置103は、光量情報にある光量(C)と使用者の瞳孔径から判断される光量(D)とを比較する。光量情報にある光量(C)と瞳孔径から判断される光量(D)とが等しければ(ステップS6でYes)、ステップS5に戻る。光量情報にある光量(C)と瞳孔径から判断される光量(D)とに差があれば(ステップS6でNo)、制御装置103は、使用者の瞳孔径の計測結果をもとにフィードバック制御を行ってプロジェクタ101から照射される光量を再決定する(ステップS7)。そして、制御装置103は、再決定した光量にてステップS3以降を繰り返す。
【0027】
このように、本実施形態の映像表示システムは、意図した光量(C)と使用者に照射される投影光の光量(D)との差をなくす、あるいは小さくすることができる。例えば、照明機器や照明設備などの営業を行う際に、シミュレーション結果やショールームなどの照明シーンの映像を用いて検討を行うことを考える。以前からこのような検討は行われてきたが、従来は、使用者に照射される投影光の光量(D)と、表示されている映像の照明シーンにおいて意図されている(その照明シーンで実際に想定される)光量(C)との差は考慮されていなかった。そのため、使用者に照射される光量(D)と意図される光量(C)とが極端に違う場合、本来明るいはずの照明シーンを暗く感じてしまうなど、使用者が実際の照明シーンとは違った印象を受けてしまうことがあり、照明シーンの正確な検討は難しかった。これに対し、本実施形態の映像表示システムは、意図した光量(C)とほぼ同等の光量が使用者に照射されるので、使用者は、映像作成者が意図したとおりに表示映像の明るさを感じることが可能となる。これにより、照明機器や照明機器を設置した部屋などの映像において、意図した光量(C)として、実際にその場にいた場合に想定される光量を設定することで、より正確に照明シーンの検討を行うことが可能となる。
【0028】
また、本実施形態においては、使用者の瞳孔の大きさとして瞳孔径を計測し、この瞳孔径を用いて使用者に照射されている光量(D)を推定して、これをもとにプロジェクタ101からの照射光量(A)を調節する。つまり、本実施形態は、計測した瞳孔径に応じてプロジェクタから照射する光量(A)を調節するので、使用者に照射される光量(D)と意図される光量(C)とをより近づけることができる。
【0029】
なお、本実施形態では、映像として照明シーンで構成されるものを考えたが、照明シーン以外にも適用可能である。しかしながら、各映像シーンにおいて照射光量を考慮することは、明るさが映像の印象を大きく左右するような映像に対して、より効果が大きいと考えられる。
【0030】
本実施形態の映像表示システムは、映像投影部1および光量調節部3と連携して制御部4からの出力に応じた光を投影する補助光照射部6をさらに備えてもよい。図5にこの映像表示システムの概略図を、図6に構成図を示す。この補助光照射部6は、補助プロジェクタ105に備えられる。補助光照射部6は、プロジェクタ101の映像投影部1から出力可能な最大光量が、意図した光量(C)を使用者に照射するために必要なプロジェクタ101からの照射光量(A)に対して十分でない場合、光を照射する。制御部4は、プロジェクタ101の映像投影部1からの光量が不十分な場合、補助光照射部6に信号を送り、補助光照射部6から白色光などを投影させる。
【0031】
補助プロジェクタ105は、一定光量の光を照射し、プロジェクタ101の照射光量を調節することで、全体として意図した光量(C)を実現する。なお、補助プロジェクタ105も光量調節機能を持ち、プロジェクタ101からの照射での不足分の光量の光を補助プロジェクタ105が照射することで、全体として意図した光量(C)を実現してもよい。
【0032】
本実施形態では、計測した瞳孔径から使用者に照射されている光量(D)を推定し、その光量(D)と光量情報中の光量(C)とを比較してプロジェクタ101からの照射光量(A)を調節する。しかし、瞳孔径から光量(D)を推定するのではなく、光量情報中の光量(C)に対応する瞳孔径を光量瞳孔径対応データから抽出し、抽出した瞳孔径と計測された瞳孔径との比較結果に基づいて、プロジェクタ101からの照射光量(A)を調節してもよい。このような構成にすると、照射しはじめでの光量が求める光量と異なるものになる可能性があるものの、光量参照テーブルのような、プロジェクタ101に依存するデータが必要なくなるという利点がある。
【0033】
なお、センサ104は、瞳孔径計測部5ではなく、焦電センサや輝度分布計などのような、光量を直接検出するようなものでもよい。また、図7に構成図を示すように、センサ104はなく、センサ104による計測結果を用いた光量調節を行わない構成でもよい。
【0034】
本実施形態においては、制御部4はプロジェクタ101とは別の制御装置103に設けられているが、制御部4はプロジェクタ101に設けられてもよい。言いかえれば、プロジェクタ101と制御装置103が一体の装置であってもよい。また、本実施形態においては、センサ104による計測結果に基づき光量を調節することは制御部4が行っている。しかし、例えば制御装置103の制御部4以外の部分やセンサ104などが、計測結果から適正な光量を判断して、その判断した光量の情報を制御部4に送り、制御部4はそれに応じて光量を制御してもよい。制御装置103はセンサ104と一体の装置であってもよい。
【符号の説明】
【0035】
1 映像投影部
2 映像表示部
3 光量調節部
4 制御部
5 瞳孔計測部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
映像を投影する映像投影部と、前記映像投影部により投影された映像を表示する映像表示部と、を備える映像表示システムであって、
前記映像投影部から投影される映像の明るさを調整する光量調節部と、
前記映像投影部により投影される映像のシーンに応じて、前記光量調節部を制御して映像の明るさを調節する制御部と、
を備えることを特徴とする映像表示システム。
【請求項2】
使用者の瞳孔の大きさを計測する瞳孔計測部を備え、
前記制御部は、前記映像のシーンと、前記瞳孔計測部により計測された瞳孔の大きさと、に応じて前記光量調節部を制御して映像の明るさを調節する
ことを特徴とする請求項1に記載の映像表示システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−80030(P2013−80030A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−218920(P2011−218920)
【出願日】平成23年10月3日(2011.10.3)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】