説明

映像表示装置

【課題】 映像の輝度の減少を抑制しながら、光源の寿命を適切に制御することを可能とする映像表示装置及び投写型映像表示装置を提供する。
【解決手段】 投写型映像表示装置100は、光源制御部230と、素子制御部240とを備える。光源制御部230は、現在の累積点灯時間に対応する予想基準光量と光源10から実際に出射される現在光量との比較結果に応じて、光源10から出射される光量の調整量を制御する。素子制御部240は、光源10から出射される光量の調整量に応じて、映像信号を補正する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光源と、光源から出射された光を変調する光変調素子とを有する映像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光源と、光源から出射された光を変調する光変調素子と、光変調素子によって変調された光を投写面上に投写する投写ユニットとを有する投写型映像表示装置が知られている。
【0003】
ところで、光源の使用環境に応じて、光源の寿命が変化する。これに対して、光源の寿命を予測することによって、光源の寿命が所定寿命に達するように、光源から出射される基準光量を減少する技術が提案されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4372733号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した技術では、光源の使用環境によっては、光源の寿命が延びることも考えられるにもかかわらず、光源から出射される基準光量の減少のみが考慮されている。言い換えると、上述した技術では、映像の輝度の向上については考慮されていない。
【0006】
そこで、本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、映像の輝度の減少を抑制しながら、光源の寿命を適切に制御することを可能とする映像表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の特徴に係る映像表示装置は、光源(光源10)と、前記光源から出射された光を変調する光変調素子(液晶パネル40)とを備える。映像表示装置は、前記光源から出射される光量を制御する光源制御部(光源制御部230)と、フレームを構成する複数の画素毎の映像信号に基づいて、前記光変調素子を制御する素子制御部(素子制御部240)と、前記光源の累積点灯時間と前記光源から出射される予想基準光量との対応関係に応じて、現在の累積点灯時間に対応する予想基準光量を取得する取得部(取得部220)とを備える。前記光源制御部は、前記現在の累積点灯時間に対応する予想基準光量と前記光源から実際に出射される現在光量との比較結果に応じて、前記光源から出射される光量の調整量を制御する。前記素子制御部は、前記光源から出射される光量の調整量に応じて、前記映像信号を補正する。
【0008】
第1の特徴において、前記光源制御部は、前記現在の累積点灯時間に対応する予想基準光量よりも前記現在光量が小さい場合に、前記光源から出射される光量を減少する。前記光源制御部は、前記現在の累積点灯時間に対応する予想基準光量よりも前記現在光量が大きい場合に、前記光源から出射される光量を増大する。
【0009】
第1の特徴において、前記光源制御部は、前記映像信号の分布に応じて前記光源から出射される光量を減少する光量・信号調整処理において、前記光源から出射される光量の調整量を制御する。
【0010】
第1の特徴において、前記光源制御部は、複数の動作モードの中から選択された動作モードに応じて、前記光源から出射される光量の調整量を制御する。
【0011】
第1の特徴において、映像表示装置は、前記光源を冷却する冷却ユニット(冷却ユニット500)と、前記冷却ユニットを制御する冷却力制御部(冷却力制御部260)とをさらに備える。前記冷却力制御部は、前記光源から出射される光量の調整量に応じて、前記冷却ユニットが前記光源を冷却する冷却力を制御する。
【0012】
第1の特徴において、映像表示装置は、前記光変調素子によって変調された光を投写面上に投写する投写ユニットをさらに有する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、映像の輝度の減少を抑制しながら、光源の寿命を適切に制御することを可能とする映像表示装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、第1実施形態に係る投写型映像表示装置100を示す図である。
【図2】図2は、第1実施形態に係る制御ユニット200を示すブロック図である。
【図3】図3は、第1実施形態に係る取得タイミングを説明するための図である。
【図4】図4は、第1実施形態に係る取得タイミングを説明するための図である。
【図5】図5は、第1実施形態に係る光量調整を説明するための図である。
【図6】図6は、第1実施形態に係る信号変換を説明するための図である。
【図7】図7は、変更例1に係る制御ユニット200を示すブロック図である。
【図8】図8は、変更例1に係る目標輝度の設定を説明するための図である。
【図9】図9は、変更例1に係る信号変換を説明するための図である。
【図10】図10は、変更例2に係る制御ユニット200を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下において、本発明の実施形態に係る映像表示装置について、図面を参照しながら説明する。なお、以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には、同一又は類似の符号を付している。
【0016】
ただし、図面は模式的なものであり、各寸法の比率などは現実のものとは異なることに留意すべきである。従って、具体的な寸法などは以下の説明を参酌して判断すべきである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
【0017】
[実施形態の概要]
実施形態に係る映像表示装置は、光源と、前記光源から出射された光を変調する光変調素子とを備える。映像表示装置は、前記光源から出射される光量を制御する光源制御部と、フレームを構成する複数の画素毎の映像信号に基づいて、前記光変調素子を制御する素子制御部と、前記光源の累積点灯時間と前記光源から出射される予想基準光量との対応関係に応じて、現在の累積点灯時間に対応する予想基準光量を取得する取得部とを備える。前記光源制御部は、前記現在の累積点灯時間に対応する予想基準光量と前記光源から実際に出射される現在光量との比較結果に応じて、前記光源から出射される光量の調整量を制御する。前記素子制御部は、前記光源から出射される光量の調整量に応じて、前記映像信号を補正する。
【0018】
実施形態では、光源制御部は、現在の累積点灯時間に対応する予想基準光量と光源から実際に出射される現在光量との比較結果に応じて、光源から出射される光量の調整量を制御する。
【0019】
例えば、現在の累積点灯時間に対応する予想基準光量よりも現在光量が小さいケース、すなわち、光源の劣化が予想水準よりも進んでいるケースにおいて、光源から出射される光量を減少することによって、光源の劣化を抑制して、光源の長寿を延長する。一方で、現在の累積点灯時間に対応する予想基準光量よりも現在光量が大きいケース、すなわち、光源の劣化が予想水準よりも進んでいないケースにおいて、光源から出射される光量を増大することによって、光源の長寿を犠牲にしてでも、映像の高輝度化を図る。
【0020】
これによって、映像の輝度の減少を抑制しながら、光源の寿命を適切に制御することができる。
【0021】
以下においては、映像表示装置として、投写型映像表示装置を例示する。しかしながら、映像表示装置が投写型映像表示装置に限定されないことは勿論である。具体的には、映像表示装置は、液晶テレビなどのように、他の表示装置であってもよい。
【0022】
[第1実施形態]
(投写型映像表示装置)
以下において、第1実施形態に係る投写型映像表示装置について説明する。図1は、第1実施形態に係る投写型映像表示装置100の構成を示す図である。
【0023】
第1に、投写型映像表示装置100は、図1に示すように、光源10と、フライアイレンズユニット20と、PBSアレイ30と、複数の液晶パネル40(液晶パネル40R、液晶パネル40G及び液晶パネル40B)と、クロスダイクロイックプリズム50と、投写ユニット60とを有する。
【0024】
光源10は、白色光を発する光源(例えば、UHPランプやキセノンランプ)などである。すなわち、光源10が発する白色光は、赤成分光R、緑成分光G及び青成分光Bを含む。
【0025】
フライアイレンズユニット20は、光源10が発する光を均一化する。具体的には、フライアイレンズユニット20は、1対のフライアイレンズによって構成される。1対のフライアイレンズは、それぞれ、複数の微少レンズによって構成される。各微少レンズは、光源10が発する光が液晶パネル40の全面に照射されるように、光源10が発する光を集光する。
【0026】
PBSアレイ30は、フライアイレンズユニット20から出射された光の偏光状態を揃える。例えば、PBSアレイ30は、フライアイレンズユニット20から出射された光をS偏光(又はP偏光)に揃える。
【0027】
液晶パネル40Rは、赤出力信号Routに基づいて赤成分光Rを変調する。液晶パネル40Rに光が入射する側には、一の偏光方向(例えば、S偏光)を有する光を透過して、他の偏光方向(例えば、P偏光)を有する光を遮光する入射側偏光板42Rが設けられている。液晶パネル40Rから光が出射する側には、一の偏光方向(例えば、S偏光)を有する光を遮光して、他の偏光方向(例えば、P偏光)を有する光を透過する出射側偏光板43Rが設けられている。
【0028】
液晶パネル40Gは、緑出力信号Goutに基づいて緑成分光Gを変調する。液晶パネル40Gに光が入射する側には、一の偏光方向(例えば、S偏光)を有する光を透過して、他の偏光方向(例えば、P偏光)を有する光を遮光する入射側偏光板42Gが設けられる。一方で、液晶パネル40Gから光が出射する側には、一の偏光方向(例えば、S偏光)を有する光を遮光して、他の偏光方向(例えば、P偏光)を有する光を透過する出射側偏光板43Gが設けられる。
【0029】
液晶パネル40Bは、青出力信号Boutに基づいて青成分光Bを変調する。液晶パネル40Bに光が入射する側には、一の偏光方向(例えば、S偏光)を有する光を透過して、他の偏光方向(例えば、P偏光)を有する光を遮光する入射側偏光板42Bが設けられる。一方で、液晶パネル40Bから光が出射する側には、一の偏光方向(例えば、S偏光)を有する光を遮光して、他の偏光方向(例えば、P偏光)を有する光を透過する出射側偏光板43Bが設けられる。
【0030】
なお、赤出力信号Rout、緑出力信号Gout及び青出力信号Boutは、映像出力信号を構成する。映像出力信号は、1フレームを構成する複数の画素毎の信号である。
【0031】
ここで、各液晶パネル40には、コントラスト比や透過率を向上させる補償板(不図示)が設けられていてもよい。また、各偏光板は、偏光板に入射する光の光量や熱負担を軽減させるプリ偏光板を有していてもよい。
【0032】
クロスダイクロイックプリズム50は、液晶パネル40R、液晶パネル40G及び液晶パネル40Bから出射される光を合成する色合成部を構成する。クロスダイクロイックプリズム50から出射された合成光は、投写ユニット60に導かれる。
【0033】
投写ユニット60は、クロスダイクロイックプリズム50から出射された映像光を投写面(不図示)上などに投写する。
【0034】
第2に、投写型映像表示装置100は、図1に示すように、レンズ群(レンズ111〜レンズ114)及びミラー群(ミラー121〜ミラー125)を有する。
【0035】
レンズ111は、PBSアレイ30から出射された光を集光するコンデンサレンズである。レンズ82は、ミラー123で反射された光を集光するコンデンサレンズである。
【0036】
レンズ112Rは、液晶パネル40Rに赤成分光Rが照射されるように、赤成分光Rを略平行光化する。レンズ112Gは、液晶パネル40Gに緑成分光Gが照射されるように、緑成分光Gを略平行光化する。レンズ112Bは、液晶パネル40Bに青成分光Bが照射されるように、青成分光Bを略平行光化する。
【0037】
レンズ113及びレンズ114は、青成分光Bの拡大を抑制しながら、液晶パネル40B上に青成分光Bを略結像するリレーレンズである。
【0038】
ミラー121は、赤成分光Rを透過して、青成分光B及び緑成分光Gを反射するダイクロイックミラーである。ミラー122は、青成分光Bを透過して、緑成分光Gを反射するダイクロイックミラーである。ミラー121及びミラー122は、赤成分光R、緑成分光G及び青成分光Bを分離する色分離部を構成する。
【0039】
ミラー123及びミラー124は、青成分光Bを反射して、青成分光Bを液晶パネル40B側に導く。ミラー125は、赤成分光Rを反射して、赤成分光Rを液晶パネル40R側に導く。
【0040】
(制御ユニットの構成)
以下において、第1実施形態に係る制御ユニットについて説明する。図2は、第1実施形態に係る制御ユニット200を示すブロック図である。制御ユニット200は、投写型映像表示装置100に設けられており、投写型映像表示装置100を制御する。
【0041】
なお、制御ユニット200は、映像入力信号を映像出力信号に変換する。映像入力信号は、赤入力信号Rin、緑入力信号Gin及び青入力信号Binによって構成される。映像出力信号は、赤出力信号Rout、緑出力信号Gout及び青出力信号Boutによって構成される。映像入力信号及び映像出力信号は、1フレームを構成する複数の画素毎に入力される信号である。
【0042】
図2に示すように、制御ユニット200は、記憶部210と、取得部220と、光源制御部230と、素子制御部240とを有する。
【0043】
記憶部210は、光源10の累積点灯時間と光源10から出射される予想基準光量との対応関係を記憶する。
【0044】
例えば、累積点灯時間と予想基準光量との対応関係は、工場出荷時に記憶部210に記憶される。或いは、累積点灯時間と予想基準光量との対応関係は、投写型映像表示装置100の設置後において、投写型映像表示装置100の設置環境に応じて記憶部210に記憶されてもよい。
【0045】
取得部220は、様々な装置に接続されており、各種情報を取得するインタフェースである。
【0046】
第1に、取得部220は、映像入力信号を外部装置300から取得する。外部装置300は、例えば、DVDプレーヤ、TVチューナ、パーソナルコンピュータなどである。
【0047】
第2に、取得部220は、累積点灯時間と予想基準光量との対応関係を記憶部210から取得する。ここで、予想基準光量は、デフォルトの電流で光源10を駆動したときに、光源10から出射される光量の予想値である。
【0048】
第3に、取得部220は、光源10から実際に出射される現在光量を光量検出装置400から取得する。光量検出装置400は、光源10から出射される光量を検出可能な位置に設置される。例えば、光量検出装置400は、光源10の近傍に設置されてもよく、投写ユニット60の近傍に設置されてもよい。或いは、光量検出装置400は、投写面を構成するスクリーンに設置されてもよい。
【0049】
なお、記憶部210に記憶される予想基準光量と光量検出装置400によって検出される現在光量とを比較できるように、液晶パネル40によって行われる変調の影響が排除されることに留意すべきである。
【0050】
ここで、取得部220が予想基準光量及び現在光量を取得するタイミングについて説明する。取得部220は、基本的には、図3に示すように、取得トリガーに応じて、予想基準光量及び現在光量を取得する。所定トリガーは、例えば、周期的に巡ってくるトリガーである。或いは、所定トリガーは、ユーザの指示であってもよい。
【0051】
ところで、光源10から出射される光量は、光源10の点灯開始から所定期間が経過するまで安定しない。従って、光源10の点灯開始から所定期間が経過するまでの間に所定トリガーのタイミングが存在する場合には、取得部220は、図4に示すように、光源10の点灯開始から待機時間が経過してから、予想基準光量及び現在光量を取得する。待機時間は、光源10の点灯開始から光量が安定するまでの時間である。
【0052】
光源制御部230は、光源10から出射される光量を制御する。具体的には、光源制御部230は、現在の累積点灯時間に対応する予想基準光量と現在光量との比較結果に応じて、光源10から出射される光量の調整量を制御する。
【0053】
詳細には、光源制御部230は、現在の累積点灯時間に対応する予想基準光量よりも現在光量が小さい場合に、光源10から出射される光量をデフォルト光量に対して減少する。光源制御部は、現在の累積点灯時間に対応する予想基準光量よりも現在光量が大きい場合に、光源10から出射される光量をデフォルト光量に対して増大する。
【0054】
なお、デフォルト光量は、デフォルトの電流で光源10を駆動したときに、光源10から出射される光量である。
【0055】
例えば、光源制御部230は、図5に示すように、現在の累積点灯時間に対応する予想基準光量よりも現在光量が小さい時間帯Pにおいて、光源10から出射される光量をデフォルト光量に対して減少する。これによって、光源10の負荷が軽減されるため、長期的には、予想基準光量に対する比較において、現在光量が相対的に増大していく。すなわち、映像の輝度が低下するが、光源10の寿命が増大する。
【0056】
なお、予想基準光量と現在光量との差異が大きいほど、光源10から出射される光量の減少量が大きいことが好ましい。
【0057】
一方で、光源制御部230は、図5に示すように、現在の累積点灯時間に対応する予想基準光量よりも現在光量が大きい時間帯Qにおいて、光源10から出射される光量をデフォルト光量に対して増大する。これによって、光源10の負荷が増大するため、長期的には、予想基準光量に対する比較において、現在光量が相対的に減少していく。すなわち、光源10の寿命が減少するが、映像の輝度が向上する。
【0058】
なお、予想基準光量と現在光量との差異が大きいほど、光源10から出射される光量の増大量が大きいことが好ましい。
【0059】
素子制御部240は、複数の画素毎の映像入力信号を複数の画素毎の映像出力信号に変換する。すなわち、素子制御部240は、赤入力信号Rinを赤出力信号Routに変換する。同様に、素子制御部240は、緑入力信号Ginを緑出力信号Goutに変換し、青入力信号Binを青出力信号Boutに変換する。
【0060】
ここで、素子制御部240は、光源10から出射される光量の調整量に応じて、映像信号を補正する。すなわち、素子制御部240は、映像入力信号を映像出力信号に変換するための対応関係を補正する。
【0061】
例えば、素子制御部240は、光源10から出射される光量がデフォルト光量である場合には、図6に示す実線の対応関係に従って、映像入力信号を映像出力信号に変換する。
【0062】
これに対して、素子制御部240は、光源10から出射される光量の減少時には、図6に示す点線の対応関係に従って、映像入力信号を映像出力信号に変換する。すなわち、映像信号の増幅によって、映像の輝度の低下が補填される。
【0063】
一方で、素子制御部240は、光源10から出射される光量の増大時には、図6に示す一点鎖線の対応関係に従って、映像入力信号を映像出力信号に変換する。すなわち、映像信号の減衰によって、映像の輝度が維持される。
【0064】
(調整例)
以下において、第1実施形態に係る調整例について説明する。以下においては、(1)光源10から出射される光量の調整、(2)映像信号の補正について説明する。
【0065】
(1)光源10から出射される光量の調整量(Ladjust)については、以下の式に基づいて算出される。ここでは、調整量(Ladjust)は、デフォルト光量に対する比率(%)で表される。
【数1】

【0066】
従って、予想基準光量が現在光量よりも大きい場合には、調整量(Ladjust)は、正の値であり、デフォルト光量に対する光量の減少率を意味する。これに対して、予想基準光量が現在光量よりも小さい場合には、調整量(Ladjust)は、負の値であり、デフォルト光量に対する光量の増大率を意味する。
【0067】
(2)映像信号を補正するための補正値βは、以下の式が満たされるように算出される。
【数2】

【0068】
従って、映像入力信号は、α、β及びLadjustを用いて、以下の式に従って映像出力信号に変換される。
【数3】

【0069】
(作用及び効果)
第1実施形態では、光源制御部230は、現在の累積点灯時間に対応する予想基準光量と光源10から実際に出射される現在光量との比較結果に応じて、光源10から出射される光量の調整量を制御する。
【0070】
例えば、現在の累積点灯時間に対応する予想基準光量よりも現在光量が小さいケース、すなわち、光源10の劣化が予想水準よりも進んでいるケースにおいて、光源から出射される光量を減少することによって、光源10の劣化を抑制して、光源10の長寿を延長する。一方で、現在の累積点灯時間に対応する予想基準光量よりも現在光量が大きいケース、すなわち、光源10の劣化が予想水準よりも進んでいないケースにおいて、光源10から出射される光量を増大することによって、光源10の長寿を犠牲にしてでも、映像の高輝度化を図る。
【0071】
これによって、映像の輝度の減少を抑制しながら、光源10の寿命を適切に制御することができる。
【0072】
[変更例1]
以下において、第1実施形態の変更例1について説明する。以下においては、第1実施形態に対する相違点について主として説明する。
【0073】
変更例1では、光源制御部230は、映像信号の分布に応じて光源10から出射される光量を減少する光量・信号調整処理において、光源10から出射される光量の調整量を制御する。
【0074】
(制御ユニットの構成)
以下において、変更例1に係る制御ユニットについて説明する。図7は、変更例1に係る制御ユニット200を示すブロック図である。
【0075】
図7に示すように、制御ユニット200は、図2に示す構成に加えて、光量・信号調整処理部250を有する。
【0076】
光量・信号調整処理部250は、光量・信号調整処理を行う。光量・信号調整処理は、映像入力信号の分布(ここでは、輝度の分布)に応じて光源10から出射される光量を減少する処理である。また、光量・信号調整処理は、光源10から出射される光量の減少量に応じて、映像信号を増大する処理である。
【0077】
なお、映像信号の増大は、後述するように、映像入力信号を映像出力信号に変換する変換曲線の制御によって実現される。
【0078】
光量・信号調整処理部250は、目標輝度L及び最大輝度LMAXを算出し、光源制御部230及び素子制御部240に出力する。
【0079】
目標輝度Lは、映像入力信号に基づいて算出され、光量・信号調整処理に用いられる。具体的には、複数の画素毎の映像入力信号に基づいて算出される輝度の度数を高輝度側から取得して、取得された度数が所定数に達する輝度が目標輝度Lとして算出される。
【0080】
詳細には、光量・信号調整処理部250は、図8に示すように、映像入力信号に基づいて、複数の画素の輝度の度数を計数し、複数の画素の輝度のヒストグラムを生成する。続いて、光量・信号調整処理部250は、複数の画素毎の映像入力信号に基づいて算出される輝度の度数を高輝度側から取得して、取得された度数が所定数に達する目標輝度Lを算出する。換言すると、光量・信号調整処理部250は、面積Sと面積Sとの比率が所定比率X(0≦X<1)となる輝度を目標輝度Lとして算出する。なお、面積Sと面積Sとの比率Xは、S/(S+S)で表される。
【0081】
最大輝度LMAXは、映像入力信号に基づいて算出され、光量・信号調整処理に用いられる。具体的には、最大輝度LMAXは、映像入力信号に基づいて算出される輝度の最大輝度である。なお、上限輝度Lは、映像入力信号がとり得る上限値に対応する輝度である。
【0082】
第1実施形態において、光量・信号調整処理部250は、現在の累積点灯時間に対応する予想基準光量と現在光量との比較結果に応じて、目標輝度Lを算出する。言い換えると、光量・信号調整処理部250は、現在の累積点灯時間に対応する予想基準光量と現在光量との比較結果に応じて、所定比率Xを調整する。
【0083】
例えば、光量・信号調整処理部250は、現在の累積点灯時間に対応する予想基準光量よりも現在光量が小さい場合に、目標デフォルト輝度に対して小さな目標輝度Lを算出する。これによって、光源10の負荷が軽減されるため、長期的には、予想基準光量に対する比較において、現在光量が相対的に増大していく。すなわち、映像の輝度が低下するが、光源10の寿命が増大する。
【0084】
なお、予想基準光量と現在光量との差異が大きいほど、目標デフォルト輝度に対して目標輝度Lが小さいことが好ましい。
【0085】
一方で、光量・信号調整処理部250は、光源制御部は、現在の累積点灯時間に対応する予想基準光量よりも現在光量が大きい場合に、目標デフォルト輝度に対して大きな目標輝度Lを算出する。これによって、光源10の負荷が増大するため、長期的には、予想基準光量に対する比較において、現在光量が相対的に増大していく。すなわち、光源10の寿命が減少するが、映像の輝度が向上する。
【0086】
なお、予想基準光量と現在光量との差異が大きいほど、目標デフォルト輝度に対して目標輝度Lが大きいことが好ましい。
【0087】
第1実施形態において、目標デフォルト輝度とは、現在の累積点灯時間に対応する予想基準光量と現在光量との差異がないときに適用される目標輝度である。
【0088】
光源制御部230は、目標輝度Lに基づいて、光源10から出射されるデフォルト光量に対する減少量を算出する。例えば、光源10から出射される光量の減少量(%)は、L/Lである。
【0089】
素子制御部240は、目標輝度L及び最大輝度LMAXに基づいて、映像入力信号が映像出力信号よりも大きくなるように、映像入力信号を映像出力信号に変換する。具体的には、素子制御部240は、以下の方法によって映像信号を偏光する。
【0090】
図9に示すように、光量・信号調整処理が行われない場合には、映像入力信号(Sin)と映像出力信号(Sout)との変換率が1対1であることを前提とする。
【0091】
このような関係を前提として、光量・信号調整処理が行われる場合には、映像入力信号(Sin)と映像出力信号(Sout)との変換率は、以下の式によって表される。
【数4】

【0092】
変更例1では、上述したように、光源制御部230は、光量・信号調整処理において、光源10から出射される光量の調整量を制御する。従って、変更例1では、第1実施形態に示すように、光源10から出射されるデフォルト光量を調整する必要がないことに留意すべきである。
【0093】
但し、第1実施形態及び変更例1は組み合わされてもよい。すなわち、第1実施形態のように、光源10から出射されるデフォルト光量が調整された上で、変更例1のように、目標デフォルト輝度に対する目標輝度Lの調整を行ってもよい。
【0094】
[変更例2]
以下において、第1実施形態の変更例2について説明する。以下においては、第1実施形態に対する相違点について主として説明する。
【0095】
変更例2では、投写型映像表示装置100は、光源10を冷却する冷却ユニットを備える。投写型映像表示装置100は、光源10から出射される光量の調整量に応じて、冷却ユニットが光源10を冷却する冷却力を制御する。
【0096】
(制御ユニットの構成)
以下において、変更例2に係る制御ユニットについて説明する。図10は、変更例2に係る制御ユニット200を示すブロック図である。
【0097】
図10に示すように、制御ユニット200は、図2に示す構成に加えて、冷却力制御部260を有する。
【0098】
冷却力制御部260は、光源10を冷却する冷却ユニット500の冷却力を制御する。冷却ユニット500は、例えば、冷却ファン、ペルチェ素子、液冷ユニットなどである。
【0099】
具体的には、冷却力制御部260は、光源10から出射される光量の調整量に応じて、冷却ユニット500が光源10を冷却する冷却力を制御する。例えば、冷却力制御部260は、光源10から出射される光量が減少する場合には、光量の減少に応じて、冷却ユニット500の冷却力を弱める。一方で、冷却力制御部260は、光源10から出射される光量が増大する場合には、光量の減少に応じて、冷却ユニット500の冷却力を強める。
【0100】
[変更例3]
以下において、第1実施形態の変更例3について説明する。以下においては、第1実施形態に対する相違点について主として説明する。
【0101】
変更例3では、投写面上に投写される映像のサイズ(ズーム率)に応じて、光源10から出射される光量の調整量が定められる。具体的には、投写面上に投写される映像のサイズが大きいほど、すなわち、ズーム率が小さいほど、光源10から出射される単位面積あたりの光量の調整量が小さい。一方で、投写面上に投写される映像のサイズが小さいほど、すなわち、ズーム率が大きいほど、光源10から出射される単位面積あたりの光量の調整量が大きい。
【0102】
例えば、上述した所定係数αは、以下の式に基づいて算出される。ズーム率は、投写面上に投写される映像のサイズが最大であるときに”0”であり、投写面上に投写される映像のサイズが最小であるときに”1”である。
【数5】

【0103】
ここで、投写面上に投写される映像のサイズが小さいほど、投写面上に光が集まっているため、光源10から出射される光量の減少に伴う輝度低下が目立たないことに留意すべきである。従って、変更例3の処理は、光源10から出射される光量を減少するときにのみ適用することが好ましい。
【0104】
[変更例4]
以下において、第1実施形態の変更例4について説明する。以下においては、第1実施形態に対する相違点について主として説明する。
【0105】
変更例4では、現在の累積点灯時間に対応する予想基準光量と現在光量との比較結果に応じて、投写面上に投写される映像のサイズの上限(ズーム率)が制限される。
【0106】
具体的には、現在の累積点灯時間に対応する予想基準光量よりも現在光量が小さいケース、すなわち、光源10の劣化が進んでいるケースにおいて、投写面上に投写される映像のサイズの上限が制限される。言い換えると、光源10から出射される光量の減少量が大きいほど、投写面上に投写される映像のサイズの上限が小さいことが好ましい。
【0107】
ここで、投写面上に投写される映像のサイズが大きいほど、投写面上に光が分散するため、光源10から出射される光量の減少に伴う輝度低下が目立つことに留意すべきである。
【0108】
[変更例5]
以下において、第1実施形態の変更例4について説明する。以下においては、第1実施形態に対する相違点について主として説明する。
【0109】
変更例5では、投写型映像表示装置100は、複数の動作モードを有している。動作モードは、例えば、光源10の寿命を優先するモード及び映像の輝度を優先するモードなどである。また、動作モードは、光源10の寿命を優先するモード及び映像の輝度を優先するモードに加えて、これらのモードの中間モードを有していてもよい。言い換えると、動作モードは、3以上のモードを含んでいてもよい。
【0110】
ここで、光源制御部230は、複数の動作モードの中から選択された動作モードに応じて、光源10から出射される光量の調整量を制御する。
【0111】
具体的には、光源制御部230は、光源10の寿命を優先するモードが選択されている場合に、光源10から出射される光量の減少量を増大する。或いは、光源制御部230は、光源10の寿命を優先するモードが選択されている場合に、光源10から出射される光量の増大量を減少する。
【0112】
一方で、光源制御部230は、映像の輝度を優先するモードが選択されている場合に、光源10から出射される光量の減少量を減少する。或いは、光源制御部230は、映像の輝度を優先するモードが選択されている場合に、光源10から出射される光量の増大量を増大する。
【0113】
[その他の実施形態]
本発明は上述した実施形態によって説明したが、この開示の一部をなす論述及び図面は、この発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
【0114】
実施形態では、光変調素子の一例として、透過型の液晶パネルについて説明したが、光変調素子は、これに限定されるものではない。光変調素子は、反射型の液晶パネルやDMD(Digital Micromirror Device)であってもよい。
【0115】
実施形態では、光源の一例として、白色光を出射するUHPランプについて説明したが、光源は、これに限定されるものではない。光源は、LED(Light Emitting Diode)やLD(Laser Diode)などの固体光源であってもよい。
【0116】
実施形態では、光源制御部230は、現在の累積点灯時間に対応する予想基準光量よりも現在光量が小さいケース及び現在の累積点灯時間に対応する予想基準光量よりも現在光量が大きいケースの双方のケースにおいて、光源10から出射される光量を調整する。しかしながら、実施形態は、これに限定されるものではない。例えば、光源制御部230は、現在の累積点灯時間に対応する予想基準光量よりも現在光量が小さい場合にのみ、光源10から出射される光量を減少してもよい。或いは、光源制御部230は、現在の累積点灯時間に対応する予想基準光量よりも現在光量が大きい場合にのみ、光源10から出射される光量を増大してもよい。
【符号の説明】
【0117】
10…光源、20…フライアイレンズユニット、30…PBSアレイ、40…液晶パネル、50…クロスダイクロイックミラー、60…投写ユニット、100…投写型映像表示装置、200…制御ユニット、210…記憶部、220…取得部、230…光源制御部、240…素子制御部、250…光量・信号調整処理部、260…冷却力制御部、300…外部装置、400…光量検出装置、500…冷却ユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源と、前記光源から出射された光を変調する光変調素子とを備えた映像表示装置であって、
前記光源から出射される光量を制御する光源制御部と、
フレームを構成する複数の画素毎の映像信号に基づいて、前記光変調素子を制御する素子制御部と、
前記光源の累積点灯時間と前記光源から出射される予想基準光量との対応関係に応じて、現在の累積点灯時間に対応する予想基準光量を取得する取得部とを備え、
前記光源制御部は、前記現在の累積点灯時間に対応する予想基準光量と前記光源から実際に出射される現在光量との比較結果に応じて、前記光源から出射される光量の調整量を制御し、
前記素子制御部は、前記光源から出射される光量の調整量に応じて、前記映像信号を補正することを特徴とする映像表示装置。
【請求項2】
前記光源制御部は、前記現在の累積点灯時間に対応する予想基準光量よりも前記現在光量が小さい場合に、前記光源から出射される光量を減少し、
前記光源制御部は、前記現在の累積点灯時間に対応する予想基準光量よりも前記現在光量が大きい場合に、前記光源から出射される光量を増大することを特徴とする請求項1に記載の映像表示装置。
【請求項3】
前記光源制御部は、前記映像信号の分布に応じて前記光源から出射される光量を減少する光量・信号調整処理において、前記光源から出射される光量の調整量を制御することを特徴とする請求項1に記載の映像表示装置。
【請求項4】
前記光源制御部は、複数の動作モードの中から選択された動作モードに応じて、前記光源から出射される光量の調整量を制御することを特徴とする請求項1に記載の映像表示装置。
【請求項5】
前記光源を冷却する冷却ユニットと、
前記冷却ユニットを制御する冷却力制御部とをさらに備え、
前記冷却力制御部は、前記光源から出射される光量の調整量に応じて、前記冷却ユニットが前記光源を冷却する冷却力を制御することを特徴とする請求項1に記載の映像表示装置。
【請求項6】
前記光変調素子によって変調された光を投写面上に投写する投写ユニットをさらに有することを特徴とする請求項1に記載の映像表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−97140(P2013−97140A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−239089(P2011−239089)
【出願日】平成23年10月31日(2011.10.31)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】