説明

昼食製造設備における電力供給システム

【課題】昼食製造設備に対応した電力ピークカット及び消費電力の削減を可能とする電力供給システムの提供。
【解決手段】配電線を介して供給される電力を用いて温水を生成するヒートポンプ給湯装置11の稼働を制御する給湯制御装置10と、昼食製造設備に設けられた太陽光発電装置3から配電線31を介して電力利用機器に供給される電力を制御する第1の電力制御装置12と、電気配送車2に搭載された蓄電池の放電によって電力利用機器に供給される電力を制御する第2の電力制御装置13とを備え、給湯制御装置10は、ヒートポンプ給湯装置11が夜間に電力を受電して温水を生成するように制御し、第1の電力制御装置12は、太陽光発電装置3が日中に発生させた電力を電力利用機器に供給するようにし、第2の電力制御装置13は、食器若しくは昼食の配送または回収を行った後に電気配送車2の蓄電池から電力利用機器に電力を供給するように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、学校、病院等に提供する給食や仕出し弁当などの昼食を製造する昼食製造設備における電力供給システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、給食センターや仕出し弁当製造所等のように、多数の昼食を製造する設備においてはオール電化が推進されており、電気温水器、食器・食缶洗浄機、食器・食缶消毒保管庫、IH調理器等の複数の電力利用機器が用いられている。例えば、従来の給食センターでは、図9に示すように、系統電源に接続された配電線から各電力利用機器に電力が供給され、各電力利用機器が個別に稼働するようになっていた。そして、給食センターで製造された昼食は、ディーゼル配送車によって配送エリア内の学校や病院等に配送され、昼食後に回収された食器等は再度ディーゼル配送車によって給食センターに配送されて、給食センターで食器の洗浄、消毒を行っていた。
【0003】
このような複数の電力利用機器を有する設備においては、電力料金の削減を目的として、太陽光発電装置や風力発電装置等の分散型電源を導入したシステムが普及しつつある。
関連する技術として、特許文献1(特開2011−61931号公報)には、作業実施時等に電力を適切に融通できるような総合監視制御システムが開示されている。このシステムでは、計測値モニタリング部によって、分散型電源の発電出力量と、需要設備の負荷量とを取得し、顧客情報管理部によって、分散型電源の定格発電量および発電出力調整可能量を含む情報を管理する。そして、計測値モニタリング部で取得した情報および顧客情報管理部で管理される情報を用いて、各分散型電源の総発電出力量と各需要設備の総負荷量とを一致させるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−61931号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記したように、給食センター等の昼食製造設備においては、複数の電力利用機器が用いられているが、これらの電力利用機器の使用時間帯が、調理や洗浄、消毒等の作業時間に集中するため、全体の電力消費に比べて最大需要電力が大きくなり、電力料金が高くなってしまうという問題があった。そこで、従来、電力利用機器のうち電気温水器は電気料金の低い深夜に稼働させ、消毒保管庫は電力消費の少ない夕方から夜間に稼働させるなどの対策を講じていたが、それ以外の機器は調理者や昼食消費者の都合に合わせた使われ方をしていたため、効率的な電力利用が行われていなかった。
特に学校給食センターでは、正午の給食提供のため、調理を行う午前中と、食器等の洗浄を行う午後の2回、電力のピークが現れ、電力デマンド値を大幅に上昇させている。また、洗浄機に供給される水は、貯湯タンクから供給されるお湯を一旦、水と配合し供給するが、一部の水はその後洗浄機内のヒータにて再度昇温されるなど無駄が多く、エネルギー管理が適切ではなかった。
【0006】
また、特許文献1に記載されるシステムは、分散型電源の導入に対応したシステムであるが、各分散型電源の発電出力量や各需要設備の負荷量を全てモニタリングする必要があり、装置や制御が複雑化するという問題があった。
本発明はかかる従来技術の課題に鑑み、昼食製造設備に対応した電力ピークカット及び消費電力量の削減を可能とする昼食製造設備における電力供給システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明に係る昼食製造設備における電力供給システムは、複数の電力利用機器を有する昼食製造設備における電力供給システムであって、前記複数の電力利用機器のうち、配電線を介して供給される電力を用いて温水を生成する給湯装置が、ヒートポンプ回路を用いて加熱した温水を温水利用機器に供給するヒートポンプ給湯装置であり、前記ヒートポンプ給湯装置の稼働を制御する給湯制御装置と、前記昼食製造設備に設けられた太陽光発電装置から前記配電線を介して前記電力利用機器に供給される電力を制御する第1の電力制御装置と、食器若しくは昼食の配送または回収を行う電気配送車に搭載された蓄電池の放電によって前記配電線を介して前記電力利用機器に供給される電力を制御する第2の電力制御装置とを備え、前記給湯制御装置は、前記ヒートポンプ給湯装置が夜間に電力を受電して温水を生成するように制御し、前記第1の電力制御装置は、前記太陽光発電装置が日中に発生させた電力を前記電力利用機器に供給するようにし、前記第2の電力制御装置は、前記食器若しくは前記昼食の配送または回収を行った後に前記電気配送車の前記蓄電池から前記電力利用機器に電力を供給するようにしたことを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、昼食製造設備における給湯設備にヒートポンプ給湯装置を用いているため、ヒータを用いる電気温水器を利用する場合に比べて大幅に消費電力を削減することができる。また、このヒートポンプ給湯装置は、給湯制御装置によって夜間に稼働するように制御されている。このように、消費電力の少ない夜間にヒートポンプ給湯装置を稼働させることによって、消費電力の大きい日中のピークカットが図れる。
さらに、昼食の調理や調理機器、食器の洗浄等により消費電力の大きい日中には、第1の電力制御装置によって、太陽光発電装置が発生させた電力を電力利用機器に供給するとともに、第2の電力制御装置によって、電気配送車の蓄電池から電力利用機器に電力を供給するようにしているため、系統電源から消費する電力量を大幅に削減することができる。ここで、一般に、昼食や食器を配送する電気配送車は、配送エリアが決まっていることが多く、蓄電池の充電量を超えるような長距離走行は殆どないと考えられるため、余った充電電力を用いることは有効である。
なお、上記配電線は系統電源に接続されており、太陽光発電装置、電気配送車の蓄電池等の分散型電源は、例えば系統連係方式によって系統電源に連係される。
【0009】
上記昼食製造設備における電力供給システムは、前記電気配送車への充電を制御する充電制御装置をさらに備え、前記充電制御装置は、前記昼食の調理開始前に、前記配電線を介して前記電気配送車の充電を行うようにしてもよい。
このように、電気配送車への充電を制御する充電制御装置は、昼食の調理開始前に電気配送車の充電を行うようにしているため、電力消費が大きくなる昼食の調理時間帯の電力消費のピークカットが可能となる。
【0010】
上記昼食製造設備における電力供給システムにおいて、前記昼食の調理と調理機器の洗浄とを行う午前中には、前記第1の電力制御装置によって前記太陽光発電装置から前記電力利用機器に電力を供給するようにし、前記調理機器および回収した前記食器の洗浄および消毒を行う午後には、前記第1の電力制御装置によって前記太陽光発電装置から前記電力利用機器に電力を供給するとともに、前記第2の制御装置によって前記電気配送車の前記蓄電池から前記電力利用機器に電力を供給するようにしたことを特徴とするようにしてもよい。
【0011】
一般に、昼食製造設備においては、午前中に昼食の調理と調理機器の洗浄とを行い、午後に調理機器の洗浄および回収した食器の洗浄および消毒を行う。したがって、午前中と午後の両方に消費電力のピークがある。一方、太陽光発電装置は、午後、特に夕方には発電量が低減するという特性がある。そこで、本構成では、午前中は太陽光発電装置から電力利用機器に電力を供給するようにし、太陽光発電装置の発電量が落ちてくる午後、特に夕方には、太陽光発電装置と電気配送車の蓄電池との両方によって電力を供給するようしている。これにより消費電力のピークに対応した分散型電源による電力供給が可能となる。よって、設備が系統電源から消費する最大需要電力を低くすることが可能であり、延いては契約電力を下げることができ、電力コスト削減が図れる。
【0012】
上記昼食製造設備における電力供給システムは、前記給湯制御装置、前記第1の電力制御装置および前記第2の電力制御装置における電力供給量と、前記複数の電力利用機器における電力需要量とを管理する電力管理装置をさらに備え、前記電力管理装置には、天気、気温および季節の少なくともいずれかのデータから推定される前記電力供給量の推定トレンドと、気温、季節および献立の少なくともいずれかのデータから推定される前記電力需要量の推定トレンドとが入力されており、前記電力管理装置は、前記電力供給量の推定トレンドおよび前記電力需要量の推定トレンドに基づいて、前記複数の電力利用機器の各稼働時間帯をそれぞれ決定するようにしてもよい。
【0013】
太陽光発電装置は、天気、気温または季節によって、発電量が変化することが知られている。したがって、太陽光発電装置、電気配送車の蓄電池等を含む分散型電源全体から設備全体へ供給できる電力供給量は変動する。
一方、電力利用機器のうちヒートポンプ給湯装置または空調機器は、例えば外気温度が低いとより多くの消費電力が必要となるなど、気温または季節によって消費電力が変化する。また、電力利用機器のうち調理機器は、その日の献立によって使用する機器が異なるため、献立によって消費電力が変化する。このように、設備内の複数の電力利用機器の電力需要量(電力負荷量)は、気温、季節および献立の少なくともいずれかによって変動する。
そこで、給湯制御装置、第1の電力制御装置および第2の電力制御装置における電力供給量と、前記複数の電力利用機器における電力需要量とを統括的に管理する電力管理装置を備えるようにし、この電力管理装置によって、分散型電源による電力供給量の推定トレンドおよび電力利用機器による電力需要量の推定トレンドに基づいて、複数の電力利用機器の各稼働時間帯をそれぞれ決定することにより、電力利用機器による効率的な電力消費が可能となる。
【0014】
上記昼食製造設備における電力供給システムは、前記電気配送車とは別の電気自動車に搭載された蓄電池の放電によって、前記配電線を介して前記電力利用機器に供給される電力を制御する第3の電力制御装置をさらに備え、前記電力管理装置に入力される前記電力供給量の推定トレンドのうち、目標とする電力供給量が不足する時間帯に、前記第3の電力制御装置によって前記電気自動車の前記蓄電池から前記電力利用機器へ電力を供給するようにしてもよい。
【0015】
このように、設備の職員が使用する電気自動車等のように、電気配送車とは別の電気自動車に搭載された蓄電池を用いて、目標とする電力供給量が不足する時間帯にこの蓄電池から電力利用機器へ電力を供給することによって、系統電源からの電力消費を削減することができる。
【発明の効果】
【0016】
以上記載のように本発明によれば、昼食製造設備における給湯設備にヒートポンプ給湯装置を用いているため、ヒータを用いる電気温水器を利用する場合に比べて大幅に消費電力を削減することができる。また、消費電力の少ない夜間にヒートポンプ給湯装置を稼働させることによって、消費電力の大きい日中のピークカットが図れる。
さらに、昼食の調理や調理機器、食器の洗浄等により消費電力の大きい日中には、第1の電力制御装置によって、太陽光発電装置が発生させた電力を電力利用機器に供給するとともに、第2の電力制御装置によって、電気配送車の蓄電池から電力利用機器に電力を供給するようにしているため、系統電源から消費する電力量を大幅に削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】昼食製造設備と昼食消費施設の概略を示す図である。
【図2】本実施形態に係る電力供給システムの概略を説明する図である。
【図3】本実施形態に係る電力供給システムを示す全体構成図である。
【図4】ヒートポンプ給湯装置とヒータ給湯装置の消費電力推移を比較したグラフである。
【図5】給食センターにおける電気利用機器のタイムスケジュールを示す図である。
【図6】太陽光発電および電気配送車のタイムスケジュールを示す図である。
【図7】本実施形態に係る電力供給システムを導入した場合の消費電力推移を示すグラフである。
【図8】季節別および天気別の電力デマンドを数値化した表である。
【図9】従来の給食センターにおける電力供給システムを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図面に従って本発明の実施形態について説明する。ただし、この実施形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、特定的な記載がない限り本発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
【0019】
まず最初に、図1を参照して、昼食製造設備1と昼食消費施設5,6,7の概略を説明する。
昼食製造設備1は、昼食の製造、および食器や調理機器の洗浄、消毒を行う設備である。昼食製造設備としては、例えば、給食センター1や仕出し弁当製造所等が挙げられる。通常、昼食製造設備は、複数の昼食消費施設に対して昼食を提供する。
一方、昼食消費施設5,6,7は、昼食製造設備から配送される昼食を消費する設備である。昼食消費施設としては、例えば、学校5・幼稚園6や病院7等が挙げられる。
図1には、一例として給食センター1の場合を示しているが、この場合、給食センター1では予め決められた献立に沿って午前中に昼食を調理し、昼食時間に間に合うように配送車2によって学校・幼稚園や病院に配送する。そして、昼食時間が終わったら、回収した食器等を再び配送車2によって給食センター1に配送する。給食センター1では、回収した食器や調理器具等を洗浄、消毒する。
【0020】
本実施形態では、昼食の配送、食器の回収等に電気配送車2を利用している。電気配送車2は、蓄電池と電気モータとを搭載し、蓄電池から放電される電力を用いて電気モータを駆動し、走行する車である。また、電気配送車2は、後部に貨物室を有し、貨物室に昼食や食器等が積載されるようになっている。
【0021】
図2は本実施形態に係る電力供給システムの概略を説明する図である。
同図に示すように、本実施形態に係る電力供給システム100は、昼食製造設備内に複数の電力利用機器(洗浄機器21、調理機器22、空調機器23、冷蔵・冷凍装置24等)および温水利用機器(洗浄機器21、調理機器22等)が設けられている。電力利用機器には、電力系統30に接続される配電線31から電力が供給されるとともに、太陽光発電装置3や電気配送車2の蓄電池等の分散電源からの電力が配電線31を介して供給されるようになっている。温水利用機器には、ヒートポンプ給湯装置11で製造された温水が供給されるようになっている。
【0022】
次に、図3を参照して、本実施形態に係る電力供給システムを具体的に説明する。
本実施形態に係る電力供給システム100は、主に、ヒートポンプ給湯装置11の稼働を制御する給湯制御装置10と、太陽光発電装置3の電力供給を制御する第1の電力制御装置12と、電力配送車2の蓄電池からの電力供給を制御する第2の電力制御装置13と、電力配送車2の蓄電池への充電を制御する充電制御装置14とを備える。
【0023】
給湯制御装置10は、系統電源30に接続される配電線31を介してヒートポンプ給湯装置11に電力を供給し、該ヒートポンプ給湯装置11の稼働を制御する。
ここで、ヒートポンプ給湯装置11は、ヒートポンプ回路を用いて温水を生成する装置であり、圧縮機、放熱器、減圧機構、蒸発器を順次接続してヒートポンプ回路が構成され、放熱器で加熱された温水を貯留する貯留槽を有している。ヒートポンプ給湯装置11は、複数設けられていてもよい。
また、給湯制御装置10は、ヒートポンプ給湯装置10が夜間に電力を受電して温水を生成するように制御する。そして、ヒートポンプ給湯装置10は、生成した温水を貯留槽に貯湯しておき、日中に、設備内の洗浄機器21や調理機器22等の温水利用機器に供給するようになっている。
【0024】
このように、昼食製造設備における給湯設備にヒートポンプ給湯装置11を用いることにより、ヒータを用いる電気温水器を利用する場合に比べて大幅に消費電力を削減することができる。また、このヒートポンプ給湯装置11は、給湯制御装置10によって夜間に稼働するように制御されている。このように、消費電力の少ない夜間にヒートポンプ給湯装置11を稼働させることによって、消費電力の大きい日中のピークカットが図れる。
【0025】
ここで、図4に、本実施形態で用いられるヒートポンプ給湯装置と、従来用いられていたヒータ給湯装置との消費電力を比較したグラフを示す。給湯装置の温水を使用する温水利用機器は、電気温水器と洗浄機である。なお、温水を生成する時間帯は、電気温水器が深夜、洗浄機は使用の都度としている。
同図に示すように、ヒートポンプ給湯装置を用いることにより、ヒータ給湯装置を用いる場合に比べて、温水生成時の深夜に大幅に電力ピークカットおよび消費電力の削減が可能であるとともに、昼食の調理や食器、調理機器の洗浄の時間帯においても電力ピークカットおよび消費電力の削減が可能となる。
【0026】
第1の電力制御装置12は、設備内に設けられた太陽光発電装置3から配電線31を介して電力利用機器に供給される電力を制御する。ここで、太陽光発電装置3は、太陽光のエネルギーを直接的に電力に変換する装置である。太陽光発電装置3は、複数設けられていてもよい。また、電力利用機器は、例えば、洗浄機器21、調理機器22、空調機器23、冷凍・冷蔵装置24等が挙げられる。
また、第1の電力制御装置12は、太陽光発電装置3が日中に発生させた電力を電力利用機器に供給するようになっている。
【0027】
第2の電力制御装置13は、食器若しくは昼食の配送または回収を行う電気配送車2に搭載された蓄電池の放電によって、配電線31を介して電力利用機器に供給される電力を制御する。
また、第2の電力制御装置13は、食器若しくは昼食の配送または回収を行った後に、電気配送車2の蓄電池から電力利用機器に電力を供給するようになっている。電気配送車2は複数用いられてもよい。
なお、上記配電線31は系統電源30に接続されており、太陽光発電装置3、電気配送車2の蓄電池等の分散型電源は、例えば系統連係方式によって系統電源に連係される。
【0028】
このように、昼食の調理や調理機器、食器の洗浄等により消費電力の大きい日中には、第1の電力制御装置12によって、太陽光発電装置3が発生させた電力を電力利用機器に供給するとともに、第2の電力制御装置13によって、電気配送車2の蓄電池から電力利用機器に電力を供給するようにしているため、系統電源30から消費する電力量を大幅に削減することができる。ここで、一般に、昼食や食器を配送する電気配送車は、配送エリアが決まっていることが多く、蓄電池の充電量を超えるような長距離走行は殆どないと考えられるため、余った充電電力を用いることは有効である。
【0029】
また、昼食の調理と調理機器の洗浄とを行う午前中には、第1の電力制御装置12によって太陽光発電装置3から電力利用機器に電力を供給するようにし、調理機器および回収した食器の洗浄および消毒を行う午後には、第1の電力制御装置12によって太陽光発電装置3から電力利用機器に電力を供給するとともに、第2の制御装置13によって電気配送車2の蓄電池から電力利用機器に電力を供給するようにしてもよい。
【0030】
一般に、昼食製造設備においては、午前中に昼食の調理と調理機器の洗浄とを行い、午後に調理機器の洗浄および回収した食器の洗浄および消毒を行う。したがって、午前中と午後の両方に消費電力のピークがある。一方、太陽光発電装置は、午後、特に夕方には発電量が低減するという特性がある。そこで、上記したように、午前中は太陽光発電装置3から電力利用機器に電力を供給するようにし、太陽光発電装置3の発電量が落ちてくる午後、特に夕方には、太陽光発電装置3と電気配送車2の蓄電池との両方によって電力を供給することにより、消費電力のピークに対応した分散型電源による電力供給が可能となる。よって、設備が系統電源30から消費する最大需要電力を低くすることが可能であり、延いては契約電力を下げることができ、電力コスト削減が図れる。
【0031】
充電制御装置14は、配電線31に接続された電気配送車2の蓄電池への充電を制御する。また、この充電制御装置14は、昼食の調理開始前に、配電線31を介して電気配送車2の充電を行うことが好ましい。
このように、電気配送車2への充電を制御する充電制御装置14は、昼食の調理開始前に電気配送車2の充電を行うようにしているため、電力消費が大きくなる昼食の調理時間帯の電力消費のピークカットが可能となる。
なお、上記した第1の電力制御装置12、第2の電力制御装置13、充電制御装置14は、図3ではそれぞれ別に設けた場合を示しているが、これらのうち少なくとも2以上の装置を統合して設けてもよい。
【0032】
図5に、一例として給食センターにおける電力利用のタイムスケジュールを示す。同図に示すように、調理機器は昼食の調理が始まる8時過ぎから昼食前の12時前まで稼働している。洗浄機器は、調理しながら洗浄も併行して行うため8時過ぎから稼働し、回収した食器の洗浄が終了する16時頃まで稼働している。消毒・保管機器は、調理機器の消毒等を行うために11時から稼働し、洗浄後の食器の消毒等を行うために23時頃まで稼働している。ヒートポンプ給湯装置は、主に、電力料金の安い深夜23時から9時まで稼働している。さらに、空調は一日中稼働し、電灯その他の機器は、調理者が作業する8時から19時まで稼働している。
このように、各電力利用機器は、それぞれ稼働時間帯が異なるため、これらの電力消費に合わせた電力供給が必要となる。
【0033】
一方、図6に、太陽光発電装置と配送車のタイムスケジュールの一例を示す。太陽光発電で発電可能な時間帯は、季節によって異なるがおおよそ6時半から16時までである。配送車が稼働する時間帯は、給食を配送する10時から12時と、食後の食器や食缶を回収する13時から14時の間である。
図7は、給食センターに本実施形態に係る電力供給システムを導入した場合の消費電力推移を示すグラフである。図5および図6に示すタイムスケジュールを参考にして、この消費電力推移を説明する。
【0034】
給食センターでは、22時から4時までの深夜は、給湯制御装置10によってヒートポンプ給湯装置11を稼働させて温水を生成する。このとき、ヒータ給湯装置に代えてヒートポンプ給湯装置11を使用することにより、消費電力を大幅に低減することができる。ヒートポンプ給湯装置による温水生成が終了した頃(例えば3時)から調理開始前の8時前までは、電力使用が少ないため、この時間帯で充電制御装置14によって電気配送車2の充電を行う。調理が開始される8時以降は、第1の電力制御装置12によって太陽光発電装置3からの電力を各電気利用機器に供給する。これにより、太陽光発電装置3の導入前に比べて消費電力を低減することができる。なお、調理が終了した12時頃から13時頃までは、調理機器22や洗浄機器21等の使用が少ないため、消費電力は大幅に低下する。
【0035】
電気配送車2によって給食や食器を昼食消費施設へ配送した後、電気配送車2は食器や食缶を回収して給食センターに戻る。この回収した食器や食缶は、食器・食缶洗浄機器で洗浄された後、食器・食缶消毒保管庫にて消毒される。洗浄、消毒作業のために、13時頃から18時頃まで再度消費電力のピークが現れるが、このとき、第1の電力制御装置12によって太陽光発電装置3からの電力を各電気利用機器に供給するとともに、第2の電力制御装置13によって、配送を終えた電気配送車2の蓄電池の放電によって電力を各電気利用機器に供給する。このように、午後、特に夕方の太陽光発電装置3の発電量が低下する時間帯に、配送を終えた電気配送車2の蓄電池の放電によって電力を付加することにより、分散電源による電力供給の平滑化が図れるものである。
【0036】
図3に戻り、本実施形態に係る電力供給システム100は、給湯制御装置10、第1の電力制御装置12および第2の電力制御装置13における電力供給量と、複数の電力利用機器における電力需要量とを管理する電力管理装置50を備えていてもよい。
電力管理装置50には、天気、気温および季節の少なくともいずれかのデータから推定される電力供給量の推定トレンドと、気温、季節および献立の少なくともいずれかのデータから推定される電力需要量の推定トレンドとが入力されている。なお、電力管理装置50には、天気、気温、季節および献立のうち必要なデータのみ入力され、該電力管理装置50自体が、これらのデータに基づいて、電力供給量の推定トレンドまたは電力需要量の推定トレンドを算出するようにしてもよい。このとき、電力管理装置50には、定格出力電圧等の各分散型電源の個別情報、および、消費電力等の各電力利用機器の個別情報が入力されていることが好ましい。
そして、電力管理装置50は、電力供給量の推定トレンドおよび電力需要量の推定トレンドに基づいて、複数の電力利用機器の各稼働時間帯をそれぞれ決定するようにしてもよい。このとき、可能な限り、設備内の電力利用機器の電力需要量を、分散型電源の電力供給量で賄えるように、電力利用機器の各稼働時間帯を決定することが好ましい。
ここで、決定した電力利用機器の各稼働時間帯は、機器のタイムスケジュールとして出力してもよく、このタイムスケジュールに沿って調理者は各機器を使用することが好ましい。
【0037】
太陽光発電装置3は、天気、気温または季節によって、発電量が変化することが知られている。したがって、太陽光発電装置3、電気配送車2の蓄電池等を含む分散型電源全体から設備全体へ供給できる電力供給量は変動する。
一方、電力利用機器のうちヒートポンプ給湯装置11または空調機器23は、例えば外気温度が低いとより多くの消費電力が必要となるなど、気温または季節によって消費電力が変化する。また、電力利用機器のうち調理機器22は、その日の献立によって使用する機器が異なるため、献立によって消費電力が変化する。このように、設備内の複数の電力利用機器の電力需要量(電力負荷量)は、気温、季節および献立の少なくともいずれかによって変動する。
そこで、給湯制御装置10、第1の電力制御装置12および第2の電力制御装置13における電力供給量と、複数の電力利用機器における電力需要量とを統括的に管理する電力管理装置50を備えるようにし、この電力管理装置50によって、分散型電源による電力供給量の推定トレンドおよび電力利用機器による電力需要量の推定トレンドに基づいて、複数の電力利用機器の各稼働時間帯をそれぞれ決定することにより、電力利用機器による効率的な電力消費が可能となる。
【0038】
例えば、学校の給食センターでは、消費電力ピークが午後にくる。この原因として以下のことが考えられる。
学校の給食センターでは、食器・食缶用の洗浄機器と消毒保管庫とが別の装置となっており、職員が食器や食缶の洗浄後にこれらを保管庫へ移す必要がある。しかしながら、職員の勤務時間が決まっているので、勤務時間内に食器や食缶を保管庫へ移すため、洗浄機器を電力消費の多い時間にやむなく稼働させている。この洗浄機器や保管庫間の移動をオート化し、消費電力が少ない時間帯に稼働させるようにすれば、午後のピークを回避することができ、消費電力の平滑化が可能となる。
【0039】
また、本実施形態に係る電力供給システム100は、電気配送車2とは別の電気自動車に搭載された蓄電池の放電によって、配電線を介して電力利用機器に供給される電力を制御する第3の電力制御装置を備えていてもよい。これは、電力管理装置50に入力される電力供給量の推定トレンドのうち、目標とする電力供給量が不足する時間帯に、第3の電力制御装置によって電気自動車の蓄電池から電力利用機器へ電力を供給する。
このように、設備の職員が使用する電気自動車等のように、電気配送車2とは別の電気自動車に搭載された蓄電池を用いて、目標とする電力供給量が不足する時間帯にこの蓄電池から電力利用機器へ電力を供給することによって、系統電源30からの電力消費を削減することができる。
【0040】
図8は、季節別および天気別の電力デマンドを数値化した表である。このグラフは、例えば、50kWを1点として数値化したものである。ここでは、太陽光発電装置3として、4.3kWを30台設置し、合計129kWの発電出力を有する場合を仮定している。このとき、晴れの日の発電量を1としたとき、曇りは2/3の発電量とし、雨天は1/6の発電量として計算している。電気配送車は、残量電力量を1時間強で放電すると仮定して、50kWの1点として計算している。電気自動車は、全量16kWhで、1kWh10km走行可能な車と仮定し、片道20km通勤で、残量12kWhとなる。職員が20人として、残量が240kWhとなり、5時間で消費すると48kWhの1点となる。なお、ここでは太陽光発電装置の発電量が少ない冬のみ電気自動車を使用するものとする。
このように、本構成によれば、分散型電源による電力供給量の推定トレンドに基づいて、電気配送車2とは別の電気自動車に搭載された蓄電池を用いて電力利用機器へ電力を供給することによって、太陽光発電装置3の発電量の変化による電力供給の変動を抑制し、電力供給の平滑化を図ることができる。
【符号の説明】
【0041】
1 給食センター
2 電気配送車
3 太陽光発電装置
10 給湯制御装置
11 ヒートポンプ給湯装置
12 第1の電力制御装置
13 第2の電力制御装置
14 充電制御装置
21 洗浄機器
22 調理機器
23 空調機器
24 冷凍・冷蔵装置
30 系統電源
31 配電線
50 電力管理装置
100 電力供給システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電力利用機器を有する昼食製造設備における電力供給システムであって、
前記複数の電力利用機器のうち、配電線を介して供給される電力を用いて温水を生成する給湯装置が、ヒートポンプ回路を用いて加熱した温水を温水利用機器に供給するヒートポンプ給湯装置であり、
前記ヒートポンプ給湯装置の稼働を制御する給湯制御装置と、
前記昼食製造設備に設けられた太陽光発電装置から前記配電線を介して前記電力利用機器に供給される電力を制御する第1の電力制御装置と、
食器若しくは昼食の配送または回収を行う電気配送車に搭載された蓄電池の放電によって前記配電線を介して前記電力利用機器に供給される電力を制御する第2の電力制御装置とを備え、
前記給湯制御装置は、前記ヒートポンプ給湯装置が夜間に電力を受電して温水を生成するように制御し、
前記第1の電力制御装置は、前記太陽光発電装置が日中に発生させた電力を前記電力利用機器に供給するようにし、
前記第2の電力制御装置は、前記食器若しくは前記昼食の配送または回収を行った後に前記電気配送車の前記蓄電池から前記電力利用機器に電力を供給するようにしたことを特徴とする昼食製造設備における電力供給システム。
【請求項2】
前記電気配送車への充電を制御する充電制御装置をさらに備え、
前記充電制御装置は、前記昼食の調理開始前に、前記配電線を介して前記電気配送車の充電を行うようにしたことを特徴とする請求項1に記載の昼食製造設備における電力供給システム。
【請求項3】
前記昼食の調理と調理機器の洗浄とを行う午前中には、前記第1の電力制御装置によって前記太陽光発電装置から前記電力利用機器に電力を供給するようにし、
前記調理機器および回収した前記食器の洗浄および消毒を行う午後には、前記第1の電力制御装置によって前記太陽光発電装置から前記電力利用機器に電力を供給するとともに、前記第2の制御装置によって前記電気配送車の前記蓄電池から前記電力利用機器に電力を供給するようにしたことを特徴とする請求項1に記載の昼食製造設備における電力供給システム。
【請求項4】
前記給湯制御装置、前記第1の電力制御装置および前記第2の電力制御装置における電力供給量と、前記複数の電力利用機器における電力需要量とを管理する電力管理装置をさらに備え、
前記電力管理装置には、天気、気温および季節の少なくともいずれかのデータから推定される前記電力供給量の推定トレンドと、気温、季節および献立の少なくともいずれかのデータから推定される前記電力需要量の推定トレンドとが入力されており、前記電力管理装置は、前記電力供給量の推定トレンドおよび前記電力需要量の推定トレンドに基づいて、前記複数の電力利用機器の各稼働時間帯をそれぞれ決定するようにしたことを特徴とする請求項1に記載の昼食製造設備における電力供給システム。
【請求項5】
前記電気配送車とは別の電気自動車に搭載された蓄電池の放電によって、前記配電線を介して前記電力利用機器に供給される電力を制御する第3の電力制御装置をさらに備え、
前記電力管理装置に入力される前記電力供給量の推定トレンドのうち、目標とする電力供給量が不足する時間帯に、前記第3の電力制御装置によって前記電気自動車の前記蓄電池から前記電力利用機器へ電力を供給するようにしたことを特徴とする請求項1に記載の昼食製造設備における電力供給システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−51746(P2013−51746A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−186793(P2011−186793)
【出願日】平成23年8月30日(2011.8.30)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成23年電気学会全国大会講演論文集(平成23年3月4日発行)
【出願人】(390001421)学校法人早稲田大学 (14)
【出願人】(000148357)株式会社前川製作所 (267)
【Fターム(参考)】