説明

映像表示装置、バッファ管理方法および映像表示システム

【課題】 ストリーミング再生中に再生開始時間の遅れが生じないようにする技術を提供する。
【解決手段】 複数のチャプタに分けてデータを受信するバッファ部と、前記バッファ部を制御するバッファ制御部と、前記バッファ部に溜まった前記データを再生する再生部とを具備し、前記再生部が前記データを再生中に現在再生中の一つの前記チャプタの未再生データが所定分溜まった場合、この一つのチャプタとは別の前記チャプタに、前記バッファ制御部は前記バッファ部に前記データを受信させる映像表示装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、ストリーミングデータを再生可能な映像表示装置、バッファ管理方法および映像表示システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、配信されたストリーミングデータの未再生の部分において、ユーザが視聴したい場面を選択して再生する再生装置が開発されている。ストリーミング再生のバッファ管理をする技術が用いられている。
【0003】
例えば、特許文献1に記載されているものは、クライアントに特定コンテンツデータを送信する前に、前記コンテンツのうちあらかじめ定められた区間内の部分データに加え、それらのデータの前後の先頭データをクライアントに送信する。
【0004】
しかしながらここにある技術では、再生開始前に部分データを取得するものであり、再生開始時間の遅れが生じる懸念があるという問題があった。
【0005】
よって、再生開始時間の遅れが生じないようにする技術へ要望があるが、かかる要望を実現するための手段は知られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−201477号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の実施の形態は、ストリーミング再生中に再生開始時間の遅れが生じないようにする技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、実施形態によれば映像表示装置は、複数のチャプタに分けてデータを受信するバッファ部と、前記バッファ部を制御するバッファ制御部と、前記バッファ部に溜まった前記データを再生する再生部とを具備し、前記再生部が前記データを再生中に現在再生中の一つの前記チャプタの未再生データが所定分溜まった場合、この一つのチャプタとは別の前記チャプタに、前記バッファ制御部は前記バッファ部に前記データを受信させる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】この発明の一実施形態を示すストリーミングデータを再生可能なシステムブロック図。
【図2】同実施形態の再生中のバッファ制御フローを示す図。
【図3】同実施形態の上限thresholdに達した状態を説明するために示す図。
【図4】同実施形態の下限thresholdを切った状態の例を示す図。
【図5】同実施形態に用いられるチャプタの優先度変更フローを示す図。
【図6】同実施形態のチャプタ優先度変更画面を示す図。
【図7】同他の形態に用いられる優先度変更時のプログレスバーを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施形態を図1乃至図7を参照して説明する。
【0011】
図1は、実施形態にかかるストリーミングデータを再生可能なシステムブロック図である。なお、以下に説明する要素や構成あるいは機能は、ハードウェアで実現するものであってもよいし、マイクロコンピュータ(処理装置、CPU)等、を用いてソフトウェアで実現するものであってもよい。
【0012】
図1が示す映像表示システム300はストリーミング配信サーバ100と映像表示装置200とから構成されている。映像表示装置200は、ストリーミング配信サーバ100からストリーミングデータを受信する通信装置10と、受信されたストリーミングデータを一次保存するバッファ部(チャプタ分割数により必要に応じて複数個のバッファ領域を確保するが、ここではバッファ1、バッファ2として例示)と、ストリームを再生する映像再生装置14と、ストリームを表示する表示装置16と(例えば以上ハードウェア)、それらを制御する制御ソフトウェア22から構成されている。この実施形態はこれらの制御ソフトウェア22群の中でも、任意で指定できるチャプタの位置を管理するチャプタ管理部17と、チャプタ管理と連動して、受信したデータがバッファ部のどちらのバッファのものかを管理し制御するバッファ制御部18と、映像再生装置14を制御する再生制御部20とを利用して実施する。映像再生装置14と再生制御部20とで言わば再生部を構成している。
【0013】
図2は再生中のバッファ制御を示すフローチャートである。下記フローチャートは図1のチャプタ管理部17およびバッファ制御部18を用いてバッファ部(バッファ1、バッファ2)を制御するものであり、これらの一連の処理を行っている間も映像再生装置14では通常再生を継続している。配信サーバ100よりのコンテンツのダウンロードを始めると以下のステップが開始される。また詳しくはコンテンツのデータを最後まで受信し終わるとステップS2−1において処理は終了となる。
【0014】
ステップS2−1: 現在再生中のBuffer(バッファ1、またはバッファ2)にデータを受信する。
【0015】
ステップS2−2: 受信したら、Bufferのデータ残量をチェックする。
【0016】
ステップS2−3: Bufferの残量が上限Thresholdを以上でなければ、ステップS2−1に戻り現在のデータ受信を継続する。図3のように、Bufferの残量が上限Threshold以上となっていた場合、ステップS2−4以下で次のチャプタのBuffer量をチェックする。
【0017】
ステップS2−4: 次のチャプタの有無を確認する。次のチャプタが無ければステップS2−1に戻り現在再生中のデータ受信を続ける。
【0018】
ステップS2−5: 次のチャプタがある場合は次のチャプタ用Buffer(バッファ2、またはバッファ1)の残量をチェックする。
【0019】
ステップS2−6: 次のチャプタ用Bufferにも既に上限Threshold以上データがある場合、その次のBufferをチェックすべく、上限Threshold未満のBufferを見つけるまでステップS2−4からステップS2−6の処理を繰り返す。
【0020】
ステップS2−7: Buffer量が上限Threshold未満のチャプタを検出したら、現在のデータ受信を中止し、配信サーバ100に指定チャプタからのデータ受信を要求する。
【0021】
ステップS2−8: 指定チャプタ用のBufferにデータを受信する。
【0022】
ステップS2−9: データを受信したら、現在再生中Bufferのデータ残量をチェックする。
【0023】
ステップS2−10: 図4のように、現在再生中Bufferの残量が下限Thresholdを切っていた場合(ステップS2−9AのYES)、現在のデータ受信を中止し、配信サーバ100に対して現在再生中のデータ受信を要求し、再度上限Thresholdを超えるまで現在再生中のデータ受信を続ける(ステップS2−1以下)。
【0024】
ステップS2−11: 現在再生中Bufferの残量が下限Thresholdを切っていなかった場合(ステップS2−9AのNO)、現在データ受信中Bufferの優先度を調べる。
【0025】
ステップS2−12: 現在データ受信中Bufferの優先度に変化があった場合(ステップS2−11AのNO)、ユーザによってバッファリングを行う優先度が変更されたと判断し、優先度最高のチャプタからのデータ受信を要求する。その後ステップS2−8の処理へ飛ぶ。
【0026】
ステップS2−13: 現在データ受信中Bufferの優先度に変化がなかった場合(ステップS2−11AのYES)、現在データ受信中Bufferの残量を調べる。
【0027】
ステップS2−14: 現在データ受信中Bufferの残量が上限Threshold以上だった場合、ステップS2−4の処理へ飛ぶ。また、現在データ受信中Bufferの残量が上限Threshold以上でなかった場合、ステップS2−8の処理へ飛ぶ。
【0028】

図3は、現在再生中のBuffer1(バッファ1、またはバッファ2)が上限Thresholdを超えた状態を表した図である。このような状態になると、クライアントはBuffer1で行っていた現在再生中のデータ受信をとりやめ、Buffer2(バッファ2または、バッファ1)で次チャプタのデータ受信を開始する。
【0029】
図4は、次チャプタのデータ受信中に現在再生中Buffer1が下限Thresholdを切った状態を表した図である。このような状態になると、クライアントはBuffer2で行っていた次チャプタのデータ受信をとりやめ、Buffer1で現在再生中のデータ受信を再開する。
【0030】
図5は、バッファリングの優先度を変える場合のフローチャートである。
【0031】
ステップS5−1: デフォルトではチャプタ番号順に若い優先度がつけられる。
【0032】
ステップS5−2: ユーザによって優先してバッファリングを行うチャプタが指定(選択)された場合である。
【0033】
ステップS5−3: このチャプタよりも優先度の高いチャプタの優先度を一つずつ下げる。
【0034】
ステップS5−4: 指定されたチャプタの優先度を最高にする。
【0035】
なおチャプタバッファリング中に優先度が変更された場合の処理は、上記図2の説明文中に記載した。
【0036】

図6(a)〜(e)は実際にチャプタの優先度を変更するための画面である。上記選択をするための設定手段であり、ユーザは例えばリモコンなどを用いて対話的に設定できる。
【0037】
チャプタ優先度を変更するメニューを開くと画面上に、まず図6(a)のようなポップアップが表示され、優先度を上げたいチャプタを選択することができる (このとき、既に優先度が最高となっているチャプタAは選択することができない) 。
【0038】
優先度を上げたいチャプタを選択すると、図6(b)のように優先度を1つ上げるか、図6(c)のように優先度を最高に上げるかを選択できる。優先度を1つあげた場合、図6(d)のように、選択したチャプタの優先度が1つ上がる。優先度を最高に上げた場合、図6(e)のように、選択したチャプタの優先度が最高に上がる。
【0039】
図7は、バッファリングの優先度が変更された場合のプログレスバー表示を示したものである。本図は、図6(a)→図6(c)→図6(e)の順で選択された場合の表示状態である。チャプタCの優先度が最高となっているため、チャプタA,Bを飛ばし、先にチャプタCのバッファリングを行っている。
【0040】
バッファリングする順序は、図1のチャプタ管理部17でテーブルとして管理され、バッファ管理部18はテーブルから優先順位の高いチャプタを選択してバッファリングを行う。指定が無い場合はチャプタ順通りにバッファリングを行う。
【0041】
あらかじめ次チャプタのデータをバッファに溜めこんでおくことにより、ストリーミング再生でチャプタジャンプを行ったときに従来ではバッファリングを行う必要があったところを、シームレスに映像を切り替えることができる。
【0042】
従来技術では前後のデータの先頭のデータを再生前にサーバから受信するというものであったが、本実施形態では先頭のデータに十分なデータがたまれば、次のチャプタの先頭部分以外のデータもバッファに溜めこむことができる。
【0043】
本実施形態は、十分な回線速度を得られる(すなわちデータが溜まりやすい)環境で特に効果を発揮する。
【0044】
本実施形態はストリーミング再生中に上限Threshold以上のデータが溜まると次のチャプタ位置の部分データを取得するものであるため、開始時の遅れを低減することができる。
【0045】
先行技術で取得するのは前後の先頭データのみだが、本実施形態では下限Thresholdを切るまで次チャプタのデータを蓄えることができ、先行技術にない効果を発揮することができる。
【0046】
またデータを蓄えるチャプタは優先度を設定することができるため、どのチャプタのデータを優先的に取得するかをユーザが指定することができる。
【0047】
即ち、以上説明した実施例によれば次のような特徴を持つ実施形態を構成することができる。
【0048】
(1)ストリーミング再生で、現在再生中のデータがバッファに十分溜まった場合、自動的に次のチャプタのデータのバッファリングをはじめる。
【0049】
(2)現在再生中のデータが少なくなったら自動的に次のチャプタのバッファリングを中止し、現在再生中のデータのバッファリングを再開する。
【0050】
(3)チャプタの優先度(どのチャプタから優先的にデータを溜めるか)はユーザが任意に変更することができる。
【0051】
なお、この発明は上記実施形態に限定されるものではなく、この外その要旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。例えば放送波を受信する環境でもよいし、録画されたコンテンツの再生に適用することもできる。
【0052】
また、上記した実施の形態に開示されている複数の構成要素を適宜に組み合わせることにより、種々の発明を形成することができる。例えば、実施の形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除しても良いものである。さらに、異なる実施の形態に係わる構成要素を適宜組み合わせても良いものである。
【符号の説明】
【0053】
1,2・・・ストリームバッファ、10・・・通信装置、14・・・映像再生装置、16・・・表示装置、17・・・チャプタ管理部、18・・・バッファ制御部、20・・・再生制御部、100・・・配信サーバ、200・・・映像表示装置、300・・・システム。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のチャプタに分けてデータを受信するバッファ部と、
前記バッファ部を制御するバッファ制御部と、
前記バッファ部に溜まった前記データを再生する再生部とを具備し、
前記再生部が前記データを再生中に現在再生中の一つの前記チャプタの未再生データが所定分溜まった場合、この一つのチャプタとは別の前記チャプタに、前記バッファ制御部は前記バッファ部に前記データを受信させる映像表示装置。
【請求項2】
前記現在再生中の一つの前記チャプタの未再生データが所定より少なくなった場合、この一つのチャプタとは別の前記チャプタに代えてこの一つのチャプタに、前記バッファ制御部は前記バッファ部に前記データを受信させる請求項1に記載の映像表示装置。
【請求項3】
前記別の前記チャプタの優先度を外部からの設定により選択できる設定手段を更に備えた請求項1に記載の映像表示装置。
【請求項4】
複数のチャプタに分けてデータをバッファ部で受信し、
前記バッファ部を制御し、
前記バッファ部に溜まった前記データを再生し、
前記データを再生中に現在再生中の一つの前記チャプタの未再生データが所定分溜まった場合、この一つのチャプタとは別の前記チャプタに、前記バッファ部に前記データを受信させるバッファ管理方法。
【請求項5】
データを配信する配信サーバと、
前記配信サーバから複数のチャプタに分けて前記データを受信するバッファ部と、
前記バッファ部を制御するバッファ制御部と、
前記バッファ部に溜まった前記データを再生する再生部とを具備し、
前記再生部が前記データを再生中に現在再生中の一つの前記チャプタの未再生データが所定分溜まった場合、この一つのチャプタとは別の前記チャプタに、前記バッファ制御部は前記バッファ部に前記データを受信させる映像表示システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2013−110476(P2013−110476A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−252015(P2011−252015)
【出願日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】