説明

時計用文字板

【課題】 透過性基板の下面の模様が視認されないようにする。
【解決手段】 時計用文字板1を構成する透過性基板2は、その下面2aに複数の凹凸部を有し、凹部2bは鏡面に形成されていて反射膜3を有し、凸部2cは平滑面2dになっていて透過性を有し、平滑面2dの形状は直径dが100μmを超えて120μm以下の円形で、該複数の円形を正三角形の模様形状になるように分散配置する。反射膜3は、金属蒸着膜等よりなる。凸部2cの縦断面形状は、台形形状をしていて平滑面2dの直径dが100μmを超えて120μm以下であるので金型の製作が容易である。また、複数の円形を正三角形の模様形状に配置し、鏡面に形成された凹部2bの底面及びテーパーの斜面に反射膜3が形成されているので、反射光が分散、散乱し易く、ソーラーセルの濃紫色が全く視認されず、金属反射膜からの反射光により高級感を有する文字板が安価に出現できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、時計用文字板、更に詳しくは太陽電池付時計用文字板、あるいはバックライト付き時計用文字板に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ソーラーセル用の時計用文字板として、外観上金属感を出現させると共に、下面に配設したソーラーセルが有する独特の膿紫色が見えないようにする技術として、文字板に各種の凹凸模様、例えば、格子模様、サークル模様、各種幾何学模様等を施している。このような従来技術の時計用文字板として、例えば、先に本出願人が出願した特願2000−335074号(特許文献1)、特願2001−091348号(特許文献2)にその技術が開示されている。
【0003】
前記特願2000−335074号において、図3及び図4に示すように、10はソーラーセル用の時計用文字板であり、11は時計用文字板10を構成する主要部材である光透過性プラスチック材料からなる透過性基板である。その下面には凹部12がマトリクス状に密集して配設されている。前記凹部12が形成されていない部分は相対的に凸部13を呈している。前記凹部12の内面には、非透過部である金属蒸着膜、又は塗料膜、又は金属蒸着膜と塗料膜との積層膜である反射膜14が形成されている。
【0004】
この時計用文字板10の上面には、図示しない時字やマーク等の指標が形成されている。そして前記凸部13の上面13aは研磨されて透過性基板11が露出し、更に平滑面になっている。そして研磨された上面13aの総面積が、透過性基板11全体の面積の20〜50%の範囲になるように形成されている。
【0005】
また、前記凸部13の高さhが少なくとも10μm以上あって、上面13aの幅tは100μm以下に形成されている。このような、凹凸模様のある時計用文字板10の製造方法は、射出成形方法よるか、または凹凸模様を形成した金型を用いて加熱加圧の下で転写する方法による。
【0006】
この時計用文字板10では透過性基板11の透過部の幅tが100μm以下と小さく制限されているので、時計用文字板10の上から透過部の形状やソーラーセルの濃紫色が認識できない。反射膜14の選択により時計用文字板10の下面で反射した光により文字板面は金属感のある見栄えの良い外観になる。
【0007】
しかしながら、光透過部の幅tを100μm以下に設定しているので、金型を製作するのに時間が掛かり非常に高価であった。時計用文字板のコストアップになる。
【0008】
そこで、この問題を解決する技術として、前記特願2001−091348号において、図5に示すように、20はソーラーセルの上に配設されるソーラーセル用の時計用文字板で、21は時計用文字板20を構成する主要部材である光透過性プラスチック材料からなる透過性基板であり、透過性基板21の上面21aは平坦で、下面21bには模様状に形成された凹凸部を有し、凹部21cがマトリクス状に密集している。凹部21cの模様にはこのマトリクス状の他に、ストライブ模様、サークル模様、その他の幾何学模様等がある。
【0009】
前記凹部21cの底面は鏡面に仕上げられていて反射膜22を有している。該反射膜22は光が透過しない厚みに形成された金属蒸着膜からなる非透過部になっている。非透過部である金属蒸着膜に限らず塗料膜、又は金属蒸着膜と塗料膜との積層膜で形成しても良い。
【0010】
前記透過性基板21の下面21bは透過性を有する凸部21dを呈し、透過部の幅tは120μm以下である。前記透過部の総面積は透過性基板21の全体の面積の20〜50%の範囲になるように形成されていて、ソーラーセルに均一な光量が得られ十分な発電が可能である。
【0011】
上記したように、前記凹部21cの底面を鏡面に仕上げるのは、その部分が良く反射されて光沢を有しているので、その光沢に惑わされて120μm(透過部の幅t)の大きさが視認されない。
【0012】
また、図6に示すように、前記透過性基板21の上面21aに模様パターン21eを形成することにより、下面21bの透過部より透過してきたソーラーセルの反射光は、上面21aに形成された模様パターン21eによって光が分散、散乱して放射される。この分散、散乱によって、一層ソーラーセルの存在を目立たなくさせる。その上、下面の模様が異なると、ソーラーセルからの反射光が上面側の模様の異なる凹凸で分散するのでソーラーセルの濃紫色が視認されなくなる。
【0013】
【特許文献1】特願2000−335074号
【特許文献2】特願2001−091348号
【特許文献3】特開平11−326549号
【特許文献4】特開平10−206560号
【特許文献5】特開平7−244174号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、透過性を有する凸部の大きさが120μmでは、上面側に模様パターンを形成しないと、ストライブ模様、サークル模様、格子模様等の模様が強調されて模様として僅かではあるが視認されてしまう。また、上面側に模様パターンを形成することはコストアップになってしまうと言う問題がある。
【0015】
本発明は上記従来の課題に鑑みなされたものであり、その目的は、透過性基板の上面に凹凸模様を形成することなく、ソーラーセルの濃紫色が視認されないで、製造が容易で安価なソーラーセル用の時計用文字板を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的を達成するために本発明における時計用文字板は、透過性基板の下面に複数の凹凸部を設け、該凹部を鏡面に形成して反射膜を設けた時計用文字板において前記複数の凸部は縦断面形状が台形形状をなし、該台形のテーパーの斜面は鏡面をなして反射膜を有し、該台形の先端表面は円形なる平滑面をなして透過性を有し、前記複数の円形を正三角形の模様形状になるように分散配置したことを特徴とするものである。
また、本発明の時計用文字板は、前記台形の先端表面の円形なる平滑面の直径は100μmを超えて120μm以下であることを特徴とするものである。
【0017】
また、前記反射膜は、金属蒸着膜、又は塗料膜、又は金属蒸着膜と塗料膜との積層膜であることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、透過性を有する平滑面である複数の円形を正三角形の集合模様になるように分散して配置すること。また、凹部は鏡面に形成されていて良く光を反射させること、更に、凹部の底面及び特に斜面に形成した反射膜よりの反射光の分散、散乱させることなどの相乗効果により、透過部は模様として認識され難く、ソーラーセルの濃紫色は視認されない。また、凸部の形状が台形形状のため成形加工がより容易になる。更に、金属反射膜により高級感を出現させる。また、光透過部分により十分な発電量が得られる。新規で安価なソーラーウオッチ用あるいはバックライト付き時計用文字板を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下図面に基づいて本発明における時計用文字板について説明する。図1は、本発明の実施の形態に係わる時計用文字板の要部平面図である。図2(a)は、図1のA−A線断面図、図2(b)は、図2(a)の部分拡大断面図である。
【0020】
図1及び図2において、1はソーラーセル用の時計用文字板であり、2は時計用文字板1を構成する主要部材である光透過性プラスチック材料からなる透過性基板である。該透過性基板2は、その下面2aに複数の凹凸部を有し、前記凹部2bは鏡面に形成されていて、その上に金属反射膜3が形成されている。この金属反射膜3は、例えば、銀(Ag)蒸着膜とクロム(Cr)蒸着膜からなる2層の反射膜で構成する。このAg蒸着膜の膜厚は、略600〜1000Å程度で、Ag蒸着膜の変色防止のために形成するCr蒸着膜の膜厚は、略300〜500Å程度である。
【0021】
前記反射膜3は、金属蒸着膜以外に、塗料膜、又は金属蒸着膜と塗料膜との積層膜でも良い。
【0022】
前記凸部2cの断面形状は、図2(b)に示すように台形形状をしており、所定の角度(α)、例えば2〜15°程度のテーパーが付いている。そして、透過性を有する凸部2cの表面は研磨されて平滑面2dになっている。前記凸部2cの平滑面2dの形状は、直径dが例えば、120μm以下の円形、高さhが50μm以下で、該複数の円形は正三角形の模様形状になるように分散配置されている。
【0023】
前記透過性を有する凸部2cの平滑面2dの総面積は、前記透過性基板2の面積に対して20〜50%であり、ソーラーセルの発電に必要な光量としては十分である。前記時計用文字板1の上面2eには図示しない時字やマーク等の指標が形成されている。
【0024】
上記した構成の時計用文字板の作用効果について説明する。前記凹凸模様のある時計用文字板1は、射出成形方法によるか、または凹凸模様を形成した金型を用いて加熱加圧の下で転写する方法による。前記凸部2cの高さhが少なくとも50μm以下(10μm以上)であって、平滑面2dの円形の直径dが120μm以下であり、2〜15°程度のテーパ(α)が付いているので、透過性基板2は成形し易く、安価に製造できる。
また、透過性を有する平滑面2dである複数の円形を正三角形の集合模様になるように分散して配置することにより、模様として認識され難く、更に、凹部2bは鏡面に形成されているので、その部分が良く光を反射されて光沢を持っているのでその光沢に惑わされて120μm(平滑面円形の直径d)の大きさが視認されない。(また、他に、丸点の配置が正方形、サークル等のパターンが人間の目で視認されやすいのは正方形、サークル等に方向性が有り、人間の生理として、目でパターンとして視認されやすいためであると推量される。このことより、丸点を正三角形のパターンとすることにより、模様として、人間の目が視認することが難しくなるのではないかと考えられる。)また、更に、凹部2bの底面及びテーパーの斜面に金属反射膜3が形成されているので、反射光が分散、散乱し易く、ソーラーセルの濃紫色が全く視認されない。更に、金属反射膜3からの反射光により文字板に高級感を出現することができる。
【0025】
上記した光透過性のプラスチック材料よりなる透過性基板に薄く着色を施すことにより、外観的に見栄えを増すと同時に、ソーラーセルの濃紫色を更に見え難くすることができる。
【0026】
ここで上記した時計用文字板の製造方法について簡単に説明する。先ず、透過性プラスチック基板からなる文字板ブランクを形成する。この場合、予め文字板の凹部底面に対応する金型の凸部を鏡面に仕上げておく。そして射出成形によりブランクを成形する。または、プレス成形で凹凸部を形成する方法もある。この工程において、凹凸部は金型で形成した凹凸部がブランクに転写されて形成される。次に、ブランクの凹凸部のある全面に反射膜を形成する。これは金属の蒸着による場合は、光が透過しない程度の厚み(概ね1000Å程度)に形成する。
塗装方法では、塗装膜を光が透過しない程度の厚みに施して反射膜を形成しても良い。次に、透過性基板が露出するまで凸部上面を研磨して凸部の反射膜を除去し、平滑面にする。
【0027】
以上ソーラーセル用の時計用文字板について説明してが、本発明は、エレクトロルミネッセンス等のバックライトを文字板の下面側に配設したバックライト付き時計用文字板についても同様に適用できる。光の透過部分が全く見えないため、その下に配設したエレクトロルミネッセンスも全く見えず、しかも、光の透過部分を大きくすることができる。従って多くの光量を取り出すことができて、一層明るく照明することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の実施の形態に係わる時計用文字板の要部平面図である。
【図2】図2(a)は、図1のA−A線断面図、図2(b)は図2(a)の部分拡大断面図である。
【図3】従来の時計用文字板の要部断面図である。
【図4】図3の時計用文字板の要部斜視図である。
【図5】従来の他の時計用文字板の要部断面図である。
【図6】従来の更に他の時計用文字板の要部断面図である。
【符号の説明】
【0029】
1 時計用文字板
2 透過性基板
2a 下面
2b 凹部
2c 凸部
2d 平滑面
2e 上面
3 反射膜
d 平滑面の円の直径
h 凸部の高さ
α 斜面角度


【特許請求の範囲】
【請求項1】
透過性基板の下面に複数の凹凸部を設け、該凹部を鏡面に形成して反射膜を設けた時計用文字板において、
前記複数の凸部は縦断面形状が台形形状をなし、該台形のテーパーの斜面は鏡面をなして反射膜を有し、該台形の先端表面は円形なる平滑面をなして透過性を有し、前記複数の円形を正三角形の模様形状になるように分散配置したことを特徴とする時計用文字板。
【請求項2】
前記台形の先端表面の円形なる平滑面の直径は100μmを超えて120μm以下であることを特徴とする請求項1に記載の時計用文字板。
【請求項3】
前記反射膜は、金属蒸着膜、又は塗料膜、又は金属蒸着膜と塗料膜の積層膜であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の時計用文字板。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2008−180730(P2008−180730A)
【公開日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−71544(P2008−71544)
【出願日】平成20年3月19日(2008.3.19)
【分割の表示】特願2002−90078(P2002−90078)の分割
【原出願日】平成14年3月28日(2002.3.28)
【出願人】(000124362)シチズンセイミツ株式会社 (120)
【出願人】(000001960)シチズンホールディングス株式会社 (1,939)