説明

暖房便座付き便器装置

【課題】バックアップ用の電源や電池を特別に用意しておかなくても、停電時において支障無く便器洗浄を行うことのできる暖房便座付き便器装置を安価に提供する。
【解決手段】便座16の電気ヒータ28に給電を行う暖房便座用の給電回路30に備えられ、蓄えられた電気エネルギーを放電して電気ヒータ28を急速加熱させる大容量の電気二重層コンデンサ44を、便器洗浄のための水を給水及び給水停止する電気駆動の洗浄バルブ72,74を駆動及び制御する、便器洗浄装置の駆動制御回路76の電源として用いるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は暖房便座付きの便器装置に関し、詳しくは便器洗浄装置に特徴を有するものに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、暖房便座付き便器装置として、暖房便座の電気ヒータに給電を行う暖房便座用の給電回路に蓄電器を備え、その蓄電器に電気エネルギーを蓄えておいて、便器使用者を人体検知センサで検知したところで、蓄電器に蓄えてある電気エネルギーを一気に放電して電気ヒータに給電し、電気ヒータを急速加熱して便座を瞬間暖房するようになしたものが公知である。
例えば下記特許文献1,特許文献2にこの種の便器の暖房便座が開示されている。
【0003】
また上記の蓄電器として容量の大きな電気二重層コンデンサ(キャパシタ)を用いたものも知られている。例えば特許文献2に蓄電器としてこの電気二重層コンデンサを用いる点が開示されている。
但しこれら特許文献1,特許文献2に開示のものは、何れも上記蓄電器を暖房便座の暖房用に専用に用いるものである。
【0004】
従来の暖房便座付き便器装置の場合、商用電源から蓄電器を介して便座(詳しくは電気ヒータ)に電力供給するものであり、従って停電状態の下では便座を暖房する機能は失われる。
但し便器そのものを使用できなくなるわけではないので特別な支障を生じるわけではない。
【0005】
一方、便器洗浄装置が商用電源を用いて便器洗浄を行うものである場合、停電によって電力供給されなくなると便器洗浄を行うことができなくなり、この場合実質的に便器の使用そのものができなくなってしまうといった問題が生ずる。
【0006】
そうしたことから、商用電源を用いて便器洗浄を行う便器洗浄装置の場合、停電時のために便器洗浄装置を直接手動で駆動する、便器洗浄のための手動操作部を備えておくといったことも行われている。
但し停電時において便器使用者がその手動操作部を操作することで便器洗浄を行うといったことは、実際上困難であるのが実情である。
【0007】
便器洗浄装置には様々な形式のものがあるが、その1つに、電気駆動の2つの洗浄バルブを用い、それら2つの洗浄バルブによる給水・給水停止のタイミングを複雑に制御して便器洗浄を行う形式のものがある。
図7はその具体例を示している。
【0008】
図7(イ)において、200は第1の洗浄バルブ,202は第2の洗浄バルブで、それぞれ弁体204,206と弁棒208,210と、カム212,214及び図示を省略する電動モータ(ステッピングモータ)を備えている。
【0009】
この例の便器洗浄装置では、先ず第1の洗浄バルブ200における電動モータによりカム212を回転させることで、第1の洗浄バルブ200を開弁させ、図7(ロ)(I)に示す便器本体の上端周縁に沿ったリム215の内部のリム通水路216に洗浄水を給水してリム洗浄を行う。
このリム洗浄では、リム通水路216に給水された水が、リム215の下面に設けられた多数の射水孔から下向きに射水され、便鉢217の洗浄を先ず行う。
【0010】
この便器洗浄装置では、(ロ)(I)のリム洗浄を行った後、続いて第1の洗浄バルブ200を閉、第2の洗浄バルブ202を開として、この洗浄バルブ202を通じて給水を行う。
洗浄バルブ202を介して給水された洗浄水は、図7(ロ)(II)に示す便鉢217底部のジェット孔218からトラップ部220に向けてジェット噴射され、サイホン作用を助勢する。そしてサイホン現象の惹起によって、便鉢217内部の汚物全体を汚水とともに排出させる。
【0011】
この(ロ)(II)のジェット洗浄が終了するタイミングで、続いて第2の洗浄バルブ202が閉、第1の洗浄バルブ200が開とされ、再びリム洗浄が行われて便鉢217内への給水が行われ、便鉢217下部に溜水が生ぜしめられる。
【0012】
この便器洗浄装置における上記の複雑な便器洗浄は、通常、使用者がリモコンのボタン操作1つで簡単に行うことができる。
ところが停電状態になると電気駆動の第1の洗浄バルブ200,第2の洗浄バルブ202を駆動することができなくなって、リモコン操作では便器洗浄を行えなくなる。
【0013】
但し停電のときのために便器洗浄のための手動操作部が備えてあるものについては、その手動操作部を使用者が操作することで一応は便器洗浄を行うことが可能である。
図8にその手動操作部と操作手順の一例が示してある。
【0014】
図8において、222はその手動操作部としての洗浄ハンドルで、ここでは先ず洗浄ハンドル222を当初位置から90°回転させてそこに暫く保持し、そのことによって上記の図7(ロ)(I)のリム洗浄を行わせる。
その後、更に90°だけ洗浄ハンドル222を同方向に回転させてそこに暫く保持し、図7(ロ)(I)のリム洗浄に続く(ロ)(II)のジェット洗浄を行わせる。
このジェット洗浄を終えたら、次に洗浄ハンドル222を逆方向に90°回転させてそこに保持し、(ロ)(II)のジェット洗浄に続く(ロ)(III)のリム洗浄を行わせる。
そうした一連の洗浄を終えたところで、洗浄ハンドル222を当初の位置まで戻し、便器への給水を停止させる。
【0015】
しかしながら、便器使用者はこのような洗浄ハンドル222による便器の洗浄操作を通常の便器使用時には殆んど行うことはなく、従って極くまれにしか起らない停電時に、こうした手動による便器の洗浄操作を行うことは、便器使用者がその操作を覚えていないこと、またトイレ内部が停電により暗がりとなっていることによって、実際上その操作を行うといったことは困難である。
【0016】
停電時における便器洗浄に備えて便器装置にバックアップ用電源を内蔵するといったことも提案されているが、便器洗浄装置を駆動するのに必要な電力が大きいため、洗浄目的だけでこのようなバックアップ用電源を設置することはコスト面で問題がある。
また、バックアップ用に電池を備えておく場合、長期間の間に電池が自己放電してしまい、肝心なときに電池を電源として使えないといったことが起り得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】特開平11−299696号公報
【特許文献2】特開平11−244199号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明は以上のような事情を背景とし、バックアップ用の電源や電池を特別に用意しておかなくても、停電時においても支障無く便器洗浄を行うことのできる暖房便座付き便器装置を安価に提供することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
而して請求項1のものは、暖房便座の電気ヒータに給電を行う暖房便座用の給電回路に備えられ、蓄えられた電気エネルギーを放電して該電気ヒータを加熱させる蓄電器を、便器洗浄のための水を給水及び給水停止する電気駆動の洗浄バルブを駆動及び制御する、便器洗浄装置の駆動制御回路の電源として用いるように構成してあることを特徴とする。
【0020】
請求項2のものは、請求項1において、前記駆動制御回路は、常時は商用電源を電源として動作し、停電時において前記蓄電器を電源に切り換えて動作するものとなしてあることを特徴とする。
【0021】
請求項3のものは、請求項2において、前記停電時に前記駆動制御回路の電源を前記商用電源から前記蓄電器に自動的に切り換える切換手段が設けてあることを特徴とする。
【0022】
請求項4のものは、請求項2,3の何れかにおいて、前記駆動制御回路は洗浄制御部を有しており、該洗浄制御部は、前記蓄電器の充電電圧が設定下限値未満となったとき、便器洗浄操作のための操作信号を無線送信するリモコンからの該操作信号を受信する受信回路への電源供給を停止するものとなしてあるとともに、該洗浄制御部には便器洗浄のための手動の洗浄スイッチが有線接続してあることを特徴とする。
【0023】
請求項5のものは、請求項1〜4の何れかにおいて、前記蓄電器の出力端子には、スイッチと抵抗とを有する放電回路が接続してあるとともに、該スイッチが便器本体から取外し可能な便座装置の、該便器本体との接触面に設けてあり、該便座装置を該便器本体から取り外したときに該スイッチがオン状態となって、前記蓄電器に蓄えられている電気エネルギーを放電させるようになしてあることを特徴とする。
【0024】
請求項6のものは、請求項1〜5の何れかにおいて、前記蓄電器が電気二重層コンデンサであることを特徴とする。
【発明の作用・効果】
【0025】
以上のように本発明は、暖房便座(以下単に便座とする)の電気ヒータに給電を行う便座用の給電回路に備えられ、蓄えられた電気エネルギーを電気ヒータに給電し加熱させる蓄電器を、便器洗浄装置の洗浄バルブを駆動及び制御する駆動制御回路の電源として用いるようになしたものである。
【0026】
上記蓄電器は便座の暖房のための放電を行うごとに続いて速やかに充電されるもので、常時充電状態に保持される。
便座の暖房機能は停電によって回路機能が失われるために一時的に停止状態となるが、蓄電器は停電状態に切り換った後も充電状態に保持される。
【0027】
従ってこの蓄電器を電源として便器洗浄装置の駆動制御回路を動作させる、即ち蓄電器に蓄えられた電気エネルギーを用いて駆動制御回路を動作させる本発明にあっては、停電状態に切り換った後も引続き、蓄電器に保持された電気エネルギーを用いることで所定時間に亘り便器洗浄装置による便器洗浄機能を確保することが可能である。
即ち使用者によるリモコン操作等によって電気駆動の便器洗浄装置を働かせ、便器洗浄を行わせることが可能である。
【0028】
本発明は、もともとは便座の暖房用に備えられている蓄電器を便器洗浄装置による便器洗浄用に利用するものであるため、停電時のためにバックアップ用電源を別に備えておく必要がなく、停電用のためのバックアップ用電源を備えておくことによるコストの増大を招く問題を解消することができる。
また電池をバックアップ用として備えておく場合のように、電池の自己放電によって肝心なときに便器洗浄装置を電気駆動で働かせることができないといった問題も解決することができる。
【0029】
本発明は、通常時即ち非停電時及び停電時を問わず、常時便座暖房のための蓄電器を電源として便器洗浄装置、詳しくは便器洗浄装置の電気駆動の洗浄バルブを駆動及び制御する駆動制御回路を動作させるようになしておくことができるが、請求項2に従って、常時は商用電源を電源として便器洗浄装置を電気駆動により働かせ、停電状態となったときに蓄電器を電源とする状態に切り換えて便器洗浄装置を電気駆動で働かせるようになすことができる。
【0030】
この場合において、便器洗浄装置における上記の駆動制御回路の電源を、停電時に商用電源から蓄電器に自動的に切り換える切換手段を設けておくことができる(請求項3)。
【0031】
次に請求項4は、蓄電器の充電電圧が設定下限値未満となったとき、便器洗浄操作のための操作信号を無線送信するリモコンからの操作信号を受信する受信回路への電源供給を停止し、便器洗浄装置における駆動制御回路の洗浄制御部に有線接続してある手動の洗浄スイッチのオン操作により便器洗浄装置を働かせて便器洗浄するようになしたものである。
この請求項4によれば、停電状態の下での受信回路による蓄電器の電力消費を抑制し得て、停電後に、より一層長時間に亘って便器洗浄装置による便器洗浄を確保することが可能となる。
ここで洗浄スイッチは、使用者が便座に着座したままでオン操作し易い個所である便器本体に設けておくことが望ましい。
【0032】
次に請求項5は、蓄電器の出力端子にスイッチと抵抗とを有する放電回路を接続しておくとともに、そのスイッチを、便器本体から取外し可能な便座装置の、便器本体との接触面に設けておき、便座装置を便器本体から取り外したときにスイッチをオン状態として、蓄電器に蓄えられている電気エネルギーを放電させるようになしたものである。
【0033】
放電によって便座を暖房可能な、便座暖房用に備えられている上記の蓄電器は必然的に容量の大きなもので、そこには多量の電気エネルギーが常時蓄えられる。
この場合、便座装置を便器本体から取り外した状態で輸送したり取扱い作業したりするとき、蓄電器に多量の電気エネルギーが保持されていると輸送や取扱い作業の際に不測の不具合をもたらす恐れがある。
【0034】
しかるにこの請求項5に従って、便座装置を便器本体から取り外すと同時に蓄電器に蓄えられている電気エネルギーを放電させるようにしておくことで、そうした不具合の発生を未然に防ぐことが可能となる。
【0035】
本発明では、上記蓄電器として容量5F以上のコンデンサを用いることが望ましく、特に電気二重層コンデンサを蓄電器として用いるのが好適である(請求項6)。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の一実施形態である暖房便座付き便器装置の斜視図である。
【図2】同実施形態における回路構成を示した図である。
【図3】同実施形態における停電時の回路作用状態を示した図である。
【図4】同実施形態における洗浄スイッチ,放電回路を示した図である。
【図5】同実施形態における停電時の制御の内容をフローチャートで示した図である。
【図6】本発明の他の実施形態における回路構成を示した図である。
【図7】便器洗浄形式の一例の説明図である。
【図8】停電時における便器洗浄のための操作部及び操作手順の一例の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
次に本発明の実施形態を図面に基づいて詳しく説明する。
図1において、10は本実施形態の暖房便座付き便器装置で、便器本体12と、その上の便座装置14とを有している。
便座装置14は、暖房便座(以下単に便座とする)16と、便蓋18と、便座ボックス20とを有しており、その便座ボックス20に対して便座16と便蓋18とが回動(開閉)可能に取り付けられている。
ここで便座装置14は、便器本体12に対して脱着可能とされている。
【0038】
22は壁Wに取り付けられた電池内蔵のリモコンで、24はそのリモコン22における押ボタン式の洗浄操作部である。
便器洗浄は、この洗浄操作部24を押操作することによって行われる。
尚リモコン22からは操作信号が光信号として発信(発光)される。
その操作信号は受信回路を備えた図2の受信ユニット(受光ユニット)26にて受信され、便器洗浄はこの受信ユニット26による受信に基づいて行われる。
【0039】
図2に、この便器装置10における便座暖房のための回路構成と、便器洗浄のための回路構成とが示してある。
同図において、28は便座(暖房便座)16に内蔵された、便座16暖房のための電気ヒータである。
30はこの電気ヒータ28に給電してこれを加熱し、便座16を暖房する給電回路である。
この給電回路30は整流平滑回路32と、定電流ポンプ回路34と、便座加熱回路36とを有している。
【0040】
整流平滑回路32は整流器38と平滑コンデンサ40とを有しており、商用電源(ここでは100VのAC電源)を降圧器42で例えばAC24Vに降圧し、更に整流器38で全波整流し直流化して平滑コンデンサ40で電流を平滑化する。
ここでは整流平滑回路32はAC電源をDC35Vの直流に変換する。
【0041】
定電流ポンプ回路34は、蓄電器としての電気二重層コンデンサ(キャパシタ)(ここでは容量10(F))44に定電流で電流供給し、電気二重層コンデンサ(以下単にコンデンサとする)44を充電する働きを有するもので、スイッチング素子としてのトランジスタ46,電流検出素子48,コイル50,スイッチ52及びダイオード54を有している。
【0042】
この定電流ポンプ回路34によるコンデンサ44への充電は、スイッチ52をコンデンサ44側に切り換えた状態の下で暖房便座制御マイコン56からの充電信号に基づいて、定電流制御回路58による制御の下にスイッチング素子としてのトランジスタ46をオン・オフさせてコイル50を通じコンデンサ44に供給される電流を定電流化し、一定時間をかけてコンデンサ44に対し充電を行う。
【0043】
尚、電流検出素子48はトランジスタ46のオン動作によって回路を流れる電流が一定以上に高くならないように回路を流れる電流を監視するもので、回路を流れる電流が所定値まで高まると電流検出素子48による電流検出に基づいて定電流制御回路58がトランジスタ46をオフ動作させる。
【0044】
以後同様にしてトランジスタ46を間欠的にオン・オフ動作させて回路の電流を定電流化し、コンデンサ44に供給してコンデンサ44の充電電圧を漸次高める。
尚このとき、便座加熱回路36のスイッチング素子としてのトランジスタ59はオフ状態にある。
コンデンサ44の充電電圧が設定電圧まで電圧上昇すると、暖房便座制御マイコン56への信号入力によってコンデンサ44への充電が停止せしめられる。
【0045】
便座加熱回路36は、便座16に内蔵の電気ヒータ28に通電して電気ヒータ28により便座16を加熱し、暖房する働きを有するもので、スイッチング素子としてのトランジスタ59,コイルから成るノイズフィルタ60及びダイオード62を有している。
【0046】
この便座加熱回路36は、トランジスタ59のオン動作によって、コンデンサ44に蓄えられている電気エネルギーを一気に放電して電気ヒータ28に給電し、これを急速加熱して、便座16をほぼ瞬間的に目的とする設定温度まで温度上昇させる。
【0047】
その際の急速加熱は、暖房便座制御マイコン56から急速加熱駆動回路64に対して急速加熱信号が供給され、そしてこれに応じて急速加熱駆動回路64からの信号によりトランジスタ59がオン動作せしめられることによって行われる。
【0048】
また暖房便座制御マイコン56から急速加熱駆動回路64への信号供給は、人体検知センサ66による人体検知が行われたタイミングで実行される。
即ち便座16の暖房開始は人体検知センサ66が人体検知した時点でそこで初めて行われ、人体即ち便器使用者が便座16に着座するまでの間の短い時間でほぼ瞬間的に便座16が目的とする設定温度まで温度上昇せしめられる。
【0049】
而して便座16の温度が目的とする設定温度まで温度上昇すると、便座温度センサ68による温度検知に基づいてトランジスタ59がオフ動作し、コンデンサ44への再充電が開始される。また一旦便座が設定温度まで上昇した後に、温度が低下し始めた場合は、スイッチ52が充電/保温切換回路70によってコンデンサ44側から電気ヒータ28側に切り換えられ、以後は電気ヒータ28に対し保温用の小電流が定電流で供給されて便座16の保温が行われる。更にそれでも便座温度の低下が止まらない場合は、再度スイッチ52が切り替り、トランジスタ59がオンして、加熱を行う。
【0050】
尚電気ヒータ28の電気抵抗はここでは3Ωで、急速加熱の際の電気ヒータ28への供給電流はここでは最大10Aである。
またコンデンサ44への定電流供給はここでは1A程度で、コンデンサ44への充電所要時間は数分程度である。
一方コンデンサ44の放電により便座16を目標とする設定温度まで温度上昇させるのに必要な時間は数秒程度である。
【0051】
尚、コンデンサ44の出力端子には図4(B)に示しているようにスイッチ94と抵抗96とを有する放電回路98が、コンデンサ44と並列に設けられている。
ここでスイッチ94は、図4(A)に示しているように便座装置14の下面、詳しくは便座ボックス20の下面であって便器本体12と接触する部位に設けてある。
【0052】
このスイッチ94は、便座装置14が便器本体12に取り付けられているときにはオフ状態となっているが、便座装置14が便器本体12から取り外されるとオン状態となって、放電回路98が接続状態となり、コンデンサ44に蓄えられていた電気エネルギーが放電せしめられる。
【0053】
この実施形態において、便器洗浄装置は、リム洗浄を行うための第1の洗浄バルブ72と、ジェット洗浄を行うための第2の洗浄バルブ74とを備えている。
ここで第1の洗浄バルブ72は図7に示した洗浄バルブ200と同様のものであり、また第2の洗浄バルブ74は図7に示した洗浄バルブ202と同様のものである。
また便器の洗浄の動作は図7に基づいて説明した前記の洗浄の動作と基本的に同様である。
【0054】
図2において、76は洗浄バルブ72,74を駆動し制御する、便器洗浄装置における駆動制御回路で、洗浄制御マイコン(洗浄制御部)78と、洗浄制御マイコン78の動作に必要な電圧(ここではDC5V)を生ぜしめる定電圧電源80と、洗浄バルブ駆動回路82の動作に必要な電圧(ここではDC12V)を生ぜしめる洗浄バルブ駆動電源84とを有している。
【0055】
この便器洗浄装置における駆動制御回路76は、リレー86のスイッチが通常時のDC電源(12V)88によりそのDC電源88側に切り換っていることによって、このDC電源(12V)88を電源として即ち商用電源を電源として動作する。
【0056】
その際、DC12Vは定電圧電源80によりDC5Vに変換された上で洗浄制御マイコン78に電源供給される。
また洗浄バルブ駆動電源84によりDC12Vに電圧変換された上で、洗浄バルブ駆動回路82に電源供給される。
洗浄バルブ駆動回路82はこのDC12Vの電源供給を受けて洗浄バルブ72,74を所定のタイミングで開閉動作させる。
【0057】
また洗浄制御マイコン78は、リモコン22からの光信号(操作信号)を受信ユニット26が受信することで、洗浄バルブ駆動回路82を介し洗浄バルブ72,74にて便器洗浄を行わせる。
詳しくは洗浄制御マイコン78は、それら洗浄バルブ72,74による便器洗浄のための動作を制御する。
尚、DC電源88で生ぜしめられたDC12Vは暖房便座制御マイコン56に対しても常時供給されており、暖房便座制御マイコン56はこれを電源として動作する。
【0058】
洗浄制御マイコン78には、図1の便座装置14の側面に設けた手動の洗浄スイッチ90が有線接続されている。
この手動の洗浄スイッチ90は、受信ユニット26への電源供給停止によって、リモコン22の操作により便器洗浄を行うことができなくなったときに便器使用者が操作する部分で、この洗浄スイッチ90を操作すると、その操作信号が洗浄制御マイコン78に有線で供給され、洗浄制御マイコン78の制御の下に便器洗浄が行われる。
【0059】
洗浄制御マイコン78にはまた、停電検知回路92が接続されており、商用電源が停電状態となったとき停電検知回路92から停電信号が洗浄制御マイコン78に供給される。
ここにおいて洗浄制御マイコン78は以後停電時の動作モードで制御動作を行う。
【0060】
この例の便器装置においては、通常時即ち非停電時においては、便器洗浄装置の駆動制御回路76は商用電源を電源として動作し、洗浄バルブ72,74を所定のパターンで開閉動作させることによって便器洗浄を行わせる。
【0061】
一方停電状態となったときには、図3に示すようにその瞬間にリレー86のスイッチが、便座暖房のための回路に備えられた上記のコンデンサ44側に自動的に切り換ることによって(このとき便座16暖房のための回路は機能停止状態となる)、以後は停電状態の下でコンデンサ44を電源として即ちコンデンサ44に蓄えられた電気エネルギーの供給を受けて動作し、便器洗浄の動作を行う。
【0062】
このとき、コンデンサ44の電圧はそこに蓄えられている電気エネルギーの大小によって様々に異なるが、洗浄制御マイコン78にはコンデンサ44の電圧が定電圧電源80により洗浄制御マイコン78の動作に必要なDC5Vに電圧変換された上で供給される。
また洗浄バルブ駆動回路82に対しては、洗浄バルブ駆動電源84により洗浄バルブ駆動回路82の動作に必要なDC12Vに電圧変換された上で供給される。
【0063】
図5に、洗浄制御マイコン78による停電時の制御の内容がフローチャートとして示してある。
図5に示しているように、商用電源が停電状態になると停電検知回路92からの停電検知信号に基づいて先ずコンデンサ44の充電電圧が3V以上か否か判断される(ステップS10,S12)。
停電後の初期においては後述のように充電電圧は10V以上であるが、便器洗浄によって充電電圧が3V未満になったときにはステップS14以下の各ステップは実行されず、便器洗浄は行われない。
【0064】
これは、充電電圧が3V未満であると洗浄バルブ72,74を働かせて洗浄開始したとしても、途中電圧低下により定電圧電源80や洗浄バルブ駆動電源84の動作が不安定となり、それ以上洗浄バルブ72,74を働かせることができなくなってしまうことが生じ得、そうなると便器洗浄のための水が出っ放しとなってしまうといった不都合を生じることから、そうした不都合が生じないように便器洗浄の開始そのものを禁止する趣旨である。
【0065】
一方、コンデンサ44の充電電圧が3V以上である場合には、続いてステップS14で充電電圧が5V以上であるか否か判断される。
その結果充電電圧が5V未満であった場合には、リモコン受信ユニット26への電源供給が停止され、そして続いて洗浄スイッチ90が操作されたか否か判断され(ステップS16,ステップS20)、洗浄スイッチ90が操作されたと判断された場合には、洗浄バルブ駆動電源84から洗浄バルブ駆動回路82に電源供給されて洗浄バルブ72,74が開閉させられ、以て便器洗浄が実行される(ステップS20,S22,S24)。
【0066】
一方コンデンサ44の充電電圧が5V以上であり且つリモコン受信ユニット26にて便器洗浄のための操作信号(光信号)が受信された場合には、そのリモコン受信ユニット26から洗浄制御マイコン78に供給される洗浄信号に基づき、洗浄制御マイコン78においてステップS22,S24が実行されて洗浄バルブ72,74が開閉動作され、便器洗浄が行われる。
【0067】
尚この例において、暖房便座制御マイコン56には、便座温度を設定高温度,中温度,低温度まで高めるために必要なコンデンサ44の充電電圧の値を、室温の高低に応じて予め記憶させておき、コンデンサ44の充電電圧を、暖房便座制御マイコン56により室温から設定高温度まで高めるのに必要な電圧に調整しておくことができる。
表1は、室温に応じて便座温度を設定高温度,中温度,低温度まで温度上昇させるのに必要なコンデンサ44の充電電圧の一例を、室温との関係で表したものである。
【0068】
【表1】

【0069】
ここでは各室温から設定高温度(40℃)まで便座の温度を高めるのに必要な充電電圧を保持するように、コンデンサ44の充電電圧を暖房便座制御マイコン56にて調整しておく。
この場合コンデンサ44の充電電圧は室温によって変化し、場合によっては0Vとなるが、本実施形態では停電時の便器洗浄用電力として、コンデンサ44の充電電圧が例えば10Vを下回らないようにその充電電圧を制御する。
【0070】
このようにしてコンデンサ44に最低10Vを常時充電しておいた場合、その充電電力は1/2×10F×(10V)=500J(ジュール)=500W・sとなる。
停電時のリモコン受信ユニット26と洗浄制御マイコン78との消費電力を20mW,便器洗浄1回当りの消費電力を10W・sとすると、停電が3時間継続したとしてもその間に24回の便器洗浄ができることとなる。
【0071】
また充電電力が5V未満に低下したら、リモコン受信ユニット26への電源供給を停止して、便器洗浄を便器本体の洗浄スイッチ90の操作に基づいて行うようにすれば、洗浄制御マイコン78の消費電力は1mW以下にできるから、(洗浄回数にもよるが)1日以上便器洗浄可能な状態を維持することができる。
【0072】
以上のような本実施形態によれば、停電状態に切り換った後も引き続き、コンデンサ44に保持された電気エネルギーを用いることで所定時間に亘り便器洗浄装置による便器洗浄機能を確保することが可能である。
即ち使用者によるリモコン操作等によって電気駆動の便器洗浄装置を働かせ、便器洗浄を行わせることが可能である。
【0073】
また本実施形態は、もともとは便座16の暖房用に備えられているコンデンサ44を便器洗浄装置による便器洗浄用に利用するものであるため、停電時のためにバックアップ用電源を別に備えておく必要がなく、停電用のためのバックアップ用電源を備えておくことによるコストの増大を招く問題を解消することができる。
また電池をバックアップ用として備えておく場合のように、電池の自己放電によって肝心なときに便器洗浄装置を電気駆動で働かせることができないといった問題も解決することができる。
【0074】
また本実施形態では、コンデンサ44の充電電圧が5V未満となったときには、便器洗浄操作のための操作信号を無線送信するリモコン22からの操作信号を受信する受信ユニット26への電源供給を停止するようになし、洗浄スイッチ90のオン操作により便器洗浄するようになしてあることから、停電状態の下で受信ユニット26によるコンデンサ44の電力消費を抑制し得て、停電後に、より一層長時間に亘って便器洗浄装置による便器洗浄を確保することが可能となる。
【0075】
更に本実施形態では、コンデンサ44の出力端子にスイッチ94と抵抗96とを有する放電回路98を接続しておくとともに、そのスイッチ94を便座装置14の下面に設けてあることから、便器装置の輸送や取扱いに際して便座装置14を便器本体12から取り外したときにコンデンサ44に蓄えられている電気エネルギーを放電させることができ、輸送や取扱い作業の際に不測の不具合をもたらす恐れを解消することができる。
【0076】
上記実施形態では、停電時にリレー86のスイッチをコンデンサ44側に切り換えて、コンデンサ44に蓄えられた電気エネルギーを用いて便器洗浄を行うようにしているが、本発明においては停電,非停電を問わず、常時コンデンサ44の電気エネルギーを用いて便器洗浄を行うようになすこともできる。
図6はその際の回路構成を示したものである。
【0077】
図6に示しているようにこの例では図2のリレー86が省かれており、便器洗浄装置の駆動制御回路76には常時コンデンサ44から電力供給されている。
これにより便座の急速加熱と便器洗浄が同時に行われた場合には、便座の温度上昇が多少遅れると言った問題が生じるが、それを許容することにより回路の簡略化とコストダウンが図れる。
【0078】
以上本発明の実施形態を詳述したがこれはあくまで一例示であり、本発明は上例以外の他の便器洗浄装置を備えた暖房便座付き便器装置に対して適用することが可能である等、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲において種々変更を加えた形態で構成可能である。
【符号の説明】
【0079】
12 便器本体
14 便座装置
16 便座(暖房便座)
22 リモコン
26 受信ユニット
28 電気ヒータ
30 給電回路
44 電気二重層コンデンサ
76 駆動制御回路
86 リレー
88 DC電源
90 洗浄スイッチ
94 スイッチ
96 抵抗
98 放電回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
暖房便座の電気ヒータに給電を行う暖房便座用の給電回路に備えられ、蓄えられた電気エネルギーを放電して該電気ヒータを加熱させる蓄電器を、便器洗浄のための水を給水及び給水停止する電気駆動の洗浄バルブを駆動及び制御する、便器洗浄装置の駆動制御回路の電源として用いるように構成してあることを特徴とする暖房便座付き便器装置。
【請求項2】
請求項1において、前記駆動制御回路は、常時は商用電源を電源として動作し、停電時において前記蓄電器を電源に切り換えて動作するものとなしてあることを特徴とする暖房便座付き便器装置。
【請求項3】
請求項2において、前記停電時に前記駆動制御回路の電源を前記商用電源から前記蓄電器に自動的に切り換える切換手段が設けてあることを特徴とする暖房便座付き便器装置。
【請求項4】
請求項2,3の何れかにおいて、前記駆動制御回路は洗浄制御部を有しており、該洗浄制御部は、前記蓄電器の充電電圧が設定下限値未満となったとき、便器洗浄操作のための操作信号を無線送信するリモコンからの該操作信号を受信する受信回路への電源供給を停止するものとなしてあるとともに、該洗浄制御部には便器洗浄のための手動の洗浄スイッチが有線接続してあることを特徴とする暖房便座付き便器装置。
【請求項5】
請求項1〜4の何れかにおいて、前記蓄電器の出力端子には、スイッチと抵抗とを有する放電回路が接続してあるとともに、該スイッチが便器本体から取外し可能な便座装置の、該便器本体との接触面に設けてあり、該便座装置を該便器本体から取り外したときに該スイッチがオン状態となって、前記蓄電器に蓄えられている電気エネルギーを放電させるようになしてあることを特徴とする暖房便座付き便器装置。
【請求項6】
請求項1〜5の何れかにおいて、前記蓄電器が電気二重層コンデンサであることを特徴とする暖房便座付き便器装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−242428(P2010−242428A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−94380(P2009−94380)
【出願日】平成21年4月8日(2009.4.8)
【出願人】(000000479)株式会社INAX (1,429)
【Fターム(参考)】