説明

普遍的マトリクス

(i)チップおよび基材表面を提供する工程、(ii)チップ端にパターニング組成物を配置する工程、(iii)チップから基材表面にパターニング組成物の少なくともいくらかを堆積させ、基材表面上に配置される堆積物を形成させる工程を含み、パターニング組成物は少なくとも1つのパターニング種、パターニング種とは異なる少なくとも1つの担体、ならびにパターニング種および担体とは異なる少なくとも1つの添加物を含む方法を提供する。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2007年6月20日に出願された米国特許仮出願第60/945,164号、および2007年6月21日に出願された米国特許仮出願第60/929,314号、ならびに2008年4月24日に出願された米国特許仮出願第61/047,642号に対し優先権を主張するが、これらは全て参照により全体が本明細書に組み入れられる。
【0002】
連邦政府補助金の表示
本明細書で記載した様々な態様は、下記助成金の下、連邦政府により資金供給された:空軍科学研究局(AFOSR助成金:AFOSR FA9550-05-1-0054)およびNSF/NSEC(助成金:EEC-0647560)。政府は本発明において一定の権利を有する。
【背景技術】
【0003】
背景
マイクロアレイおよびナノアレイは重要な商業的開発である。マイクロアレイされ-パターニングされた生体分子、例えば、DNA、タンパク質、および細胞の使用は、ゲノミクスおよびプロテオミクスなどの分野において広範にわたって著しく進歩し、医学的および生物学的研究の多くの分野に適用されている;例えば、Miller, et al., Microarray Technology and Its Applications;Springer;New York(2005)(非特許文献1)を参照されたい。現在のマイクロアレイ技術においては、スポットサイズをナノメートル領域まで減少させ、これにより、コンビナトリアルライブラリの密度を増加させる必要がある。これにより、同時にモニタすることができる相互作用の数を増加させるだけでなく、例えば、生体のDNAの配列決定または相互作用のスクリーニングに必要とされる、費用のかかる試薬の量を減少させることができる。強力な新規ナノリソグラフィー法、例えば、ディップペンナノリソグラフィー(DPN)プリンティングまたはパターニング(例えば、Piner et al., Science, 283, 661-663(1999)(非特許文献2)を参照されたい)の出現により、現在、そのような1-次元または2-次元アレイにおける加工寸法(feature size)が、それらの物理的限界、すなわち、それらが製造されている構造のサイズ、およびそれらが問われることとなっている構造のサイズにまで減少する可能性がある;例えば、Rosi et al., Nanostructures Chemical Reviews, 105, 1547-1562(2005)(非特許文献3)を参照されたい。そのような大規模な小型化により、コンビナトリアルライブラリの密度を増加させ、生物的診断事象との関連においてそのような構造の感度を増加させ、必要とされる試料分析物の体積を減少させるだけでなく、従来のマイクロアレイフォーマットでは不可能であった研究が実施できるようになる。
【0004】
DPNが、パターニングされた生体分子アレイの分野に提供しうる可能性を達成するために、ナノメートルスケールでの生体分子の直接描画パターニング用の、単純で、および/または強固な技術が開発される可能性がある。また、生体分子の大規模な並列多重パターニングが望ましい。DPNによる生体分子パターニングの従来の方法は、一般に、オリゴヌクレオチドまたはタンパク質であるならば、単一インク組成物に限定される。複数のインクのDPNパターンでは、単一成分生体分子を最初にパターニングした後に長期にわたる整合手順を実施し、その後、第2の生体分子をパターニングする必要がある。異なる生体分子と本質的に関連する異なる拡散速度から得られる、大規模な並列フォーマットで堆積される多重生体分子パターンを作成する際の1つの顕著な技術的挑戦;例えば、Lee et al., J. Am. Chem. Soc. 125, 5588-5589(2003)(非特許文献4);Lim et al., Angew. Chem. Int. Ed. 42, 2309-2312(2003)(非特許文献5)を参照されたい。この領域では以前に進歩が見られたが、依然として、特に商業的用途を目的とする要求が存在している。1つの潜在的な制限は、再現可能なチップコーティングを目的とする、AFMチップなどのチップの化学修飾である。異なる生体分子は特定の修飾が必要なことがあり、これにより、適合性の問題が生じる可能性がある。第2は、並列DPNプリンティングの状況におけるものである。生体分子は異なる輸送特性を有する可能性があるため、チップ間で不均一な表面特徴に至る可能性があり、場合によっては、全く堆積させることができない。最後に、生物活性の変性および損失が問題となる可能性がある。これらの潜在的な制限を回避するためには、分子の生物活性を保存したまま、輸送速度を均一にすることができる方法が望ましい。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Miller, et al., Microarray Technology and Its Applicatioins;Springer;New York(2005)
【非特許文献2】Piner et al., Science, 283, 661-663(1999)
【非特許文献3】Rosi et al., Nanostructures Chemical Reviews, 105, 1547-1562(2005)
【非特許文献4】Lee et al., J. Am. Chem. Soc. 125, 5588-5589(2003)
【非特許文献5】Lim et al., Angew. Chem. Int. Ed. 42, 2309-2312(2003)
【発明の概要】
【0006】
概要
本明細書で提供した態様は、製造方法、使用方法、装置、組成物、などを含む。
【0007】
1つの態様は、(i)チップおよび基材表面を提供する工程、(ii)チップ端にパターニング組成物を配置する工程、(iii)チップから基材表面にパターニング組成物の少なくともいくらかを堆積させ、基材表面上に配置される堆積物を形成させる工程を含み、パターニング組成物が少なくとも1つのパターニング種、パターニング種とは異なる少なくとも1つの担体、ならびにパターニング種および担体とは異なる少なくとも1つの添加物を含む、方法を提供する。
【0008】
別の態様は、添加物を、添加物とは異なる少なくとも1つのパターニング種ならびに添加物およびパターニング種とは異なる少なくとも1つの担体を含むパターニング組成物と混合する工程を含み、チップ端上に配置される場合および基材表面上に堆積される場合にパターニング種のパターニングを促進する、化学的添加物を使用するための方法を提供する。
【0009】
別の態様は、担体インクとしてアガロースを使用する直接描画ディップペンナノリソグラフィー(DPN)のために、生体分子の拡散速度を制御する方法を記載する。アガロースゲルマトリクスの性質は、多くの異なる添加物により修飾され、その結果、接触時間、湿度または温度の他に、スポットサイズを制御するための別の方法が得られる。添加物の適当な型および濃度を選択することにより、2つまたはそれ以上の異なる生体分子の拡散を調節してもよく、その結果、2つの異なる生体分子インクに対し、接触時間が同様かまたは実質的に同じである、同様のスポットサイズが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】アガロース/生体分子に基づくインクの効果を促進するために使用することができる添加物およびそれらの濃度範囲を示す。
【図2】アガロース/生体分子でインク付けしたAFMチップの顕微鏡画像を示す。(a)添加物を含まないアガロース/DNAでインク付けしたチップ。(b)1.5%スクロース添加物を有するアガロース/DNAでインク付けしたチップ。
【図3】DNA/アガロース/Tris-EDTA緩衝液のインクの拡散速度を示す。A)60%湿度で、滞留時間0.01〜10sでパターニングした典型的な拡散実験のAFM顕微鏡写真。B)対応する蛍光画像。C)30×Tris-EDTA(TE)(300mM Tris、30mM EDTA)と1×TE(10mM Tris、1mM EDTA)の間の拡散速度の違いを示すインクの拡散曲線。
【図4】2つのインクに対し同様の拡散速度を示す、DNA/アガロース/30mMグリセロールインクおよびコレラ毒素タンパク質/アガロース/30mMグリセロールインクに関するスポットサイズ対滞留時間を示す。
【図5】DNAハイブリダイゼーションの蛍光顕微鏡写真を示す。A)アガロース/グリセロールインクを用い、DPNにより堆積させたDNAのスポット。B)非相補的配列の導入後の陰性対照。C)相補配列とのハイブリダイゼーションを示す陽性シグナル。
【図6】生体認識を表す、タンパク質の蛍光顕微鏡写真を示す。A)アガロース/グリセロールインクを用いたコレラ毒素タンパク質のスポット。B)非コレラ毒素反応性Cy5標識IgG抗体の導入後の陰性対照。C)固定したコレラ毒素タンパク質を用いた、Alexa Fluor 488で標識した抗コレラ毒素の生体認識を示す陽性シグナル。
【図7】1つの態様におけるアガロースマトリクスでコートしたAFM接触モードチップを示す。
【図8】DPNマルチペンアレイにより作製したCy3標識DNナノアレイの蛍光顕微鏡画像を示す。
【図9】図9(a)および(b)は、DPNマルチペンアレイにより作製した、それぞれ216スポットを含む、Cy3標識DNAナノアレイの蛍光顕微鏡画像を示す。
【図10】DPNマルチペンアレイにより作製した、コレラ毒素タンパク質(Alex 594標識)の蛍光顕微鏡画像を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
詳細な説明
序論
本明細書で引用した参考文献は全て、参照により、その全体が本明細書に組み入れられる。
【0012】
2007年6月20日に出願された優先権主張米国特許仮出願第60/945,164号、および2007年6月21日に出願された優先権主張米国特許仮出願第60/929,314号、ならびに2008年4月24日に出願された優先権主張米国特許仮出願第61/047,642号は全て、参照により、特許請求の範囲、図面、実施例、および他の記述態様を含む、その全体が本明細書に組み入れられる。
【0013】
本出願と同じ日に出願された、“Matrix Assisted Ink Transport”と題する、Mirkinらの共に係属中の米国特許出願第 は、参照により、特許請求の範囲、図面、実施例、および他の記述態様を含んで、本明細書に組み入れられる。
【0014】
本出願と同じ日に出願された、“Universal Matrix”と題する、Mirkinらの共に係属中の米国特許出願第 は、参照により、特許請求の範囲、図面、実施例、および他の記述態様を含んで、本明細書に組み入れられる。
【0015】
本明細書では、様々な新規アプローチが立証されている。1つの態様では、多糖および化学的添加物がパターニング組成物の一部として使用される。多糖は例えばアガロースでありえ、一方、化学的添加物は、例えば吸湿性分子、例えばスクロースなどの炭水化物でありうる。例えば多糖は、ディップペンナノグラフィー(DPN)プリンティングを用いて、生体分子(例えば、オリゴペプチドおよびタンパク質)を含む様々な分子および種を直接、表面上にパターニングするための生体適合性インク担体として機能することができ、一方、化学的添加物は、担体が乾燥しないようにする吸湿性作用物質として、および担体の物理的特性を修飾する作用物質として、同時に機能することができる。
【0016】
インク担体としての多糖の使用は、これにより、送達される生体分子の構造および生物活性を保存することができる好都合な生体適合性環境が得られるため、望ましい。パターニング組成物の一部として、好ましい多糖および化学的添加物を使用する場合、有効であればDPNプリンティング前にAFMチップの表面修飾を行うことができるが、任意である。さらに、埋め込んだ生体分子の堆積速度は、担体マトリクスおよび添加物の所望の組み合わせを選択することにより担体マトリクスの拡散速度を制御することによって制御することができる。これにより、並列DPNプリンティングを用いて、異なる生体分子を制御可能な速度で同時に堆積させることが可能になる。このアプローチを、パターニングがより困難な生体分子の送達のために適用することもできる。
【0017】
器具類、材料、および方法を含むDPNプリンティングは、当技術分野において一般に公知である。本明細書で記載した様々な態様の実施では、リソグラフィー、マイクロリソグラフィー、およびナノリソグラフィー機器、ペンアレイ、アクティブペン、パッシブペン、インク、パターニング化合物、キット、インク送達、ソフトウエア、ならびに直接描画プリンティングおよびパターニングのためのアクセサリは、NanoInk, Inc., Chicago, ILから入手可能である。ソフトウエアとしてはINKCADおよびNSCRIPTORソフトウエア(NanoInk, Chicago, IL)が挙げられ、リソグラフィー設計および制御のためのユーザインタフェースが提供される。E-Chamberを環境制御のために使用することができる。ディップペンナノリソグラフィー(Dip Pen Nanolithography)(商標)およびDPN(商標)はNanoInk, Inc.の商標である。
【0018】
カンチレバー、チップおよびパターニング化合物を用いる直接描画プリンティングに関連する下記特許および共に係属中の出願は、参照により、その全体が本明細書に組み入れられ、インク、パターニング化合物、ソフトウエア、インク送達装置などを含む、本明細書で記載された様々な態様の実施において使用することができる。
【0019】
Mirkinらの米国特許第6,635,311号は、インク、チップ、基材、および他の器具類パラメータおよびパターニング法を含むDPNプリンティングの基本的な局面を記載する。
【0020】
Mirkinらの米国特許第6,827,979号は、ソフトウエア制御、エッチング手順、ナノプロッター、ならびにコンプレックスおよびコンビナトリアルアレイ形成を含むDPNプリンティングの基本的な局面をさらに記載する。
【0021】
2002年9月5日に公開された米国特許出願公開第2002/0122873 A1号(“Nanolithography Methods and Products Produced Therefor and Produced Thereby”)は、DPNプリンティングの開口態様および駆動力態様を記載する。
【0022】
2003年2月14日に出願されたEbyらの米国普通特許出願第10/366,717号(“Methods and Apparatus for Aligning Patterns on a Substrate”)は、DPNプリンティングに対する整合法を記載する(2003年10月2日に2003/0185967として公開)。
【0023】
2003年2月28日に出願されたDupeyratらの米国普通特許出願第10/375,060号(“Nanolithographic Calibration Methods”)は、DPNプリンティングに対する較正法を記載する。
【0024】
Mirkinらの2003年4月10日に公開された米国特許出願公開第2003/0068446号(“Protein and Peptide Nanoarrays”)は、タンパク質およびペプチドのナノアレイを記載する。
【0025】
Mirkinらの2002年12月2日に出願された米国普通特許出願第10/307,515号(“Direct-Write Nanolithographic Deposition of Nucleic Acids from Nanoscopic Tips”)は、核酸パターニングを記載する(2003年6月12日に公開されたPCT/US2002/038252)。
【0026】
Mirkinらの2002年12月17日に出願された米国普通特許出願第10/320,721号(“Patterning of Solid State Features by Direct-Write Nanolithographic Printing”)は、反応性パターニングおよびゾルゲルインクを記載する(現在、2003/0162004として2003年8月28日に公開)。
【0027】
Liuらの米国特許第6,642,129号および同第6,867,443号(“Parallel, Individually Addressible Probes for Nanolithography”)は、アクティブペンアレイを記載する。
【0028】
Schwartzの、2003年1月9日に公開され、米国特許出願公開第2003/0007242号(“Enhanced Scanning Probe Microscope and Nanolithographic Methods Using Same”)。
【0029】
Schwartzの、2003年1月9日に公開された米国特許出願公開第2003/0005755号(“Enhanced Scanning Probe Microscope”)。
【0030】
現在、第2004/0101469号として公開されている、2003年8月11日に出願された米国特許出願第10/637,641号は、触媒ナノ構造およびカーボンナノチューブ用途を記載する。
【0031】
2004年2月12日に2004/0026681として公開されて現在公開されている、2003年5月23日に出願された米国特許出願第10/444,061号、および2004年1月15日に公開された米国特許出願公開第2004/0008330号は、それぞれ、タンパク質および導電ポリマーのプリンティングを記載する。
【0032】
現在、米国特許第7,005,378号となっている、2003年8月26日に出願された米国特許出願第10/647,430号は、パターニング化合物として導電性材料を記載する。
【0033】
2004年9月9日の2004/0175631として現在公開されている、2003年10月21日に出願された米国特許出願第10/689,547号は、フォトマスク修復を含むマスク用途を記載する。
【0034】
2005年2月17日の2005/0035983として現在公開されている、2003年11月12日に出願された米国特許出願第10/705,776号は、マイクロフルイディクスおよびインク送達を記載する。
【0035】
2005年1月13日の2005/0009206として現在公開されている、2004年3月1日に出願された米国特許出願第10/788,414号は、ペプチドおよびタンパク質のプリンティングを記載する。
【0036】
2005年12月8日の2005/0272885として現在公開されている、2004年7月19日に出願された米国特許出願第10/893,543号は、ROMP法およびコンビナトリアルアレイを記載する。
【0037】
2005年11月17日に2005/0255237として公開されて現在公開されている、2005年2月14日に出願された米国特許出願第11/056,391号は、スタンプチップまたはポリマーコートチップ用途を記載する。
【0038】
2005年10月27日の2005/0235869として現在公開されている、2005年2月25日に出願された米国特許出願第11/065,694号は、チップレスカンチレバーおよび平面パネルディスプレイ用途を記載する。
【0039】
2006年1月19日に公開された米国特許出願公開第2006/001,4001号は、DPN法により製造されるナノ構造のエッチングを記載する。
【0040】
2004年12月2日に公開されたLiu & MirkinのWO 2004/105046は、接触プリンティングのための走査プローブを記載する。
【0041】
ウイルスアレイを記載する、Mirkinの米国特許出願公開第2007/0129321号。
【0042】
例えば、2007年3月23日に出願されたMirkinらの米国特許出願公開第2008/0105042号に記載されている二次元ナノアレイもまた参照されたい。これは参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。
【0043】
上記で引用した参考文献は全て、参照によりそれらの全体が組み入れられ、その中の教示は、本明細書で記載されている様々な態様と共に使用するために適合させることができる。
【0044】
DPN法はまた、高いスループットの並列法の記載を含む、Ginger et al., “The Evolution of Dip-Pen Nanolithography,”Angew. Chem. Int. Ed. 43, 30-45(2004)においても記載されている。
【0045】
DPNプリンティングおよびパターン転写法を含む直接描画法は、例えば、Direct-Write Technologies, Sensors, Electronics, and Integrated Power Sources, Pique and Chrisey (Eds)(2002)において記載されている。
【0046】
本明細書で記載した直接描画ナノリソグラフィー機器および方法は特に、ペプチド、タンパク質、核酸、DNA、RNA、ウイルス、生体分子、などに基づくバイオアレイ、ナノアレイ、およびマイクロアレイを調製する際に使用するには興味深い。例えば、チップ(chip)およびライブラリーの大量製造に対しては米国特許第6,787,313号;ペプチドチップを有する自動分子生物研究室のためには同第5,443,791号;薬学用途における分子アレイの自動合成のための装置に対しては同第5,981,733号を参照されたい。コンビナトリアルアレイを調製することができる。また例えば、Hendersonらの米国特許第7,008,769号;同第6,573,369号;および同6,998,228号を参照されたい。
【0047】
走査プローブ顕微鏡法は、例えばBottomley, Anal. Chem. 70, 425R-475R(1998)において概説されている。また走査プローブ顕微鏡は、例えば米国特許第5,705,814号(Digital Instruments)において記載されているプローブ交換機構を含む技術分野において公知である。
【0048】
パターニング組成物は、チップから基材表面への転写および堆積のために、製剤化し適合させることができる。組成物は、1つまたは複数の多糖、1つまたは複数のパターニング種、および1つまたは複数の化学的添加物を含む、2つ以上の成分を有することができる。パターニング組成物は、堆積過程を妨害する成分および成分の量を排除するように製剤化することができ、ここで、パターニング組成物は良好な結果を達成するのに必要とされる構成要素を含む。パターニング組成物は、堆積工程前にチップ上で、部分的に、または完全に乾燥させることができる。
【0049】
所望であれば、インク製剤中で界面活性剤を使用することができる。例えば、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる、Collierらの米国特許出願公開第2006/0242740号を参照されたい。
【0050】
パターニング組成物-生体分子
パターニング分子はインクの形態でありうる。1つまたは複数のパターニング種を含むことができる。パターニング種は分子または微粒子またはコロイドでありうる。合成または天然でありうる。ポリマー、オリゴマー、または非ポリマーでありうる。小分子でありうる。生体分子の用途は特に注目すべきである。例えば、パターニング種は生体分子でありうる(ここで、水は生体分子ではない)。パターニング種は生体高分子でありうる。パターニング種は核酸またはアミノ酸単位の重合された単位または反復単位を含むことができる。パターニング種は例えばオリゴヌクレオチド、DNA、RNA、タンパク質、ペプチド、糖、炭化水素、などでありうる。パターニング種は、基材表面との相互作用に関して、合成的に適合されないように使用することができる。例えば、天然種、例えば、天然タンパク質でありうる。また、パターニング種は、基材表面との相互作用に関して、合成的に適合されるように使用することができる。例えば、末端の基を官能化させ、表面に結合させることができる。これは、例えばR-XまたはR-(X)nにより表すことができ、式中、RはX基により官能化されたパターニング種であり、nはX基の数であり、これは例えば、1〜10、または1〜5、または1〜3でありうる。
【0051】
パターニング種として機能しうる非生物化合物としては、例えば、微粒子材料、ナノ構造材料、有機化合物、無機化合物、ポリマー、合成ポリマー、金属(例えば、金)に化学吸着する化合物、例えば、チオールおよびスルフィド、などが挙げられる。
【0052】
タンパク質分子
パターニング種は、タンパク質材料ならびにタンパク質およびペプチドを含むことができる。タンパク質材料としては、例えば、抗体、酵素、などが挙げられる。
【0053】
ペプチドおよびタンパク質態様では、ペプチド結合を含む様々な種類の化学構造を含むナノアレイを調製することができる。これらには、ペプチド、タンパク質、オリゴペプチド、およびポリペプチドが含まれ、それらは単純か、または複雑である。ペプチド単位は、非ペプチド単位と組み合わせることができる。タンパク質またはペプチドは、単一のポリペプチド鎖または複数のポリペプチド鎖を含むことができる。一般に、分子量がより高いペプチドが好ましいが、オリゴペプチドを含む分子量がより低いペプチドを使用することができる。ペプチド中のペプチド結合の数は、例えば、少なくとも3、10もしくはそれ未満、少なくとも100、約100〜約300、または少なくとも500でありうる。
【0054】
タンパク質は特に好ましい。タンパク質は単一か、または複合でありうる。複合タンパク質の例としては、核タンパク質、リポタンパク質、リンタンパク質、金属タンパク質および糖タンパク質が挙げられるが、それらに限定されない。
【0055】
タンパク質は、他のタンパク質、ポリペプチドまたはペプチドとの複合体中で共存した場合、機能的となる可能性がある。タンパク質はウイルスでありえ、ウイルスはタンパク質および核酸の複合体でありえ、DNAまたはRNA型である。タンパク質は、より大きな構造、例えば、球またはロッド構造のシェルでありうる。
【0056】
タンパク質の形状は球形または繊維状でありうる。後者は一般に、水に典型的には不溶の強固な材料である。これらは1つのポリペプチド鎖または、例えば、繊維形態のような、平行に配列された複数のポリペプチド鎖を含むことができる。例としてはコラーゲンおよびエラスチンが挙げられる。球状タンパク質は、隙間なく折り畳まれて球状または球形の形状とされ、大部分は水系に溶解できるポリペプチドである。例えば、多くの酵素は、抗体、いくつかのホルモンおよび輸送タンパク質、例えば血清アルブミンおよびヘモグロビンのように、球状タンパク質である。
【0057】
ミオシンおよびフィブリノーゲンのような、繊維状および球状の特性を有するタンパク質を使用することができ、これらは強固でロッド状構造であるが可溶性である。タンパク質は1を超えるポリペプチド鎖を有することができ、オリゴマータンパク質とすることができ、それらの個々の成分はプロトマーと呼ばれる。オリゴマータンパク質は、普通は互いに共有結合により結合されていない、偶数のポリペプチド鎖を通常含む。ヘモグロビンはオリゴマータンパク質の一例である。
【0058】
組み入れることができるタンパク質の型としては、酵素、貯蔵タンパク質、輸送タンパク質、収縮タンパク質、保護タンパク質、毒素、ホルモン、および構造タンパク質が挙げられるが、それらに限定されない。
【0059】
酵素の例としては、リボヌクレアーゼ、シトクロムc、リゾチーム、プロテアーゼ、キナーゼ、ポリメラーゼ、エキソヌクレアーゼ、およびエンドヌクレアーゼが挙げられるが、それらに限定されない。酵素およびそれらの結合機構は、例えば、Alan FershtによるEnzyme Structure and Mechanism, 2nd Ed.,1977において開示されており、15章に下記酵素型が含まれる:デヒドロゲナーゼ、プロテアーゼ、リボヌクレアーゼ、ブドウ球菌ヌクレアーゼ、リゾチーム、炭酸脱水酵素およびトリオースリン酸イソメラーゼ。
【0060】
貯蔵タンパク質の例としては、卵白アルブミン、カゼイン、フェリチン、グリアジンおよびゼインが挙げられるが、それらに限定されない。
【0061】
輸送タンパク質の例としては、ヘモグロビン、ヘモシアニン、ミオグロビン、血清アルブミン、β1-リポタンパク質、鉄結合グロブリン、およびセルロプラスミンが挙げられるが、それらに限定されない。
【0062】
収縮タンパク質の例としては、ミオシン、アクチン、ダイニンが挙げられるが、それらに限定されない。
【0063】
保護タンパク質の例としては、抗体、補体タンパク質、フィブリノーゲン、およびトロンビンが挙げられるが、それらに限定されない。
【0064】
毒素の例としては、クロストリジム ボツリヌム(Clostridium botulinum)毒素、ジフテリア毒素、コレラ毒素タンパク質、Alexa Fluor 594修飾コレラ毒素タンパク質、ヘビ毒、およびリシンが挙げられるが、それらに限定されない。
【0065】
ホルモンの例としては、インスリン、副腎皮質刺激ホルモンおよびインスリン様成長ホルモン、ならびに成長ホルモンが挙げられるが、それらに限定されない。
【0066】
構造タンパク質の例としては、ウイルスコートタンパク質、糖タンパク質、膜構造タンパク質、α-ケラチン、スクレロチン、フィブロイン、コラーゲン、エラスチン、およびムコタンパク質が挙げられるが、それらに限定されない。
【0067】
天然または合成ペプチドおよびタンパク質を使用することができる。使用することができるタンパク質は、例えば組換え法により調製される。
【0068】
好ましいタンパク質の例としては、免疫グロブリン、IgG(ウサギ、ヒト、マウス、など)、タンパク質A/G、フィブリノーゲン、フィブロネクチン、リゾチーム、ストレプトアビジン、アビジン、フェリチン、レクチン(Con. A)、およびBSAが挙げられる。ウサギIgGおよび、IgGにサンドイッチ構造で結合されたウサギ抗IgGは有用な例である。
【0069】
スプライソソームおよびリボゾームなどを使用することができる。
【0070】
非常に広範囲のタンパク質が当業者に公知であり、使用することができる。例えば、参照により本明細書に組み入れられる、A. L. Lehninger, 1970 によるBIOCHEMISTRYの55〜66ページの第3章、“Proteins and their Biological Functions:A Survey”を参照されたい。
【0071】
標識タンパク質および蛍光標識タンパク質を含む、追加のタンパク質について、下記実施例において記載する。タンパク質はコレラ毒素サブユニットBおよびトリプシン阻害剤を含むことができる。
【0072】
核酸パターニング種
核酸態様では、核酸は特に限定されない。例えば核酸は、例えば基材への化学吸着または共有結合のために調整された官能基を含むように、合成により製造し修飾することができ、または天然由来である。核酸は、低、中、または高分子量を有することができ、オリゴマーまたはポリマーでありうる。核酸は一本鎖、二本鎖、または三本鎖とすることさえできる。核酸はデオキシリボ核酸(DNA)、リボ核酸(RNA)、またはそれらの組み合わせに基づくことができる。核酸の構造は一般に、例えば、Calladine and Drew, Understanding DNA, The Molecule and How it Works, 2nd Ed., 1997において記載されている。
【0073】
パターニングすることができる核酸の一般型としては、例えば、DNA、RNA、PNA、CNA、RNA、HNA、p-RNA、オリゴヌクレオチド、DNAのオリゴヌクレオチド、RNAのオリゴヌクレオチド、プライマー、A-DNA、B-DNA、Z-DNA、DNAのポリヌクレオチド、RNAのポリヌクレオチド、核酸のT接合部、非核酸ポリマー-核酸ブロックコポリマーのドメイン、およびそれらの組み合わせが挙げられる。核酸の別の一般型としては、例えば、ウイルスRNAまたはDNA、疾患と関連する遺伝子、細菌DNA、真菌DNA、生物学的起源由来の核酸、ポリメラーゼ連鎖反応増幅の産生物である核酸、ナノ粒子と接触した核酸、および三本鎖複合体の産生に至る、ナノ粒子上でオリゴヌクレオチドとハイブリダイズされた二本鎖核酸が挙げられる。
【0074】
一般に、核酸は、遺伝情報の貯蔵および複製ならびにタンパク質合成によるその情報の発現において中心的役割を果たす、細胞およびウイルス内で見られる有機物の一群のいずれかでありうる。プリン、ピリミジン、および炭化水素、ならびにリン酸は一般に核酸の基本的な有機物を特徴づける。プリンおよびピリミジンはヌクレオチド、ヌクレオシドであり、ここで、2-デオキシ-D-リボースまたはD-リボースの一級ヒドロキシ基がオルトリン酸によりエステル化される。ヌクレオシドは、プリンまたはピリミジン塩基が、N-原子を介してC-1に結合されており、2-デオキシ-D-リボースまたはD-リボースのいずれかのヒドロキシ基が置換されているが、リン酸基を有さない化合物である。生体系における一般的なヌクレオシドはアデノシン、グアノシン、シチジン、およびウリジン(リボースを含む)ならびにデオキシアデノシン、デオキシグアノシン、デオキシシチジン、およびチミジン(デオキシリボースを含む)である。このように、プリン塩基はアデニンヌクレオチドまたはグアニンヌクレオチドであってもよい。ピリミジン塩基はチミンヌクレオチド、シトシンヌクレオチド、またはウラシルヌクレオチドであってもよい。
【0075】
核酸配列は、ランダムであってもよく、または所望のアミノ酸構造をコードするように特異的であってもよい。例えば、3つのヌクレオチドの群はコドンを含む可能性がある。1つのコドンは1つのアミノ酸を含む。核酸のコード領域はコドンを含む。
【0076】
核酸は自由に存在することができ、またはペプチドもしくはタンパク質に結合し、別々の束または構造化形態、例えば染色体などの核タンパク質を形成することができる。核酸はまた、一本鎖または二本鎖形態で存在することができる。核酸は直線、環状、またはスーパーコイルであってもよい。核酸は直接、細胞または細胞小器官から単離してもよい。プラスミドまたはクローニングベクターもまた核酸の例である。
【0077】
核酸はヌクレオチドから構成させることができ、それぞれが、糖(デオキシリボース)、リン酸基、ならびに窒素含有プリン-およびピリミジン-塩基の混合物を含む。糖は環状または非環状形態をとってもよい。DNAはチミンおよびシトシンピリミジンのみを含み、ウラシルを含まない。DNAは細胞から、ゲノム、核またはミトコンドリアDNAとして細胞から単離してもよく、または合成により製造してもよい(すなわち、化学的過程により)。
【0078】
細胞中に存在する遺伝子は典型的には、DNAのエキソンおよびイントロンストレッチから構成されるゲノムDNAを含む。エキソンストレッチは、アミノ酸をコードするコドンを含むヌクレオチドを含み、一方、DNAのイントロンストレッチは、おそらくアミノ酸をコードするコドンを含まないヌクレオチドを含む。プリンおよびピリミジンのヌクレオチド配列は、その遺伝子により特定されるタンパク質のポリペプチド鎖中のアミノ酸の配列を決定する。
【0079】
DNAはまた、RNA依存性DNAポリメラーゼの作用により、RNA鋳型から合成した相補またはコピーDNA(cDNA)として単離されてもよい。例えば、cDNAはPCR増幅により、約100〜800mer鎖とすることができる。RNA鋳型がイントロンを除去するように処理された場合、cDNAはRNAが転写された遺伝子と同一ではない。このようにcDNAは、実際には大部分がエキソンであるヌクレオチドのストレッチを含んでもよい。
【0080】
二本鎖形態である場合、2つのDNA鎖は二重らせんを形成する。このらせんでは、1つの鎖中の各ヌクレオチドは、もう一方の鎖上の特定のヌクレオチドに水素結合される。このように、DNAでは、アデニンはチミンと結合し、グアニンはシトシンと結合する。各鎖中に存在するヌクレオチドの互いに結合する能力により、鎖が相補的であること、例えば、1つの鎖上の全てのアデニンに対し、もう一方の鎖上にはチミンが存在することが決定される。
【0081】
RNAは一般にDNAに類似する可能性があるが、デオキシリボースの代わりにリボース糖を、チミンの代わりにウラシル塩基を含む。RNAは一本鎖または二本鎖とすることができ、細胞DNAから転写される。RNA分子はヘアピンループまたは他の二本鎖構造を形成してもよい。RNAは鋳型RNA、メッセンジャーRNA(mRNA)、全RNA、またはトランスファーRNA(tRNA)であってもよい。ポリソーム。本発明により、RNA-DNAハイブリッド分子を堆積させることができる。さらに、タンパク質-核酸、または「ペプチド核酸」(“PNA”)もまた、使用してもよい。
【0082】
相補ヌクレオチド間で示される結合特性は、核酸を、他の核酸に結合することができるプローブとして有用なものとすることができる。核酸は標識することができ、プローブとして使用することができる。多くの標準標識技術のうちのいずれか一つによって、核酸プローブを使用してハイブリダイゼーションにより別の核酸を検出することができる。標識が、例えば、蛍光、放射性または酵素標識である場合、ハイブリダイゼーションを可視化または検出することができる。このように、本発明の核酸はまた、蛍光マーカーまたはタグのような検出可能な実体、金粒子、ストレプタビジン、ジゴキシゲニン、磁性ビーズ、または当業者に公知の他のマーカーを含むように、標識、または修飾することができる。例えば、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる、Landesの米国特許第4,626,501号(“Labeled DNA”)を参照されたい。
【0083】
ヌクレオチドおよび核酸はまた、核酸分解に対し保護されるように修飾することができる。例えば、核酸はリポソーム内にカプセル化されてもよい。また、チオール基をポリヌクレオチド内に、例えば、RNAまたはDNA分子内に、ヌクレオチドのリン含有基を置換することにより、組み入れてもよい。そのように核酸の「骨格」に組み入れられた場合、チオールはその部位でのDNAの切断を阻止することができ、従って核酸分子の安定性が改善される。
【0084】
Cookらの米国特許第5,965,721号もまた、参照によりその全体が組み入れられるが、パターニング可能で、改善されたヌクレアーゼ抵抗性を有し、改善された細胞取り込みを有することができるオリゴヌクレオチドが開示されている。
【0085】
このように、インビボでの核酸処理のバイオアベイラビリティを、記載のように核酸を修飾することによって改善してもよい。例えば、修飾した核酸製剤は、増加した半減期を有する可能性があり、および/または非修飾核酸よりも長い期間、血漿中に保持される可能性がある。例えば、核酸およびポリエチレングリコールの製剤もまた、任意の公知の持続放出核酸製剤のように、インビボでの核酸の半減期を増加させる可能性がある。このように、核酸を修飾することによって、インビボでの核酸の効果および/またはそのバイオアベイラビリティが増加する可能性がある。
【0086】
核酸のサイズは、数ヌクレオチドのサイズからオリゴヌクレオチドまで、またはプローブ、ポリヌクレオチドまで、遺伝子、染色体フラグメントから完全染色体まで、およびゲノムまで、相当の範囲とすることができる。例えば、一本鎖または二本鎖核酸は、少なくとも10-、20-、30-、40-、50-、60-、70-、80-、90、または100-ヌクレオチドまたは塩基対(bp)の長さであってもよい。さらに大きい場合、核酸は、少なくとも0.2kb、0.3kb、0.4kb、0.5kb、0.6kb、0.7kb、0.8kb、0.9kb、または1.0kbのサイズであってもよい。実際に、本発明で使用するための核酸は、少なくとも1kb、2kb、3kb、4kb、5kb、6kb、7kb、8kb、9kb、もしくは10kbまたはそれ以上のサイズとすることができる。1つの好ましいサイズ範囲は1〜2kbである。核酸は様々な長さのヌクレオチド鎖とすることができ、典型的には、ポリヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドと呼ばれる。オリゴヌクレオチドは、一般にヌクレオチドの直鎖状配列から得られるオリゴマーである。オリゴヌクレオチドは、例えば、約2〜約100、約2〜約20、約10〜約90、または約15〜約35ヌクレオチドを含むことができる。オリゴヌクレオチドアレイでは、約25merのオリゴヌクレオチドを使用することができる。別の特別な範囲は約60〜約80merであり、これは比較的長いオリゴヌクレオチドである。
【0087】
核酸の選択、プロービング、標識、および検出を含む、マイクロアレイ法は米国特許第6,379,932号および同第6,410,231号(Incyte Genomics)に記載されており、使用することができる。これらの特許は参照により全体が組み入れられる。これらの参考文献はディップペンナノグラフィー法について言及しているが、どのようにディップペンナノグラフィー法を使用して本明細書で記載したような改善されたナノアレイを作製することができるかについて示唆しておらず、またはそれについての手引きを提供していない。
【0088】
単一ヌクレオチドを含む化合物もまた、インクとして使用することができる。核酸混合物を使用することができ、1つのアレイ上の異なるスポットは異なる核酸を含むことができる。
【0089】
堆積のための核酸は、基材表面上への直接描画の堆積前、または後に、他の要素と共に製剤化または混合してもよい。このように、本発明の「インク」は、所望の核酸試料に加えて、基材表面に堆積させるための他の化学物質、化合物、または組成物を含んでもよい。溶媒および塩を使用して、核酸をチップに適用することができる。界面活性剤もまた使用することができる。例えば、タンパク質、ポリペプチド、およびペプチドを所望の核酸と共に基材表面に堆積させてもよい。
【0090】
核酸アレイ、およびその中で使用される核酸の型は、例えば、A Primer of Genome Science, G. Gibson and S. Muse, 2002, Chapters3-4(123〜181ページ)において記載されており、これは参照により本明細書に組み入れられる。この参考文献は、例えば、cDNAマイクロアレイおよびオリゴヌクレオチドアレイの両方、標識、ハイブリダイゼーション、および統計分析を記載する。cDNAアレイを使用して、何千もの遺伝子の発現の相対レベルを同時にモニタすることができる。PCR増幅させたcDNAフラグメント(EST)を、蛍光または放射性標識したcDNAに対し、スポッティングまたはプロービングすることができる。観察されたシグナル強度は、研究しているRNA群中に存在する転写物の量に比例すると仮定することができる。強度の差は、処理間の転写物レベルの差を反映する。統計学的および生物情報学的分析をその後、通常、確立した分子生物学的アプローチを用いて試験してもよい仮説を作成する目的で、実施することができる。しかしながら、現在のcDNAマイクロアレイは、15,000要素の上限を有する可能性があり、より高等な真核生物のゲノムにおいて存在する遺伝子の完全な組を示すことができない。オリゴヌクレオチド対cDNAマイクロアレイの利点および欠点は前記A Primer of Genome Scienceにおいて記載されており、本明細書で記載した核酸ナノアレイを構築する際に使用することができる。
【0091】
オリゴヌクレオチドはまた、標識オリゴヌクレオチドおよびフルオロ標識したオリゴヌクレオチドを含む下記実施例において記載されている。
【0092】
パターニング組成物-溶媒
パターニング組成物は1つまたは複数の溶媒を含むことができる。溶媒は、例えば、純水、蒸留水、脱イオン水、などを含む水でありうる。緩衝溶媒でありうる。pHは用途によって変動させることができる。溶媒は1種または複数種の有機溶媒でありうる。溶媒化合物の混合物を使用することができる。例としては、当業者に公知のように、アルコール、エーテル、アルカン、エステル、芳香族化合物が挙げられる。
【0093】
パターニング組成物-担体
パターニング組成物は1種または複数種の担体を含むことができる。担体は、例えば、パターニング種の輸送を促進する、またはパターニング種をカプセル化するように機能することができる。担体は合成または天然でありえ、好ましくは親水性である。例えば、担体は多糖でありえ、多糖は一般に当技術分野で公知である。例えば、Hohinski, Modern Concepts in Biochemistry, 4th Ed., 1983, Chapter 7(炭化水素ならびに様々な糖および多糖を記載)を参照されたい。例えば、多糖はデンプン、セルロース、または非分枝多糖、例えばアガロースでありうる。アガロースは天然多糖ゲルであり、これは生体適合性であって、生物学的に不活性であることが証明されており、低い内部蛍光を有する;例えば、Mateo et al., Enzyme and Microbial Technology (2006)を参照されたい。例えば、海藻またはいくつかの種の紅藻から得ることができる。また、合成することもできる。しばしば、微生物培養において凝固剤または支持培地として使用される。ゲル電気泳動のためにも使用することができる。例えば、チューブまたはスラブ形態で成型することができる。
【0094】
アガロースは熱的に可逆なゲル化機構をおこす可能性があり、この場合、ゲル化温度は一般に約30℃である。このかなり低い温度により、アガロースは、例えば生体分子と、生理的温度でゾル状態のまま混合させることができる。アガロースの生体分子に対する比は任意の比、例えば1:3、1:1、または3:1とすることができる。担体として使用されるアガロースマトリクスは、プローブを用いたパターニング種のリザーバとして機能することができ、チップ1つあたり480を超えるポイントで、基材へのパターニング組成物の一定の送達が確保される(図7を参照されたい)。
【0095】
パターニング組成物-化学的添加物
化学的添加物を使用して、パターニング組成物中の担体マトリクスの物理的および/または化学的特性を制御することができる。担体が乾燥するのを阻止することができるため、一般に添加物としては吸湿材料が好ましい。添加物の1つの魅力的な特徴は、添加物が、ポリマー鎖の架橋密度などの担体の特性を修飾することができることであり、これにより、例えば担体の粘性がより低くなる。いずれの特別な理論にも縛られることを望まないが、炭化水素、例えばスクロースなどの添加物は、担体ゲル内での凝集度を減少させる作用物質として機能することができ、その結果、例えばより小さな相関長が得られ、これは、担体マトリクスまたはゲル中のポリマー鎖のより小さな断面半径と相関しうる。
【0096】
例えば、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンエチレンジアミン四酢酸(“Tris-EDTA”)などのトリス緩衝液およびスクロースはどちらも、アガロース束を、より小さなゲル構造に破壊する効果を有する;例えば、Normand et al., Carbohydrate Polymers (2003)を参照されたい。これらの吸湿性材料はまた、空気からの水分を吸収し、アガロースゲルを水和させたままとする。実際には添加物の使用により、湿度、温度、および接触時間などのパラメータに加えて、ゲルをAFMチップから基材表面に堆積させる拡散速度および輸送特性を制御するパラメータが提供される。
【0097】
添加物の型は炭水化物または緩衝液に限定される必要はない。上記の所望の特性を有する任意の材料を使用することができる。例えば、添加物は脂質または糖アルコール、例えばグリセロールでありうる。グリセロールは3つのヒドロキシル基を含み、1、2または3つの脂肪酸とエステル化されると、それぞれ、モノグリセリド、ジグリセリドおよびトリグリセリドを形成する。脂肪酸の1つが糖またはホスフェートと置換された場合、得られた化合物は、それぞれ、糖脂質またはリン脂質である。脂肪酸は不飽和、飽和、一不飽和または多価不飽和でありうる。
【0098】
チップおよび器具類
材料をチップから基材表面に移動させることによりパターニングを実行するための器具類は当技術分野において公知である。例えば、NanoInk, Inc.(Skokie, IL)からの製品を参照されたい。例えば、米国特許第6,827,979号;同第6,642,129号;同第6,867,443号;同第7,008,769号;同第6,573,369号;および同第6,998,228号もまた参照されたい。例えば、チップはナノスコピックチップでありうる。例えば、チップは走査プローブ顕微鏡チップまたは原子間力顕微鏡チップでありうる。チップは固体チップでありえ;または、チップは中空チップでありうる。中空チップは、インク組成物をチップ端に送達するための、開口および送達流路を含むことができる。チップは、例えば、無機表面または有機表面を含むことができる。チップは硬質材料から、例えば微細加工により製造することができる。チップの鮮鋭化を実施することができる。
【0099】
チップ作製後、チップはそのまま使用することができるが、そのまま使用する場合最初に清浄化することができる。チップはまた、所望であれば作製後、表面修飾することができる。例えば、有機コーティングを無機チップ表面に添加することができる。
【0100】
チップは、無機チップ表面を含むチップ表面を有することができ、これは有機材料により修飾されていない。
【0101】
チップはAFM技術分野で公知の材料から作製することができ、窒化ケイ素、ケイ素、および他の硬質材料が挙げられる。
【0102】
チップは、当技術分野において公知なように、カンチレバー端またはカンチレバー付近を含むカンチレバー上に配置することができる。
【0103】
チップは所望であれば、例えば少なくとも5μm、または少なくとも10μmの長さを有するかなり長いチップとすることができる。
【0104】
チップはチップのアレイの一部とすることができ、そのため、複数のチップを提供することができる。表面に対してz方向に移動するためには、チップは受動モードで共に移動することができ、または能動または作動モードで個々に移動させることができる。このように、堆積工程では、チップは受動的に使用することができ、または作動チップとして使用することができる。作動機構は、例えば、熱または静電またはピエゾ抵抗とすることができる。チップの一次元アレイを使用することができ;またはチップの二次元アレイを使用することができる。特に、多数のチップを有するアレイを使用することができる。例えば、Lenhart Small論文(Lenhart et al.,Small 3, no.1, 71-75(2007))を含む、参照により全体が本明細書に組み入れられる、2007年3月23日に出願されたMirkinらの米国特許出願第11/690,738号を参照されたい。
【0105】
チップ、およびカンチレバー上に配置されたチップを、表面に対しx、yおよびz方向に移動させる器具類の方法は当技術分野において公知である。
【0106】
器具類は、チップを加熱するために適合させることができる。例えば、Sheehanらの米国特許出願公開第2006/0242740号を参照されたい。
【0107】
基材および基材表面
堆積のための表面を提供する様々な基材を使用することができる。基材は、当技術分野においてマイクロアレイを調製するために使用されるものでありうる。基材はポリマー、ガラス、セラミック、複合物、金属、半導体、酸化物、ケイ素、などでありうる。基材はモノリシック、ワンピースでありえ、または互いに配置された複数の層を含むことができる。基材は無機または有機表面コーティングを含むことができる。単層コーティングを使用することができる。表面は有機官能基または有機材料により官能化させることができる。例えば、基材は有機材料で修飾された無機材料表面を含むことができる。基材は、例えば、生体分子でありうる。
【0108】
基材表面は、パターニング組成物の1つまたは複数の成分に共有結合する、または化学吸着するように適合させることができる。例えば、基材表面は求電子性表面でありうる。基材表面は、パターニング種中の官能基と反応するように適合させることができる。例えば、タンパク質中のアミノ基はスクシンイミドと反応することができる。または、チオール基もしくは化合物は金に化学吸着することができる。例えば、アルデヒド修飾基材もまた、アミン修飾またはアミン含有生体分子のイミン形成による固定のための反応性支持体として使用することができる。カプセル化された生体分子がADMチップから基材上に堆積されるとすぐに、アガロースゲルマトリクスを空気に暴露して乾燥させ、MilliQ水で洗浄して除去することができる。
【0109】
蛍光検出を使用する場合、基材およびパターニングは、蛍光のクエンチングを最小に抑える、または回避するように適合させることができる。
【0110】
基材は必要に応じて予めパターニングすることができ、堆積ゾーンに対する境界を提供し、堆積ゾーンに対する空間を指定することができる。
【0111】
堆積
チップおよび基材表面は、パターニング組成物の堆積が起こり、材料がチップから表面に移動され、堆積物が形成されるように、互いに対し移動させることができる。場合によっては、堆積を促進するためにメニスカスが存在してもよい。堆積のために定位置にあるチップは所望のように制御することができる。
【0112】
場合によっては、熱を使用して堆積を促進することができる。チップおよびチップを支持するカンチレバーは加熱することができ、または堆積領域の周囲の環境を加熱することができる。環境チャンバを使用して、湿度、温度、雰囲気ガス、および他のパラメータを制御することができる。例えば堆積は、堆積を起こすことができるのに十分な、例えば十分高い相対湿度で実施することができる。場合によっては、相対湿度が高いほど、堆積が進み、または加速される可能性がある。堆積は、例えば少なくとも30%、または少なくとも50%、または少なくとも70%の相対湿度で実施することができる。
【0113】
担体がゲル-液晶転移温度を示す場合、堆積温度はこの温度より高くすることができ、例えばゲル-液晶転移温度より10℃またはそれ以上高い温度とすることができる。
【0114】
堆積工程はチップを表面と接触させることにより実施することができ、この場合、チップは表面に対しxy表面内に固定して保持される。また堆積工程は、チップを表面と接触させることにより実施することができ、この場合、チップは表面に対しxy表面内に固定して保持されず、むしろチップは移動している。
【0115】
スポッティング/堆積中の接触時間は、例えば、7秒〜10秒の間で変動する可能性があり、直径が約200〜500nmの特徴が得られる。使用することができるAFMプローブは、例えば、約0.3〜約2N/m2の範囲のバネ定数kを有することができる。アルデヒド-基材は、活性化ガラススライドへのトリメトキシシリルアルキルアルデヒドの蒸着により作製することができる。
【0116】
走査プローブ器具類、例えば、AFM器具類を使用する場合、例えば接触モード、非接触モード、またはタッピングモードまたは間欠接触モードを含む使用のための様々なモードを使用することができる。
【0117】
ゲルを形成する短いインキュベーション期間の後、AFMチップは、チップを直接ゲルインクに浸漬させることにより、インクウェルにより、またはゲルインク滴を固体基材上に置き、AFMもしくは他の制御機構によってチップをゲル内に下ろすことにより直ちにコートしてもよい。アガロースゲルインクの粘着性の粘性性質により、インク付け手順に対し最小〜無のチップ修飾が得られる。
【0118】
堆積の促進および速度
添加物は、アガロースなどの担体を含むパターニング組成物の堆積速度を上昇または増加させることができる。例えば、いくつかの態様では、パターニング組成物は実質的には、添加物なしでチップから離れることはなく、またはチップから離れる量が検出するには少なすぎる、もしくは商業的に有用になるのにかかる時間が長すぎる可能性がある。堆積の検出は、例えば、蛍光検出または走査プローブ法により実施することができる。
【0119】
堆積物
堆積物は、様々な形状およびパターンで形成させることができる。パターンは単一の堆積物中に、または一連の別個の堆積物中に見出すことができる。堆積物は、例えばドットまたは線でありうる。線は直線または曲線でありうる。堆積物は、線幅またはドット直径により特徴づけることができる。例えば、ドット直径または線幅は約10nm〜約20μm、または約50nm〜約10μm、または約100nm〜約1μm未満とすることができる。
【0120】
堆積物はまた、高さにより特徴づけることができる。例えば、高さは約1nm〜約1μm、または約10nm〜約750nm、または約100nm〜約500nmとすることができる。
【0121】
堆積物間の距離は、高い解像度を反映することができ、例えば、約50μmもしくはそれ未満、または約10μmもしくはそれ未満、または約1μmもしくはそれ未満、または約15nm〜約10μm、または約100nm〜約1μmとすることができる。堆積物間の距離は縁から縁までの距離として、または中心点(例えば、ドットの中心)間の距離として測定することができる。
【0122】
堆積物は、例えば洗浄により、担体、パターニング種、添加物、またはそれらの組み合わせを含む1つまたは複数の成分を除去するように処理することができる。堆積および洗浄は、パターニング組成物中の分子が除去されないように適合させることができる。全てまたは実質的に全ての担体を除去することができ、または所望であれば、洗浄をそれに応じて適合させた場合、いくらかの脂質を保持することができる。
【0123】
アレイ
アレイを含む物品もまた本明細書で提供されており、ここで、アレイは基材および基材表面上に配置された1つまたは複数の堆積物を含む。堆積物は本明細書で記載した方法により形成させることができる。
【0124】
用途
用途としては、生物アレイを含むマイクロアレイおよびナノアレイ、ならびにそのようなアレイの公知の用途が挙げられる。例えば、タンパク質に基づくナノ構造のための直接パターニングおよびナノパターニング法の開発が、プロテオミクス、およびセラノスティクスの領域で働く研究者にとって重要である。そのような方法により、タンパク質、オリゴヌクレオチドおよびウイルスの多成分生物ナノ構造を作製することができる。他の用途としては、ナノスケールでのより大きな生物学的実体(すなわち、真核細胞、ウイルス、細菌、および胞子)との生体分子相互作用の研究のようなハイスループットなゲノムおよびプロテオミクス分析のため、ならびにバイオセンシングおよび医学的診断のための、生物マイクロアレイおよびナノアレイの開発が挙げられる。
【0125】
非限定的な実施例
一連の非限定的な実施例を提供する。
【0126】
材料および方法
下記材料および技術を、非限定的な実施例のいくつかの態様において使用した。
【0127】
材料
様々な生体分子、例えばDNAまたはタンパク質を、ディップペンナノリソグラフィーにより活性化ガラス表面(アルデヒド、またはNHSのいずれかで活性化したスライド)上で、担体インクとしてアガロースマトリクスを使用してパターニングした。インクは約0.3%のアガロース(総濃度の約0.15%)および生体分子、例えば異なる態様で様々な濃度を有するDNAまたはタンパク質の、1:1混合物を含んだ。様々な化学的添加物もまた、最終インク組成物中に含有させた(図1)。化学的添加物の目的は少なくとも2倍であった。第1に、化学的添加物は一般に吸湿性材料を含み、これらはアガロースマトリクスがAFMチップ上で乾燥しないようにする(図2を参照されたい)。第2に、化学的添加物はアガロースゲルの性質を修飾し、従ってチップから基材表面へのインクの拡散速度を加速する。少数の化学的添加物のみを調べたが、拡散速度を制御する添加物の使用は、アガロースマトリクスの性質を修飾する他の化学物質にまで拡張してもよい。
【0128】
オリゴヌクレオチドはIntegrated DNA Technologies, Inc., San Diego, USAから購入、またはExpidite DNA合成機で、Glen Research, USAから入手した前駆体を使用して合成した。DPN研究のために使用したプローブ配列は、

の配列を有した。プローブ濃度は約15〜約100μMであった。相補配列は、

の形態であった。ランダム配列は、

の形態であった。コレラ毒素タンパク質Alexa Fluor 594(1mg/ml)はMolecular Probesから購入した。抗コレラ毒素IgG抗体はBiodesign Internationalから購入し、Alexa Fluor 488(Molecular Probes)で修飾した。ロバ抗ヤギIgG抗体(Cy5)はR&D Systems, USAから入手した。Tris-EDTA(Sigma)添加物は10mM Tris、1mM EDTA(1×)〜300mM Tris、30mM EDTA(30×)の濃度範囲であった。グリセロール(Sigma)添加物は、約20〜約100mMの範囲で使用した。全ての緩衝液および生体分子溶液は18.2MΩ・cmの蒸留水(MilliQ)を用いて調製した。下記化学物質を受理したままで使用した:トリメトキシシリルアルキルアルデヒド(United Chemical Technologies, Inc.)、低融点アガロース(Fisher Biotech, BP 165-25)、トリス(ヒドロキシメチル)アミン(Sigma)、エチレンジアミン四酢酸(Sigma)、1,1,1トリス(ヒドロキシメチル)エタン(Sigma)、トリシン緩衝溶液(Sigma)、スクロース(Sigma)、エタノールアミン(Sigma)、Codelink活性化ガラススライド(GE Healthcare)。
【0129】
修飾ガラススライド
GE HealthcareからのCodelink活性化ガラススライドを、受理したまま使用した。これらのスライドを、タンパク質などの分子のスライドへの付着を促進することができるアミン反応基を含む親水性ポリマーを有する3-D化学物質でコートした。アルデヒド修飾では、清浄な顕微鏡カバーガラス(Fisher Scientific)を酸素プラズマ中で15分間活性化させ、直ちにトリメトキシシリルアルキルアルデヒドの20分の蒸着に供した。単層形成後、基材をエタノールですすいで過剰のシランを除去し、N2で乾燥させた。
【0130】
インク調製
2分間マイクロ波オーブン内で加熱してアガロースをMilliQ水に溶解することにより、0.3%アガロースゲルを調製した。ゾル形態のゲルを生体分子溶液と、添加物と共にまたは添加物なしで、1:1の比で混合した。
【0131】
ディップペンナノリソグラフィー
DPNをNScriptor(Nanoink, Skokie, IL, USA)において接触モードで、マルチペン一次元アレイM-チップ(バネ定数0.5N/m)を用いて約60%の湿度の大気中で実施した。チップを、M-チップインクウェル中に3〜5回浸漬させることによりインク付けした。滞留時間(すなわち、チップがインク中に浸漬されたままの時間)は約0.01〜約20sまで変動した。
【0132】
蛍光顕微鏡法
Carl Zeiss, Axiovert 200M落射蛍光顕微鏡を用いて蛍光像を得た。
【0133】
基材表面上でのハイブリダイゼーション
Codelinkスライド上のDNAパターンを、最低8時間、50%の湿度で反応させ、激しく撹拌しながらPBS(5分)で洗浄し、水ですすいで残留アガロースを除去した。反応時間は、例えば、6〜約9時間の範囲で変動しうる。これらの基材を、50mMのエタノールアミンを含むpH8のTris-EDTAで、1時間、50℃でブロックした。ハイブリダイゼーションのために、5’-Cy5-標識したオリゴヌクレオチドを、0.02% SDSを含む4×SSC中で1μMまで希釈し、その溶液の液滴を修飾ガラススライドの表面に適用した。カバースリップを溶液の上面に穏やかに置き、基材を45℃のハイブリダイゼーションオーブンに8時間移した。ハイブリダイズしていないプローブを、0.01% SDS溶液を有する1×SSC中で5分間ハイブリダイゼーション温度で、0.01% SDSを有する0.1×SSC中で5分間室温で、激しく撹拌しながら洗浄し、その後水中で5分間洗浄することにより除去した。
【0134】
基材表面での生体認識
Codelinkスライド上のタンパク質パターンを、最低8時間、50%の湿度で反応させ、その後、激しく撹拌しながらPBS(5分)で洗浄し、水ですすいで残留アガロースを除去した。抗コレラ毒素IgG抗体(Alexa Fluor 488)またはロバ抗ヤギ(Cy5)のいずれかを、1×PBS、1% BSA、0.25% Tween-20中で100μg/mLの濃度まで希釈した。この溶液の液滴を基材表面に適用し、カバースリップを上面に穏やかに置いた。基材をその後、37℃のオーブンに45分間移した。未反応プローブを、1×PBS、1% BSA、0.25% Tween-20中、5分間室温で激しく撹拌しながら洗浄することにより除去し、その後水ですすいだ。
【0135】
実施例1 Tris-EDTA緩衝液の拡散速度に対する効果
1つの態様では、拡散速度はTris-EDTA緩衝液の使用により加速させてもよい。緩衝液がない場合、純水DNA/アガロースインクはほとんど不動であることが見出されており、AFMチップから基材へ拡散しない。TrisのEDTAに対する比は、任意の値とすることができる。1つの態様では、10mM Tris、1mM EDTAの濃度を使用すると、DNA/アガロースインクの拡散速度は、アルデヒド修飾したガラス基材上で約0.0035μm/s2であると測定された。緩衝液の濃度を300mM Tris、30mM EDTAまで増加させた場合、拡散速度は同じアルデヒド修飾した基材上で0.2μm/s2まで増加した(図3を参照されたい)。
【0136】
実施例2 拡散速度に対するグリセロールの効果
1つの態様では、グリセロールをDPNのためのパターニング組成物中の添加物として使用した。添加物がない場合、DNA/アガロースインクは、AFMチップからNHS活性化Codelinkガラススライド基材に拡散しないことが見出された。対照的に、添加物がない場合、コレラ毒素タンパク質/アガロースインクは、チップから基材へ移動することが見出された。このように、2つのインクの拡散特性は異なっていた。しかしながら、30mMグリセロールを用いると、DNA/アガロースインクおよびコレラ毒素タンパク質/アガロースインクの両方の拡散速度が、概して等しく、0.4〜0.7μm2/sで変動するように変更された(図4を参照されたい)。
【0137】
実施例3 生物活性の研究
1つの態様では、インク中の添加物として30mMグリセロールを使用して、Codelink活性化ガラススライド基材上に堆積させたオリゴヌクレオチドおよびタンパク質の生物活性を、蛍光によりプロービングした。5’アミンおよび3’Cy3フルオロフォアを有する変異β-グロビンの一本鎖を、DPNによりCodelink活性化ガラススライド基材上にスポッティングさせた(図5)。それぞれ、216スポットを有するCy3-標識DNAナノアレイの蛍光顕微鏡像は、DPNマルチペンアレイにより作製することができる(図9(a)および(b)を参照されたい)。5’Cy5修飾を有する非相補的なランダム配列オリゴヌクレオチド鎖を導入した後、固定したDNAのCy3シグナルを検出したが、Cy5シグナルは観察されなかった。その後同じ基材を、5’端でCy5により修飾された相補配列に暴露させると、正のシグナルが明確に検出された。このように、Codelink活性化ガラススライド上に固定されたアガロース担体中のオリゴヌクレオチドは、生物活性なままであった。ランダム配列を有する負の対照は、担体インクとしてアガロースを使用してスポッティングさせたオリゴヌクレオチド間の相互作用は配列特異的なままであること、ランダムオリゴヌクレオチド配列と表面上に存在するか、または存在しない可能性のある任意の残留アガロースとの間には相互作用はないことを示した。
【0138】
さらに、スポッティングさせたタンパク質の生物活性を、DNAに対し概説した同じ蛍光法を用いてプロービングした。Alexa Fluor 594修飾コレラ毒素タンパク質、アガロース、および30mMグリセロールから構成されるインクを、DPNによりCodelink活性化ガラススライド基材上に堆積させた。コレラ毒素に対し非特異的なCy5標識IgG抗体と共にインキュベートすると、負の対照が得られた。しかしながら、同じ基材を、コレラ毒素に特異的なAlexa Fluor 488修飾IgG抗体と共にインキュベートした場合、正のシグナルがコレラ毒素タンパク質、および抗体の両方に対し観察された。このように、担体マトリクスとしてアガロースを使用して堆積されたタンパク質は、DPN後活性なままであり、特異性を保持した(図6および図10を参照されたい)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
チップおよび基材表面を提供する工程、
チップ端にパターニング組成物を配置する工程、
チップから基材表面にパターニング組成物の少なくともいくらかを堆積させ、基材表面上に配置される堆積物を形成させる工程
を含み、
パターニング組成物が少なくとも1つのパターニング種、パターニング種とは異なる少なくとも1つの担体、ならびにパターニング種および担体とは異なる少なくとも1つの添加物を含む、方法。
【請求項2】
チップがナノスコピックチップである、請求項1記載の方法。
【請求項3】
チップが走査プローブ顕微鏡チップである、請求項1記載の方法。
【請求項4】
チップが原子間力顕微鏡チップである、請求項1記載の方法。
【請求項5】
チップが固体チップである、請求項1記載の方法。
【請求項6】
チップが中空チップである、請求項1記載の方法。
【請求項7】
チップが、有機材料により修飾されていない表面を含む、請求項1記載の方法。
【請求項8】
チップが、有機材料により修飾されていない無機表面を含む、請求項1記載の方法。
【請求項9】
チップが、カンチレバー上にある、請求項1記載の方法。
【請求項10】
複数のチップが提供される、請求項1記載の方法。
【請求項11】
複数のチップがチップの一次元アレイで提供される、請求項1記載の方法。
【請求項12】
複数のチップがチップの二次元アレイで提供される、請求項1記載の方法。
【請求項13】
堆積工程で、チップが受動的に使用される、請求項1記載の方法。
【請求項14】
堆積工程で、チップが作動チップとして使用される、請求項1記載の方法。
【請求項15】
基材表面が、パターニング組成物の1つまたは複数の成分に共有結合し、または化学吸着するように適合される、請求項1記載の方法。
【請求項16】
基材表面が求電子性表面である、請求項1記載の方法。
【請求項17】
基材表面がアミノ基と反応性である、請求項1記載の方法。
【請求項18】
基材表面がチオール化合物に化学吸着するように適合される、請求項1記載の方法。
【請求項19】
基材表面が有機材料を含む、請求項1記載の方法。
【請求項20】
基材が生体分子である、請求項1記載の方法。
【請求項21】
パターニング組成物がチップ上での乾燥に供せられる乾燥工程をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項22】
配置工程が、チップ端をパターニング組成物の少なくともいくつかに浸漬させる工程をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項23】
配置工程が、チップ端をパターニング組成物の少なくともいくつかに浸漬させ、かつチップ端を組成物中で約0.01〜約20秒間保持する工程をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項24】
堆積工程が、堆積を起こさせるのに十分高い相対湿度で実施される、請求項1記載の方法。
【請求項25】
堆積工程が、少なくとも30%の相対湿度で実施される、請求項1記載の方法。
【請求項26】
堆積工程が、少なくとも50%の相対湿度で実施される、請求項1記載の方法。
【請求項27】
堆積工程が、少なくとも6時間実施される、請求項1記載の方法。
【請求項28】
堆積工程が、少なくとも8時間実施される、請求項1記載の方法。
【請求項29】
堆積工程が、チップを表面と接触させ、チップを表面に対しXY面内で固定して保持することにより実施される、請求項1記載の方法。
【請求項30】
堆積工程が、チップを表面と接触させ、チップを表面に対しXY面内で移動させることにより実施される、請求項1記載の方法。
【請求項31】
堆積物がドットまたは線である、請求項1記載の方法。
【請求項32】
パターニング種がタンパク質である、請求項1記載の方法。
【請求項33】
パターニング種がDNA分子である、請求項1記載の方法。
【請求項34】
パターニング種がRNA分子である、請求項1記載の方法。
【請求項35】
パターニング種がオリゴヌクレオチドである、請求項1記載の方法。
【請求項36】
パターニング種がコレラ毒素タンパク質である、請求項1記載の方法。
【請求項37】
堆積工程後、パターニング種が生物活性なままである、請求項1記載の方法。
【請求項38】
堆積工程後、パターニング種が配列特異的なままである、請求項1記載の方法。
【請求項39】
パターニング種が担体と実質的に相互作用しない、請求項1記載の方法。
【請求項40】
担体が多糖である、請求項1記載の方法。
【請求項41】
担体がアガロースである、請求項1記載の方法。
【請求項42】
添加物が緩衝液である、請求項1記載の方法。
【請求項43】
添加物がTris-EDTA緩衝液である、請求項1記載の方法。
【請求項44】
添加物が炭水化物である、請求項1記載の方法。
【請求項45】
添加物が糖アルコールである、請求項1記載の方法。
【請求項46】
添加物がスクロースである、請求項1記載の方法。
【請求項47】
添加物が吸湿性である、請求項1記載の方法。
【請求項48】
添加物がグリセロールである、請求項1記載の方法。
【請求項49】
添加物が担体の少なくとも1つの物理的特性を修飾する、請求項1記載の方法。
【請求項50】
担体および添加物が共に、実質的に同じ量で存在する、請求項1記載の方法。
【請求項51】
担体および添加物が共に、パターニング組成物の約0.15%に達する、請求項1記載の方法。
【請求項52】
添加物が30mMのグリセロールである、請求項1記載の方法。
【請求項53】
添加物が30mMのTris-EDTA緩衝液である、請求項1記載の方法。
【請求項54】
堆積工程が、その後に基材を洗浄して残留担体を除去する工程をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項55】
原子間力顕微鏡チップおよび基材表面を提供する工程、
原子間力顕微鏡チップ端にパターニング組成物を配置する工程、
チップから基材表面にパターニング組成物の少なくともいくらかを堆積させ、基材表面上に配置される堆積物を形成させる工程
を含み、
パターニング組成物が少なくとも1つのパターニング種、パターニング種とは異なる少なくとも1つの担体、ならびにパターニング種および担体とは異なる少なくとも1つの添加物を含む、方法。
【請求項56】
チップおよび基材表面を提供する工程、
チップ端にパターニング組成物を配置する工程、
チップから基材表面にパターニング組成物の少なくともいくらかを堆積させ、基材表面上に配置される堆積物を形成させる工程
を含み、
パターニング組成物が少なくとも1つの生体分子、少なくとも1つの担体、ならびに生体分子および担体とは異なる少なくとも1つの添加物を含み、かつ、
添加物が、パターニング組成物の基材表面上での堆積速度を上昇させる、または増加させる、方法。
【請求項57】
ナノスコピックチップおよび基材表面を提供する工程、
ナノスコピックチップ端にパターニング組成物を配置する工程、
チップから基材表面にパターニング組成物の少なくともいくらかを堆積させ、基材表面上に配置される堆積物を形成させる工程
を含み、
パターニング組成物が少なくとも1つの生体分子、生体分子とは異なる少なくとも1つの担体、ならびに生体分子および担体とは異なる少なくとも1つの添加物を含む、方法。
【請求項58】
添加物を、添加物とは異なる少なくとも1つのパターニング種ならびに添加物およびパターニング種とは異なる少なくとも1つの担体を含むパターニング組成物と混合し、チップ端上に配置される場合および基材表面上に堆積される場合にパターニング種のパターニングを促進する工程を含む、化学的添加物を使用するための方法。
【請求項59】
化学的添加物がグリセロールである、請求項58記載の方法。
【請求項60】
化学的添加物がTris-EDTA緩衝液である、請求項58記載の方法。
【請求項61】
化学的添加物が吸湿性である、請求項58記載の方法。
【請求項62】
パターニング種が生体分子である、請求項58記載の方法。
【請求項63】
パターニング種がDNA生体分子である、請求項58記載の方法。
【請求項64】
パターニング種がタンパク質である、請求項58記載の方法。
【請求項65】
担体がアガロースである、請求項58記載の方法。
【請求項66】
チップおよび基材表面を提供する工程、
チップ端にパターニング組成物を配置する工程、
チップから基材表面にパターニング組成物の少なくともいくらかを堆積させ、基材表面上に配置される堆積物を形成させる工程
を含み、
パターニング組成物が少なくとも1つの担体および担体とは異なる少なくとも1つの添加物を含む、方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2010−530247(P2010−530247A)
【公表日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−513360(P2010−513360)
【出願日】平成20年6月17日(2008.6.17)
【国際出願番号】PCT/US2008/067234
【国際公開番号】WO2009/035739
【国際公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【出願人】(507294960)ノースウエスタン ユニバーシティ (10)
【Fターム(参考)】