説明

時間治療用剤形

活性物質(例えば、薬物)および界面活性剤を含有する芯物質と、該芯物質の表面上に施した天然または合成ガムを含む遅延放出圧縮コーティングとを含んでなる、時間治療用医薬製剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、治療上有効な量の薬物を含有する時間治療用剤形に関する。本発明はさらに、かかる製剤を調製する方法、およびかかる製剤を利用する治療方法に関する。
【背景技術】
【0002】
医療による生体リズム(時間生物学)の調整は、時間治療と呼ばれている。時間治療では、投与のタイミング、また時にはその量を決定する際に個人の生体リズムを考慮することにより、薬物の所望の効果を最適化しつつ望ましくない効果を最小限に抑える。この新規で発展中の分野の専門家によれば、疾患活動性の生体リズムに投与レベルを同調させることが、高血圧、高コレステロール、狭心症、卒中および虚血性心疾患といった一般的な心血管症状を管理する際に果たす役割は益々大きくなっている。例えばヒトの場合、午前1時には術後死亡が最も発生しやすく、午前2時には消化性潰瘍が悪化し、午前3時には血圧が最低値まで下がり、午前4時には喘息が最も悪化する。起床時には花粉症の苦痛が最も増し、また朝の数時間には、日中に間に合うように血圧が上昇するので、心臓発作または卒中が最も起こりやすい。関節リウマチは1日を通じて改善してくるが、変形性関節症は悪化してくる。アルコールは午後5時前後、すなわちカクテルアワーに、体に対する毒性が最も低くなる。
【0003】
時間治療の初めての適用は1960年代であり、合成コルチコステロイド錠(Medrol, Upjohn)であった。臨床医は、この薬物を朝使用するとより効果的であり、かつ副作用が出にくいことを見出した。時間治療を利用する市販品の別の例は、気管支拡張薬であるUniphyl(登録商標)であり、これはPurdue Frederick製の長時間作用型テオフィリン製剤(1989年にFDAにより認可)である。夜間の喘息症状を抑える場合には、1日1回、夕食時に服用する。Uniphylによって辛い朝の時間帯にテオフィリン血中濃度がピークに達し、肺機能が改善される。
【0004】
また、経口制御放出送達系は十二指腸、空腸および回腸を含む小腸の管全体を通過することも可能であり、それにより、部位特異的送達が望ましい場合に、活性成分を結腸内に直接放出させることができる。これを達成する手段の1つは、活性医薬製剤の芯物質を取り囲むコーティングを提供することにより、該製剤が胃管を通過する間、該製剤の完全性を保持させることである。胃管の高い酸性度と胃管内のタンパク質分解酵素および他の酵素の存在により、消化力の高い環境が生じ、これは何かしらの種類の胃耐性保護(gastro-resistance protection)を持たない医薬製剤を容易に崩壊させる。この崩壊は概して活性物質の持続放出に好ましくない作用を有する。かかるコート医薬製剤により、その錠剤の芯物質に含まれる活性物質の放出速度を遅くするだけでなく、該活性薬物の芯物質の溶出が遅れるように所望の時間その活性成分の放出を遅延させることもできる。遅延放出用のコート医薬送達系の例は、米国特許第4,863,742号(Panozら)および同第5,891,474号(Busettiら)、ならびに欧州特許出願第366 621号、同第572 942号および同第629 398号に見られる。これらの参考文献各々に記載されている遅延放出錠剤では、治療上活性な薬物の芯物質が少なくとも1層、場合によっては数層のコーティング層で覆われており、該コーティング層が、該錠剤芯物質中の活性薬物の患者の系への持続放出に直接的な作用を有する。
【0005】
PCT公報WO02/072033およびWO02/072034(これらの開示内容は参照により本明細書中に含めるものとする)には、活性物質(例えば、薬物)を含有する芯物質と、該芯物質の表面上に施した天然または合成ガムを含む遅延放出圧縮コーティングとを含んでなる、時間治療用医薬製剤が開示されている。
【0006】
当業者には、放出速度および薬物血漿プロフィールが生理的および時間治療的要件と調和するように薬物の送達を調整可能とする経口制御放出送達系を提供することが望ましいと考えられている。
【特許文献1】米国特許第4,863,742号(Panozら)
【特許文献2】米国特許第5,891,474号(Busettiら)
【特許文献3】欧州特許出願第366 621号
【特許文献4】欧州特許出願第572 942号
【特許文献5】欧州特許出願第629 398号
【特許文献6】PCT公報WO02/072033
【特許文献7】PCT公報WO02/072034
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
患者による剤形の経口摂取後、所定の時間に該患者の体内に薬物を放出する経口医薬剤形を提供することが、本発明の目的である。
【0008】
剤形の経口摂取後、所定の時間に患者の胃腸管内に薬物の遅延放出をもたらす経口医薬剤形を提供することが、本発明のさらなる目的である。
【0009】
薬物を含有する芯物質(core)を有し、該芯物質を、剤形を患者に経口投与した後に該剤形からの該薬物の遅延放出をもたらすコーティングで圧縮コーティングした経口医薬剤形を提供することが、本発明のある実施形態のさらなる目的である。
【0010】
剤形を患者に経口投与した場合に薬物の遅延放出をもたらすコーティングで圧縮コーティングした薬物含有芯物質を有する経口医薬剤形を提供することが、本発明のある実施形態のさらなる目的である。
【0011】
多岐にわたる疾患に対して時間特異的な投与を可能とする剤形を提供することが、本発明のある実施形態のさらなる目的である。
【0012】
典型的には概日リズムに応じて早朝に徴候が現れやすい関節炎、高血圧、または喘息に対して時間特異的な投与を可能とする剤形を提供することが、本発明のある実施形態のさらなる目的である。
【0013】
剤形からの薬物の遅延放出をもたらし、その後該剤形が胃腸管を移動する際には該薬物の持続放出をもたらす剤形を提供することが、本発明のある実施形態のさらなる目的である。
【0014】
剤形からの同一のまたは異なる薬物の遅延放出をもたらす圧縮コート芯物質をさらにコーティングする薬物の即時放出層を有する圧縮コート剤形を提供することが、本発明のある実施形態のさらなる目的である。該芯物質は、その後該剤形が胃腸管を移動する際に該薬物の持続放出をもたらすものであってもよい。
【0015】
薬物を部位特異的に(例えば、結腸へ)送達する経口剤形を提供することが、本発明のある実施形態のさらなる目的である。
【0016】
薬物をプログラム放出する経口剤形を開発することが、本発明のある実施形態のさらなる目的である。
【0017】
薬物をパルス放出(pulsatile release)する経口剤形を開発することが、本発明のある実施形態のさらなる目的である。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記の本発明の目的に従い、本発明は、1つには、治療上有効な量の薬物、製薬上許容しうる界面活性剤、および他の任意の製薬上許容しうる賦形剤を含む芯物質と、該芯物質上に施した圧縮コーティング材料とを含んでなる経口剤形であって、該圧縮コーティングはその表面上に圧縮コーティングした1種以上の天然または合成ガムを含む遅延放出材料を有し、それにより該剤形の哺乳動物(例えば、ヒト患者)への経口投与後の所望の時間、該剤形からの該薬物の放出が遅延する、上記経口剤形を対象とする。
【0019】
ある好適な実施形態では、圧縮コーティングは、キサンタンガム、ローカストビーンガム、および製薬上許容しうる糖類(例えば、単糖類、二糖類、多価アルコール、またはこれらのいずれかの組み合わせ)の混合物(例えば、マトリクス)を含む。ある好適な実施形態では、芯物質は、薬物および製薬上許容しうる界面活性剤を1種以上の製薬上許容しうる賦形剤と共に含む即時放出芯物質である。
【0020】
本発明はさらに、1つには、治療上有効な量の薬物および製薬上許容しうる界面活性剤を含む芯物質と、該芯物質上に圧縮コーティングした遅延放出材料とを含んでなる遅延放出経口固形剤形であって、該遅延放出材料が1種以上の天然または合成ガムを含み、該圧縮コーティングが該剤形の水溶液への曝露後約2〜約18時間、該剤形からの該薬物の放出を遅延させる、上記遅延放出経口固形剤形を対象とする。
【0021】
本発明はさらに、1つには、治療上有効な量の薬物および製薬上許容しうる界面活性剤を含む芯物質と、該芯物質上に圧縮コーティングした凝集(agglomerated)遅延放出材料とを含んでなる遅延放出経口固形剤形であって、該凝集遅延放出材料が例えばホモ多糖類、ヘテロ多糖類、およびホモ多糖類とヘテロ多糖類との混合物から選択されるガムを製薬上許容しうる賦形剤と共に含み、該圧縮コーティングが該剤形の水溶液への曝露後の所定時間、該剤形からの該薬物の放出を遅延させる、上記遅延放出経口固形剤形を対象とする。
【0022】
本発明はさらに、1つには、治療上有効な量の薬物、製薬上許容しうる界面活性剤および崩壊剤を含む芯物質と、該芯物質上に圧縮コーティングした遅延放出材料とを含んでなる遅延放出経口固形剤形であって、該遅延放出材料が1種以上の天然または合成ガムを含み、該圧縮コーティングが該剤形の水溶液への曝露後の所定時間、該剤形からの該薬物の放出を遅延させるものであり、該所定期間後1時間以内に該水溶液中に該薬物の少なくとも約50%を放出させるのに有効な量で該芯物質中に該崩壊剤および該界面活性剤が含まれる、上記遅延放出経口固形剤形を対象とする。
【0023】
本発明はさらに、1つには、治療上有効な量の薬物および製薬上許容しうる界面活性剤を含む錠剤芯物質と、該芯物質上に圧縮コーティングした遅延放出材料とを含んでなる遅延放出経口固形錠剤であって、該遅延放出材料が1種以上の天然または合成ガムを含み、該ガムが重量にして該錠剤の約6.5パーセント〜約83パーセントを占めており、該圧縮コーティングが該剤形の水溶液への曝露後約2〜約18時間、該剤形からの該薬物の放出を遅延させる、上記遅延放出経口固形錠剤を対象とする。
【0024】
本発明はさらに、約0.01 mg〜約40 mgの薬物および製薬上許容しうる界面活性剤を含む芯物質と、該芯物質上に圧縮コーティングした遅延放出材料とを含んでなる、低用量の薬物のための時間治療用遅延放出経口固形剤形であって、該遅延放出材料が1種以上の天然または合成ガムを含み、該圧縮コーティングが経口固形剤形の約75〜約94重量パーセントを占めており、かつ該芯物質と該圧縮コーティング中のガムとの比率が重量にして約1:0.37〜約1:5であり、該圧縮コーティングが該剤形の水溶液への曝露後約2〜約18時間、該剤形からの該薬物の放出を遅延させる、上記遅延放出経口固形剤形を対象とする。
【0025】
本発明はさらに、1つには、約41 mg〜約300 mgの薬物を含む芯物質と、該芯物質上に圧縮コーティングした遅延放出材料とを含んでなる、比較的高用量の薬物のための時間治療用遅延放出経口固形剤形であって、該遅延放出材料が1種以上の天然または合成ガムを含み、該芯物質と該圧縮コーティング中のガムとの比率が重量にして約1:0.3〜約1:3であり、該経口固形剤形の総重量が約500 mg〜約1500 mgであり、該圧縮コーティングが該剤形の水溶液への曝露後約2〜約18時間、該剤形からの該薬物の放出を遅延させる、上記遅延放出経口固形剤形を対象とする。
【0026】
本発明はさらに、1つには、薬物の時間治療用経口固形剤形を調製する方法であって、治療上有効な量の薬物、製薬上許容しうる界面活性剤、および芯物質の重量にして約5〜約20%の崩壊剤を含む芯物質を調製すること、1種以上の天然または合成ガムを含む遅延放出材料の造粒物を調製すること、該造粒物を該芯物質上に圧縮コーティングすることを含み、ここで該圧縮コーティングは該剤形の水溶液への曝露後約2〜約18時間が経過するまで該剤形からの該薬物の放出を遅延させるものである、上記方法を対象とする。ある好適な実施形態では、該方法は、 1種以上の天然または合成ガムを少なくとも1種の製薬上許容しうる賦形剤と共に湿式造粒することにより遅延放出材料の造粒物を調製し、その後得られた該造粒物を乾燥させることにより遅延放出材料の凝集粒子を得ることをさらに含む。ある実施形態では、該方法は、圧縮コーティングステップの前に薬物、製薬上許容しうる界面活性剤、崩壊剤、および製薬上許容しうる不活性希釈剤を造粒することをさらに含む。
【0027】
ある実施形態では、界面活性剤は、剤形の水溶液への曝露時に該剤形からの薬物の放出を促進するのに有効な量とする。ある好適な実施形態では、界面活性剤を、剤形の水溶液への曝露時に該剤形芯物質からの薬物の即時放出を促進する量で含める。例えば、ある実施形態では、剤形が水溶液に曝露されると、該剤形のコーティングは該水溶液への芯物質の曝露を遅延させることによって該剤形からの薬物の放出を遅延させ、また水溶液を芯物質に曝露すると、該芯物質に含まれる界面活性剤は(例えば、該水溶液中への薬物の溶解を促すことにより)該芯物質からの薬物の放出を促す。
【0028】
ある好適な実施形態では、剤形の芯物質に界面活性剤を含めることにより、初期放出後4時間未満、好ましくは初期放出後3時間未満、より好ましくは初期放出後2時間未満、最も好ましくは初期放出後1時間未満での、該剤形からの薬物の完全放出を促進する。
【0029】
ある好適な実施形態では、本発明の剤形の芯物質に使用するための界面活性剤としては、製薬上許容しうるアニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性(両親媒性/両染性)界面活性剤、および非イオン界面活性剤が挙げられる。適切な製薬上許容しうるアニオン界面活性剤としては、例えば、一価アルキルカルボキシレート、アシルラクチレート、アルキルエーテルカルボキシレート、N-アシルサルコシネート、多価アルキルカーボネート、N-アシルグルタメート、脂肪酸-ポリペプチド縮合物、硫酸エステル、アルキルスルフェート(例えば、ラウリル硫酸ナトリウム(SLS))、エトキシル化アルキルスルフェート、エステル結合スルホネート(例えば、ドキュセートナトリウムまたはコハク酸ジオクチルナトリウム(DSS))、αオレフィンスルホネート、およびリン酸化エトキシル化アルコール(phosphated ethoxylated alcohols)が挙げられる。
【0030】
適切な製薬上許容しうるカチオン界面活性剤としては、例えば、モノアルキル第4級アンモニウム塩、ジアルキル第4級アンモニウム化合物、アミドアミン、およびアミンイミドが挙げられる。
【0031】
適切な製薬上許容しうる両性(両親媒性/両染性)界面活性剤としては、例えば、N-置換アルキルアミド、N-アルキルベタイン、スルホベタイン、およびN-アルキルβ-アミノプロピオネート(N-alkyl β-aminoproprionates)が挙げられる。
【0032】
本発明と併せて用いるための他の適切な界面活性剤としては、エステルまたはエーテルとしてのポリエチレングリコールが挙げられる。例としては、ポリエトキシル化ヒマシ油、ポリエトキシル化硬化ヒマシ油、ヒマシ油由来のポリエトキシル化脂肪酸または硬化ヒマシ油由来のポリエトキシル化脂肪酸が挙げられる。使用できる市販の界面活性剤は、Cremophor、Myrj、Polyoxyl 40 stearate、Emerest 2675、Lipal 395およびPEG 3350という商品名で知られている。
【0033】
ある好適な実施形態では、前述の界面活性剤の組み合わせを本発明の剤形の芯物質に使用してもよい。
【0034】
ある実施形態では、界面活性剤はラウリル硫酸ナトリウムではない。ある実施形態では、1種の界面活性剤が芯物質に含まれる場合、該界面活性剤はラウリル硫酸ナトリウムではない。
【0035】
ある好適な実施形態では、芯物質中の界面活性剤は、剤形の約1〜約20重量%の量で含まれる。
【0036】
ある好適な実施形態では、崩壊剤は、 遅延放出時間の終了後1時間以内に水溶液中に薬物の少なくとも約50%を放出させるのに有効な量で芯物質中に組み入れられたスーパー崩壊剤(superdisintegrant)である。
【0037】
本発明はさらに、本明細書中に開示した製剤を利用した治療方法を対象とする。
【0038】
ある実施形態では、前記経口剤形は、例えばヒト被験体または患者への経口投与後約2〜約18時間のラグタイム(lag time)(薬物の遅延放出)をもたらす。
【0039】
ある好適な実施形態では、前記経口剤形は、その圧縮コーティングによってもたらされるラグタイムの終了後、約1時間以内に芯物質に含有されている薬物の少なくとも約50%、好ましくは約1または2時間以内に芯物質に含有されている薬物の少なくとも約80%を放出する。
【0040】
ある実施形態では、本発明の経口剤形は、例えばヒト患者への経口投与後約5〜約8時間のラグタイムをもたらし、約8〜約12時間での完全放出がこれに伴う。
【0041】
ある好適な実施形態では、前記経口剤形は、該剤形の経口投与後約6〜約7時間のラグタイムをもたらし、約8〜約9時間での完全放出がこれに伴う。
【0042】
他のある好適な実施形態では、前記経口剤形は、経口投与後約6〜約7時間のラグタイムをもたらし、約7〜約8時間での薬物の完全放出がこれに続く。
【0043】
さらに別の実施形態では、前記製剤は、経口投与後約9〜約12時間のラグタイムをもたらし、約11〜約13時間での完全放出がこれに伴い、好ましくは剤形の経口投与後約10〜約11時間のラグタイムをもたらし、約11〜約12時間での完全放出がこれに続く。
【0044】
さらに別の実施形態では、前記製剤は、例えば約3〜12時間のラグタイムをもたらし、続いて約24時間以内での、または(二者択一的に)24時間後での薬物の剤形からの完全放出がこれに伴う。
【0045】
「遅延放出」とは、本発明の目的上、例えば、薬物が患者による錠剤の摂取後すぐには該患者の血流中に放出されず、特定の時間が経過して初めて(例えば、4時間〜9時間遅れで)放出されるように、該薬物の放出が遅延すること、および一定期間が経過するまで剤形中に含有されている薬物がその製剤から実質的に放出されないことを意味する。本発明の目的上、遅延放出は、「時限遅延(timed delay)」もしくはラグタイム後の薬物の放出、またはプログラム放出と同義である。
【0046】
「持続放出」とは、本発明の目的上、一旦薬物が製剤から放出され始めると、該薬物が、この医薬の治療上有益な血中レベル(ただし毒性レベル未満)が薬物放出の開始時から長時間にわたって維持されるような制御速度で、例えば、ラグタイム後の薬物放出の開始以降一定時間(例えば、約4〜約24時間)にわたる放出をもたらすような制御速度で放出されることを意味する。
【0047】
「Cmax」という用語は、本発明の目的上、本発明の剤形の単回投与後に達成される医薬の最大血漿中濃度を意味する。
【0048】
「Tmax」という用語は、本発明の目的上、剤形を投与してから医薬のCmaxが達成される時点までの経過時間を意味する。
【0049】
本発明の目的上「平均」という用語は、薬物動態学的な値(例えば、Tmax)を定義するために使用する場合、患者集団全体の算術平均値を表す。「環境流体」という用語は、本発明の目的上、例えば、水溶液(例えば、in vitro溶解槽(dissolution bath))または胃腸液を包含するものとする。
本明細書中で使用するUSP試験装置III型(USP apparatus type III)という用語は、例えば米国薬局方XXV(2002)に記載されている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0050】
本発明を使用することにより薬学的に活性な物質の時間遅延放出を達成することができ、またある実施形態において、所定時間にわたって送達されることが望ましい薬学的に活性な物質のための制御放出医薬製剤を提供することができる。本発明の製剤は薬学的に活性な物質の時間遅延放出をもたらすので、時間遅延による医薬物質の送達機構を介して治療することが望ましい症状の治療に役立つ場合がある。例えば、本発明の製剤は、朝型の病状、すなわち、関節炎、高血圧および喘息などの、一般に患者が朝目を覚ました時に深刻化する徴候を示す症状、疾患、その他の疾病の治療に役立つ。これらの症状を治療するには、患者が目覚める頃に薬物が送達されるように、または好ましくは治療効果が得られる程度まで剤形から薬物が送達される(そして胃腸管から吸収される)ように、該患者に就寝前に本発明の時間遅延放出製剤を投与し、それによって朝型の病状を軽減するとよい。
【0051】
本発明の製剤は、活性物質(例えば、薬物)を含む芯物質と、該芯物質表面上の1種以上の天然または合成の製薬上許容しうるガムを含む圧縮コーティングとを含んでなる。ある特に好適な実施形態では、圧縮コーティングは、ヘテロ多糖類ガム(例えば、キサンタンガム)とホモ多糖類ガム(例えば、ローカストビーンガム)との組み合わせを、製薬上許容しうる糖類(例えば、乳糖、ブドウ糖、マンニトールなど)と共に含む。ある好適な実施形態では、ガムを(場合によっては糖類と共に)湿式造粒することにより、例えばキサンタンガム、ローカストビーンガムおよびブドウ糖の混合物を含む凝集粒子を形成する。
【0052】
本発明の圧縮コーティングの目的は活性物質の放出を所定時間(当分野ではこの時間を「ラグタイム」と呼ぶ)遅延させることである。ある実施形態では、活性物質の放出は、剤形の投与後約2〜約18時間遅延する、すなわち、それだけのラグタイムがある。
【0053】
活性物質を含む芯物質は、該活性物質の即時放出用または持続放出用に製剤化することができる。活性物質の即時放出および持続放出のための処方はいずれも当業者に周知である。本発明のある実施形態により、芯物質に界面活性剤を含めることで活性物質の即時放出が改善されることが見出された。
【0054】
本発明では、薬物を含む芯物質を即時放出用に製剤化する場合、該芯物質は当業者に公知のいずれの適切な打錠技術によっても調製することができる。例えば、薬学的に活性な物質を賦形剤と混合し、これを通常の錠剤圧縮機を使用して、または通常の湿式造粒法を利用して、錠剤芯物質としてもよい。本発明のある好適な実施形態によれば、芯物質の成分をV-ブレンダーで乾式混合し、回転式錠剤圧縮機で圧縮して錠剤芯物質とする。あるいは、ある実施形態では、芯物質の成分を湿式造粒し、乾燥させた後に圧縮して錠剤芯物質とすることができる。好ましくは、芯物質を、それらが後の加工中(例えば、コーティング加工中)に欠けたりバラバラに壊れたりしない程度の硬度まで圧縮すべきである。ある実施形態では、芯物質を、50 mgの重量で2〜8、好ましくは4〜8、最も好ましくは4〜5 kPの硬度となるまで圧縮することができる。また、錠剤芯物質のサイズは、1/8インチ〜5/8インチ、好ましくは1/8インチ〜1/2インチ、より好ましくは3/16インチ〜1/4インチの範囲とすべきである。
【0055】
芯物質を湿式造粒ステップを行わずに製造し、最終混合物を圧縮して錠剤芯物質とするある実施形態では、該芯物質中の賦形剤の全部または一部が既製の直接圧縮希釈剤を含んでいてもよい。かかる既製の直接圧縮希釈剤の例としては、Emcocel(登録商標)(微結晶性セルロース、米国国民医薬品集(N.F.))およびEmdex(登録商標)(デキストレート、米国国民医薬品集)(いずれもJRS Pharma LP, Patterson, New York から市販されている)、ならびにTab-Fine(登録商標)(ショ糖、果糖およびブドウ糖を含む複数の直接圧縮糖)が挙げられる。他の直接圧縮希釈剤としては、無水乳糖(乳糖、米国国民医薬品集、無水直接打錠物)(Sheffield Chemical, Union, N.J. 07083);Elcems(登録商標) G-250 (粉末セルロース、米国国民医薬品集)(Degussa, D-600 Frankfurt (Main) Germany);Fast-Flo Lactose(登録商標)(乳糖、米国国民医薬品集、噴霧乾燥物)(Foremost Whey Products, Banaboo, WI 53913);Maltrin(登録商標)(凝集マルトデキストリン)(Grain Processing Corp., Muscatine, IA 52761);Neosorb 60(登録商標)(ソルビトール、米国国民医薬品集、直接圧縮物)(Roquet Corp., 645 5th Ave., New York, N.Y. 10022);Nu-Tab(登録商標)(圧縮糖、米国国民医薬品集)(Ingredient Technology, Inc., Pennsauken, N.J. 08110);Polyplasdone XL(登録商標)(クロスポビドン、米国国民医薬品集、架橋ポリビニルピロリドン)(GAF Corp., New York, N.Y. 10020);Primojel(登録商標)(デンプングリコール酸ナトリウム、米国国民医薬品集、カルボキシメチルデンプン)(Generichem Corp., Little Falls, N.J. 07424);Solka Floc(登録商標)(セルロースフロック);Spray-dried lactose(登録商標)(乳糖、米国国民医薬品集、噴霧乾燥物)( Foremost Whey Products, Baraboo, WI 53913およびDMV Corp., Vehgel, Holland);ならびにSta-Rx 1500(登録商標)(Starch 1500)(α化デンプン、米国国民医薬品集、圧縮性)(Colorcon, Inc., West Point, PA 19486)が挙げられる。本発明のある実施形態では、本発明の芯物質に使用する直接圧縮可能な不活性希釈剤は、1996年12月17日に発行された米国特許第5,585,115号(発明の名称は「圧縮性を改良した医薬用賦形剤(PHARMACEUTICAL EXCIPIENT HAVING IMPROVED COMPRESSIBILITY)」であり、その全内容は参照により本明細書中に含まれるものとする)に開示されている増強(augmented)微結晶性セルロースである。この特許文献に記載されている増強微結晶性セルロースは、JRS PharmaからProsolv(登録商標)という商品名で市販されている。
【0056】
あるいは、ある実施形態では、活性物質を含む芯物質を、該活性物質の持続放出用の持続放出芯物質として製剤化することができる。活性物質を含む芯物質を持続放出用に製剤化する場合、該芯物質を当分野で公知の数多くの方法で調製することができる。例えば、活性物質を持続放出マトリクス中に組み入れてからこれを圧縮して芯物質とするか、または持続放出材料を即時放出芯物質上にコーティングすることにより、該活性物質の持続放出をもたらすことができるし、あるいは圧縮した持続放出マトリクスと芯物質上の持続放出コーティングとの組み合わせを使用することもできる。さらに、活性物質を含む球状物質、または持続放出コーティングを有しかつ活性物質を含む多粒子(multiparticulates)を、任意の結合剤および他の賦形剤と共に圧縮して持続放出芯物質としてもよい。
【0057】
本発明の芯物質が持続放出マトリクスを含む場合、該マトリクス製剤は一般に、当分野で周知の標準的手法を用いて調製する。典型的には、それらは、持続放出材料、希釈剤、活性物質、および任意の他の賦形剤を乾式混合し、その後この混合物を適当な造粒物が得られるまで造粒することによって調製する。造粒は当分野で公知の方法により行う。湿式造粒の場合は通常、湿潤顆粒を流動層乾燥機で乾燥させて、篩にかけてから粉砕して適当なサイズとする。滑剤をこの乾燥させた造粒物と混合することにより、最終的な芯物質製剤を得る。
【0058】
本発明者らの米国特許第4,994,276号、同第5,128,143号、同第5,135,757号、同第5,455,046号、同第5,512,297号、同第5,554,387号、同第5,667,801号、同第5,846,563号、同第5,773,025号、同第6,048,548号、同第5,662,933号、同第5,958,456号、同第5,472,711号、同第5,670,168号、および同第6,039,980号(これらは全て、参照により本明細書中に含めるものとする)において、本発明者らは、相乗作用性ヘテロ分散多糖類(例えば、キサンタンガムなどのヘテロ多糖類)といったゲル化剤からなり、好ましくは該ヘテロ多糖類と架橋しうる多糖類ガム(例えば、ローカストビーンガム)を共に含む制御放出賦形剤は、薬物および滑剤粉末の添加後の直接圧縮、通常の湿式造粒法、またはこれら2つを組み合わせて用いることにより経口固形剤形に加工しうることを報告した。これらの系(制御放出賦形剤)は、本発明の譲受人であるPenwest Pharmaceuticals Co., Patterson, N.Y.からTIMERx(登録商標)という商品名で市販されている。
芯物質が活性物質の持続放出をもたらす本発明のある実施形態では、該芯物質は本発明者らの上記特許に開示されているような持続放出マトリクスを含む。例えば、本発明のある実施形態では、芯物質は、活性物質に加えて、ヘテロ多糖類ガムおよび環境流体に曝露された場合に該ヘテロ多糖類ガムを架橋しうるホモ多糖類ガムを含むゲル化剤を含む持続放出賦形剤、ならびに不活性な医薬用希釈剤を含む。好ましくは、ヘテロ多糖類ガムとホモ多糖類ガムとの比率は約1:3〜約3:1であり、また活性物質とゲル化剤との比率は好ましくは約1:3〜約1:8である。得られる芯物質は、好ましくは治療上有効な血中レベルの活性物質を少なくとも約4時間、ある好適な実施形態では約24時間提供する。ある好適な実施形態では、持続放出賦形剤は後述するような有効量の製薬上許容しうるイオン性(ionizable)ゲル強度増強剤をさらに含むため、芯物質が環境流体に曝露された場合には活性物質の持続放出がもたらされる。持続放出賦形剤(イオン性ゲル強度増強剤を含んでいてもいなくてもよい)を、親水性マトリクスを破壊することなくガムの水和を遅くする疎水性材料を組み入れることによってさらに修飾してもよい。さらに、ある実施形態では、持続放出賦形剤を、芯物質に製薬上許容しうる界面活性剤または湿潤剤を含めることにより、活性物質の二相性または多相性放出プロフィールを提供するよう修飾することができる。あるいは、持続放出賦形剤は前述のガムのうち1種のみを含む。さらに別の実施形態では、持続放出賦形剤は別の製薬上許容しうるガムを含む。
【0059】
上記のものに加えて、他の持続放出材料を本発明の製剤の持続放出マトリクス芯物質に使用してもよい。本発明の持続放出マトリクスに含めうる適切な持続放出材料の非限定的リストには、持続放出ポリマーガム、アクリル樹脂、タンパク質由来材料、ワックス、シェラック、ならびに硬化ヒマシ油、硬化植物油などの油といった親水性および/または疎水性材料が含まれる。好適な持続放出ポリマーとしては、エチルセルロースなどのアルキルセルロース、アクリル酸およびメタクリル酸のポリマーおよびコポリマー、ならびにセルロースエーテル、特にヒドロキシアルキルセルロース(特に、ヒドロキシプロピルメチルセルロース)およびカルボキシアルキルセルロースが挙げられる。好適なワックスとしては、例えば、天然および合成ワックス、脂肪酸、脂肪アルコール、ならびにこれらの混合物(例えば、蜜蝋、カルナバワックス、ステアリン酸およびステアリルアルコール)が挙げられる。ある実施形態では、上記持続放出材料のいずれかの混合物を芯物質のマトリクスに使用する。とは言え、活性物質を持続放出させうる製薬上許容しうる疎水性または親水性持続放出材料であればいずれを本発明に従って使用してもよい。
【0060】
あるいは、本発明のある実施形態では、即時放出芯物質(前述)を、該即時放出芯物質からの活性物質の持続放出をもたらすのに十分な量の疎水性コーティングと共に使用することにより、該活性物質の持続放出をもたらすよう芯物質を製剤化してもよい。当業者に公知の方法および技術を利用して、疎水性コーティングを芯物質に施してもよい。適切なコーティング装置の例としては、流動層コーティング機、パンコーティング機などが挙げられる。かかる疎水性コーティングに使用しうる疎水性材料の例としては、例えば、アルキルセルロース(例えば、エチルセルロース)、アクリル酸エステルとメタクリル酸エステルとのコポリマー、ワックス、シェラック、ゼイン、硬化植物油、それらの混合物などが挙げられる。
【0061】
また、芯物質を、持続放出マトリクスと持続放出コーティングとの組み合わせを使用することにより活性物質の持続放出用に製剤化してもよい。持続放出芯物質(例えば、持続放出マトリクス、持続放出コーティング、またはそれらの組み合わせ)および即時放出芯物質は、適切な量の追加の賦形剤、例えば、製薬分野で常用される滑剤、結合剤、造粒助剤、希釈剤、着色剤、香味剤および流動促進剤を含有していてもよい。
【0062】
芯物質を製剤化する際に使用しうる製薬上許容しうる希釈剤および賦形剤の具体例は、Handbook of Pharmaceutical Excipients, American Pharmaceutical Association (1986)(参照により本明細書中に含めるものとする)に記載されている。
【0063】
本発明の芯物質、特に即時放出芯物質は、剤形からの活性物質の放出に寄与する界面活性剤をさらに含む。本発明で使用するための界面活性剤としては、製薬上許容しうるアニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性(両親媒性/両染性)界面活性剤、および非イオン界面活性剤が挙げられる。適切な製薬上許容しうるアニオン界面活性剤としては、例えば、一価アルキルカルボキシレート、アシルラクチレート、アルキルエーテルカルボキシレート、N-アシルサルコシネート、多価アルキルカーボネート、N-アシルグルタメート、脂肪酸-ポリペプチド縮合物、硫酸エステル、アルキルスルフェート(例えば、ラウリル硫酸ナトリウム(SLS))、エトキシル化アルキルスルフェート、エステル結合スルホネート(例えば、ドキュセートナトリウムまたはコハク酸ジオクチルナトリウム(DSS))、αオレフィンスルホネート、およびリン酸化エトキシル化アルコールが挙げられる。
【0064】
適切な製薬上許容しうるカチオン界面活性剤としては、例えば、モノアルキル第4級アンモニウム塩、ジアルキル第4級アンモニウム化合物、アミドアミン、およびアミンイミドが挙げられる。
【0065】
適切な製薬上許容しうる両性(両親媒性/両染性)界面活性剤としては、例えば、N-置換アルキルアミド、N-アルキルベタイン、スルホベタイン、およびN-アルキルβ-アミノプロピオネートが挙げられる。
【0066】
本発明と併せて用いるための他の適切な界面活性剤としては、ポリエチレングリコール、そのエステルまたはエーテルが挙げられる。例としては、ポリエトキシル化ヒマシ油、ポリエトキシル化硬化ヒマシ油、ヒマシ油由来のポリエトキシル化脂肪酸または硬化ヒマシ油由来のポリエトキシル化脂肪酸が挙げられる。使用しうる市販の界面活性剤は、Cremophor、Myrj、Polyoxyl 40 stearate、Emerest 2675、Lipal 395およびPEG 3350という商品名で知られている。
【0067】
ある好適な実施形態では、前述の界面活性剤のある組み合わせを本発明の剤形の芯物質に使用する。ある好適な実施形態では、界面活性剤として2種以上の界面活性剤の組み合わせ(例えば、PEGとラウリル硫酸ナトリウム)が含まれる。治療上活性な薬物を即時放出用に製剤化するある実施形態では、界面活性剤が存在しない場合、抑制されたプロフィールが見られる場合がある。
【0068】
ある実施形態では、芯物質に含まれる1種以上の界面活性剤は、該芯物質の約5〜約50重量パーセント、好ましくは約10〜約30重量パーセントの量である。錠剤全体の重量(例えば、芯物質+圧縮コーティング)に換算すると、芯物質中の1種以上の界面活性剤は、該錠剤(製剤全体)の約1〜約20重量パーセント、好ましくは約2〜約10重量パーセントの量で含まれている。
【0069】
ある好適な実施形態では、経口剤形は、好ましくは芯物質中に組み入れられた1種以上の崩壊剤を含む。かかる物質が芯物質に含まれる場合、(圧縮コーティングによって引き起こされる最初の遅延後の)薬物の放出速度は、即時パルス効果である。ある実施形態では、崩壊剤が存在しない場合、抑制されたプロフィールが得られる場合がある。適切な崩壊剤は当業者に公知であり、例えばデンプングリコール酸ナトリウム(JRS Pharma LPからExplotab(登録商標)として市販されている)が挙げられる。
【0070】
崩壊のメカニズムは、崩壊剤の膨潤、ウィッキング(wicking)、および変形に基づいている。圧縮した錠剤を水溶液中に入れると、水が速やかに吸収され、崩壊剤が膨潤して該錠剤を速やかに崩壊させる。治療活性薬物を即時放出用に製剤化するある実施形態では、崩壊剤が錠剤の芯物質中に存在する場合、活性物質の放出速度は即時パルス効果である。治療活性薬物を即時放出用に製剤化するある実施形態では、崩壊剤が存在しない場合、抑制されたプロフィールが得られる場合がある。
【0071】
本発明で使用するためのかかる崩壊剤の例としては、例えば、デンプン、ビーガム(veegum)、クロスポビドン、セルロース、カオリン、微結晶性セルロース(例えば、Avicel PH101およびPH102)、架橋ポリビニルピロリドン(例えば、Kollidon CL)、およびそれらの混合物が挙げられる。ある好適な実施形態では、崩壊剤は、例えば、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、架橋カルボキシメチルセルロース、デンプングリコール酸ナトリウム、およびそれらの混合物といったスーパー崩壊剤である。スーパー崩壊剤は通常の崩壊剤よりも低濃度で組み入れて含水率を高めることができる。本発明に使用するための幾つかのブランド名が付されたスーパー崩壊剤としては、Ac-Di-Sol(登録商標)、Primojel(登録商標)、Explotab(登録商標)、およびCrospovidone(登録商標)が挙げられる。
【0072】
ある実施形態では、本発明の芯物質は、崩壊剤に加えて、またはその代替物として、ウィッキング剤(wicking agent)を含む。崩壊剤として既に記載した材料(例えば、微結晶性セルロース)などのウィッキング剤を必要に応じて含めることにより水の吸収速度を上げてもよい。ウィッキング剤として作用するのに適した他の材料としては、限定するものではないが、コロイド状二酸化ケイ素、カオリン、二酸化チタン、フュームド二酸化ケイ素、アルミナ、ナイアシンアミド、ラウリル硫酸ナトリウム、低分子量ポリビニルピロリドン、m-ピロール(m-pyrol)、ベントナイト、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、ポリエステル、ポリエチレン、それらの混合物などが挙げられる。
【0073】
ある実施形態では、芯物質中の1種以上の崩壊剤は、該芯物質の約5〜約20重量パーセント、好ましくは約6〜約10重量パーセント、最も好ましくは約8重量パーセントの量で含まれる。錠剤全体の重量(例えば、芯物質+圧縮コーティング)に換算すると、芯物質中の1種以上の崩壊剤は、該錠剤(製剤全体)の約0.1〜約5重量パーセント、好ましくは約0.3〜約2重量パーセントの量で含まれる。
【0074】
本発明によれば、活性薬物を含有する芯物質は、圧縮コーティングに完全に取り囲まれているか、または実質的に取り囲まれている。圧縮コーティングは製薬上活性な物質の放出を所定時間遅延させるものであることが好ましく、その時間はコーティングの処方とコーティング層の厚さによって決まる。活性成分の放出に適当な時間は製剤を調製する前に決定することが可能であり、また適切な厚さと組成を有するコーティングを施すことにより、活性成分放出前の所望の時間遅延と該時間遅延後の該活性成分の所望の放出速度が得られるよう製剤を設計することができる。
【0075】
好ましくは、圧縮コーティングはゲル化剤として機能しうる天然または合成ガムを含み、圧縮コート錠が環境流体(例えば、水または胃腸液)に曝露された際にはその芯物質をゲルで取り囲むことにより、該圧縮コーティングを通した該環境流体の拡散、薬物の該環境流体中への溶解、および溶解した薬物の該圧縮コート錠を取り囲む流体中への放出を経て薬物を放出させる。
【0076】
ある実施形態では、圧縮コーティングに使用するためのガムとして、例えば限定するものではないが、ヘテロ多糖類(例えばキサンタンガム)、ホモ多糖類(例えばローカストビーンガム)、ガラクタン、マンナン、植物ガム(例えばアルギン酸塩)、カラヤガム、ペクチン、寒天、トラガカント、アカシア、カラギーナン、トラガカント、キトサン、寒天、アルギン酸、他の多糖類ガム(例えば、親水コロイド)、およびこれらのいずれかの混合物が挙げられる。本発明の圧縮コーティングに有用でありうる具体的なガムのさらなる例としては、限定するものではないが、アセンヤクノキ(acacia catechu)、サライグッガル(salai guggal)、インディアンボデラム(indian bodellum)、コパイバガム(copaiba gum)、アギ(asafetida)、カンビガム(cambi gum)、グアナカステ(Enterolobium cyclocarpum)、マスティックガム(mastic gum)、ベンゾインガム(benzoin gum)、サンダラック(sandarac)、ガンビアガム(gambier gum)、ハナモツヤクノキ(butea frondosa)(Flame of Forest Gum)、ミルラ、コンニャクマンナン、グアーガム、ウェランガム、ジェランガム、タラガム、ローカストビーンガム、カラギーナンガム、グルコマンナン、ガラクタンガム、アルギン酸ナトリウム、トラガカント、キトサン、キサンタンガム、脱アセチル化キサンタンガム、ペクチン、ポリペクチン酸ナトリウム、グルテン、カラヤガム、タマリンドガム、ガティガム(ghatti gum)、アカロイド(Accaroid)/マキ(Yacca)/ユーカリノキ(Red)ガム、ダンマルガム(dammar gum)、ジュニパーガム(juniper gum)、エステルガム、イピルイピル種子ガム(ipil-ipil seed gum)、タルハガム(gum talha)(アカシアセヤル(acacia seyal))、および以下の属:アカシア、アクティニディア(actinidia)、アプテニア(aptenia)、カルボブロトス(carbobrotus)、チコリウム(chickorium)、ククミス(cucumis)、グリシン(glycine)、ハイビスカス(hibiscus)、ホルデウム(hordeum)、レツカ(letuca)、リコパーシコン(lycopersicon)、マルス(malus)、メディカゴ(medicago)、メセンブリアンテマム(mesembryanthemum)、オリザ(oryza)、オアニカム(panicum)、ファラリス(phalaris)、アワガエリ(phleum)、ポリアザス(poliathus)、ポリカルボフィル(polycarbophil)、シダ(sida)、ナス(solanum)、トリフォリウム(trifolium)、トリゴネラ(trigonella)の植物のものを含む培養植物細胞ガム、ドゥシエ種子ガム(Afzelia Africana seed gum)、トレクリア・アフリカナガム(Treculia Africana gum)、デタリウムガム(detarium gum)、カシアガム(cassia gum)、カロブガム(carob gum)、メスキットガム(Prosopis africana gum)、サトイモガム(Colocassia esulenta gum)、ヤマモガシガム(Hakea gibbosa gum)、カヤガム(khaya gum)、スクレログルカン(scleroglucan)、ゼア(zea)、これらのいずれかの混合物などが挙げられる。
【0077】
ある特に好適な実施形態では、圧縮コーティングは、キサンタンガムなどのヘテロ多糖類、ローカストビーンガムなどのホモ多糖類、または1種以上のヘテロ多糖類と1種以上のホモ多糖類との混合物を含んでなる。本発明者らの米国特許第4,994,276号、同第5,128,143号、および同第5,135,757号で持続放出錠剤マトリクスとして以前に開示したヘテロ分散賦形剤を本発明の圧縮コーティングに使用してもよい。例えば、本発明のある実施形態では、相乗作用を示すヘテロおよびホモ多糖類の両方からなるゲル化剤、例えば2種以上の多糖類ガムの組み合わせであって、一方のガムのみについて予想されるよりも粘度が高くかつ水和が速く、得られるゲルがより速く形成されかつより剛性となるものを、本発明の圧縮コーティングに使用してもよい。
【0078】
「ヘテロ多糖類」という用語は、本発明で使用する場合は2種類以上の糖単位を含有する水溶性多糖類と定義され、該ヘテロ多糖類は分岐またはらせん構造を持ち、また優れた吸水性(water-wicking properties)と非常に高い増粘性を持つ。
【0079】
特に好適なヘテロ多糖類は、高分子量(>106)ヘテロ多糖類のキサンタンガムである。他の好適なヘテロ多糖類としては、キサンタンガムの誘導体、例えば脱アシル化キサンタンガム、カルボキシメチルエーテル、およびプロピレングリコールエステルが挙げられる。
【0080】
本発明で使用するホモ多糖類材料でヘテロ多糖類と架橋しうるものとしては、ガラクトマンナン、すなわち、マンノースとガラクトースのみからなる多糖類が挙げられる。ガラクトマンナンとヘテロ多糖類との相互作用について考えられるメカニズムは、ヘテロ多糖類のらせん領域とガラクトマンナンの非置換マンノース領域との相互作用を含む。非置換マンノース領域の占める率が高いガラクトマンナンほど、ヘテロ多糖類と相互作用しやすいことが見出されている。従って、マンノースとガラクトースとの比率が高いローカストビーンガムは、グアーおよびヒドロキシプロピルグアーなどの他のガラクトマンナンと比べて特に好ましい。
【0081】
ある好適な実施形態では、ヘテロ多糖類は圧縮コーティングの約1〜約50重量パーセントを占め、ホモ多糖類材料は約50〜約1重量パーセントを占める。ある好適な実施形態では、ヘテロ多糖類とホモ多糖類材料との比率は約1:3〜3:1、好ましくは約2:3〜3:2、または1:1である。
【0082】
ある好適な実施形態では、圧縮コーティングは、約5〜約70重量パーセント以上の親水性材料(例えば、ガム)を含む。本発明のある好適な実施形態では、圧縮コーティング中のガムの割合が高いほど、活性物質の放出の遅延、すなわち「ラグタイム」が長くなる。
【0083】
ある実施形態では、圧縮コーティング中のガムの割合は活性物質の遅延放出に対応しているものの、pHには左右されない。例えば、ある好適な実施形態では、圧縮コーティングが約25%未満のガム、好ましくは約5〜約15%のガムを含む場合、その遅延放出は約25%より多いガム(例えば、30、40、または50%のガム)を含む圧縮コーティングよりもpHに左右されにくい。
【0084】
ある好適な実施形態では、圧縮コーティングは、製薬上許容しうる賦形剤、例えば、単糖類、二糖類または多価アルコール、および/またはこれらのいずれかの混合物などの糖類、あるいは微結晶性セルロースまたはデンプンも含む。適切なかかる賦形剤の例としては、ショ糖、ブドウ糖、乳糖、果糖、キシリトール、ソルビトール、マンニトール、デンプン、それらの混合物などが挙げられる。ある実施形態では、乳糖、ブドウ糖、ショ糖、マンニトール、またはそれらの混合物などの可溶性医薬用賦形剤を、圧縮コーティングに使用する材料に含めることが好ましい。ある好適な実施形態では、ガムを、本発明の内部芯物質(inner core)の表面上の圧縮コーティングとして使用する前に、製薬上許容しうる賦形剤と共に湿式造粒する。圧縮コーティングは、例えば、重量にして最大約95%の製薬上許容しうる賦形剤を含んでいてもよい。
【0085】
ある実施形態では、圧縮コーティングに含有されるガムの量は、重量にして錠剤全体の約1パーセント〜約90パーセント、好ましくは約6.5パーセント〜約83パーセントである。
【0086】
ある実施形態では、圧縮(遅延放出)コーティングの成分を、湿式造粒ステップを利用せずに乾式混合することができる。混合物を、湿式造粒ステップを行わずに製造し、その最終混合物を成形済みの錠剤芯物質上に圧縮コーティングする場合には、好ましくは製薬上許容しうる賦形剤の全部または一部に、製薬上許容しうる製品を提供するのに十分な圧縮性を持たせるべきである。本発明に従って調製した特定の賦形剤系の特性および特徴は、一部には、例えばポリマー溶解度、ガラス転移温度などに関するホモおよびヘテロ多糖類構成要素の個々の特徴に依存する場合があり、また一部には、溶解液-賦形剤相互作用を修飾する際に異なるホモおよびヘテロ多糖類間とホモおよびヘテロ多糖類ならびに不活性糖類構成要素間の両方における相乗作用に依存する場合がある。
【0087】
圧縮コーティングがヘテロ多糖類、ホモ多糖類、またはそれら両方を含む本発明のある実施形態では、持続放出マトリクス中にこれらの材料を使用することを対象とした本発明者らの以前の特許に記載されている放出修飾物質を圧縮コーティングに使用することもできる。かかる放出修飾物質ならびに本発明者らの米国特許第5,455,046号、同第5,512,297号、同第5,554,387号、同第5,667,801号、同第5,846,563号、同第5,773,025号、同第6,048,548号、同第5,662,933号、同第5,958,456号、同第5,472,711号、同第5,670,168号、および同第6,039,980号に開示されている既製の賦形剤を本発明の圧縮コーティングに使用してもよい。
【0088】
従って、例えば、放出修飾物質はイオン性ゲル強度増強剤を含んでいてもよい。場合により本発明と併せて用いるイオン性ゲル強度増強剤は、一価または多価の金属カチオンであってもよい。好適な塩は、様々なアルカリ金属および/またはアルカリ土類金属の硫酸塩、塩化物、ホウ酸塩、臭化物、クエン酸塩、酢酸塩、乳酸塩などを含む無機塩である。適切なイオン性ゲル強度増強剤の具体例としては、硫酸カルシウム、塩化ナトリウム、硫酸カリウム、炭酸ナトリウム、塩化リチウム、リン酸三カリウム、ホウ酸ナトリウム、臭化カリウム、フッ化カリウム、重炭酸ナトリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、クエン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、乳酸カルシウム、硫酸マグネシウムおよびフッ化ナトリウムが挙げられる。多価金属カチオンを使用してもよい。しかし、好適なイオン性ゲル強度増強剤は二価である。特に好適な塩は、硫酸カルシウムおよび塩化ナトリウムである。本発明のイオン性ゲル強度増強剤は、ゲル化剤(例えば、ヘテロ多糖類およびホモ多糖類のガム)の架橋によって所望の増大したゲル強度を得るのに有効な量で加える。ある別の実施形態では、イオン性ゲル強度増強剤を本発明の遅延放出賦形剤中に、該遅延放出賦形剤の約1〜約20重量%の量で、また最終的な剤形の0.5重量%〜約16重量%の量で含める。ある実施形態では、イオン性ゲル強度増強剤を含めることにより、活性物質の放出が遅延するだけでなく、該活性物質の持続放出がもたらされる。
【0089】
本発明のある実施形態では、芯物質上にコーティングする(遅延放出)圧縮コーティングは、約1〜約90重量パーセントの(ヘテロ多糖類ガムおよびホモ多糖類ガムを含む)ゲル化剤、約0〜約20重量パーセントのイオン性ゲル強度増強剤、ならびに約10〜約95重量パーセントの製薬上許容しうる賦形剤を含む。他の実施形態では、圧縮コーティング材料は、約5〜約75パーセントのゲル化剤(ガム)、約0〜約15パーセントのイオン性ゲル強度増強剤、および約30〜約95パーセントの製薬上許容しうる賦形剤(例えば、不活性希釈剤)を含む。さらに別の実施形態では、圧縮コーティング材料は、約7.5〜約50パーセントのゲル化剤、約0〜約10パーセントのイオン性ゲル強度増強剤、および約30〜約95パーセントの製薬上許容しうる賦形剤を含む。
【0090】
本発明で使用しうる界面活性剤としては、一般に、製薬上許容しうるアニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性(両親媒性/両染性)界面活性剤、および非イオン界面活性剤が挙げられる。適切な製薬上許容しうるアニオン界面活性剤としては、例えば、一価アルキルカルボキシレート、アシルラクチレート、アルキルエーテルカルボキシレート、N-アシルサルコシネート、多価アルキルカーボネート、N-アシルグルタメート、脂肪酸-ポリペプチド縮合物、硫酸エステル、アルキルスルフェート(例えば、ラウリル硫酸ナトリウム(SLS))、エトキシル化アルキルスルフェート、エステル結合スルホネート(例えば、ドキュセートナトリウムまたはコハク酸ジオクチルナトリウム(DSS))、αオレフィンスルホネート、およびリン酸化エトキシル化アルコールが挙げられる。
【0091】
適切な製薬上許容しうるカチオン界面活性剤としては、例えば、モノアルキル第4級アンモニウム塩、ジアルキル第4級アンモニウム化合物、アミドアミン、およびアミンイミドが挙げられる。
【0092】
適切な製薬上許容しうる両性(両親媒性/両染性)界面活性剤としては、例えば、N-置換アルキルアミド、N-アルキルベタイン、スルホベタイン、およびN-アルキルβ-アミノプロピオネートが挙げられる。
【0093】
本発明と併せて用いるための他の適切な界面活性剤としては、エステルまたはエーテルとしてのポリエチレングリコールが挙げられる。例としては、ポリエトキシル化ヒマシ油、ポリエトキシル化硬化ヒマシ油、ヒマシ油由来のポリエトキシル化脂肪酸または硬化ヒマシ油由来のポリエトキシル化脂肪酸が挙げられる。使用しうる市販の界面活性剤は、Cremophor、Myrj、Polyoxyl 40 stearate、Emerest 2675、Lipal 395およびPEG 3350という商品名で知られている。
【0094】
溶解速度を修飾するそれらの固有の能力に見合う量で加えうる他の製薬上許容しうる放出修飾物質としては、例えば、ステアリン酸、ステアリン酸金属塩、ステアリルアルコール、硬化綿実油、塩化ナトリウムおよび後述するある種の崩壊剤が挙げられる。
【0095】
使用する前記放出修飾物質の量は、必要とされる放出特性と該物質の性質によって決まる。本発明の遅延放出製剤の場合、使用する放出修飾物質のレベルは組成物全体の約0.1〜約25重量%、好ましくは約0.5〜約10重量%としうる。
【0096】
本発明のある別の実施形態では、圧縮コーティングはpH修飾物質を含む。pH修飾物質は圧縮コーティング中に、最終的な剤形の約1重量%〜約10重量%存在していてもよい。好適な実施形態では、pH修飾物質は、クエン酸、コハク酸、フマル酸、リンゴ酸、マレイン酸、グルタル酸または乳酸などの有機酸である。
【0097】
ある好適な実施形態では、水性環境流体(例えば、剤形を取り囲む水または胃腸液など)が剤形の圧縮コーティングを通して拡散することにより芯物質が水和して薬物が溶解し、その結果該薬物が芯物質を取り囲む流体中に移行できるようになると、薬物の放出が生じる。
【0098】
ある好適な実施形態では、薬物の遅延放出(ラグタイム)を、圧縮コーティングの厚さを増やす(ラグタイムが増大する)か、または圧縮コーティングの厚さを減らす(ラグタイムが減少する)ことにより変更する。また遅延放出を、例えば、遅延放出圧縮コーティングに含めるガムを変更し、特定のガムの組み合わせを選択することにより、多糖類をはじめとする1種の糖類または糖類(もしくは多糖類)の組み合わせなどの製薬上許容しうる賦形剤を圧縮コーティングに含めるかあるいは含めないことにより、圧縮コーティングが該圧縮コーティング(例えば、マトリクス)を通した水(もしくは胃腸液)の内部芯物質への拡散(その結果内部芯物質の水和が可能となる)をさらに遅延させるようにする追加の物質を変更するかまたは該圧縮コーティングに加えることにより、変更してもよい。さらに、圧縮コーティングを施す際に用いる圧縮力を利用して、活性成分の放出速度を変化させてもよい。また、圧縮コーティングにさらなる粒状賦形剤(extragranular excipients)を加えることによって放出を修飾することもできる。かかる成分は、例えば、微結晶性セルロース、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコールなどを含んでいてもよい。
【0099】
薬物の遅延放出はさらに、(i)芯物質と圧縮コーティングの間、(ii)圧縮コーティング上、または(iii)芯物質と圧縮コーティングの間と圧縮コーティング上の両方、にさらなるコーティングを使用することによって変更してもよい。かかるコーティングとしては、例えば、親水性ポリマー(例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース)および/または疎水性ポリマー(例えば、アクリルポリマー、アクリル酸エステルとメタクリル酸エステルとのコポリマー、エチルセルロースといったアルキルセルロースなど)を挙げることができる。かかる状況では、剤形からの薬物の放出は流体が圧縮コーティングを通して拡散した時に生じる可能性があるだけでなく、ここに記載したさらなるコーティングの浸食が薬物の放出を遅延させる可能性もある。
【0100】
本発明(上記の任意の放出修飾物質を用いるかまたは用いない)の溶解速度を、親水性マトリクスを破壊することなくガムの水和を遅くする疎水性材料を圧縮コーティングに組み入れることによりさらに修飾してもよい。これは、本発明の別の実施形態で、芯物質を圧縮コーティングする前に遅延放出賦形剤を疎水性材料の溶液または分散液と共に造粒することによって達成される。疎水性ポリマーは、エチルセルロースなどのアルキルセルロース、他の疎水性セルロース系材料、アクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステルから誘導したポリマーまたはコポリマー、アクリル酸エステルとメタクリル酸エステルとのコポリマー、ゼイン、ワックス、シェラック、硬化植物油、ならびに当業者に公知の他の製薬上許容しうる疎水性材料から選択してもよい。疎水性材料用の溶媒は、水性もしくは有機性溶媒、またはそれらの混合物でありうる。遅延放出賦形剤中に組み入れる疎水性材料の量は、環境流体への曝露時に形成される親水性マトリクスを破壊することなくガムの水和を遅くするのに有効な量とする。本発明のある好適な実施形態では、疎水性材料は、圧縮コーティングに約1〜約20重量パーセントの量で含まれる。
【0101】
また圧縮コーティングは、適切な量の、例えば後述の、製薬分野で常用される滑剤、結合剤、造粒助剤、希釈剤、着色剤、香味剤および流動促進剤を含有していてもよい。
【0102】
圧縮コーティングに含める材料が既製品である好適な実施形態では、ガムゲル化剤(例えば、キサンタンガムとローカストビーンガムとの混合物)と、放出修飾物質を含むかまたは含まない医薬用賦形剤との組み合わせにより、製剤者が該材料を圧縮コーティングにより芯物質上に施すだけで所望の時間治療用剤形が得られる即時使用可能な圧縮コーティング製品を提供する。圧縮コーティングは、ガムと圧縮性のショ糖、乳糖、ブドウ糖などといった可溶性賦形剤との物理的混合物を含んでいてもよいが、ガムを未加工の製薬上許容しうる賦形剤(すなわち、結晶性のショ糖、乳糖、ブドウ糖、マンニトールなど)と共に造粒するかまたは凝集させることによって圧縮コーティングに使用するための遅延放出賦形剤を形成する方が好ましい。顆粒形態は、該形態を流動性および圧縮性に合わせて最適化できるということを含む、幾つかの利点を有する。
【0103】
圧縮コーティングに使用するガムおよび任意の医薬用賦形剤を何らかの凝集法に従って調製することにより、許容しうる賦形剤製品を得ることが好ましい。湿式造粒法では、所望の量の親水性材料(例えば、ヘテロ多糖類ガムおよび/またはホモ多糖類ガム)と不活性希釈剤とを混合し、その後、水、プロピレングリコール、グリセロール、アルコールなどといった湿潤剤を加えることにより湿塊を調製する。次に該湿塊を乾燥させる。その後、乾燥させた塊を通常の装置で粉砕して顆粒とする。これ以降は、この賦形剤製品を即時使用することができる。
【0104】
(好ましくは)既製の遅延放出賦形剤は、自由流動性でかつ直接圧縮可能であることが好ましい。従って、治療上活性な医薬の成形済みの内部芯物質上に賦形剤を直接圧縮することにより、コート錠を形成してもよい。成形済みの錠剤芯物質上に均一なコーティングを作製するのに十分な量の遅延放出コーティング混合物を、通常の生産規模の打錠機で、通常の圧縮圧(すなわち約2000〜1600 lbs/sq in.)にて錠剤化する。しかし、混合物は、続いて胃液に曝露された時にその水和が困難となるほど圧縮すべきではない。
【0105】
本発明の造粒した遅延放出賦形剤の平均粒径は、約50ミクロン〜約400ミクロン、好ましくは約185ミクロン〜約265ミクロンである。造粒物の粒径はそれほど厳密に決定的なものではなく、重要な条件は、この顆粒の平均粒径が、製薬上活性な錠剤芯物質上にコーティングを形成する直接圧縮可能な賦形剤を形成しうるものでなくてはならないということである。本発明の造粒物の所望のタップ密度および嵩密度は通常約0.3〜約0.8 g/mLであり、平均密度は約0.5〜約0.7 g/mLである。
【0106】
本発明の圧縮コーティングは、好ましくは種々の粒径分布の一定範囲にわたって均一の充填特性を持ち、また滑剤の添加とその後の直接圧縮を利用して成形済みの錠剤芯物質上に加工することができる。
【0107】
錠剤芯物質に(状況に応じて)使用することに加えて、ある実施形態では、1種以上の製薬上許容しうる滑剤を、混合物を芯物質の表面上に圧縮コーティングする前にその圧縮コーティング材料(好ましくは、予め凝集させたもの)に加えることが好ましい。本発明の芯物質および圧縮コーティングに使用するための適切な滑剤の例としては、例えば限定するものではないが、タルク、ステアリン酸、植物油、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウムなどが挙げられる。好ましくは、有効量の一般に許容しうる医薬用滑剤(例えば、カルシウムまたはマグネシウム石鹸)を、混合物を成形済みの固形錠剤芯物質上に圧縮する前に該混合物の成分に加えることが好ましい。特に好適な滑剤は、JRS Pharma LPからPruv(登録商標)という商品名で市販されているフマル酸ステアリルナトリウム(米国国民医薬品集)である。
【0108】
ある実施形態では、本発明はさらに、本発明の遅延放出固形経口剤形(例えば、錠剤)を製造する方法を対象とする。ある好適な実施形態では、本発明の遅延放出経口固形剤形を調製するためのステップは、以下を含んでいてもよい。
【0109】
内部芯物質製剤の調製:
1. (A)活性成分(例えば、薬物)を製薬上許容しうる界面活性剤および任意の賦形剤と共に湿式造粒した後、必要に応じてこれを乾燥させてから粉砕して造粒物を得ること;または
(B) 活性成分を製薬上許容しうる界面活性剤および任意の賦形剤と共に、必要に応じて幾何学的希釈を利用して乾式混合することにより造粒物を得ること;
2. 状況に応じて、賦形剤をステップ1で調製した材料に適度に混合しながら加え、さらに粒状とする(extragranularly)こと;
3. 好ましくは、ステップ1または2で調製した粉末混合物を潤滑化すること;
4. ステップ3で調製した粉末混合物を使用し、適当な圧縮機で芯物質を圧縮すること;
5. 状況に応じて、ステップ4で調製した錠剤芯物質上に機能性フィルムコーティングを施すこと。
【0110】
遅延放出(圧縮)コーティングの調製は、例えば次のように行ってもよい:
6. (A)ガム(例えば、ヘテロ多糖類ガムおよびホモ多糖類ガム)を任意の賦形剤と共に湿式造粒することにより遅延放出材料(凝集粒子)を形成し、その後、該遅延放出材料を乾燥させること;または
(B)ガムを任意の賦形剤と共に乾式混合することにより遅延放出材料(造粒物)を形成すること;
7. 好ましくは、ステップ6で調製した遅延放出材料を粉砕すること;
8. 好ましくは、ステップ6または7で調製した遅延放出材料を潤滑化すること。
【0111】
内部芯物質のコーティング:
9. ステップ6〜8で調製した遅延放出材料をステップ1〜5で調製した錠剤芯物質上に圧縮コーティングすること;
10. 状況に応じて、最終的な剤形を(所望であれば)フィルムコーティングすること。
【0112】
ある実施形態では、例えば後述のDry-Cota Pressを使用する場合、ステップ4および10を組み合わせて単一操作とする。錠剤芯物質の機能性コーティングは、圧縮機に芯物質錠剤供給システムを追加する改良を施せば、Dry-Cota Pressを使用して実行可能である。
【0113】
Manesty Dry-Cota pressは2台の並置され互いに連結された錠剤圧縮機からなり、芯物質は一方の圧縮機で作製された後、圧縮コーティングのために次の圧縮機へ機械的に移動する。各「圧縮機」が独立した粉体供給機構を備えているので、芯物質混合物を一方の機械に供給し、また他方でコーティング混合物を供給することができる。機械の移動アームはこれらの機械間を行き来し、一方の圧縮機から芯物質を取り出してそれらをコーティング用圧縮機に移動する。使用しうる他のより近代的なタイプの圧縮機(例えば、Elizabeth Hata HT-AP44-MSU-C、Killian RUD、Fette PT 4090)は、コーティング混合物と作製済み芯物質の複合的供給システムを備えている。この構造は、芯物質を圧縮コーティングの前に機能的コーティングまたは化粧コーティングでパンコーティングすることができるという点で、柔軟性が高い。さらにこの構造により、既に圧縮コーティングした錠剤を循環させて複数の圧縮コーティング層を施すことが可能となる。どちらのタイプの圧縮機も、垂直方向と径方向の両方の向きで錠剤をコーティングの中心に配置するための機構を備えている。本発明の最終的な剤形を提供するために他の錠剤圧縮機を使用しうることは、当業者であれば理解するであろう。
【0114】
典型的には圧縮コーティングは芯物質全体を取り囲んでいるが、本発明のある実施形態では、圧縮コーティングは錠剤芯物質を実質的に取り囲んではいるものの、完全には取り囲んでいない。かかる場合、錠剤芯物質からの薬物の放出は、まず内部芯物質の圧縮コーティングが施されていない部分から始まる。本発明の他の実施形態では、内部芯物質全体に同じ厚さの圧縮コーティングを施さないことで、圧縮剤形に他の領域よりも早く(遅く)薬物を放出する領域を作り出す。これは、例えば、圧縮コーティングを施す芯物質を圧縮機の中央に配置しないことで達成される。
【0115】
最良の結果を得るためには、芯物質の圧縮コーティングにより形成される錠剤は、約4〜約25 kP、好ましくは約5〜約15 kP、最も好ましくは約8〜約9 kPの硬度とする。ある好適な実施形態では、円形圧縮コート錠の場合はその直径を最大5/8インチ以上としてもよく、またカプレット型圧縮コート錠の場合はその直径を最大3/4インチ以上としてもよい。本発明に従って調製される(未圧縮)コーティングの平均流量は、約25〜約40 g/secである。
【0116】
本発明のある実施形態では、圧縮コート錠をその後腸溶コーティング材料または疎水性材料でさらにコーティングしてもよい。適切な腸溶ポリマーの例としては、酢酸フタル酸セルロース、ヒドロキシプロピル-メチルセルロースフタレート、ポリビニルアセテートフタレート(polyvinylacetate phthalate)、メタクリル酸コポリマー、シェラック、コハク酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、トリメリト酸酢酸セルロース、およびこれらのいずれかの混合物が挙げられる。適切な市販の腸溶材料の1例は、Eudragit(登録商標)L30D55という商品名で入手することができる。
【0117】
さらなる実施形態では、剤形を、上記の腸溶コーティングまたは疎水性コーティングに加えて、またはその代わりに、親水性コーティングでコーティングしてもよい。かかる親水性コーティングに使用しうる適切な材料の1例は、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(例えば、Colorcon, West Point, Pennsylvaniaから市販されているOpadry(登録商標))である。
【0118】
さらに別の実施形態では、任意の腸溶および/または疎水性および/または親水性コーティングを、芯物質と圧縮コーティングの間の中間層として代替的または追加的に施してもよい。
【0119】
任意の腸溶および/または疎水性および/または親水性コーティングは、当業者に公知の製薬上許容しうるいかなる様式で施してもよい。例えば、ある実施形態では、流動層を用いるかまたはコーティングパン中でコーティングを施す。例えば、コーティングした錠剤を、例えばコーティングパン中で約60〜70℃にて約3〜4時間乾燥させてもよい。疎水性ポリマーまたは腸溶コーティング用の溶媒は、有機性溶媒、水性溶媒、または有機性溶媒と水性溶媒との混合物であってもよい。有機性溶媒は、例えば、含水または無水のイソプロピルアルコール、エタノールなどであってもよい。
【0120】
本発明のさらなる実施形態では、本発明に従って製造する錠剤にサポートプラットフォーム(support platform)を施す。適切なサポートプラットフォームは当業者に周知である。適切なサポートプラットフォームの1例は、例えば米国特許第4,839,177号(参照により本明細書中に含めるものとする)に記載されている。該特許では、サポートプラットフォームは錠剤を部分的にコーティングするものであり、水性の液体には溶けない高分子材料によりなる。サポートプラットフォームを、例えば、治療上活性な医薬の移動中はその不浸透性が維持されるように設計してもよい。サポートプラットフォームは、例えば、錠剤表面の一部への圧縮コーティングを介して、該サポートプラットフォームを含む高分子材料を錠剤表面の全部もしくは一部にスプレーコーティングすることにより、または錠剤を高分子材料の溶液に浸すことにより、錠剤に施してもよい。
【0121】
サポートプラットフォームは、例えば、圧縮により施す場合は約2 mm、スプレーコーティングまたは浸漬コーティングを介して施す場合は約10μの厚さであってもよい。一般に、疎水性ポリマーまたは腸溶コーティングを遅延放出コーティングに重ねて錠剤に施す本発明の実施形態では、該錠剤を、約1〜約20%、ある実施形態では好ましくは約5%〜約10%その重量が増加するまでコーティングする。
【0122】
本発明の疎水性コーティングならびにサポートプラットフォームに有用な材料としては、アクリル酸の誘導体(例えば、アクリル酸、メタクリル酸のエステル、およびそれらのコポリマー)、セルロースおよびその誘導体(例えば、エチルセルロース)、ポリビニルアルコールなどが挙げられる。
【0123】
先に述べた通り、芯物質および/または圧縮コーティングはさらに、適切な量の、例えば製薬分野で常用される滑剤、結合剤、造粒助剤、希釈剤、着色剤、香味剤および流動促進剤を含有していてもよい。
【0124】
本発明で使用するための適切な結合剤の例としては、例えば限定するものではないが、ポビドン、ポリビニルピロリドン、キサンタンガム、セルロースガム、例えばカルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシセルロース、ゼラチン、デンプン、およびα化デンプンが挙げられる。
【0125】
本発明で使用するための適切な流動促進剤の例としては、タルク、二酸化ケイ素、およびコーンスターチが挙げられる。
【0126】
本発明のある実施形態では、錠剤芯物質は、(任意の)疎水性もしくは腸溶コーティング中に、または錠剤芯物質(疎水性もしくは腸溶コーティングを含まない)の外表面上にコーティングした追加の(任意の)さらなるコーティング中に、または圧縮コーティングと妥当であれば疎水性および/もしくは腸溶コーティング材料とを含むベースコーティングの表面上にコーティングする追加のコーティング層として含まれる、追加用量の薬物(または治療上有効な用量の別の薬物)を含む。これは例えば、薬物のある供給用量が、製剤が最初に胃液に曝露された際に治療上有効な血中レベルの活性物質を提供することに必要である場合に望ましいだろう。コーティング層に含める薬物の供給用量は、例えば、製剤に含める薬物の総量の約10%〜約40%とすることができる。
【0127】
本発明に組み入れるのに適した薬物の例としては、以下:
−抗ヒスタミン剤(例えば、マレイン酸アザタジン、マレイン酸ブロムフェニラミン、マレイン酸カルビノキサミン、マレイン酸クロルフェニラミン、d-マレイン酸クロルフェニラミン、塩酸ジフェンヒドラミン、コハク酸ドキシラミン、塩酸メトジラジン、プロメタジン、酒石酸トリメプラジン、クエン酸トリペレナミン、塩酸トリペレナミンおよび塩酸トリプロリジン);
−抗生物質(例えば、ペニシリンVカリウム、クロキサシリンナトリウム、ジクロキサシリンナトリウム、ナフシリンナトリウム、オキサシリンナトリウム、カルベニシリンインダニルナトリウム、塩酸オキシテトラサイクリン、塩酸テトラサイクリン、リン酸クリンダマイシン、塩酸クリンダマイシン、塩酸パルミチン酸クリンダマイシン、塩酸リンコマイシン、ノボビオシンナトリウム、ニトロフラントインナトリウム、塩酸メトロニダゾール);抗結核薬(例えば、イソニアジド);
−コリン作動薬(例えば、塩化アンベノニウム、塩化ベタネコール、臭化ネオスチグミン、臭化ピリドスチグミン);
−抗ムスカリン作用薬(例えば、臭化メチルアニソトロピン、臭化クリジニウム、塩化ジシクロミン、グリコピロレート、メチル硫酸ヘキソシクリウム、臭化メチルホマトロピン、硫酸ヒヨスチアミン、臭化メタンテリン、臭化水素酸ヒヨスシン、臭化オキシフェノニウム、臭化プロパンテリン、塩化トリジヘキセチル);
−交感神経刺激薬(例えば、メシル酸ビトルテロール、エフェドリン、塩酸エフェドリン 、硫酸エフェドリン、硫酸オルシプレナリン、塩酸フェニルプロパノールアミン、塩酸プソイドエフェドリン、塩酸リトドリン、硫酸サルブタモール、硫酸テルブタリン);
−交感神経遮断薬(例えば、塩酸フェノキシベンザミン);混合型自律神経作用薬(例えば、ニコチン);
−鉄剤(例えば、グルコン酸第一鉄、硫酸第一鉄);
−止血薬(例えば、アミノカプロン酸);
−強心剤(例えば、塩酸アセトブトロール、リン酸ジソピラミド、酢酸フレカイニド、塩酸プロカインアミド、塩酸プロプラノロール、グルコン酸キニジン、マレイン酸チモロール、塩酸トカイニド、塩酸ベラパミル);
−降圧薬(例えば、カプトプリル、塩酸クロニジン、塩酸ヒドララジン、塩酸メカミラミン、酒石酸メトプロロール);血管拡張薬(例えば、塩酸パパベリン);
−非ステロイド系抗炎症薬(例えば、サリチル酸コリン、イブプロフェン、ケトプロフェン、サリチル酸マグネシウム、メクロフェナム酸ナトリウム、ナプロキセンナトリウム、トルメチンナトリウム);
−オピエートアゴニスト(例えば、塩酸コデイン、リン酸コデイン、硫酸コデイン、酒石酸デキストロモルアミド、二酒石酸ヒドロコドン、塩酸ヒドロモルホン、塩酸ペチジン、塩酸メサドン、硫酸モルヒネ、酢酸モルヒネ、乳酸モルヒネ、メコン酸モルヒネ、硝酸モルヒネ、第一リン酸モルヒネ(morphine monobasic phosphate)、酒石酸モルヒネ、吉草酸モルヒネ、臭化水素酸モルヒネ、塩酸モルヒネ、塩酸プロポキシフェン);
−抗痙攣剤(例えば、フェノバルビタールナトリウム、フェニトインナトリウム、トロキシドン、エトスクシミド、バルプロ酸ナトリウム);
−精神安定剤(例えば、マレイン酸アセトフェナジン、塩酸クロルプロマジン、塩酸フルフェナジン、エジシル酸プロクロルペラジン(prochlorperazine edisylate)、塩酸プロメタジン、塩酸チオリダジン、塩酸トリフルオロペラジン、クエン酸リチウム、塩酸モリンドン、塩酸チオチキシン(thiothixine hydrochloride));
−化学療法薬(例えば、ドキソルビシン、シスプラチン、フロクスウリジン、メトトレキサート、それらの組み合わせなど);
−脂質低下剤(例えば、ゲムフィブロジル、クロフィブラート、HMG-CoA 還元酵素阻害剤、例えば、アトルバスタチン、セリバスタチン、フルバスタチン、ロバスタチン、プラバスタチン、シンバスタチンなど);
−H2-アンタゴニスト(例えば、シメチジン、ファモチジン、ニザチジン、塩酸ラニチジンなど);
−抗凝血剤および抗血小板剤(例えば、ワルファリン、シピリダモール、チクロピジンなど);
−気管支拡張薬(例えば、アルブテロール、イソプロテレノール、メタプロテレノール、テルブタリンなど);
−刺激剤(例えば、塩酸ベンズアンフェタミン、硫酸デキストロアンフェタミン、リン酸デキストロアンフェタミン、塩酸ジエチルプロピオン、塩酸フェンフルラミン、塩酸メタンフェタミン、塩酸メチルフェニデート、酒石酸フェンジメトラジン、塩酸フェンメトラジン、クエン酸カフェイン);
−バルビツレート(例えば、アミロバルビタールナトリウム、ブタバルビタールナトリウム、セコバルビタールナトリウム);
−鎮静剤(例えば、塩酸ヒドロキシジン、メスプリロン(methprylon));去痰薬(例えば、ヨウ化カリウム);
−制吐薬(例えば、塩酸ベンズキナミド(benzaquinamide hydrochloride)、塩酸メトクロプロパミド、塩酸トリメトベンズアミド);
−胃腸薬(例えば、塩酸ラニチジン);重金属アンタゴニスト(例えば、ペニシラミン、塩酸ペニシラミン);
−抗甲状腺薬(例えば、メチマゾール);
−尿生殖器平滑筋弛緩薬(例えば、塩酸フラボキサート、塩酸オキシブチニン);
−ビタミン(例えば、塩酸チアミン、アスコルビン酸);
−未分類の物質(例えば、塩酸アマンタジン、コルヒチン、エチドロン酸二ナトリウム、ロイコボリンカルシウム、メチレンブルー、塩化カリウム、塩化プラリドキシム);
−ステロイド、特にグルココルチコイド(例えば、プレドニゾロン、プレドニゾン、コルチゾン、ヒドロコルチゾン、メチルプレドニゾロン、ベタメタゾン、デキサメタゾン、トリアムシノロン)
が挙げられる。
【0128】
前記薬物はその塩基形態であってもよく、または製薬上許容しうる塩もしくは複合体を使用してもよい。上記の考えうる薬効分類と特定の薬物のリストは単なる代表例であって、決して本発明の範囲を制限するものではない。
【0129】
本発明の時間治療用製剤を、かかる療法が有効である当業者に公知の(または公知となる)いずれの症状を治療するのに用いてもよい。これらの療法としては、限定するものではないが、アレルギー性鼻炎、注意欠陥障害、喘息、関節炎、癌療法、心血管疾患、高コレステロール、高血圧、および潰瘍が挙げられる。
アレルギー性鼻炎について言えば、主な症状であるくしゃみ、鼻水および鼻詰まりは、通常はある1日のうちの活動時間の中頃よりも起床時に悪化する。本発明の時間治療アプローチは、くしゃみ、鼻詰まりおよび鼻水ならびに目に起こるアレルギーを抑えるのにも役立つかもしれない。例えば、花粉症の症状は朝にピークに達する。幾つかの研究により、抗ヒスタミン剤を日中よりも夜に服用した方が、症状が出るのを待つことなく患者の起床前に症状を阻止するのに役立つことが分かっている。このため、都合の良い時に服用され、かつ剤形の最大薬効が朝に得られるような用量をある時点で放出する抗ヒスタミン剤などの時間治療用経口製剤を提供することが非常に望ましい。
【0130】
喘息について言えば、正常な肺機能は日内変動を示し、早朝の数時間に最も低下する。喘息を患う人々ではこの落ち込みが著しい。喘息の時間治療は、早朝の時間帯に気管支拡張薬から最大薬効を引き出すことを目的とする。喘息症例を管理する鍵は時間治療であること、また夜間の喘息を改善するための治療によって日中の喘息の発現を改善しうることが提言されている。喘息患者(その数がアメリカ国内だけでも1975年以来倍増している)にとっては、確かに投与量とタイミングは関係がある。喘息患者の大半は夜間に最も苦しむが、これは恐らく、身体の天然の抗炎症薬であるコルチゾールが最低レベルとなる時間帯だからである。発作が最もよく起こる時間は午前4時であるため、不眠というさらなる精神的負担によって喘息それ自体の苦痛が増すことも多い。このため、都合の良い時に服用され、かつ、剤形の最大薬効がその時間に得られるような用量を例えば午前4時直前に放出する抗ヒスタミン剤などの時間治療用経口製剤を提供することが非常に望ましい。
【0131】
また、本発明の時間治療用製剤を、関節炎を治療するのに用いてもよい。グルココルチコステロイドは関節リウマチの症状、例えば、朝のこわばり、関節痛および関節腫脹に対して非常に好都合な効果を示す。関節炎について言えば、関節炎の痛みには時間生物学的パターンが観察される。変形性関節症(最も一般的な種類の関節炎)を患う人々は、朝は痛みが少なく、夜に痛みが増す傾向がある。ところが、関節リウマチを患う人々の場合は、痛みは普通、朝にピークに達し、時間が経つにつれて減少する。ラットの関節炎が24時間にわたって変動することを示した近年の動物実験は、患者と医師の両方によるこれらの所見を裏付けるものである。この治療領域の潜在的な薬物候補としては(全ての種類の関節炎に対する)標準的な治療法、NSAIDおよびコルチコステロイドなどが挙げられる。好ましくは、薬物の最高血中レベルが痛みのピークと確実に重なるように投与の時間を設定するべきである。変形性関節症の場合、NSAID(イブプロフェンなど)に最適な時間は正午頃または午後の中頃である。関節リウマチの場合、NSAIDを服用するのに最適な時間は夕食後である。
【0132】
本発明で使用するためのグルココルチコイドとしては、例えば、プレドニゾロン、プレドニゾン、コルチゾン、ヒドロコルチゾン、メチルプレドニゾロン、ベタメタゾン、デキサメタゾン、トリアムシノロン、それらの混合物、およびそれらの製薬上許容しうる塩が挙げられる。プレドニゾンが特に好ましい。プレドニゾンは、長年市販されている強力な医薬品である。プレドニゾンは、局所または全身に投与した際のその顕著な抗炎症活性を特徴とする。プレドニゾンは抗炎症薬および抗リウマチ薬として知られている。好ましくは、活性物質がプレドニゾンである場合、プレドニゾンを約0.1〜約20 mg、好ましくは約1〜約6 mg、および最も好適な実施形態では約1、2、5、7.5または10 mgの量とする。
【0133】
他のグルココルチコイドの等価用量は、以下のチャートを基に算出することができる。
【表1】

【0134】
注意欠陥障害について言えば、持続放出製剤を使用した場合は薬物のピーク血漿中濃度が低くなることが観察されており、また時としてメチルフェニデートの持続放出製剤は従来の剤形よりも効果が低いことが示されている。注意欠陥障害を治療するための最大有効量の物質の放出を遅延させる剤形は、特に該剤形が1回の投与で活性物質の1回目の放出、これに続く予測可能な遅延およびその後の活性物質の2回目の放出をもたらす場合には有用である可能性がある。潜在的な薬物候補としては、例えば、メチルフェニデートおよびその製薬上許容しうる塩などの刺激剤が挙げられる。
【0135】
癌療法について言えば、動物実験により、慎重に選択した時間に制癌剤を投与すれば、化学療法はより効果的でかつ毒性が低くなりうることが示唆されている。該実験により、正常細胞および腫瘍細胞には異なる時間生物学的サイクルが存在しうることが現時点で示唆されている。これが真実ならば、目標は、制癌剤の投与の時間を腫瘍細胞の時間生物学的サイクルに合わせることによって、それらの癌に対する有効性を高め、かつ正常組織に対する毒性を低くすることである。潜在的な薬物候補としては、例えば、ドキソルビシンおよびシスプラチン(併用)ならびにフロクスウリジンなどの注射剤が挙げられる。
【0136】
時間治療学は、心血管疾患の治療においては全く新規なものではない。1986年以来、狭心症を患う人々は、自分の胸部または肩に朝貼って夜剥がすニトログリセリンパッチを用いた治療を受けている。これは、疾患が1日のうちのある決まった時間帯に悪化するので1日のうちのその時間帯に治療すべきであるという認識に基づいているのではないため、「正規でない(side door)」時間治療と考えられている。もっと正確に言うならば、これは、ニトログリセリンは連続投与すると有効ではなくなるという認識から生じたものである。心臓病学的疾患は24時間パターンを示すという事実を踏まえると、本発明の時間治療用製剤を使用することが非常に望ましい。心臓発作、突然死、狭心症および卒中はいずれも朝に最も多く起きるようだと当業者には考えられている。このため、都合の良い時間に服用され、かつ剤形の最大効力が得られるような用量をその時間に放出する時間治療用経口製剤を提供することは非常に望ましい。潜在的な薬物候補としては、降圧薬、抗虚血薬、および凝固を制御する物質が挙げられる。
【0137】
高血圧について言えば、血圧は24時間(概日)周期にわたって変動する。大部分の正常血圧患者および大部分の本態性高血圧患者(全身性血管収縮は細動脈における末梢血管抵抗の増大と関係がある)では、概日メカニズムならびに睡眠/活動サイクル中の活動性およびストレスにおける差により、起床時に血圧が急速に上昇する。血圧は、日中活動中にピークに達した後、睡眠中に平均日中レベルの10%〜20%低下する。血圧および心拍数はいずれも通常は朝早くに上昇して心筋の酸素需要を著しく増加させるため、既知または未診断の冠動脈疾患を持つ患者に心筋虚血を生じさせる。起床時の血圧の急速な上昇は、朝の脳血管発作および心筋梗塞の発生率の増加と関係がある。さらに、Framingham Studyの結果から分かるように、脳血管発作および他の心血管イベント(突然死、急性心筋梗塞、および総体的な虚血性負荷)の発生率もまた概日パターンに従い、活動時間の最初の6時間(午前6時〜昼の12時)内に最も高くなり、睡眠中に最も低くなる。朝の血圧上昇は、理論上は冠状動脈内のアテローム硬化性プラークを断裂させて下層組織を傷付け、さらに凝血経路が最も活性化する早朝に血栓形成を促す可能性がある。このため、都合の良い時に服用され、かつ剤形の最大薬効がその時間に得られるような用量を放出する時間治療用経口製剤を提供することが非常に望ましい。
【0138】
起床時の血圧の急速な上昇に加え、大部分の人々で夜間睡眠中に血圧の「落ち込み」が生じる。この落ち込みはより重症な型の高血圧を患う患者および二次性高血圧を患う患者では異なるか、または存在しないことがあり、それらの患者では血圧が期待通りに下がらないかまたは日中レベルと比べて睡眠中に上昇する。血圧パターンは次の4つのカテゴリーに分類される:(i)「落ち込み群(dippers)」は日中の平均血圧レベルと比べて夜間睡眠中の血圧に10%〜20%の低下がみられ、(ii)「非落ち込み群(nondippers)」では夜間の血圧が日中レベルと殆ど変わらず、(iii)「過剰落ち込み群(superdippers)」では夜には血圧に日中平均レベルから20%以上の低下がみられ、また(iv)「上昇群(risers)」は日中レベルと比べて夜に高血圧となる。血圧の正常な概日パターンからの逸脱は、末端器官の損傷および有害な心血管イベントが生じるリスクの増大に関与する。夜間の血圧パターンが過剰落ち込み型または非落ち込み型である高血圧患者は、目、腎臓、および心臓の病気に罹る可能性が高く、また脳血管発作および心筋梗塞などの心血管イベントが発生する確率が正常な落ち込み群よりも高い。
【0139】
時間治療は、患者のニーズに応じた量、ひいては血圧の概日リズムに合わせた量の医薬を送達することにより、昼夜の血圧をより上手く制御することを可能にする治療アプローチである。時間治療用降圧薬は、血圧が最も高くなる朝および日中には多めに、また血圧が通常は最低レベルまで下がる夜は少なめに送達する。適当な送達系を用いた指示薬の時間治療的投与によって早朝の血圧および心拍数の上昇を鈍らせれば、理論上は早朝の心血管イベントの発生率を低下させることができる。
【0140】
カルシウムチャネル遮断薬であるベラパミルは血圧だけでなく心拍数も下げるので、虚血性心疾患と高血圧の両方を患う患者には特に有益である。ベラパミルのこれらの特性とその適当な半減期のため、ベラパミルは時間治療用経口薬物吸収系(CODAS)を用いた降圧薬の製剤化のための良い選択肢とされている。この系は、就寝時に服用され、薬物送達時には4〜5時間の初期ラグ(initial lag)を生じてから薬物の制御放出を達成するよう設計されたものである。CODAS-ベラパミルカプセル(Verelan(登録商標)PM)は、CODAS多粒子(multiparticulate)技術をベラパミルコートビーズと共に用いて作製されたものである。この製剤は、指示通りに服用すると、朝の起床時頃に最大ベラパミル血漿中濃度をもたらす。研究では、ベラパミル時間治療薬を夜間に投与することにより、朝の急激な血圧上昇を従来の降圧薬よりも上手く制御できることが示された。また、ベラパミル時間治療薬を就寝時に投与すると、夜間の低血圧または血圧の過剰な落ち込みが起きることなく日中の血圧が制御されるので、灌流圧の低下による標的器官の損傷のリスクが減る。しかも、ベラパミル時間治療薬は、従来のベラパミルおよび他の降圧薬よりも多くの医薬を日中に送達するよう設計されている。潜在的な薬物候補としては、カルシウムチャネル遮断薬などの降圧薬が挙げられる。
【0141】
HMG-CoA 還元酵素阻害剤などの高コレステロールを制御する医薬もまた、酵素活性レベルがピークに達する時間帯である夕方に投与した方が上手く機能すると考えられている。このため、都合の良い時間に服用され、かつ剤形の最大効力がその時間に得られるような用量を放出する時間治療用経口製剤を提供することが非常に望ましい。
【0142】
潰瘍の治療は、タイミングが重要とされるもう1つの例である。胃で示される酸性度は午後6時にピークに達することが知られているので、それに合わせて胃内の酸の分泌を低下させる医薬を送達すればよい。
【0143】
時間治療の利点としては、安全性および従来の療法よりも効果的な治療が挙げられる。これは、疾患のリスクが大きいほど多くの医薬を送達し、また病徴の可能性が低いほど少ない医薬を送達することにより実現する。患者にとっての他の利点としては、生活の質の向上と、1日1回の薬物送達系により患者のコンプライアンスを高めることが挙げられる。
【0144】
治療しようとする病状(例えば、喘息の発作、関節炎による痛み)の発現が起床時に最もよく見られる本発明のある好適な実施形態では、時間治療用製剤を好ましくは就寝時(例えば、午後9または10時頃)に患者に経口投与し、約5または6時間のラグタイムを生じさせることにより、例えば、圧縮コート遅延放出経口剤形中の薬物の大部分が例えば午前2〜3時、または午前3〜4時に放出され、さらに該薬物が胃腸管から吸収されて、病状の発現のピークと相関する時間に治療的効力を発揮できるようにする。
【0145】
活性物質が低用量の活性物質(例えば、約0.01 mg〜約40 mgの(単位)投与量で投与される薬物)である状況においては、ある好適な実施形態では、錠剤の総重量は約220 mg〜約900 mgであり、芯物質の重量は好ましくは約50 mg〜約170 mgである。好ましくは、芯物質は錠剤の総重量の約5〜約23重量パーセント、最も好ましくは約18〜約20重量パーセントである。活性物質が低用量の活性物質である実施形態では、コーティングは好ましくは約150 mg〜約850 mgである。好ましくは、コーティングは、錠剤全体の約75〜約94重量パーセント、最も好ましくは約78〜80重量パーセントである。好ましくは、活性用量が低用量の活性物質である場合、芯物質と(圧縮コーティング中の)ガムとの比率は約1:0.37〜約1:5、好ましくは約1:0.37〜約1:1.12、最も好ましくは約1:0.75である。活性用量が低用量の活性物質である場合、芯物質と圧縮コーティング材料(全成分)との比率は好ましくは約1:2〜約1:9であり、ある実施形態ではより好ましくは約1:4である。
【0146】
活性物質が比較的高用量の活性物質(例えば、約41 mg〜約300 mgの(単位)投与量で投与される薬物)である場合、芯物質と(圧縮コーティング中の)ガムとの比率は約1:0.3〜約1:3、好ましくは約1:0.6〜約1:1.5である。ある実施形態では、好ましくは活性物質が高用量の活性物質である場合、芯物質と圧縮コーティング材料(全成分)との比率は約1:1〜約1:5、好ましくは約1:2〜約1:3である。活性物質が比較的高用量の活性物質である状況では、錠剤の総重量は好ましくは約500 mg〜約1500 mg、より好ましくは約750 mg〜約1000 mgである。
【0147】
後述の実施例では、活性物質を含む芯物質を、典型的には回転式錠剤圧縮機上で手動でコーティング製剤を用いて圧縮コーティングする。かかる工程では、外部芯物質(outer core)材料の概ね半分をまず型に加える。典型的には内部芯物質錠剤を粉体層の中央に置き、これをもう半分の外部コーティング粉末でコーティングする。とは言え、当業者であれば、商品化のために自動錠剤圧縮機を用いて圧縮コーティングを達成しうることは理解されよう。錠剤圧縮機による圧縮コーティングの前に、好ましくは0.75%のPruv(登録商標)(フマル酸ステアリルナトリウム、米国国民医薬品集)または他の適切な滑剤を圧縮コーティング材料に加える。コーティングがガム、例えば50%キサンタンガム(XG)であるある実施例では、該コーティングはブドウ糖で希釈した50%キサンタンガムを含み、また例えば50%ローカストビーンガム(LBG)の場合は、コーティングはブドウ糖などで希釈した50%ローカストビーンガムを含む。
【実施例】
【0148】
以下の実施例により本発明の種々の態様を説明する。それらはいかなる形でも決して特許請求の範囲を制限するものとみなされるものではない。
【0149】
実施例1
下記表1に記載の処方を有する、本発明の圧縮コーティングに使用する遅延放出材料を調製する:
【表2】

【0150】
遅延放出材料を調製するための工程は次の通りである:
工程
1. 必要量のキサンタンガム、ローカストビーンガム、およびマンニトールを高速混合/造粒機で3分間乾式混合する。
2. 乾式混合した混合物に水を加え、さらに3分間造粒する。
3. 造粒物をその後流動層乾燥機内でLOD(乾燥減量)が約10重量%未満(例えば、LODが4〜7%)となるまで乾燥させる。
【0151】
実施例2
表2に記載の処方を有する、本発明の圧縮コーティングに使用する遅延放出材料を調製する:
【表3】

【0152】
工程
実施例1と同じ工程を用いて、本発明の圧縮コーティングに使用する実施例2の遅延放出材料を調製する。
【0153】
実施例3
表3に記載の処方を持つ、本発明の圧縮コーティングに使用する遅延放出材料を調製する:
【表4】

【0154】
工程
実施例1と同じ工程を用いて、本発明の圧縮コーティングに使用する実施例3の遅延放出材料を調製する。
【0155】
実施例4
表4に示す成分を持つプレドニゾン芯物質組成物を調製した:
【表5】

【0156】
(注)*Prosolvは(JRS Pharmaから)市販されている増強微結晶性セルロースである。
**Syloidは市販のコロイド状二酸化ケイ素である。
*** 酸化サマリウムは、シンチグラフィーデータ解析を実行するために芯物質に含める。実施例の製剤は酸化サマリウムを含まない芯物質を包含するものと理解されたい。
**** クロスカルメロースナトリウムは崩壊剤である。
***** デンプングリコール酸ナトリウムはExplotabとして(JRS Pharma LPから)市販されている。
【0157】
実施例4の芯物質組成物は、次の工程を用いて調製した。
工程
1. (1)、(2)、(3)および(5)をV-ブレンダーに供給し、10分間混合する。
2. (8)および(9)をV-ブレンダーに供給し、5分間混合する。
3. (4)をV-ブレンダーに供給し、5分間混合する。
4. (6)および/または(7)を(妥当であれば)V-ブレンダーに供給し、5分間混合する。
5. (10)をV-ブレンダーに供給し、5分間混合する。
6. 3/16” S.C.丸面取り工具(round beveled edge tooling)を使用して圧縮し、錠剤とする。
【0158】
実施例5
表5に示す成分を持つ、PEG(ポリエチレングリコール)を含むプレドニゾン芯物質組成物を調製した:
【表6】

【0159】
工程
実施例4の芯物質組成物を調製する際に用いたものと同じ工程を用いて、実施例5の芯物質組成物を調製した。
【0160】
実施例6
表6に示す成分を持つ、SLS(ラウリル硫酸ナトリウム)とPEG(ポリエチレングリコール)とを含むプレドニゾン芯物質組成物を調製した:
【表7】

【0161】
工程
実施例4の芯物質組成物を調製する際に用いたものと同じ工程を用いて、実施例6の芯物質組成物を調製した。
【0162】
実施例7〜9
実施例7〜9では、実施例5の芯物質処方と下記表7に記載のコーティングを有するプレドニゾン錠を調製した:
【表8】

【0163】
工程
1. 実施例1、2または3の適当な遅延放出材料(上記表7中の2、3、または4)およびフマル酸ステアリルナトリウム(5)をV-ブレンダーに供給し、5分間混合する。
2. 5/16” S.C.丸面取り工具を備えた錠剤圧縮機をセットアップする。
3. 約125 mgの遅延放出混合物を5/16”の型(下層)に供給し、該混合物をスパチュラで平らにならす。
4. 内部芯物質(1)を下層最上部の型の中央に置く。
5. 約125 mgの適当な遅延放出混合物を5/16”の型(上層)に供給し、該混合物をスパチュラで平らにならす。
6. 下層、内部芯物質および上層を圧縮して錠剤にする。
【0164】
実施例7〜9の錠剤を、USP試験装置III型を使用し、250 mLの溶液(pH 1.5)を用いて15回浸漬/分(dpm)で試験したところ、下記表8に記載の結果が得られた:
【表9】

【0165】
実施例7(ガム%は7.5%)の製剤は、実施例8(ガム%は15.0%)および実施例9(ガム%は50.0%)の製剤よりもかなり早く放出した。圧縮コーティング中のガムの含有量が増えるほど、それに対応してラグタイムが延びる。
【0166】
実施例10〜12
実施例10〜12では、下記表9に記載の芯物質処方とコーティングを有するプレドニゾン錠を調製した:
【表10】

【0167】
工程
1. 実施例2の遅延放出材料(4)およびフマル酸ステアリルナトリウム(5)をV-ブレンダーに供給し、5分間混合する。
2. 5/16” S.C.丸面取り工具を備えた錠剤圧縮機をセットアップする。
3. 約125 mgの遅延放出混合物を5/16”の型(下層)に供給し、該混合物をスパチュラで平らにならす。
4. 内部芯物質(1)または(2)または(3)を下層最上部の型の中央に置く。
5. 約125 mgの遅延放出混合物を5/16”の型(上層)に供給し、該混合物をスパチュラで平らにならす。
6. 下層、内部芯物質および上層を圧縮して錠剤にする。
【0168】
実施例10〜12の錠剤を、米国薬局方器具III型を使用し、250 mLの溶液(pH 1.5)を用いて15回浸漬/分(dpm)で試験したところ、下記表10に記載の結果が得られた:
【表11】

【0169】
芯物質中に界面活性剤を含む実施例11、および実施例12の製剤は、芯物質中に界面活性剤を含まない実施例10の基準製剤よりもわずかに早かった。界面活性剤を加えることで、溶解プロフィールがわずかに増加する。
【0170】
実施例13
界面活性剤(分散剤)の影響
ポリエチレングリコール3350 (PEG 3350)/ラウリル硫酸ナトリウム(SLS)の生体分析
実施例13では、本発明に従って調製した製剤を使用して生体試験を行った。本試験は、約36時間の長さの5通りの試験期間からなるクロスオーバーデザイン試験である。試験期間1〜4は投与間隔を最短期間で72時間とすることによって区切り、試験期間5はその前の試験期間が終了してから少なくとも14日後に施行した。18〜65歳でステロイドの副作用、胃腸疾患または虫垂切除以外の胃腸管手術の既往歴がない健康な男性ボランティアを本生体試験で採用した。シンチグラフィー画像および血液試料を投与後最長24時間の間隔をあけて採取し、製剤の通過および崩壊時間を薬物動態データと比較した。10人の被験者が本試験を完了した。
試験デザインは次の通りとした
1. 被験者の数:10人
2. 投与計画は以下の通りとした:
計画A = 実施例10の製剤(プレドニゾン7.5mg)を午前9:00頃(標準的な朝食の2時間後)に投与した。
計画B = 実施例11の製剤(プレドニゾン7.5mg)を午前9:00頃(標準的な朝食の2時間後)に投与した。
計画C = 実施例12の製剤(プレドニゾン7.5mg)を午前9:00頃(標準的な朝食の2時間後)に投与した。
計画D = 即時放出用の7.5mgプレドニゾン錠(USP)を午前9:00頃(標準的な朝食の2時間後)に投与した。
計画E = 実施例11の製剤(プレドニゾン7.5mg)を午前10:30頃(標準的な夕食の2時間後)に投与した。
【0171】
3. 観察したパラメーターは次の通りであった:
a. シンチグラフィーデータの解析:胃から腸への錠剤の移動を記録することを目的とする。シンチグラフィーデータを解析することにより、胃内容排出時間、小腸通過時間、回盲部(ICJ)到達時間、ICJ滞留時間、錠剤芯物質の初期および完全崩壊の解剖学的部位ならびに時間を得た。
b. 薬物動態データの解析:薬物動態データを解析することにより、Cmax、tmax、tlag、AUC0-24、AUC0-∞、λz、およびt1/2を得た。
【0172】
シンチグラフィーの結果は次の通りであった:
実施例10の製剤の完全崩壊の時間は、実施例11および実施例12の製剤のそれより遅かった。実施例10の製剤の錠剤の大部分は結腸内で崩壊し、実施例11および12の製剤の錠剤の場合は該錠剤の大部分が小腸内で崩壊した。下記表11に計画A、B、およびCの錠剤崩壊(投与後の時間)を記載すると共に、下記表12に計画A、B、およびCの錠剤崩壊の部位を記載する。
【表12】

【表13】

【0173】
前記生体試験から得られた得た計画A、B、C、DおよびEの薬物動態学的結果(平均値)を下記表13に記載する:
【表14】

【0174】
計画BおよびCと比べた場合の計画Aの完全錠剤崩壊における遅延は、計画Aでは計画BおよびCよりもTmax値がわずかに高く、またCmax値が低いことに反映されている。プレドニゾロンのAUC0-24値は、計画BおよびCに比べて計画Aで低かった。IR錠と比べると、プレドニゾロンのCmax値およびAUC0-24値は、計画Bで約33%低く、また計画Cで39%低かった。夜に投与した実施例11の製剤のCmax値およびAUC0-24値は、朝に投与した実施例11の製剤のそれらの値よりも約1.4倍高かった。
【0175】
分散剤(例えば、界面活性剤)を加えると、CmaxおよびAUCが有意に上昇した。
【0176】
夜間投与によりCmax値およびAUC値が上昇し、ばらつきも少なかった。これらの値は計画A、B、CよりもIR製品に近かった。
【0177】
結論:
朝に投与した遅延放出送達系の場合、完全崩壊の時間は、実施例11および12の製剤よりも実施例10の製剤の方が遅かった。実施例11および12の製剤の崩壊は、胃腸管内では実施例10の製剤よりも多かった。大部分の被験者では、実施例10の製剤の崩壊は結腸内で生じ、また実施例11および12の製剤の崩壊は小腸内で生じた。これら3種の系の薬物動態パラメーターは、プレドニゾロンの吸収の速度および程度は実施例11および12の製剤の方が実施例10よりも高く、またTmaxおよびTlagは実施例10の方が実施例11および12よりも遅れることで、これらの崩壊における差異を反映している。即時放出錠剤製剤と比べると、吸収の速度および程度はこれらの遅延放出送達系の方が低かった。実施例11を夜に投与すると、実施例11を朝に投与するよりもプレドニゾロンの吸収の速度および程度が高くなった。
【0178】
上記実施例は排他的なものではない。本発明の多くの他の変型は当業者には自明であろうし、またそれらの変型は添付の特許請求の範囲内に含まれることが意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療上有効な量の薬物および製薬上許容しうる界面活性剤を含む芯物質と、該芯物質上に圧縮コーティングした遅延放出材料とを含んでなる遅延放出経口固形剤形であって、該遅延放出材料が1種以上の天然または合成ガムを含み、該圧縮コーティングが、該剤形を水性溶液に曝露した後約2〜約18時間が経過するまで該剤形からの該薬物の放出を遅延させる、上記遅延放出経口固形剤形。
【請求項2】
前記界面活性剤が、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン界面活性剤、およびそれらの混合物からなる群より選択される、請求項1記載の遅延放出経口固形剤形。
【請求項3】
前記界面活性剤が前記芯物質の約5〜約50重量パーセントの量である、請求項1記載の遅延放出経口固形剤形。
【請求項4】
前記界面活性剤が前記芯物質の約10〜約30重量パーセントの量である、請求項1記載の遅延放出経口固形剤形。
【請求項5】
前記薬物が、プレドニゾロン、プレドニゾン、コルチゾン、ヒドロコルチゾン、メチルプレドニゾロン、ベタメタゾン、デキサメタゾン、トリアムシノロン、それらの製薬上許容しうる塩、およびそれらの混合物からなる群より選択されるグルココルチコステロイドである、請求項1記載の遅延放出経口固形剤形。
【請求項6】
前記グルココルチコステロイド薬物がプレドニゾンである、請求項5記載の遅延放出経口固形剤形。
【請求項7】
前記の1種以上の天然または合成ガムが、前記芯物質上に圧縮コーティングする前に糖類材料と凝集させたものである、請求項1記載の遅延放出経口固形剤形。
【請求項8】
前記剤形を水性溶液に曝露した後少なくとも約4時間まで前記薬物の放出を遅延させる、請求項1記載の遅延放出経口固形剤形。
【請求項9】
前記ガムがキサンタンガムとローカストビーンガムとの混合物を含む、請求項1記載の遅延放出経口固形剤形。
【請求項10】
前記遅延放出材料が、硫酸カルシウム、塩化ナトリウム、硫酸カリウム、炭酸ナトリウム、塩化リチウム、リン酸三カリウム、ホウ酸ナトリウム、臭化カリウム、フッ化カリウム、重炭酸ナトリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、クエン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、乳酸カルシウム、硫酸マグネシウム、フッ化ナトリウム、およびそれらの混合物からなる群より選択されるイオン性ゲル強度増強剤をさらに含む、請求項1記載の遅延放出経口固形剤形。
【請求項11】
前記のイオン性ゲル強度増強剤が硫酸カルシウムである、 請求項10記載の遅延放出経口固形剤形。
【請求項12】
前記界面活性剤が、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性(両親媒性/両染性)界面活性剤、および非イオン界面活性剤からなる群より選択される、請求項1記載の遅延放出経口固形剤形。
【請求項13】
前記遅延放出材料が疎水性材料をさらに含む、請求項1記載の遅延放出経口固形剤形。
【請求項14】
前記疎水性材料が、環境流体に曝露された際にゲル化剤の水和を遅くするのに有効な量の、アルキルセルロース、アクリル酸エステルおよびメタクリル酸エステルのコポリマー、ワックス、シェラック、ゼイン、硬化植物油、およびそれらの混合物からなる群より選択される、請求項13記載の遅延放出経口固形剤形。
【請求項15】
前記疎水性材料がエチルセルロースである、請求項13記載の遅延放出経口固形剤形。
【請求項16】
前記糖類が、ショ糖、ブドウ糖、乳糖、果糖、マンニトール、およびそれらの混合物からなる群より選択される、請求項7記載の遅延放出経口固形剤形。
【請求項17】
前記芯物質が、約5〜約20重量パーセントの崩壊剤をさらに含む、請求項1記載の遅延放出経口固形剤形。
【請求項18】
前記崩壊剤が、デンプン、ビーガム、クロスポビドン、セルロース、カオリン、微結晶性セルロース、架橋ポリビニルピロリドン、およびそれらの混合物からなる群より選択される、請求項17記載の遅延放出経口固形剤形。
【請求項19】
前記崩壊剤が、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、架橋カルボキシメチルセルロース、デンプングリコール酸ナトリウム、およびそれらの混合物からなる群より選択される、請求項17記載の遅延放出経口固形剤形。
【請求項20】
前記の内部芯物質が、ショ糖、ブドウ糖、乳糖、微結晶性セルロース、果糖、キシリトール、ソルビトール、マンニトール、デンプン、それらの混合物からなる群より選択される不活性希釈剤をさらに含む、請求項1記載の遅延放出経口固形剤形。
【請求項21】
前記の内部芯物質が即時放出芯物質である、請求項1記載の遅延放出経口固形剤形。
【請求項22】
前記内部芯物質が持続放出担体をさらに含む、請求項1記載の遅延放出経口固形剤形。
【請求項23】
治療上有効な量の薬物および製薬上許容しうる界面活性剤を含む芯物質と、該芯物質上に圧縮コーティングした凝集遅延放出材料とを含んでなる遅延放出経口固形剤形であって、該凝集遅延放出材料がホモ多糖類、ヘテロ多糖類、およびホモ多糖類とヘテロ多糖類との混合物からなる群より選択されるガムを製薬上許容しうる賦形剤と共に含み、該圧縮コーティングが、該剤形を水性溶液に曝露した後の所定時間、該剤形からの該薬物の放出を遅延させる、上記遅延放出経口固形剤形。
【請求項24】
前記界面活性剤が、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン界面活性剤、およびそれらの混合物からなる群より選択される、請求項23記載の遅延放出経口固形剤形。
【請求項25】
前記界面活性剤が前記芯物質の約5〜約50重量パーセントの量である、請求項23記載の遅延放出経口固形剤形。
【請求項26】
前記界面活性剤が前記芯物質の約10〜約30重量パーセントの量である、請求項23記載の遅延放出経口固形剤形。
【請求項27】
前記ヘテロ多糖類ガムが遅延放出コーティングの約20〜約80パーセントの量であり、前記ホモ多糖類ガムが遅延放出コーティングの約80〜約20パーセントの量である、請求項23記載の遅延放出経口固形剤形。
【請求項28】
前記ヘテロ多糖類ガムがキサンタンガムであり、前記ホモ多糖類ガムがローカストビーンガムである、請求項23記載の遅延放出経口固形剤形。
【請求項29】
前記薬物がグルココルチコステロイドである、請求項23記載の遅延放出経口固形剤形。
【請求項30】
前記芯物質が有効量の崩壊剤をさらに含む、請求項23記載の遅延放出経口固形剤形。
【請求項31】
治療上有効な量の薬物、有効量の製薬上許容しうる界面活性剤および有効量の崩壊剤を含む芯物質と、該芯物質上に圧縮コーティングした凝集遅延放出材料とを含んでなる遅延放出経口固形剤形であって、該凝集遅延放出材料が本質的に1種以上の天然または合成の製薬上許容しうるガムからなり、該圧縮コーティングが、該剤形を水性溶液に曝露した後の所定時間、該剤形からの該薬物の放出を遅延させる、上記遅延放出経口固形剤形。
【請求項32】
前記界面活性剤が、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン界面活性剤、およびそれらの混合物からなる群より選択される、請求項31記載の遅延放出経口固形剤形。
【請求項33】
前記界面活性剤が前記芯物質の約5〜約50重量パーセントの量である、請求項31記載の遅延放出経口固形剤形。
【請求項34】
前記界面活性剤が前記芯物質の約10〜約30重量パーセントの量である、請求項31記載の遅延放出経口固形剤形。
【請求項35】
前記芯物質が約5〜約20重量パーセントの崩壊剤を含む、請求項31記載の遅延放出経口固形剤形。
【請求項36】
前記崩壊剤が、デンプン、ビーガム、クロスポビドン、セルロース、カオリン、微結晶性セルロース、架橋ポリビニルピロリドン、およびそれらの混合物からなる群より選択される、請求項31記載の遅延放出経口固形剤形。
【請求項37】
前記崩壊剤が、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、架橋カルボキシメチルセルロース、デンプングリコール酸ナトリウム、およびそれらの混合物からなる群より選択される、請求項31記載の遅延放出経口固形剤形。
【請求項38】
前記剤形を水性溶液に曝露した後少なくとも約4時間まで前記薬物の放出を遅延させる、請求項31記載の遅延放出経口固形剤形。
【請求項39】
前記ガムがキサンタンガムとローカストビーンガムとの混合物を含む、請求項31記載の遅延放出経口固形剤形。
【請求項40】
治療上有効な量の薬物、界面活性剤および崩壊剤を含む芯物質と、該芯物質上に圧縮コーティングした遅延放出材料とを含んでなる遅延放出経口固形剤形であって、該遅延放出材料が1種以上の天然または合成ガムを含み、該圧縮コーティングが、該剤形を水性溶液に曝露した後の所定時間、該剤形からの該薬物の放出を遅延させるものであり、該崩壊剤が該所定時間後1時間以内に該水性溶液中に該薬物の少なくとも約50%を放出させるのに有効な量で該芯物質に含まれる、上記遅延放出経口固形剤形。
【請求項41】
前記界面活性剤が、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン界面活性剤、およびそれらの混合物からなる群より選択される、混合物請求項40記載の遅延放出経口固形剤形。
【請求項42】
前記界面活性剤が前記芯物質の約5〜約50重量パーセントの量である、請求項40記載の遅延放出経口固形剤形。
【請求項43】
前記界面活性剤が前記芯物質の約10〜約30重量パーセントの量である、請求項40記載の遅延放出経口固形剤形。
【請求項44】
前記崩壊剤が前記芯物質の約5〜約20重量パーセントを占める、請求項40記載の遅延放出経口固形剤形。
【請求項45】
前記崩壊剤が前記経口固形剤形の約0.1〜約5重量パーセントを占める、請求項40記載の遅延放出経口固形剤形。
【請求項46】
前記崩壊剤がスーパー崩壊剤である、請求項40記載の遅延放出経口固形剤形。
【請求項47】
前記スーパー崩壊剤が、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、架橋カルボキシメチルセルロース、デンプングリコール酸ナトリウム、およびそれらの混合物からなる群より選択される、請求項46記載の遅延放出経口固形剤形。
【請求項48】
前記ガムがキサンタンガムとローカストビーンガムとの混合物を含む、請求項40記載の遅延放出経口固形剤形。
【請求項49】
前記キサンタンガムおよび前記ローカストビーンガムが、前記芯物質上に圧縮コーティングする前に糖類材料と凝集させたものである、請求項40記載の遅延放出経口固形剤形。
【請求項50】
治療上有効な量の薬物および製薬上許容しうる界面活性剤を含む錠剤芯物質と、該芯物質上に圧縮コーティングした遅延放出材料とを含んでなる遅延放出経口固形錠剤であって、該遅延放出材料が1種以上の天然または合成ガムを含み、該ガムが該錠剤の約6.5〜約83重量パーセントを占めており、該圧縮コーティングが、該剤形を水性溶液に曝露した後約2〜約18時間、該剤形からの該薬物の放出を遅延させる、上記遅延放出経口固形錠剤。
【請求項51】
前記界面活性剤が、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン界面活性剤、およびそれらの混合物からなる群より選択される、請求項50記載の遅延放出経口固形剤形。
【請求項52】
前記界面活性剤が前記芯物質の約5〜約50重量パーセントの量である、請求項50記載の遅延放出経口固形剤形。
【請求項53】
前記界面活性剤が前記芯物質の約10〜約30重量パーセントの量である、請求項50記載の遅延放出経口固形剤形。
【請求項54】
前記錠剤芯物質が約5〜約20%のスーパー崩壊剤をさらに含む、請求項50記載の遅延放出経口固形錠剤。
【請求項55】
約0.01 mg〜約40 mgの薬物および製薬上許容しうる界面活性剤を含む芯物質と、該芯物質上に圧縮コーティングした遅延放出材料とを含んでなる、低用量の薬物のための時間治療用遅延放出経口固形剤形であって、該遅延放出材料が1種以上の天然または合成ガムを含み、該圧縮コーティングが該経口固形剤形の約75〜約94重量パーセントを占めており、該芯物質と該圧縮コーティング中のガムとの比率が重量にして約1:0.37〜約1:5であり、該圧縮コーティングが、該剤形を水性溶液に曝露した後約2〜約18時間、該剤形からの該薬物の放出を遅延させる、上記遅延放出経口固形剤形。
【請求項56】
前記界面活性剤が、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン界面活性剤、およびそれらの混合物からなる群より選択される、請求項55記載の遅延放出経口固形剤形。
【請求項57】
前記界面活性剤が前記芯物質の約5〜約50重量パーセントの量である、請求項55記載の遅延放出経口固形剤形。
【請求項58】
前記界面活性剤が前記芯物質の約10〜約30重量パーセントの量である、請求項55記載の遅延放出経口固形剤形。
【請求項59】
前記剤形の総重量が約220 mg〜約900 mgである、請求項55記載の経口固形剤形。
【請求項60】
前記芯物質の重量が約50 mg〜約170 mgである、請求項55記載の経口固形剤形。
【請求項61】
前記芯物質が前記剤形の総重量の約5〜約23重量パーセントである、請求項55記載の経口固形剤形。
【請求項62】
前記圧縮コーティングが約150 mg〜約850 mgである、請求項55記載の経口固形剤形。
【請求項63】
前記コーティングが前記剤形の総重量の約78〜80重量パーセントである、請求項55記載の経口固形剤形。
【請求項64】
前記芯物質と前記圧縮コーティング中のガムとの比率が約1:0.37〜約1:1.12、最も好ましくは約1:0.75である、請求項55記載の経口固形剤形。
【請求項65】
前記芯物質と前記圧縮コーティングとの比率が好ましくは重量にして約1:2〜約1:9である、請求項55記載の経口固形剤形。
【請求項66】
約41 mg〜約300 mgの薬物および製薬上許容しうる界面活性剤を含む芯物質と、該芯物質上に圧縮コーティングした遅延放出材料とを含んでなる、比較的高用量の薬物のための時間治療用遅延放出経口固形剤形であって、該遅延放出材料が1種以上の天然または合成ガムを含み、該芯物質と該圧縮コーティング中のガムとの比率が重量にして約1:0.3〜約1:3であり、該経口固形剤形の総重量が約500 mg〜約1500 mgであり、該圧縮コーティングが、該剤形を水性溶液に曝露した後約2〜約18時間、該剤形からの該薬物の放出を遅延させる、上記遅延放出経口固形剤形。
【請求項67】
前記界面活性剤が、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン界面活性剤、およびそれらの混合物からなる群より選択される、請求項66記載の遅延放出経口固形剤形。
【請求項68】
前記界面活性剤が前記芯物質の約5〜約50重量パーセントの量である、請求項66記載の遅延放出経口固形剤形。
【請求項69】
前記界面活性剤が前記芯物質の約10〜約30重量パーセントの量である、請求項66載の遅延放出経口固形剤形。
【請求項70】
前記芯物質と前記圧縮コーティング中のガムとの比率が重量にして約1:0.6〜約1:1.5である、請求項66記載の経口固形剤形。
【請求項71】
前記芯物質と前記圧縮コーティングとの比率が重量にして約1:1〜約1:5である、請求項66記載の経口固形剤形。
【請求項72】
前記芯物質と前記圧縮コーティングとの比率が約1:2〜約1:3である、請求項66記載の経口固形剤形。
【請求項73】
前記剤形の総重量が約750 mg〜約1000 mgである、請求項66記載の経口固形剤形。
【請求項74】
薬物の時間治療用経口固形剤形を調製する方法であって、
治療上有効な量の薬物、製薬上許容しうる界面活性剤、および芯物質の約5〜約20重量%の崩壊剤を含む芯物質を調製すること、
1種以上の天然または合成ガムを含む遅延放出材料の造粒物を調製すること、
該造粒物を該芯物質上に圧縮コーティングすること、
を含み、ここで該圧縮コーティングは該剤形を水性溶液に曝露した後約2〜約18時間が経過するまで該剤形からの該薬物の放出を遅延させるものである、
上記方法。
【請求項75】
前記の遅延放出材料の造粒物を、1種以上の天然または合成ガムを少なくとも1種の製薬上許容しうる賦形剤と共に湿式造粒することにより調製し、その後得られた該造粒物を乾燥させることにより前記遅延放出材料の凝集粒子を得ることをさらに含む、請求項74記載の方法。
【請求項76】
前記圧縮コーティングステップの前に前記薬物、前記崩壊剤、および製薬上許容しうる不活性希釈剤を造粒することをさらに含む、請求項74記載の方法。
【請求項77】
前記崩壊剤が、前記芯物質中に組み入れられたスーパー崩壊剤であり、前記の遅延放出のための時間の終了後1時間以内に前記水性溶液中に前記薬物の少なくとも約50%を放出させるのに有効な量で前記芯物質に含まれる、請求項74記載の方法。


【公表番号】特表2007−519608(P2007−519608A)
【公表日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−527049(P2006−527049)
【出願日】平成16年9月17日(2004.9.17)
【国際出願番号】PCT/US2004/030456
【国際公開番号】WO2005/027843
【国際公開日】平成17年3月31日(2005.3.31)
【出願人】(500175152)ペンウェスト ファーマシューティカルズ カンパニー (9)
【Fターム(参考)】