説明

時計用コイル保護剤とこれを用いた時計用コイルの製造方法

【課題】時計用コイル部品の製造において、コイル中に液状のモノマーを残さずに、固体成分を含有しない組成物の分離が発生しない時計用コイル保護剤とこれを用いた時計用コイルの製造方法を提供すること。
【解決手段】(A)1分子中に(メタ)アクリル基とエポキシ基とを含有するモノマーと(B)エポキシモノマーと(C)(メタ)アクリルモノマーと(D)光ラジカル重合開始剤と(E)融点が25℃以下もしくはモノマーに可溶な酸無水物と(F)メチルトリブチルフォスフォニウム ジメチルフォスフェートまたはテトラブチルフォスフォニウムジメチルフォスフォロジチオエートとを含有し、更に(G)有機過酸化物と含有する時計用コイル保護剤を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は時計用コイルの保護剤と時計用コイルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器は急速に小型化が進み、携帯の小型端末が開発された。小型電子機器に含まれる電子式時計分野においてもデザインや、重量、大きさ等を考慮して小型化が進んでいる。
【0003】
電子式時計の基本構造は、電池を含む電子回路と、時刻を表示するための指針を動かすための輪列部と、電力を動力に変換するためのモータ部分とから出来ている。モーター部分には、軟磁性体から成る巻芯に線材を巻いたコイルを部品として使用している。発電を行う電子式時計では機械エネルギーを電気エネルギーに変換するためのコイルを有している。
【0004】
このような従来のコイルの構造を図1に示したコイルの断面図を用いて説明する。コイル100は軟磁性体材料でできている巻芯105に、銅等の導電性のある細い導線材109を巻き重ねた構造をしている。このため、導線材109が物理的な衝撃によって崩れないように、巻き重ねた導線材109の両端部の巻芯105に巻き枠103を嵌着している。巻き枠103は、ポリエステルや、ポリプロピレン等の高分子材料を、目的とする形に打ち抜く方法で作成し、切断面に残されたバリを除去するためにバレル処理を行ったものなどが使用できる。
【0005】
導線材109の2本の端末109aは、他の部品との導通をとるための端子シート107上の配線パターン107aに接続されている。また、コイル100を時計に組み込むときや、修理のためにコイルを時計から外したりするときに、むき出しになった導線材109の断線を予防するため、巻き重ねた導線材109の外周及び端末部分に保護層101を被覆している。保護層101は、コイル100全体の大きさが大きすぎないように考慮して巻き枠の側面103aで接するようにしている。保護層101は保護剤(紫外線硬化型接着剤)をコイル上の必要な部分に塗布した後、紫外線を照射することにより硬化させて形成している。
【0006】
このようなコイルの保護剤としては、従来本出願人は特許文献1に記載の保護剤を使用してきた。
【0007】
また、コイルを製造する方法としては例えば特許文献2に記載されている方法もある。この方法によれば、銅線を固定化する接着剤として、軟化点以上の温度になると体積膨張して微小中空球体を形成する発泡剤を内包した微細カプセルと、光重合する(メタ)アクリレート樹脂と、光開始剤とエポキシ硬化剤とエポキシモノマーからなる組成物を用いることを特徴としている。
【0008】
この特徴ある接着剤を巻き上げた銅線に塗布して、まず光硬化させた後、これを熱した金型中に入れ、エポキシの熱硬化と、微細カプセルを発泡させ所定の形状に整形しようというものである。
【0009】
また、特許文献3には、光熱硬化併用型樹脂組成物として、アクリレートの様なラジカル重合性をもつモノマーと、分子内にエポキシ基を1個以上有するエポキシモノマーと、酸無水物硬化剤と、光開始剤と、有機過酸化物のような熱ラジカル発生剤とマイクロカプ
セル化されたアミン系硬化剤が紹介されている。
【0010】
この樹脂は、アクリル部分(光重合性の成分)が紫外線を照射することにより重合し、その後加熱することで残るエポキシが熱硬化する性質を有している。この組成物では、カプセル化した硬化剤を含有させることで、ポットライフを伸ばして使用に耐えるようにしているのが特徴である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2001−247608号公報
【特許文献2】特公平2−58854号公報
【特許文献3】特開平2−235917号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかし、特許文献1の保護剤によれば、光で硬化する機能だけを有するので、上面に塗布した後コイル内に浸透したモノマーはその後光を照射しても硬化できなく、場合によっては経年し、モノマー成分の蒸気や、流れ出しによって時計機能に影響することがあった。
特許文献2の方法によれば、思う形に整形することは良いが、樹脂中に発泡性の微細カプセルを有しているため、巻き線した銅線中を浸透する際に、微小カプセルが狭い線材と線材との間に詰まり線材の中まで浸透できないといった課題がある。
【0013】
特許文献3によれば、硬化剤にマイクロ化カプセル化したエポキシ樹脂用硬化剤を有しているため、巻き線した銅線中を浸透する際に、微小カプセルが狭い線材と線材との間に詰まり線材の中まで浸透できないといった課題がある。
【0014】
樹脂中に固体と液状の成分が混在した状態で、コイルの巻き線中を浸透させようとすると、線間が狭い場合には当然詰まって、固体成分は移動出来なくなり、液体だけが浸透するので硬化剤を失った樹脂は硬化が不十分となる。また、毛細管現象により、コイルの空隙を流れてゆく場合においても、固体の移動速度は、液体の移動速度よりも非常に遅いため、いわゆるクロマトグラフィーのような固体と液体の分離が起こり成分比が変わり、良好な硬化ができなくなる。
【0015】
この現象は、発泡性の微小カプセルを混合している特許文献2についても同じ現象が発生し、特徴である微小カプセルを樹脂全体に均一に分散することができない課題がある。
【0016】
以上のように本発明は、コイル中に液状のモノマーを残さずに、固体成分を含有しない組成物の分離が発生しない時計用コイル保護剤とこれを用いた時計用コイルの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は(A)1分子中に(メタ)アクリル基とエポキシ基とを含有するモノマーと(B)エポキシモノマーと(C)(メタ)アクリルモノマーと(D)光ラジカル重合開始剤と(E)融点が25℃以下もしくはモノマーに可溶な酸無水物と(F)メチルトリブチルフォスフォニウム ジメチルフォスフェートまたはテトラブチルフォスフォニウムジメチルフォスフォロジチオエートとを含有することを特徴とする。または、更に(G)有機過酸化物と含有することを特徴とする。または、(A)1分子中に(メタ)アクリル基とエポキシ基とを含有するモノマーと(B)エポキシモノマーと(E)融点が25℃以下またはモノマーに可溶な酸無水物との合計の重量と、(A)1分子中に(メタ)アクリル基とエポキシ基とを含有するモノマーと(C)(メタ)アクリルモノマーとの合計の重量との混合比が4:6以上6:4以下の範囲にあることを特徴とする。または、(A)1分子中に(メタ)アクリル基とエポキシ基とを含有するモノマーがα付加型ビスフェノールAグリシジルエーテルモノ(メタ)アクリレートまたは、α付加型ビスフェノールFグリシジルエーテルモノ(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキレン(メタ)アクリレートグリシジルエーテル(アルキレン基は炭素数2から5の飽和アルキレン基を指す)、ジアクリルモノグリシジルイソシアヌル酸、モノアクリルジグリシジルイソシアヌル酸から選ばれる少なくとも1種を含有することを特徴とする。または、(B)エポキシモノマーとして、少なくともビスフェノールA型ジグリシジルエーテル、ビスフェノールF型ジグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテルから選ばれる1種を含有することを特徴とする。または、(D)光ラジカル重合開始剤として2−ヒドロキシー2−メチルー1−フェニルプロパンおよび/またはフェニルグリオキシックアシッドメチルエステルおよび/または1-ヒドロキシヘキシルフェニルケトンおよび/またはベンゾインから選ばれることを特徴とする。または、(D)光ラジカル重合開始剤は、総重量に対し0.7wt%以上8wt%以下であることを特徴とする。または、(F)メチルトリブチルフォスフォニウム ジメチルフォスフェートまたはテトラブチルフォスフォニウムジメチルフォスフォロジチオエートの含有量が0.1wt%以上8wt%以下であることを特徴とする。または、(G)有機過酸化物が、ジアシルパーオキサイド、パーオキシエステル、パーオキシケタール、ハイドロパーオキサイド、ジアルキルパーオキサイドから選ばれることを特徴とする。または、ジアシルパーオキサイドがジラウロイルパーオキサイド、ジベンジルパーオキサイドから選ばれることを特徴とする。または、パーオキシエステルが1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ヘキシルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシ−3−メチルベンゾエート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシベンゾエートから選ばれることを特徴とし、または、パーオキシケタールが1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)−2−メチルシクロヘキサンであることを特徴とし、または、ハイドロパーオキサイドがクメンハイドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイドから選ばれることを特徴とする。または、ジアルキルパーオキサイドがジ−t−ヘキシルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイドから選ばれることを特徴とする。また、時計用コイルの製造方法は、これらの時計用コイル保護剤を用いて、自己融着層が形成された銅線を巻き線したコイルの外側に時計用コイル保護剤を塗布し、紫外線を照射して1次硬化させた後、加熱して時計用コイル保護剤を完全硬化することを特徴とする。または、自己融着層が形成された銅線を巻き線したコイルの外側に時計用コイル保護剤を塗布し、紫外線を照射した硬化熱を利用して時計用コイル保護剤を完全硬化することを特徴とする時計用コイルの製造方法によって時計用コイルを製造し、これを部品として時計に用いることで解決できる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、コイル中に液状のモノマーを残さずに、固体成分を含有しない組成物の分離が発生しないモーター用コイルモールド組成物およびコイルの製造方法を提供することができる。この結果、密閉された時計の中でモノマー蒸気によって他の部品を腐食することが無く、また、経年によってコイル部品から流れ出るモノマーによる動作不良が無くなった。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】従来のコイルの構造を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の時計用コイル保護剤は(A)1分子中に(メタ)アクリル基とエポキシ基とを含有するモノマーと(B)エポキシモノマーと(C)(メタ)アクリルモノマーと(D)光ラジカル重合開始剤と(E)融点が25℃以下もしくはモノマーに可溶な酸無水物と(F)メチルトリブチルフォスフォニウム ジメチルフォスフェートまたはテトラブチルフォスフォニウムジメチルフォスフォロジチオエートとを含有している。また、必要に応じて更に(G)有機過酸化物と含有している。
【0021】
本発明の時計用コイル保護剤は全て液体で塗布する温度で全て液体でできている。光硬化を主として硬化させるので、室温(約25℃)において全て液体であることが好ましい。このため、硬化剤の融点は室温よりも低い25℃以下であることが好ましい。全てが液体であることにより、細い銅線を巻いたコイルに塗布したときに、狭い空隙に成分が分離することなく均一に流れ込むことができる。
【0022】
この様な組成物を作成して熱硬化させるとき、保護剤の粘度が下がる。また、酸無水物とエポキシの反応は高温(例えば120から150℃以上)で、長時間(例えば3時間から5時間程度)を要するので光で1次硬化できていない成分が流れ出すことがある。このため、(F)メチルトリブチルフォスフォニウム ジメチルフォスフェートまたはテトラブチルフォスフォニウムジメチルフォスフォロジチオエートを含有させることで120℃以下で30分以内という短時間で硬化させることができるようになる。この成分を添加することで、たとえ光があたらない未硬化の樹脂も流れ出すことなく適切に硬化させることができる。一般に、酸無水物硬化の促進剤にはイミダゾール誘導体を用いるが、これを用いると保存性が低下して、使用中あるいは保存中に粘度が上昇したり硬化してしまうことがある。この様な現象が起こると、コイルを形成する銅線の隙間にモールド剤が流れ込みにくくなり使用に耐えなくなる。しかし、前記2種のフォスフォニウム系化合物を用いた場合に限っては、液体で完全に相溶しているにもかかわらず、粘度が急激に上昇しないといった利点がある。また、反応時には短時間で低温で硬化が進むため、反応により粘度が早く上がり、加えて低温のためもともとの液体の粘度も高い状態で反応を行えるので流れ出しが効果的に防止できる。
【0023】
本時計用保護剤は、光と熱で硬化することができる。光を照射して反応するときは、光ラジカル重合開始剤がラジカル(活性種)を発生し、本組成物中の(メタ)アクリル基が連鎖反応によって。ラジカル重合反応し硬化する。熱を加えて硬化するときには、エポキシ基を有する成分が、酸無水物と反応し、硬化体を得ることができる。成分(F)を混合した場合にはこれが触媒となり反応を進め、反応温度や時間を早く反応させることができると考えられる。
【0024】
本発明の時計用保護剤を光で硬化させると重合時に高加熱が発生する。また、照射した光にも熱分が含まれ、硬化部分が温められる。この反応熱や照射する光が持つ熱を利用することで、条件によって下記に記載するように特別な加熱炉を用いなくてもコイルを製造することができるようになる。このとき成分(F)メチルトリブチルフォスフォニウム ジメチルフォスフェートまたはテトラブチルフォスフォニウムジメチルフォスフォロジチオエートが作用する。
【0025】
本発明の時計用コイル保護剤を用いた時計用コイルの製造方法は、自己融着層が形成された銅線を巻き線したコイルの外側に時計用コイル保護剤を塗布し、紫外線を照射して1次硬化させた後、加熱して時計用コイル保護剤を完全硬化することで時計用コイルを得ることができる。
【0026】
また、自己融着層が形成された銅線を巻き線したコイルの外側に時計用コイル保護剤を塗布し、紫外線を照射した硬化熱、光照射による温度上昇を利用して時計用コイル保護剤
を完全硬化することで時計用コイルを得ることができる。
【0027】
本発明の時計用コイル保護剤には、エポキシ樹脂と硬化剤を含有しているので、熱的に硬化できるが、有機過酸化物が添加されている場合は、加熱により有機過酸化物が解裂し活性種(ラジカル)を生成する。このラジカルは、アクリル基を重合させるために混合した光開始剤が光照射によって生成するラジカルと同様に、アクリル基を重合させることができる。すなわち、光照射によって樹脂を硬化させるときや、加熱したときに発生する熱によってアクリル基を重合させることができるようになる。
【0028】
特に、時計用コイルの表面に塗布した未硬化の樹脂が光のあたらないコイル内部へ浸透したとしても、熱によってアクリル基と、エポキシ基の両方を硬化させることができるので、未硬化樹脂を残さないですむようになる。特にアクリル基だけを有するモノマーは、光があたらない環境で、熱だけで硬化するようになった場面ではモノマーとして残留することになるが、有機過酸化物を含有している系では熱によって発生したラジカルによって重合し、より硬化率の高い樹脂を得ることができる。
【0029】
このような理由から、有機過酸化物を混合した系では、光熱併用型の樹脂の性質を有すると共に、熱硬化だけでもアクリル基、エポキシ基共に硬化できる性能を有する。この結果、樹脂内に残留するモノマーも減り、硬化後に長年使用しても、内部から液だれすることが無くなるのはもちろん、揮発成分も減るのでアウトガスが低減でき、長年の使用に耐える樹脂となる。
【0030】
本発明の時計用コイル保護剤を用いて時計用コイルを作成する場合には含有するアクリルとエポキシの量を適正な比率にする必要がある。
【0031】
具体的には、(A)1分子中に(メタ)アクリル基とエポキシ基とを含有するモノマーと(B)エポキシモノマーと(E)融点が25℃以下またはモノマーに可溶な酸無水物との合計の重量と、(A)1分子中に(メタ)アクリル基とエポキシ基とを含有するモノマーと(C)(メタ)アクリルモノマーとの合計の重量との混合比が4:6以上6:4以下の範囲にあることが望ましい。
【0032】
エポキシ硬化系材料が多すぎると、初期硬化したときにエポキシ硬化系は純粋に光では反応せずにそのままで残留する。このため、エポキシの含有量はアクリル系に比較して最大でも6:4以下に抑えることが好ましい。
【0033】
一方これとは逆に、熱だけで硬化させる場合にはアクリルは熱で硬化しないため、エポキシに対して4:6までに抑えることが好ましい。
【0034】
この2つの条件を同時に満たすために、エポキシとアクリルの比は4:6以上6:4以下であることが必要となる。
【0035】
有機過酸化物を添加した系においては、熱硬化した時点でアクリル樹脂も硬化することができる。このためアクリル基は最終的に重合することから、アクリルの量は4:6以上加えても硬化することができる。しかし、アクリル樹脂は、エポキシ樹脂と比較して硬化収縮率が大きいという特性を有している。時計用のコイル部品を形成している銅線は、とても細く、100ミクロンにも満たない細さであるため、樹脂によってストレスを与えると場合によっては断線を引き起こし、時計機能を失わせてしまう可能性がある。
【0036】
このため、収縮性も考慮すればエポキシとアクリルの比は4:6以上6:4以下であることが好ましい。
【0037】
本発明の時計用コイル保護剤の(A)1分子中に(メタ)アクリル基とエポキシ基とを含有するモノマーの具体例としては、α付加型ビスフェノールAグリシジルエーテルモノ(メタ)アクリレートまたは、α付加型ビスフェノールFグリシジルエーテルモノ(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキレン(メタ)アクリレートグリシジルエーテル(アルキレン基は炭素数2から5の飽和アルキレン基を指す)、ジアクリルモノグリシジルイソシアヌル酸、モノアクリルジグリシジルイソシアヌル酸を使用することができる。特に、イソシアヌル酸誘導体は反応点が多いので、樹脂全体の硬化後のガラス転移点を上昇させる効果がある。ガラス転移点が上昇すると、樹脂が硬くなり流れ出したアウトガスの発生をより抑制する作用をするからである。
【0038】
本発明の時計用コイル保護剤の(B)エポキシモノマーとしては、ビスフェノールA型ジグリシジルエーテル、ビスフェノールF型ジグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテルなどが使用できる。
【0039】
本発明の時計用コイル保護剤の(C)(メタ)アクリルモノマーとしては、α、α’付加型ビスフェノールAグリシジルエーテルジメタクリレート、α、α’付加型ビスフェノールFグリシジルエーテルジメタクリレート、α、β、α’付加型ビスフェノールAグリシジルエーテルジメタクリレート、ジシクロペンテニルオキシメタクリレート、4-ヒドロキシブチルアクリレート、4-ヒドロキシブチルメタクリレート、トリアクリルイソシアヌル酸ジアクリルイソシアヌル酸などがあげられる。
【0040】
本発明の時計用コイル保護剤の(D)光ラジカル重合開始剤としては、公知の開始剤を使用することができる。本発明のシール剤に使用できる光開始剤としては、ジエトキシアセトフェノン、2-ヒドロキシ−2−メチル1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンなどのアセトフェノン系光開始剤、ベンゾイン、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンジルメチルケタールなどのベンゾイン系光開始剤、ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、ベンゾイン安息香酸メチル、4−フェニルベンゾフェノンなどのベンゾフェノン系光開始剤などが使用できる。またこの他、メチルフェニルグリオキシレート、アシルホスフィンオキサイド、ベンジルなども使用できる。
【0041】
この中で感度や、溶解度の点ですぐれ本発明の時計用コイル保護剤に適している光ラジカル重合開始剤としては2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパンおよび/またはフェニルグリオキシックアシッドメチルエステルおよび/または1-ヒドロキシヘキシルフェニルケトンおよび/またはベンゾインがあげられる。
【0042】
本発明の時計用コイル保護剤の(E)融点が25℃以下もしくはモノマーに可溶な酸無水物としては、単独あるいは混合した時点で完全に液状である必要がある。このため、本発明の硬化剤である酸無水物は融点が25℃以下の液体、もしくはこの成分以外の本発明を構成する要素に溶解可能で全体として25℃以上で液体である酸無水物に限られる。
【0043】
(E)融点が25℃以下もしくはモノマーに可溶な酸無水物としては、メチル−1,2,3,6−テトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、メチル−3,6エンドメチレン−1,2,3,6−テトラヒドロ無水フタル酸、メチルナジック酸無水物、水素化メチルナジック酸無水物、トリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸から選ばれる少なくとも1種の酸無水物であることが好ましい。また、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、無水フタル酸、無水ピロメリット酸、無水トリメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸2無水物、エチレングリコールビスアンヒドロトリメリテートなども、共に使う酸無水物や他の成分と相溶し液体として組成物中に存在できる範
囲で使用することができる。
【0044】
本発明の時計用コイル保護剤の(D)光ラジカル重合開始剤は、総重量に対し0.7wt%から8wt%の割合で添加することが好ましい。少ないと含有している(メタ)アクリル基の重合を行えず光をあてても硬化しなくなったり、硬化時間を長く要するので最低でも0.7wt%以上の添加量が必要となる。一方、添加量が多すぎると開始剤が光を吸収するため深部の硬化できなくなる。このため、光開始剤の添加量は最大でも8wt%以下にする必要がある。
【0045】
また、(F)メチルトリブチルフォスフォニウム ジメチルフォスフェートまたはテトラブチルフォスフォニウムジメチルフォスフォロジチオエートの含有量は、総重量に対し0.1wt%から8wt%の割合で添加することが好ましい。少なすぎると硬化速度が十分に上がらず溶出を発生する場合がある。しかし、多すぎると保存性が失われ数日で粘度が上昇する現象が起こり、使用に耐えなくなる。このため、添加量は全体の0.1wt%以上8wt%以下が好ましい。
【0046】
本発明の時計用コイル保護剤の(G)有機過酸化物としては、ジアシルパーオキサイド、パーオキシエステル、パーオキシケタール、ハイドロパーオキサイド、ジアルキルパーオキサイドを使用することができる。
【0047】
ジアシルパーオキサイドとしては、ジラウロイルパーオキサイド、ジベンジルパーオキサイドが好適に使用することができる。
また、パーオキシエステルとしては、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ヘキシルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシ−3−メチルベンゾエート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシベンゾエートを好適に使用することができる。
【0048】
また、パーオキシケタールとしては、1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)−2−メチルシクロヘキサンを好適に使用することができ、ハイドロパーオキサイドとしては、クメンハイドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイドを、更に、ジアルキルパーオキサイドとしてはジ−t−ヘキシルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイドを使用することができる。
【0049】
本発明の時計用コイル保護剤を用いた時計用コイルは、銅線内に浸透した樹脂も硬化するため、浸透した樹脂が流れることが無く、更に、液体が蒸発することが無いのでアウトガスが出にくいといった特性を有する。部品からのアウトガスは、文字盤や、その他部品の変色や腐食に影響を与えることがわかっている。本発明の時計用コイル保護剤は、従来の問題点を解決する点で特徴を有している。
【0050】
また、時計にくみ上げた場合にはアウトガスなどが少ないゆえ、長寿命化ができ品質を向上するといった性能を有する。
【0051】
(実施例)
以下実施例を基に更に詳しく本発明を説明するが、本発明は実施例だけに限定されるものではない。
【0052】
(A)1分子中に(メタ)アクリル基とエポキシ基とを有するモノマーとして、(A-1)α付加型ビスフェノールAグリシジルエーテルモノメタクリレート、(A-2)α付加型ビスフェノールFグリシジルエーテルモノアクリレート、(A-3)α付加型ビスフェノールAグ
リシジルエーテルモノメタクリレート、(A-4)α付加型ビスフェノールFグリシジルエーテルモノアクリレート、(A-5)4−ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテル、(A-6)ジアクリルモノグリシジルイソシアヌル酸、(A-7)モノアクリルジグリシジルイソシアヌル酸を用意した。
【0053】
(B)エポキシモノマーとして(B-1)ビスフェノールA型ジグリシジルエーテル、(B-2)ビスフェノールF型ジグリシジルエーテル、(B-3)フェニルグリシジルエーテル、(B-4)2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、(B-5)1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテルを用意した。
【0054】
(C)(メタ)アクリルモノマーとして、(C-1)α、α’付加型ビスフェノールAグリシジルエーテルジメタクリレート、(C-2)α、α’付加型ビスフェノールFグリシジルエーテルジメタクリレート、(C-3)α、β、α’付加型ビスフェノールAグリシジルエーテルジメタクリレート、(C-4)ジシクロペンテニルオキシメタクリレート、(C-5)4-ヒドロキシブチルアクリレート、(C-6)4-ヒドロキシブチルメタクリレート、(C-7)トリアクリルイソシアヌル酸、(C-8)ジアクリルイソシアヌル酸を用意した。
【0055】
(D)光ラジカル重合開始剤として、(D-1)2−ヒドロキシー2−メチルー1−フェニルプロパン、(D-2)フェニルグリオキシックアシッドメチルエステル、(D-3)1-ヒドロキシヘキシルフェニルケトン、(D-4)ベンゾインを用意した。
【0056】
(E)融点が25℃以下もしくはモノマーに可溶な酸無水物として、(E-1)メチル−1,2,3,6−テトラヒドロ無水フタル酸、(E-2)メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、(E-3)メチル−3,6エンドメチレン−1,2,3,6−テトラヒドロ無水フタル酸、(E-4)メチルナジック酸無水物、(E-5)水素化メチルナジック酸無水物、(E-6)トリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸、(E-7)テトラヒドロ無水フタル酸、(E-8)ヘキサヒドロ無水フタル酸、(E-9)無水フタル酸、(E-10)無水ピロメリット酸、(E-11)無水トリメリット酸、(E-12)ベンゾフェノンテトラカルボン酸2無水物、(E-13)エチレングリコールビスアンヒドロトリメリテートを用意した。
【0057】
(F)成分として、(F-1)メチルトリブチルフォスフォニウム ジメチルフォスフェート、(F-2)テトラブチルフォスフォニウムジメチルフォスフォロジチオエートを用意した。
【0058】
(G)有機過酸化物として、ジアシルパーオキサイドとしては、(G-1)ジラウロイルパーオキサイド、(G-2)ジベンジルパーオキサイド、パーオキシエステルとしては、(G-3)1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、(G-4)t−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、(G-5)t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、(G-6)t−ヘキシルパーオキシベンゾエート、(G-7)t−ブチルパーオキシ−3−メチルベンゾエート、(G-8)t−ブチルパーオキシベンゾエート、(G-9)t−ブチルパーオキシベンゾエート、パーオキシケタールとしては、(G-10)1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)−2−メチルシクロヘキサン、ハイドロパーオキサイドとしては、(G-11)クメンハイドロパーオキサイド、(G-12)1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、ジアルキルパーオキサイドとしては(G-13)ジ−t−ヘキシルパーオキサイド、(G-14)ジ−t−ブチルパーオキサイドを用意した。
【0059】
(D)光ラジカル重合開始剤が反応しない条件で、AからFの成分をそれぞれ計量して、遊星型攪拌混合機で攪拌し、5ミクロン以下のフィルターを通して目的のモーター用コイルモールド組成物を得た。
【0060】
時計用コイルを作成するにあたっては、自己融着層が形成された銅線を巻き線したコイルの巻き線部の上から時計用コイル保護剤を塗布し、紫外線を照射して1次硬化させた後、加熱して時計用コイル保護剤を時計用コイルに使用する方法と、紫外線を照射する工程で発生する熱を利用して紫外線による光硬化と同時に熱硬化も進行させる方法で時計用コイル保護剤を時計用コイルに使用した。
【0061】
(A-1)を20g、(B-1)を28g、(C-6)を55g、(E-1)を14g、(F−1)を1g(合計118g)に対して、(D-1)、(D-2)、(D-3)、(D-4)をそれぞれ0.5wt%、0.7wt%、1.0wt%、3.0wt%、5.0wt%、8.0wt%、10.0wt%添加して時計用コイル保護剤を作成した。
【0062】
次にこれを用いて時計用コイルを作成した。この工程で、この樹脂に紫外線を照射したときの硬化の様子を観察したところ0.7wt%のものから8.0wt%のものは良好に硬化し、コイル部品を作成することができた。しかし、0.5wt%のものは、0.7wt%から8.0wt%と同様の結果を得るためには、これらの紫外線照射時間に比較して3倍の時間を要した。また、10.0wt%の場合は底部に未硬化部分があり、0.7wt%から8.0wt%と同様の結果を得るためには、これらの紫外線照射時間に比較して2倍の時間を要した。この結果、(D)の最適量は総重量に対し0.7wt%から8wt%の割合で添加することが好ましい。これを用いて時計を作成したところはいずれも良好に動作した。
【0063】
(A-1)を20g、(B-1)を28g、(C-6)を55g、(E-1)を14g、(F−1)を1g、(G-14)を1g(合計119g)に対して、(D-1)、(D-2)、(D-3)、(D-4)をそれぞれ0.5wt%、0.7wt%、1.0wt%、3.0wt%、5.0wt%、8.0wt%、10.0wt%添加して時計用コイル保護剤を作成した。
【0064】
次にこれを用いて時計用コイルを作成した。この工程で、この樹脂に紫外線を照射したときの硬化の様子を観察したところ0.7wt%のものから8.0wt%のものは良好に硬化し、コイル部品を作成することができた。しかし、0.5wt%のものは、0.7wt%から8.0wt%と同様の結果を得るためには、これらの紫外線照射時間に比較して3倍の時間を要した。また、10.0wt%の場合は底部に未硬化部分があり、0.7wt%から8.0wt%と同様の結果を得るためには、これらの紫外線照射時間に比較して2倍の時間を要した。この結果、(D)の最適量は総重量に対し0.7wt%から8wt%の割合で添加することが好ましい。これを用いて時計を作成したところはいずれも良好に動作した。
【0065】
(A-1)を65g、(B-1)を28g、(C-6)を10g、(D-1)を7g、(E-1)を14g(合計124g)に対して、(F-1)、(F-2)をそれぞれ0.07wt%、0.1wt%、0.5wt%、1.0wt%、3.0wt%、5.0wt%、8.0wt%、10.0wt%添加して時計用コイル保護剤を作成した。
【0066】
この樹脂を用いて時計用コイルを製造したところ、0.1wt%から8.0wt%は良好に時計用コイルを製造できた。0.07wt%の場合には、硬化が不十分であったため、硬化時間が4倍かかった。10.0wt%の場合には、保管中(室温1ヶ月)に粘度が上昇したので、作りたての材料を用いて製造を行った。時計はいずれも良好に動作した。
【0067】
この結果、(F)の全体に対しての添加量として0.1wt%以上8.0wt%以下がもっとも好ましいことが判った。
【0068】
(A-1)を65g、(B-1)を28g、(C-6)を10g、(D-1)を7g、(E-1)を14g(G-14)を1g(合計125g)に対して、(F-1)、(F-2)をそれぞれ0.07wt%、0.1wt%、0.5wt%、1.0wt%、3.0wt%、5.0wt%、8.0wt%、10.0wt%添加して時計用コイル保護剤を作成した。
【0069】
この樹脂を用いて時計用コイルを製造したところ、0.1wt%から8.0wt%は良好に時計用コイルを製造できた。0.07wt%の場合には、硬化が不十分であったため、硬化時間が4倍かかった。10.0wt%の場合には、保管中(室温1ヶ月)に粘度が上昇したので、作りたての材料を用いて製造を行った。時計はいずれも良好に動作した。
【0070】
この結果、(F)の全体に対しての添加量として0.1wt%以上8.0wt%以下がもっとも好ましいことが判った。
【0071】
(A-1)を65g、(B-1)を28g、(C-6)を10g、(D-1)を7g、(E-1)を14g、(F-1)を1g、(合計125g)に対して、(G-1)、(G-2)、(G-3)、(G-4)、(G-5)、(G-6)、(G-7)、(G-8)、(G-9)、(G-10)、(G-11)、(G-12)、(G-13)、(G-14)をそれぞれ0.07wt%、0.1wt%、0.5wt%、1.0wt%、3.0wt%、5.0wt%、8.0wt%、10.0wt%添加して時計用コイル保護剤を作成した。
【0072】
この樹脂を用いてコイル部品を製造したところ、0.1wt%から8.0wt%は良好に時計用コイルを製造できた。0.07wt%の場合には、銅線内に浸透した樹脂の硬化が不十分であったため、硬化時間が4倍かかった。10.0wt%の場合には、保管中(室温1ヶ月)に粘度が上昇したので、作りたての材料を用いて製造を行った。時計はいずれも良好に動作した。
【0073】
この結果、(G)の全体に対しての添加量として0.1wt%以上8.0wt%以下がもっとも好ましいことが判った。
(D-1)から(D-4)を全体の0.7から8.0wt%、(F-1)から(F-2)を全体の0.1から8.0wt%、残る(A-1)から(A-7)、(B-1)から(B-5)、(C-1)から(C-8)、(E-1)から(E-12)を任意に取り分け、(A+B+E)と(A+C)との重量比が4:6以上、6:4以下となるよう混合して時計用コイル保護剤を作成した。
【0074】
また、時計用コイル保護剤に更に(G-1)と(G-14)を3wt%加えた時計用コイル保護剤を作成した。
【0075】
この樹脂を用いて時計を製造したところ、(A+B+E)と(A+C)との重量比が4:6以上、6:4以下の場合は良好に時計が製造できた。
【0076】
また、同様に(A-1)から(A-7)、(B-1)から(B-5)、(C-1)から(C-8)、(D-1)から(D-13)、(E-1)から(E-12)、(F-1)と(F-2)を任意に取り分け、(A+B+E)と(A+C)との重量比4:6以下、または6:4以上となるよう混合した組成物を作成した。
【0077】
また、前記組成物に更に(G-1)から(G-12)を3wt%加えた組成物を作成した。
【0078】
この樹脂を用いてコアレスモーターを製造しようとしたところ、エポキシが多い場合にはいずれの場合も、樹脂が硬化せず目的の時計は作成できなかった。また、アクリルが多い場合には、(G-1)から(G-12)が混合されていない場合には、同様に樹脂が硬化せず時計を作成することはできなかった。一方、(G-1)から(G-12)が混合されているもの
は、紫外線による1次硬化時に放熱をして硬化させた場合には、加熱硬化するまでは内部に浸透した樹脂が硬化しないで残留していた。
【0079】
この結果、(A+B+E)と(A+C)との重量比は4:6以上、6:4以下が好ましいことが判った。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)1分子中に(メタ)アクリル基とエポキシ基とを含有するモノマーと(B)エポキシモノマーと(C)(メタ)アクリルモノマーと(D)光ラジカル重合開始剤と(E)融点が25℃以下またはモノマーに可溶な酸無水物と(F)メチルトリブチルフォスフォニウム ジメチルフォスフェートまたはテトラブチルフォスフォニウムジメチルフォスフォロジチオエートとを含有する時計用コイル保護剤。
【請求項2】
さらに(G)有機過酸化物を含有することを特徴とする請求項1に記載の時計用コイル保護剤。
【請求項3】
前記(A)1分子中に(メタ)アクリル基とエポキシ基とを含有するモノマーと前記(B)エポキシモノマーと前記(E)融点が25℃以下またはモノマーに可溶な酸無水物との合計の重量と、前記(A)1分子中に(メタ)アクリル基とエポキシ基とを含有するモノマーと前記(C)(メタ)アクリルモノマーとの合計の重量との混合比が4:6以上6:4以下の範囲にあることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の時計用コイル保護剤。
【請求項4】
前記(A)1分子中に(メタ)アクリル基とエポキシ基とを含有するモノマーがα付加型ビスフェノールAグリシジルエーテルモノ(メタ)アクリレートまたは、α付加型ビスフェノールFグリシジルエーテルモノ(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキレン(メタ)アクリレートグリシジルエーテル(アルキレン基は炭素数2から5の飽和アルキレン基を指す)、ジアクリルモノグリシジルイソシアヌル酸、モノアクリルジグリシジルイソシアヌル酸から選ばれる少なくとも1種を含有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の時計用コイル保護剤。
【請求項5】
前記(B)エポキシモノマーとして、少なくともビスフェノールA型ジグリシジルエーテル、ビスフェノールF型ジグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテルから選ばれる1種を含有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の時計用コイル保護剤。
【請求項6】
前記(D)光ラジカル重合開始剤として2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパンおよび/またはフェニルグリオキシックアシッドメチルエステルおよび/または1-ヒドロキシヘキシルフェニルケトンおよび/またはベンゾインから選ばれることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の時計用コイル保護剤。
【請求項7】
前記(D)光ラジカル重合開始剤は、全成分の合計の0.7wt%以上8wt%以下の範囲にあることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の時計用コイル保護剤。
【請求項8】
前記(F)メチルトリブチルフォスフォニウム ジメチルフォスフェートまたはテトラブチルフォスフォニウムジメチルフォスフォロジチオエートの含有量が0.1wt%以上8wt%以下であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の時計用コイル保護剤。
【請求項9】
前記(G)有機過酸化物が、ジアシルパーオキサイド、パーオキシエステル、パーオキシケタール、ハイドロパーオキサイド、ジアルキルパーオキサイドから選ばれることを特徴とする請求項2に記載の時計用コイル保護剤。
【請求項10】
前記ジアシルパーオキサイドがジラウロイルパーオキサイド、ジベンジルパーオキサイ
ドから選ばれることを特徴とする請求項9に記載の時計用コイル保護剤。
【請求項11】
前記パーオキシエステルが1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ヘキシルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシ−3−メチルベンゾエート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシベンゾエートから選ばれることを特徴とする請求項9に記載の時計用コイル保護剤。
【請求項12】
前記パーオキシケタールが1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)−2−メチルシクロヘキサンであることを特徴とする請求項9に記載の時計用コイル保護剤。
【請求項13】
前記ハイドロパーオキサイドがクメンハイドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイドから選ばれることを特徴とする請求項9に記載の時計用コイル保護剤。
【請求項14】
前記ジアルキルパーオキサイドがジ−t−ヘキシルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイドから選ばれることを特徴とする請求項9に記載の時計用コイル保護剤。
【請求項15】
自己融着層が形成された銅線を巻き線したコイルの外側に請求項1から請求項14のいずれか一項に記載の時計用コイル保護剤を塗布し、紫外線を照射して1次硬化させた後、加熱して時計用コイル保護剤を完全硬化する時計用コイルの製造方法。
【請求項16】
自己融着層が形成された銅線を巻き線したコイルの外側に請求項1から請求項14のいずれか一項に記載の時計用コイル保護剤を塗布し、紫外線を照射した硬化熱を利用して時計用コイル保護剤を完全硬化する時計用コイルの製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2013−28762(P2013−28762A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−167137(P2011−167137)
【出願日】平成23年7月29日(2011.7.29)
【出願人】(000001960)シチズンホールディングス株式会社 (1,939)
【出願人】(307023373)シチズン時計株式会社 (227)
【Fターム(参考)】