説明

晶析装置

【課題】構造が簡単で晶析における分級性能が高い晶析装置を提供する。
【解決手段】底部2bに分級脚3を有する縦型の容器2内の上方の中心部に、該容器2内の混濁スラリーの原料液を該容器2の内周面に沿って旋回流を生じさせる回転翼手段5を設けると共に、前記容器の底面の中心部に、前記原料液を前記容器2の中心部において上方に流動させる液流方向変更手段6を設け、該液流方向変更手段6は前記底面に放射状に設けた帯状板のバッフル6aからなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療品関係、食品関係等における中間製品や最終製品を得るために適用される晶析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の晶析装置として、例えば、図6の如く、密閉した縦型容器a内の中央部にドラフトチューブbを設けると共に、該ドラフトチュウーブb内の下方部に撹拌翼cを軸支し、前記縦型容器aの下半部の膨出部dにおいてバッフルeを垂下して該バッフルeの外方の前記膨出部d内をセットリング域fに形成すると共に、前記縦型容器aの下部に分級脚gを設け、該分級脚gに結晶の流出管hを接続すると共に、該分級脚gの下端部と前記膨出部dとの間に循環管路iを接続して該循環管路iにポンプjを介在し、前記撹拌翼cを回転して、懸濁スラリーを前記ドラフトチュウーブbの内外を循環させ、この循環中に所望の大きさに成長した結晶は循環流から外れて前記縦型容器a内の底部に沈降し、前記分級脚g内で分級した結晶は前記流出管hより流出し、又、前記セットリング域f内の微小結晶を含んだ溶液は一部が前記循環管路iを経て前記分級脚gに、一部が加熱され微小結晶を溶解して前記容器a内に戻されるようにした装置が知られている(非特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】化学工学協会編「化学工学便覧」発行所 丸善株式会社、昭和63年3月18日発行、p.444−445
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この従来の晶析装置によれば、前記容器内aに前記ドラフトチューブbが設けられていると共に、該容器aの下半部を前記膨出部dに形成して前記バッフルeを垂下し、これら膨出部dとバッフルeとの間にセットリング域fが形成されている構成であるので、構造が複雑で装置として高価となる問題点があった。
【0005】
本発明はこのような問題点を解消し、簡単な構造で、晶析における分級性能が高い晶析装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明はこの目的を達成すべく、底部に分級脚を有する縦型の容器内の上方の中心部に、該容器内の原料液を該容器の内周面に沿って旋回流を生じさせる回転翼手段を設けると共に、前記容器内の底面の中心部に、前記原料液を前記容器の中心部において上方に流動させる液流方向変更手段を設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、簡単な構造で、晶析における分級性能が高い効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施例1の晶析装置の正面断面図である。
【図2】図1のI−I線から見た回転翼手段の下面図である。
【図3】図1のII−II線截断面図である。
【図4】実施例1の晶析装置の容器内のフローパターンを示す正面断面図である。
【図5】実施例1の変形例の晶析装置の正面断面図である。
【図6】従来例の晶析装置の下半部の正面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明を実施するための形態の実施例を以下に示す。
【実施例1】
【0010】
本発明の実施例1を図1乃至図4により説明する。
【0011】
図1は本発明の実施例1の晶析装置の正面断面図、図2は図1のI−I線から見た回転翼手段の下面図、図3は図1のII−II線截断面図、図4は実施例1の晶析装置の容器内のフローパターンを示す正面断面図である。
【0012】
1は本実施例の晶析装置、2は該晶析装置1の容器を示し、該容器2は縦型の有底円筒状でその上端に蓋体2aを結着して構成されている。そして該容器2の底部2bは湾曲状に形成され、該底部2bの中心部に透孔2cが形成さされていると共に該底部2bの下面に分級脚3を固定し、前記透孔2cを介して該分級脚3の内部が前記容器2の内部に連通するようにした。
【0013】
又、前記蓋体1aは湾曲状に形成され、その中心の頂部の上面に駆動源4を設けると共に該頂部に透孔2dを形成し、該駆動源4はモータ4aと減速機4bからなり、該減速機4bの出力の回転軸4cは前記透孔2dを挿通して下方に垂下し該回転軸4cの下端部に回転翼手段5を係着した。ここで、該回転翼手段5は前記容器2内の原料液Aの上方部に位置している。
【0014】
そして、該回転翼手段5は図2の如く前記回転軸4cに挿通固定するボス5aと、該ボス5aに固定され放射状に延びる直線の帯状板の羽根5bからなる。
【0015】
6は液流方向変更手段を示し、該液流方向変更手段6は前記底部2bの内面に放射状に固定されている複数枚例えば4枚の直線状の帯状板のバッフル6aからなり、これら各バッフル6aは図3に示す如く前記回転翼手段5の回転方向の後方で前記底部2bの中心を通る半径線Rから間隔dの位置に平行に固定されていると共に、各バッフル6aの内方端は前記透孔2cの周縁に一致するようにした。
【0016】
7は循環管路を示し、該循環管路7は前記分級脚3の下端部と前記容器2の側面の上部との間を連通接続している。8は該分級脚3のの側面に接続した結晶の流出管を示す。
【0017】
次に本実施例の晶析装置1の作用と効果を説明する。
【0018】
容器2内に懸濁スラリーの原料液Aを所定の量、即ち、該容器2内の上方部まで満たした状態で、モータ4aを駆動して回転翼手段5を例えば翼先端周速度が1.0m/s以下の如く極めて低速で回転し、図4の如く容器2の内周面に沿って旋回しながら下方に徐々に移動する緩やかな流れFaを生じさせ、該流れが底部2bの近傍に至ると、各バッフル6aが前記回転翼手段5と回転方向の後方で前記半径方向線Rから間隔dを有しているため、バッフル6aに当たった原料液は容器2の中心部を旋回しながら上昇する流れFbとなり、これらFaとFbの流れにより緩やかな循環流となる。即ち、従来の晶析装置におけるドラフトチュウーブが存在しなくとも、容器2の中心部の上昇流Fbと該容器2内の周辺部の下向流Faの緩やかな循環流が生ずる。この循環中における前記バッフル6aによる前記上昇する流れFbにおいて、所望の大きさに成長した結晶は循環流から外れて前記容器1内の底部2bに沈降し、前記分級脚3内で分級した結晶は前記流出管8より流出する。
【0019】
このように、前記バッフル6aにより上昇流を生じさせたときに所望の大きさに成長した結晶を前記底部2bに沈降させるようにしたので、分級性能が高くなる。
【0020】
尚、本実施例では、前記羽根5bの上端部に円盤5cを固定しており、該円盤5cにより、該円盤5cの下方の撹拌ゾーンと該円盤ゾーン5cの上方の無撹拌ゾーンに分離でき、該無撹拌ゾーンの微小結晶を含んだうわずみ液は重力の作用により前記循環管路7を経て前記分級脚3に流入する。
【0021】
尚、図5に示す如く前記循環管路7にポンプ9を介在して、前記容器2内の周辺の上方部の微小結晶を含んだうわずみ液を該ポンプ9の吐出作用により前記循環管路7を経て前記分級脚3に強制的に流入するようにしてもよい。
【0022】
又、本実施例では、回転翼手段5の羽根5bが直線状の帯状板により形成されているが、湾曲状の帯状板により形成してもよい。
【0023】
更に本実施例では、前記羽根5bの上端部に円盤5cを固定しているが、該円盤5cが固定されてなくてもよい。
【0024】
又、本実施例では、バッフルが直線状の帯状板により形成されているが、該バッフルを湾曲状の帯状板により形成してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明の晶析装置は、医療品関係、食品関係等における中間製品や最終製品を得るために利用される。
【符号の説明】
【0026】
1 晶析装置
2 容器
2a 底部
3 分級脚
5 回転翼手段
5a ハブ
5b 翼体
5c 円盤
6 液流方向変更手段
6a バッフル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
底部に分級脚を有する縦型の容器内の上方の中心部に、該容器内の原料液を該容器の内周面に沿って旋回流を生じさせる回転翼手段を設けると共に、前記容器内の底面の中心部に、前記原料液を前記容器の中心部において上方に流動させる液流方向変更手段を設けた晶析装置。
【請求項2】
前記液流方向変更手段は前記底面に放射状に設けたバッフルからなる請求項1に記載の晶析装置。
【請求項3】
前記バッフルは、前記回転翼手段の回転方向の後方で前記底面の中心の半径線から所定の間隔を存して配設した帯状板からなる請求項2に記載の晶析装置。
【請求項4】
前記回転翼手段は、ハブから放射状に突設した翼体と、該翼体の上端に固定した円盤とからなる請求項1乃至請求項3のいずれか1に記載の晶析装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−223727(P2012−223727A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−95083(P2011−95083)
【出願日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【出願人】(000171919)佐竹化学機械工業株式会社 (13)