説明

暖房システム及び暖房給湯システム

【課題】ヒートポンプシステム起動時のCOPを向上可能な暖房システム及び暖房給湯システムを提供する。
【解決手段】暖房システム100は、ヒートポンプシステム1と、ヒートポンプシステム1で加熱された温水を貯える貯湯タンク2と、貯湯タンク2に貯えられた温水を貯湯タンク2と暖房端末8との間で循環させる循環回路4と、暖房端末8に供給される温水の流量を変更する循環ポンプ48と、暖房端末8に供給される温水の往き温度を調節する往き温度調節手段45と、循環ポンプ48及び往き温度調節手段45の少なくとも一方を制御する制御手段74と、暖房端末8における暖房負荷を判断する判断手段73とを備え、制御手段74は、判断手段73により暖房負荷が所定値より小さいと判断された場合に、暖房端末8から貯湯タンク2へ戻る温水の戻り温度が低下するように循環ポンプ48及び往き温度調節手段45の少なくとも一方を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、暖房システム、特に、暖房端末に所定の温度に加熱された循環液を供給する暖房システム及び暖房給湯システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ヒートポンプシステムと、このヒートポンプシステムで加熱された循環液を貯留する貯湯タンクと、貯湯タンクに貯留された循環液が供給される暖房端末とを備える暖房システムが開発されている(例えば、特許文献1参照)。このような暖房システムでは、外気温度が設定温度以下の場合(暖房端末の暖房負荷が所定値以上となった場合)に、貯湯タンク下部から供給された循環液がヒートポンプシステムで加熱され、加熱された循環液が貯湯タンクから暖房端末に供給される。一方、外気温度が設定温度より高くなった場合(暖房端末の暖房負荷が所定値より小さくなった場合)に、暖房端末への温水供給は停止される。
【特許文献1】特開2007−3188号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上述した暖房システムでは、暖房負荷が所定値より小さくなって暖房端末への温水供給が停止するときに、貯湯タンクの下部に貯留された循環液の温度を十分に低下させることができない場合がある。このため、暖房端末の暖房負荷が所定値以上となった場合に、貯湯タンク下部からヒートポンプシステムに十分に低温の循環液を供給できない。この結果、ヒートポンプシステム起動時のCOPを向上できないという問題があった。
【0004】
本発明の目的は、ヒートポンプシステム起動時のCOPを向上可能な暖房システム及び暖房給湯システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1の発明に係る暖房システムは、ヒートポンプシステムと、ヒートポンプシステムで加熱された温水を貯える貯湯タンクと、貯湯タンクに貯えられた温水を貯湯タンクと暖房端末との間で循環させる循環回路と、暖房端末に供給される温水の流量を変更する循環ポンプと、暖房端末に供給される温水の往き温度を調節する往き温度調節手段と、循環ポンプ及び往き温度調節手段の少なくとも一方を制御する制御手段と、暖房端末における暖房負荷を判断する判断手段とを備え、制御手段は、判断手段により暖房負荷が所定値より小さいと判断された場合に、暖房端末から貯湯タンクへ戻る温水の戻り温度が低下するように循環ポンプ及び往き温度調節手段の少なくとも一方を制御する。
【0006】
この暖房システムでは、暖房負荷が所定値より小さくなって本来なら暖房端末への温水供給が停止されるときに、暖房負荷から貯湯タンクに戻る温水の戻り温度を低下させることで、貯湯タンクに貯えられる温水を低温に保つことができる。このため、暖房負荷が所定値以上になって暖房端末への温水供給が開始される際に、貯湯タンクからヒートポンプシステムに十分に低温水を供給できる。この結果、従来の暖房システムに比して、ヒートポンプシステムのCOPが向上する。
【0007】
第2の発明に係る暖房システムは、第1の発明に係る暖房システムにおいて、制御手段は、判断手段により暖房負荷が所定値より小さいと判断された場合に、暖房端末から貯湯タンクへ戻る温水の戻り温度が目標戻り温度以下となるように循環ポンプ及び往き温度調節手段の少なくとも一方を制御する。
【0008】
この暖房システムでは、暖房負荷が所定値より小さくなって本来なら暖房端末への温水供給が停止されるときに、暖房負荷から貯湯タンクに戻る温水の戻り温度を目標戻り温度以下に低下させることで、貯湯タンクに貯えられる温水を低温に保つことができる。
【0009】
第3の発明に係る暖房システムは、第1または第2の発明に係る暖房システムにおいて、戻り温度を検出する戻り温度センサを備え、制御手段は、判断手段により暖房負荷が所定値より小さいと判断された場合に、戻り温度センサの出力に基づいて、循環ポンプ及び往き温度調節手段の少なくとも一方を制御する。
【0010】
この暖房システムでは、貯湯タンク内の温水温度と相関のある戻り温度を検出可能な戻り温度センサが設けられているため、戻り温度センサの出力に応じて貯湯タンク内の温水温度を容易に低下させることができる。
【0011】
第4の発明に係る暖房システムは、第1〜第3のいずれかの発明に係る暖房システムにおいて、貯湯タンクに設けられたタンク温度センサを備え、制御手段は、タンク温度センサの出力に基づいて循環ポンプ及び往き温度調節手段の少なくとも一方を制御する。
【0012】
この暖房システムでは、貯湯タンク内の温水温度を検知可能なタンク温度センサが設けられているため、タンク温度センサの出力に応じて戻り温度の低下制御を実現できる。このため、貯湯タンク内の温水温度を確実に低下させることができる。
【0013】
第5の発明に係る暖房システムは、第4の発明に係る暖房システムにおいて、制御手段は、タンク温度センサにより検知された温水温度が目標タンク温度以下となるように、循環ポンプ及び往き温度調節手段の少なくとも一方を制御する。
【0014】
この暖房システムでは、貯湯タンク内の温水温度を目標タンク温度以下に低下させることができる。
【0015】
第6の発明に係る暖房システムは、第5の発明に係る暖房システムにおいて、タンク温度センサは貯湯タンクの下部に設けられる。
【0016】
この暖房システムでは、貯湯タンク内の温水温度を検知可能なタンク温度センサが貯湯タンクの下部に設けられているため、貯湯タンク下部の温水温度を確実に低下させることができる。
【0017】
第7の発明に係る暖房システムは、ヒートポンプシステムと、ヒートポンプシステムで加熱された温水を貯える貯湯タンクと、貯湯タンクに貯えられた温水を貯湯タンクと暖房端末との間で循環させる第1循環回路と、暖房端末に供給される温水の流量を変更する循環ポンプと、暖房端末から流出した温水を循環ポンプに供給し、貯湯タンクを経ないで循環ポンプと暖房端末との間で循環させる第2循環回路と、暖房端末に供給される温水の往き温度を調節する往き温度調節手段と、第1循環回路を温水が循環する第1状態及び第2循環回路を温水が循環する第2状態のいずれかに切り換える切換手段と、循環ポンプ、往き温度調節手段及び切換手段の少なくとも一方を制御する制御手段と、暖房端末における暖房負荷を判断する判断手段とを備え、制御手段は、判断手段により暖房負荷が所定値より小さいと判断された場合に、暖房端末から貯湯タンクへ戻る温水の戻り温度が低下するように循環ポンプ、往き温度調節手段及び切換手段の少なくとも一方を制御する。
【0018】
この暖房システムでは、貯湯タンクを経由する第1循環回路を温水が循環する第1状態と、貯湯タンクを経由しない第2循環回路を温水が循環する第2状態を切換可能な切換手段が設けられているため、暖房負荷が所定値より小さくなって本来なら暖房端末への温水供給が停止されるときに第2状態に設定することで、温水温度を確実に低下させることができる。このため、暖房負荷が所定値以上になって暖房端末への温水供給が開始され、第2状態から第1状態に切り換わる際に、貯湯タンクに低温水を供給できる。この結果、貯湯タンクからヒートポンプシステムに十分に低温水を供給でき、従来の暖房システムに比して、ヒートポンプシステムのCOPが向上する。
【0019】
第8の発明に係る暖房システムでは、第7の発明に係る暖房システムにおいて、制御手段は、判断手段により暖房負荷が所定値より小さいと判断された場合に、暖房端末から貯湯タンクへ戻る温水の戻り温度が目標戻り温度以下となるように循環ポンプ、往き温度調節手段及び切換手段の少なくとも一方を制御する。
【0020】
この暖房システムでは、暖房負荷が所定値より小さくなって本来なら暖房端末への温水供給が停止されるときに、暖房負荷から貯湯タンクに戻る温水の戻り温度を目標戻り温度以下に低下させることで、貯湯タンクに貯えられる温水を低温に保つことができる。
【0021】
第9の発明に係る暖房システムは、第7または第8の発明に係る暖房システムにおいて、戻り温度を検出する戻り温度センサを備え、制御手段は、判断手段により暖房負荷が所定値より小さいと判断された場合に、戻り温度センサの出力に基づいて、循環ポンプ、往き温度調節手段及び切換手段をそれぞれ制御する。
【0022】
この暖房システムでは、貯湯タンク内の温水温度と相関のある戻り温度を検出可能な戻り温度センサが設けられているため、戻り温度センサの出力に応じて貯湯タンク内の温水温度を容易に低下させることができる。
【0023】
第10の発明に係る暖房システムは、第7〜第9のいずれかの発明に係る暖房システムにおいて、貯湯タンクに設けられたタンク温度センサを備え、制御手段は、タンク温度センサの出力に基づいて、循環ポンプ、往き温度調節手段及び切換手段をそれぞれ制御する。
【0024】
この暖房システムでは、貯湯タンク内の温水温度を検知可能なタンク温度センサが設けられているため、タンク温度センサの出力に応じて戻り温度の低下制御を実現できる。このため、貯湯タンク内の温水温度を確実に低下させることができる。
【0025】
第11の発明に係る暖房システムは、第10の発明に係る暖房システムにおいて、制御手段は、タンク温度センサにより検知された温水温度が目標タンク温度以下となるように、循環ポンプ及び往き温度調節手段の少なくとも一方を制御する。
【0026】
この暖房システムでは、貯湯タンク内の温水温度を目標タンク温度以下に低下させることができる。
【0027】
第12の発明に係る暖房システムは、第11の発明に係る暖房システムにおいて、タンク温度センサは貯湯タンクの下部に設けられる。
【0028】
この暖房システムでは、貯湯タンク内の温水温度を検知可能なタンク温度センサが貯湯タンクの下部に設けられているため、貯湯タンク下部の温水温度を確実に低下させることができる。
【0029】
第13の発明に係る暖房システムは、第1〜第12のいずれかの発明に係る暖房システムにおいて暖房端末の周辺温度を検出する周辺温度センサと、暖房端末の設定温度を設定する設定手段とを備え、判断手段は、周辺温度が設定温度より高い場合に、暖房負荷が所定値より小さいと判断する。
【0030】
この暖房システムでは、周辺温度センサ及び設定手段が設けられているため、暖房端末の周辺温度と設定温度を比較する簡単な演算で、暖房負荷が所定値より小さくなったことを容易に判断できる。
【0031】
第14の発明に係る暖房システムは、第1〜第13のいずれかの発明に係る暖房システムにおいて、冷媒がCO冷媒である。
【0032】
この暖房システムでは、CO冷媒の特性として、入水される被加熱水の温度が低温であると加熱の際のCOPが向上する。CO冷媒を用いた上で被加熱水の温度が低温になるように制御しているため、高いCOPでヒートポンプシステムを運転できる。
【0033】
第15の発明に係る暖房給湯システムは、第1〜第14のいずれかの発明に係る暖房システムと、貯湯タンク内に配置され、給湯水が内部を流れる熱交換器とを備える。
【0034】
この暖房給湯システムでは、暖房負荷が所定値以上になって暖房端末への温水供給が開始される際に、貯湯タンクからヒートポンプシステムに低温水を供給できる。この結果、ヒートポンプシステムのCOPが向上する。
【発明の効果】
【0035】
以上の説明に述べたように、本発明によれば、以下の効果が得られる。
【0036】
第1の発明では、暖房負荷が所定値より小さくなって本来なら暖房端末への温水供給が停止されるときに、暖房負荷から貯湯タンクに戻る温水の戻り温度を低下させることで、貯湯タンクに貯えられる温水を低温に保つことができる。このため、暖房負荷が所定値以上になって暖房端末への温水供給が開始される際に、貯湯タンクからヒートポンプシステムに十分に低温水を供給できる。この結果、従来の暖房システムに比して、ヒートポンプシステムのCOPが向上する。
【0037】
また、第2の発明では、暖房負荷が所定値より小さくなって本来なら暖房端末への温水供給が停止されるときに、暖房負荷から貯湯タンクに戻る温水の戻り温度を目標戻り温度以下に低下させることで、貯湯タンクに貯えられる温水を低温に保つことができる。
【0038】
また、第3の発明では、貯湯タンク内の温水温度と相関のある戻り温度を検出可能な戻り温度センサが設けられているため、戻り温度センサの出力に応じて貯湯タンク内の温水温度を容易に低下させることができる。
【0039】
また、第4の発明では、貯湯タンク内の温水温度を検知可能なタンク温度センサが設けられているため、タンク温度センサの出力に応じて戻り温度の低下制御を実現できる。このため、貯湯タンク内の温水温度を確実に低下させることができる。
【0040】
また、第5の発明では、貯湯タンク内の温水温度を目標タンク温度以下に低下させることができる。
【0041】
また、第6の発明では、貯湯タンク内の温水温度を検知可能なタンク温度センサが貯湯タンクの下部に設けられているため、貯湯タンク下部の温水温度を確実に低下させることができる。
【0042】
また、第7の発明では、貯湯タンクを経由する第1循環回路を温水が循環する第1状態と、貯湯タンクを経由しない第2循環回路を温水が循環する第2状態を切換可能な切換手段が設けられているため、暖房負荷が所定値より小さくなって本来なら暖房端末への温水供給が停止されるときに第2状態に設定することで、温水温度を確実に低下させることができる。このため、暖房負荷が所定値以上になって暖房端末への温水供給が開始され、第2状態から第1状態に切り換わる際に、貯湯タンクに低温水を供給できる。この結果、貯湯タンクからヒートポンプシステムに十分に低温水を供給でき、従来の暖房システムに比して、ヒートポンプシステムのCOPが向上する。
【0043】
また、第8の発明では、暖房負荷が所定値より小さくなって本来なら暖房端末への温水供給が停止されるときに、暖房負荷から貯湯タンクに戻る温水の戻り温度を目標戻り温度以下に低下させることで、貯湯タンクに貯えられる温水を低温に保つことができる。
【0044】
また、第9の発明では、貯湯タンク内の温水温度と相関のある戻り温度を検出可能な戻り温度センサが設けられているため、戻り温度センサの出力に応じて貯湯タンク内の温水温度を容易に低下させることができる。
【0045】
また、第10の発明では、貯湯タンク内の温水温度を検知可能なタンク温度センサが設けられているため、タンク温度センサの出力に応じて戻り温度の低下制御を実現できる。このため、貯湯タンク内の温水温度を確実に低下させることができる。
【0046】
また、第11の発明では、貯湯タンク内の温水温度を目標タンク温度以下に低下させることができる。
【0047】
また、第12の発明では、貯湯タンク内の温水温度を検知可能なタンク温度センサが貯湯タンクの下部に設けられているため、貯湯タンク下部の温水温度を確実に低下させることができる。
【0048】
また、第13の発明では、周辺温度センサ及び設定手段が設けられているため、暖房端末の周辺温度と設定温度を比較する簡単な演算で、暖房負荷が所定値より小さくなったことを容易に判断できる。
【0049】
また、第14の発明では、CO冷媒の特性として、入水される被加熱水の温度が低温であると加熱の際のCOPが向上する。CO冷媒を用いた上で被加熱水の温度が低温になるように制御しているため、高いCOPでヒートポンプシステムを運転できる。
【0050】
また、第15の発明では、暖房負荷が所定値以上になって暖房端末への温水供給が開始される際に、貯湯タンクからヒートポンプシステムに低温水を供給できる。この結果、ヒートポンプシステムのCOPが向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0051】
以下、本発明の暖房給湯システムを図示の実施の形態により詳細に説明する。
【0052】
図1は、本発明の第1実施形態の暖房給湯システムの構成を示す模式図である。
【0053】
暖房給湯システム100は、暖房システム101、給湯システム102及びリモコン104(設定手段)を有している。暖房システム101は、ヒートポンプユニット1(ヒートポンプシステム)、貯湯タンク2、暖房用循環回路4(循環回路)及び暖房端末8を備えている。給湯システム102は、給湯用熱交換器3を有している。また、暖房給湯システム100は、貯湯タンク2の側面に配置された制御部60によって制御される。リモコン104は、暖房端末8の設定温度を設定するために、制御部60と有線又は無線により通信可能に接続される。リモコン104は、設定された設定温度を示す信号を制御部60に出力する。なお、給湯用熱交換器3は熱交換器の一例であり、暖房用循環回路4は循環回路の一例である。
【0054】
ヒートポンプユニット1は、沸き上げ用循環回路5、冷媒回路16、電動送風機17及び外気温度センサ18を備え、貯湯タンク2内の水を沸き上げて温水にする。冷媒回路16は、蒸発器11、圧縮機12、凝縮器(水冷媒熱交換器)13、過冷却熱交換器14及び膨張弁15を有している。この冷媒回路16ではCO冷媒が循環する。
【0055】
CO冷媒は、蒸発器11において、電動送風機17から送られた空気中の熱を吸収してガス化する。そして、CO冷媒は、圧縮機12で圧縮されて高温となった後、凝縮器13に到達して熱を放出する。これにより、CO冷媒は、凝縮器13に入る前に比べて低温となって、過冷却熱交換器14へ向かって流れる。そして、CO冷媒は、その過冷却熱交換器14でさらに冷却された後、膨張弁15を経て、蒸発器11に戻る。
【0056】
また、ヒートポンプユニット1は、沸き上げ用循環回路5を介して貯湯タンク2と接続されている。沸き上げ用循環回路5は、沸き上げ用循環ポンプ51及び沸き上げ用三方弁52を有している。そして、沸き上げ用循環回路5は、第2暖房往き接続口42と、沸き上げ用の供給口53と、凍結防止水戻し接続口54とに接続されている。なお、第2暖房往き接続口42は第1取水口の一例である。
【0057】
供給口53は貯湯タンク2の下部に設けられている。これにより、貯湯タンク2内の下部領域にある比較的低温の温水を、供給口53を介して沸き上げ用循環ポンプ51に供給することができる。沸き上げ用循環ポンプ51は、貯湯タンク2内の下部領域にある比較的低温の温水を吸い込み、この吸い込んだ比較的低温の温水を凝縮器13へ向けて吐出する。凝縮器13ではCO冷媒と温水とが熱交換されて、その温水が高温になる。この凝縮器13を出た高温の温水は沸き上げ用三方弁52へ向かう。
【0058】
沸き上げ用三方弁52は、給湯運転中及び暖房運転中、凝縮器13からの高温の温水を、第2暖房往き接続口42を介して貯湯タンク2内の上部領域に流す。したがって、第2暖房往き接続口42は、貯湯タンク2の供給口53から流出してヒートポンプユニット1の凝縮器13を出た後の温水が戻る沸き上げ戻り接続口となっている。
【0059】
貯湯タンク2内の温水は、上側に高温の温水、下側に比較的低温の温水が位置するように湯層(温度分布)が形成されている。なお、ヒートポンプユニット1の起動時などの際に、まだヒートポンプユニット1の凝縮器13から出る温水が十分に高温となっていない場合、温水は第2暖房往き接続口42ではなく、凍結防止水戻し接続口54を介して貯湯タンク2に戻されるように三方弁52が制御される。
【0060】
したがって、凍結防止水戻し接続口54は、温水が十分に高温でない場合の第2の沸き上げ戻り接続口となっている。このように、温水の温度により戻り口を切り替えるのは、十分に高温になっていない温水を貯湯タンク2の上部に戻すと貯湯タンク2内の温度分布が乱れる可能性があり、これを防止するためである。
【0061】
この三方弁の切り替えは凝縮器13と沸き上げ用三方弁52との間に設けられた温度センサ(図示せず)の出力に基づいて行われる。また、沸き上げ用三方弁52は、凍結防止運転中には、供給口53から沸き上げ用循環回路5を介して流れてきた温水を、凍結防止水戻し接続口54を介して貯湯タンク2内の下部領域に流す。なお、凍結防止運転は沸き上げ運転の停止中に行われる。
【0062】
貯湯タンク2はヒートポンプユニット1で加熱された温水を貯える。また、貯湯タンク2内の上下方向の略中央部にはヒータ6を配置していて、このヒータ6は貯湯タンク2内の温水を直接加熱する。また、貯湯タンク2の下部には、貯湯タンク2内の温水の温度を検知するためのタンクサーミスタ61(タンク温度センサ)が設けられている。タンクサーミスタ61は、検知した温水温度を示す信号を制御部60に出力する。このように、本発明では、貯湯タンク2内の温水温度を検知可能なタンクサーミスタ61が設けられているため、タンクサーミスタ61の出力に応じて戻り温度の低下制御を実現できる。
【0063】
給湯用熱交換器3(熱交換器)は、コイル状のパイプから成って、貯湯タンク2内の下部領域から上部領域に渡って配置されている。給湯水は給湯用熱交換器3内を流れることによって加熱される。より詳しくは、上記給湯水は、貯湯タンク2の下部から貯湯タンク2内に入って、貯湯タンク2内の下部領域に配置された給湯用熱交換器3を上方に向かって流れる。そして、上記給湯水は、貯湯タンク2内の上部領域に配置された給湯用熱交換器3を上方に向かって流れた後、貯湯タンク2の上部から貯湯タンク2外に出る。なお、貯湯タンク2内の上下方向の中央部にはヒータ6が配置されており、給湯用熱交換器3は該ヒータ6を跨ぐように配置されている。このヒータ6により、貯湯タンク2の上部により高温の温水を貯湯することができる。
【0064】
また、給湯水の温度を設定温度に調整するために、給湯用混合弁31を開いて、貯湯タンク2から出た給湯水と、貯湯タンク2に流入する前の給湯水とを混ぜ合わせる。これにより、上記貯湯タンク2から出た給湯水の温度を下げることができる。
【0065】
暖房用循環回路4は、貯湯タンク2内に貯められた温水を貯湯タンク2外の複数の暖房端末8を経由させた後、再び、貯湯タンク2内に戻して循環させるためのものである。そして、暖房用循環回路4は、第1暖房往き接続口41、第2暖房往き接続口42及び暖房戻り接続口43に接続されている。なお、第1暖房往き接続口41は第2取水口の一例であり、暖房戻り接続口43は戻し口の一例である。
【0066】
第1暖房往き接続口41は、貯湯タンク2内の温水を取り出すためのものである。この第1暖房往き接続口41は、貯湯タンク2の上下方向の略中央部に設けられて、ヒータ6近傍かつ上方に位置している。これにより、ヒータ6で加熱された直後の温水を、第1暖房往き接続口41から取り出し、複数の暖房端末8に送ることができる。
【0067】
第2暖房往き接続口42も、第1暖房往き接続口41と同様に、貯湯タンク2内の温水を取り出すためのものである。この第2暖房往き接続口42は貯湯タンク2の上部に設けられている。これにより、貯湯タンク2内の上部領域の温水を、第2暖房往き接続口42から取り出し、複数の暖房端末8へ送ることができる。また、第2暖房往き接続口42は沸き上げ戻り接続口を兼用している。
【0068】
暖房端末8は、貯湯タンク2から流れてきた温水の熱を直接取り出し、室内に放出する。そして、温水は、低温となり、暖房端末8を出て、暖房戻り接続口43へ向かって流れる。暖房戻り接続口43は貯湯タンク2の下部に設けられている。これにより、暖房戻り接続口43から出た温水を、貯湯タンク2内の下部領域の比較的低い温度の温水と混ぜることができる。また、暖房端末8の周辺には、室内の温度を検知する室温サーミスタ62(周辺温度センサ)が設けられている。室温サーミスタ62は、検知した室内温度を示す信号を制御部60に出力する。
【0069】
また、暖房用循環回路4には、バイパス配管44、暖房用混合弁45(往き温度調節手段)、往き温度センサ46、戻り温度センサ47、暖房用循環ポンプ48(循環ポンプ)、暖房用三方弁49及び切換弁63(切換手段)が設けられている。バイパス配管44は、暖房端末8から暖房戻り接続口43へ流れる温水の一部を暖房用混合弁45へ案内する。
【0070】
暖房用混合弁45は、貯湯タンク2からの温水が流入する入口と、バイパス配管44からの温水が流入する入口とを有している。暖房用混合弁45の各入口の開度は制御部60によって調節される。
【0071】
往き温度センサ46は、貯湯タンク2から暖房端末8へ向かう温水の温度を往き温度として検出し、この往き温度を示す信号を制御部60に送る。戻り温度センサ47は、暖房端末8から貯湯タンク2へ向かう温水の温度を戻り温度として検出し、この戻り温度を示す信号を制御部60に送る。暖房用循環ポンプ48は、第2暖房往き接続口42または第1暖房往き接続口41を介して貯湯タンク2内の温水を吸い込み、複数の暖房端末8に向けて吐出する。
【0072】
暖房用三方弁49は、貯湯タンク2内の温水の高温領域が第1暖房往き接続口41近傍に存在している場合、第1暖房往き接続口41から温水を取り出す。また、暖房用三方弁49は、貯湯タンク2内の温水の高温領域が第1暖房往き接続口41近傍に存在していない場合、第2暖房往き接続口42から温水を取り出す。
【0073】
図2は、制御部60の構成を示すブロック図である。制御部60は、往き/戻り温度検知部70、タンク温度検知部71、室温検知部72、暖房負荷判断部73(判断手段)及び往き/戻り温度制御部74(制御手段)を有している。
【0074】
往き/戻り温度検知部70は、往き温度センサ46及び戻り温度センサ47から、それぞれ、往き温度及び戻り温度を示す信号を受け取り、受け取った信号を往き/戻り温度制御部74に出力する。このように、往き温度センサ46や戻り温度センサ47が設けられているため、往き温度センサ46や戻り温度センサ47の出力に応じて、暖房用混合弁45や暖房用循環ポンプ48を制御できる。
【0075】
タンク温度検知部71は、タンクサーミスタ61から貯湯タンク2下部の温水温度を示す信号を受け取り、受け取った信号を往き/戻り温度制御部74に出力する。室温検知部72は、室温サーミスタ62から暖房端末8の周辺温度を示す信号を受け取り、受け取った信号を暖房負荷判断部73に出力する。
【0076】
暖房負荷判断部73は、室温検知部72から受け取った室内温度を示す信号と、リモコン104から受け取った暖房端末8の設定温度を示す信号とを比較し、その比較結果を示す信号を往き/戻り温度制御部74に出力する。往き/戻り温度制御部74は、暖房負荷判断部73から受け取った信号に基づいて、暖房用混合弁45や暖房用循環ポンプ48や切換弁63を制御する。
【0077】
図3は、各往き温度に対応する循環流量と戻り温度の関係を示す実験データである。図の横軸は、暖房用循環ポンプ48の循環流量(L/min)を、縦軸は、戻り温度(℃)を示している。なお、この実験データは、暖房端末8の暖房負荷が500Wの場合を示している。また、この例では、循環流量0.20を最低流量とする。
【0078】
図に示すように、戻り温度は、往き温度が低いほど低下し易く、循環流量が小さいほど低下し易い。このため、例えば、往き温度を45℃に保ち、循環流量を0.5以下に保てば、室内温度の上昇を抑えつつ戻り温度を目標戻り温度(30℃)以下に保つことができる。
【0079】
図4は、本発明の第1実施形態の暖房給湯システムの暖房用混合弁45及び暖房用循環ポンプ48の制御動作を示すフローチャートである。この制御動作では、暖房端末8の暖房負荷が所定値以上であると判断された場合に、往き温度を45℃に保ち、循環流量を最低流量(図3)に保つことで、貯湯タンク2下部の温水温度を目標タンク温度(30℃)以下に保つ例について述べる。
【0080】
まず、ステップS100において、室温検知部72は、室温サーミスタ62から室内温度を示す信号を受け取り、受け取った信号を暖房負荷判断部73に出力する。そして、処理はステップS102に移行する。
【0081】
ステップS102において、暖房負荷判断部73は、室温検知部72から受け取った室内温度を示す信号と、リモコン104から受け取った暖房端末8の設定温度(18℃)を示す信号とを比較する。室内温度が18℃より高い場合、暖房負荷判断部73は、暖房端末8の暖房負荷が所定値より小さいと判断し、処理はステップS104に移行する。一方、室内温度が18℃以下の場合、暖房負荷判断部73は、暖房端末8の暖房負荷が所定値以上であると判断し、処理はステップS106に移行し、通常のポンプ制御が行われる。
【0082】
ステップS102で暖房負荷が所定値より小さいと判断された場合、ステップS104において、タンク温度検知部71は、タンクサーミスタ61から貯湯タンク2下部の温水温度を示す信号を受け取り、受け取った信号を往き/戻り温度制御部74に出力する。そして、処理はステップS108に移行する。
【0083】
ステップS108において、往き/戻り温度制御部74は、貯湯タンク2下部の温水温度と目標タンク温度(30℃)とを比較する。貯湯タンク2下部の温水温度が30℃以下であると判断された場合、処理はステップS118に移行する。一方、貯湯タンク2下部の温水温度が30℃より大きいと判断された場合、処理はステップS110に移行する。
【0084】
ステップS108で温水温度が30℃より大きいと判断された場合、ステップS110において、往き/戻り温度制御部74は、最低流量で暖房用循環ポンプ48を運転すると共に、往き温度を45℃で維持するように混合弁45を調整する。そして、処理はステップS112に移行する。
【0085】
ステップS112において、往き/戻り温度制御部74は、所定時間が経過したか否かを判断する。所定時間が経過した場合、処理はステップS114に移行する。一方、所定時間未経過の場合、処理はステップS110を繰り返す。
【0086】
ステップS112で所定時間が経過したと判断された場合、ステップS114において、タンク温度検知部71は、タンクサーミスタ61から貯湯タンク2下部の温水温度を示す信号を受け取り、受け取った信号を往き/戻り温度制御部74に出力する。そして、処理はステップS116に移行する。
【0087】
ステップS116において、往き/戻り温度制御部74は、貯湯タンク2下部の温水温度と目標タンク温度(30℃)とを比較する。貯湯タンク2下部の温水温度が30℃以下であると判断された場合、処理はステップS118に移行する。一方、貯湯タンク2下部の温水温度が30℃より大きいと判断された場合、処理はステップS110を繰り返す。
【0088】
ステップS108またはステップS116で貯湯タンク2下部の温水温度が30℃以下であると判断された場合、ステップS118において、往き/戻り温度制御部74は、暖房用循環ポンプ48の運転を停止する。そして、本発明の暖房システムの第1実施形態における暖房用混合弁45及び暖房用循環ポンプ48の制御動作が終了する。
【0089】
以上、本発明の第1実施形態では、暖房負荷が所定値より小さくなって本来なら暖房端末8への温水供給が停止されるときに、暖房用循環ポンプ48や混合弁45を制御して暖房負荷8から貯湯タンク2の下部に戻る温水の戻り温度を低下させることで、貯湯タンク2の下部に貯えられる温水を十分に低温に保つことができる。このため、暖房負荷が所定値以上になって暖房端末8への温水供給が開始される際に、貯湯タンク2からヒートポンプユニット1に低温水を供給できる。この結果、従来の暖房給湯システムに比して、ヒートポンプユニット1のCOPが向上する。
【0090】
更に、暖房負荷が所定値より小さくなって本来なら暖房端末8への温水供給が停止されるときに、最低流量で暖房用循環ポンプ48を運転することで室内温度が必要以上に上昇することを防止できる。
【0091】
次に、本発明の第2実施形態について説明する。第1実施形態で説明した要素と同一の要素については、詳細な説明を省略する。この実施形態では、制御部60が実行するプログラムが、第1実施形態と相違し、暖房端末8の暖房負荷が所定値以上であると判断された場合に、往き温度を45℃に保ち、循環流量を最低流量(図3)に保つことで、戻り温度センサ47の出力に基づいて戻り温度を目標戻り温度(30℃)以下、特に10℃に保つ例について述べる。その他の構成は、第1実施形態と同じである。
【0092】
図5は、本発明の第2実施形態の暖房給湯システムの暖房用混合弁45及び暖房用循環ポンプ48の制御動作を示すフローチャートである。
【0093】
まず、ステップS200において、室温検知部72は、室温サーミスタ62から暖房端末8の周辺温度を示す信号を受け取り、受け取った信号を暖房負荷判断部73に出力する。そして、処理はステップS202に移行する。
【0094】
ステップS202において、暖房負荷判断部73は、室温検知部72から受け取った暖房端末8の周辺温度を示す信号と、リモコン104から受け取った暖房端末8の設定温度(18℃)を示す信号とを比較する。周辺温度が18℃より高い場合、暖房負荷判断部73は、暖房端末8の暖房負荷が所定値より小さいと判断し、処理はステップS204に移行する。一方、周辺温度が18℃以下の場合、暖房負荷判断部73は、暖房端末8の暖房負荷が所定値以上であると判断し、処理はステップS206に移行し、通常のポンプ制御が行われる。
【0095】
ステップS202で暖房端末8の暖房負荷が所定値より小さいと判断された場合、ステップS204において、往き/戻り温度検知部70は、戻り温度センサ47から戻り温度を示す信号を受け取り、受け取った信号を往き/戻り温度制御部74に出力する。そして、処理はステップS208に移行する。
【0096】
ステップS208において、往き/戻り温度制御部74は、戻り温度と目標戻り温度(10℃)とを比較する。戻り温度が10℃に達したと判断された場合、処理はステップS218に移行する。一方、戻り温度が10℃に達していないと判断された場合、処理はステップS210に移行する。
【0097】
ステップS208で戻り温度が30℃より大きいと判断された場合、ステップS210において、往き/戻り温度制御部74は、最低流量(図3)で暖房用循環ポンプ48を運転すると共に、往き温度を45℃で維持するように混合弁45を調整する。そして、処理はステップS212に移行する。
【0098】
ステップS212において、往き/戻り温度制御部74は、所定時間が経過したか否かを判断する。所定時間が経過した場合、処理はステップS214に移行する。一方、所定時間未経過の場合、処理はステップS210を繰り返す。
【0099】
ステップS212で所定時間が経過したと判断された場合、ステップS214において、往き/戻り温度検知部70は、戻り温度センサ47から戻り温度を示す信号を受け取り、受け取った信号を往き/戻り温度制御部74に出力する。そして、処理はステップS216に移行する。
【0100】
ステップS216において、往き/戻り温度制御部74は、戻り温度と目標戻り温度(10℃)とを比較する。戻り温度が10℃に達したと判断された場合、処理はステップS218に移行する。一方、戻り温度が10℃に達していないと判断された場合、処理はステップS210を繰り返す。
【0101】
ステップS208またはステップS216で戻り温度が10℃に達したと判断された場合、ステップS218において、往き/戻り温度制御部74は、暖房用循環ポンプ48の運転を停止する。そして、本発明の第2実施形態の暖房給湯システムの暖房用混合弁45及び暖房用循環ポンプ48の制御動作が終了する。
【0102】
以上、本発明の第2実施形態では、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。更に、往き/戻り温度制御部74は、貯湯タンク2の下部温度と相関のある戻り温度を示す信号に基づいて、暖房用循環ポンプ48や暖房用混合弁45を制御できる。このため、貯湯タンク2の下部温度を容易に低下させることができる。
【0103】
次に、本発明の第3実施形態について説明する。第1実施形態で説明した要素と同一の要素については、詳細な説明を省略する。この実施形態(図6及び図7)では、制御部160が実行するプログラムが、第1及び第2実施形態と相違し、暖房負荷判断部73で暖房端末8の暖房負荷が所定値以上であると判断された場合に、往き戻り温度制御部80が循環流量を最低流量(図3)にすると共に、暖房用混合弁45及び切換弁63を調節して、貯湯タンク2を経ないで暖房用循環ポンプ48と暖房端末8との間で温水を循環させる第2循環回路を形成し、貯湯タンク2下部の温水温度を目標タンク温度(30℃)以下に保つ例について述べる。その他の構成は、第1及び第2実施形態と同じである。
【0104】
図8は、本発明の第3実施形態の暖房給湯システムの暖房用混合弁45、暖房用循環ポンプ48及び切換弁63の制御動作を示すフローチャートである。
【0105】
まず、ステップS300において、室温検知部72は、室温サーミスタ62から暖房端末8の周辺温度を示す信号を受け取り、受け取った信号を暖房負荷判断部73に出力する。そして、処理はステップS302に移行する。
【0106】
ステップS302において、暖房負荷判断部73は、室温検知部72から受け取った室内温度を示す信号と、リモコン104から受け取った暖房端末8の設定温度(18℃)を示す信号とを比較する。室内温度が18℃より高い場合、暖房負荷判断部73は、暖房端末8の暖房負荷が所定値より小さいと判断し、処理はステップS304に移行する。一方、室内温度が18℃以下の場合、暖房負荷判断部73は、暖房端末8の暖房負荷が所定値以上であると判断し、処理はステップS306に移行し、通常のポンプ制御が行われる。
【0107】
ステップS302で暖房端末8の暖房負荷が所定値より小さいと判断された場合、ステップS304において、往き/戻り温度検知部70は、戻り温度センサ47から戻り温度を示す信号を受け取り、受け取った信号を往き/戻り温度制御部74に出力する。そして、処理はステップS308に移行する。
【0108】
ステップS308において、往き/戻り温度制御部80は、戻り温度と目標戻り温度(30℃)とを比較する。戻り温度が30℃以下であると判断された場合、処理はステップS322に移行する。一方、戻り温度が30℃より大きいと判断された場合、処理はステップS310に移行する。
【0109】
ステップS308で戻り温度が30℃より大きいと判断された場合、ステップS310において、往き/戻り温度制御部80は、暖房用混合弁45及び切換弁63を調節して、上述した第2循環回路を形成すると共に、暖房用循環ポンプ48を制御して、第2循環回路に最低流量で温水を循環させる(第2状態)。そして、処理はステップS312に移行する。
【0110】
ステップS312において、往き/戻り温度制御部80は、所定時間が経過したか否かを判断する。所定時間が経過した場合、処理はステップS314に移行する。一方、所定時間未経過の場合、処理はステップS310を繰り返す。
【0111】
ステップS312で所定時間が経過したと判断された場合、ステップS314において、往き/戻り温度検知部70は、戻り温度センサ47から戻り温度を示す信号を受け取り、受け取った信号を往き/戻り温度制御部80に出力する。そして、処理はステップS316に移行する。
【0112】
ステップS316において、往き/戻り温度制御部80は、戻り温度と目標戻り温度(30℃)とを比較する。戻り温度が30℃以下であると判断された場合、処理はステップS318に移行する。一方、戻り温度が30℃より大きいと判断された場合、処理はステップS310を繰り返す。
【0113】
ステップS316で戻り温度が30℃以下であると判断された場合、ステップS318において、タンク温度検知部71は、タンクサーミスタ61から貯湯タンク2下部の温水温度を示す信号を受け取り、受け取った信号を往き/戻り温度制御部80に出力する。そして、処理はステップS320に移行する。
【0114】
ステップS320において、往き/戻り温度制御部80は、貯湯タンク2下部の温水温度と、予め決められた目標タンク温度(30℃)とを比較する。貯湯タンク2下部の温水温度が30℃以下であると判断された場合、処理はステップS322に移行する。一方、貯湯タンク2下部の温水温度が30℃より大きいと判断された場合、処理はステップS324に移行する。
【0115】
ステップS308またはステップS320で戻り温度が30℃以下であると判断された場合、ステップS322において、往き/戻り温度制御部80は、暖房用循環ポンプ48の運転を停止する。そして、本発明の第3実施形態の暖房給湯システムの暖房用混合弁45、暖房用循環ポンプ48及び切換弁63の制御動作が終了する。
【0116】
一方、ステップS320で貯湯タンク2下部の温水温度が30℃より大きいと判断された場合、ステップS324において、往き/戻り温度制御部80は、暖房用混合弁45及び切換弁63を調節して、貯湯タンク2に貯えられた温水を貯湯タンク2と暖房端末8との間で循環させる第1循環回路を形成すると共に、暖房用循環ポンプ48を制御して、第1循環回路に最低流量で温水を循環させる(第1状態)。
【0117】
ステップS326において、往き/戻り温度制御部80は、所定時間が経過したか否かを判断する。所定時間が経過した場合、処理はステップS328に移行する。一方、所定時間未経過の場合、処理はステップS324を繰り返す。
【0118】
ステップS326で所定時間が経過したと判断された場合、ステップS328において、往き/戻り温度検知部70は、戻り温度センサ47から戻り温度を示す信号を受け取り、受け取った信号を往き/戻り温度制御部80に出力する。そして、処理はステップS330に移行する。
【0119】
ステップS330において、往き/戻り温度制御部80は、戻り温度と目標戻り温度(30℃)とを比較する。戻り温度が30℃以下であると判断された場合、処理はステップS318に移行する。一方、戻り温度が30℃より大きいと判断された場合、処理はステップS332に移行する。
【0120】
ステップS330で戻り温度が30℃より大きいと判断された場合、ステップS332において、所定時間を0にリセットする。そして、処理はステップS310に移行する。
【0121】
以上、本発明の第3実施形態では、第1及び第2実施形態と同様の効果を得ることができる。更に、貯湯タンク2を経由する第1循環回路を温水が循環する第1状態と、貯湯タンクを経由しない第2循環回路を温水が循環する第2状態を形成可能な暖房用混合弁45及び切換弁63が設けられているため、暖房端末8の暖房負荷が所定値より小さくなって本来なら暖房端末8への温水供給が停止されるときに第2状態に設定することで、暖房端末8から流出した温水温度を確実に低下させることができる。このため、暖房端末8の暖房負荷が所定値以上になって暖房端末8への温水供給が開始され、第2状態から第1状態に切り換わる際に、貯湯タンク2の下部に十分に低温水を供給できる。この結果、貯湯タンク2の下部からヒートポンプユニット1に低温水を供給でき、従来の暖房給湯システムに比してヒートポンプユニット1のCOPが向上する。
【0122】
図9は、戻り温度及び往き温度に対応する暖房端末8の能力の実験データを示している。この実験データでは、各能力は、往き温度が85℃、戻り温度が60℃に対応する能力を100%(以下、能力1という)とした数値比率で表されている。このため、例えば、往き温度が85℃、戻り温度が30℃に対応する能力は48.2%(以下、能力2という)で表され、往き温度が65℃、戻り温度が30℃に対応する能力は35.7%(以下、能力3という)で表され、往き温度が45℃、戻り温度が40℃に対応する能力は34.0%(以下、能力4という)で表される。
【0123】
図10は、図9で示した各能力に対応するCOPの実験データを示している。この実験データでは、各COPは、能力1に対応するCOPを100%とした数値比率で表されている。このため、例えば、能力2に対応するCOPは191%で表され、能力3に対応するCOPは215%で表される。図に示すような往き温度/戻り温度/COPの関係は、主として、戻り温度を下げることで貯湯タンク2下部の温水温度が低下し、貯湯タンク2からヒートポンプユニット1の沸き上げ用循環回路5に導入される温水温度が低下するのでヒートポンプユニット1のCOPが向上する点、往き温度を下げることで暖房端末8で使用される熱量を少なく抑えることができるのでヒートポンプユニット1のCOPが向上する点によるものである。
【0124】
以上、本発明の実施形態について図面に基づいて説明したが、具体的な構成は、これらの実施形態に限定されるものでないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明だけではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0125】
なお、本発明の第1〜第3実施形態では、室内温度と設定温度との比較によって暖房端末8の暖房負荷が所定値より小さいか否かを判断する例について述べた。本発明は、かかる実施形態に限定されるものではない。例えば、次に示す演算式(1)、(2)に基づいて、演算暖房負荷Q(kWh/日)を演算し、演算暖房負荷Q(kWh/日)が0.5(kWh/日)を超える場合、暖房端末8の暖房負荷が所定値以上であると判断し、演算暖房負荷Q(kWh/日)が0.5(kWh/日)以下の場合、暖房端末8の暖房負荷が所定値より小さいと判断してもよい。
V=N×K・・・・(1)
Q=ΣV×(LW−RW)・・・・(2)
なお、各式中のVは循環流量を、Nは暖房用循環ポンプ48の回転数を、Kは係数を、LWは往き温度を、RWは戻り温度をそれぞれ示している。
【0126】
また、外気温度センサ18で検出された外気温度に応じて暖房端末8の暖房負荷が所定値より小さいか否かを判断してもよい。また、暖房端末8における暖房状態がリモコン104で設定された設定温度に対応した設定暖房状態となり且つ所定時間だけ継続した場合に暖房負荷が所定値より小さいと判断するものでもよい。また、リモコン104に設けられた「暖房」機能スイッチのオン/オフに基づいて、暖房負荷が所定値より小さいか否かを判断するものでもよい。
【0127】
また、一日の最低外気温度が室内設定温度より高くなった日が連続して所定期間(例えば3日)以上続いた場合に、暖房負荷が所定値より小さいと判断してもよい。
【0128】
また、室内に設置されたルームサーモからのサーモオン信号が所定時間以上こない場合に、暖房負荷が所定値より小さいと判断してもよい。
【0129】
また、次に示す演算式(3)、(4)に基づいて算出される所定時間(例えば1日)のヒートポンプユニット1側で生成した熱量QHPが、ある値より小さい場合に、暖房端末8の暖房負荷が所定値より小さいと判断してもよい。
QHP=ΣV0×(Tout−Tin)・・・・(3)
V0=N0×K0・・・・(4)
なお、各式中のN0は沸き上げ用循環ポンプ51の回転数を、K0は予め測定した沸き上げ用循環ポンプ51の回転数と沸き上げ用循環ポンプ51循環流量の回転数を、Toutはヒートポンプユニット1の出口温度を、Tinはヒートポンプユニット1への入口温度をそれぞれ示している。
【0130】
また、本発明の暖房給湯システムの第1〜3実施形態では、暖房給湯システム100が、暖房システム101及び給湯システム102を有する例について述べた。本発明は、かかる実施形態に限定されるものではない。給湯システム102を有さず、暖房システム101のみを有するものでもよい。
【産業上の利用可能性】
【0131】
本発明を利用すれば、ヒートポンプシステム起動時のCOPを向上可能な暖房システム及び暖房給湯システムを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0132】
【図1】本発明の第1実施形態の暖房給湯システムの構成を示す模式図である。
【図2】制御部の構成を示すブロック図である。
【図3】各往き温度に対応する循環流量と戻り温度の関係を示す実験データである。
【図4】本発明の第1実施形態の暖房給湯システムの暖房用混合弁及び暖房用循環ポンプの制御動作を示すフローチャートである。
【図5】本発明の第2実施形態の暖房給湯システムの暖房用混合弁及び暖房用循環ポンプの制御動作を示すフローチャートである。
【図6】本発明の第3実施形態の暖房給湯システムの構成を示す模式図である。
【図7】制御部の構成を示すブロック図である。
【図8】本発明の第3実施形態の暖房給湯システムの暖房用混合弁、暖房用循環ポンプ及び切換弁の制御動作を示すフローチャートである。
【図9】戻り温度及び往き温度に対応する暖房端末8の能力の実験データを示している。
【図10】図9で示した各能力に対応するCOPの実験データを示している。
【符号の説明】
【0133】
1 ヒートポンプユニット(ヒートポンプシステム)
2 貯湯タンク
4 暖房用循環回路(循環回路)
8 暖房端末
45 暖房用混合弁(往き温度調節手段)
48 暖房用循環ポンプ(循環ポンプ)
60、160 制御部
61 タンクサーミスタ(タンク温度センサ)
62 室温サーミスタ(周辺温度センサ)
63 切換弁(切換手段)
73 暖房負荷判断部(判断手段)
74、80 往き/戻り温度制御部(制御手段)
100 暖房給湯システム
101 暖房システム
102 給湯システム
104 リモコン(設定手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒートポンプシステムと、
前記ヒートポンプシステムで加熱された温水を貯える貯湯タンクと、
前記貯湯タンクに貯えられた温水を前記貯湯タンクと暖房端末との間で循環させる循環回路と、
前記暖房端末に供給される温水の流量を変更する循環ポンプと、
前記暖房端末に供給される温水の往き温度を調節する往き温度調節手段と、
前記循環ポンプ及び前記往き温度調節手段の少なくとも一方を制御する制御手段と、
前記暖房端末における暖房負荷を判断する判断手段とを備え、
前記制御手段は、前記判断手段により前記暖房負荷が所定値より小さいと判断された場合に、前記暖房端末から前記貯湯タンクへ戻る温水の戻り温度が低下するように前記循環ポンプ及び前記往き温度調節手段の少なくとも一方を制御することを特徴とする暖房システム。
【請求項2】
前記制御手段は、前記判断手段により前記暖房負荷が所定値より小さいと判断された場合に、前記暖房端末から前記貯湯タンクへ戻る温水の戻り温度が目標戻り温度以下となるように前記循環ポンプ及び前記往き温度調節手段の少なくとも一方を制御することを特徴とする請求項1に記載の暖房システム。
【請求項3】
前記戻り温度を検出する戻り温度センサを備え、
前記制御手段は、前記判断手段により前記暖房負荷が所定値より小さいと判断された場合に、前記戻り温度センサの出力に基づいて、前記循環ポンプ及び前記往き温度調節手段の少なくとも一方を制御することを特徴とする請求項1または2に記載の暖房システム。
【請求項4】
前記貯湯タンクに設けられたタンク温度センサを備え、
前記制御手段は、前記タンク温度センサの出力に基づいて前記循環ポンプ及び前記往き温度調節手段の少なくとも一方を制御することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の暖房システム。
【請求項5】
前記制御手段は、前記タンク温度センサにより検知された温水温度が目標タンク温度以下となるように、前記循環ポンプ及び前記往き温度調節手段の少なくとも一方を制御することを特徴とする請求項4記載の暖房システム。
【請求項6】
前記タンク温度センサは前記貯湯タンクの下部に設けられることを特徴とする請求項5記載の暖房システム。
【請求項7】
ヒートポンプシステムと、
前記ヒートポンプシステムで加熱された温水を貯える貯湯タンクと、
前記貯湯タンクに貯えられた温水を前記貯湯タンクと暖房端末との間で循環させる第1循環回路と、
前記暖房端末に供給される温水の流量を変更する循環ポンプと、
前記暖房端末から流出した温水を前記循環ポンプに供給し、前記貯湯タンクを経ないで前記循環ポンプと前記暖房端末との間で循環させる第2循環回路と、
前記暖房端末に供給される温水の往き温度を調節する往き温度調節手段と、
前記第1循環回路を温水が循環する第1状態及び前記第2循環回路を温水が循環する第2状態のいずれかに切り換える切換手段と、
前記循環ポンプ、前記往き温度調節手段及び前記切換手段の少なくとも一方を制御する制御手段と、
前記暖房端末における暖房負荷を判断する判断手段とを備え、
前記制御手段は、前記判断手段により前記暖房負荷が所定値より小さいと判断された場合に、前記暖房端末から前記貯湯タンクへ戻る温水の戻り温度が低下するように前記循環ポンプ、前記往き温度調節手段及び前記切換手段の少なくとも一方を制御することを特徴とする暖房システム。
【請求項8】
前記制御手段は、前記判断手段により前記暖房負荷が所定値より小さいと判断された場合に、前記暖房端末から前記貯湯タンクへ戻る温水の戻り温度が目標戻り温度以下となるように前記循環ポンプ、前記往き温度調節手段及び前記切換手段の少なくとも一方を制御することを特徴とする請求項7に記載の暖房システム。
【請求項9】
前記戻り温度を検出する戻り温度センサを備え、
前記制御手段は、前記判断手段により前記暖房負荷が所定値より小さいと判断された場合に、前記戻り温度センサの出力に基づいて、前記循環ポンプ、前記往き温度調節手段及び前記切換手段の少なくとも一方を制御することを特徴とする請求項7または8に記載の暖房システム
【請求項10】
前記貯湯タンクに設けられたタンク温度センサを備え、
前記制御手段は、前記タンク温度センサの出力に基づいて、前記循環ポンプ、前記往き温度調節手段及び前記切換手段の少なくとも一方を制御することを特徴とする請求項7〜9のいずれか1項に記載の暖房システム。
【請求項11】
前記制御手段は、前記タンク温度センサにより検知された温水温度が目標タンク温度以下となるように、前記循環ポンプ及び前記往き温度調節手段の少なくとも一方を制御することを特徴とする請求項10記載の暖房システム。
【請求項12】
前記タンク温度センサは前記貯湯タンクの下部に設けられることを特徴とする請求項11記載の暖房システム。
【請求項13】
前記暖房端末の周辺温度を検出する周辺温度センサと、
前記暖房端末の設定温度を設定する設定手段とを備え、
前記判断手段は、前記周辺温度センサにより検出された周辺温度が前記設定手段により設定された設定温度以上の場合に、前記暖房負荷が所定値より小さいと判断することを特徴とする請求項1〜12のいずれか1項に記載の暖房システム。
【請求項14】
冷媒がCO冷媒であることを特徴とする請求項1〜13のいずれか1項に記載の暖房システム。
【請求項15】
請求項1〜14のいずれか1項に記載の暖房システムと、
前記貯湯タンク内に配置され、給湯水が内部を流れる熱交換器とを備えたことを特徴とする暖房給湯システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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