説明

映像装置、及び分散処理システム

【課題】通信網を介して装置の余剰資源を簡易な操作で提供できるとともに、強固なセキュリティ機能を備えた映像装置、及び分散処理システムを提供する。
【解決手段】本発明の映像装置は、映像または音声を含む再生情報の記録または再生を行う情報処理部と、通信網に接続して通信を行う通信部と、制御プログラムの実行を行う制御部とを備えている。また、予め定められた条件を満たす場合に制御プログラムの変更を許可する。また、通信網に接続されている予め定められた情報処理装置と通信を行うよう通信部を制御する通信制御部を備えている。また、情報処理装置より演算処理を行うために必要な演算用データを受信し、演算用データを用いた演算を行い、演算の結果を示す演算結果データを情報処理装置へ送信する演算部を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、映像の記録、再生、または表示を行う映像装置に関するものであり、特に通信網に接続するネットワーク機能を備えた映像装置、及び分散処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、デジタル技術の多機能化、多様化により、DVD(Digital Versatile Disc)レコーダやHDD(Hard Disk Drive)レコーダ等の様々な映像装置が普及している。これらの映像装置は、DVDやHDDに記録されている映像/音声デジタルデータをデコードすることにより、映像/音声信号をテレビジョン装置やモニタ、又はスピーカ等に出力する。
【0003】
近年、映像装置に新たに備えられるようになった機能として、通信網に接続して他の装置と通信を行う、いわゆるネットワーク機能がある。ネットワーク機能を用いることにより例えば、インターネットに接続して各種情報を取得したり、映像装置に対する録画予約を通信網に接続されたパソコン等から実施したりすることができる。
【0004】
このようなネットワーク機能の利用方法の一つとして、装置の余剰資源を通信網を介して複数の装置間で共有し、一装置がその他の装置の余剰資源を一時的に使用する技術が提案されている。
【0005】
上記に関連して特許文献1においては、CPUにおける処理時間の売買を可能とするシステム及び方法が開示されている。このシステム及び方法においては、CPU資源の購入を希望する資源購入者が所有する端末に対して、処理対象となるプログラムのファイル名、処理結果に対する支払価格、購入依頼の募集を提示する募集期間の入力を促す。
【0006】
そして処理対象となるプログラムの送信を促し、予め項目の規定されたデータベースに対して、入力されたファイル名、支払価格及び募集期間と送信された処理対象となるプログラムとを関連付けて記録する。一方、CPU資源の提供を希望する資源提供者が所有する演算機に対して、このファイル名、支払価格及び募集期間を資源購入者からの依頼内容として提示する。そして当該依頼内容に対して応募するか否かを回答させる。
【0007】
また上記に関連して特許文献2においては、ネットワークに接続された複数の機器における余剰資源を連携動作させて一つの処理を効率良く分散処理させ得る信号処理装置及び分散処理システムが開示されている。
【0008】
この装置及びシステムは、内部の処理ブロックで実行可能な内部処理タスクと内部の処理ブロックで実行不可能な外部処理タスクとに分類し、外部処理タスクに対応する不足機能を決定する不足機能決定部を備えている。また、ネットワークを介して、不足機能を持つ余剰資源の存在の有無の問い合わせを発信し、余剰資源を検索する余剰資源検索部を備えている。これにより、一連の処理タスクを、内部の処理ブロックと外部の余剰資源とに分散処理させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2002−92366号公報
【特許文献2】特開2007−128503号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら特許文献1または特許文献2に記載されている技術では、余剰資源を提供するための準備に手間がかかるという問題があった。具体的には、装置に専用アプリケーションをインストールし、ユーザの個人情報等を含む各種設定を行い、サーバ等の情報処理装置に装置情報を登録する必要があった。
【0011】
また、相互に余剰資源を提供する場合、外部装置からのアクセスが多発するため、セキュリティの強化が重要な課題となってくる。強固なセキュリティ対策をしておかなければ、装置の資源が悪意ある第三者に使用される危険や、装置に記録されている各種情報、例えば個人情報等が漏洩する危険がある。
【0012】
本発明は、上記の問題を鑑みてなされたものであり、通信網を介して装置の余剰資源を簡易な操作で提供できるとともに、強固なセキュリティ機能を備えた映像装置、及び分散処理システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために本発明の映像装置は、映像または音声を含む再生情報の記録または再生を行う情報処理部と、通信網に接続して通信を行う通信部と、制御プログラムの実行を行う制御部とを備え、予め定められた条件を満たす場合に前記制御プログラムの変更を許可する映像装置において、通信網に接続されている予め定められた情報処理装置と通信を行うよう前記通信部を制御する通信制御部と、前記情報処理装置より演算処理を行うために必要な演算用データを受信し、前記演算用データを用いた演算を行い、前記演算の結果を示す演算結果データを前記情報処理装置へ送信するよう前記通信制御部を制御する演算部とを備えることを特徴とする。
【0014】
この構成によると、本発明の映像装置は、映像または音声を含む再生情報の記録または再生を行う情報処理部と、通信網に接続して通信を行う通信部と、制御プログラムの実行を行う制御部とを備えている。また、予め定められた条件を満たす場合に制御プログラムの変更を許可する。また、通信網に接続されている予め定められた情報処理装置と通信を行うよう通信部を制御する通信制御部を備えている。また、情報処理装置より演算処理を行うために必要な演算用データを受信し、演算用データを用いた演算を行い、演算の結果を示す演算結果データを情報処理装置へ送信する演算部を備えている。
【0015】
また、上記目的を達成するために本発明の映像装置は、前記映像装置に対する処理予約を受け付ける受付画面を表示するための映像信号を生成する映像信号生成部を備え、前記設定部は、前記受付画面を用いて、前記演算部が演算を行う時間帯である資源提供時間帯の指定を受け付けることを特徴とする。
【0016】
この構成によると、映像装置は、映像装置に対する処理予約を受け付ける受付画面を表示するための映像信号を生成する映像信号生成部を備えている。設定部は、受付画面を用いて、演算部が演算を行う時間帯である資源提供時間帯の指定を受け付ける。
【0017】
また、上記目的を達成するために本発明の映像装置は、前記制御部により送信される制御信号の信号路に設けられて経路の切り換えを行う切換部と、前記切換部を介して前記信号路に接続される第二制御部とを備え、前記演算部は、前記資源提供時間帯が到来した場合に、前記第二制御部が実行する制御プログラムを、前記第二制御部により前記演算を行うための制御プログラムに変更し、前記第二制御部を予め定められた装置にのみ接続するよう経路の切り換えを行うよう前記切換部を制御することを特徴とする。
【0018】
この構成によると、映像装置は、制御部により送信される制御信号の信号路に設けられて経路の切り換えを行う切換部と、切換部を介して信号路に接続される第二制御部とを備えている。演算部は、資源提供時間帯が到来した場合に、第二制御部が実行する制御プログラムを、第二制御部により前記演算を行うための制御プログラムに変更する。そして第二制御部を所定の装置にのみ接続するよう、経路の切り換えを行う。
【0019】
また、上記目的を達成するために本発明の映像装置が備える前記演算部は、前記資源提供時間帯が終了した場合に、前記切換部により確立されている経路を前記切り換えが行われる前の経路に切り換え、前記第二制御部が実行する制御プログラムを前記変更が行われる前の制御プログラムに復帰させ、前記変更が行われる前の制御プログラムと前記復帰が行われた後の制御プログラムとが一致するか否かを判定することを特徴とする。
【0020】
この構成によると、演算部は、資源提供時間帯が終了した場合に、切換部により確立されている経路を、切り換えが行われる前の経路に切り換える。また、第二制御部が実行する制御プログラムを、変更前の制御プログラムに復帰させる。そして変更前の制御プログラムと復帰後の制御プログラムとが一致するか否かを判定する。
【0021】
また、上記目的を達成するために本発明の分散処理システムは、通信網と、通信網に接続された情報処理装置と、請求項1〜請求項4のいずれかに記載の映像装置とを含んでいる。
【0022】
この構成によると、通信網と、通信網に接続された情報処理装置と、請求項1〜請求項4のいずれかに記載の映像装置とを用いて、演算用プログラムの送受信と、余剰資源による演算の実施とを行う。
【0023】
また、上記目的を達成するために本発明の分散処理システムが含む前記情報処理装置は、前記映像装置が演算を行ったことにより発生した課金を示す課金情報を生成し、前記課金情報を前記通信網を介して前記映像装置へ送信することを特徴とする。
【0024】
この構成によると、情報処理装置は、映像装置が演算を行ったことにより発生した課金を示す課金情報を生成し、課金情報を通信網を介して映像装置へ送信する。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、同一の規格で製造される複数の映像装置を用いて余剰資源の提供を行うため、汎用性は高いが個体差の大きい情報処理装置、例えばPC等の余剰資源を提供する場合と比較して、初期設定の簡略化、及びセキュリティ性の向上を図ることができる。
【0026】
また本発明によれば、余剰資源が演算を行う場合に、通常の映像処理を行う場合とは異なる通信バスに切り換えてから演算を行うため、演算時において余剰資源がアクセス可能な装置を限定し、セキュリティ性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の第一の実施形態に係る機能部の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の第一の実施形態に係る映像装置の内部構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の第一の実施形態に係る演算資源提供処理を示すフロー図である。
【図4】本発明の第一の実施形態に係る提供時間指定画面を示す画面図である。
【図5】本発明の第二の実施形態に係る映像装置の内部構成を示すブロック図である。
【図6】本発明の第二の実施形態に係る演算資源提供処理を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下に本発明の実施形態を、図面を参照しながら説明する。なお、ここで示す実施形態は一例であり、本発明はここに示す実施形態に限定されるものではない。なお本発明の映像装置は、PC等の汎用的な情報処理装置を対象外とし、所定の規格に乗っ取って製造される専用機、つまり機能が限定されており、ユーザによる制御プログラムの変更が基本的に許可されていない映像装置を対象としたものである。
〈1−1.内部構成について〉
【0029】
図2は、本発明の第一の実施形態に係るHDDレコーダ1(=映像装置)の内部構成を示すブロック図である。なお、図2における矢印線は映像/音声データの流れを示している。また、矢印のない直線は、制御部11が各装置に対する制御信号等を送受信するための通信バスを示している。
【0030】
HDDレコーダ1は少なくとも、制御部11、メモリ12、操作部13、フラッシュメモリ14、HDD15、光ディスクドライブ16、放送受信部17、信号処理部18、OSD(On-Screen Display)処理部19(=映像信号生成部)、外部接続端子20、及び通信I/F部21(=通信部)を含むように構成されている。なお外部接続端子20により接続される表示装置として、ディスプレイ2が存在する。
【0031】
制御部11は、HDDレコーダ1の各部材の駆動を制御することにより、映像/音声の再生処理、記録処理、出力処理等を統括制御するためのものである。制御部11は例えば、複数のマイクロプロセッサから構成されている。また制御部11は、制御部11が備える演算処理装置上でプログラムを実行することにより実現される機能部として、後述する録画再生部11a〜演算部11d(図1)を備えている。
【0032】
メモリ12は、HDDレコーダ1が保持する各種データを一時的に記録する媒体であり、例えば書き込み可能なRAM(Random Access Memory)等により構成されている。メモリ12は、例えば制御部11によって各種情報処理が行われる際の処理データや、ユーザから受けた指示命令等を一時的に記録しておくためのバッファメモリとしての役割を持つ。
【0033】
操作部13は、ユーザがHDDレコーダ1に対して、映像/音声の再生指示等を行うためのものである。操作部13は、例えばHDDレコーダ1のハウジングに設けられた複数のボタンや、図示しないリモコン及びリモコン信号受信部等を含む。操作部13はこれらの装置により、ユーザ操作を受け付ける。ユーザ操作が受け付けられると、制御部11は、操作内容に基づいて再生処理や記録処理等を行う。
【0034】
フラッシュメモリ14は、EEPROMの一種で、デバイスの利用者が書き込み/消去可能なROMである。フラッシュメモリ14は回路基板に実装したままで書き込み、消去ができるため、利用時に書き換えが必要な用途、例えば装置の動作設定データや、利用者固有の情報等を保存するのに用いられる。
【0035】
HDD15は、デジタルデータを記録する磁気記録媒体である。本実施形態では主に、放送波に含まれる映像/音声データから生成される録画データや、余剰資源を提供して演算処理を行う際の一時データを記録するのに用いられる。
【0036】
光ディスクドライブ16は、CD(Compact Disc)メディア、或いはDVD(Digital Versatile Disc)メディア等の光ディスクに対して光学的に各種データの読み取りを行うための光学装置である。光ディスクドライブ16は、光ピックアップ(不図示)の制御を行うことにより、光ディスクに光ビームを照射して、光ディスクに記録された音声情報、映像情報等の各種情報の読み取りを行う。この際、光ピックアップの駆動制御やフォーカス制御、或いはチルト制御等の各種制御を行う。
【0037】
放送受信部17は、外部のアンテナ(不図示)に接続されてデジタル/アナログ放送の選局、受信、周波数変換、増幅、復調等を行う。放送受信部17は、アナログ方式であればアナログチューナ、映像中間周波増幅回路、復調回路、及び増幅回路等を含むように構成されている。またデジタル方式であれば、デジタルチューナ、及び誤り訂正部等を含むように構成されている。
【0038】
例えばデジタル放送を受信する場合、放送受信部17に含まれるデジタルチューナが、中間周波信号の増幅及び検波を行う。これにより、MPEG2方式のデジタル信号であるTS(=Transport Stream)の取得を行う。なおTSとは、複数の番組の音声PES(Packetized Elementary Stream)、映像PES、及び付加情報を固定長のTSパケットに分割してつなぎ合わせたものである。信号処理部18へ与えられて映像/音声信号に変換される。なお、TSを変換せずHDD15へ記録することも可能である。この場合、信号処理部18はTSのスルーのみを行う。
【0039】
信号処理部18は、放送受信部17が生成したTSや、光ディスクドライブ16が光ディスクより読み出したデジタルデータを入力し、音声情報を含む音声デジタル信号と、映像情報を含む映像デジタル信号とに分離する多重分離部である。具体的には例えば、放送受信部17より生成されたTSを、TSパケットに分割する。そしてTSパケットを再結合することにより、音声/映像のPESを生成する。
【0040】
そしてPESを結合することにより、ES(Elementary Stream=符号化された音声/映像データ)を生成する。さらに信号処理部18はESの復号を行い、各種デジタル信号に変換する。復号により得られたデジタル信号は、記録する場合はHDD15へ与えられる。またディスプレイ2等に出力する場合は、外部接続端子20へ与えられる。
【0041】
OSD処理部19は、映像信号を生成する機能部である。OSD処理部19は、HDDレコーダ1が出力すべき情報をユーザが視認できる映像データに変換し、変換した映像データをディスプレイ2に表示するための映像信号を生成する。生成された映像信号は、外部接続端子20より出力される。
【0042】
外部接続端子20は、例えばHDMI(High Definition Multimedia Interface)端子やUSB(Universal Serial Bus)端子等を含む、複数の入出力端子からなるインタフェースである。外部接続端子20はこれらの入出力端子を用いて、HDDレコーダ1と外部の装置、例えばディスプレイ2を接続し、デジタル信号またアナログ信号の入出力を行う。
【0043】
通信I/F部21は、電子式フォトフレーム100を通信ネットワークと接続するための物理的なインタフェースである。通信I/F部21は例えば、IEEE802.3規格に準拠した有線LANに接続するためのLANケーブルコネクタや、IEEE802.11規格に準拠した無線LANに接続するための無線アンテナ等を含むように構成されている。なお、電話通信網に接続するためのアナログ接続端子やISDN通信網に接続するためのISDN接続端子を備える形態であってもよい。
【0044】
ディスプレイ2は、図示しない表示部、操作部、制御部、及び接続部を備える表示装置である。ディスプレイ2は例えば、接続部に含まれるHDMI端子に接続されたHDMIケーブルを介して、映像/音声を含むデジタル信号を受け付ける。そしてデジタル信号の複合化を行い、映像/音声の出力を行う。
〈1−2.機能部の構成について〉
【0045】
ここで、本発明の第一の実施形態に係るHDDレコーダ1が演算資源提供処理を実施するための各機能部の関係を、図1のブロック図を用いながら説明する。なお、図1における破線矢印線は、制御信号の流れを示している。
【0046】
図1に示すように本発明の演算資源提供処理は、制御部11が備える録画再生部11a(=情報処理部)、通信制御部11b、設定部11c、及び演算部11dにより実施される。
【0047】
録画再生部11aはHDD15に対する録画データの記録や、HDD15に記録されている録画データの再生処理の統括制御を行う。具体的には例えば、後述する設定部11cが受け付けた設定内容に基づき、予約録画処理や、予約再生処理等を行う。予約録画処理においては、設定部11cが受け付けた録画予約時刻が到来した場合に、ユーザ操作を必要とすることなく指定された放送番組の録画を行う。
【0048】
通信制御部11bは、通信I/F部21により接続された外部装置、例えば不図示の研究用演算サーバ等と相互通信を行うための通信制御を行う。これにより、HDDレコーダ1の余剰資源(本実施例では制御部11の一部)が所定の演算を行うための演算用データを受信したり、余剰資源が演算した演算結果を送信したりする。また通信制御部11bは、通信I/F部21が無線アンテナを備える場合、無線通信網を介した無線通信の制御を行う役割も持つ。
【0049】
設定部11cは、録画再生部11aが録画/再生処理を行うための各種設定をユーザより受け付ける。また設定部11cは、後述する演算部11dが余剰資源を用いて演算を行うための各種設定をユーザより受け付ける。設定内容としては例えば、余剰資源を提供して演算を実施する時間帯(以下、「資源提供時間帯」という)、余剰資源として使用することを許可する資源の割り当て、演算により発生する一時情報の記録先等が含まれる。
【0050】
資源提供時間帯の受け付けは、例えば図3に示すEPG画面90を用いて行う。なおEPG画面90の詳細については後述する。
【0051】
演算部11dは、所定の条件を満たす時刻において、広域通信網3を介して研究用演算サーバより演算用データを受信する。そして所定の余剰資源を用いて演算を行い、演算結果を演算サーバに送信する。なお余剰資源の一例としては、例えば制御部11が備えるマイクロプロセッサの一部や、フラッシュメモリ14またはHDD15の記録領域の一部を使用する。
〈1−3.EPG画面について〉
【0052】
図3は、設定部11cが表示するEPG画面90の一例である。設定部11cは、所定のユーザ操作を操作部13により検知すると、EPG画面90を表示するための映像信号をOSD処理部19により生成し、ディスプレイ2へ出力する。そして操作部13により、資源提供時間帯が指定されるのを待ち受ける。
【0053】
EPG画面90には少なくとも、EPG91、カーソル92、録画予約マーク93、及びメッセージウィンド94が含まれている。これによりユーザは、放送番組の録画予約と同様の操作性で、資源提供時間の予約設定を行うことができる。
【0054】
図3に示す例では、4Ch〜10Chの四チャンネルと、6時〜10時までの五時間分の番組情報が表示されている。各チャンネル欄の右側には、放送予定番組の番組名が表示されている。初期状態では、全ての番組欄の背景色が通常色(=白色)で表示されている。この状態において、ユーザが操作キー及び決定キー等を押下することにより、カーソル92の移動操作、及び録画予約する番組の決定操作が行われる。
【0055】
カーソル92が所定の番組に重なっている状態で決定キーが押下されると、その番組欄に録画予約マーク93として、通常とは異なる背景色に変化し、強調表示が行われる。図3の例では、8Chで9時から放送される「洋画」に対する視聴予約がなされている。
【0056】
また、カーソル92がEPG情報の時間欄にあわさっている状態で蹴ってキーが押下されると、指定された時間帯を資源提供時間帯として設定するか否かを問い合わせるためのメッセージウィンド94が表示される。この状態においてメッセージウィンド94の「はい」が選択されると、該当する時間帯が資源提供時間帯として設定される。
【0057】
なお、録画予約マーク93が設定されている時間帯が指定された場合は、エラーメッセージを表示させるか、或いは録画予約時間帯と資源提供時間帯とが重複していることを通知する警告メッセージを表示する。
〈1−4.演算資源提供処理について〉
【0058】
ここで、本発明の第一の実施形態に係るHDDレコーダ1が実施する演算資源提供処理を、図4のフロー図を用いながら説明する。図4に示す処理は、HDDレコーダ1が通電されている状態において、任意のタイミングで開始可能である。
【0059】
本処理の開始後、演算部11dはステップS110において、予め設定部11cにより設定を受け付けている資源提供時間帯が到来したか否かを判定する。資源提供時間帯が到来していない場合、再びステップS110へ移行し、継続して監視を行う。
【0060】
資源提供時間帯が到来した場合、演算部11dはステップS120において、演算未実施または演算途中の演算用データがHDD15に記録されているか否かを判定する。これは例えば、前回演算実施時において演算途中で資源提供時間帯が終了した場合等に、演算途中の演算用データが残存することとなる。
【0061】
演算用データがHDD15に記録されている場合、後述するステップS160へ移行する。演算用データがHDD15に記録されていない場合、演算部11dはステップS130において、所定の演算サーバに対して通信を行うよう、通信制御部11bに指示する。なお通信制御部11bが通信を行うための各種設定情報、例えば演算サーバのIPアドレス等は、予めHDDレコーダ1の生産時においてフラッシュメモリ14等に記録されているものとする。
【0062】
次に演算部11dはステップS140において、演算サーバとの通信に成功し、且つ演算サーバ上に演算データが存在することが確認されたか否かを判定する。演算サーバとの通信に失敗した場合、または演算サーバに演算データが存在しない場合、演算部11dはステップS151において、エラーメッセージを表示するための映像信号をOSD処理部19により生成し、ディスプレイ2へ出力する。
【0063】
演算サーバ上に演算データが存在することが確認された場合、演算部11dはステップS150において、演算データの受信を行う。なお、受信する演算データ量は、余剰資源の処理能力に応じて決定することが望ましい。
【0064】
次に演算部11dはステップS150において、余剰資源を用いた演算データの演算を行うよう、制御部11が含む各プロセッサを制御する。次に演算部11dはステップS170において、演算データによる演算が完了したか否かを判定する。
【0065】
完了していない場合、後述するステップS190へ移行する。完了した場合、演算部11dはステップS180において、演算結果を示す演算結果データを演算サーバに送信するよう、通信制御部11bに指示する。
【0066】
次に演算部11dはステップS190において、資源提供時間帯が終了したか否かを判定する。終了していない場合、ステップS120へ移行し、継続して演算処理を行う。終了した場合、ステップS110へ移行する。
【0067】
以上に説明した本実施形態によれば、EPG画面90を用いて資源提供時間帯の指定を受け付け、資源提供時間が到来した時点で、余剰資源による演算を行う。このため、ユーザは録画予約の拡張機能を使用する感覚で、余剰資源の提供を行うことができる。
【0068】
また本実施形態によれば、余剰資源を提供するための各種設定、例えばアプリケーションのインストールや、資源サーバにアクセスするための通信設定等をユーザが手動で行う必要がない。このため、PC等の汎用機において余剰資源を提供する場合と比較して、利便性及びセキュリティ性の向上を図ることができる。
[実施の形態2]
【0069】
次に、本発明の第二の実施形態について説明する。
〈2−1.内部構成について〉
【0070】
本実施形態のHDDレコーダ1は、図5に示すように、第一の実施形態の構成(図2)に加え、第二制御部22、第二メモリ23、及び切換部24を備えている。
【0071】
第二制御部22は、演算資源提供処理を行うためのマイクロプロセッサを含む制御部である。第二制御部22は、制御部11が実施する通常時は録画処理や再生処理等の補助処理を行う。そして資源提供時間帯が到来した場合に、ファームウェア(=制御プログラム)を、演算サーバから受信した演算データの演算処理を行うためのファームウェア(以下、「演算用ファームウェア」という)に変更する。資源提供時間帯が終了すると、通常のファームウェアに再び変更する。
【0072】
第二メモリ23は、第二制御部22が演算用ファームウェアにより演算を行う際に使用されるバッファメモリである。第二メモリ23は、制御部11が通信を行う通信バスから切り離されており、第二制御部22からのみアクセス可能となっている。
【0073】
切換部24は、第二制御部22を通信バスに対して電気的に接続/切断するための部材である。切換部24は例えば、図示しないスイッチング回路等を含み、このスイッチング回路により通信バスの切り換えを行う。
【0074】
切換部24は通常時は、制御部11を各装置部と接続する通信バス(以下、「メイン通信バス」という)に第二制御部22を接続させている。そして演算資源提供処理が開始された段階で、第二制御部22をメイン通信バスから切断する。これにより、例えばウィルスプログラム等が演算データとして偽装されている場合であっても、メイン通信バスを介して不正な制御が行われることを回避する。
〈2−2.機能部の構成について〉
【0075】
第一の実施形態と同じ構成であるが、演算部11dの機能が一部異なる。本実施形態の演算部11dは、資源提供時間帯において演算データを用いた演算を行う際に、第二制御部22のファームウェア書き換えを行う。さらに、第二制御部22をメイン通信バスから切断するよう、切換部24を制御する。これにより、第二制御部22が各装置部から隔離された状態で、演算を行う状態となる。
【0076】
また本実施形態の演算部11dは、第二制御部22による演算が完了した段階、または資源提供時間帯が終了した段階で、第二制御部22のファームウェアを変更前のファームウェアに書き換えるとともに、制御部11及び第二制御部22のファームウェアの内容チェックを行う。これにより、演算データにウィルス等が含まれており、ファームウェアが不正に書き換えられた場合でも、これを発見することができる。
〈2−3.演算資源提供処理について〉
【0077】
ここで、本発明の第二の実施形態に係るHDDレコーダ1が実施する演算資源提供処理を、図6のフロー図を用いながら説明する。なお、第一の実施形態の図4と同内容の処理については、同じステップ番号を付加することにより説明を省略するものとする。
【0078】
ステップS110〜ステップS150については、実施の形態1と同様である。ステップS150において演算データの受信がなされた後、演算部11dはステップS152において、第二制御部22のファームウェアを、演算専用のファームウェアに書き換える。なお演算専用のファームウェアは、予め作成されてフラッシュメモリ14等に記録されている。或いは、通信I/F部21を介して、演算サーバ等より取得する形態でもよい。
【0079】
次に演算部11dはステップS153において、メイン通信バスの接続形態の切り換えを行うよう、切換部24を制御する。これにより、第二制御部22がメイン通信バスから切り離された状態となる。切り換えが完了すると、ステップS160及びステップS170を実施する。
【0080】
ステップS170において演算が完了したと判定された場合、演算部11dはステップS171において、メイン通信バスの接続形態の切り換えを行うよう、切換部24を制御する。これにより、第二制御部22がメイン通信バスに接続された状態となる。
【0081】
次に演算部11dはステップS172において、第二制御部22のファームウェアを通常時のファームウェア、つまり演算用のファームウェアに書き換えられる前のファームウェアに書き換える。さらに書き換えたファームウェアの内容チェック、例えばバージョンチェック等を行う。ファームウェアのバージョンが演算実施前と一致しない場合、エラー処理を行う。なお通常時のファームウェアは、予め作成されてフラッシュメモリ14等に記録されている。
【0082】
ステップS172が完了すると、ステップS180及びステップS190を実施する。ステップS190において演算途中であると判定された場合、演算部11dはステップS210及びステップS220において、通信バスの切り換え、ファームウェアの書き換え、及びファームウェアのチェックを行う。なおステップS210及びステップS220の処理内容はステップS171及びステップS172と同様であるため、説明を省略する。ステップS220が完了すると、ステップS110へ移行する。
【0083】
以上に説明した本実施形態によれば、余剰資源である第二制御部22が演算を行う場合に、メイン通信バスを通常の映像処理を行う場合とは異なる接続形態に切り換えてから、演算を行う。このため、演算時において第二制御部がアクセス可能な資源を限定し、セキュリティ性の向上を図ることができる。
[その他の実施の形態]
【0084】
以上、好ましい実施の形態及び実施例を挙げて本発明を説明したが、本発明は必ずしも上記実施の形態に限定されるものではなく、その技術的思想の範囲内において様々に変形して実施することができる。
【0085】
従って本発明は、以下の形態にも適用可能である。
【0086】
(A)上記実施形態では、本発明の映像装置の一例としてHDDレコーダ1を例に挙げているが、通信網に接続して通信可能な映像装置であれば、これ以外の装置において本発明を実施する形態でもよい。例えば、DVDプレーヤ、VCR(Video Cassette Recorder)、テレビジョン装置、STB(Set Top Box)等を用いる形態であってもよい。
【0087】
(B)上記実施形態では、本発明の演算資源提供処理に関わる各機能部が、マイクロプロセッサ等の演算処理装置上でプログラムを実行することにより実現されているが、各機能部が複数の回路により実現される形態でもよい。
【0088】
(C)上記実施形態では、余剰資源を提供する時間帯を、EPG画面90によるユーザからの時間帯指定に基づいて決定しているが、これ以外の方法により提供時間帯を決定する形態でもよい。例えば、録画処理や再生処理の実施が検知されておらず、且つ録画予約がなされている時間帯ではない時間帯を、提供時間帯とする形態でもよい。或いは、赤外線等を用いて人体を検知する人体検知センサを備えることにより、人体が検知されていない時間帯を提供時間帯とする形態でもよい。
【0089】
(D)上記実施形態では、余剰資源により実施する演算で生成される一時データを、フラッシュメモリ14またはHDD15に記録しているが、これ以外の記録媒体に記録する形態でもよい。例えば、光ディスクドライブ16に装着されたDVD−RW等の、再記録可能な光ディスクに記録する形態でもよい。
【0090】
(E)上記第二の実施形態では、演算サーバに接続する場合において切換部24による切り換えを行っているが、演算サーバとの通信終了後においてHDDレコーダ1が保持する各種情報、例えばファームウェアや個人情報等のチェックを行い、通信前と差違が発生しているか否かを確認する形態でもよい。これにより、セキュリティ性を向上させることができる。
【符号の説明】
【0091】
1 HDDレコーダ(映像装置)
11 制御部
11a 録画再生部(情報処理部)
11b 通信制御部
11c 設定部
11d 演算部
12 メモリ
13 操作部
14 フラッシュメモリ
15 HDD
16 光ディスクドライブ
17 放送受信部
18 信号処理部
19 OSD処理部(映像信号生成部)
20 外部接続端子
21 通信I/F部(通信部)
22 第二制御部
23 切換部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
映像または音声を含む再生情報の記録または再生を行う情報処理部と、通信網に接続して通信を行う通信部と、制御プログラムの実行を行う制御部とを備え、予め定められた条件を満たす場合に前記制御プログラムの変更を許可する映像装置において、
通信網に接続されている予め定められた情報処理装置と通信を行うよう前記通信部を制御する通信制御部と、
前記情報処理装置より演算処理を行うために必要な演算用データを受信し、前記演算用データを用いた演算を行い、前記演算の結果を示す演算結果データを前記情報処理装置へ送信するよう前記通信制御部を制御する演算部とを備えること
を特徴とする映像装置。
【請求項2】
前記映像装置は、前記映像装置に対する処理予約を受け付ける受付画面を表示するための映像信号を生成する映像信号生成部を備え、
前記設定部は、前記受付画面を用いて、前記演算部が演算を行う時間帯である資源提供時間帯の指定を受け付けること
を特徴とする請求項1に記載の映像装置。
【請求項3】
前記映像装置は、前記制御部により送信される制御信号の信号路に設けられて経路の切り換えを行う切換部と、前記切換部を介して前記信号路に接続される第二制御部とを備え、
前記演算部は、前記資源提供時間帯が到来した場合に、前記第二制御部が実行する制御プログラムを、前記第二制御部により前記演算を行うための制御プログラムに変更し、前記第二制御部を予め定められた装置にのみ接続するよう経路の切り換えを行うよう前記切換部を制御すること、
を特徴とする請求項2に記載の映像装置。
【請求項4】
前記演算部は、前記資源提供時間帯が終了した場合に、前記切換部により確立されている経路を前記切り換えが行われる前の経路に切り換え、前記第二制御部が実行する制御プログラムを前記変更が行われる前の制御プログラムに復帰させ、前記変更が行われる前の制御プログラムと前記復帰が行われた後の制御プログラムとが一致するか否かを判定すること
を特徴とする請求項3に記載の映像装置。
【請求項5】
通信網と、通信網に接続された情報処理装置と、請求項1〜請求項4のいずれかに記載の映像装置とを用いた分散処理システム。
【請求項6】
前記情報処理装置は、前記映像装置が演算を行ったことにより発生した課金を示す課金情報を生成し、前記課金情報を前記通信網を介して前記映像装置へ送信すること
を特徴とする請求項5に記載の分散処理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−258041(P2011−258041A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−132689(P2010−132689)
【出願日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【出願人】(000201113)船井電機株式会社 (7,855)
【Fターム(参考)】