説明

映像表示装置への接続ケーブルを収納するデジタル信号送出装置

【課題】ユーザが映像表示装置への接続ケーブルの選択を必要としないコンパクトなデジタル信号送出装置を提供する。
【解決手段】映像表示装置への接続ケーブルをデジタル信号送出装置に収納させる。デジタル信号送出装置の出力信号特性に相応しい伝送仕様(例えばHDMI規格のカテゴリ1,2)の選択をするとともに、AWG(American wire gauge)38等あるいはこれより細い線材を採用したケーブルを選択し、細い線材で生じる特性劣化が大きい場合はこれを補償する装置をデジタル信号送出装置に内蔵する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は大画面テレビ、プロジェクタ等の映像表示装置に接続するケーブルを収納するデジタルカメラ、携帯電話、タブレットPC等のコンパクトなデジタル信号送出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
2002年に開発されたHDMI規格はブルーレイ機器やSTB等のHD信号源とHDTVの接続を狙ったものであったが、HDTVへのHDMI入力端子の普及拡大に伴い、近年デジタルカメラ、携帯電話、PC等にもHDMI出力端子搭載が拡大しつつある。
しかし、HDMI入力端子はほぼAタイプに統一されているものの、出力端子はAタイプに加え、コンパクトな機器向けのC,Dタイプが登場し、販売店や消費者にとって接続ケーブルの選択や入手が容易でない。
【0003】
更にはレッドメア(RedMere)社からアクティブHDMIケーブルの発表があり、HDMIケーブルの種類が益々増える状況にある。
更に、今後DiiVA規格やMHL規格の登場も考えられ、販売店や消費者にとって接続ケーブルの選択や入手が益々困難となる。
【0004】
また、HDMIケーブルにはカテゴリ1とカテゴリ2(ハイスピード)の2種類があるが、信号源がカテゴリ1で十分な場合でも、太くて重いカテゴリ2(ハイスピード)のHDM1ケーブルしか入手できないのが実情である。
【先行技術文献】
【0005】
【非特許文献1】HDMI規格(http://ja.wikipedia.org)
【0006】
【非特許文献2】レッドメア(RedMere)社のMEA1691(http://www.redmere.com/business/mea1691.php)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
デジタルカメラ、携帯電話、タブレットPC等のコンパクトなデジタル信号送出装置に搭載されるデジタル接続規格がHDMI規格の場合、出力端子はA,C,Dの3種類あり、長いケーブルが高価格のため、ユーザが必要最短のケーブルを選べるようケーブルメーカはA出力端子に対し0.5m〜10m超まで10種以上の品揃えをしているが、3種類の出力端子と10種以上の長さのケーブルを全てカバーするには3X10以上=30種類以上のケーブルを品揃えする必要があり、HDMIケーブルメーカの事業リスクが益々拡大する。
【0008】
ユーザや販売店にとっては現状の10種以上のHDMIケーブルから適切なケーブルを選択することすら容易でなく、販売店にとってHDMI規格のA,C,D3出力端子に対応したケーブルの品揃えは大きな負担増であり、ユーザにとっては適切なケーブルを選択、入手することが益々困難となる。
【0009】
また、デジタルカメラ用HDMIケーブルの大半はカテゴリ1で間に合うが、市場で販売されているケーブルはほとんどカテゴリ2であり、細くて軽いHDMIケーブルを入手できない。
【0010】
結果として、大多数のHDTVがHDMI入力端子を持ち、多くのデジタルカメラがHDMI出力端子を持ちながら、デジタルカメラで撮影した写真を大画面HDTVで楽しむことが普及していない。
更に、デジタルカメラはこれから登場する新しいHDTVで再生するに最適な画素仕様やアスペクト比の撮影モードや再生モードも搭載していない。
本発明はユーザが映像表示装置への接続ケーブルの選択を必要としないコンパクトなデジタル信号送出装置を提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記の目的を達成するため、本発明では映像表示装置への接続ケーブルをデジタル信号送出装置に収納させる。コンパクトな機器に接続ケーブルを収納しやすくするため、デジタル信号送出装置の出力信号特性に相応しい仕様(HDMI規格の場合、カテゴリ1,2)の選択をするとともに、AWG(American wire gauge)38等あるいはこれより細い線材を採用したケーブルを選択し、細い線材で生じる特性劣化が大きい場合はこれを補償する装置をデジタル信号送出装置に内蔵させる。
【0012】
あるいは特性劣化を補償しなくて良い範囲に出力信号仕様やケーブルの長さを制限し、装置内に接続ケーブルを収納させる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ユーザが接続ケーブルを選択・購入する必要がなく、販売店も多くのケーブルを品揃えする必要もなくなり、ケーブル収納デジタルカメラが登場すれば、写真を大画面TVで楽しむ方法が一気に普及し、デジタルカメラメーカにとって買い替え需要が期待できる。
【0014】
ユーザにとっても、機器からケーブルを引き出し、TVに接続するだけで写真を大画面HDTVに映し出すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明のデジタル信号送出装置がデジタルカメラであり、デジタル接続規格がHDMI規格である場合の実施例
【図2】本発明のデジタルカメラに収納されるHDMIケーブルユニット5の具体的実施例
【図3】本発明のケーブルユニット5に補償装置10を搭載しない場合の実施例の部分図
【図4】本発明の第1の補償装置10の実施例
【図5】本発明の第2の補償装置12の実施例
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施例について説明する。
図1は本発明のデジタル信号送出装置がデジタルカメラであり、デジタル接続規格がHDMI規格である場合の実施例を示す。
1はデジタルカメラであり、2のイメージセンサを含むカメラ光学系、3のHDMI規格の信号を伝送する機能を含む信号処理装置、4のメモリ装置、5のHDMI出力端子付きHDMIケーブルユニット、6のケーブル収納ポケットで構成される。
【0017】
次に、HDMIケーブルユニット5がデジタルカメラのケーブル収納ポケット6から引き出され、HDMI出力端子が大画面TV7に接続され、メモリ装置に記録された映像がTV画面上に再生される動作を説明する。
【0018】
メモリ装置4から読み出された映像情報は信号処理装置3でHDMI規格形式の信号群に変換された後HDMIケーブルユニット5に伝達され、HDMIケーブルユニット5がHDMI規格準拠の信号をTVに送出する。TV7はCEC信号を含むHDMI規格の信号を検出し、自動的に入力信号を選択し、デジタルカメラ1の再生信号を映し出す。
【0019】
図2はデジタルカメラに設けられた蓋付きのポケットに収納されるHDMIケーブルユニット5の具体的実施例を示す。ケーブルユニット5はコネクタ8、ケーブル9、第1の補償装置10、HDMI出力端子11で構成される。現状ではTVのHDMI入力端子は全てAタイプ(メス)あり、したがって、HDMI出力端子11はAタイプ(オス)とするのが妥当だが、今後TV等の映像表示装置がHDMIのAタイプだけでなくCやDタイプを搭載すると予想されるので、その時はHDMI出力端子11もCやDタイプのプラグ(オス)とすることが望ましい。
【0020】
また、現状のHDMI規格では信号送出装置の出力端子をレセプタクル(メス)と想定しているのでHDMI出力端子11をレセプタクルとすることもできる。
【0021】
信号処理装置3とHDMIケーブルユニット5の接続はローコストの汎用端子接続とする場合と、HDMI規格のCあるいはD端子接続とする場合がある。
【0022】
汎用端子を選択する場合は、信号処理装置3のインターフェイスを汎用端子のメスとし、コネクタ8をオスの汎用端子とし、ケーブル9は1〜2m程度のAWG38あるいはこれより細い線材で構成されたHDMI用ケーブルとし、第1の補償装置10は主としてケーブル9で発生する特性劣化を補償するもので、HDMI1.2a規格準拠の場合は高周波領域を1〜4dB/mくらい増幅・補償し、HDMI1.4規格準拠の場合は高周波領域を3〜8dB/mくらい増幅・補償する。
【0023】
この場合、ケーブルユニット5の出力信号がHDMIソース規格に準拠する必要がある。この場合は、信号処理装置3の出力信号もケーブルユニット5もHDMI規格準拠に縛られないので、コスト低減がし易いメリットがある。
【0024】
RedMere社が発表している独立のアクティブHDMIケーブルの場合、ケーブル内に内蔵される補償装置は種々の線材及びケーブルの長さに対応する必要があり、大きな補償量、広い補償量調整範囲を持つとともに、HDMIケーブル規格に準拠するために消費電力を5Vx5mA以下に抑えなければならない。
【0025】
一方、本発明のHDMIケーブル収納の信号発生装置の場合は、HDMIソース規格に準拠するだけであり上記消費電力制限はない。また決まった線材を決まった長さで使用するので、補償量を固定することも可能であり、第1の補償装置10を最少コストで実現できる。
【0026】
信号処理装置3のインターフェイスをHDMI規格のCあるいはD出力端子(メス)とする場合は、コネクタ8はHDMIのCあるいはD出力端子(オス)で構成され、HDMI規格のCあるいはD出力端子(メス)の出力信号がHDMI規格に準拠する必要があるとともに、ケーブルユニット5もHDMIケーブル規格に準拠するよう第1の補償装置10を設定する。この場合はコストアップになるが、消費者にとっては内蔵ケーブルの代わりに別売の長いHDMIケーブルが利用可能となるメリットがある。
【0027】
尚、本発明のデジタル信号送出装置がデジタルカメラの場合、信号処理装置3に静止画や動画を大画面TVで色々に楽しめるよう、新しい機能を追加することでデジタルカメラの価値を高めることも可能である。
【0028】
例えば、現状ではカメラをPCに接続し、PC側の機能により4912X1920の静止画をPCのディスプレイに種々の形式で映し出すが、本発明では、信号処理装置3に上記4912X1920の静止画を1920X1080や2520X1080の静止画に変換するモードだけでなく、静止画の中心付近から1920X1080や2520X1080の高画質ズーム画像を切り出すモードを持たせることができる。
【0029】
また映像表示装置がHDTVの場合、デジタルカメラがCEC経由でHDTVのアスペクト比(16:9や21:9)や画素仕様(1920X1080、2520X1080、3840X2160や4096X2160等)を知ることができるので、デジタルカメラからの出力信号を自動的にHDTVのアスペクト比や画素仕様に合わせることで、高画質を実現できる。
また、デジタルカメラの画素仕様に新しいHDTV画素仕様である2520X1080、3840X2160や4096X2160を加えることで、新しいHDTVに接続する場合、更なる高画質の映像を再生することができる。
【0030】
デジタルカメラの静止画を本格的にHDTVで楽しむには、各社のHDTV採用カラーフィルタが異なることを考慮した色再現切り替え機能をデジタルカメラの信号処理装置3に搭載することでデジタルカメラの価値を高めることもできる。
【0031】
色再現切り替え機能の具体例としてはR,G,B信号への各重み付けテーブルをプラズマ用、液晶3色フィルタ用、液晶4色フィルタ用等の3通り程度設定し、再生時カメラ側で手動切り替えするか、TV側からカラーフィルタ情報をCEC経由でカメラに伝え、カメラ側で色再現特性を自動切り替えする。
【0032】
信号処理装置3から出力される信号が日本のデジタル放送と同じ1920X1080の60Hzインターレース以下の場合は、ケーブルユニット5はHDMI規格カテゴリ1を満たせばよく、ケーブル9はより細い線材を選択できる。
【0033】
図3はケーブルユニット5に第1の補償装置10を搭載しない場合の実施例の部分図である。ケーブルユニット5はコネクタ8(汎用オス)、ケーブル9、HDMI出力端子11で構成され、信号処理装置3とケーブルユニット5の間に、第2の補償装置12を設置する。
【0034】
第2の補償装置12のケーブルユニット5とのインターフェイスは汎用端子(メス)とし、第2の補償装置12はHDMI出力端子11の出力信号がHDMI規格に準拠するよう、ケーブル9での特性劣化分を補償する。この実施例は図2の実施例より低コストにできる反面、第2の補償装置12で補償できる範囲が6dB/m以下に限定されるため、収納ケーブルの長さが限定される。
【0035】
図4は第1の補償装置10の実施例である。第1の補償装置10は第1の補償器13、第2の補償器14、第3の補償器15、ROM16から構成される。ケーブル9のRGBの3種のTMDS信号は夫々補償器13,14,15に入力され、増幅及び周波数特性を補償された後、HDMI出力端子11から出力される。
補償器13,14,15の各補償特性はHDMI出力端子11の出力信号がHDMI規格に準拠するよう選択され、その各補償特性設定値がROM16に記録される。
【0036】
図5は第2の補償装置12の実施例である。第2の補償装置12は簡単な第1の補償回路17,第2の補償回路18,第3の補償回路19で構成される。
信号処理装置3から出力されたR,G,BのTMDS信号は別々に補償回路17,18,19に入力され、ケーブルユニット5で想定される高域周波数特性劣化をある程度補償される。
【0037】
尚、デジタル信号送出装置からの出力信号が1920X1080、60Hzインターレース以下の周波数帯域に限定される場合は、第1の補償装置10及び第2の補償装置12のどちらも搭載せずに1m程度のケーブルを収納可能となる。
収納ケーブルが比較的短い場合、補償回路17,18,19は簡単なパッシブ回路で構成できる。
【0038】
以上、本発明によれば、ユーザはデジタル信号送出装置に収納されたケーブルを引き出し、映像表示装置に出力端子を接続するだけで映像を楽しむことができるとともに、機器メーカもコンパクトで便利なデジタル信号送出装置を合理的な価格で提供できる。
【符号の説明】
【0039】
1…デジタルカメラ、2…イメージセンサを含むカメラ光学系、3…HDMI規格の信号を伝送する機能を含む信号処理装置、4…メモリ装置、5…HDMI出力端子付きHDMIケーブルユニット、6…ケーブル収納ポケット、7…HDMI入力端子付きTV、8…コネクタ、9…ケーブル、10…第1の補償装置、11…HDMI出力端子、12…第2の補償装置、13…第1の補償器、14…第2の補償器、15…第3の補償器、16…ROM、17…第1の補償回路、18…第2の補償回路、19…第3の補償回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
デジタル接続規格のケーブルと該規格の出力端子で構成されたケーブルユニットと、該ケーブルを収納するポケットを具備し、該ケーブルをAWG38あるいはこれより細い線材で構成するとともに、該ケーブルで生じる特性劣化を該規格に準拠する程度に補償する装置を内蔵させるか、あるいは該ケーブルで生じる特性劣化が該規格に準拠する範囲に収納ケーブルユニットの長さを制限することを特徴とする映像表示装置への接続ケーブルを収納するデジタル信号送出装置。
【請求項2】
デジタル接続規格がHDMI規格であり、該ケーブルで生じる特性劣化を補償する装置を3個のTMDS信号を別々に増幅する補償装置とすることを特徴とする請求項1記載の映像表示装置への接続ケーブルを収納するデジタル信号送出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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