説明

暖房便座装置

【課題】安定した動作で効率よく急速加熱を行うことができる暖房便座装置を提供することを目的とする。
【解決手段】誘導加熱コイルと共振コンデンサとを有する共振回路と、前記誘導加熱コイルが発生した磁界により誘導加熱される導電体と、商用電源から供給される電流を整流する整流部と、前記整流部の整流出力を電源として前記共振回路に供給する電力を制御するインバータと、前記商用電源から供給される電流または前記整流部の整流出力が通電されることで発熱するヒータと、前記誘導加熱コイルと前記導電体と前記ヒータとが設けられた便座と、を備え、前記誘導加熱コイルは、前記導電体からみて前記ヒータよりも近い位置に配置された第1のコイル部と、前記導電体からみて前記第1のコイル部よりも遠い位置に配置され、前記共振回路の共振動作のためのインダクタンス成分を補う第2のコイル部と、を有することを特徴とする暖房便座装置が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の態様は、便器に設置される便座を暖めることができる暖房便座装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、多くの暖房便座装置では、例えば電気的な発熱体としてヒータなどが便座の内部に設けられている。ヒータに電流が流れると、ヒータにおいて発生したジュール熱の熱伝導により便座の表面の温度が上昇する。例えば便座が樹脂により形成されている場合、樹脂は熱抵抗が大きいため便座の表面の温度が目標温度まで上昇するためには数十秒から数分の時間がかかることがある。そのため、使用者が便座に着座したときに冷たさを感じないようにするためには、使用者が便座に着座していないときでもヒータに通電し便座の表面を予熱しておく必要がある。そのため、待機時の消費電力を抑え、省エネルギー化を図るという点においては改善の余地がある。
【0003】
これに対して、便座側に設置されたヒータと、便座ふた側に設置された電磁誘導加熱コイルと、を具備する便座暖房装置がある(特許文献1)。しかしながら、特許文献1に記載された便座暖房装置では、電磁誘導加熱コイルが便座ふた側に設置されているため、便座ふたが閉じて便座と接近している状態でないと便座を暖めることができないという問題がある。使用者が便座に着座したときに冷たさを感じないようにするためには、待機時に便座ふたを閉じる自動装置を設置したり、使用者が忘れずに便座ふたを閉じてトイレ室を出る必要がある。
【0004】
また、便座ふたが閉じている状態でないと便座を暖めることができないため、使用者がトイレ室に入り便座ふたを開けるまでの時間しか便座を暖めることができない。例えば、使用者が便座ふたを開けた後に服を脱ぐ場合には、使用者が便座ふたを開けてから便座に着座するまでの時間を暖房時間として利用することができない。そのため、便座を暖める時間を有効に確保するという点においては改善の余地がある。
【0005】
さらに、電磁誘導加熱コイルが設置された便座ふたと、便座と、の間の距離が誘導加熱の性能に影響を及ぼす。そのため、便座を安定して暖めるためには、便座ふたと便座との間の距離を安定して保持する必要がある。この点においても、改善の余地がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−18114号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、かかる課題の認識に基づいてなされたものであり、安定した動作で効率よく急速加熱を行うことができる暖房便座装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の発明は、誘導加熱コイルと共振コンデンサとを有する共振回路と、前記誘導加熱コイルが発生した磁界により誘導加熱される導電体と、商用電源から供給される電流を整流する整流部と、前記整流部の整流出力を電源として前記共振回路に供給する電力を制御するインバータと、前記商用電源から供給される電流または前記整流部の整流出力が通電されることで発熱するヒータと、前記誘導加熱コイルと前記導電体と前記ヒータとが設けられた便座と、を備え、前記誘導加熱コイルは、前記導電体からみて前記ヒータよりも近い位置に配置された第1のコイル部と、前記導電体からみて前記第1のコイル部よりも遠い位置に配置され、前記共振回路の共振動作のためのインダクタンス成分を補う第2のコイル部と、を有することを特徴とする暖房便座装置である。
【0009】
この暖房便座装置によれば、誘導加熱コイルは、第1のコイル部と第2のコイル部とを有する。第1のコイル部は、導電体からみてヒータよりも近い位置に配置されている。第2のコイル部は、導電体からみて前記第1のコイル部よりも遠い位置に配置されている。そのため、第2のコイル部223と導電体231との磁気結合は、第1のコイル部221と導電体231との磁気結合よりも弱い。そのため、第2のコイル部は、共振回路の共振動作のためのインダクタンス成分を追加する役割を主として有し、不足するインダクタンス成分を補うことができる。これにより、安定した共振動作で効率よく誘導加熱を実行することができる。そのため、安定した動作で効率よく便座を急速に加熱することができる。
【0010】
また、第2の発明は、第1の発明において、前記便座は、着座面を形成する第1の板状体を有し、前記第1のコイル部は、前記板状体の前記着座面の裏側に配置され、前記ヒータは、前記第1のコイル部からみて前記導電体とは反対側に配置され、前記第2のコイル部は、前記導電体からみて前記ヒータよりも遠い位置に配置されたことを特徴とする暖房便座装置である。
【0011】
この暖房便座装置によれば、ヒータは、第2のコイル部と導電体との間に介在している。そのため、第2のコイル部は、導電体からより確実に離間した位置に設けられている。これにより、第2のコイル部は、共振動作に不足するインダクタンス成分をより確実に補うことができる。
【0012】
また、第3の発明は、第2の発明において、前記便座は、底面を形成する第2の板状体を有し、前記第2のコイル部は、前記第2の板状体の前記底面の裏側に付設されたことを特徴とする暖房便座装置である。
【0013】
この暖房便座装置によれば、第2のコイル部が便座の内部の底面に付設されているため、便座に着座する使用者と第2のコイル部との間の距離をより確実に確保することができる。そのため、便座に着座する使用者に対する第2のコイル部から発生する漏れ磁界の影響を抑えることができる。
【0014】
また、第4の発明は、第1〜第3のいずれか1つの発明において、前記第2のコイル部は、導線が円筒状に巻かれた形状を有することを特徴とする暖房便座装置である。
【0015】
この暖房便座装置によれば、第2のコイル部は、導線が円筒状に巻かれた形状を有するコイルすなわちソレノイドである。これにより、第2のコイル部から発生する漏れ磁界を抑えることができる。また、インダクタンスの安定性および再現性を高めることができる。また、第2のコイル部の形成性を高めることができる。
【0016】
また、第5の発明は、第1〜第4のいずれか1つの発明において、前記第1のコイル部は、リッツ線により形成され、前記便座を上方からみたときに前記便座の着座面を形成する板状体の裏側に面状に広がるように配置されたことを特徴とする暖房便座装置である。
【0017】
この暖房便座装置によれば、第1のコイル部は、リッツ線により形成され、便座を上方からみたときに便座の着座面の裏側に面状に広がるように配置されることで、ヒータが発熱した熱を着座面の全体に略均一に広げる熱伝導体として兼用される。そのため、便座の構造の簡略化を図ることができる。
【0018】
また、第6の発明は、第1〜第4のいずれか1つの発明において、前記第1のコイル部は、平角線により形成され、前記便座を上方からみたときに前記便座の着座面を形成する板状体の裏側に面状に広がるように配置されたことを特徴とする暖房便座装置である。
【0019】
この暖房便座装置によれば、第1のコイル部は、平角線により形成され、便座を上方からみたときに便座の着座面の裏側に面状に広がるように配置されることで、ヒータが発熱した熱を着座面の全体に略均一に広げる熱伝導体として兼用される。そのため、便座の構造の簡略化を図ることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の態様によれば、安定した動作で効率よく急速加熱を行うことができる暖房便座装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施の形態にかかる暖房便座装置を備えたトイレ装置を例示する斜視模式図である。
【図2】本実施形態の便座を表す模式図である。
【図3】本実施形態の便座に内蔵された誘導加熱コイルおよびヒータを表す平面模式図である。
【図4】本実施形態にかかる暖房便座装置の回路図である。
【図5】比較例の便座を表す模式図である。
【図6】比較例にかかる暖房便座装置の回路図である。
【図7】他の比較例の便座を表す模式図である。
【図8】本比較例の便座を有する暖房便座装置の動作波形を表すタイミングチャートである。
【図9】本実施形態にかかる暖房便座装置の動作波形を表すタイミングチャートである。
【図10】本実施形態の他の便座を表す断面模式図である。
【図11】本実施形態のさらに他の便座を表す断面模式図である。
【図12】本実施形態の第2のコイル部の具体例を例示する平面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。なお、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
図1は、本発明の実施の形態にかかる暖房便座装置を備えたトイレ装置を例示する斜視模式図である。
また、図2は、本実施形態の便座を表す模式図である。
また、図3は、本実施形態の便座に内蔵された誘導加熱コイルおよびヒータを表す平面模式図である。
なお、図2(a)は、本実施形態の便座を上方から眺めた平面模式図であり、図2(b)は、図2(a)に表した切断面A−Aにおける断面模式図である。
説明の便宜上、図3(a)では、ヒータおよび第2のコイル部を省略している。図3(b)では、第1および第2のコイル部を省略している。図3(c)では、第1のコイル部およびヒータを省略している。
【0023】
図1に表したトイレ装置は、洋式腰掛便器800と、その上に設けられた暖房便座装置100と、を備える。暖房便座装置100は、ケーシング400と、便座200と、便蓋300と、を有する。便座200と便蓋300とは、ケーシング400に対して開閉自在にそれぞれ軸支されている。便蓋300は、閉じた状態において便座200の上方を覆うことができる。なお、便蓋300は、必ずしも設けられていなくてもよい。
【0024】
便座200は、図2(b)に表したように、便座200の外形を形成する筐体210を有する。本具体例の筐体210は中空であり、例えば樹脂などの絶縁性を有する材料により形成されている。なお、筐体210は、複数の部材により形成されていてもよいし、1つの部材により形成されていてもよい。
【0025】
便座200の筐体210の内部には、誘導加熱コイル220と、ヒータ240と、熱伝導体250と、が設けられている。
誘導加熱コイル220は、高周波電流が通電されることにより磁界を発生する。また、誘導加熱コイル220は、第1のコイル部221と、第2のコイル部223と、を有する。
【0026】
ヒータ240は、通電されて発熱することにより便座200の着座面を保温あるいは加熱することができる。ヒータ240は、通電される電流と、ヒータ240自身が有する電気抵抗と、により熱(ジュール熱)を発生することができる。このようなヒータ240としては、例えば「チューブヒータ」や、「シーズヒータ」や、「ハロゲンヒータ」や、「カーボンヒータ」などを用いることができる。
【0027】
熱伝導体250は、樹脂に熱伝導性充てん材を含有させた熱伝導絶縁シートによって構成されており、ヒータ240が発熱した熱を着座面の全体に略均一に広げることができる。また、熱伝導体250は、第1のコイル部221とヒータ240との間に設けられ、第1のコイル部221とヒータ240とを絶縁する機能を有する。
【0028】
便座200には、誘導加熱コイル220から発生した磁界により誘導加熱される導電体231が設けられている。より具体的には、導電体231は、誘導加熱コイル220から発生する磁界で誘起される渦電流により発熱する。導電体231は、便座200の上面(着座面)に付設されている。あるいは、導電体231は、便座200の筐体210の内部に設けられていてもよい。あるいは、導電体231は、便座200の内部の上面210aに付設されていてもよい。
【0029】
導電体231としては、例えば鉄やステンレスなどの強磁性体、またはアルミニウムなどの常磁性体といった金属を用いることができる。便座200の外部に磁界を放出させにくくするためには、電気抵抗が大きい鉄やステンレスなどの強磁性体を導電体231に用いることがより好ましい。なお、導電体231が便座200の上面に設けられる場合には、人体と導電体231とが直接的に接触しないように、塗装やコーティングなどが導電体231の表面に施されることがより好ましい。
【0030】
第1のコイル部221は、ヒータ240からみて導電体231の側に配置されている。言い換えれば、第1のコイル部221は、導電体231からみてヒータ240よりも近い位置に配置されている。例えば図2(b)に表した具体例においては、便座200は中空であり、便座の着座面を形成する板状体(第1の板状体)と、便座の底面を形成する板状体(第2の板状体)と、を有する。これら第1の板状体と第2の板状体との間に中空の空間が形成されている。
【0031】
そして、第1のコイル部221は、着座面を形成する板状体の着座面の裏側の面すなわち便座200の内部の上面210aに付設されている。
【0032】
第2のコイル部223は、ヒータ240からみて導電体231とは反対側に配置されている。言い換えれば、第2のコイル部223は、導電体231からみて第1のコイル部221およびヒータ240よりも遠い位置に配置されている。例えば図2(b)に表したように、第2のコイル部223は、便座200の底面を形成する第2の板状体の底面の裏側の面すなわち便座200の内部の底面210bに付設されている。
【0033】
ヒータ240は、第1のコイル部221からみて導電体231とは反対側に配置され、第2のコイル部223からみて導電体231の側に配置されている。言い換えれば、ヒータ240は、導電体231からみて第1のコイル部221よりも遠い位置に配置され、導電体231からみて第2のコイル部223よりも近い位置に配置されている。つまり、第1のコイル部221と、ヒータ240と、第2のコイル部223と、は、導電体231からみてこの順に遠ざかる位置に配置されている。
【0034】
第1のコイル部221および第2のコイル部223は、例えば複数の絶縁素線を撚り合わせた構造を有するリッツ線などにより形成されている。第2のコイル部223は、例えば巻線部を有するソレノイドすなわち導線を円筒状に巻いたコイルである。これについては、後に詳述する。
【0035】
図2(a)、図2(b)、および図3(a)に表したように、第1のコイル部221は、便座200の着座面に並行して配置されている。また、第1のコイル部221は、便座200を上方からみたときに便座200の内部の上面210aに面状に広がるように配置されている。
なお、本願明細書においては、便座200に座った使用者からみて上方を「上方」とする。
図2(a)、図2(b)、および図3(c)に表したように、第2のコイル部223は、便座200の内部の底面210bに並行して配置されている。また、第2のコイル部221は、便座200を上方からみたときに便座200の内部の底面210bに面状に広がるように配置されている。
【0036】
図2(a)、図2(b)、および図3(b)に表したように、ヒータ240は、便座200の着座面に並行して配置されている。また、ヒータ240は、便座200を上方からみたときに熱伝導体250の下面に面状に広がるように配置されている。但し、第1のコイル部221、第2のコイル部223、およびヒータ240の設置形態は、これだけに限定されるわけではない。
【0037】
本実施形態によれば、暖房便座装置100は、誘導加熱の原理を利用し、便座200の着座面を急速に加熱することができ、より早く着座面を適温にすることができる。また、本実施形態にかかる暖房便座装置100は、便座200の着座面を急速に加熱することができるため、使用者が便座200を使用していないときには便座200を保温しておく必要はない。そのため、待機時の消費電力を抑え、省エネルギー化を図ることができる。
【0038】
使用者が便座200に着座した後すなわち便座200に着座しているときには、暖房便座装置100は、ヒータ240へ通電することにより便座200の着座面を保温することができる。
【0039】
図4は、本実施形態にかかる暖房便座装置の回路図である。
例えば、ケーシング400内には、制御部410と、誘導加熱コイル通電スイッチ421と、ヒータ制御スイッチ423と、が設けられている。制御部410は、誘導加熱コイル通電スイッチ421に制御信号を送る。誘導加熱コイル通電スイッチ421は、制御部410から送られた制御信号によって誘導加熱コイル220に高周波電流を供給する高周波電源回路500への通電のオン/オフを制御する。また、制御部410は、ヒータ制御スイッチ423に制御信号を送る。ヒータ制御スイッチ423は、制御部410から送られた制御信号によってヒータ240への通電のオン/オフを制御する。制御部410、誘導加熱コイル通電スイッチ421、およびヒータ制御スイッチ423には、商用電源10が接続されている。
【0040】
また、ケーシング400内には、トイレ室への使用者の入室を検知する入室検知センサ402と、使用者が便座200に座ったことを検知する着座検知センサ404と、便蓋300の開閉状態を検知する便蓋開閉検知センサ406と、が設けられている。
【0041】
入室検知センサ402は、トイレ室のドアを開けて入室した直後の使用者や、トイレ室に入室しようとしてドアの前に存在する使用者を検知することができる。つまり、入室検知センサ402は、トイレ室に入室した使用者だけではなく、トイレ室に入室する前の使用者、すなわちトイレ室の外側のドアの前に存在する使用者を検知することができる。このような入室検知センサ402としては、焦電センサや、ドップラーセンサなどのマイクロ波センサなどを用いることができる。マイクロ波のドップラー効果を利用したセンサや、マイクロ波を送信し反射したマイクロ波の振幅(強度)に基づいて被検知体を検出するセンサなどを用いた場合、トイレ室のドア越しに使用者の存在を検知することが可能となる。つまり、トイレ室に入室する前の使用者を検知することができる。
【0042】
着座検知センサ404としては、例えば、赤外線投受光式の測距センサなどを用いることができる。便蓋開閉検知センサ406としては、例えば、ホールICと磁石との組み合わせ、またはマイクロスイッチなどを用いることができる。
【0043】
なお、便蓋開閉検知センサ406は、ケーシング400に内蔵されていることに限定されず、便蓋300のヒンジ部やケーシング400の外部に設けられていてもよい。つまり、便蓋開閉検知センサ406は、便蓋300の開閉状態を検知できればよい。これは、着座検知センサ404および入室検知センサ402についても同様であり、着座検知センサ404および入室検知センサ402は、ケーシング400に内蔵されていることに限定されない。つまり、着座検知センサ404は、便座200への使用者の着座を検知できればよく、入室検知センサ402は、トイレ室への使用者の入室を検知できればよい。
【0044】
便座200内には、高周波電流を生成し誘導加熱コイル220にその高周波電流を供給する高周波電源回路500が設けられている。高周波電源回路500は、整流部510と、電源回路521と、平滑部530と、共振回路540と、インバータ550と、を有する。
【0045】
整流部510は、商用電源10から供給される電流を整流する。平滑部530は、整流部510により整流された電流の中に含まれている脈流を平滑化する。平滑部530は、平滑コイル531と、平滑コンデンサ533と、を有する。平滑コンデンサ533は、インバータ550に流れる高周波大電流を供給する。平滑コイル531は、高周波に対して高インピーダンスとなって、商用電源側へノイズが伝達するのを防止する。
【0046】
共振回路540は、誘導加熱コイル220と、共振コンデンサ541と、を有する。誘導加熱コイル220が有する第1のコイル部221と第2のコイル部223とは、直列に接続されている。つまり、誘導加熱コイル220は、導電体231からみて近くに設置された部分(第1のコイル部221)と、導電体231からみて遠くに設置された部分(第2のコイル部223)と、が直列に接続された構造を有する。
【0047】
インバータ550は、スイッチング素子551を有し、共振回路540に供給する電力を制御する。スイッチング素子551には、例えば絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(Insulated Gate Bipolar Transistor:IGBT)が用いられる。
【0048】
また、便座200内には、動作/停止指示部253と、便座200の温度を検知する第1および第2のサーミスタ255、261と、発振制御部257と、ヒータ240と、が設けられている。動作/停止指示部253は、電源回路521から送信された制御信号に基づいて発振制御部257へ制御信号を送信する。なお、電源回路521から送信される制御信号は、誘導加熱コイル通電スイッチ421がオンしたあと、電源回路521の出力電圧が所定の値に安定し、動作準備ができたという信号でよい。動作/停止指示部253は、電源回路521の出力が安定すると、発振制御部257に対して動作開始の制御信号を出力する。発振制御部257は、動作/停止指示部253から送信された制御信号に基づいてスイッチング素子551のオン/オフを制御する。ヒータ240は、商用電源10に接続され、商用電源10から供給される電流が通電されることで発熱する。なお、ヒータ240は、整流部510により整流された電流(整流出力)が通電されることで発熱してもよい。
【0049】
第1のサーミスタ255は、動作/停止指示部253に接続されている。第1のサーミスタ255は、主として誘導加熱コイル220および導電体231によって加熱される便座200の温度を検知する。動作/停止指示部253は、第1のサーミスタ255で検知した便座200の温度の情報に基づいて誘導加熱の動作条件を決定し、発振制御部257を介してスイッチング素子551のオン/オフを制御することができる。これにより、動作/停止指示部253は、便座200の加熱時間や加熱特性、あるいは高周波電源回路500の動作/停止を制御することができる。
【0050】
第2のサーミスタ261は、制御部410に接続されている。第2のサーミスタ261は、主としてヒータ240によって加熱される便座200の温度を検知する。制御部410は、第2のサーミスタ261で検知した便座200の温度の情報に基づきヒータ制御スイッチ423を制御することができる。これにより、ヒータ240への通電が制御される。
【0051】
前述したように、制御部410は、動作/停止指示部253と、発振制御部257と、を介してスイッチング素子551のオン/オフを制御する。制御部410は、誘導加熱の動作指示を行うだけであり、スイッチング素子551の直接のオン/オフ制御を行うのは、発振制御部257である。発振制御部257の動作は、次のようになる。
【0052】
まず、制御部410が誘導加熱コイル通電スイッチ421をオンし、動作/停止指示部253が電源回路521が安定したと判断して発振制御部257によってスイッチング素子551をオン状態に制御すると、商用電源10から供給された電流は、整流部510により整流され、平滑部530により平滑化され、誘導加熱コイル220に流れる。電流が誘導加熱コイル220に流れると、誘導加熱コイル220に磁気エネルギーが溜まる。続いて、発振制御部257がスイッチング素子551をオフ状態に制御すると、商用電源10からは電流が供給されない一方で、誘導加熱コイル220に溜められた磁気エネルギーが共振コンデンサ541へ静電エネルギーとして移動する。その後、再び共振コンデンサ541から誘導加熱コイル220へエネルギーが戻り、共振する。この共振動作の途中で、発振制御部257によってスイッチング素子551が再びオン状態に制御されると、誘導加熱コイル220に磁気エネルギーが補充され、前述の動作を繰り返して共振が継続する。
【0053】
このように、発振制御部257がスイッチング素子551のオン状態とオフ状態とを切り替え制御することにより、誘導加熱コイル220および共振コンデンサ541において共振が発生し、高周波電流が生成される。高周波電流は、誘導加熱コイル220へ供給される。誘導加熱コイル220は、供給された高周波電流によって高周波磁界を発生する。この高周波磁界によって導電体231に渦電流が発生し、導電体231が発熱する。以上の動作により、例えば、入室検知センサ402が使用者の入室を検知すると、制御部410は、誘導加熱コイル220への通電を制御し便座200を急速に加熱することができる。そのため、使用者が便座200に座った際に冷たさを感じさせないような適温にすることができる。
【0054】
続いて、使用者が便座200に着座した後すなわち便座200に着座しているときには、制御部410は、ヒータ制御スイッチ423のオン/オフを制御し、便座200の着座面の温度を所定温度内に保温することができる。
【0055】
前述したように、本実施形態では、誘導加熱コイル220およびヒータ240は、便座200内に設けられている。このとき、誘導加熱コイル220およびヒータ240を単に便座200内に配置すると、誘導加熱により便座200を効率よく急速に加熱することができない場合がある。また、スイッチング素子551に過大なスイッチング損失が生じ、スイッチング素子551が破壊する場合がある。これらの課題について、図面を参照しつつ説明する。
【0056】
図5は、比較例の便座を表す模式図である。
また、図6は、比較例にかかる暖房便座装置の回路図である。
なお、図5(a)は、本比較例の便座を上方から眺めた平面模式図であり、図5(b)は、図5(a)に表した切断面B−Bにおける断面模式図である。
【0057】
本比較例の便座200aの内部には、誘導加熱コイル220と、ヒータ240と、熱伝導体250aと、が設けられている。誘導加熱コイル220は、図2に関して前述した便座200のようには第2のコイル部223を有していない。つまり、誘導加熱コイル220は、第1のコイル部221により形成されている。
【0058】
熱伝導体250aは、便座200の着座面の裏側すなわち便座200の内部の上面210aに付設されている。本比較例では、熱伝導体250aは、主としてヒータ240が発熱した熱を着座面の全体に略均一に広げる機能を有する。そのため、熱伝導体250aは、一般的にアルミシートやカーボンシートなどにより形成されている。
【0059】
ヒータ240は、熱伝導体250aの下面に付設されている。つまり、ヒータ240は、第1のコイル部221からみて導電体231の側に配置されている。言い換えれば、ヒータ240は、導電体231からみて第1のコイル部221よりも近い位置に配置されている。
【0060】
第1のコイル部221は、ヒータ240からみて導電体231とは反対側に配置されている。言い換えれば、第1のコイル部221は、導電体231からみてヒータ240よりも遠い位置に配置されている。その他の構造および回路構成については、図2〜図4に関して前述した便座200の構造および回路構成と同様である。
【0061】
本比較例の便座200aでは、熱伝導体250aが便座200の着座面の裏側に付設され、ヒータ240が熱伝導体250aの下面に付設されている。そのため、ヒータ240および熱伝導体250aにより便座200の着座面を効率よく保温あるいは加熱することができる。しかしながら、図5(b)および図6に表したように、第1のコイル部221と導電体231との間に、アルミシートなどにより形成された熱伝導体250aが介在している。アルミシートなどの抵抗値は、比較的低い。そのため、第1のコイル部221が磁界を発生すると、熱伝導体250aに渦電流が発生する。そのため、第1のコイル部221が発生した磁界および磁界の変化は、熱伝導体250aにより打ち消される。これにより、導電体231に渦電流が発生しにくく、導電体231は発熱し難い。そのため、本比較例では、誘導加熱により便座200を効率よく急速に加熱することは困難である。
【0062】
図7は、他の比較例の便座を表す模式図である。
なお、図7(a)は、本比較例の便座を上方から眺めた平面模式図であり、図7(b)は、図7(a)に表した切断面C−Cにおける断面模式図である。
【0063】
本比較例の便座200bの内部には、誘導加熱コイル220と、ヒータ240と、熱伝導体250と、が設けられている。誘導加熱コイル220は、図2に関して前述した便座200のようには第2のコイル部223を有していない。つまり、誘導加熱コイル220は、第1のコイル部221により形成されている。
【0064】
第1のコイル部221は、便座200の着座面の裏側すなわち便座200の内部の上面210aに付設されている。つまり、第1のコイル部221は、ヒータ240からみて導電体231の側に配置されている。言い換えれば、第1のコイル部221は、導電体231からみてヒータ240よりも近い位置に配置されている。
【0065】
ヒータ240は、第1のコイル部221からみて導電体231とは反対側に配置されている。言い換えれば、ヒータ240は、導電体231からみて第1のコイル部よりも遠い位置に配置されている。熱伝導体250は、第1のコイル部221とヒータ240との間に設けられている。その他の構造および回路構成については、図2〜図4に関して前述した便座200の構造および回路構成と同様である。
【0066】
本比較例の便座200bでは、第1のコイル部221と導電体231との間には、熱伝導体250は介在していない。そのため、図5および図6に関して前述した課題が生ずることを抑えることができる。しかしながら、図7(b)に表したように、本比較例の便座200bでは、第1のコイル部221と導電体231との間の距離が、図5に関して前述した便座200aの場合よりも短い。そのため、本比較例の第1のコイル部221が発生した磁界により導電体231に発生する渦電流は、図5に関して前述した比較例の第1のコイル部221が発生した磁界により導電体231に発生する渦電流よりも大きい。よって、導電体231では、より大きな熱エネルギーが消費される。そのため、本比較例における誘導加熱コイル220と共振コンデンサ541との間の振動、あるいは共振動作のエネルギー(共振エネルギー)は、図5に関して前述した比較例の場合よりも多くの熱エネルギーとして消失する。そして、共振の振動は、早く減衰する。
【0067】
別の観点から説明すれば、本比較例における第1のコイル部221と導電体231との磁気結合は、5に関して前述した比較例における第1のコイル部221と導電体231との磁気結合よりも強い。そのため、誘導加熱コイル220と共振コンデンサ541との共振動作のためのインダクタンス成分が不足するおそれがある。これにより、誘導加熱コイル220と共振コンデンサ541との共振動作が継続できないおそれがある。そうすると、スイッチング素子551の両端にかかる電圧がゼロボルトであるときに制御部410がスイッチング素子551をオン状態にする(いわゆる「ゼロボルト・スイッチング動作」を行う)ことができないおそれがある。そのため、スイッチング損失が増大し、スイッチング素子551が破壊あるいは焼損するおそれがある。これについて、図面を参照しつつさらに説明する。
【0068】
図8は、本比較例の便座を有する暖房便座装置の動作波形を表すタイミングチャートである。
また、図9は、本実施形態にかかる暖房便座装置の動作波形を表すタイミングチャートである。
【0069】
図8に表したように、発振制御部257がスイッチング素子551をオン状態に制御すると、誘導加熱コイル220に流れるコイル電流Iが増加する(タイミングt101)。これにより、誘導加熱コイル220に磁気エネルギーが溜まる。続いて、発振制御部257がスイッチング素子551をオフ状態に制御すると、誘導加熱コイル220に溜められた磁気エネルギーが共振コンデンサ541へ静電エネルギー移動する(タイミングt102)。そのため、共振電圧VCEは増加する。なお、共振電圧VCEは、スイッチング素子551の両端(コレクターエミッタ間)にかかる電圧である。
【0070】
続いて、コイル電流Iがゼロとなり逆方向に流れ始めると、共振電圧VCEは減少し始める(タイミングt103)。つまり、共振コンデンサ541の放電が始まる。そして、共振電圧VCEは、共振回路540の入力電圧(図8に表した破線参照)を基準として振動を継続しようとする。このとき、図7に関して前述したように本比較例では、第1のコイル部221と導電体231との間の距離がより短いため、より大きい渦電流が導電体231に発生する。つまり、より多くの共振エネルギーが熱エネルギーとして消失する。これにより、共振エネルギーがより早く減衰する。
【0071】
そのため、誘導加熱コイル(L)220と、共振コンデンサ(C)541と、導電体(R)231と、によるLCR共振動作を継続させるためには、発振制御部257は、コイル電流Iが再び増加するときにスイッチング素子551をオン状態に制御する必要がある(タイミングt104)。これにより、誘導加熱コイル220にエネルギーが再び溜まる。
【0072】
ここで、誘導加熱の実行に際しては、誘導加熱コイル220と共振コンデンサ541との組み合わせで決まる共振周波数が存在する。一般的には、共振周波数の近傍の周波数でスイッチング素子551のスイッチング制御が行われる。誘導加熱方式の回路において、共振動作を利用する理由の1つは、スイッチング素子551にかかる電圧が0V(ゼロボルト)になるタイミングで制御部410がスイッチング素子551をオン状態にしてスイッチング損失を抑えるためである。
【0073】
しかしながら、本比較例では、共振エネルギーがより早く減衰するため、共振電圧VCEは、共振回路540の入力電圧を基準として振動してもゼロボルトに下がりきれない。そのため、発振制御部257は、共振エネルギーの減衰を抑え共振動作を継続させるために、共振電圧VCEがゼロボルトでないときにスイッチング素子551をオン状態にする必要がある(タイミングt104)が、本比較例では、制御部410は、ゼロボルト・スイッチング動作を行うことができない。そうすると、スイッチング損失が増大し、スイッチング素子551が破壊あるいは焼損するおそれがある。
【0074】
これに対して、図2および図3に関して前述したように、本実施形態の誘導加熱コイル220は、第1のコイル部221と、第2のコイル部223と、を有する。第2のコイル部223は、導電体231からみて第1のコイル部221よりも遠い位置に配置されている。そのため、第2のコイル部223が発生した磁界により導電体231に発生する渦電流は、第1のコイル部221が発生した磁界により導電体231に発生する渦電流よりも小さい。そのため、図9に表したように、本実施形態にかかる暖房便座装置100では、誘導加熱コイル220と共振コンデンサ541との間の振動、あるいは共振動作のエネルギーが減衰することを抑えることができる。
【0075】
つまり、第2のコイル部223と導電体231との磁気結合は、第1のコイル部221と導電体231との磁気結合よりも弱い。そのため、第2のコイル部223は、誘導加熱コイル220と共振コンデンサ541との共振動作のためのインダクタンス成分を追加する役割を主として有し、不足するインダクタンス成分を補うことができる。これにより、安定した共振動作で効率よく誘導加熱を実行することができる。そのため、安定した動作で効率よく便座200を急速に加熱することができる。
【0076】
また、図2および図3に関して前述したように、第2のコイル部223は、ヒータ240からみて導電体231とは反対側に配置されている。つまり、ヒータ240は、第2のコイル部223と導電体231との間に介在している。そのため、第2のコイル部223は、導電体231からより確実に離間した位置に設けられている。これにより、第2のコイル部223は、不足するインダクタンス成分をより確実に補うことができる。
【0077】
本実施形態によれば、共振エネルギーの減衰を抑えることができるため、図9に表したように、共振電圧VCEが共振回路540の入力電圧を基準として適切な振幅で振動することでゼロボルトとなるタイミングが存在する(タイミングt111〜t112)。そのため、本実施形態における共振動作では、制御部410がゼロボルト・スイッチング動作を行うことで、スイッチング損失を抑えることができる。
【0078】
第1のコイル部221は、例えば銅やアルミニウムなどにより形成されている。そのため、第1のコイル部221の熱伝導率は、比較的高い。また、第1のコイル部221は、導電体231からみてヒータ240よりも近い位置に配置され、さらに便座200を上方からみたときに便座200の内部の上面210aに面状に広がるように配置されている。これにより、第1のコイル部221は、熱伝導体250として兼用され、ヒータ240が発熱した熱を着座面の全体に略均一に広げることができる。そのため、便座200の構造の簡略化を図ることができる。
【0079】
なお、第1のコイル部221は、例えば銅やアルミニウムなどの薄肉テープにより形成されていてもよい。これによれば、便座200を上方からみたときに便座200の内部の上面210aに面状に広がるように第1のコイル部221を配置しやすい。また、薄肉テープにより形成された第1のコイル部221は、より軽量である。そのため、便座200の開閉をより楽に行うことができる。
【0080】
第2のコイル部223は、導電体231からみて第1のコイル部221よりも遠い位置に配置されている。つまり、第2のコイル部223は、便座200の着座面からみて第1のコイル部221よりも遠い位置に配置されている。そのため、便座200に着座する使用者と第2のコイル部223との間の距離をより確実に確保することができる。そのため、第2のコイル部223から発生する漏れ磁界を抑えることができる。なお、第1のコイル部221と第2のコイル部223との巻き回数の比率は、例えば約2:1程度であることがより望ましい。
【0081】
次に、本実施形態の他の便座について、図面を参照しつつ説明する。
図10は、本実施形態の他の便座を表す断面模式図である。
なお、図10は、図2(a)に表した切断面A−Aにおける断面模式図に相当する。
【0082】
図10に表した便座200cの筐体210の内部には、誘導加熱コイル220cと、ヒータ240と、熱伝導体250と、が設けられている。誘導加熱コイル220cは、第1のコイル部225と、第2のコイル部223と、を有する。
【0083】
第1のコイル部225は、長手方向の断面形状が長方形を有する平角線により形成されている。一方、第2のコイル部223は、リッツ線により形成されている。第1のコイル部225と第2のコイル部223とは、直列に適宜接続されている。その他の構造および各要素の設置形態などは、図2および図3に関して前述した便座200の構造および各要素の設置形態と同様である。
【0084】
導体の所定体積に対する表面積を断面形状で比較すると、長手方向の断面形状が略円形を有するリッツ線よりも長手方向の断面形状が長方形を有する平角線の方が広い。リッツ線は、複数の絶縁素線の間に空隙を有する。一方、平角線は、複数の素線の間の空隙を無くすあるいは抑えることができる。そのため、導体の断面積を同一とすれば、平角線の容積率は、リッツ線の容積率よりも高い。これにより、平角線により形成された第1のコイル部225は、ヒータ240が発熱した熱をリッツ線により形成されたコイル部よりも早く着座面の全体に略均一に広げることができる。その他の効果についても、図1〜図9に関して前述した便座200と同様の効果が得られる。
【0085】
図11は、本実施形態のさらに他の便座を表す断面模式図である。
なお、図11は、図2(a)に表した切断面A−Aにおける断面模式図に相当する。
【0086】
図11に表した便座200dの筐体210の内部には、誘導加熱コイル220dと、ヒータ240と、熱伝導体250と、が設けられている。誘導加熱コイル220dは、第1のコイル部225と、第2のコイル部227と、を有する。
【0087】
第1のコイル部225および第2のコイル部227は、長手方向の断面形状が長方形を有する平角線により形成されている。その他の構造および各要素の設置形態などは、図2および図3に関して前述した便座200の構造および各要素の設置形態と同様である。
【0088】
第1のコイル部225は、平角線により形成されているため、図10に関して前述したように、ヒータ240が発熱した熱をより早く着座面の全体に略均一に広げることができる。また、第2のコイル部227は、平角線により形成されているため表皮効果の影響を受けにくい。また、第1のコイル部225および第2のコイル部227は、平角線により形成されているため、1本の平角線により形成可能である。そのため、第1のコイル部225と第2のコイル部227とを特別に接続させる必要はない。その他の効果についても、図1〜図9に関して前述した便座200と同様の効果が得られる。
【0089】
図12は、本実施形態の第2のコイル部の具体例を例示する平面模式図である。
図2および図3に関して前述したように、第2のコイル部223は、例えば巻線部を有するソレノイドすなわち導線を円筒状に巻いたコイルである。
【0090】
図12(a)に表したように、第2のコイル部223は、例えばいわゆる「トロイダル・コイル」である。これによれば、第2のコイル部223から発生する漏れ磁界を抑えることができる。また、インダクタンスの安定性および再現性を高めることができる。
また、図12(b)に表したように、第2のコイル部223は、例えばいわゆる「棒状コイル」である。これによれば、第2のコイル部223の形成性を高めることができる。また、第2のコイル部223から発生する漏れ磁界を抑え、インダクタンスの安定性および再現性を高めることができる。
【0091】
以上説明したように、本実施形態によれば、誘導加熱コイル220は、第1のコイル部221と、第2のコイル部223と、を有する。第1のコイル部221は、ヒータ240からみて導電体231の側に配置されている。第2のコイル部223は、ヒータ240からみて導電体231とは反対側に配置されている。言い換えれば、第2のコイル部223は、導電体231からみて第1のコイル部221よりも遠い位置に配置されている。そのため、第2のコイル部223が発生した磁界により導電体231に発生する渦電流は、第1のコイル部221が発生した磁界により導電体231に発生する渦電流よりも小さい。そのため、本実施形態にかかる暖房便座装置100では、誘導加熱コイル220と共振コンデンサ541との間の振動、あるいは共振動作のエネルギーが減衰することを抑えることができる。
【0092】
つまり、第2のコイル部223と導電体231との磁気結合は、第1のコイル部221と導電体231との磁気結合よりも弱い。そのため、第2のコイル部223は、誘導加熱コイル220と共振コンデンサ541との共振動作のためのインダクタンス成分を追加し、不足するインダクタンス成分を補うことができる。これにより、安定した共振動作で効率よく誘導加熱を実行することができる。そのため、安定した動作で効率よく便座200を急速に加熱することができる。
【0093】
以上、本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明はこれらの記述に限定されるものではない。前述の実施の形態に関して、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。例えば、暖房便座装置100などが備える各要素の形状、寸法、材質、配置などや第1のコイル部221、第2のコイル部223、および導電体231の設置形態などは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。
例えば、第2のコイル部223が便座200の内部の底面210bに付設されていても、第2のコイル部223と導電体231との磁気結合が比較的強い場合には、第2のコイル部223と導電体231との間にフェライトなどを設けてもよい。これによれば、第2のコイル部223と導電体231との磁気結合を抑えることができる。フェライトは、第2のコイル部223の全周を覆うように設置されてもよいし、第2のコイル部223の少なくとも一部を覆うように設置されてもよい。
また、前述した各実施の形態が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。
【符号の説明】
【0094】
10 商用電源、 100 暖房便座装置、 200、200a、200b、200c、200d 便座、 210 筐体、 210a 上面、 210b 底面、 220、220c、220d 誘導加熱コイル、 221 第1のコイル部、 223 第2のコイル部、 225 第1のコイル部、 227 第2のコイル部、 231 導電体、 240 ヒータ、 250、250a 熱伝導体、 253 動作/停止指示部、 255 第1のサーミスタ、 257 発振制御部、 261 第2のサーミスタ、 300 便蓋、 400 ケーシング、 402 入室検知センサ、 404 着座検知センサ、 406 便蓋開閉検知センサ、 410 制御部、 421 誘導加熱コイル通電スイッチ、 423 ヒータ制御スイッチ、 500 高周波電源回路、 510 整流部、 521 電源回路、 530 平滑部、 531 平滑コイル、 533 平滑コンデンサ、 540 共振回路、 541 共振コンデンサ、 550 インバータ、 551 スイッチング素子、 800 洋式腰掛便器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘導加熱コイルと共振コンデンサとを有する共振回路と、
前記誘導加熱コイルが発生した磁界により誘導加熱される導電体と、
商用電源から供給される電流を整流する整流部と、
前記整流部の整流出力を電源として前記共振回路に供給する電力を制御するインバータと、
前記商用電源から供給される電流または前記整流部の整流出力が通電されることで発熱するヒータと、
前記誘導加熱コイルと前記導電体と前記ヒータとが設けられた便座と、
を備え、
前記誘導加熱コイルは、
前記導電体からみて前記ヒータよりも近い位置に配置された第1のコイル部と、
前記導電体からみて前記第1のコイル部よりも遠い位置に配置され、前記共振回路の共振動作のためのインダクタンス成分を補う第2のコイル部と、
を有することを特徴とする暖房便座装置。
【請求項2】
前記便座は、着座面を形成する第1の板状体を有し、
前記第1のコイル部は、前記板状体の前記着座面の裏側に配置され、
前記ヒータは、前記第1のコイル部からみて前記導電体とは反対側に配置され、
前記第2のコイル部は、前記導電体からみて前記ヒータよりも遠い位置に配置されたことを特徴とする請求項1記載の暖房便座装置。
【請求項3】
前記便座は、底面を形成する第2の板状体を有し、
前記第2のコイル部は、前記第2の板状体の前記底面の裏側に付設されたことを特徴とする請求項2記載の暖房便座装置。
【請求項4】
前記第2のコイル部は、導線が円筒状に巻かれた形状を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の暖房便座装置。
【請求項5】
前記第1のコイル部は、リッツ線により形成され、前記便座を上方からみたときに前記便座の着座面を形成する板状体の裏側に面状に広がるように配置されたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の暖房便座装置。
【請求項6】
前記第1のコイル部は、平角線により形成され、前記便座を上方からみたときに前記便座の着座面を形成する板状体の裏側に面状に広がるように配置されたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の暖房便座装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−200494(P2012−200494A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−69798(P2011−69798)
【出願日】平成23年3月28日(2011.3.28)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】