説明

晶析装置

【課題】連続運転を可能として、結晶の生産効率が高く、細かくて均一な結晶が得られる晶析装置を提供する。
【解決手段】円筒容器2と、該容器2内に設けられ回転する伝熱筒体4と、該伝熱筒体4内の中心部に設けられた固定の軸管6と、該軸管6の外周面に固定され前記伝熱筒体4の内周面に近接或いは摺接して境膜を剥ぎ取る固定羽根7とからなり、前記伝熱筒体4内に熱媒体の第1流路11aを形成すると共に、該伝熱筒体4の外周面と前記容器2の内周面との間に原料液の第2流路11bを形成し、前記容器2の底部2aに結晶流出管を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化学品関係、医療品関係、食品関係等における中間製品や最終製品を得るために適用される晶析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の晶析装置として、例えば、晶析槽内に撹拌器を具備すると共に、該晶析槽の外面に、冷却水等の冷却媒体によって温度制御を行う冷却ジャッケトを設け、種晶析出槽で析出成長させた種晶を含むスラリーは、前記晶析槽に移送されて該晶析槽において、温度制御された冷却ジャケットの冷却媒体によって結晶を成長させている晶析装置が知られている(特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−33951公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この従来の晶析装置によれば、各バッチ毎に、晶析槽において母液から結晶を生成するバッチ式であるので、結晶の成長にバラつきがあって、細かくて均一な結晶が得られず、又、間欠的な製造であるので、生産効率が低く、更に前述の如く種晶析出槽で種晶を析出成長させているので、種晶より小さい数ミクロン以下のサイズの結晶を作成できない問題点があった。
【0005】
本発明はこのような問題点を解消し、連続運転を可能として、結晶の生産効率が高い晶析装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明はこの目的を達成すべく、容器と、該容器内に設けられ回転する伝熱筒体と、該伝熱筒体内の中心部に設けられた固定の軸管と、該軸管の外周面に固定され前記伝熱筒体の内周面に近接或いは摺接して境膜を剥ぎ取る固定羽根とからなり、前記伝熱筒体内に熱媒体の第1流路を形成すると共に、該伝熱筒体の外周面と前記容器の内周面との間に原料液の第2流路を形成し、前記容器の底部に結晶流出管を設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、連続運転を可能として、結晶の生産効率を高め、且つ細かくて均一な結晶が得られ、又前記伝熱筒体の回転速度、熱媒体の温度、流量並びに原料液の流量等を変えることによって結晶粒径をさまざまに変えることができる効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施例1の晶析装置の縦断面説明図である。
【図2】該晶析装置に連結される熱媒体調節手段の管路を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明を実施するための形態の実施例を以下に示す。
【実施例1】
【0010】
本発明の実施例1を図1及び図2により説明する。
【0011】
図1は本発明の実施例1の晶析装置の縦断面説明図、図2は該晶析装置に連結される熱媒体調節手段の管路を示す説明図である。
【0012】
1は本実施例の晶析装置、2は該晶析装置1の容器を示し、該容器2は縦型の有底円筒状でその上端に蓋体3を結着して構成されている。そして該蓋体3は外側の環状の支持蓋部3aと、該支持蓋部3aの中央開口部に回転可能に嵌挿支持されている回転蓋部3bとからなり、該回動蓋部3bに、有底円筒状の伝熱筒体4を垂下して係着し、該伝熱筒体4はその底部4aの下面において前記容器2の底部2aの上面に回転支持体14を介して支持されている。
【0013】
又、前記回動蓋部3bの中央開口部に回転可能に嵌挿する管体5が設けられており、該管体5はその上端が蓋体5aにより閉塞されていると共に下端において前記伝熱筒体4に連通するようになっている。
【0014】
6は軸管を示し、該軸管6は上端部において前記管体5の蓋体5aの中心部に嵌着していると共に、前記伝熱筒体4内の中心部を下方に向かって垂下し、下端で底板により閉塞されており、該底板が前記伝熱筒体4の底部4aの上面上に回転支持体6aにより回転自在に支持されている。又、前記軸管6の周壁の外表面に複数の境膜剥ぎ取りの固定羽根7を付設し、該固定羽根7は、前記伝熱筒体4の内面に近接或いは摺接するように該内面に沿って上下方向に延びる長手の外側縁部7aを有している。
【0015】
8は回転駆動源であるモータを示し、該モータ8の回転軸8aに固定した駆動プーリ9aと前記回動蓋部3bの周面に形成した従動プーリ9bとの間をベルト9cにより連結し、前記モータ8の回転駆動によりこれら駆動プーリ9aとベルト9cと従動プーリ9bを介して前記回動蓋部3bと共に前記伝熱筒体4を回転するようにした。
【0016】
10aは前記軸管6の上端部の熱媒体の流入口、10bは該軸管6の周壁の下端部に形成した熱媒体が通過する透孔、10cは前記管体5の周壁に形成した熱媒体の流出口、10dは前記容器2の周壁の上端部に連結した原料液の流入管、10eは該容器2の底部に連結した結晶流出管、10fは該結晶流出管10eより分岐した残溶液の予備流出管を示し、該予備流出管10fの中間部から先端部をビニールホース等により形成し、該ビニールホース等の先端部を上下動させて晶析装置1内の液面調整又は気泡抜きに使用するようにした。
【0017】
又、11aは熱媒体が前記流入口10aより前記軸管6内を下方に流れてから前記透孔10bを通過して前記伝熱筒体4内を上方に流れ前記管体5内を経て前記流出口10cに至る第1流路、11bは原料液が前記流入管10dより前記伝熱筒体4の外周面と前記容器2の内周面との間を下方に流れて前記結晶流出管10e及び前記予備流出管10fに至る第2流路を示し、又、V1は前記流入管10dに介在した第1開閉弁、V2は前記結晶流出管10eに介在した第2開閉弁、V3は前記予備流出管10fに介在した第3開閉弁を示す。
【0018】
12は熱媒体供給手段を示し、該熱媒体供給手段12は、所定温度の冷水の冷水槽12aと、所定温度の温水の温水槽12bと、該冷水槽12aに両端部において接続されている冷水循環管路12cと、前記温水槽12bに両端部において接続されている温水循環管路12dと、前記冷水循環管路12cの中間部において第1ポートpと第2ポートqで該管路12cに接続して介在した第1の三方切換弁V4と、該第1の三方切換弁V4の第3ポートrに接続した冷水供給管12eと、前記温水循環管路12dの中間部において第1ポートxと第2ポートyで該管路12dに接続して介在した第2の三方切換弁V5と、該第2の三方切換弁V5の第3ポートzに接続した温水供給管12fと、これら冷水供給管12eと温水供給管12fとの合流管12gとからなり、該合流管12gは前記軸管6の前記流入口10aにパイプ等を介して接続している。
【0019】
尚、13a,13bはシール、13c,13dは軸受を示し、又前記流出口10cから流出する熱媒体については、冷水の場合は冷水が前記冷水槽12aに、又、温水の場合は温水が前記温水槽12bに戻るようになっている。
【0020】
次に本実施例の晶析装置1の作用と効果を説明する。
【0021】
前記第1の三方切換弁V4がその第1ポートpと第2ポートqにおいて開で第3ポートrにおいて閉となって、冷水が冷水供給管12eに供給されずに冷水循環管路12c内を循環しており、又、前記第2の三方切換弁V5がその第1ポートxと第2ポートyにおいて開で第3ポートzにおいて閉となって、温水が温水供給管12fに供給されずに温水循環管路12d内を循環している状態から、前記第2の三方切換弁V5がその第3ポートzを開いて原料液より高い温度の熱媒体を前記温水供給管12fと合流管12gを経て前記第1流路11aに流すと共に、前記伝熱筒体4を低速で回転させ、原料液が送られたとき該伝熱筒体4の表面に接する原料液が結晶化することのない温度状態にしておく。
【0022】
そして、前記第2開閉弁V2及び前記第3開閉弁V3を閉じると共に前記第1開閉弁V1を開き、前記流入管10dより原料液を流入して該原料液を前記容器2内に満たした状態にして該第1開閉弁V1を閉じる。
【0023】
その後、槽内に一切の結晶が発生していないことを確認し、たまたま結晶が見られた場合は前記伝熱筒体4の回転を上げて原料液の温度を上昇させ、原料液を完全に溶解させる。
【0024】
続いて、伝熱筒体4の回転を停止して総括伝熱係数を小さくすると共に、前記第1の三方切換弁V4がその第3ポートrを開き、又前記第2の三方切換弁V5がその第3ポートzを閉じて、冷水を冷水供給管12eと合流管12gを経て前記第1流路11aに流して前記熱媒体を温水から冷水にすることにより前記伝熱筒体4を介して前記原料液が冷却されるモードにする。伝熱筒体4が回転停止している間は総括伝熱係数が小さいので容易には原料液の温度が低下することはなく、この間に結晶化は起こらない。
【0025】
次に、前記伝熱筒体4を適度な総括伝熱係数をもたらす低速度で回転し、原料液の温度を徐々に低下させて原料液が結晶化する温度を僅かに上回る温度まで過冷却させる。この温度が確認された時点で一気に回転数を1500rpm程度に上げ、総括伝熱係数を大幅にアップさせて原料液をさらに急激に冷却する。
【0026】
環状路の流路幅にもよるが30秒前後の短時間で一斉に一定粒径の微結晶が発生し、白濁のスラリーが得られる。
【0027】
その後、冷却された原料液の温度に応じて該原料液が飽和になるまで結晶が成長する。
【0028】
尚、前記冷水供給管12e及び前記温水供給管12fに流量調節弁をそれぞれ介在し、冷水供給管12eに冷水を又温水供給管12fに温水を流した状態で、各流量調節弁の開度をそれぞれ調節して熱媒体である冷却水の温度を少し高めに設定すると早目に結晶成長を停止させることが出来る。又、冷却水の流量は多い方が伝熱筒体4の上下方向の温度変化を少なくできるので、原料液の流れ方向温度差も小さくなり一層粒径を整えることができる。
【0029】
以上の実施例はバッチ式操作であるが、この状態で前記第1開閉弁V1を開くと共に、前記第2開閉弁V2および第3開閉弁V3も開いて、原料液が前記流入管10dより供給され前記第2流路11bを流れながら前記流出管10e及び10fから流出するようにする。
【0030】
即ち前記結晶流出管10eより結晶のスラリーが取り出され、前記予備流出管10fからは必要に応じて残溶液が取り出される。かくて、原料液は、該第2流路11bを流動中に前記第1流路11aを流れる冷水により伝熱筒体4を介して効率的に冷却されて順次一定の粒径の結晶を生成し、これらの結晶は結晶流出管10eよりスラリーとして抜き出され、連続運転が可能となる。
【0031】
ここで、第1流路11aを流れる熱媒体の流量と温度、及び、第2流路11bを流れる原料液の流量、並びに伝熱筒体4の回転速度を制御することにより結晶の粒径及び粒径分布を変えることができる。又、熱媒体の流れ方向を図1に示す方向と反対の10cを熱媒体の流入口、10aを熱媒体の流出口とし、原料液と熱媒体である冷却水の流れを並流にして原料液が槽内に流入したところで一気に冷やすことによって粒径を変えることができる。
【0032】
即ち、晶析技術の肝要は高い冷却速度の実現と流れをピストンフローとして被晶析溶液が流れ方向で逆混合しないことである。本発明は伝熱筒体が回転して内部を流れる熱媒体の境膜が固定羽根で剥ぎ取られると共に遠心力で該伝熱筒体の外面を流れる被晶析溶液の境膜が剥ぎ取られるため総括伝熱係数が6000W/(m・K)以上に高められ、かつ、被晶析溶液が環状路を回転しながら下方に緩やかに流れるためラジアル方向で完全混合しつつ、流れ方向でピストンフローを実現する。
【0033】
尚、本発明は急熱又は急冷して第1流路11aを流れる化学反応物質の温度を均一且つ一定に保ち化学反応の生成物を制御をすることができ、マイクロリアクターの特性を有する反応器として使用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明の晶析装置は、工業薬品、食品および医薬品製造等における中間製品や最終製品を得るために利用される。
【符号の説明】
【0035】
1 晶析装置
2 容器
2a 底部
4 伝熱筒体
6 軸管
7 固定羽根
7a 外側縁部
11a 第1流路
11b 第2流路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器と、該容器内に設けられ回転する伝熱筒体と、該伝熱筒体内の中心部に設けられた固定の軸管と、該軸管の外周面に固定され前記伝熱筒体の内周面に近接或いは摺接して境膜を剥ぎ取る固定羽根とからなり、前記伝熱筒体内に熱媒体の第1流路を形成すると共に、該伝熱筒体の外周面と前記容器の内周面との間に原料液の第2流路を形成し、前記容器の底部に結晶流出管を設けた晶析装置。
【請求項2】
前記第1流路は、熱媒体が下方に流れる前記軸管内と、該軸管の下方部に形成され該熱媒体が通過する透孔と、該熱媒体が上方に流れる前記伝熱筒体内に形成されている請求項1に記載の晶析装置。
【請求項3】
前記第2流路は、原料液が下方に流れる前記伝熱筒体の外周面と前記容器の内周面との間に形成されている請求項1に記載の晶析装置。
【請求項4】
前記固定羽根は、前記伝熱筒体の内周面に沿って上下に延びる長手の外側縁部を有している請求項1に記載の晶析装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−71097(P2013−71097A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−214188(P2011−214188)
【出願日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【出願人】(503128467)