説明

暖房便座装置

【課題】安全性の高い誘導加熱型の暖房便座装置を提供する。
【解決手段】誘導加熱コイル222と共振コンデンサ541を有する共振回路540と、誘導加熱コイル222が発生した磁界により誘導加熱される導電体231と、導電体231が設けられた便座200と、第1のスイッチング素子551を有し、共振回路540への電力を制御するインバータ550と、電源の電流を整流する整流部510と、第2のスイッチング素子521を有し整流出力を降圧しインバータに供給する降圧部520と、第2のスイッチング素子521のスイッチングを制御して整流出力の降圧量を切り替えインバータに供給し便座200の誘導加熱する本体制御部駆動用の第1の電源装置420と、降圧部用の第2の電源装置515を備え、第2の電源装置515から降圧部へ供給する駆動電圧を停止することで、本体制御部410からの指示にかかわらず共振回路540への通電を停止可能とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の態様は、便器に設置される便座を暖めることができる暖房便座装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、多くの暖房便座装置では、例えば電気的な発熱体としてヒータなどが便座の内部に設けられている。ヒータに電流が流れると、ヒータにおいて発生したジュール熱の熱伝導により便座の表面の温度が上昇する。例えば便座が樹脂により形成されている場合、樹脂は熱抵抗が大きいため便座の表面の温度が目標温度まで上昇するためには数十秒から数分の時間がかかることがある。そのため、使用者が便座に着座したときに冷たさを感じないようにするためには、使用者が便座に着座していないときでもヒータに通電し便座の表面を予熱しておく必要がある。そのため、待機時の消費電力を抑え、省エネルギー化を図るという点においては改善の余地がある。
【0003】
これに対して、誘導加熱用電源と、加熱用励磁コイルと、発熱体と、よりなる温水式洗浄便座装置がある(特許文献1)。特許文献1に記載された温水式洗浄便座装置によれば、暖房便座加熱を瞬間式で加熱することができ、便座を保温状態に保つことなく、着座時以外は、電力供給を停止させることができ、大きな省エネルギー効果を発揮させることができる。しかしながら、発熱体が瞬時に発熱するような誘導加熱を、使用者が便座に着座した後にも実行すると、強い磁界が使用者へ放射されるおそれがあるという問題がある。また、使用者が便座に着座しているときに便座の保温を行うことができないという問題がある。
【0004】
これに対して、ヒータと、電磁誘導加熱コイルと、を具備する便座暖房装置がある(特許文献2)。特許文献2に記載された便座暖房装置では、トイレへの入室を検知すると、電磁誘導加熱コイルを作動させ、便座を瞬間加熱する。さらに、便座に着座された後はヒータにより暖房を継続する。しかしながら、瞬間加熱あるいは急速加熱のための加熱手段と、保温加熱のための加熱手段と、を別系統として設けると、構造が複雑となるという問題やコストアップにつながるという問題がある。
【0005】
これに対して、本発明者は、便座の急速加熱と保温加熱とをいずれも誘導加熱により行うことを検討している。例えば、本発明者は、共振回路に供給する電圧を降圧させることで保温加熱を誘導加熱により行うことを検討している。これによれば、より簡易的な構造で急速加熱と保温加熱との実現を図ることができる。
【0006】
誘導加熱の指示は、例えば暖房便座装置の本体(ケーシング)の内部に設けられた制御部により行われる。しかしながら、制御部や指示系統などに故障が生じた場合には、誘導加熱が異常となった際に誘導加熱を停止させようとしても停止できない場合がありうる。この点においては、改善の余地がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平8−228964号公報
【特許文献2】特開2008−18114号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、かかる課題の認識に基づいてなされたものであり、安全性をより高めることができる誘導加熱型の暖房便座装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の発明は、誘導加熱コイルと共振コンデンサとを有する共振回路と、前記誘導加熱コイルが発生した磁界により誘導加熱される導電体と、前記導電体が設けられた便座と、第1のスイッチング素子を有し前記共振回路に供給する電力を制御するインバータと、商用電源から供給される電流を整流する整流部と、第2のスイッチング素子を有し前記整流部の整流出力を降圧して前記インバータに供給する降圧部と、前記便座の開閉を支持し、商用電力が投入されるケーシングと、前記ケーシングの内部に設けられ、前記第2のスイッチング素子のスイッチングを制御することにより前記整流出力の降圧量を切り替えて前記インバータに供給し前記便座の誘導加熱を実行する本体制御部と、前記ケーシングの内部に設けられ、前記商用電源と接続されて前記本体制御部を駆動する電源電圧を供給する第1の電源装置と、前記便座の内部に設けられ、前記降圧部を駆動する駆動電圧を生成する第2の電源装置と、を備え、前記第2の電源装置から前記降圧部へ供給する前記駆動電圧を停止することで、前記本体制御部からの指示にかかわらず前記共振回路への通電を停止可能としたことを特徴とする暖房便座装置である。
【0010】
この暖房便座装置によれば、第2の電源装置から降圧部へ供給する駆動電圧を停止することで、本体制御部からの指示にかかわらず共振回路への通電を停止する。そうすると、共振回路の駆動が停止し、誘導加熱の通電が遮断される。これにより、例えば本体制御部410や指示系統や第1のスイッチング素子551や第2のスイッチング素子521などに故障が生じた場合でも、誘導加熱を停止することができ、安全性をより高めることができる。
【0011】
また、第2の電源装置が供給する駆動電圧を停止する一方で、第1の電源装置が供給する電源電圧を停止するわけではない。そのため、本体制御部は、故障していない場合には、第1の電源装置から供給される電源電圧により駆動を継続することができる。
【0012】
また、第2の発明は、第1の発明において、前記インバータに供給する電圧を検出する過電圧検出部と、前記導電体の温度を直接的または間接的に検出する異常温度検出回路部と、前記導電体の電力消費量を間接的に検出する過消費電力検出部と、をさらに備え、前記過電圧検出部が検出した電圧が所定の閾値の電圧よりも高い場合、および前記異常温度検出回路部が前記導電体の過熱異常を検出した場合、および前記過消費電力検出部が前記電力消費量の異常を検出した場合の少なくともいずれかにおいて、前記本体制御部からの指示にかかわらず、前記第2の電源装置が遮断されることを特徴とする暖房便座装置である。
【0013】
この暖房便座装置によれば、本体制御部に異常が生じたり、本体制御部と便座との間において通信不良が生じた場合でも、便座側で独立して第2の電源装置を遮断することができる。そのため、本体制御部からの指示にかかわらず第2の電源装置を確実に遮断することができる。
【0014】
また、第3の発明は、第2の発明において、前記第2の電源装置は、前記遮断された後には、前記商用電源の電圧の印加が一旦遮断され再び印加されると復帰することを特徴とする暖房便座装置である。
【0015】
この暖房便座装置によれば、第2の電源装置は、遮断された後には、商用電源の電圧の印加が一旦遮断され再び印加されると復帰する。言い換えれば、第2の電源装置は、遮断された後には、商用電源の電圧の印加が一旦遮断され再び印加されない限り復帰しない。これによれば、本体制御部からの指示にかかわらず、使用者が意図的にリセット動作(商用電源の再投入動作)を行わない限り、誘導加熱の動作を確実に停止状態に保持することができる。
【0016】
また、第4の発明は、第2または第3の発明において、前記第2の電源装置が前記遮断された後にも前記異常温度検出回路部を所定時間駆動可能とするバックアップ電源をさらに備えたことを特徴とする暖房便座装置である。
【0017】
この暖房便座装置によれば、バックアップ電源は、第2の電源装置が遮断された後にも異常温度検出回路部を所定時間駆動することができる。例えば、バックアップ電源が設けられていない場合には、第2の電源装置が遮断されると、異常温度検出回路部自身の駆動電圧がすぐに低下する。そうすると、第2の電源装置の出力電圧が意図する電圧以下まで低下し、完全に第2の電源装置の遮断が終了する前に、第2の電源装置を遮断させるための異常温度検出回路部が駆動できなくなるおそれがある。そのため、第2の電源装置を確実には遮断できないおそれがある。
【0018】
これに対して、この暖房便座装置には、バックアップ電源が設けられている。そのため、異常温度検出回路部は、第2の電源装置が遮断されて第2の電源装置から供給される駆動電圧が停止した後でも所定時間駆動することができる。これにより、異常温度検出回路部は、第2の電源装置をより確実に遮断することができる。また、第1の電源装置から異常温度検出回路部へ駆動電圧を供給する必要がないため、ケーシングと便座とを接続するコードを少なくすることができる。
【0019】
また、第5の発明は、第2〜第4のいずれか1つの発明において、前記過電圧検出部と、前記異常温度検出回路部と、前記過消費電力検出部と、を駆動する駆動電圧の系統は、前記第2の電源装置の系統から独立し、前記第1の電源装置の系統と同一であることを特徴とする暖房便座装置である。
【0020】
この暖房便座装置によれば、過電圧検出部と、異常温度検出回路部と、過消費電力検出部と、を駆動する駆動電圧は、第1の電源装置から供給される。そのため、過電圧検出部と、異常温度検出回路部と、過消費電力検出部と、は、第2の電源装置が遮断されて第2の電源装置から供給される駆動電圧が停止した後でも駆動することができる。これにより、第2の電源装置をより確実に遮断することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の態様によれば、安全性をより高めることができる誘導加熱型の暖房便座装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施の形態にかかる暖房便座装置を備えたトイレ装置を例示する斜視模式図である。
【図2】本実施形態の便座を表す模式図である。
【図3】本実施形態にかかる暖房便座装置の回路図である。
【図4】本実施形態にかかる暖房便座装置の動作の具体例を表すタイミングチャートである。
【図5】本実施形態のサーミスタの抵抗値と温度との関係を表すグラフである。
【図6】本実施形態にかかる暖房便座装置の動作の具体例を表すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。なお、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
図1は、本発明の実施の形態にかかる暖房便座装置を備えたトイレ装置を例示する斜視模式図である。
また、図2は、本実施形態の便座を表す模式図である。
なお、図2(a)は、本実施形態の便座を上方から眺めた平面模式図であり、図2(b)は、図2(a)に表した切断面A−Aにおける断面模式図である。
【0024】
図1に表したトイレ装置は、洋式腰掛便器800と、その上に設けられた暖房便座装置100と、を備える。暖房便座装置100は、ケーシング400と、便座200と、便蓋300と、を有する。便座200と便蓋300とは、ケーシング400に対して開閉自在にそれぞれ軸支されている。つまり、ケーシング400は、便座200および便蓋300の回動(開閉)を支持する。便蓋300は、閉じた状態において便座200の上方を覆うことができる。
【0025】
ケーシング400には、トイレ室への使用者の入室を検知する入室検知センサ(入室検知手段)402と、使用者が便座200に座ったことを検知する着座検知センサ(着座検知手段)404と、便蓋300の開閉状態を検知する便蓋開閉検知センサ(便蓋開閉検知手段)406と、が設けられている。なお、入室検知センサ402と、着座検知センサ404と、便蓋開閉検知センサ406と、の設置形態は、一例であり、これだけに限定されるわけではない。
【0026】
入室検知センサ402は、トイレ室のドアを開けて入室した直後の使用者や、トイレ室に入室しようとしてドアの前に存在する使用者を検知することができる。つまり、入室検知センサ402は、トイレ室に入室した使用者だけではなく、トイレ室に入室する前の使用者、すなわちトイレ室の外側のドアの前に存在する使用者を検知することができる。このような入室検知センサ402としては、焦電センサや、ドップラーセンサなどのマイクロ波センサなどを用いることができる。マイクロ波のドップラー効果を利用したセンサや、マイクロ波を送信し反射したマイクロ波の振幅(強度)に基づいて被検知体を検出するセンサなどを用いた場合、トイレ室のドア越しに使用者の存在を検知することが可能となる。つまり、トイレ室に入室する前の使用者を検知することができる。
【0027】
着座検知センサ404は、使用者が便座200に着座する直前において便座200の上方に存在する人体や、便座200に着座した使用者を検知することができる。すなわち、着座検知センサ404は、便座200に着座した使用者だけではなく、便座200の上方に存在する使用者を検知することができる。このような着座検知センサ404としては、例えば、赤外線投受光式の測距センサなどを用いることができる。
【0028】
便蓋開閉検知センサ406としては、例えば、ホールICと磁石との組み合わせ、またはマイクロスイッチなどを用いることができる。
【0029】
なお、便蓋開閉検知センサ406は、ケーシング400に内蔵されていることに限定されず、便蓋300のヒンジ部やケーシング400の外部に設けられていてもよい。つまり、便蓋開閉検知センサ406は、便蓋300の開閉状態を検知できればよい。これは、入室検知センサ402および着座検知センサ404についても同様であり、入室検知センサ402および着座検知センサ404は、ケーシング400に内蔵されていることに限定されない。つまり、入室検知センサ402は、トイレ室への使用者の入室を検知できればよい。着座検知センサ404は、便座200への使用者の着座を検知できればよい。例えば、入室検知センサ402を別体としてトイレ室の入り口に取り付け、トイレ室への使用者の入室を赤外線通信によってケーシング400内の本体制御部410(図3参照)に伝達する方法でもよい。
【0030】
便座200は、図2(b)に表したように、便座200の外形を形成する筐体210を有する。筐体210は、例えば樹脂などの絶縁性を有する材料により形成されている。なお、筐体210は、複数の部材により形成されていてもよいし、1つの部材により形成されていてもよい。
【0031】
便座200の筐体210の内部には、高周波電流が通電されることにより磁界を発生する誘導加熱コイル222が設けられている。図2に表した便座200では、誘導加熱コイル222は、便座200の内部の上面(着座面に対向する内面)210aに付設されていている。但し、誘導加熱コイル222の設置形態は、これだけに限定されず、誘導加熱コイル222は、便座200の内部に設けられた図示しない支持体により支持されていてもよい。
【0032】
便座200には、誘導加熱コイル222から発生した磁界により誘導加熱される導電体(発熱部)231が設けられている。より具体的には、導電体231は、誘導加熱コイル222から発生する磁界で誘起される渦電流により発熱する。導電体231は、便座200の上面(着座面)に付設されている。あるいは、導電体231は、便座200の筐体210の内部に設けられていてもよい。あるいは、導電体231は、便座200の内部の上面210aに付設されていてもよい。
【0033】
導電体231としては、例えば鉄やステンレスなどの強磁性体、またはアルミニウムなどの常磁性体といった金属を用いることができる。便座200の外部に磁界を放出させにくくするためには、電気抵抗が大きい鉄やステンレスなどの強磁性体を導電体231に用いることがより好ましい。なお、導電体231が便座200の上面に設けられる場合には、人体と導電体231とが直接的に接触しないように、塗装やコーティングなどが導電体231の表面に施されることがより好ましい。
【0034】
本実施形態によれば、暖房便座装置100は、誘導加熱の原理を利用し、便座200の着座面を急速に加熱することができ、より速く着座面を適温にすることができる。また、本実施形態にかかる暖房便座装置100は、便座200の着座面を急速に加熱することができるため、使用者が便座200を使用していないときには便座200を保温しておく必要はない。そのため、待機時の消費電力を抑え、省エネルギー化を図ることができる。
【0035】
また、使用者が便座200に着座した後すなわち便座200に着座しているときには、便座200の着座面を適温に保温する必要がある。本実施形態によれば、暖房便座装置100は、急速加熱および保温加熱を誘導加熱により実行する。つまり、本実施形態にかかる暖房便座装置100は、便座200の着座面の温度を連続的に上昇させるように誘導加熱を行う急速加熱モードと、便座200の着座面の温度を所定温度内に保つように誘導加熱を行う保温加熱モードと、を実行することができる。これにより、本実施形態にかかる暖房便座装置100は、より簡易的な構造で急速加熱と保温加熱とを実現することができる。
【0036】
誘導加熱の指示は、ケーシング400の内部に設けられた本体制御部410より行われる。ここで、例えば本体制御部410や指示系統などに故障が生じた場合には、誘導加熱が異常となった際に誘導加熱を停止させようとしても停止できない場合がある。この場合には、使用者が便座200に着座しているときに、急速加熱モードが実行されるおそれがある。これに対して、本実施形態にかかる暖房便座装置100は、誘導加熱が異常となった際には、本体制御部410からの指示にかかわらず便座200の内部に設けられた第2の電源装置515(図3参照)を遮断する。第2の電源装置515は、例えば高周波電源回路500(図3参照)などを駆動する駆動電圧(電源電圧)を生成し供給する。
【0037】
第2の電源装置515を遮断すると、本体制御部410からの指示にかかわらず、例えば高周波電源回路500などを駆動する駆動電圧の供給が停止する。駆動電圧の供給が停止すると、高周波電源回路500の駆動が停止する。そうすると、誘導加熱の通電が遮断される。これにより、例えば本体制御部410や指示系統などに故障が生じた場合でも、急速加熱の実行を停止させることができ、安全性をより高めることができる。
【0038】
次に、第2の電源装置515を遮断する動作について、図面を参照しつつ説明する。
図3は、本実施形態にかかる暖房便座装置の回路図である。
【0039】
ケーシング400の内部には、本体制御部410と、第1の電源装置420と、入室検知センサ402と、着座検知センサ404と、便蓋開閉検知センサ406と、異常表示部408と、が設けられている。入室検知センサ402と、着座検知センサ404と、便蓋開閉検知センサ406と、は、図1に関して前述した如くである。
【0040】
第1の電源装置420は、商用電源10と接続され、本体制御部410を駆動する電源電圧を供給する。異常表示部408は、例えば誘導加熱が異常となった際に、本体制御部410の指示に基づいて異常表示を行う。
【0041】
便座200の内部には、高周波電流を生成し誘導加熱コイル222にその高周波電流を供給する高周波電源回路500が設けられている。高周波電源回路500は、整流部510と、第2の電源装置515と、降圧部520と、平滑部530と、共振回路540と、インバータ550と、を有する。
【0042】
整流部510は、商用電源10から供給される電流を整流する。
降圧部520は、チョッパ式の降圧回路であり、第2のスイッチング素子521と、ダイオード522と、ゲートドライバ523と、平滑部530と、を有し、整流部510の整流出力を降圧してインバータ550に供給する。
【0043】
第2の電源装置515は、降圧部520のゲートドライバ523を駆動する駆動電圧V2を生成し、ゲートドライバ523に供給する。また、第2の電源装置515は、後述する発振制御部257を駆動する駆動電圧V3を生成し、発振制御部257に供給する。後述する異常温度検出回路部610と、過電圧検出部620と、過消費電力検出部630と、ラッチ作動部643と、を駆動する駆動電圧V5は、発振制御部257を駆動する駆動電圧V3をレギュレータ645により適宜降圧して供給される。
【0044】
平滑部530における平滑コイル531と平滑コンデンサ533とは、チョッパ式降圧回路の一部として機能するだけではない。平滑コンデンサ533は、インバータ550に流れる高周波大電流を平滑して供給する役割も果たす。平滑コイル531は、高周波に対して高インピーダンスとなって、商用電源10側へノイズが伝達することを防止する役割も果たす。なお、降圧機能と平滑機能とでコイルとコンデンサとを兼用せず、それぞれにコイルとコンデンサとの組み合わせを持ち直列に接続してもよい。
【0045】
共振回路540は、誘導加熱コイル222と、共振コンデンサ541と、を有する。インバータ550は、第1のスイッチング素子551を有し、共振回路540に供給する電力を制御する。第1のスイッチング素子551には、例えば絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(Insulated Gate Bipolar Transistor:IGBT)が用いられる。
【0046】
また、便座200の内部には、異常温度検出回路部610と、過電圧検出部620と、過消費電力検出部630と、ラッチ作動部643と、急速/保温判別部251と、発振制御部257と、が設けられている。
【0047】
本体制御部410は、カプラ253を介して急速/保温判別部251へ出力指示(加熱指示)の制御信号を送信する。急速/保温判別部251は、本体制御部410から送信された制御信号に基づいて急速加熱モードおよび保温加熱モードについての制御信号を発振制御部257へ送信する。発振制御部257は、急速/保温判別部251から送信された制御信号に基づいて第1のスイッチング素子551のオン/オフを制御する。
【0048】
また、本体制御部410は、カプラ253を介して降圧部520のゲートドライバ523へ制御信号を送信する。ゲートドライバ523は、カプラ253を介して本体制御部410から送信された制御信号に基づいて第2のスイッチング素子521のオン/オフを制御する。第2のスイッチング素子521は、ゲートドライバ523から出力された信号に基づいて整流部510の整流出力を降圧するか否かを切り替える。
【0049】
前述したように、発振制御部257は、本体制御部410から送信された制御信号に基づいて第1のスイッチング素子551のオン/オフを制御する。つまり、本体制御部410は、加熱指示を出し、発振制御部257を介して第1のスイッチング素子551のオン/オフを制御する。本体制御部410は、誘導加熱のオン/オフの動作指示を行うだけであり、第1のスイッチング素子521の直接のオン/オフ制御を行うのは、発振制御部257である。発振制御部257の動作は、次のようになる。
【0050】
まず、発振制御部257が第1のスイッチング素子551をオン状態に制御すると、商用電源10から供給された電流は、整流部510により整流され、平滑部530により平滑化され、誘導加熱コイル222に流れる。保温加熱モードが実行される場合には、整流部510の整流出力は、降圧部520の第2のスイッチング素子521のスイッチング制御により適宜降圧される。
【0051】
降圧動作は、降圧部520においてフィードフォワード制御により行われる。但し、これだけに限定されず、降圧動作は、フィードバック制御により行われてもよい。降圧動作が降圧部520においてフィードフォワード制御により行われる場合には、例えば想定以上の大電流が流れるように高周波電源回路500が動作し、平滑コンデンサ533の電圧が異常に低下したときでも、降圧部520の入力側の電圧で降圧制御する。そのため、降圧部520の出力を上げてさらに大電流を流そうとする動作に入ることがない。そのため、安全性をより高めることができる。一方、降圧動作がフィードバック制御により行われる場合には、例えば商用電源10の電圧が変動したときでも、出力の変動を抑えより安定化させることができる。
【0052】
電流が誘導加熱コイル222に流れると、誘導加熱コイル222に磁気エネルギーが溜まる。続いて、発振制御部257が第1のスイッチング素子551をオフ状態に制御すると、商用電源10からは電流が供給されない一方で、誘導加熱コイル222に溜められた磁気エネルギーが共振コンデンサ541へ静電エネルギーとして移動する。その後、再び共振コンデンサ541から誘導加熱コイル222へエネルギーが戻り、共振する。
【0053】
この共振動作の途中で、発振制御部257によって第1のスイッチング素子551が再びオン状態に制御されると、誘導加熱コイル222に磁気エネルギーが補充され、前述の動作を繰り返して共振が継続する。
【0054】
このように、発振制御部257が第1のスイッチング素子551のオン状態とオフ状態とを切り替え制御することにより、誘導加熱コイル222および共振コンデンサ541において共振が発生し、高周波電流が生成される。高周波電流は、誘導加熱コイル222へ供給される。誘導加熱コイル222は、供給された高周波電流によって高周波磁界を発生する。この高周波磁界によって導電体231に渦電流が発生し、導電体231が発熱する。以上の動作により、便座200の着座面を加熱することができる。
【0055】
例えば、入室検知センサ402が使用者の入室を検知すると、本体制御部410は、誘導加熱コイル222への通電を制御し便座200を急速に加熱することができる。そのため、使用者が便座200に座った際に冷たさを感じさせないような適温にすることができる。
【0056】
本体制御部410は、急速加熱モードを実行する場合には、第2のスイッチング素子521を連続的にオン状態に制御する。これにより、急速加熱モードでは、整流部510の整流出力は、降圧部520において降圧されずにインバータ550に供給される。つまり、整流後の商用電源10と、誘導加熱コイル222と、が直結した状態となる。本体制御部410は、便座200の着座面の温度を連続的に上昇させ急速に加熱することができる。
【0057】
続いて、使用者が便座200を使用すると、あるいは便座200を使用しようとすると、本体制御部410は、保温加熱の指示を出して第1のスイッチング素子551のオン/オフを制御し、便座200の着座面の温度を所定温度内に保温する。
【0058】
本体制御部410は、保温加熱モードを実行する場合には、第2のスイッチング素子521のスイッチング制御の指示を行う。そして、本体制御部410は、整流部510の整流出力を降圧部520により急速加熱モードにおける整流出力よりも充分に降圧させる。つまり、整流部510の整流出力は、降圧部520において急速加熱モードにおける整流出力よりも充分に降圧されインバータ550に供給される。
【0059】
整流部510の整流出力が降圧部520により充分に降圧されるため、誘導加熱コイル222に流れるコイル電流は、急速加熱モードにおけるコイル電流よりも小さい。つまり、保温加熱モードにおけるコイル電流の振動振幅は、急速加熱モードにおけるコイル電流の振動振幅よりも小さい。そのため、保温加熱モードにおける共振電圧の共振振幅は、急速加熱モードにおける共振電圧の共振振幅よりも小さくなる。また、保温加熱モードにおける共振エネルギーは、急速加熱モードにおける共振エネルギーよりも小さくなる。なお、共振電圧は、第1のスイッチング素子551の両端にかかる電圧である。
【0060】
これにより、本体制御部410は、共振動作を変更することなく、整流部510の整流出力を降圧部520により充分に降圧させることで保温加熱モードにおける誘導加熱出力を急速加熱モードにおける誘導加熱出力よりも抑えることができる。そのため、本体制御部410は、電力消費量を急速加熱モードにおける電力消費量よりも低くし、便座200の着座面の温度を所定温度内に保温することができる。
【0061】
しかしながら、例えば本体制御部410や指示系統や第1のスイッチング素子551や第2のスイッチング素子521などに故障が生じた場合には、誘導加熱が異常となった際に本体制御部410が誘導加熱を停止させようとしても停止できない場合がある。この場合には、使用者が便座200に着座しているときに、急速加熱モードが実行されるおそれがある。
【0062】
これに対して、本実施形態にかかる暖房便座装置100の便座200の内部には、異常温度検出回路部610と、過電圧検出部620と、過消費電力検出部630と、ラッチ作動部643と、が設けられている。
【0063】
異常温度検出回路部610には、導電体231の温度を検知するサーミスタ(温度センサ)605が接続されている。異常温度検出回路部610は、サーミスタ605により導電体231の温度を直接的または間接的に検出する。異常温度検出回路部610は、サーミスタ605が検知した導電体231の温度に基づいた電圧と、所定の閾値の温度に基づいた基準電圧と、をコンパレータ611で比較し、比較結果(信号)をオア回路641へ出力する。
【0064】
ラッチ作動部643は、オア回路641を介して異常温度検出回路部610から出力された信号に基づいて、スルー状態とラッチ状態とを切り替える。そして、サーミスタ605が検知した導電体231の温度が所定の閾値の温度よりも高い場合には、ラッチ作動部643は、第2の電源装置515を停止(遮断)する信号を出力する。これにより、第2の電源装置515の内部に設けられた発振スイッチング素子515aの発振が停止する。そのため、本体制御部410からの指示にかかわらず、第2の電源装置515が遮断される。
【0065】
あるいは、過電圧検出部620は、平滑コイル531と誘導加熱コイル222との間における電圧V7をGND(グランド)を基準として検知する。つまり、過電圧検出部620は、インバータ550に供給する電圧V7を検知する。そして、過電圧検出部620は、電圧V7に基づいた電圧と、急速加熱モードおよび保温加熱モードにおいてそれぞれ予め設定された電圧に基づいた基準電圧と、をコンパレータ623で比較し、比較結果(信号)をオア回路641へ出力する。
【0066】
急速加熱モードにおいて予め設定された電圧に基づいた基準電圧と、保温加熱モードにおいて予め設定された電圧に基づいた基準電圧と、の切り替えは、過電圧検出部620に設けられた基準電圧切替部621により行われる。基準電圧切替部621は、急速/保温判別部251と接続され、急速/保温判別部251から出力された信号に基づいて、急速加熱モードにおいて予め設定された電圧に基づいた基準電圧と、保温加熱モードにおいて予め設定された電圧に基づいた基準電圧と、を切り替えてコンパレータ623へ出力する。
【0067】
ラッチ作動部643は、オア回路641を介して過電圧検出部620から出力された信号に基づいて、スルー状態とラッチ状態とを切り替える。そして、平滑コイル531と誘導加熱コイル222との間における電圧V7が所定の閾値の電圧よりも高い場合には、ラッチ作動部643は、第2の電源装置515を停止(遮断)する信号を出力する。これにより、第2の電源装置515の内部に設けられた発振スイッチング素子515aの発振が停止する。そのため、本体制御部410からの指示にかかわらず、第2の電源装置515が遮断される。
【0068】
あるいは、過消費電力検出部630には、カレントトランス607が接続されている。過消費電力検出部630は、カレントトランス607が測定した高周波電源回路500への通電電流と、商用電源10の電圧と、を掛け算することにより便座200に設けられた導電体231の電力消費量を間接的に検知する。そして、過消費電力検出部630は、カレントトランス607が測定した通電電流に基づいた消費電力と、急速加熱モードおよび保温加熱モードにおいてそれぞれ予め設定された電流に基づいた基準消費電圧と、を比較し、比較結果(信号)をオア回路641へ出力する。
【0069】
急速加熱モードにおいて予め設定された電流に基づいた基準消費電圧と、保温加熱モードにおいて予め設定された電流に基づいた基準消費電圧と、の切り替えは、例えば過電圧検出部620について前述した切り替えと同様にして行われる。
【0070】
ラッチ作動部643は、オア回路641を介して過消費電力検出部630から出力された信号に基づいて、スルー状態とラッチ状態とを切り替える。そして、導電体231の電力消費量が所定の閾値の電力消費量よりも高い場合には、ラッチ作動部643は、第2の電源装置515を停止(遮断)する信号を出力する。これにより、第2の電源装置515の内部に設けられた発振スイッチング素子515aの発振が停止する。そのため、本体制御部410からの指示にかかわらず、第2の電源装置515が遮断される。
【0071】
第2の電源装置515が遮断されると、ゲートドライバ523および発振制御部257を駆動する駆動電圧V2、V3の供給が停止する。そうすると、ゲートドライバ523および発振制御部257は、駆動できなくなる。そのため、高周波電源回路500の駆動が停止し、誘導加熱の通電(共振回路540への通電)が遮断される。これにより、例えば本体制御部410や指示系統や第1のスイッチング素子551や第2のスイッチング素子521などに故障が生じた場合でも、急速加熱の実行を停止させることができ、安全性をより高めることができる。
【0072】
また、本実施形態によれば、誘導加熱が異常となった際に、第2の電源装置515が遮断される一方で、第1の電源装置420が遮断されるわけではない。そのため、本体制御部410は、故障していない場合には、第1の電源装置420から供給される電源電圧により駆動できる。例えば、本体制御部410は、誘導加熱の異常を表示する指示を異常表示部408に出すことができる。あるいは、本体制御部410は、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)に格納された異常情報履歴などのデータを読み取ることができる。これによれば、例えば異常箇所や異常発生回数などを特定することができる。
【0073】
また、異常温度検出回路部610と、過電圧検出部620と、過消費電力検出部630と、ラッチ作動部643と、を駆動する駆動電圧V5の系統は、第2の電源装置515の系統から独立し、第1の電源装置420の系統と同一であってもよい。これによれば、第1の電源装置420が遮断されるわけではないため、駆動電圧V5は、第1の電源装置420から供給可能である。そのため、第2の電源装置515の停止信号がラッチ作動部643から出力されて駆動電圧V2、V3、V4が低下した後でも、第2の電源装置515を確実に遮断することができる。これについては、バックアップコンデンサ647に関して後に詳述する。
【0074】
次に、本実施形態にかかる暖房便座装置100の動作の具体例について、図面を参照しつつ説明する。
図4は、本実施形態にかかる暖房便座装置の動作の具体例を表すタイミングチャートである。
また、図5は、本実施形態のサーミスタの抵抗値と温度との関係を表すグラフである。
【0075】
本具体例は、異常温度検出回路部610が導電体231の温度異常を検出した場合の動作である。
図5に表したように、サーミスタ605の抵抗値と温度との関係は、反比例の関係にある。つまり、導電体231の温度が上昇し、サーミスタ605の温度が上昇すると、サーミスタ605の抵抗値は低下する。そのため、図4(a)に表したように、導電体231の温度が上昇すると、導電体231の温度に基づいた電圧(サーミスタ605に接続された信号線の電圧)V10(図3参照)が上昇する。そして、導電体231の温度に基づいた電圧V10が所定の閾値の温度に基づいた基準電圧V20(図3参照)よりも高くなると、図4(b)に表したように、コンパレータ611の出力電圧V30(図3参照)が反転する。
【0076】
コンパレータ611の出力電圧が反転すると、図4(c)に表したように、ラッチ作動部643の出力電圧V40(図3参照)が「L(LOW:ロー)」から「H(HIGH:ハイ)」へ切り替わる。本願明細書において、ラッチ作動部643の出力電圧V40が「L(LOW:ロー)」であるとは、ラッチ作動部643が第2の電源装置515を停止する信号を出力していないことを意味するものとする。一方、ラッチ作動部643の出力電圧V40が「H(HIGH:ハイ)」であるとは、ラッチ作動部643が第2の電源装置515を停止する信号を出力していることを意味するものとする。
【0077】
ラッチ作動部643の出力電圧V40が「H」になると、図4(d)に表したように、発振スイッチング素子515aの発振が停止する。そうすると、図4(e)に表したように、降圧部520のゲートドライバ523を駆動する駆動電圧V2が低下し始める。また、発振制御部257を駆動する駆動電圧V3、V4が低下し始める。そして、図4(f)に表したように、駆動電圧V2、V3、V4の低下が終了した後に、異常温度検出回路部610と、過電圧検出部620と、過消費電力検出部630と、ラッチ作動部643と、を駆動する駆動電圧V5が低下し始める。
【0078】
第2の電源装置515が遮断され、駆動電圧V2、V3、V4が低下して供給されなくなると、ゲートドライバ523および発振制御部257は、駆動できなくなる。そうすると、高周波電源回路500の駆動が停止し、誘導加熱の通電が遮断される。これにより、例えば本体制御部410や指示系統や第1のスイッチング素子551や第2のスイッチング素子521などに故障が生じた場合でも、急速加熱の実行を停止させることができ、安全性をより高めることができる。
【0079】
また、本具体例では、図4(e)および図4(f)に表したように、駆動電圧V5は、駆動電圧V2、V3、V4の低下が終了した後に低下し始める。つまり、駆動電圧V5は、低下の応答性に対して時定数Tを有する。そのため、異常温度検出回路部610と、過電圧検出部620と、過消費電力検出部630と、ラッチ作動部643と、は、第2の電源装置515が遮断されて駆動電圧V2、V3、V4の供給が停止した後でも時定数(所定時間)Tの間だけ駆動することができる。これは、図3に表したバックアップコンデンサ(バックアップ電源)647と整流ダイオード648により実現することができる。駆動電圧V5の低下の応答性に対する時定数Tは、第2の電源装置515の出力電圧(駆動電圧V2、V3、V4)の低下の開始から終了までの時間よりも長い。整流ダイオード648は、定常動作時において、V4系統に繋がる負荷(図3では省略)への供給電流源がバックアップコンデンサ647とならないように縁切りを目的として配置されている。
【0080】
バックアップコンデンサ647が設けられていない場合には、異常温度検出回路部610が導電体231の温度異常を検出し、ラッチ作動部643を介して第2の電源装置515を遮断すると、異常温度検出回路部610自身の駆動電圧V5がすぐに低下する。そうすると、第2の電源装置515の出力電圧が意図する電圧以下まで低下し、完全に第2の電源装置515の遮断が終了する前に、第2の電源装置515を遮断させるための異常温度検出回路部610が駆動できなくなるおそれがある。そのため、第2の電源装置515を確実には遮断できないおそれがある。
【0081】
これに対して、本実施形態にかかる暖房便座装置100は、バックアップコンデンサ647を有する。バックアップコンデンサ647は、第2の電源装置515が遮断されて駆動電圧V2、V3、V4の供給が停止した後でも時定数Tの間だけ駆動電圧V5を供給することができる。そのため、異常温度検出回路部610は、第2の電源装置515が遮断されて駆動電圧V2、V3の供給が停止した後でも時定数Tの間だけ駆動することができる。また、時定数Tは、第2の電源装置515の出力電圧(駆動電圧V2、V3及び、レギュレータ出力電圧V4)の低下の開始から終了までの時間よりも長い。これにより、異常温度検出回路部610は、ラッチ作動部643を介して第2の電源装置515を確実に遮断することができる。これは、過電圧検出部620および過消費電力検出部630の少なくともいずれかが、第2の電源装置515を遮断する場合についても同様である。
【0082】
なお、バックアップコンデンサ647が設けられた場合には、第1の電源装置420は、異常温度検出回路部610に駆動電圧V5を供給する必要がない。そのため、ケーシング400と便座200とを接続するコードを少なくすることができる。
【0083】
本具体例では、異常温度検出回路部610が導電体231の温度異常を検出した場合を例に挙げて説明した。本具体例の動作は、過電圧検出部620が電圧異常を検出した場合、および過消費電力検出部630が消費電力異常を検出した場合においても同様である。つまり、電圧V7(図3参照)が所定の閾値の電圧よりも高くなると(図4(a)に相当)、コンパレータ623の出力電圧が反転し(図4(b)に相当)、ラッチ作動部643の出力電圧V40が「L」から「H」へ切り替わる(図4(c)に相当)。あるいは、導電体231の電力消費量が所定の閾値の電力消費量よりも高くなると(図4(a)に相当)、ラッチ作動部643の出力電圧V40が「L」から「H」へ切り替わる(図4(c)に相当)。
【0084】
次に、図4および図5に関して前述した動作の具体例について、図面を参照しつつさらに説明する。
図6は、本実施形態にかかる暖房便座装置の動作の具体例を表すフローチャートである。
【0085】
まず、動作がスタートし(ステップS101)、異常温度検出回路部610が、導電体231の温度異常を検出すると(ステップS103)、ラッチ作動部643へ異常信号を出力する(ステップS105)。そうすると、ラッチ作動部643は、第2の電源装置515を停止(遮断)する信号を出力する(ステップS107)。このとき、本体制御部410が所定の信号を出力しない限り、ラッチ作動部643は、第2の電源装置515を停止する信号を出力し続ける。
【0086】
ラッチ作動部643が第2の電源装置515の停止信号を出力すると、第2の電源装置515は、停止(ラッチ)する(ステップS109)。そうすると、誘導加熱コイル222への通電が停止する(ステップS111)。続いて、商用電源10が再投入されると(ステップS113)、第2の電源装置515は、復帰する(ステップS115)。そして、高周波電源回路500は、待機状態となる(ステップS115)。
【0087】
言い換えれば、第2の電源装置515は、ラッチ作動部643から出力された停止信号により停止した後には、商用電源10の電圧の印加を一旦遮断し再び印加しない限り復帰しない。これによれば、本体制御部410からの指示にかかわらず、使用者が意図的にリセット動作(商用電源10の再投入動作)を行わない限り、誘導加熱の動作を確実に停止状態に保持することができる。
【0088】
以上、本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明はこれらの記述に限定されるものではない。前述の実施の形態に関して、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。例えば、便座200および便蓋300などが備える各要素の形状、寸法、材質、配置などや、異常温度検出回路部610および過電圧検出部620の回路構成及び、第2の電源装置515を確実に遮断させるために設けた異常温度検出回路部610、過電圧検出部620及び過消費電力検出部630のバックアップ電源の構成手段などは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。
また、前述した各実施の形態が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。
【符号の説明】
【0089】
10 商用電源、 100 暖房便座装置、 200 便座、 210 筐体、 210a 上面、 222 誘導加熱コイル、 231 導電体、 251 急速/保温判別部、 253 カプラ、 257 発振制御部、 300 便蓋、 400 ケーシング、 402 入室検知センサ、 404 着座検知センサ、 406 便蓋開閉検知センサ、 408 異常表示部、 410 本体制御部、 420 第1の電源装置、 500 高周波電源回路、 510 整流部、 515 第2の電源装置、 515a 発振スイッチング素子、 520 降圧部、 521 第2のスイッチング素子、 522 ダイオード、 523 ゲートドライバ、 530 平滑部、 531 平滑コイル、 533 平滑コンデンサ、 540 共振回路、 541 共振コンデンサ、 550 インバータ、 551 第1のスイッチング素子、 605 サーミスタ、 607 カレントトランス、 610 異常温度検出回路部、 611 コンパレータ、 620 過電圧検出部、 621 基準電圧切替部、 623 コンパレータ、 630 過消費電力検出部、 641 オア回路、 643 ラッチ作動部、 645 レギュレータ、 647 バックアップコンデンサ、 648 整流ダイオード、 800 洋式腰掛便器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘導加熱コイルと共振コンデンサとを有する共振回路と、
前記誘導加熱コイルが発生した磁界により誘導加熱される導電体と、
前記導電体が設けられた便座と、
第1のスイッチング素子を有し前記共振回路に供給する電力を制御するインバータと、
商用電源から供給される電流を整流する整流部と、
第2のスイッチング素子を有し前記整流部の整流出力を降圧して前記インバータに供給する降圧部と、
前記便座の開閉を支持し、商用電力が投入されるケーシングと、
前記ケーシングの内部に設けられ、前記第2のスイッチング素子のスイッチングを制御することにより前記整流出力の降圧量を切り替えて前記インバータに供給し前記便座の誘導加熱を実行する本体制御部と、
前記ケーシングの内部に設けられ、前記商用電源と接続されて前記本体制御部を駆動する電源電圧を供給する第1の電源装置と、
前記便座の内部に設けられ、前記降圧部を駆動する駆動電圧を生成する第2の電源装置と、
を備え、
前記第2の電源装置から前記降圧部へ供給する前記駆動電圧を停止することで、前記本体制御部からの指示にかかわらず前記共振回路への通電を停止可能としたことを特徴とする暖房便座装置。
【請求項2】
前記インバータに供給する電圧を検出する過電圧検出部と、
前記導電体の温度を直接的または間接的に検出する異常温度検出回路部と、
前記導電体の電力消費量を間接的に検出する過消費電力検出部と、
をさらに備え、
前記過電圧検出部が検出した電圧が所定の閾値の電圧よりも高い場合、および前記異常温度検出回路部が前記導電体の過熱異常を検出した場合、および前記過消費電力検出部が前記電力消費量の異常を検出した場合の少なくともいずれかにおいて、前記本体制御部からの指示にかかわらず、前記第2の電源装置が遮断されることを特徴とする請求項1記載の暖房便座装置。
【請求項3】
前記第2の電源装置は、前記遮断された後には、前記商用電源の電圧の印加が一旦遮断され再び印加されると復帰することを特徴とする請求項2記載の暖房便座装置。
【請求項4】
前記第2の電源装置が前記遮断された後にも前記異常温度検出回路部を所定時間駆動可能とするバックアップ電源をさらに備えたことを特徴とする請求項2または3に記載の暖房便座装置。
【請求項5】
前記過電圧検出部と、前記異常温度検出回路部と、前記過消費電力検出部と、を駆動する駆動電圧の系統は、前記第2の電源装置の系統から独立し、前記第1の電源装置の系統と同一であることを特徴とする請求項2〜4のいずれか1つに記載の暖房便座装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2012−205687(P2012−205687A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−72562(P2011−72562)
【出願日】平成23年3月29日(2011.3.29)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】