説明

暖房便座装置

【課題】誘導加熱の原理を利用して便座着座面を暖める暖房便座装置であって、使用者の着座による繰り返し荷重が加わり、便座の着座面に破損が生じたとしても、使用者が温度むらを感じることなく、好適に使用できる暖房便座装置を提供することを目的とする。
【解決手段】便座と、前記便座に設けられ、供給された高周波電流により磁界を発生する誘導加熱コイルと、前記誘導加熱コイルが発生した磁界により誘導加熱される発熱体と、前記誘導加熱される発熱体の破損を検知する前記発熱体とは別体の検知部と、誘導加熱コイルへの高周波電流の通電を制御する制御部とを備え、前記検知部が前記発熱体の破損を検知した場合、前記制御部が、前記誘導加熱コイルへ前記高周波電流を通電させないこと、を特徴とする暖房便座装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の態様は、便器に設けられる便座を暖めることができる暖房便座装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、便座の座面は、例えばPP(polypropylene:ポリプロピレン)等の樹脂で製造されているため、使用者は、冬場などの気温の低いときに冷えた便座に座ると冷感を感じる場合がある。そこで、便座を暖めることができる暖房便座装置がある。このような暖房便座装置では、便座の昇温の迅速性や、省エネルギー化などを図るために種々の提案がなされている。
【0003】
例えば、誘導加熱の原理を利用して便座の着座面を迅速に昇温させ、待機電力を削減する暖房便座が提案されている。誘導加熱では、誘導加熱コイルに高周波電流を流すことにより磁界が発生し、その磁界が導電体を通過することで誘導加熱コイルと同一方向に渦電流が生じ、この渦電流により、導電体が発熱する(以後、導電体を発熱体とする)。このような暖房便座として、交流電圧を出力する誘導加熱用電源と、誘導加熱用電源からの電流により磁界を発生する加熱用励磁コイル(以下、誘導加熱コイル)と、誘導加熱コイルから発生する磁界により誘起される誘導電流により発熱する発熱体より成る暖房便座において、発熱体を便座表面または表面付近に設けたことを特徴とする暖房便座がある(特許文献1)。
【0004】
しかしながら、暖房便座の使用者が、便座へ着座する時の繰り返しの応力によって、便座表面または表面付近に設けた発熱体は、破損する恐れがある。従って、特許文献1に記載された暖房便座において発熱体の一部にでも破損が生じると、誘導電流の流れが阻害される。そうすると、誘導電流が破損した箇所に集中し、着座面が局部的に過熱するおそれがある。これにより、便座表面の温度分布において温度むらが生じ、温度むらによる便座の座り心地の悪化が発生するおそれがある。この点において、特許文献1には改善の余地がある。
【0005】
また、着座による応力により、発熱体と誘導加熱コイルの距離が変わることを誘導加熱コイルのインピーダンスの変化で検出する方法が提案されている(特許文献2)。
【0006】
この方法を発熱体の破損検知に適用した場合、発明者の検討の結果、発熱体が大きく破損した場合であれば、検知可能であるが、小さな破損は検出できないことを確認した。一方、一般的な便座の外郭の構成は、便座上板と便座底板を接合した構成となっており、一般的に便座の破損は、使用者の着座による繰り返し応力により、便座上板と便座底板の接合部から生じ、接合部を端部とし、便座中央をむすぶ略線状に沿って徐々に進行している。従って、便座に小さな破損が発生した場合には、特許文献2に記載の方法では検出できず、局所的な過熱が生じ、温度むらの継続により、温度むらによる便座の座り心地の悪化が発生するといった問題がある。この点において特許文献2には改善の余地がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平11−299704号公報
【特許文献2】特開2004−113467号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、かかる課題の認識に基づいてなされたものであり、例えば、発熱体に破損が生じた場合、その状態をただちに検知し、誘導加熱コイルへの高周波電流の供給を停止し局部過熱による温度むらが生じず、好適に便座を使用できる誘導加熱式の暖房便座装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の発明は、便座と、前記便座に設けられ、供給された高周波電流により磁界を発生する誘導加熱コイルと、前記誘導加熱コイルが発生した磁界により誘導加熱される発熱体と、前記誘導加熱される発熱体の破損を検知する前記発熱体とは別体の検知部と、誘導加熱コイルへの高周波電流の通電を制御する制御部とを備え、前記検知部が前記発熱体の破損を検知した場合、前記制御部が、前記誘導加熱コイルへ前記高周波電流を通電させないこと、を特徴とする暖房便座装置。である。
【0010】
この暖房便座装置によれば、便座内に、便座を加熱するのとは別の、破損検知専用の検知部を設けることにより、発熱体の破損をただちに検知し、破損時には、誘導加熱コイルへ高周波電流の供給を停止するため、局部的な過熱による温度むらが生じず、好適に便座を使用することができる。
【0011】
また、第2の発明は、前記別体の検知部は、前記発熱体より引張強さの小さい導電体により構成され、前記誘導加熱コイルの巻き線配置と略同一形態で配置すること、を特徴とする請求項1に記載の暖房便座装置である。
【0012】
この暖房便座装置によれば、検知部は、発熱体より引張強さの小さい導電体により構成される。そのため、便座に着座などの応力が生じ、その応力により、発熱体が破損する前に、導電体が破損する。したがって、発熱体の破損による局部的な過熱による温度むらが生じる前に、誘導加熱コイルへ高周波電流の供給を停止するので、局部的な過熱による温度むらが生じず、好適に便座を使用することができる。また、一般的に便座の破損は、使用者の着座による繰り返し応力により、便座上板と便座底板の接合部から生じ、接合部を端部とし、便座中央をむすぶ略線状に沿って徐々に進行する。これにより、渦電流の流れが阻害され、発熱体が破損した箇所に渦電流が集中するため、局部的に過熱するおそれがある。検知部を、誘導加熱コイルの巻き線配置と略同一形態で配置すること、つまり、渦電流と略同一方向に配置することで、確実に発熱体が破損する前に検知部の破損を検出し、破損時には、誘導加熱コイルへ高周波電流の供給を停止するため、局部的な過熱による温度むらが生じず、好適に便座を使用することができる。
【0013】
ここで、誘導加熱コイルの巻き線配置とは、便座内に設けられたコイル線の巻き数の配置を指す。また、引張強さとは、JISの金属材料引張試験方法(JIS Z 2241)に基づくものである。
【0014】
また、第3の発明は、前記制御部は、別体の検知部の検知状態を記録する記憶手段を有し、前記記憶手段により、前記別体の検知部が破損した異常状態の情報を保持し、保持した情報を基に前記誘導加熱コイルへ前記高周波電流の供給を停止すること、を特徴とする請求項1〜2のいずれか1項に記載の暖房便座装置である。
【0015】
この暖房便座装置によれば、制御部は、記憶手段を有する。そのため、一旦、検知部が破損した情報を得ると、その後は、その情報を元に、誘導加熱コイルへ高周波電流の供給を停止するため、局部的な過熱による温度むらができず、好適に便座を使用することができる。また、検知部は使用者の着座による便座の撓みの影響で、一度破損した後に再び導通する恐れがある。しかし、破損した情報を保持し続けるため、その情報を元に、誘導加熱コイルへ高周波電流の供給を停止し続けることにより、検知部の誤検知がなくなり、局部的な過熱による温度むらができず、好適に便座を使用することができる。
【0016】
また、第4の発明は、前記暖房便座装置は、使用者が便座へ着座したことを検知する着座検知センサを備え、前記制御部の前記誘導加熱コイルへの通電可否を判断するタイミングは、前記着座検知センサの着座検知完了より早いこと、を特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の暖房便座装置である。
【0017】
この暖房便座装置によれば、使用者が便座へ着座したことを検知する着座検知センサを有し、制御部の通電の可否を判断するタイミングは、着座検知センサの着座検知より早い。そのため、使用者が着座するより前に、別体の検知部の破損を検知することができ、誘導加熱コイルへ高周波電流の供給を停止するため、局部的な過熱による温度むらができず、好適に便座を使用することができる。
【0018】
また、第5の発明は、前記暖房便座装置は、使用者が便座へ着座したことを検知する着座検知センサを備え、前記制御部の前記誘導加熱コイルへの通電可否を判断するタイミングは、前記着座検知センサが着座検知をしている間であること、を特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の暖房便座装置である。
【0019】
この暖房便座によれば、使用者が着座中すべて間で、制御部は誘導加熱コイルへの高周波電流の通電の可否を判断することができる。使用者の着座中は、その荷重により便座が撓んだ状態になるため、別体の検知部への応力は、非着座時に比べ高い状態となる。よって、別体の検知部が破損しているかどうか最も判断しやすい状態となり、誤検知を防止することが出来る。従って、便座に破損など異常がある場合は、精度良く誘導加熱コイルへの高周波電流の供給を停止するため、着座中の局部的な過熱による温度むらができず、好適に便座を使用することができる。
【0020】
また、第6の発明は、前記検知部により、前記発熱体の破損を検知した場合は、前記誘導加熱コイルへ前記高周波電流の供給を停止していること、を報知する報知手段を有すること、を特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の暖房便座装置。である。
【0021】
この暖房便座装置によれば、発熱体の破損を検知した場合は、誘導加熱コイルに高周波電流の供給を停止していること、を報知する報知手段を有する。これにより、使用者は微小な発熱体の破損により便座が非暖房状態であることを、着座する前に知ることができる。
また、暖房便座装置の定期的なメンテナンス時に、故障箇所を修理する修理者が、報知手段により、故障を容易に判断することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明の態様によれば、例えば、発熱体に破損が生じる前に、その状態をただちに検知し、局部過熱による温度むらを抑制し、好適に便座を使用することができる誘導加熱式の暖房便座装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施の形態にかかる暖房便座装置を備えたトイレ装置を例示する斜視模式図である。
【図2】本実施形態に関わる暖房便座装置の機能ブロック図である。
【図3】本実施形態に関わる暖房便座装置の例示する模式的平面図である。
【図4】図3で例示した暖房便座装置のA−A‘面を切断した斜視図である。
【図5】図3で例示した暖房便座装置の発熱体が破損したB部の拡大図である。
【図6】第一の実施形態に係る第一の別体の検知部の形態を説明する暖房便座装置の上面図である。
【図7】図6に例示した切断面A−A‘における断面図である。
【図8】本実施形態に関わる暖房便座装置の便座加熱の制御フロー図である。
【図9】第二の実施形態に係る第二の別体の検知部の形態を説明する暖房便座装置の上面図である。
【図10】第三の実施形態に係る第三の別体の検知部の形態を説明する暖房便座装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
(暖房便座装置の全体構成)
以下、本発明実施の形態を図面を参照しつつ説明する。なお、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
図1は、本発明の実施の形態にかかる暖房便座装置を備えたトイレ装置を例示する斜視模式図である。
【0025】
図1に表したトイレ装置は、洋式腰掛便器500と、その上方に設けられた暖房便座装置100と、を備える。暖房便座装置100は、ケーシング400と、便座200と、便蓋300と、を有する。便座200と便蓋300とは、ケーシング400に対して開閉自在にそれぞれ軸支されている。便蓋300は、閉じた状態において便座200の上方を覆うことができる。
【0026】
便座200または便蓋300の内部には、高周波電流が通電されることにより磁界を発生する誘導加熱コイルが設けられている。また、便座200には、後に詳述するように、誘導加熱コイルから発生した磁界により誘導加熱される発熱体が設けられている。より具体的には、発熱体は、誘導加熱コイルから発生する磁界で誘起される渦電流によるジュール熱により発熱する。
【0027】
これにより、本実施形態にかかる暖房便座装置100は、誘導加熱の原理を利用し、便座200を急速に加熱することができる。
【0028】
ケーシング400の内部には、衛生洗浄装置としての機能部が併設されていてもよい。すなわち、ケーシング400には、便座200に座った使用者の「おしり」などに向けて水を噴出する吐水ノズルを有する衛生洗浄機能部が内蔵されていてもよい。なお、本願明細書において「水」という場合には、冷水のみならず、加熱されたお湯も含むものとする。また、ケーシング400の内部には、便座200に座った使用者の「おしり」などに向けて温風を吹き付けて乾燥させる温風乾燥機能部や脱臭ユニット部や室内暖房機能部などの各種の機構が適宜設けられていてもよい。
【0029】
また、図2は本実施形態に関わる暖房便座装置の機能ブロック図である。
便座装置本体101には、使用者がトイレブースに入室したことを検知する入室検知センサ103と、使用者の着座を検知する人体着座検知センサ102と、便座200に設けられた誘導加熱コイル240を制御する誘導加熱制御部420と、衛生洗浄機能部700と、温風乾燥機能部800などの各種機構があり、暖房便座装置100の本体制御部410によって制御されている。また、便座200には、誘導加熱コイル240と温度検知部280と発熱体220があり、便座装置本体101に設けられた誘導加熱制御部420によって制御されている。
【0030】
便座200に設けられた誘導加熱コイル240は、便座開口に沿って略同心円状に巻かれ、便座装置本体101と便座200を接続する便座開動部(図示せず)を通じて、誘導加熱制御部420に接続されている。また、発熱体220は、誘導加熱コイル240を覆うように配置され、着座時の使用者が接触する領域よりも少なくとも大きな領域(以下、着座面と呼ぶ)を有している。温度検知部280は、発熱体220の下面に設置され検出した温度を誘導加熱制御部420に伝達している。
【0031】
使用者が暖房便座装置100を使用するために、トイレブースに入室すると、入室検知センサ103の検出信号は、便座本体制御部410に伝達し、本体制御部410は、誘導加熱制御部420に加熱開始を行う信号を伝達し、その伝達信号を基に、誘導加熱制御部420は誘導加熱コイル240に、数十キロHzから数百キロHzの高周波電流を供給し、誘導加熱コイル240に高周波電流が流れることによって磁界が発生する。続いて、その磁界によって、発熱体220に渦電流が発生し、その渦電流によるジュール熱により発熱体220が短時間に加熱され、使用者が着座するまでの間に便座の着座面は好適な温度に到達する。また、好適な温度に到達した後には、温度検知部280の検出信号により、誘導加熱制御部420の高周波電流の電流等が制御され、使用者が着座している間は快適温度に保ち続けられることとなり、使用者は好適に暖房便座装置を使用することが可能となる。
【0032】
このように、誘導加熱を用いた暖房便座装置100は、使用者がトイレブースにいないとき(以下、待機時と呼ぶ)には、便座200の着座面を加熱しない状態(待機時の電力をゼロ)、もしくは待機時に着座面の温度を保つ場合には、待機電力を著しく低くすることが可能である。よって、シーズヒータなどよりも省エネルギー化を図ることが可能である。
【0033】
(誘導加熱のメカニズム)
続いて、図3と図4を参照し、誘導加熱で着座面を快適温度に加熱するメカニズムについて説明する。
図3は、本実施形態に関わる暖房便座装置の例示する模式的平面図である。
図4は、図3で例示した暖房便座装置のA−A‘面を切断した斜視図である。
【0034】
便座は、便座上板210と便座底板211から成る便座内空から、絶縁された複数の細線の撚り線(以下、リッツ線241)が便座開口部に略同心円状になるように巻かれた誘導加熱コイル240と、リッツ線の固定と使用者の着座時の応力を受ける絶縁材(例えば、ポリプロピレンなどの樹脂)で成型された便座上板210と、便座上板210に密着し透磁率の高い薄肉の発熱体220(例えば、SUS430)が配置され、最外端には、便座の意匠性向上と発熱体220と外界との絶縁を図る表皮材230から成っている。また、リッツ線241は、着座面に対して、略同一密度になるように配置されている。
【0035】
誘導加熱制御部420により高周波電流290が生成されると、リッツ線420に高周波電流290が便座200の着座面で略同一密度になるように流れる。これにより、リッツ線420の全体を囲むような磁界260が発生し、この磁界260によって発熱体220には、リッツ線420と逆方向になるに渦電流270が、着座面で略同一密度になるように発生する。発熱体220に流れる渦電流270のジュール熱により発熱体220が略同一の温度上昇で発熱し着座面を加熱する。このように、着座面は、略同一温度で、快適温度になるように本体制御部410の加熱開始信号により、制御されることとなる。
【0036】
(発熱体の局部過熱のメカニズム)
図5は、本実施形態の図3で例示した暖房便座装置の発熱体が破損したB部の拡大図である。
【0037】
便座装置本体101は、一般家庭のみならず、駅や商業施といったトイレブースにも設置されており、結果、不特定多数の使用者の着座により、大小様々な繰返しの応力が加わる場合がある。図3で示したように、薄肉の導電体である発熱体220を有する便座200では、着座による繰返しの応力により、便座200が撓み、発熱体220に破損が生じる恐れがある。
【0038】
本実施形態の便座200の構成は、便座上板210と便座底板211を接合した構成になっている。発熱体220の破損は、人体の着座による繰り返しの応力により便座上板210と便座底板211の接合部から生じ、接合部を端部とし、便座中央を結ぶ略線状に沿って徐々に進行していく。
【0039】
発熱体220に生じた破損271は、前述したような誘導加熱時に着座面で略同一密度になるように発生した渦電流270の進行の妨げとなる。進行を妨げられた渦電流270は、破損271の端部に沿うように進行方向を変え、破損271の端部272付近に渦電流が集中し、渦電流の密度が高くなった箇所273の温度が上昇し局部過熱となる。
【0040】
このような局部過熱を検出する方法として、発熱体220の温度を検出し便座への加熱を停止する方法がある。
しかし、図3で示した温度検出部280では、一部分の箇所の温度しか検知できず、発熱体220の任意の箇所が破損し局部過熱した場合、発熱体220の局部加熱の箇所から温度検出部280まで熱伝達の時間を要し検出までに時間を要す。また、外界空気との熱平衡により、局部加熱で発生した熱そのものが温度検出部280では検出できない場合もある。結果、この方法ではその局部過熱を検出できる可能性は極めて低い。仮に、温度検知部280を、破損しやすい場所などに複数設け、局部過熱を検出できたとしてもコストが嵩むため実現性は低い。
【0041】
また、局部過熱を検出する方法として、リッツ線241に流れる電流電圧によるインピーダンスの変化から、発熱体220の破損を検知する方法がある。しかし、発明者らの実験によると、この方法は、比較的大きな破損に関しては、検知することができるが、細かい破損は検知することができないことを確認した。
【0042】
つまり、本実施例の便座200のように、便座上板220と便座底板221の接合部を端部から徐々に進行する破損に関しては、大きな破損になってからしか検出できず、使用者が便座200に着座した際、温度むらを感じさせてしまう。
【0043】
(別体の検知部を用いた局部過熱の防止方法)
ここで、本実施形態である別体検知部220を、図6と図7を用いて具体的に説明する。
図6は、第一の実施形態に係る第一の別体の検知部の形態を説明する暖房便座装置の上面図である。図7は、本実施形態の図6に例示した切断面A−A‘における断面図である。
【0044】
誘導加熱コイル240を形成するリッツ線241は、便座開口部に沿って略同心円状に巻かれ、便座200の便座上板210の裏面に配置されている。
また、別体検知部600は、具体的には、線状の導電体で構成(以下、線状導電体体と呼ぶ)されており、線状導電体601は、リッツ線241と略同一方向、つまり、略同一形態になるよう便座上板210と便座底板211の接合部付近で、便座開口側と便座外側の2か所に配置されている。
【0045】
図5の説明で示したように、本実施例の発熱体220は、便座上板210と便座底板211の接合部から生じ、接合部を端部とし、便座中央を結ぶ略線状に沿って徐々に進行しく。つまり、前述の配置により、線状導電体601は、使用者の着座による応力が最も大きくかかる箇所に配置されたことになる。
【0046】
また、線状導電体601は、発熱体220より引張強さが小さい材料で構成されている。
【0047】
そのため、不特定多数の使用者の着座により、大小様々な繰返しの応力が加わり、便座が破損状態になったとしても、線状導電体601は、使用者の着座による応力が最も大きくかかる箇所に配置され、かつ、発熱体220より引張強さが小さい材料で構成されているので、発熱体220が破損する前に、確実に線状発熱体601が破損することとなる。 この破損状態を検知することにより、誘導加熱コイル240へ高周波電流の供給を停止するため、局部的な過熱による温度むらができず、好適に便座を使用することができる。
【0048】
加えて、線状導電体601は、リッツ線241に略並行になるように配置されているので、結果、渦電流270と略並行となり、かつ、発熱体220の破損と略垂直となる。結果、線状導電体601により、渦電流が阻害され局部加熱の過熱量が最大となる状態を検出できることとなる。このように最も加熱むらが発生する状態を検知し、誘導加熱コイルへ高周波電流の供給を停止するため、極めて小さな局部的な過熱による温度むらもなく、好適に便座を使用することができる。
【0049】
なお、誘導加熱コイル240は、便座上板210に配置されているとしたが、配置形態はこれだけに限定されるわけではない。誘導加熱コイル240は、便座上板210に密着しようが適度な空間をもって固定されていてもよく、また便座底板211に固定されていてもよい。加えて、線状導電体601は、便座開口側と便座外側の2か所にそれぞれ1つずつ配置されているとしたが、配置する数はこれだけに限定されるわけではない。線状導電体601は、複数でもよいし、便座開口側もしくは外側のどちらか1か所であってもよい。
また、線状導電体601は、例えば、アルミや銅、ステンレス、チタン、鋼などの導電体を用いることができる。
また、線状導電体601の破損状態の判定は、線状導電体601が通常と破断時での電気的な特性差があればよく、通電と非通電の差の判定でも、破断時のインピーダンス変化の判定でもよい。さらに、線状導電体601の形態は、細線状でも導電体をペーストしたパターン状でも可能である。
【0050】
(便座が加熱される制御処理フローの説明)
図8は、本実施形態に関わる暖房便座装置の便座加熱の制御フロー図であり、先に示した図2の暖房便座装置の機能ブロック図とともに本実施例の便座を加熱する一連の制御処理フローを具体的に説明する。
【0051】
便座200の発熱体220が加熱される一連の制御処理は、大きく分けて3つの制御処理ブロックにより機能を分別される。第一の制御処理ブロックは、ステップS1からステップS7までであり、本体制御部410が、誘導加熱制御部420によって誘導加熱コイル240に高周波電流の供給を非許可から許可を判断するブロックである。具体的には、使用者が便座200へ着座する前に、別体検知部600が正常状態であるか異常状態があるかを判断し、正常状態であれば発熱体220への加熱が開始され、異常状態である場合には発熱体220への加熱されないこととなる。
【0052】
また、第二の制御処理ブロックは、ステップS7からステップS13までであり、本体制御部410が、誘導加熱制御部420によって誘導加熱コイル240に高周波電流の供給の許可継続から非許可を判断するブロックである。具体的には、使用者が便座に着座している最中も、別体検知部600が正常状態であるか異常状態があるかを判断し、正常状態であれば発熱体220への加熱が継続され、便座200の着座面を快適温度に保ち、異常状態が発生した場合には発熱体220への加熱を直ちに停止することとなる。
【0053】
最後に、第三の制御処理ブロックは、ステップS14あり、第一の制御処理ブロックと第二の制御処理ブロックで、別体検知部600が異常と判断された場合の異常情報を記録するブロックである。具体的には、別体検知部600が一旦異常になったらその情報を保持し続け、使用者がいかなる機会に便座200に着座しようとも発熱体220への加熱を停止し続けることとなる。
【0054】
続いて、第一の処理ブロックから詳細に説明を実施する。
【0055】
本体制御部410は、使用者が暖房便座装置100を使用するかどうかを、入室検知センサ103の検出信号で確認している。なおこのステップでは、本体制御部410は、誘導加熱制御部420によって誘導加熱コイル240に高周波電流の供給を非許可としており、発熱体220への加熱を停止している状態である。(ステップS1)。
使用者がトイレブースに入室すると、ステップS1により、本体制御部410は、使用者が入室したことを判断する。使用者がトイレブースに入室していない場合には、ステップS1に戻り、使用者の入室を待機する状態となる(ステップS2)。
【0056】
ステップS2で使用者の入室を検知した後、本体制御部410は、本体制御部410にある記憶手段411の記録情報を確認する(ステップS3)。
本体制御部410は、この記憶情報により、今回の使用前までに蓄積された別体検知部600の検知状態を得る。記憶手段411に異常情報が記録されている場合には、ステップ13に進み、本体制御部410は、誘導加熱制御部420によって誘導加熱コイル240に高周波電流の供給を非許可とし、以後、他の検知信号が入力されようとも、高周波電流の供給を非許可とし続け、結果、発熱体220への加熱を停止し続ける(ステップ4)。
【0057】
ステップ4で、記憶手段411に正常情報が記憶されている場合には、本体制御部410は、別体検知部600の検出信号の確認を行う(ステップ5)。
本体制御部410は、別体検知部600の検出信号により、今回便座に着座する直前の別体検知部600の検知状態を得る。別体検出部600が異常状態で異常情報を検出した場合には、ステップ14に進み、記憶手段411に異常情報を記憶し、その後ステップ13に進み、本体制御部410は、誘導加熱制御部420によって誘導加熱コイル240に高周波電流の供給を非許可とし、以後、他の検知信号が入力されようとも、高周波電流の供給を非許可とし続け、結果、発熱体220への加熱を停止し続ける(ステップ6)。
【0058】
ステップ6で、別体検知部600が正常状態で正常情報を検出した場合には、本体制御部410は、誘導加熱制御部420によって誘導加熱コイル240に高周波電流の供給を許可とし、結果、発熱体220は、事前に設定された着座時に快適と感じる温度(以下、快適温度と呼ぶ)を目標とし、図4に示した誘導加熱のメカニズムにより加熱が開始される(ステップ7)。
【0059】
以上により、発熱体220の破損よりも早く異常状態となる別体検知部600を設け、その状態を記憶手段411で記憶し、暖房便座装置100を使用者が今回使用する以前、例えば、前回使用に伴う別体検知部600の検出状態によって、発熱体220の通電可否を判断している。従って、発熱体220が少なくとも破損している際には、誘導加熱コイル240へ高周波電流の供給を停止し続けるため、局部的な過熱による温度むらが生じず、好適に便座を使用することができる。
また、使用者が入室から着座までの間も、別体検出検知600の検出状態によって、熱体220の通電可否を判断していることから、発熱体220が少なくとも破損している際には、誘導加熱コイル240へ高周波電流の供給を使用者の着座前には、停止できるので、使用者の着座時には、局部的な過熱による温度むらが生じず、好適に便座を使用することができる。
【0060】
使用者がトイレブースに入室した後は、暖房便座装置100に接近し、脱衣し、暖房便座装置100に背を向けるよう回転し、便座に着座する状態となる。その着座した状態は、本体制御部410で、着座検知センサ102の検出信号により確認される(ステップ8)。
【0061】
ステップ8で本体制御部410にて着座が検出されると、誘導加熱制御部420は、温度検知部280で検出される発熱体220の温度を基に、誘導加熱コイル240への高周波電流の供給量を調整し、結果、便座200の着座面を快適温度に保つこととなる(ステップ9)。これにより使用者が便座200に着座中は、温度むらのない快適温度に保たれ、好適に暖房便座装置100を使用することができる。
【0062】
また、ステップ8で本体制御部410にて着座が検出されると、ステップ9と同時に、本体制御部410は、別体検知部600の検出信号の確認を行う(ステップ10)。
本体制御部410は、使用者の着座中に別体検出部600が異常情報を検出した場合には、ステップ14に進み、記憶手段411に異常情報を記憶し、その後ステップ13に進み、本体制御部410は、誘導加熱制御部420によって誘導加熱コイル240に高周波電流の供給を非許可とし、以後、他の検知信号が入力されようとも、高周波電流の供給を非許可とし続け、結果、発熱体220への加熱を停止する(ステップ11)。
【0063】
以上により、着座検知センサ102が着座検知している間も、本体制御部410の誘導加熱コイル240への高周波電流の通電の可否を判断することができる。着座中は、使用者の荷重により便座200が撓んだ状態になるため、別体検知部600へ印加される応力も、非着座時に比べ高い状況となる。よって、別体検知部600が、異常状態であるかを最も判断しやすい状況となり、誤検知を防止することが出来る。従って、便座に破損など異常が発生した場合には、精度良く誘導加熱コイル240への高周波電流の供給を停止するため、使用者の着座中には、局部的な過熱による温度むらができず、好適に暖房便座装置100を使用することができる。
【0064】
続いて、使用者が暖房便座装置100の洗浄機能などの使用を終了し、便座200から離座してトレーブースから退室する状態になる。その離座した状態は、制御部410で、着座検知センサ102の検出信号により確認される(ステップ12)。
【0065】
ステップ12で本体制御部410にて離座が検出されると、本体制御部410は、誘導加熱制御部420によって誘導加熱コイル240に高周波電流の供給を非許可とし、発熱体220への加熱は停止される。
【0066】
(第二実施形態)
次に、本発明の第二実施形態に係る第二の別体の検知部の形態について図面を参照しつつ説明する。
図9は、第二の別体の検知部の形態を説明する暖房便座装置の上面図である。
【0067】
誘導加熱コイル240は、複数の渦状の形態で便座200の着座面と略平行になるように便座200の便座上板210の裏面に配置されている。
線状導電体601は、複数の渦状の形態を成した誘導加熱コイル240のそれぞれの渦に対して外周を囲うように一筆書き状で配置されており、外周の一部は便座上板210と便座底板211の接合部付近に配置されている。
【0068】
以上により、複数の渦状に配置された誘導加熱コイル240から発生する渦電流に略並行、かつ、発熱体220の破損の起きやすい箇所に、線状導電体601を配置しているため、つまり、誘導加熱コイル240と略同一形態で、線状導電体601を配置しているため、発熱体220が破損する前に、確実に線状発熱体601が破損することとなる。この破損状態を検知することにより、誘導加熱コイルへ高周波電流の供給を停止するため、局部的な過熱による温度むらができず、好適に便座を使用することができる。
【0069】
(第三実施形態)
次に、本発明の第三実施形態に係る第三の別体の検知部の形態について図面を参照しつつ説明する。
図10は、第三の別体の検知部の形態を説明する暖房便座装置の断面図である。
【0070】
この実施例では、便座上板210と便座下板220の接合部は強固に接合されており、不特定多数の使用者の着座による大小様々な繰返しの応力によって、便座200が破損しやすい箇所は、便座面の中央部となった場合である。
【0071】
この場合、線状導電体601を便座の中央部に配置することとなる。これにより、発熱体220が破損する前に、確実に線状発熱体601が破損する。この破損状態を検知することにより、誘導加熱コイル240へ高周波電流の供給を停止するため、局部的な過熱による温度むらができず、好適に便座を使用することができる。
なお、前述では線状発熱体601を便座中央部に配置したが、便座形状や接合形態が異なれば、その応力が最も大きくなる箇所に、線状発熱体601を配置することで、加熱むらができず、好適に便座を使用することができる。
【符号の説明】
【0072】
100…暖房便座装置、101…暖房装置本体、102…着座検知センサ、103…入室検知センサ、200…便座、210…便座上板、211…便座底板、220…発熱体、230…表皮材、240…誘導加熱コイル、241…リッツ線、260…磁界、270…渦電流、271…破損、273…渦電流の密度が高くなった箇所、280…温度検知部、290…高周波電流、300…便蓋、400…ケーシング、410…本体制御部、411…記憶手段、420…誘導加熱制御部、500…洋式腰掛便座、600…別体検知部、601…線状導電体、700…衛生洗浄機能部、800…温風乾燥機能部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
便座と、前記便座に設けられ、供給された高周波電流により磁界を発生する誘導加熱コイルと、前記誘導加熱コイルが発生した磁界により誘導加熱される発熱体と、前記誘導加熱される発熱体の破損を検知する前記発熱体とは別体の検知部と、誘導加熱コイルへの高周波電流の通電を制御する制御部とを備え、
前記検知部が前記発熱体の破損を検知した場合、前記制御部が、前記誘導加熱コイルへ前記高周波電流を通電させないこと、を特徴とする暖房便座装置。
【請求項2】
前記検知部は、前記発熱体より引張強さの小さい導電体により構成され、前記検知部を、前記誘導加熱コイルの巻き線配置と略同一形態で配置すること、を特徴とする請求項1に記載の暖房便座装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記別体の検知部の検知状態を記録する記憶手段を有し、前記記憶手段により、前記発熱体が破損した異常状態の情報を保持し、保持した情報を基に前記誘導加熱コイルへ前高周波電流を通電させないこと、を特徴とする請求項1〜2のいずれか1項に記載の暖房便座装置。
【請求項4】
前記暖房便座装置は、使用者が便座へ着座したことを検知する着座検知センサを備え、
前記制御部の前記誘導加熱コイルへの通電可否を判断するタイミングは、前記着座検知センサの着座検知完了より早いこと、を特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の暖房便座装置。
【請求項5】
前記暖房便座装置は、使用者が便座へ着座したことを検知する着座検知センサを備え、
前記制御部の前記誘導加熱コイルへの通電可否を判断するタイミングは、前記着座検知センサが着座検知をしている間であること、を特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の暖房便座装置。
【請求項6】
前記検知部により、前記発熱体の破損を検知した場合は、前記誘導加熱コイルへ前記高周波電流の供給を停止していること、を報知する報知手段を有すること、を特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の暖房便座装置。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図7】
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【図8】
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【図10】
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【図3】
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【図6】
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【図9】
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