説明

映像表示装置

【課題】レーザ光の走査を利用する画像表示装置の改良装置を提供する。特にスクリーンに投影して複数の観察者が裸眼で立体映像を観察できるようにした裸眼立体映像表示装置を提供する。
【解決手段】レーザ光線を射出するレーザ光発生器11と、射出されたレーザ光線を偏向する光線偏向器12と、光線偏向器12から入射する光線を散乱光に変換して放射する光散乱スクリーン14と、光線偏向器12を制御して光線偏向器に入射するレーザ光線を光散乱スクリーン14の表示面の全面を走査するように偏向させる偏向器制御器と、レーザ光発生器11を制御して光散乱スクリーン14に投影する映像に対応して光散乱スクリーンの画素に投射するレーザ光を順次に発生させるレーザ発生器制御器とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、映像信号により変調したレーザ光で走査することによりスクリーンに映像を表示する映像表示装置に関し、特にスクリーンに投影して複数の観察者が裸眼で立体映像を観察できるようにした裸眼立体映像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年3D映像技術が急速に進展してきて、いろいろな局面で3D映像を利用することができるようになってきた。たとえば学術講演会や手術検討会などでも、実物に対する再現性が高い3D映像を使用する場面が増えてきた。
大きなスクリーンに投影した立体映像をスクリーンに対向した観察者が観察するようにした立体表示装置は、多人数が同時に立体映像を観察することができ、立体映画等のアミューズメント分野や、会議におけるプレゼンテーションなどに使用される。
【0003】
このため、観察者に左眼の視界と右眼の視界を分離する眼鏡を装着させて、左眼と右眼にそれぞれ異なる画像を見せることにより立体視させる2視差立体表示方式のディスプレイが使用される。さらに、眼鏡装着の不自由を解消するために、レンチキュラーレンズやパララックスバリアを利用して光の方向を制御し左右の眼に視差のある映像を提示するようにした、眼鏡の要らない裸眼立体表示装置も開発されてきた。
【0004】
これらの2視差立体表示方式は、右眼と左眼に異なる映像を表示すれば、人間は立体感を得ることができるという原理を利用する。しかし、この方法では、立体視における調節と輻輳の間に矛盾が生じる。脳がディスプレイのスクリーンと異なる位置に立体を知覚しているのに対して、眼はスクリーン上にピント合わせをしようとする。この矛盾が立体映像観察時の眼精疲労の原因となる。また、観察者が観察位置を変えても同じ方向から見た映像しか観察されないことも、運動視差に対する違和感をもたらし、眼精疲労の原因となっている。
【0005】
視差立体表示方式において、表示する視差画像数を多くし空間に形成される視点の間隔を小さくした多眼視差立体表示方式がある。多眼視差立体表示方式では、観察者はどの位置にいても、左右の異なる映像が入射し従来の2眼式ディスプレイと同様に、両眼視差に基づいた立体視をすることができる。また、観察者が左右に移動しても、複数の映像がオーバーラップしながら隣の映像に切り替わっていくので、観察位置に応じて自然に変化する立体映像を観察することができる。
【0006】
さらに、視点間隔が小さくなって瞳に2つ以上の視差画像が同時に入射するようになると、網膜上の同じ位置に結像させて3次元像にピント合わせができるようになり、調節と輻輳が整合して眼精疲労を和らげることができる。視点間隔が眼の瞳孔径より狭くなる条件を超多眼条件という。
このように、超多眼条件を満たす立体映像表示方法により眼精疲労のない自然な立体表示を可能とする。
【0007】
特許文献1は、超多眼条件を満足させて裸眼で観察できる立体像表示を実現するようにした投影光学系扇形配列による立体映像表示装置を開示している。図9は、本文献に開示された立体映像表示装置の原理を説明する基本原理図である。図9(a)は撮像系、図9(b)は投影系を示す図である。
【0008】
開示された立体映像表示装置は、図9(a)に示すように、扇形に配置した複数のビデオカメラにより被写体を一定の間隔で撮影し、撮影した視差画像を原画像として投影系で使用する。図9(b)に示すように、投影系である立体映像表示装置は、ビデオカメラと同じ角度間隔で扇形に配列された複数の投影ユニット光学系と、スクリーンの働きをする凹面鏡と、光路変更のためのハーフミラーとを備えている。
【0009】
投影ユニット光学系は、点光源と、コンデンサレンズと、液晶表示パネルと、投影レンズとを順に配置したものである。
液晶表示パネルは、それぞれ対応するビデオカメラで撮影した映像を原画像として表示する。点光源から発散された光はコンデンサレンズによって集光され、液晶表示パネルに表示された原画像を照明する。液晶表示パネルに表示された原画像は、投影レンズにより凹面鏡の面に投影結像され、凹面鏡面に結像した画像は、凹面鏡により再び集光しハーフミラーで反射されて、視域内に位置する観察者の左眼と右眼の瞳孔を通して網膜に結像される。
【0010】
観察者は、左眼と右眼に対応する視差画像を観察し、両眼視差と輻輳を用いて立体像を知覚する。さらに、両眼それぞれに複数の視差画像が入射する超多眼条件を満たせば立体像位置に焦点を結んで、輻輳とピント調節に矛盾のない自然な立体像を眼鏡無しの裸眼で観察することができる。
しかし、開示された投影光学系扇形配列による立体映像表示装置は、たとえば、水平方向に400mmの視域を確保するために水平方向に200個の投影ユニット光学系を必要とするとされ、液晶表示パネルを含む投影ユニット光学系を極めて多数設備する必要があり、しかも多数の観察者が同時に観察することが難しく、実用化しにくい。
【0011】
特許文献2は、超多眼条件を満足させて裸眼で観察できる立体像表示を実現した高密度指向性表示方式の立体映像表示装置を開示している。図10は本文献に開示された立体映像表示装置の基本原理を説明するため水平方向1列分のプロジェクタに係る断面を表示した原理図、図11は本文献の立体映像表示装置に使用される投射光学系の作用を説明する平面概念図、図12は本文献の立体映像表示装置に使用される投射光学系アレイの配置を示す概念図である。
【0012】
開示された立体映像表示装置は、僅かに視角を違えた複数の撮像装置で高密度にオブジェクトを撮影して得た二次元画像群を水平方向に高密度に並べたプロジェクタで表示するものである。開示の装置では、各二次元画像をパララックスバリアでもある投射光学系アレイを介して、プロジェクタ毎に設けられた水平方向に偏心した結像光学系により共通像面と呼ぶ同一領域に拡大像として投影すると、共有レンズが共通像面の拡大像から発散する光線群を拡大像ごとに指向性を持った水平方向の準平行光線となるようする。
【0013】
プロジェクタは、撮像装置で取得したカラー映像を分解して表示するRGB各色ごとの反射式液晶表示パネルを備えて、光源の光を分配して各液晶表示パネルを照射し、RGB各色の2次元映像を偏光ビームスプリッタで統合してカラー映像として、投射光学系に供給する。
放射光学系は、投影レンズと開口絞りで形成され、統合されたカラー映像をスクリーンの共通像面に投射する。共通像面に投影された画像から放散する光線は、スクリーンの共有レンズにより準平行光線となって後方に放出される。
【0014】
スクリーンに投射された画像から放出される準平行光線の方向は、放射光学系の光軸に対する映像表示面の位置により変化する。図11(a)は映像表示面の中心が放射光学系の光軸上に位置するときの光線状態を示す平面図、図11(b)は映像表示面の中心が放射光学系の光軸に対して図中で上側に位置するときの光線状態を示す平面図である。
【0015】
開示の形態では、二次元画像表示面の中心軸と、レンズと開口の光軸と、共有レンズの光軸が平行偏心していて、光学系の開口絞り中心を通過する光線が共有レンズの中心を通過する構成になっている。したがって、三次元表示に必要な画像の表示方向は、偏心を持つ個々の光学系により初めから与えられている。
たとえば、放射光学系の光軸上に位置する映像表示面では映像から放出される準平行光線が光軸に平行に指向するが(図11(a))、映像表示面が光軸の上側に位置するものでは準平行光線が図中斜め下方に指向するようになっている(図11(b))。
【0016】
重複表示する二次元画像の数を増大すると共に構成の簡易化を図るため、個々の投射光学系をマトリックス状に配置した投射光学系アレイを利用することができる。投射光学系アレイは、図12に光軸方向から見た配置を示すように、プロジェクタにおける統合されたカラー映像表示面をマトリックス状に配置した二次元画像表示装置アレイと、各カラー映像表示面の後方に投射レンズをマトリックス状に配置したレンズアレイと、さらに投射レンズの後方に開口を配置した開口アレイをこの順に配置したものである。
【0017】
図12に示す投射光学系アレイは、25個の画像発生源である二次元画像表示装置について構成されている。二次元画像表示装置は、水平方向と垂直方向の両方について互いに斜めにずらすことにより、水平方向の位置が互いに重複しないように配置されている。これにより、スクリーンには25枚の異なる二次元画像を共通像面上に投影することができる。スクリーンを透過した25枚の二次元画像は、それぞれ指向方向が異なる準平行光線により観察者の瞳孔に投影される。
【0018】
観察者は、瞳孔に入射する準平行光線をオブジェクトから放出される指向性光線とみなしてピント調整することにより、立体像の空間位置を認識することができる。眼に入射する指向性光線が超多眼条件を満たせば、輻輳とピント調節に矛盾のない自然な立体像を眼鏡無しで観察することができる。
しかし、開示された高密度指向性表示方式の立体映像表示装置は、投影光学系扇形配列による立体映像表示装置と同様に、投射光学系アレイの前に超多眼条件を満たす程度の密度になるように二次元画像表示するプロジェクタを極めて多数配置する必要があり実用化しにくい。
【0019】
これに対して、二次元画像を表示する映像表示面の映像をそれぞれスクリーンに投影する代わりに、多重表示する二次元画像を統合したビデオ信号を形成して、ビデオ信号に従って変調したカラー光線をスクリーンに照射することにより三次元映像化して観察できるようにする光走査方式の立体映像表示装置を考えることができる。
半導体素子を使ったレーザ発生装置は十分高い周波数領域で光変調することが可能である。また、所定のスクリーンをレーザ光で走査して画像化することは従来技術によっても可能である。
【0020】
さらに、レンチキュラーレンズやパララックスバリアを使って、スクリーン上に表示された画像それぞれに異なる指向性を持たせるようにすれば、瞳孔に複数の指向性の異なる映像からの光線を入射させることにより立体視させるような高密度指向性表示方式の立体映像表示装置は構成することができる。
【0021】
しかし、レーザ光を直視することは眼の安全の観点から避けなければならない。
また、輻輳とピント調節に矛盾のない、より自然な立体像を得るためには、より多数の指向性二次元映像を多重表示できることが好ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0022】
【特許文献1】特開2002−258215号公報
【特許文献2】特開2007−309975号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
そこで、本願発明の解決しようとする課題は、レーザ光の走査を利用した眼に安全な画像表示装置の改良装置を提供することであり、特にスクリーンに投影して複数の観察者が裸眼で立体映像を観察できるようにした裸眼立体映像表示装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0024】
本発明に係る画像表示装置は、レーザ光線を射出するレーザ光発生器と、射出されたレーザ光線を偏向する光線偏向器と、光線偏向器から入射する光線を散乱光に変換して放射する光散乱スクリーンと、光線偏向器を制御して光線偏向器に入射するレーザ光線を光散乱スクリーンの表示面の全面を走査するように偏向させる偏向器制御器と、レーザ光発生器を制御して光散乱スクリーンに投影する映像に対応して光散乱スクリーンの画素に投射するレーザ光を順次に発生させるレーザ発生器制御器とを備えたことを特徴とする。
【0025】
本発明の画像表示装置は、画像情報に従って直接変調したレーザ光線で光散乱スクリーンを走査することにより二次元画像を表示することができる。
レーザ光線を走査してスクリーンに映像を投影した場合は、スクリーンの後方からスクリーンを観察する観察者の眼に、コヒーレント性の高いレーザ光線が入って危険である。しかし、本発明の画像表示装置によれば、光線偏向器から直進するレーザ光線を光散乱スクリーンで散乱光に変換するので、観察者の眼には散乱光が入射して眼の衛生が確保できる。
【0026】
なお、光散乱スクリーンは、透明の母材に光屈折率の異なる透明の粒子を混合拡散させて形成されたものであることが好ましい。
特に、光散乱スクリーンの母材はアクリル樹脂であって、母材内に混合拡散される粒子が気泡であることが好ましい。
たとえば、液状の樹脂を振動させながら混合することにより小さな気泡(マイクロバブル)を大量に形成させた状態で硬化さる方法や、空気を封入したマイクロバルーンをアクリル樹脂の母材中に混練を混入する方法により、光散乱スクリーンを形成することができる。なお、マイクロバルーンを使って気泡を取り込む方法によれば、気泡の粒度および密度が比較的正確に管理された光散乱スクリーンを形成することができる。
【0027】
光散乱スクリーンを透明の母材に光屈折率の異なる透明の粒子を拡散させて形成することにより、光散乱スクリーンに当たった光線の強度や色を適宜に維持しながらスクリーンの後方からコヒーレント性を失った光線を放射するようにできる。したがって、光散乱スクリーン後方の観察者は、スクリーンに投影された映像を裸眼で観察することができる。
【0028】
また、光散乱スクリーンは、画素に対応するセルを仕切る遮光壁を備えたものであることが好ましい。遮光壁は、透明粒子が混合された透明母材の板の表面に金属膜を貼付して金属膜にフォトエッチングで必要なパターンを持つ孔を鑽孔することにより形成することができる。また、遮光壁はハニカム構造の薄い金属板であって、開口部分に透明粒子が混合された母材を埋め込んで光散乱スクリーンを形成してもよい。
【0029】
光散乱スクリーンに、画素に対応するセルを仕切る遮光壁を備えるようにすると、隣接した画素に入射する光線との混合を防止して、鮮明な画像を得ることができる。
遮光壁は、光散乱板の表面に開口を設けた遮光板を当てることにより形成することもできる。
【0030】
さらに、光線偏向器と光散乱スクリーンの間に、光線偏向器から入射する光線の方向を光軸に平行に変換して光散乱スクリーンに入射させるレンズ機構を備えることにより、光散乱スクリーンのセルの軸に沿ってより効率的に光散乱現象が生じるので、スクリーンの厚みが薄い場合にも鮮明な映像を得ることができる。
【0031】
半導体素子を使ったレーザ発生装置は十分高い周波数領域で光変調することが可能である。このため、二次元画像を表示する映像表示面の映像をプロジェクタなどによりそれぞれスクリーンに投影する代わりに、複数の二次元画像を統合したビデオ信号を使いレーザ発生器を直接変調して得たレーザ光線を走査することにより1枚のスクリーンに画像を多重表示することができる。
【0032】
連続する複数の視差画像を提示すれば、いわゆる両眼視差による立体像観察が可能となる。さらに多数の視差画像を使って視点間隔を小さくすれば、顔を動かしたときに、より円滑に視線変換をすることができる。
さらに、光散乱スクリーンの光放射面の後ろに、複数の視点位置を形成させるレンチキュラーシートまたはパララックスバリアを備えて、対応する画素に多眼表示用映像を投影することにより、眼鏡無しの裸眼で観察できる立体映像表示とすることができる。
【0033】
さらに、視点間隔を人の瞳の径より小さくして超多眼条件を満たすようにすると、瞳に2つ以上の視差画像が同時に入射して網膜上の同じ位置に結像させることにより、立体像の位置にピント合わせするので、左右眼視差における輻輳とピント調節の間に矛盾がなくなり、眼精疲労の少ない超多眼立体映像観察が裸眼で可能になる。
超多眼条件を満たすためには、多数の映像を多重に投影する必要がある。レーザ光発生装置は、高周波映像信号に対応するレーザ光線発生が可能であり、これに光線偏向器による水平走査および垂直走査を適用することにより、大型のスクリーンに多数の映像を投影させることができる。
【0034】
RGB3波を混合したカラーレーザ光線を発生するレーザ光発生器を使うと、光散乱スクリーンの各セルは、入射するカラーレーザ光線の色に染められて、スクリーンの裏側から同色の光線を放射するので、画像表示装置はカラー映像を表示することができる。
したがって、複数の画像情報を統合して1個のビデオ信号に変換し、このビデオ信号によりレーザ発生装置から放射されるレーザ光線を変調して任意のカラー光線を生成して、このカラーレーザ光線でスクリーン面を走査して映像を表示することにより、複数のカラー映像を同時にスクリーン上に表示させることができる。
【0035】
たとえば、ビデオ信号生成装置が、ビデオカメラごとに供給される視差画像情報からRGBごとに強度変調したビデオ信号を生成し、生成されたRGBごとのビデオ信号を表示しようとする視差画像の数だけ時系列的に配列することにより統合したビデオ信号としてレーザ発生器制御器と偏向器制御器に供給する。
レーザ発生器制御器と偏向器制御器は、供給されたビデオ信号にしたがって、混色したカラーレーザ光でスクリーン面を走査して多数のカラー映像を重畳表示させることができる。
【0036】
本発明の映像表示装置に使用する光散乱スクリーンは、液晶ディスプレイなどと比較すると、極めて容易に形成することができるので、本発明に係るカラー映像表示装置は経済上にも大きな利点を有する。
なお、表示スクリーンの映像表示領域の外にレーザ光センサを配置して、水平走査周期を超える時間を経過してもレーザ光を検出しないときに警報を発するようにして、レーザ光の漏れによる眼の危険を回避させるようにすることができる。
【発明の効果】
【0037】
本発明の画像表示装置は、レーザ光線を光散乱スクリーン面に直接高速走査する方式を使って、より簡単な構成で経済的に、大型のスクリーンに画像表示することができるようになった。特に、本発明に係る、眼鏡無しの裸眼で立体映像を得るための立体画像表示装置では、多数の映像を多重に投影して超多眼条件を満たすようになり、従来問題となった調節と輻輳の矛盾を低減して、眼精疲労の少ない立体映像観察をすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の1実施例に係る映像表示装置の原理を示す構成図である。
【図2】本実施例におけるレーザ光発生器と光線偏向器の構成例を示す概念図である。
【図3】本実施例における光散乱スクリーンの例を示す説明図である。
【図4】本実施例における光散乱スクリーンの別例を示す説明図である。
【図5】本実施例における光散乱スクリーンとレンチキュラシートの関係を説明する図面である。
【図6】本実施例における光散乱スクリーンとシリンドリカルレンズを透過する光線の光路を光軸光について示す図面である。
【図7】本実施例における光散乱スクリーンの例についてカラー画像を多重表示する方式を説明する概念図である。
【図8】本実施例の作動方式を説明する概念図である。
【図9】投影光学系扇形配列方式の立体映像表示装置の例について基本原理を説明する概念面である。
【図10】高密度指向性表示方式の立体映像表示装置の例について基本原理を説明する概念図である。
【図11】図10に示した立体映像表示装置に使用される投射光学系アレイの構成を説明する概念図である。
【図12】図10に示した立体映像表示装置に使用される投射光学系アレイの配置を説明する概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、実施例に基づき、本発明に係る映像表示装置について、図面を参照しながら詳しく説明する。本実施例は、本発明を眼鏡無し(裸眼)立体カラー映像表示装置に適用したものである。なお、図面においては、同じ機能を有する構成部材については同じ参照番号を付して説明を簡約にし、説明の重複を避けた。
【0040】
図1は本発明の1実施例に係る映像表示装置の原理を示す構成図である。
本実施例の映像表示装置は、レーザ光発生器11と、光線偏向器12と、映像表示スクリーン20で形成される。映像表示スクリーン20は、レーザ光線をコヒーレント性を失った光線に変換するために光散乱スクリーン14を必須の構成とし、裸眼立体映像表示のためにレンチキュラーシート15を備えることが好ましい。さらに、より優れた映像表示をさせるために光散乱スクリーン14の全面を覆うフレネルレンズ13を付加しても良い。
【0041】
図2は、適宜の色相と光強度を有するカラーレーザ光を用いるために必要なレーザ光発生器11と光線偏向器12の構成例を示す概念図である。レーザ光発生器11は、赤色レーザ発生器22、緑色レーザ発生器23、青色レーザ発生器24を備え、それぞれのレーザ発生器から出力されたレーザ光線は、反射鏡25、ハーフミラー26,27を介して混合され、1本のカラーレーザ光線28として出力される。
【0042】
レーザ光発生器11には、レーザ発生器制御器21が付帯している。レーザ発生器制御器21は、図外の信号供給装置から供給されるカラー映像信号からRGB各色の強度信号を抽出して各色のレーザ発生器22,23,24を制御し、表示しようとする映像の画素に表示する色に対応して、走査線に沿って変化するカラーレーザ光線を出力させる。
なお、RGB三色のレーザ光を混色する方法として、光ファイバにRGBを入力して混色する光ガイドチューブを用いた方法や、3色LEDを登載した発光ダイオードチップを直接利用する方法など、適宜な周知方法を適用することができる。
【0043】
光線偏向器12は、たとえば水平方向と垂直方向にそれぞれ揺動する1対の反射鏡や両方向のそれぞれに回転する1対のポリゴンミラー、あるいは両方向に揺動する1個の反射鏡など周知の構成を有する。光線偏向器12は、偏向器制御器29を付帯する。偏向器制御器29は、光線偏向器12に入射するカラーレーザ光線28の射出方向を水平方向と垂直方向に偏向して、映像表示スクリーン20の全面に配置される画素を順次走査させることができる。
【0044】
人は映像表示スクリーン20の裏側から映像を観察する。画像を観察するときにレーザ光線を直接に眼球16に入れると眼の衛生に問題が生ずるので、映像表示スクリーン20を構成する光散乱スクリーン14により、レーザ光線を安全な光に変換したものを観察するようにする。光散乱スクリーン14は、直進性のコヒーレント光であるレーザ光線を微細構造で散乱させて、コヒーレント性を失った光線として射出させる。
【0045】
図3は、本実施例において使用される光散乱スクリーンの1例を説明する断面図である。図3に示した光散乱スクリーン14は、光散乱材31で構成される板材である。光散乱材31は、透明な母材32に母材と屈折率の異なる微細な透明粒子33を多量に混入して分布させて形成される。
【0046】
コヒーレント性を有し指向性の高いレーザ光線34が光散乱スクリーン14に入射すると、レーザ光線34が光散乱材31を透過する間に激しく乱反射するので、光散乱スクリーン14の裏面から出射する光はコヒーレント性を失った散乱光35となる。また、レーザ光線34の有する偏光面も透過中に乱れて、偏光を解消した散乱光35となる。
なお、RGBのレーザ光線34の光路が一体化せず色ごとに分離している場合でも、光散乱スクリーン14の同じ領域に入射すれば、光散乱材31を透過する間にRGBの色が混合して、合成色となった安全な散乱光35として射出する。
【0047】
光散乱スクリーン14の母材32にはアクリル樹脂など透明性の高い材料を使うことが好ましい。また、透明粒子33は気泡であっても良い。
アクリル樹脂を母材として形成された光散乱スクリーン14では、材料の透明性が高いので光強度の減衰が小さく、強い透過光が得られる。また、透明母材32の屈折率が1.49であるのに対して気泡である透明粒子33の屈折率が1.0003と屈折率が大きく異なるので、入射したレーザ光線34が光散乱スクリーン14を透過する間に、多数の透明粒子33に衝突して反射や屈折を繰り返し光線の向きを大きく変化させて指向性を減少させ、広い角度に拡散する散乱光35となって出射する。
【0048】
アクリル樹脂中に気泡を取り込むためには、空気を内包したマイクロバルーンを混入して樹脂を硬化させる方法がある。この方法によれば比較的容易に、透明樹脂中に適宜の密度で均質な気泡を形成することができる。
たとえば、直径1μmの気泡を最密充填状態に対して50%の密度で発生させたアクリル樹脂では、厚さ約1.5mmで初めのレーザ光線がそのまま透過する率が0.01%程度となり、十分コヒーレントなレーザ光線を安全な散乱光に変成することができる。また、気泡の密度を最密充填の30%程度にすると、厚さ約2.2mmで透過率が0.01%程度になり、ほぼ安全になる。
【0049】
図4は、光散乱スクリーン14の別例を示す説明図である。
光散乱スクリーン14に入射するレーザ光線34は、光散乱材31を透過する間に屈折を繰り返して安全な散乱光35として射出されるが、光散乱材31の厚さによっては、隣接する画素の光と混合する可能性がある。図4に示した各種の光散乱スクリーン14は、開口の間に光遮蔽領域を設けて画素間の干渉を防ぐことにより、鮮明な画像を観察することができるようになる。
【0050】
図4(a)は、図3で説明した光散乱材31で形成された板の表面の画素に対応する部分に開口30を有するマスク36を貼付して形成した光散乱スクリーン14である。マスク36は、光散乱材31で形成された板の表面に光を遮蔽する金属膜を形成した後に、シャドウマスクと同様に、フォトエッチングにより金属膜の画素に当たる部分に開口30を設ける方法により、微細なパターンを精密に形成することができる。
開口30の径は、レーザ光線34の径より小さく形成することが好ましい。
【0051】
図4(b)は、図4(a)に表示したマスクと同じく精密に鑽孔した開口30を備えた遮蔽板37の開口部分に光散乱材31を充填して形成した光散乱スクリーン14である。開口30の部分に入射したレーザ光線34は、隣の開口30に照射されたレーザ光線と混合することなく、光散乱材31を透過する間に偏光性や直進性を解消しコヒーレント性を失って眼に安全な散乱光35に変化する。
【0052】
図4(c)は、ハニカム板38の壁で仕切ったハニカム窓の開口30に光散乱材31を充填して形成した光散乱スクリーン14である。ハニカム板38のハニカム窓1個ずつが光散乱スクリーン14の1画像の画素に対応し、ハニカム窓に入射したレーザ光線34は、光散乱材31を透過する間にコヒーレント性を失い散乱光35として射出する。
【0053】
仕切り壁を有する光散乱スクリーン14において、開口30に入射するレーザ光線の入射角が大きい場合は、入射する方向と反対の壁に近い部分に光が偏在し、射出開口では強度分布が偏った光になる傾向が生じる。これを防いで開口30の全体に均質な光度分布をするようにするためには、光散乱材31の厚さを大きくする方法があるが、光散乱材31が厚くなると透過光の強度が減衰する可能性がある。
【0054】
光散乱材31の厚さを抑えつつ散乱光35の強度偏在を抑制するためには、光散乱材31に入射するレーザ光の入射角を小さくして開口30の中心部分に入射させるようにすることが好ましい。
本実施例では、図1に示すように、光散乱スクリーン14の前にフレネルレンズ13を配置している。
【0055】
フレネルレンズ13は、光散乱スクリーン14とほぼ同じ大きさに形成された凸レンズのフレネルレンズで、焦点が光線偏向器12の位置になるように配置されている。光線偏向器12で偏向されたレーザ光線は、走査にしたがってフレネルレンズ13への入射角を変化させる。フレネルレンズ13は、入射角に拘わらずレーザ光線の向きを光軸に平行に偏向させて、光散乱スクリーン14の面にほぼ垂直に入射させる。光散乱材31が充填された画素のほぼ中央に垂直に入射したレーザ光線は、開口30の射出面全体に亘ってより均質な強度分布を有する散乱光35となる。
【0056】
図5は、複数の映像を重ねて投影するようにした映像表示装置における光散乱スクリーン14とレンチキュラーシート15の関係を説明する図面である。レンチキュラーシート15は、半円筒型のシリンドリカルレンズ41を垂直に並べたもので、1つのシリンドリカルレンズ41の幅は、表示する映像の1画素に対応する。すなわち、幾つかの映像を重ねて投影する場合に、1個のシリンドリカルレンズ41の幅に、重ねて投影する映像における同じ画素に対応する輝点が全て含まれるように形成される。1個の画素に対応する輝点は複数の水平段からなるマトリックス状に配置されていてもよい。
【0057】
光散乱スクリーン14には、レーザ光線により照射されて散乱光を放射する光散乱材31の充填された開口30が形成されている。
図5は、1つのシリンドリカルレンズ41に対応する光散乱スクリーン開口アレイ39を表示している。図5に表した構成例では、36枚の画像の同じ位置に対応する画素として、シリンドリカルレンズ41の幅に上下2列に配置された長方形の開口30が水平方向に少しずつ偏倚して36個並べられているが、他の適宜な数であってもよいことは言うまでもない。
レーザ光線は、同じ高さに配置された光散乱材31を充填した開口を水平方向に順次に照射しながら走査する。
【0058】
図6は、光散乱スクリーン14とシリンドリカルレンズ41を透過する光線の光路を概念的に示す水平断面図である。図6に示すように、光散乱スクリーン14の光散乱材を充填した開口30から射出された散乱光35の光線は、シリンドリカルレンズ41により、開口の位置にしたがって異なる一定の方向に放出される。1つの画像の画素はシリンドリカルレンズ41に対して同じ配置関係にある開口30に対応し、1つの画像に係る光線は画像全面に亘って同じ方向に放出される。したがって、1つの画像の映像は光拡散スクリーン14の全面から同じ方向に投射される画素の集合として観察される。
【0059】
たとえば、画像中の画素に対応する光線Aで表すレーザ光線34は光散乱スクリーン14の開口内で散乱光35となってから放出され、シリンドリカルレンズ41で屈折して所定の方向に指向性光線18として放射される。同じ画像からの光線Aはそれぞれ対応する開口30から同じaの方向に放射され、この画像はaの方向から観察することができる。一方、Bで表すレーザ光線は、シリンドリカルレンズ41の対応する開口30からbの方向に放出され、画像はbの方向から観察することができる。
このように、映像表示スクリーン20には、指向方向の異なる複数の画像を表示することができる。図5のような配置を有する光散乱スクリーン14とレンチキュラーシート15では、36枚の映像を同時投影することができる。
【0060】
図7は、映像表示スクリーン42を用いてカラー画像を多重表示する方式を説明する図面である。図7(a)は、映像表示スクリーンの構成を示す概念図、図7(b)は走査するレーザ光線を生成する映像信号を説明する概念図である。
図7(a)において、映像表示スクリーン42は、フレネルレンズ13、光散乱スクリーン14、レンチキュラーシート15で構成される。フレネルレンズ13は、レーザ光線を光散乱スクリーン14の面にほぼ垂直に入射させる機能を有する。
【0061】
レーザ光発生器11で生成されたカラーレーザ光線は、図1,2に示した光線偏向器12により垂直走査46にしたがって水平走査45を繰り返すことにより、映像表示スクリーン42の映像表示領域43の全面を走査する。たとえば、高精細度テレビジョン水準の表示には、たとえば、水平方向画素列の画素数1920個、垂直方向画素列の画素数1080個の映像表示スクリーンが使われる。
映像表示スクリーン42の映像表示領域43の右端にはレーザ光検出センサ44が配置されている。
【0062】
カラーレーザ光線が光散乱スクリーン14の画素に対応する開口を照射すると、カラーレーザ光線と同じ色を有する光線が、レンチキュラーシート15のシリンドリカルレンズに対する開口の位置から放出される。
1枚の画像を光散乱スクリーン14の画素に対応するように分解して、画素に当たるシリンドリカルレンズに対して同じ位置にある開口ごとに画素に対応するカラー光線を投影しながら走査することにより、映像表示スクリーン42に画像全体を表示することができる。別の画像について、シリンドリカルレンズに対してその画素に対応する別の所定位置にある開口ごとに光を投影するようにして走査すれば、同様に別の画像全体を表示することができる。
【0063】
図5に示した構成では、シリンドリカルレンズの画素に対応する領域に36個の開口が設けられているので、映像表示スクリーン42に最大36枚の異なる画像を表示することができる。1画素中の開口数はスクリーンの大きさや開口の大きさ・形状や開口マトリックスの構成などに従って、さらに増加させることができる。なお、視差画像の数(視差数)が50〜100個あれば、全く自然な立体映像として観察できるとされている。劇場に設置するような300〜400インチの大型スクリーンでは、90〜120の視差数を設けることも困難でない。
このようにして、多重表示する映像の映像毎に、画素を覆うシリンドリカルレンズに対して同じ位置にある開口にその画素に表示すべき光を投影することにより、指向性の異なる多数の映像を生成させることができる。
【0064】
図7(b)は、水平走査45に関して概念的に表した映像信号を示すものである。本実施例における映像信号は、ビデオ信号に準じるもので、水平走査45の開始を指示する水平同期信号51とカラーバースト信号52と映像信号53に加えて、レーザ光検出センサ用信号55が含まれる。たとえば1920×1080のインターレース式高精細度テレビジョンに準ずる場合は、水平走査の時間がほぼ30μsになる。さらに画素に対応する開口が多段のマトリックス状に配置された場合は、水平走査の数が段数だけ増倍し、1段の水平走査に対応する走査時間が段数にしたがって短縮することになる。
なお、カラープロジェクタを複数設けて、同時に画面を走査するレーザ光線を複数化し、開口マトリックスの段ごとに分担して走査するようにしてもよい。プロジェクタを複数化すると、水平走査時間を長く取ることができ信号処理が簡単化する。
【0065】
映像信号53は、水平走査線上に並んだ開口に対応して、表示しようとする映像の画素における色相と明るさを表す信号を順に並べた波形である。水平走査線が通る軌跡上には1つのシリンドリカルレンズ41に対して異なる画像を表示する複数の開口(図5では18個)が設けられている。ある1つの画像は、シリンドリカルレンズに対して同じ位置にある開口における画素を総合することで形成されるため、その画像を表示するための映像信号54は、多重表示する複数の画像(視差画像、図5では36個)のうち同じ水平走査線上に配置された数(図5では18個)ごとに、周期的に現れるように水平走査の映像信号53に組み込まれている。なお、シリンドリカルレンズが隣同士で接合する部分には、ダミーの開口を配置して、強度0のあるいはダミーの映像信号を対応させて、光線が照射されないようにすることが好ましい。
【0066】
映像信号53は、RGBに分解し各色毎の強度信号に変換して、レーザ発生器制御器21を介して赤色レーザ発生器22と緑色レーザ発生器と青色レーザ発生器24のそれぞれに分配され、この信号に従って所望の色相と明度を有するRGB各色のレーザ光線を発生させる。
また、偏向器制御器29は、ビデオ信号に組み込まれる水平同期信号と垂直同期信号に基づき、光線偏向器12を制御してレーザ光線で映像表示スクリーン42の水平走査45、垂直走査46を行わせる。
【0067】
映像信号53は、水平走査線上の開口全てに対して照射するカラーレーザ光線の変調信号を与える必要があるので、たとえば、図5に表された視差画像36個の例では、1画素に当たるシリンドリカルレンズの領域内に36個の開口を2列に分けて配置している。したがって、1水平走査の15μsの間に18開口×1920画素=34,560個のカラー信号を含ませる必要がある。多重表示する画像数が大きくなればさらに高周波の画像信号を使う必要があるが、半導体レーザの直接変調速度は現状でも40GHz程度で、レーザ発生器の応答速度は極めて速いため、容易に多数の画像を多重表示することができる。
【0068】
レーザ光線は、径が細く拡散しないので、1つの開口部に入射させる場合に隣の開口に光がはみ出さないようにして、混合表示を防止することは容易である。また、GRBの各色レーザ光が分離している場合でも、RGB全てのレーザ光が1つの開口部に入射するようにすれば、その開口部がRGB合成した後の色相と明度を有する光を射出し、隣接の開口からの光線に影響を及ぼすことがない。
特に、開口ごとにセルを仕切る遮光壁を備えたものは、隣接セルとの干渉を防止して開口を高密度に配置することができる。
【0069】
なお、レーザ光線が直接眼に入ると危険であるため、走査するレーザ光線の異常を常に監視しておいて、異常が発生したらレーザ光線を止めるように構成することが好ましい。このため、映像表示スクリーン42の水平方向の一端にレーザ光検出センサ44を配置して、レーザ光検出センサ44で水平走査ごとにレーザ光線を検出させることにより正常状態を確認するようにしている。映像信号に含まれるレーザ光検出センサ用信号55は、レーザ光検出センサ44を照射することで検出されるようなレーザ光線を発生させる映像信号である。
レーザ光線の走査中に、水平走査時間以上の時間が経過してもレーザ光検出センサ44がレーザ光線を検出しないときは、異常発生のおそれがあるので、安全のためにレーザ発生装置を停止することができる。
【0070】
図8は、本実施例の映像表示装置により眼鏡無しで立体映像を観察する原理を説明する概念図である。
映像表示スクリーン42には、光線偏向器12から放射されるカラーレーザ光線で構成する二次元画像が形成される。二次元画像は、1画素に対応するシリンドリカルレンズの領域内に形成された開口の数だけ表示することができる。映像表示スクリーン42に表示された二次元画像からは画像毎に水平方向の所定の角度に指向する光線が高密度に放散され、映像表示スクリーン42を後面から見る観察者には、目に入った光線から幾つかの画像が観察される。
【0071】
観察者が幾つかの画像に共存するある特徴点を見る場合に、異なる画像で特徴点の位置が異なるときには、スクリーン上に現れた特徴点57,58の位置に焦点を合わせればそれぞれの特徴点の像は網膜上離れた位置に結像する。ところが、1つの瞳孔に複数の画像から同じ特徴点を表す複数の光線が投入されて、いわゆる超多眼条件を満たす場合には、これらの像が網膜上の1点に結像するようにピント調節をすることができ、ピントは物体点59の位置に合わされる。左右両眼について同じ物体点59の位置にピント調節ができれば、左右視線の輻輳位置とピント調節の間に矛盾のない立体像観察が可能になる。
【0072】
画像を表示する映像表示スクリーン20の大きさは、卓上に設置する小さい画面から劇場におけるシネマのような大きい画面まで、適宜に選択することができる。ただし、レーザ光線の直径とレーザ光線の入射する開口の大きさと、レーザ光の直接強度変調速度などにより制約を受ける。また、画面に含まれるレンチキュラーレンズの水平方向の数により画像の精細度が決まる。一方、1つの画素に対応するレンチキュラーレンズの背面に配置される開口の数により多重表示する画面数すなわち視差数が決まる。
【0073】
映像表示スクリーン20の画面が大きいほど、視差数を増加させることができる。シネマに相当する300〜400インチの画面では、容易に90〜120の視差が実現できる。多眼式立体表示方式では水平方向に多重表示する画像数が50〜100程度にできれば自然な立体画像が表示できるとされ、自由視点での立体映像を楽しむことができる。なお、100個のカメラを使った撮影は現実的でないので、撮影が可能な数のカメラで撮影して得られた適宜な数の映像から、必要数の映像を補間により生成する方法を利用することができる。
【0074】
大型の映像表示スクリーン20を設置して、カラーレーザ光線で走査して多数の視差像を形成し、その裏面にいる観察者が映像を観察するときは、観察する位置が観察者により異なるにも拘わらず、観察者それぞれがその裸眼の瞳孔に複数の視差像を入射させることにより立体映像として観察することができる。
このように、本実施例の映像表示装置は、1つまたは複数のカラーレーザ走査装置を用いた簡単な装置で、高密度指向性表示方法を実施する裸眼立体映像表示装置となっている。なお、大きなスクリーンを分割した複数の画面を統合して1つの立体画像を表示するときは、画面毎にカラーレーザ走査装置を備えればよい。
【0075】
本実施例の映像表示装置は、表示色を有するカラーレーザ光線で画面を走査して画素位置の光散乱材を表示色にすることにより、映像表示スクリーンに多数の指向性カラー映像を表示させるものである。したがって、RGBの各色に発色する画素で構成されるカラー液晶表示面を備える多数の画像表示装置を用いて、カラー液晶表示面に表示した多数の視差画像を指向性光線に載せて立体画像として観察する、インテグラルイメージング方式の裸眼立体表示装置などの従来方法とは、構成及び作動原理が大きく異なる。
【0076】
特に、従来の超多眼立体映像表示装置や高密度指向性立体映像表示装置では、多重表示する映像の数だけの映像表示装置をスクリーンの後ろに配置する必要があり、複雑な構造を持つ大型な装置となっていたが、本実施例の映像表示装置では、高周波信号で高速作動が容易なレーザ発生器を用いて同時に多数の映像を投影するので、構成が単純化し装置も小型化する。
なお、本実施例の映像表示装置は、映像表示スクリーンの画素に対応する領域に設けられる光散乱材を充填した開口の数だけの画像を独立に表示することができる。
【0077】
なお、本発明の技術的思想は、パララックスバリア方式やレンチキュラー方式の裸眼立体表示装置に適用することで、従来装置と比較してより自然な立体表示を実現することができる。なお、本発明の技術的思想は、2次元画像を観察する従来の平面映像表示装置や、単色のレーザ光線を使って単色映像を表示する映像表示装置にも適用できることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明は、より簡単な構成を有する映像表示装置を提供し、さらに、より簡単な構成により、裸眼で観察できる立体映像表示装置を提供するものである。
【符号の説明】
【0079】
11 レーザ光発生器
12 光線偏向器
13 フレネルレンズ
14 光散乱スクリーン
15 レンチキュラーシート
16 眼球
17 レーザ光線
18 指向性光線
19 レーザ走査
20 映像表示スクリーン
21 レーザ発生器制御器
22 赤色レーザ発生器
23 緑色レーザ発生器
24 青色レーザ発生器
25 反射鏡
26 ハーフミラー
27 ハーフミラー
28 カラーレーザ光線
29 偏向器制御器
30 開口
31 光散乱材
32 透明母材
33 透明粒子
34 レーザ光線
35 散乱光
36 マスク
37 穴あき基板
38 ハニカム板
39 光散乱スクリーン開口アレイ
41 シリンドリカルレンズ
42 映像表示スクリーン
43 映像表示領域
44 レーザ光検出センサ
45 水平走査
46 垂直走査
51 水平同期信号
52 カラーバースト信号
53 映像信号
54 注目する画像の映像信号
55 レーザ光検出センサ用信号
56 瞳
57,58 スクリーン上の画像
59 物体位置
63 光散乱スクリーン開口
64 レンズ
65 開口アレイの開口
66 水平走査
67 垂直走査
68 パララックスバリア
70−1〜n ビデオカメラ
71 被写体
72 表示像
80−1〜n 投影ユニット光学系
81 光源
82 コンデンサレンズ
83 LCD
84 投影レンズ
85 凹面鏡
86 ハーフミラー
87 眼球
88 瞳孔
91 二次元画像表示装置アレイ
92 二次元画像表示装置
93 レンズアレイ
94 レンズ
95 開口アレイ
96 開口
97 三次元スクリーン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光線を射出するレーザ光発生器と、該レーザ光発生器から射出されたレーザ光線を偏向する光線偏向器と、該光線偏向器から入射する光線を散乱光に変換して放射する光散乱スクリーンと、前記光線偏向器を制御して該光線偏向器に入射するレーザ光線を前記光散乱スクリーンの表示面の全面を走査するように偏向させる偏向器制御器と、前記レーザ光発生器を制御して前記光散乱スクリーンに投影する映像に対応して前記光散乱スクリーンの画素に投射するレーザ光を順次に発生させるレーザ発生器制御器とを備えた、映像表示装置。
【請求項2】
前記光散乱スクリーンは、透明の母材に光屈折率の異なる透明の粒子を拡散させた光散乱材を含んで形成される、請求項1に記載の映像表示装置。
【請求項3】
前記光散乱スクリーンは、画素に対応するセルを仕切る遮光壁を備える、請求項2に記載の映像表示装置。
【請求項4】
前記光散乱スクリーンの母材はアクリル樹脂であり、母材内に拡散される粒子は気泡である、請求項2または3に記載の映像表示装置。
【請求項5】
前記レーザ光発生器はRGB3波を混合したカラーレーザ光線を発生する、請求項1から4のいずれか1項に記載の映像表示装置。
【請求項6】
さらに、前記光線偏向器と前記光散乱スクリーンの間に、前記光線偏向器から入射するレーザ光線の方向を光軸に平行に変換して前記光散乱スクリーンに入射させるレンズ機構を備えた請求項1から5のいずれか1項に記載の映像表示装置。
【請求項7】
さらに、前記光散乱スクリーンの光放射面の後ろに、複数の視点位置を形成させるレンチキュラーシートまたはパララックスバリアを備えて、多眼式立体映像表示するようにした、請求項1から6のいずれか1項に記載の映像表示装置。
【請求項8】
さらに、前記視点位置の隣接距離を人の瞳の径より小さくして超多眼条件を満たすようにした、請求項7に記載の映像表示装置。
【請求項9】
表示スクリーンの映像表示領域の外に配置され水平走査周期を超える時間を経過してもレーザ光線を検出しないときに警報を発するセンサを備えた、請求項1から8のいずれか1項に記載の映像表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−68886(P2013−68886A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−208842(P2011−208842)
【出願日】平成23年9月26日(2011.9.26)
【出願人】(594044646)株式会社エヌエイチケイメディアテクノロジー (20)
【出願人】(395011218)エフ・エーシステムエンジニアリング株式会社 (7)
【Fターム(参考)】