説明

暖房便座装置

【課題】見栄えを低下させることなく、薄肉化された樹脂製の上板と底板とを接合可能な暖房便座装置を提供することを目的とする。
【解決手段】樹脂により形成され、人が着座する着座面を有する便座上板と、樹脂により形成され、前記便座上板と接合され便座の底面を形成する便座底板と、前記便座上板と前記便座底板との間に形成された空洞部に配設された加熱手段と、前記空洞部において前記便座上板に取り付けられた固定用部材と、前記便座底板と前記固定用部材とを連結する連結具と、を備えたことを特徴とする暖房便座装置が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の態様は、便器に設けられる便座を暖めることができる暖房便座装置に関する。
【背景技術】
【0002】
暖房便座は、例えば互いに接合された上板および底板を備える。そして、例えば上板と底板との間には空洞部が形成され、便座を暖めるヒータがその空洞部に設けられている。このような便座として、便座表面板または便座裏板をその周縁部において相互に当接して組み立て、便座表面板と便座裏板とにより中空箱板を構成するとともに、組立状態で便座表面板の内面に微少間隙をもって対向する複数の突起部を便座裏板の内表面に設けた便座ユニットがある(特許文献1)。さらに、特許文献1の便座ユニットでは、便座表面板の内面方向にねじボスを延出し、ねじボスと便座裏板のねじ穴により便座表面板と便座裏板をねじ締結している。
【0003】
特許文献1に記載された便座ユニットによれば、便座表面板と便座裏板はねじ結合により一体に結合されるため、組立分解が容易で、特殊な結合装置も不要で、かつ、結合後の分解サービスメンテナンスも容易に行える。また、ネジを脚座部に収納し、脚で覆うことによりねじが外部に露出せず、見栄えの向上と不用意に分解される危険を少なくすることが出来る。
【0004】
また、例えば上部部材の裏面に貼付したヒータの便座表面への熱伝導効率を向上させることを目的に、上部部材の肉厚を薄くすることが可能な暖房便座装置がある(特許文献2)。特許文献2に記載の暖房便座装置では、上部部材下面に所定のクリアランスを有して相対する複数の凸部を有する中間部材が設けられている。特許文献2に記載された暖房便座装置によれば、表面温度の昇温速度が短縮できるため、即暖効果に優れた便座を実現することが可能となる。即暖効果に優れた便座は使用直前まで通電しないため、非常に効果的な省エネルギー達成手段である。
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載された便座表面板を薄肉化した場合において、その便座表面板を射出成形すると、ねじボスとは反対側の面にヒケ(窪み)が生ずるおそれがある。そうすると、便座の見栄えが悪くなるという問題がある。また、特許文献1に記載された便座ユニットをプレス成形により製造することは困難である。
【0006】
また、特許文献2に記載された暖房便座装置では、上部部材下面に所定のクリアランスを有して相対する複数の凸部を有する中間部材が設けられているため、上部部材の肉厚を薄くした場合には、座り心地の向上という点においては改善の余地がある。つまり、上部部材の肉厚が薄いため、使用者が便座に着座すると、凸部に当たる感覚が生ずる場合がある。これにより、座り心地が低下する場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平10−276934号公報
【特許文献2】特開2005−152395号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、かかる課題の認識に基づいてなされたものであり、見栄えを低下させることなく、薄肉化された樹脂製の上板と底板とを接合可能な暖房便座装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の発明は、樹脂により形成され、人が着座する着座面を有する便座上板と、樹脂により形成され、前記便座上板と接合され便座の底面を形成する便座底板と、前記便座上板と前記便座底板との間に形成された空洞部に配設された加熱手段と、前記空洞部において前記便座上板に取り付けられた固定用部材と、前記便座底板と前記固定用部材とを連結する連結具と、を備えたことを特徴とする暖房便座装置である。
【0010】
この暖房便座装置によれば、便座上板と便座底板とは、便座上板に取り付けられた固定用部材と便座底板とが連結することにより互いに接合している。そのため、便座上板は、着座面に対向する面(着座面の裏面)から便座底板の側へ延在する接合用のボスを有していなくともよい。そのため、便座上板が射出成形およびプレス成形のいずれかにより製造された場合でも、ヒケが着座面に生ずることを抑えることができる。これにより、便座の見栄えを低下させることなく、薄肉化された樹脂製の便座上板と便座底板とを接合することができる。
【0011】
また、第2の発明は、樹脂により形成され、人が着座する着座面を有する便座上板と、樹脂により形成され、前記便座上板と接合され便座の底面を形成する便座底板と、前記便座上板と前記便座底板との間に形成された空洞部に配設された加熱手段と、前記空洞部において前記便座上板に取り付けられた固定用部材と、前記便座底板と前記固定用部材とを連結する連結具と、を備え、前記便座上板の内周縁および外周縁と、前記便座底板の内周縁および外周縁と、に、互いにそれぞれ係合することにより前記便座底板と前記便座上板とが前記接合される係合部が設けられたことを特徴とする暖房便座装置である。
【0012】
この暖房便座装置によれば、便座上板と便座底板とは、係合部において係合した状態で、便座上板に取り付けられた固定用部材と便座底板とが連結することにより互いに接合している。そのため、使用者が便座に着座した際に、便座上板と便座底板との係合が外れたとしても、便座上板が着座の荷重によって広がりすぎてクラックが入るなど破損するのを防ぐことができる。さらに、便座上板は、着座面に対向する面(着座面の裏面)から便座底板の側へ延在する接合用のボスを有していなくともよい。そのため、便座上板が射出成形およびプレス成形のいずれかにより製造された場合でも、ヒケが着座面に生ずることを抑えることができる。これにより、便座の見栄えを低下させることなく、薄肉化された樹脂製の便座上板と便座底板とを接合することができる。
【0013】
また、第3の発明は、第1または第2の発明において、前記便座上板は、前記着座面の外周側に形成された外側面と、前記着座面の内周側に形成された内側面と、前記外側面および内側面の少なくともいずれかに形成され前記空洞部の側へ肉厚化されたボスと、を有し、前記固定用部材は、締結部材により前記ボスに取り付けられたことを特徴とする暖房便座装置である。
【0014】
この暖房便座装置によれば、固定用部材は、外側面および内側面の少なくともいずれかに形成され空洞部の側へ肉厚化されたボスに締結部材により取り付けられたため、より強固に便座上板に固定されている。そのため、使用者が便座を頻繁に開閉させても、締結部材が緩み、固定用部材が便座上板から外れるおそれは少ない。
【0015】
また、ボスは、外側面および内側面の少なくともいずれかに形成され空洞部の側へ肉厚化されているため、ヒケが着座面に生ずることを抑えることができる。これにより、便座の見栄えを低下させることなく、薄肉化された樹脂製の便座上板と便座底板とを接合することができる。
【0016】
また、第4の発明は、第3の発明において、前記ボスは、前記外側面および内側面にそれぞれ形成され、前記固定用部材は、前記外側面に形成されたボスと、前記内側面に形成されたボスと、にわたって配設されたことを特徴とする暖房便座装置である。
【0017】
この暖房便座装置によれば、固定用部材は、外側面に形成されたボスと、内側面に形成されたボスと、にわたって配設されている。そのため、便座上板が外周側および内周側に広がることを抑えることができる。これにより、便座上板と便座底板との間に隙間が生じにくく、便座の空洞部への水気の浸入を抑えることができる。これにより、加熱手段や便座の温度を検知するサーミスタなどが腐食することを抑えることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の態様によれば、見栄えを低下させることなく、薄肉化された樹脂製の上板と底板とを接合可能な暖房便座装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施の形態にかかる暖房便座装置を備えたトイレ装置を例示する斜視模式図である。
【図2】本実施形態にかかる暖房便座装置の便座を上方から眺めた平面模式図である。
【図3】本実施形態の便座の断面を表す断面模式図である。
【図4】本実施形態の便座の断面を表す断面模式図である。
【図5】本実施形態の便座上板と便座底板との係合部を表す断面模式図である。
【図6】本実施形態の変形例にかかる便座の断面を表す断面模式図である。
【図7】本実施形態の変形例にかかる便座の断面を表す断面模式図である。
【図8】本実施形態の他の変形例にかかる便座の断面を表す断面模式図である。
【図9】本変形例の便座上板と便座底板との係合部を表す断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。なお、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
図1は、本発明の実施の形態にかかる暖房便座装置を備えたトイレ装置を例示する斜視模式図である。
また、図2は、本実施形態にかかる暖房便座装置の便座を上方から眺めた平面模式図である。
【0021】
図1に表したトイレ装置は、洋式腰掛便器800(以下説明の便宜上、単に「便器」と称する)と、その上に設けられた暖房便座装置100と、を備える。暖房便座装置100は、暖房便座機能部400と、便座200と、便蓋300と、を有する。便座200と便蓋300とは、暖房便座機能部400に対して開閉自在にそれぞれ軸支されている。
【0022】
便座200は、図2に表したように、便座200が閉じた状態において便器800と接触し便座200を支持する便座クッション250を有する。便座クッション250は、便座200の下面に付設されている。本実施形態では、便座200の後方部に2つの便座クッション250が設けられ、便座200の前方部に2つの便座クッション250が設けられている。但し、便座クッション250の設置形態は、これだけに限定されるわけではない。例えば、便座クッション250は、便座200の前方部の2箇所に設けられていてもよい。
【0023】
便座200の後方部の便座クッション250の近傍には、固定用部材240が設けられている。固定用部材240は、便座200の内部(空洞部)に設けられている。便座200の内部構造および固定用部材240については、後に詳述する。
【0024】
暖房便座機能部400は、衛生洗浄装置としての機能部を併設してもよい。すなわち、暖房便座機能部400は、便座200に座った使用者の「おしり」などに向けて水を噴出する図示しない吐水ノズルを有する衛生洗浄機能部などを適宜備えてもよい。なお、本願明細書において「水」という場合には、冷水のみならず、加熱されたお湯も含むものとする。
【0025】
また、暖房便座機能部400には、便座200に座った使用者の「おしり」などに向けて温風を吹き付けて乾燥させる「温風乾燥機能」や「脱臭ユニット」や「室内暖房ユニット」などの各種の機構が適宜設けられていてもよい。この際、暖房便座機能部400の側面には、脱臭ユニットからの排気口453及び室内暖房ユニットからの排出口455が適宜設けられる。ただし、本発明においては、衛生洗浄機能部やその他の付加機能部は必ずしも設けなくてもよい。
【0026】
図3および図4は、本実施形態の便座の断面を表す断面模式図である。
なお、図3は、図2に表したA−A切断面における断面模式図である。
また、図4は、図3に表したC−C切断面における断面模式図である。
【0027】
便座200は、図3に表したように、人が着座する着座面221を有する便座上板220と、便座200の底面231を形成する便座底板230と、を有する。便座上板220と便座底板230とは、互いに接合している。便座上板220および便座底板230は、例えば繊維強化プラスチック(FRP:Fiber Reinforced Plastics)やポリプロピレン(PP:polypropylene)等の樹脂により形成されている。
【0028】
便座上板220と便座底板230との間には、図3に表したように、空洞部が形成されている。その空洞部には、加熱手段としてヒータ210が配設されている。つまり、便座200は、ヒータ210を内蔵する。ヒータ210は、通電されて発熱することにより、便座200を暖めることができる。つまり、ヒータ210は、便座上板220の表面に伝えられる熱を発生する。なお、図3に表したヒータ210の設置形態は、これだけに限定されるわけではなく、適宜変更することができる。
【0029】
ヒータ210としては、いわゆる「チュービングヒータ」や、「シーズヒータ」、「ハロゲンヒータ」、「カーボンヒータ」などを用いることができる。また、ヒータ210の形状は、ワイヤ状やシート状やメッシュ状などのいずれであってもよい。
なお、便座上板220と便座底板230との間の空洞部には、便座200の下への放熱を抑制する図示しない断熱材が設けられていてもよい。
【0030】
便座200の後方部の便座クッション250の近傍には、図2に関して前述したように、固定用部材240が設けられている。固定用部材240は、図3に表したように、例えばねじやプッシュナットなどの締結部材291、293により便座上板220に取り付けられている。
【0031】
便座上板220は、図3および図4に表したように、着座面221の外周側に形成された外側面222と、着座面221の内周側に形成された内側面223と、を有する。外側面222および内側面223の少なくともいずれかは、着座面221よりも肉厚になった部分を有する。つまり、便座上板220は、外側面222および内側面223の少なくともいずれかから便座200の内部すなわち空洞部の側へ膨らませたボスを有する。なお、図3および図4に表した便座上板220では、外側面222および内側面223の両側面から便座200の空洞部の側へ膨らませたボス224、225を有する。
【0032】
そして、固定用部材240は、ボス224において締結部材291により便座上板220に取り付けられている。また、固定用部材240は、ボス225において締結部材293により便座上板220に取り付けられている。
【0033】
便座底板230は、図3に表したように、便座底板230の底面231から便座200内部すなわち空洞部の側へ膨らませた突出部233を有する。そして、固定用部材240は、突出部233において連結具295により便座底板230に連結されている。つまり、便座上板220と便座底板230とは、便座上板220に取り付けられた固定用部材240と便座底板230とが連結することにより互いに接合している。
【0034】
便座クッション250は、図3に表したように、突出部233の下方に取り付けられている。そのため、便座クッション250は、連結具295が便座200の外側から見えないように、その連結具295を隠蔽することができる。これにより、便座200の外観が損なわれることを防止することができる。
また、空洞部における便座上板220の表面には、補強層260が付設されている。この補強層260は、ヒータ210による昇温性能を高めるために、従来よりも便座上板220を薄肉化した際に、便座上板220の強度を確保するために便座上板220を下から支えるものである。なお、補強層260は、便座上板220と一体化されてもよい。
【0035】
本実施形態によれば、便座上板220と便座底板230とは、固定用部材240を介して互いに接合しているため、便座上板220は、着座面221に対向する面(着座面221の裏面)から便座底板230の側へ延在する接合用のボスを有していなくともよい。便座200が着座面221に対向する面から便座底板230の側へ延在する接合用のボスを有すると、そのボスとは反対側の面(着座面221)にヒケが生ずるおそれがある。これに対して、本実施形態では、便座上板220は、着座面221に対向する面にはボスを有していない。そして、便座上板220と便座底板230とは、便座上板220に取り付けられた固定用部材240と便座底板230とが連結することにより互いに接合している。そのため、便座上板220が射出成形およびプレス成形のいずれかにより製造された場合でも、ヒケが着座面221に生ずることを抑えることができる。
【0036】
また、本実施形態の便座上板220の厚さは、固定用部材240が設けられていない従来の便座上板の厚さよりも薄い。あるいは、本実施形態の便座上板220の厚さは、着座面221に対向する面から便座底板230の側へ延在する接合用のボスが設けられた従来の便座上板の厚さよりも薄い。あるいは、本実施形態の便座上板220の厚さは、便座底板230の厚さよりも薄い。そうすると、便座上板220の熱容量は、より小さくなるため、便座上板220の昇温性能は、より高くなる。そのため、待機時の便座200の温度をより低く設定し、待機電力を削減することができる。これにより、省エネルギー化を図ることができる。
【0037】
これによれば、便座200の見栄えを低下させることなく、薄肉化された樹脂製の便座上板220と便座底板230とを接合することができる。
また、固定用部材240は、ボス224、225において締結部材291、293により便座上板220にそれぞれ取り付けられているため、強固に便座上板220に固定されている。そのため、使用者が便座200を頻繁に開閉させても、締結部材291、293が緩み、固定用部材240が便座上板220から外れるおそれは少ない。
【0038】
さらに、便座上板220の外側面222と内側面223とは、固定用部材240を介して連結している。つまり、固定用部材240は、外側面222に形成されたボス224と、内側面223に形成されたボス225と、にわたって配設されている。そのため、便座上板220が外周側および内周側に広がることを抑えることができる。これにより、便座上板220と便座底板230との間に隙間が生じにくく、便座200の空洞部への水気の浸入を抑えることができる。これにより、加熱手段や便座200の温度を検知する図示しないサーミスタなどが腐食することを抑えることができる。
【0039】
また、樹脂製の便座上板220が薄肉化された場合において、例えば便座上板220を支持するための複数の凸部が便座底板230に設けられていると、使用者が便座200に着座したときに複数の凸部に当たる感覚を生ずるおそれがある。これにより、便座200への座り心地が低下するおそれがある。これに対して、本実施形態では、便座200の空洞部において便座上板220を支持する複数の凸部は設けられていないため、便座200への座り心地が低下するおそれはない。
【0040】
図5は、本実施形態の便座上板と便座底板との係合部を表す断面模式図である。
なお、図5(a)は、図3に表した領域Dを拡大して眺めた拡大模式図であり、図5(b)は、図3に表した領域Eを拡大して眺めた拡大模式図である。
【0041】
本実施形態の便座上板220は、図5(a)に表したように、外周縁から便座底板230の外周縁の側へ延在した凸部228aを有する。一方、本実施形態の便座底板230は、便座上板220の凸部228aと係合可能な凹部238aを外周縁に有する。そして、便座上板220と便座底板230とが接合した状態において、便座上板220の凸部228aと、便座底板230の凹部238aと、は係合している。つまり、便座200は、着座面221の外周側において係合部270aを有する。
【0042】
便座上板220の凸部228aの先端と、便座底板230の凹部238aの底面と、の間には、図5(a)に表したように、パッキン297が挟設されている。パッキン297は、例えばゴムなどのような弾性を有する材料により形成されている。便座上板220の凸部228aと、便座底板230の凹部238aと、が係合した状態では、パッキン297は、凸部228aと凹部238aとの間に挟まれることにより潰れた状態となっている。そして、パッキン297が潰れた状態で、便座上板220の当て面229aと便座底板230の当て面239aとが接触している。
【0043】
これによれば、便座上板220の当て面229aと便座底板230の当て面239aとが接触しているため、便座200の空洞部への水気の浸入を抑えることができる。また、便座上板220の凸部228aの先端と、便座底板230の凹部238aの底面と、の間には、パッキン297が潰れた状態で挟設されているため、当て面229aと当て面239aとの間から水気が浸入した場合でも、パッキン297は、水気が便座200の空洞部に浸入することをより確実に防止することができる。
【0044】
また、便座上板220と便座底板230とは、係合部270aにおいて係合した状態で、便座上板220に取り付けられた固定用部材240と便座底板230とが連結することにより互いに接合している。そのため、使用者が便座200に着座した際に、便座上板220と便座底板230との係合が外れたとしても、便座上板220が着座の荷重によって広がりすぎてクラックが入るなど破損するのを防ぐことができる。
【0045】
便座200は、外周側における係合部270aと同様に、内周側において係合部270bを有する。つまり、便座上板220は、図5(b)に表したように、内周縁から便座底板230の内周縁の側へ延在した凸部228bを有する。一方、便座底板230は、便座上板220の凸部228bと係合可能な凹部238bを内周縁に有する。そして、便座上板220と便座底板230とが接合した状態において、便座上板220の凸部228bと、便座底板230の凹部238bと、は係合している。
【0046】
また、便座上板220の凸部228bと、便座底板230の凹部238bと、が係合した状態では、パッキン297が潰れた状態で、便座上板220の当て面229bと便座底板230の当て面239bとが接触している。これにより、外周側における係合部270aに関して前述した効果と同様の効果が得られる。
【0047】
次に、便座200の変形例について、図面を参照しつつ説明する。
図6および図7は、本実施形態の変形例にかかる便座の断面を表す断面模式図である。 なお、図6は、図2に表したA−A切断面における断面模式図に相当する。
また、図7は、図6に表したF−F切断面における断面模式図である。
【0048】
本変形例では、図3および図4に関して前述した便座200と同様に、固定用部材240aが締結部材291により便座上板220aに取り付けられている。便座上板220aは、外側面222から便座の空洞部の側へ膨らませたボス224aを有する。ボス224aの外側面222に沿った長さは、図7に表したように、図4に関して前述したボス224の外側面222に沿った長さよりも長い。そして、固定用部材240aは、ボス224aにおいて例えば複数の締結部材291により便座上板220aに取り付けられている。一方、固定用部材240aは、内側面223においては便座上板220aには取り付けられていない。
【0049】
なお、図7に表した変形例では、固定用部材240aは、2つの締結部材291により便座上板220aに取り付けられているが、これだけに限定されるわけではない。固定用部材240aは、3つ以上の締結部材により便座上板220aに取り付けられていてもよい。あるいは、固定用部材240aは、便座200の強度を確保できる限り、1つの締結部材291により便座上板220aに取り付けられてもよい。
【0050】
そして、固定用部材240aは、突出部233において連結具295により便座底板230に連結されている。つまり、便座上板220aと便座底板230とは、便座上板220に取り付けられた固定用部材240aと便座底板230とが連結することにより互いに接合している。その他の構造は、図3および図4に関して前述した便座200の構造と同様である。
【0051】
本変形例によれば、固定用部材240aは、外側面222に形成されたボス224aにおいて便座上板220aに取り付けられ、内側面223においては便座上板220aに取り付けられていない。そのため、固定用部材240aの構造を簡略化することができる。また、本変形例では、便座上板220aは、内側面223に形成されたボス225を有していないため、便座上板220aの構造を簡略化することができる。また、内側面223の全体を均一な肉厚にすることにより、使用者が触れる内側面223をほぼ同じ温度にすることが可能となる。また、図3および図4に関して前述した便座200と同様に、便座200aの見栄えを低下させることなく、薄肉化された樹脂製の便座上板220aと便座底板230とを接合することができる。
【0052】
図8は、本実施形態の他の変形例にかかる便座の断面を表す断面模式図である。
また、図9は、本変形例の便座上板と便座底板との係合部を表す断面模式図である。
なお、図8は、図2に表したB−B切断面における断面模式図に相当する。
また、図9(a)は、図8に表した領域Gを拡大して眺めた拡大模式図であり、図9(b)は、図8に表した領域Hを拡大して眺めた拡大模式図である。
【0053】
本変形例では、便座200cは、内周側および外周側においてそれぞれ係合部270cおよび係合部270dを有する。つまり、便座底板230cの内周側には、図9(a)に表したように、鉤形の形状を有するフック部237cが設けられている。一方、便座上板220cの内周側には、フック部237cと係合可能な凹部227cが設けられている。便座底板230cの外周側には、図9(b)に表したように、鉤形の形状を有するフック部237dが設けられている。一方、便座上板220cの外周側には、フック部237dと係合可能な凹部227dが設けられている。
【0054】
さらに、図5(b)に関して前述した係合部270bと同様に、便座上板220cは、内周縁から便座底板230cの内周縁の側へ延在した凸部228cを有する。一方、便座底板230cは、便座上板220cの凸部228cと係合可能な凹部238cを内周縁に有する。そして、便座上板220cと便座底板230cとが接合した状態において、便座上板220cの凸部228cと、便座底板230の凹部238cと、は係合している。
【0055】
また、便座上板220cの凸部228cと、便座底板230cの凹部238cと、が係合した状態では、パッキン297が潰れた状態で、便座上板220cの当て面229cと便座底板230cの当て面239cとが接触している。
【0056】
図5(a)に関して前述した係合部270aと同様に、便座上板220cは、外周縁から便座底板230cの外周縁の側へ延在した凸部228dを有する。一方、便座底板230cは、便座上板220cの凸部228dと係合可能な凹部238dを外周縁に有する。そして、便座上板220cと便座底板230cとが接合した状態において、便座上板220cの凸部228dと、便座底板230の凹部238dと、は係合している。
【0057】
また、便座上板220cの凸部228dと、便座底板230cの凹部238dと、が係合した状態では、パッキン297が潰れた状態で、便座上板220cの当て面229dと便座底板230cの当て面239dとが接触している。
【0058】
本変形例によれば、便座底板230cのフック部237c、237dと、便座上板220cの凹部227c、227dと、がそれぞれ係合することにより、便座上板220cは、便座底板230cの方向へ押さえ付けられている。そのため、便座上板220cの当て面229c、229dと便座底板230cの当て面239c、239dとをより確実にそれぞれ接触させ、より強力に接触させることができる。これにより、便座200の空洞部への水気の浸入をより確実に抑えることができる。
【0059】
また、本変形例では、便座上板220cの凸部228c、228dと、便座底板230cの凹部238c、238dと、がそれぞれ係合しているだけではなく、便座底板230cのフック部237c、237dと、便座上板220cの凹部227c、227dと、がそれぞれ係合している。そのため、便座上板220cの当て面229c、229dと便座底板230cの当て面239c、239dとのそれぞれの隙間寸法の管理を十分に行うことができる。また、本変形例においても、便座200cの見栄えを低下させることなく、薄肉化された樹脂製の便座上板220cと便座底板230cとを接合することができる。
【0060】
以上説明したように、本実施形態によれば、便座上板220と便座底板230とは、便座上板220に取り付けられた固定用部材240と便座底板230とが連結することにより互いに接合している。そのため、ヒケが便座200の着座面221に生ずることを抑えることができる。これによれば、便座200の見栄えを低下させることなく、薄肉化された樹脂製の便座上板220と便座底板230とを接合することができる。
【0061】
以上、本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明はこれらの記述に限定されるものではない。前述の実施の形態に関して、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。例えば、便座200、200a、200cなどが備える各要素の形状、寸法、材質、配置などや固定用部材240、240aおよびボス224、224a、225の設置形態などは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。例えば、固定用部材240は、便座200の後方部の便座クッション250の近傍だけではなく、便座200の前方部の便座クッション250の近傍に設けられてもよい。
また、前述した各実施の形態が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。
【符号の説明】
【0062】
100 暖房便座装置、 200、200a、200c 便座、 210 ヒータ、 220、220a、220c 便座上板、 221 着座面、 222 外側面、 223 内側面、 224、224a、225 ボス、 227c、227d 凹部、 228a、228b、228c、228d 凸部、 229a、229b、229c、229d 当て面、 230、230c 便座底板、 231 底面、 233 突出部、 237c、237d フック部、 238a、238b、238c、238d 凹部、 239a、239b、239c、239d 当て面、 240、240a 固定用部材、 250 便座クッション、 260 補強層、 270a、270b、270c、270d 係合部、 291、293 締結部材、 295 連結具、 297 パッキン、 300 便蓋、 400 暖房便座機能部、 453 排気口、 455 排出口、 800 洋式腰掛便器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂により形成され、人が着座する着座面を有する便座上板と、
樹脂により形成され、前記便座上板と接合され便座の底面を形成する便座底板と、
前記便座上板と前記便座底板との間に形成された空洞部に配設された加熱手段と、
前記空洞部において前記便座上板に取り付けられた固定用部材と、
前記便座底板と前記固定用部材とを連結する連結具と、
を備えたことを特徴とする暖房便座装置。
【請求項2】
樹脂により形成され、人が着座する着座面を有する便座上板と、
樹脂により形成され、前記便座上板と接合され便座の底面を形成する便座底板と、
前記便座上板と前記便座底板との間に形成された空洞部に配設された加熱手段と、
前記空洞部において前記便座上板に取り付けられた固定用部材と、
前記便座底板と前記固定用部材とを連結する連結具と、
を備え、
前記便座上板の内周縁および外周縁と、前記便座底板の内周縁および外周縁と、に、互いにそれぞれ係合することにより前記便座底板と前記便座上板とが前記接合される係合部が設けられたことを特徴とする暖房便座装置。
【請求項3】
前記便座上板は、
前記着座面の外周側に形成された外側面と、
前記着座面の内周側に形成された内側面と、
前記外側面および内側面の少なくともいずれかに形成され前記空洞部の側へ肉厚化されたボスと、
を有し、
前記固定用部材は、締結部材により前記ボスに取り付けられたことを特徴とする請求項1または2に記載の暖房便座装置。
【請求項4】
前記ボスは、前記外側面および内側面にそれぞれ形成され、
前記固定用部材は、前記外側面に形成されたボスと、前記内側面に形成されたボスと、にわたって配設されたことを特徴とする請求項3記載の暖房便座装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate