暖房便座装置
【課題】便器の使用時における磁束の影響を確実に抑制しつつ、即暖性能を満足し便座の温度が急激に低下することがなく、投入するエネルギーを効率的に利用することが可能な暖房便座装置を提供すること。
【解決手段】この暖房便座装置は、便座本体10に、側面101a,102a側であって少なくともトイレ室内に立ち入った使用者が近づいてくる方向に、磁束が内部を通ることで電磁誘導が発生する材料によって形成された外側金属板20及び内側金属板21が設けられており、外側金属板20及び内側金属板21の熱容量が金属層40の熱容量よりも高くなるように構成されている。
【解決手段】この暖房便座装置は、便座本体10に、側面101a,102a側であって少なくともトイレ室内に立ち入った使用者が近づいてくる方向に、磁束が内部を通ることで電磁誘導が発生する材料によって形成された外側金属板20及び内側金属板21が設けられており、外側金属板20及び内側金属板21の熱容量が金属層40の熱容量よりも高くなるように構成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、誘導加熱を利用して便座を暖める暖房便座装置に関する。
【背景技術】
【0002】
大便器に着座する際の座面を有する便座はプラスチック材料によって形成されるため、寒い時期には雰囲気温度に伴ってその温度が低下する。そのため、寒い時期に使用者が着座した際には、非常に冷たい思いをすることが多く、寒い時期において便座を昇温させる便座暖房に対するニーズは非常に高いものがある。便座は排便時にのみ着座するものであるから、常に便座暖房を実行するのではなく、通常は便座暖房を停止し、使用者の着座のタイミングに合わせて便座暖房を実行することで省電力と使用感の向上とを両立させることが企図されている。このように、使用者の着座のタイミングに合わせて便座暖房を行うにあたっては、なるべく短い時間で狙いの温度に便座を昇温する必要があり、いわゆる即暖性能の向上が求められる。
【0003】
そこで、便座の即暖性能を確保するための一手段として、誘導加熱を利用した暖房便座装置が提案されている(例えば、下記特許文献1参照)。誘導加熱とは、コイルにインバータで発生させた数十kHzの交流電流を流し、その交流電流によって発生する磁束が被加熱物内を通ることで非常に密度の高い渦電流を誘導し(電磁誘導)、その電磁誘導によるジュール熱で被加熱物の表面を加熱する原理を用いるものである。従って、被加熱物を便座の着座面に配置することで、即暖性能を確保することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−18114号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
誘導加熱を利用した暖房便座装置は、即暖性能に優れており、便座を短時間で狙いの温度に昇温することができる。しかしながら、交流電流によって発生する磁束が被加熱物を貫通することで発熱させるため、磁束によって形成される磁界が便座周囲に漏洩し、電磁波となって人体に影響することが懸念される。そこで上記従来の技術では、使用者が着座する前に磁束を発生させて発熱体としての金属板を昇温させ、使用者が着座する際には磁束の発生を終了し漏洩磁界による人体への影響を減少させることができるものである。
【0006】
ところで、上記従来の技術では、磁束を発生させて発熱体を昇温することができる時間は、使用者がトイレ室内に入ってきたことを認知した瞬間から、使用者が便座に着座する前までであるから数秒程度の極めて短い時間となる。このような短い時間に発熱体を昇温するためには、投入するエネルギーに対する温度上昇度合いを大きくする必要があるので、発熱体を薄くして熱容量を下げる必要がある。このように発熱体を薄くすれば短時間で昇温することが可能になるけれども、磁束の発生を停止させれば、その熱容量の小ささ故に温度の低下も早くなってしまうものである。そのため、着座する前に磁束を発生させて発熱体を昇温させ、使用者が着座する際には磁束の発生を終了させると、着座した瞬間は暖かく感じるものの、その後は着座部分の温度が急激に下がってしまい快適なものとはいえない。特に、発熱体を便座に当接して配置した場合には、便座に熱を奪われることにもなるので、温度の低下速度はより速いものとなってしまう。
【0007】
このような状況に対して、上記従来の技術では、抵抗発熱体を配置し、電磁誘導による昇温とは独立させて、便座が所定の温度になるように抵抗発熱体による昇温を実行している。確かに抵抗発熱体を追加設置すれば、便座の温度を維持することは可能になるけれども、抵抗発熱体を発熱させるためのエネルギーを別途投入する必要があることから、省エネルギーの観点からは好ましいものとはいえない。
【0008】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、便器の使用時における磁束の影響を確実に抑制しつつ、即暖性能を満足し便座の温度が急激に低下することがなく、投入するエネルギーを効率的に利用することが可能な暖房便座装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために本発明に係る暖房便座装置は、トイレ室内に配置され着座使用可能な大便器に取り付けられ、使用者が着座するための便座を有し、その便座を暖めることができる暖房便座装置であって、使用者が着座する着座面を有する着座面部と、前記着座面に交わる側面を有する側面部とを有し、少なくとも前記着座面部及び前記側面部は磁束が内部を通っても電磁誘導が発生しない材料によって形成され、前記便座の一部を構成する便座本体と、磁束が内部を通ることで電磁誘導が発生する材料によって形成され、前記着座面部に当接して設けられている第一被加熱部と、前記被加熱部の内部を通るように磁束を発生させる誘導加熱部と、トイレ室内への使用者の立ち入りを検知する入室検知部と、磁束を発生させる発生指示信号と磁束の発生を停止させる停止指示信号とを選択的に前記誘導加熱部に出力する制御部と、を備える。前記制御部は、トイレ室内へ使用者が立ち入ったことを示す入室信号を前記入室検知部より受信すると、その受信に応じて前記誘導加熱部へ前記発生指示信号を出力する一方で、使用者が大便器に近づいたと判断した場合に前記誘導加熱部へ前記停止指示信号を出力する。前記便座本体には、前記側面側であって少なくともトイレ室内に立ち入った使用者が近づいてくる方向に、磁束が内部を通ることで電磁誘導が発生する材料によって形成された第二被加熱部が設けられている。前記第二被加熱部の熱容量が前記第一被加熱部の熱容量よりも高くなるように構成されている。
【0010】
大便器が配置されているトイレ室には、いつも使用者がいるわけではなく、大便器を使用する際に使用者が入室するものである。トイレ室に入ってくる使用者は、トイレ室の入口を通過し、その入口から大便器へと近づき、大便器に取り付けられた便座に着座する。便座を暖める機能は、このようにトイレ室内に入ってくる使用者が便座に着座するタイミングまでに便座を暖めることを満足するように求められている。そこで本発明では、使用者が着座する着座面を有する着座面部に被加熱部を設け、誘導加熱部によって発生させた磁束が被加熱部の内部を通るように構成し、電磁誘導によるすばやい昇温機構を採用している。
【0011】
このように電磁誘導を利用した被加熱部の即暖機能は、使用者のトイレ室内への立ち入りを検知したことに応じて誘導加熱部への通電を行えばよいことから、省エネルギーの観点からも有用なものである。しかしながら、電磁誘導を利用した被加熱部の昇温は、被加熱部の内部を磁束が通ることによって実現されることから、被加熱部を通った磁束が便座外部に漏れ出し、使用者へ影響を与えることが懸念される。そこで本発明では、使用者が大便器に近づいたと判断した場合に誘導加熱部へ停止指示信号を出力することで、使用者が便座に着座する前に磁束の発生を停止し、便座に着座した使用者が磁束の漏れの影響を受けないように構成している。
【0012】
本発明では、便座の着座面部に当接して設けられる第一被加熱部の熱容量を相対的に低くすることで、電磁誘導を利用した加熱によって第一被加熱部を素早く昇温することができる。そしてこのように昇温のレスポンスに特化した第一被加熱部を設ける一方で、持続的な昇温を行うために、相対的に熱容量の高い第二被加熱部を設けている。熱容量の高い第二被加熱部は、昇温のレスポンスは低いものの、蓄熱性能は高いものであるので、便座に奪われる熱を補完する役割を果たすことができる。このように、便座本体に第一被加熱部と第二被加熱部とを設け、第一被加熱部よりも第二被加熱部の熱容量を高めるという簡単な構成で、投入されるエネルギーを有効に活用し、磁束の通過が停止され第一被加熱部の温度が低下した場合であっても、便座本体に熱を奪われて温度が極端に低下することなく、第二被加熱部から徐々に伝達される熱によって快適な着座使用を確保することができる。
【0013】
また本発明に係る暖房便座装置によれば、前記着座面部の温度は、前記第一被加熱部からの熱伝達によって上昇が開始され、その後、前記第二被加熱部からの熱伝達による上昇が追随することも好ましい。
【0014】
このように、着座面部の温度は、第一被加熱部からの熱伝達によって上昇が開始され、その後、第二被加熱部からの熱伝達による上昇が追随するように構成することで、使用者が着座した直後の温度保持は第一被加熱部によって行う一方で、使用者が着座した後に徐々に温度低下することを抑制する温度保持は第二被加熱部によって行うことが可能になる。従って、誘導加熱部が発生させる磁束を増やすことなく、第一被加熱部と第二被加熱部との熱容量を異ならせるという簡単な構成で、着座初期の昇温と着座初期以降の温度維持とを少ないエネルギーで確実に行うことができる。
【0015】
また本発明に係る暖房便座装置によれば、前記第一被加熱部は前記便座本体の前記着座面に配置され、前記第二被加熱部は前記便座本体の内部であって、前記側面部に配置されていることも好ましい。
【0016】
この好ましい態様では、第一被加熱部を着座面上に配置することで、第一被加熱部の温度を直接的に使用者に届けている。従って、誘導加熱部が発生する磁束を増やすことなく、少ない投入エネルギーで着座面を適温まで昇温することが可能になる。また、第二被加熱部を便座本体の内部であって側面部に配置することで、外気による冷却が抑制されて蓄熱を確実に行うことができ、着座面の温度維持に有効に利用することができる。
【0017】
また本発明に係る暖房便座装置によれば、前記第一被加熱部と前記第二被加熱部とは、前記着座面側から見通した場合に重なり合うように配置されており、前記第二被加熱部から前記第一被加熱部へと熱が伝達されるように構成されていることも好ましい。
【0018】
この好ましい態様では、第一被加熱部と第二被加熱部とを、着座面側から見通した場合に重なり合うように配置することで、第二被加熱部が蓄積した熱を第一被加熱部に積極的に伝達することができる。従って、より少ない投入エネルギーで、着座面を適温まで昇温すると共に、着座面の温度維持を確実に行うことができる。
【0019】
また本発明に係る暖房便座装置によれば、前記第二被加熱部は、前記便座本体の内壁に当接するように配置されていることも好ましい。
【0020】
この好ましい態様では、第二被加熱部を便座本体の内壁に当接させることで、便座本体に第二被加熱部からの熱を、直接的且つ損失を最小限に止めて伝えることができる。従って、より少ない投入エネルギーで、着座面の温度維持を確実に行うことができる。
【0021】
また本発明に係る暖房便座装置によれば、前記第二被加熱部は、前記内壁に当接する第一部分と、前記内壁に当接しない第二部分とを有することも好ましい。
【0022】
この好ましい態様では、第二被加熱部を第一部分のみにおいて便座本体の内壁に当接しているので、この第一部分を介して、第二被加熱部からの熱を便座本体に、直接的且つ損失を最小限に止めて伝えることができる。
【0023】
また本発明に係る暖房便座装置によれば、前記第二被加熱部は、前記着座面部に当接する第三部分と、前記着座面部に当接しない第四部分とを有することも好ましい。
【0024】
この好ましい態様では、第二被加熱部を第三部分のみにおいて便座本体の着座面部に当接しているので、この第三部分を介して、第二被加熱部からの熱を便座本体の着座面部に、直接的且つ損失を最小限に止めて伝えることができる。
【0025】
また本発明に係る暖房便座装置によれば、前記第二被加熱部は、前記便座本体の内壁に部分的に設けられた突起部に当接するように配置されていることも好ましい。
【0026】
この好ましい態様では、便座本体の内壁に部分的に突起部を形成し、第二被加熱部との接触をこの突起部において行っているので、リブといった突起部を内壁に設けるという簡単な構成で、第二被加熱部からの熱を便座本体に確実に伝達することができる。
【0027】
また本発明に係る暖房便座装置によれば、前記第二被加熱部は、前記突起部によって挟まれて保持されていることも好ましい。
【0028】
この好ましい態様では、第二被加熱部を突起部によって挟んで保持しているので、ネジや接着剤といった中間物を介在させずに、第二被加熱部を便座本体に直接接触させて保持することができる。従って、中間物の介在による熱伝達の損失を回避することができ、簡単な構成で、第二被加熱部からの熱を便座本体に確実に伝達することができる。
【0029】
また本発明に係る暖房便座装置によれば、前記第二被加熱部は、使用者が着座した際に前記着座面に接触する領域に対して熱を伝達することができるように、前記外側の側面及び前記着座面部の少なくとも一方に当接されていることも好ましい。
【0030】
この好ましい態様では、使用者が着座した際に着座面に接触する領域に対して熱を伝達することができるように第二被加熱部を配置しているので、使用者が温感を感じることができる領域に直接的に熱を効率よく伝達することができる。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、便器の使用時における磁束の影響を確実に抑制しつつ、即暖性能を満足し便座の温度が急激に低下することがなく、投入するエネルギーを効率的に利用することが可能な暖房便座装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本願発明の実施形態である暖房便座装置を設置した態様を示す概略図である。
【図2】本願発明の実施形態である暖房便座装置を設置した態様を示す概略図である。
【図3】本願発明の実施形態である暖房便座装置の模式的な断面図である。
【図4】本願発明の実施形態である暖房便座装置の模式的な断面図である。
【図5】本願発明の実施形態である暖房便座装置の制御ブロック図である。
【図6】本願発明の実施形態である暖房便座装置の動作を示すフローチャートである。
【図7】暖房便座装置における便座の温度変化を示す図である。
【図8】図4に示す暖房便座装置の変形例を示す模式的な断面図である。
【図9】図3に示す暖房便座装置の変形例を示す模式的な断面図である。
【図10】図3に示す暖房便座装置の変形例を示す模式的な断面図である。
【図11】図10のA部分を示す模式的な縦断面図である。
【図12】図10のB部分を示す模式的な縦断面図である。
【図13】図10のC部分を示す模式的な縦断面図である。
【図14】図13の変形例を示す模式的な縦断面図である。
【図15】便蓋に防磁材を設けた変形例を示す模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
【0034】
最初に、本発明の実施形態である暖房便座装置をトイレ室に設置した状態を、図1及び図2を参照しながら説明する。図1は、本発明の実施形態である暖房便座装置WSをトイレ室TRに設置した状態を示す図であって、使用者Hがトイレ室TRに入室した直後の状態を示す図である。図2は、本発明の実施形態である暖房便座装置WSをトイレ室TRに設置した状態を示す図であって、使用者Hがトイレ室TRに入室し、大便器CRに近づいた状態を示す図である。図1及び図2においては、大便器CRからドアDRに向う方向をx軸とし、大便器CRからトイレ室TRの天井に向かう方向をy軸とし、トイレ室TRの幅方向(図1及び図2の紙面を貫く方向)をz軸としている。これらx軸、y軸、z軸は、他の図においても適宜用いるものとする。
【0035】
図1及び図2に示すように、暖房便座装置WSは、大便器CRの上に戴置されるものである。暖房便座装置WSは、装置本体WSaと、便座WSbと、便蓋WScと、リモートコントローラーWSdとを備えている。装置本体WSaは、便座WSb及び便蓋WScを回動自在に保持する部分であって、制御機構や局部洗浄のための給湯機構を含むものである。便座WSbは、大便器CRを使用する使用者Hが着座するためのものである。便蓋WScは、未使用時に便座WSbを覆うためのものである。リモートコントローラーWSdは、トイレ室TRの壁面に取り付けられるものである。使用者HがリモートコントローラーWSdを操作すると、その操作に応じた信号が装置本体WSaに送信される。
【0036】
図1では、使用者Hが、トイレ室TRのドアDRを開けてトイレ室TRの中に入り、位置Haにいる状態を示している。この後、使用者Hは、大便器CRに向けて移動する。本実施形態の暖房便座装置WSは、使用者Hが位置Haにいる状態を検知し、使用者Hがトイレ室TRに立ち入ったものと判断している。
【0037】
図2では、使用者Hが、トイレ室TR内をドアDR側から大便器CRの近くまで移動し、位置Hbにいる状態を示している。この後、使用者Hは、大便器CR上の便座WSbに着座する。暖房便座装置WSは、使用者Hが位置Hbにいる状態をセンサーや経過時間によって判断し、使用者Hが大便器CRを使用する段階であることを認識して、便蓋WScを開く。
【0038】
暖房便座装置WSは、使用者Hが位置Haにいる状態から便座WSbの即暖機能をスタートさせ、使用者Hが位置Hbまで移動すると、便蓋WScを開く。そして、便蓋WScを開いた後に、便座WSbの即暖機能を停止させる。従って、後述するように電磁誘導を利用したIH(Induction Heating)の即暖機能を用いた場合には、使用者Hが、位置Haから位置Hbまで移動する間に即暖機能を働かせることで、使用者Hが位置Hbに到達した際には既に便座WSbの昇温が完了するように構成することができる。
【0039】
更に本実施形態では、便座WSbからドアDRに向う方向(x軸の正方向)には、磁束の漏れが抑制されるように構成されている。従って、使用者Hが位置Haから位置Hbまで移動する間は、漏れ磁束による悪影響を受けないように構成されている。一方、便座WSbから天井に向う方向(y軸の正方向)には、磁束の漏れをある程度許容するように構成されている。このように構成することで、y軸の正方向には磁束が漏れるものの、使用者Hが位置Hbまで到達し、使用者Hが便座WSbに着座する前に磁束の発生を停止するように構成しているので、使用者Hが漏れ磁束による悪影響を受けないように構成されている。
【0040】
続いて、図3及び図4を参照しながら、暖房便座装置WSの側暖機能を実現する構成について説明する。図3は、暖房便座装置WSの特に便座WSbの、内部構造を模式的に示す断面図である。図4は、便座WSbの横断面を模式的に示す図である。
【0041】
図3に示すように、便座WSbは、便座本体10と、外側金属板20と、内側金属板21と、誘導加熱コイル30とを備えている。便座本体10の外側の立壁である外側側面部101の内側に沿って、外側金属板20が配置されている。また、便座本体10の内側の立壁である内側側面部102の内側に沿って、内側金属板21が配置されている。誘導加熱コイル30は、外側金属板20と内側金属板21との間を巻回するように配置されている。外側金属板20及び内側金属板21は、SUS430や鉄といった磁性金属によって形成されている。便座本体10は、樹脂成形によって形成されている。
【0042】
図4に示すように、便座本体10は、外側側面部101と内側側面部102とを繋ぐように、着座面部103と底面部104とが形成されている。着座面部103は、使用者Hが着座する着座面103aを有している。外側側面部101は、着座面103aに交わる側面101aを有している。内側側面部102は、着座面103aに交わる側面102aを有している。底面部104は、着座面103aに対向する底面104aを有している。
【0043】
着座面部103の着座面103aには、金属層40が形成されている。金属層40を覆い、側面101a、着座面103a、側面102aを繋げて覆うように、コーティング層105が形成されている。金属層40は、SUS430や鉄といった磁性金属によって形成されている。コーティング層105は、着色層である。
【0044】
誘導加熱コイル30は、便座本体10内の、底面部104に近い側に配置されている。誘導加熱コイル30は空芯コイルであり、金属層40は薄い金属層であるので、誘導加熱コイル30に通電すると磁束が発生し、その発生した磁束は金属層40を貫通する。従って、金属層40の内部に磁束が通ることになり、非常に密度の高い渦電流を誘導し(電磁誘導)、その電磁誘導によるジュール熱で表面が加熱される。このように、被加熱部としての金属層40を着座面103aに配置することで、即暖性能を発揮することができる。
【0045】
本実施形態では、誘導加熱コイル30の側方を囲むように、外側金属板20及び内側金属板21が配置されている。外側金属板20及び内側金属板21は、着座面部103側に延びており、便座本体10の内側に当接している。具体的には、外側金属板20は着座面部103と外側側面部101とが交わる近傍の領域に当接し、内側金属板21は着座面部103に当接している。外側金属板20及び内側金属板21がこのように便座本体10の内側に当接することで、後述するような熱伝達がより効率的に行われる。外側金属板20及び内側金属板21は、金属層40に比較して十分な厚みを確保している。従って、誘導加熱コイル30が発生する磁束は、外側金属板20及び内側金属板21の内部を通るものの、便座本体10の外部への漏れは抑制される。従って、外側金属板20及び内側金属板21は、防磁部として機能する。特に外側金属板20は、トイレ室TR内に入った使用者Hが近づいてくる方向への磁束の漏れを抑制している。
【0046】
一方で、外側金属板20及び内側金属板21は、磁束が内部を通ることで、非常に密度の高い渦電流を誘導し(電磁誘導)、その電磁誘導によるジュール熱で表面が加熱される。そして、外側金属板20及び内側金属板21は、金属層40に比較して十分な厚みを有しているので、熱容量が比較的高い。従って、温度は上がり難いものの、一度熱が蓄積されれば冷めにくい性質を有している。このことは、外側金属板20及び内側金属板21が、防磁部としての機能のみならず第二の被加熱部としての機能を有していることを示している。
【0047】
続いて、図5を参照しながら、暖房便座装置WSの制御的な構成について説明する。図5に示すように、制御部としてのCPU50に対して、リモートコントローラーWSdから出力される指示信号や、着座検知センサー51及び入室検知センサー52から出力される検知信号が入力される。CPU50は、入力される指示信号や検知信号に基づいて、各部に動作信号を出力する。
【0048】
具体的には、CPU50は、誘導加熱部53に、磁束を発生させるための発生指示信号と、磁束の発生を停止させる停止指示信号とを条件に応じて選択的に出力する。CPU50は、抵抗加熱部54に、通電を開始して加温を開始させるための加温開始信号と、通電を停止して加温を停止するための加温停止信号とを条件に応じて選択的に出力する。CPU50は、局部洗浄部55に、局部洗浄を開始させるための洗浄開始信号や、局部洗浄を停止させるための洗浄停止信号や、局部洗浄のパターンを指示するための洗浄パターン信号など条件に応じて出力する。CPU50は、便蓋駆動部56に、便蓋WScを開放させる開放指示信号と、便蓋WScを閉じさせる閉塞指示信号とを条件に応じて選択的に出力する。
【0049】
誘導加熱部53は、誘導加熱コイル30と、誘導加熱コイル30を駆動するための駆動回路とを含んでいる。駆動回路は、CPU50から出力される発生指示信号や停止指示信号に基づいて、誘導加熱コイル30に通電する回路である。
【0050】
抵抗加熱部54は、後述する抵抗加熱体と、抵抗加熱体を駆動するための駆動回路とを含んでいる。駆動回路は、CPU50から出力される加温指示信号や加温停止信号に基づいて、抵抗加熱体に通電する回路である。
【0051】
局部洗浄部55は、水を局部に吐出するためのノズルや、ノズルに水を送り込むための管路や、管路に水を送り込むためのポンプや、管路に送り込む水を加温するヒーターや、ポンプやヒーターを駆動するための回路を含む部分である。
【0052】
便蓋駆動部56は、便蓋WScを回動するためのモーターと、モーターを駆動するための駆動回路とを含んでいる。駆動回路は、CPU50から出力される開放指示信号や閉塞指示信号に基づいて、モーターに通電する回路である。
【0053】
続いて、図6を参照しながら、暖房便座装置WSの動作について説明する。図6は、暖房便座装置WSの即暖機能に関する動作を示すフローチャートであって、主にCPU50によって実行が指示される動作を示すものである。
【0054】
ステップS01では、使用者Hがトイレ室TRに入室したか否かを判断する。具体的には、入室検知センサー52から検知信号が出力されているか否かをCPU50が判断する。図1の位置Haに使用者Hがいる場合には、入室検知センサー52から検知信号が出力されるので、CPU50は使用者Hがトイレ室TRに入室したと判断する。
【0055】
ステップS01において、使用者Hがトイレ室TRに入室していないと判断すると、リターンする。一方、ステップS01において、使用者Hがトイレ室TRに入室したと判断すると、ステップS02の処理に進む。
【0056】
ステップS02では、誘導加熱部53による誘導加熱を開始する。具体的には、CPU50が誘導加熱部53に、発生指示信号を出力する。誘導加熱部53は、発生指示信号を受け取ると、駆動回路が誘導加熱コイル30に通電する。誘導加熱コイル30は通電されると、磁束を発生させる。この磁束の発生によって、便座WSbの金属層40が発熱し、誘導加熱が開始される。
【0057】
ステップS02に続くステップS03では、誘導加熱を開始してから3秒が経過したか否かを判断する。誘導加熱を開始してから3秒が経過していなければ、ステップS02の判断を繰り返す。誘導加熱を開始してから3秒が経過してれば、ステップS04の処理に進む。
【0058】
ステップS04では、便蓋駆動部56によって便蓋WScを開放する。具体的には、CPU50が便蓋駆動部56に、開放指示信号を出力する。便蓋駆動部56は、開放指示信号を受け取ると、駆動回路がモーターに通電する。モーターは通電されると回転し、便蓋WScを開放するように駆動する。このステップS04の状態は、図2を参照しながら説明した状態である。図2に示されているように、使用者Hは位置Hbまで進んでおり、大便器CRの前に立っている状態である。
【0059】
ステップS04に続くステップS05では、便蓋WScを開放してから2秒が経過したか否かを判断する。便蓋WScを開放してから2秒が経過していなければ、ステップS04の判断を繰り返す。便蓋WScを開放してから2秒が経過していれば、使用者Hが着座するタイミングだと判断してステップS06の処理に進む。
【0060】
ステップS06では、誘導加熱部53による誘導加熱を停止する。具体的には、CPU50が誘導加熱部53に、停止指示信号を出力する。誘導加熱部53は、停止指示信号を受け取ると、駆動回路から誘導加熱コイル30への通電を停止する。誘導加熱コイル30は通電が停止されると、磁束の発生を停止する。この磁束の発生の停止によって、便座WSbの金属層40の発熱は停止する。
【0061】
図6を参照しながら説明したように、本実施形態の暖房便座装置WSでは、使用者Hが便座WSbに着座する前に誘導加熱コイル30からの磁束の発生を停止し、誘導加熱を停止する。誘導加熱コイル30によって加熱される金属層40は、即暖性能を重視して熱容量の小さい薄い膜として形成されているので、発熱が停止すれば温度は急速に低下してしまう。
【0062】
そこで本実施形態では、図4を参照しながら説明したように、便座本体10の内部に金属層40よりも熱容量の大きな外側金属板20と内側金属板21とを配置している。この外側金属板20及び内側金属板21の効果について、図7を参照しながら説明する。図7は、便座WSbの温度変化を示す図である。図7において、時刻t1は、図6のステップS02に相当し、時刻t2は、図6のステップS06に相当する。線L1は、便座WSbの表面温度を示し、線L2は、外側金属板20及び内側金属板21を設けていない場合の便座WSbの表面温度を示している。また、線L3は、外側金属板20及び内側金属板21の表面温度を示している。
【0063】
図7に示されるように、外側金属板20及び内側金属板21を設けていない場合の便座WSbの表面温度である線L2は、誘導加熱コイル30からの磁束の発生を停止する時刻t2以降に急激に下降する曲線を描いている。これは、上述したように、誘導加熱コイル30によって加熱される金属層40は、即暖性能を重視して熱容量の小さい薄い膜として形成されているので、発熱が停止すれば温度は急速に低下してしまうことによる。
【0064】
一方、外側金属板20及び内側金属板21を設けた場合の便座WSbの表面温度である線L1は、誘導加熱コイル30からの磁束の発生を停止する時刻t2以降においても急激に下降せず、緩やかに下降する曲線を描いている。これは、外側金属板20及び内側金属板21に蓄積された熱が、便座WSbの表面に徐々に伝達されていることによる。
【0065】
外側金属板20及び内側金属板21の表面温度である線L3は緩やかに上昇し、時刻t2付近をピークとして、それ以降は緩やかに下降している。外側金属板20及び内側金属板21の蓄熱作用によって、一方、外側金属板20及び内側金属板21を設けた場合の便座WSbの表面温度である線L1は、緩やかに下降する。従って、本実施形態によれば、便座WSbの表面温度を、着座時の好適な温度域である、温度T1から温度T2の間に維持することができる。
【0066】
このような外側金属板20及び内側金属板21の蓄熱作用を補完するものとして、抵抗加熱体を便座WSbに設ける例について、図8を参照しながら説明する。図8は、抵抗加熱体541を設けた便座WSbaの模式的な断面図である。
【0067】
図8に示すように、便座本体10は、外側側面部101と内側側面部102とを繋ぐように、着座面部103と底面部104とが形成されている。着座面部103は、使用者Hが着座する着座面103aを有している。外側側面部101は、着座面103aに交わる側面101aを有している。内側側面部102は、着座面103aに交わる側面102aを有している。底面部104は、着座面103aに対向する底面104aを有している。
【0068】
着座面部103の着座面103aには、金属層40が形成されている。金属層40を覆い、側面101a、着座面103a、側面102aを繋げて覆うように、コーティング層105が形成されている。
【0069】
誘導加熱コイル30は、便座本体10内の、着座面部103に近い側に配置されている。誘導加熱コイル30は空芯コイルであり、金属層40は薄い金属層であるので、誘導加熱コイル30に通電すると磁束が発生し、その発生した磁束は金属層40を貫通する。従って、金属層40の内部に磁束が通ることになり、非常に密度の高い渦電流を誘導し(電磁誘導)、その電磁誘導によるジュール熱で表面が加熱される。このように、被加熱部としての金属層40を着座面103aに配置することで、即暖性能を発揮することができる。
【0070】
図8に示す便座WSbaでは、誘導加熱コイル30の側方を囲むように、外側金属板201及び内側金属板211が配置されている。外側金属板201及び内側金属板211は、着座面部103側に延びており、便座本体10の内側に当接している。具体的には、外側金属板20は着座面部103と外側側面部101とが交わる近傍の領域に当接し、内側金属板21は着座面部103に当接している。更に、外側金属板201の下端は、外側側面部101側にも延びており、便座本体10の内側に当接している。一方、内側金属板211の下端は、内側側面部102側にも延びており、便座本体10の内側に当接している。外側金属板201及び内側金属板211がこのように便座本体10の内側に当接することで、後述するような熱伝達がより効率的に行われる。外側金属板201及び内側金属板211は、金属層40に比較して十分な厚みを確保している。従って、誘導加熱コイル30が発生する磁束は、外側金属板201及び内側金属板211の内部を通るものの、便座本体10の外部への漏れは抑制される。従って、外側金属板201及び内側金属板211は、防磁部として機能する。特に外側金属板201は、トイレ室TR内に入った使用者Hが近づいてくる方向への磁束の漏れを抑制している。
【0071】
一方で、外側金属板201及び内側金属板211は、磁束が内部を通ることで、非常に密度の高い渦電流を誘導し(電磁誘導)、その電磁誘導によるジュール熱で表面が加熱される。そして、外側金属板201及び内側金属板211は、金属層40に比較して十分な厚みを有しているので、熱容量が比較的高い。従って、温度が上がり難いものの、一度熱が蓄積されれば冷めにくい性質を有している。このことは、外側金属板201及び内側金属板211が、防磁部としての機能のみならず第二の被加熱部としての機能を有していることを示している。
【0072】
更に便座WSbaでは、外側金属板201及び内側金属板211に沿わせて、抵抗加熱体541を配置している。抵抗加熱体541は、抵抗加熱部54の一部を構成するものである。上述したように、CPU50から抵抗加熱部54に加温指示信号が出力されると、抵抗加熱部54の駆動回路が抵抗加熱体541に通電し、抵抗加熱体541が発熱する。抵抗加熱体541から発せられる熱は、外側金属板201及び内側金属板211に伝達され、便座WSbaの温度維持に貢献する。また、CPU50から抵抗加熱部54に加温停止信号が出力されると、抵抗加熱部54の駆動回路が抵抗加熱体541への通電を停止する。
【0073】
抵抗加熱体541は、便座本体10の底面部104側に配置されている。一方、誘導加熱コイル30は、便座本体10の着座面部103側に配置されている。誘導加熱コイル30は、金属層40に磁束を通して加熱するためのものであるから、誘導加熱コイル30と金属層40との間には他の金属物が存在しないことが、エネルギーの効率的な利用の観点から好ましいものである。従って、抵抗加熱体541を、誘導加熱コイル30を挟んで金属層40とは反対側に配置することで、抵抗加熱体541が金属層40へ向かう磁束の妨げとなることがないものとすることができる。
【0074】
続いて、金属層40の配置態様について説明する。金属層40は、便座本体10の着座面部103全周に渡って設けられることも好ましいけれども、更に熱容量を小さくし、効率よく加熱を行うという観点から形態を変えることも好ましいものである。そのような変形例を図9に示す。図9は、変形例としての金属層40aを示す図である。
【0075】
図9に示すように、金属層40aには、便座WSbの前方における切り欠き部分401と、便座WSbの後方における切り欠き部分402とが形成されている。使用者Hが便座WSbに着座した場合に、便座WSbと接する着座領域Rhは図9の二点鎖線に示す領域であるから、金属層40aを設けることで加熱する領域もこの着座領域Rhを含んでいれば足りるものである。そこでこの変形例では、切り欠き部分401,402を有する金属層40aを形成することで、使用者Hが着座しない領域を加熱することなくエネルギーを効率よく使えるようにしている。
【0076】
本実施形態において、外側金属板20及び内側金属板21は、様々な形成態様があると共に、様々な取付態様もある。外側金属板20及び内側金属板21と便座本体10との接触状態を調整することで、外側金属板20及び内側金属板21から伝達される熱を効率的に用いることができる。そのような効率的な熱伝達について工夫した変形例について、図10,11,12,13、14を参照しながら説明する。
【0077】
図10は、変形例としての外側金属板20a及び内側金属板21aを有する暖房便座装置WS1を示す模式的な断面図である。図11は、図10のA部分におけるy軸方向に沿った模式的な縦断面図である。図12は、図10のB部分におけるy軸方向に沿った模式的な縦断面図である。図13は、図10のC部分におけるy軸方向に沿った模式的な縦断面図である。図14は、図13の変形例を示す模式的な縦断面図である。
【0078】
図10に示すように、外側金属板20aは、便座本体70の外側側面部701に沿って設けられている。内側金属板21aは、便座本体70の内側側面部702に沿って設けられている。
【0079】
図10及び図11に示すように、外側金属板20aは、着座面部703から底面部704側に延びるリブ701h及びリブ701jによって挟まれて保持されている。外側金属板20aは、リブ701h及びリブ701jによって挟まれ、リブ701h及びリブ701jの間の空間を埋めるように上方に延びている。外側金属板20aは、着座面部703と外側側面部701とが交わる近傍の領域に当接している。リブ701h及びリブ701jは、図10に示すように、着座領域Rhに対応させて部分的に設けられている内部突起である。同様に、内側金属板21aは、着座面部703から底面部704側に延びるリブ702h及びリブ702jによって挟まれて保持されている。内側金属板21aは、リブ702h及びリブ702jによって挟まれ、リブ702h及びリブ702jの間の空間を埋めるように上方に延びている。内側金属板21aは、着座面部703に当接している。リブ702h及びリブ702jは、図10に示すように、着座領域Rhに対応させて部分的に設けられている内部突起である。
【0080】
外側金属板20aをリブ701h,701jによって、内側金属板21aをリブ702h,702jによって、それぞれ部分的に保持することで、外側金属板20a及び内側金属板21aが発する熱は、リブ701h,701j,702h,702jを通って便座本体70に伝達され、着座面部703に伝わる。また、このように部分的にリブ701h,701j,702h,702jを設けることで、成形に用いる材料の使用量を減じることができる。また、このようにリブ701h,701j,702h,702jによって挟んで保持することで、接着剤などで取り付けるのに比較して熱伝達の損失が減少し、エネルギーを効率的に利用することができる。
【0081】
外側金属板20a及び内側金属板21aから着座面部703への熱伝達をコントロールするためには、外側金属板20a及び内側金属板21aと、便座本体70との接触部分を一部のみに設けることが好ましいものである。図10において、外側金属板20aは、実線部分において便座本体70に接触しており、破線部分において便座本体70に接触していない。同様に、内側金属板21aは、実線部分において便座本体70に接触しており、破線部分において便座本体70に接触していない。
【0082】
外側金属板20a及び内側金属板21aは、便座本体70と接触していない部分、例えば図10のB部分においては、図12に示すような状態となっている。図12に示すように、外側金属板20a及び内側金属板21aが便座本体70と接触していない部分では、外側金属板20a及び内側金属板21aから便座本体70へ伝達される熱は減少する。従って、外側金属板20a及び内側金属板21aが便座本体70と接触していない部分は、図10に示す着座領域Rhの外に設けることが好ましいものである。
【0083】
外側金属板20a及び内側金属板21aと便座本体70とが接触する態様は、図13に示すように、リブ701h,701j,702h,702jが設けられている部分とそれらが設けられていない部分との全体に渡って接触することも好ましいものである。また、図14に示すように、外側金属板20b及び内側金属板21bと便座本体70とが部分的に便座本体70と接触するのも好ましい態様である。
【0084】
上述したように本実施形態では、誘導加熱コイル30への通電時間を制限することで、使用者Hに磁束の影響を与えないようにしている。この効果をより高めるために、便蓋WScに防磁層を設けることも好ましいものである。図15に、防磁層60を設けた便蓋WScの一例を示す。図15に示すように、防磁層60は、便蓋WScの全体に渡って形成されることが好ましいものである。防磁層60は、磁束を反射する金属によって形成されている層である。
【0085】
上述したように本実施形態に係る暖房便座装置WS(暖房便座装置WS1も含む)は、トイレ室TR内に配置され着座使用可能な大便器CRに取り付けられ、使用者Hが着座するための便座WSbを有し、その便座WSbを暖めることができる暖房便座装置である。暖房便座装置WSは、便座本体10と、被加熱部である金属層40と、誘導加熱部53の一部である誘導加熱コイル30と、入室検知部としての入室検知センサー52と、制御部としてのCPU50とを備えている。
【0086】
便座本体10は、使用者Hが着座する着座面103aを有する着座面部103と、着座面103aに交わる側面101a,102aを有する外側側面部101,内側側面部102とを有し、少なくとも着座面部103及び外側側面部101,内側側面部102は磁束が内部を通っても電磁誘導が発生しない樹脂といった材料によって形成されている。被加熱部としての金属層40は、磁束が内部を通ることで電磁誘導が発生する磁性金属材料によって形成され、着座面部103に当接して設けられている。誘導加熱コイル30は、金属層40の内部を通るように磁束を発生させるように配置されている。入室検知センサー52は、トイレ室TR内への使用者Hの立ち入りを検知するように設けられている。CPU50は、磁束を発生させる発生指示信号と磁束の発生を停止させる停止指示信号とを選択的に誘導加熱部53に出力する。
【0087】
CPU50は、トイレ室TR内へ使用者Hが立ち入ったことを示す入室信号を入室検知センサー52より受信すると、その受信に応じて誘導加熱部へ発生指示信号を出力する一方で、使用者Hが大便器CRに近づいたと判断した場合に誘導加熱部53へ停止指示信号を出力する。便座本体10には、着座面103a側への磁束の通過を抑制する第一防磁部としても機能する金属層40と、側面101a,102a側であって少なくともトイレ室TR内に立ち入った使用者Hが近づいてくる方向への磁束の通過を抑制する第二防磁部として機能する外側金属板20及び内側金属板21と、が設けられている。第二防磁部としての外側金属板20及び内側金属板21による磁束の通過抑制度合いは、第一防磁部としての金属層40による磁束の通過抑制度合いよりも高くなっている。
【0088】
大便器CRが配置されているトイレ室TRには、いつも使用者Hがいるわけではなく、図1に示すように大便器CRを使用する際に使用者Hが入室するものである。トイレ室TRに入ってくる使用者Hは、トイレ室TRの入口のドアDRを通過し、その入口から大便器CRへと近づき、大便器CRに取り付けられた便座WSbに着座する。便座WSbを暖める機能は、このようにトイレ室TR内に入ってくる使用者Hが便座WSbに着座するタイミングまでに便座WSbを暖めることを満足するように求められている。そこで本実施形態では、使用者Hが着座する着座面103aを有する着座面部103に被加熱部としての金属層40を設け、誘導加熱コイル30によって発生させた磁束が金属層40の内部を通るように構成し、電磁誘導による素早い昇温機構を採用している。
【0089】
このように電磁誘導を利用した金属層40の即暖機能は、使用者Hのトイレ室TR内への立ち入りを検知したことに応じて誘導加熱コイル30への通電を行えばよいことから、省エネルギーの観点からも有用なものである。しかしながら、電磁誘導を利用した金属層40の昇温は、金属層40の内部を磁束が通ることによって実現されることから、金属層40を通った磁束が便座外部に漏れ出し、使用者Hへ影響を与えることが懸念される。そこで、電磁誘導による金属層40の即暖機能のメリットを確保しつつ、磁束の漏れによる使用者Hへの影響を低減させるため、上述したようなトイレ室TR特有の状況に着目した。
【0090】
具体的には、便座WSbを構成する便座本体10に、着座面103a側への磁束の通過を抑制する第一防磁部としても機能する金属層40と、側面101a,102a側であって少なくともトイレ室TR内に立ち入った使用者Hが近づいてくる方向への磁束の通過を抑制する第二防磁部として機能する外側金属板20及び内側金属板21と、を設けている。そして、外側金属板20及び内側金属板21による磁束の通過抑制度合いが、金属層40による磁束の通過抑制度合いよりも高いように構成している。このように構成することで、誘導加熱コイル30が金属層40を昇温するために磁束を発生させても、着座面103a側へは磁束を通過させ易く、側面101a,102a側であって少なくとも使用者Hが近づいてくる方向へは磁束を通過させ難いようにするものである。
【0091】
本実施形態では、便座本体10に金属層40と外側金属板20及び内側金属板21とを設け、側面101a,102a側であって少なくとも使用者Hが近づいてくる方向へは磁束を通過させ難いようにすることで、使用者Hがトイレ室TRに入室して大便器CRに近づいてくる間に磁束を発生させても、その近づいてくる使用者H側に磁束が漏れ出すことを有効に抑制することができる。また、便座本体10に金属層40と外側金属板20及び内側金属板21とを設け、着座面103a側へは磁束を通過させ易いようにすることで、金属層40を確実に昇温させ、使用者Hが便座WSbに着座するタイミングまでに確実に、金属層40及び便座本体10を含む便座WSbを昇温させることができる。
【0092】
このように本実施形態によれば、便座本体10に金属層40と外側金属板20及び内側金属板21とを設け、着座面103a側へは磁束を通過させ易く、側面101a,102a側であって少なくとも使用者Hが近づいてくる方向へは磁束を通過させ難いように構成することで、便座WSbの即暖性能を確保しつつ省エネルギー性も確保し、更には使用者Hへの安全性も十分に確保した暖房便座装置WSを提供することができる。
【0093】
また本実施形態では、外側金属板20及び内側金属板21の熱容量が金属層40の熱容量よりも高くなるように構成されている。
【0094】
上述したように本実施形態では、便座本体10は磁束が内部を通っても電磁誘導が発生しない材料によって形成する一方で、着座面部103に設けられる金属層40を磁束が通ることで電磁誘導が発生する材料によって構成することで金属層40を昇温させ、便座本体10の昇温に係わらず便座WSb全体としては昇温させている。そして本実施形態では、使用者Hが大便器CRに近づいたと判断した場合にCPU50が誘導加熱部53へ停止指示信号を出力するので、実際に使用者Hが着座するタイミングでは金属層40の更なる温度上昇は行われていない。
【0095】
便座本体10は電磁誘導によって昇温しないような材料によって形成されていることから、何らの工夫も講じなければ、使用者Hが便座WSbに着座した後には、金属層40の余熱のみで即暖機能が確保されることになる。金属層40は着座する使用者Hへ違和感を与えないように発熱するものであるから、金属層40は便座本体10を暖められるほど十分には昇温されていない。従って、便座本体10は金属層40から熱を奪うと共に、着座している使用者Hからも熱を奪うことになり、使用者Hは着座後に熱を奪われるような違和感を覚えることも考えられる。
【0096】
そこで本実施形態では、外側金属板20及び内側金属板21の熱容量が金属層40の熱容量よりも高くなるように構成することで、外側金属板20及び内側金属板21に熱を蓄えて徐々に便座本体10に受け渡す役割を果たさせることができ、上述したような違和感を使用者Hが覚えないように工夫している。
【0097】
また本実施形態では、外側金属板20及び内側金属板21は、磁束が内部に通ることで電磁誘導が発生する材料によって形成され、外側側面部101,内側側面部102に設けられており、第一防磁部としての機能は、被加熱部である金属層40によって果たされている。
【0098】
このように、第二防磁部としても機能する外側金属板20及び内側金属板21は、磁束がその内部を通ることで電磁誘導が発生する材料によって形成しているので、誘導加熱コイル30の磁束の発生に応じて発熱することができる。第二防磁部としても機能する外側金属板20及び内側金属板21の熱容量は第一防磁部としても機能する金属層40の熱容量よりも大きいので、第二防磁部としても機能する外側金属板20及び内側金属板21は、この発熱した熱を蓄える蓄熱機能を有することになる。従って、便座本体10の外側側面部101,内側側面部102に設けられる外側金属板20及び内側金属板21は、発熱することに加えその熱を蓄えることで磁束の漏れも抑制する機能を果たすので、誘導加熱コイル30で消費されるエネルギーを無駄に使うことなく、快適な便座の昇温を行うことができる。
【0099】
また本実施形態に係る暖房便座装置WSでは、図15を参照しながら説明したように、便座本体10の着座面103aを覆う便蓋WScaを、磁束の通過を抑制するように構成することも好ましい。また、便蓋WScaは、磁束を反射する材料によって形成される防磁層60を有することで、その機能を果たすことも好ましいものである。
【0100】
このように、便蓋WScaが磁束の通過を抑制するように構成しているので、便座本体10の着座面103aから漏れることを許容した磁束が便蓋WScaよりも更に外側へ通過することを抑制し、着座面103aを便蓋WScaで覆うことでより確実な防磁機能を実現することができる。また、防磁層60を設けることにより、着座面103aから漏れる磁束を便蓋WScaが反射することで防磁機能を果たしている。従って、便蓋WScaでは磁束によって電磁誘導を起こして発熱することがなく、便蓋WScaにおける発熱というエネルギーの無駄使いをすることがなく、全体としてより省エネルギーに資する暖房便座装置とすることができる。
【0101】
また本実施形態では、第一防磁部として機能する金属層40は、便座本体10の着座面103a上に配置され、第二防磁部として機能する外側金属板20及び内側金属板21は、便座本体10の内部に配置されている。
【0102】
このように、金属層40を便座本体10の着座面103a上に配置することで、使用者Hに金属層40を直接触れさせることができ、より効果的な即暖機能を実現することができる。また、外側金属板20及び内側金属板21は便座本体10の内部に配置するので、熱を蓄えて徐々に放出する機能と側面側への磁束の漏れを抑制する機能とをより効果的に実現することができる。
【0103】
本実施形態を外側金属板20及び内側金属板21による蓄熱の観点から把握すると、次のような特徴がある。本実施形態では、便座WSbの着座面部103に当接して設けられる第一被加熱部としての金属層40の熱容量を相対的に低くすることで、電磁誘導を利用した加熱によって金属層40を素早く昇温することができる。そしてこのように昇温のレスポンスに特化した第一被加熱部としての金属層40を設ける一方で、持続的な昇温を行うために、相対的に熱容量の高い第二被加熱部としての外側金属板20及び内側金属板21を設けている。
【0104】
熱容量の高い外側金属板20及び内側金属板21は、昇温のレスポンスは低いものの、蓄熱性能は高いものであるので、便座本体10に奪われる熱を補完する役割を果たすことができる。このように、便座本体10に第一被加熱部としての金属層40と第二被加熱部としての外側金属板20及び内側金属板21とを設け、金属層40よりも外側金属板20及び内側金属板21の熱容量を高めるという簡単な構成で、投入されるエネルギーを有効に活用し、磁束の通過が停止され金属層40の温度が低下した場合であっても、便座本体10に熱を奪われて温度が極端に低下することなく、外側金属板20及び内側金属板21から徐々に伝達される熱によって快適な着座使用を確保することができる。
【0105】
また本実施形態によれば、着座面部103の温度は、金属層40からの熱伝達によって上昇が開始され、その後、外側金属板20及び内側金属板21からの熱伝達による上昇が追随するように構成されている(図7及び、図7に関する上記記述参照)。
【0106】
このように、着座面部103の温度は、金属層40からの熱伝達によって上昇が開始され、その後、外側金属板20及び内側金属板21からの熱伝達による上昇が追随するように構成することで、使用者Hが着座した直後の温度保持は金属層40によって行う一方で、使用者Hが着座した後に徐々に温度低下することを抑制する温度保持は外側金属板20及び内側金属板21によって行うことが可能になる。従って、誘導加熱コイル30が発生させる磁束を増やすことなく、金属層40と外側金属板20及び内側金属板21との熱容量を異ならせるという簡単な構成で、着座初期の昇温と着座初期以降の温度維持とを少ないエネルギーで確実に行うことができる。
【0107】
また本実施形態では、金属層40は便座本体10の着座面103aに配置され、外側金属板20及び内側金属板21は便座本体10の内部であって、外側側面部101,内側側面部102に配置されている。
【0108】
このように、金属層40を着座面103a上に配置することで、金属層40の温度を直接的に使用者Hに届けている。従って、誘導加熱コイル30が発生する磁束を増やすことなく、少ない投入エネルギーで着座面103aを適温まで昇温することが可能になる。また、外側金属板20及び内側金属板21を便座本体10の内部であって外側側面部101,内側側面部102に配置することで、外気による冷却が抑制されて蓄熱を確実に行うことができ、着座面103aの温度維持に有効に利用することができる。
【0109】
また本実施形態では、金属層40と外側金属板20及び内側金属板21とは、着座面103a側から見通した場合に重なり合うように配置されており、外側金属板20及び内側金属板21から金属層40へと熱が伝達されるように構成されている。
【0110】
このように配置することで、外側金属板20及び内側金属板21が蓄積した熱を金属層40に積極的に伝達することができる。従って、より少ない投入エネルギーで、着座面103aを適温まで昇温すると共に、着座面103aの温度維持を確実に行うことができる。
【0111】
また本実施形態では、外側金属板20及び内側金属板21は、便座本体10の内壁に当接するように配置されている。このようにすることで、便座本体10に外側金属板20及び内側金属板21からの熱を、直接的且つ損失を最小限に止めて伝えることができる。従って、より少ない投入エネルギーで、着座面103aの温度維持を確実に行うことができる。
【0112】
また本実施形態では、図10を参照しながら説明した外側金属板20a及び内側金属板21aのように、内壁に当接する第一部分と、内壁に当接しない第二部分とを有することも好ましい。このように構成することで、内壁に当接する第一部分を介して、外側金属板20a及び内側金属板21aからの熱を便座本体70に、直接的且つ損失を最小限に止めて伝えることができる。
【0113】
また、外側金属板20a及び内側金属板21aは、図14を参照しながら説明した外側金属板20bのように、着座面部703に当接する第三部分と、着座面部703に当接しない第四部分とを有することも好ましい。このように構成することで、着座面部703に当接する第三部分を介して、外側金属板20bからの熱を便座本体70の着座面部703に、直接的且つ損失を最小限に止めて伝えることができる。
【0114】
また本実施形態では、外側金属板20a及び内側金属板21aは、便座本体10の内壁に部分的に設けられた突起部としてのリブ701h,701j,702h,702jに当接するように配置されている。また、外側金属板20a及び内側金属板21aは、リブ701h,701j,702h,702jによって挟まれて保持されている。
【0115】
このように、リブといった突起部を内壁に設けるという簡単な構成で、外側金属板20a及び内側金属板21aからの熱を便座本体70に確実に伝達することができる。また、外側金属板20a及び内側金属板21aをリブ701h,701j,702h,702jによって挟んで保持しているので、ネジや接着剤といった中間物を介在させずに、外側金属板20a及び内側金属板21aを便座本体70に直接接触させて保持することができる。従って、中間物の介在による熱伝達の損失を回避することができ、簡単な構成で、外側金属板20a及び内側金属板21aからの熱を便座本体70に確実に伝達することができる。
【0116】
また、外側金属板20a及び内側金属板21aは、使用者Hが着座した際に着座面部703に接触する着座領域Rhに対して熱を伝達することができるように、外側側面部701,内側側面部702及び着座面部703の少なくとも一方に当接されている。このように、使用者Hが着座した際に着座面に接触する着座領域Rhに対して熱を伝達することができるように外側金属板20a及び内側金属板21aを配置しているので、使用者Hが温感を感じることができる領域に直接的に熱を効率よく伝達することができる。
【0117】
また本実施形態を、抵抗加熱部54を設けて、蓄熱の補助をさせる観点から捉えると次のような特徴がある。図8に示すように本実施形態では、抵抗加熱部54を構成する抵抗加熱体541を外側金属板20及び内側金属板21に当接させて設けることで、外側金属板20及び内側金属板21を介して抵抗加熱体541が発生する熱を便座本体10に受け渡すことができる。抵抗加熱体541の発熱は、外側金属板20及び内側金属板21の発熱とは独立して行うことができるので、便座本体10の温度ムラを確実に抑制することができる。
【0118】
本実施形態では、抵抗加熱体541を、誘導加熱コイル30よりも便座本体10の着座面103a側と対向する底面104a側に配置している(図8参照)。このように、抵抗加熱体541を誘導加熱コイル30よりも底面104a側に配置することで、誘導加熱コイル30から金属層40に向う磁束が抵抗加熱体541を通らないように配置することができる。抵抗加熱体541は金属で形成されているため、磁束が通ると電磁誘導が発生し、金属層40に向う磁束が減少してしまう。そこで、誘導加熱コイル30から金属層40に向う磁束が抵抗加熱体541を通らないように構成することで、金属層40による即暖機能を十分に発揮させつつ、抵抗加熱体541による補助昇温効果も十分に発揮させることができる。
【0119】
また本実施形態では、抵抗加熱体541を、外側金属板20及び内側金属板21よりも内側に配置している。このように配置することで、外側金属板20及び内側金属板21による防磁効果を阻害せず、抵抗加熱体541が発生する熱も外部に逃すことがない。従って、金属層40による即暖機能を十分に発揮させつつ、抵抗加熱体541による補助昇温効果も十分に発揮させることができる。
【0120】
以上、具体例を参照しつつ本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明はこれらの具体例に限定されるものではない。すなわち、これら具体例に、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。例えば、前述した各具体例が備える各要素およびその配置、材料、条件、形状、サイズなどは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。また、前述した各実施の形態が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。
【符号の説明】
【0121】
10:便座本体
20:外側金属板
20a:外側金属板
20b:外側金属板
21:内側金属板
21a:内側金属板
30:誘導加熱コイル
40:金属層
40a:金属層
51:着座検知センサー
52:入室検知センサー
53:誘導加熱部
54:抵抗加熱部
55:局部洗浄部
56:便蓋駆動部
60:防磁層
70:便座本体
101:外側側面部
101a,102a:側面
102:内側側面部
103:着座面部
103a:着座面
104:底面部
104a:底面
105:コーティング層
401,402:切り欠き部分
541:抵抗加熱体
701:外側側面部
701h,701j,702h,702j:リブ
702:内側側面部
703:着座面部
704:底面部
CR:大便器
DR:ドア
H:使用者
Rh:着座領域
TR:トイレ室
WS:暖房便座装置
WS1:暖房便座装置
WSa:装置本体
WSb:便座
WSba:便座
WSc:便蓋
WSca:便蓋
WSd:リモートコントローラー
【技術分野】
【0001】
本発明は、誘導加熱を利用して便座を暖める暖房便座装置に関する。
【背景技術】
【0002】
大便器に着座する際の座面を有する便座はプラスチック材料によって形成されるため、寒い時期には雰囲気温度に伴ってその温度が低下する。そのため、寒い時期に使用者が着座した際には、非常に冷たい思いをすることが多く、寒い時期において便座を昇温させる便座暖房に対するニーズは非常に高いものがある。便座は排便時にのみ着座するものであるから、常に便座暖房を実行するのではなく、通常は便座暖房を停止し、使用者の着座のタイミングに合わせて便座暖房を実行することで省電力と使用感の向上とを両立させることが企図されている。このように、使用者の着座のタイミングに合わせて便座暖房を行うにあたっては、なるべく短い時間で狙いの温度に便座を昇温する必要があり、いわゆる即暖性能の向上が求められる。
【0003】
そこで、便座の即暖性能を確保するための一手段として、誘導加熱を利用した暖房便座装置が提案されている(例えば、下記特許文献1参照)。誘導加熱とは、コイルにインバータで発生させた数十kHzの交流電流を流し、その交流電流によって発生する磁束が被加熱物内を通ることで非常に密度の高い渦電流を誘導し(電磁誘導)、その電磁誘導によるジュール熱で被加熱物の表面を加熱する原理を用いるものである。従って、被加熱物を便座の着座面に配置することで、即暖性能を確保することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−18114号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
誘導加熱を利用した暖房便座装置は、即暖性能に優れており、便座を短時間で狙いの温度に昇温することができる。しかしながら、交流電流によって発生する磁束が被加熱物を貫通することで発熱させるため、磁束によって形成される磁界が便座周囲に漏洩し、電磁波となって人体に影響することが懸念される。そこで上記従来の技術では、使用者が着座する前に磁束を発生させて発熱体としての金属板を昇温させ、使用者が着座する際には磁束の発生を終了し漏洩磁界による人体への影響を減少させることができるものである。
【0006】
ところで、上記従来の技術では、磁束を発生させて発熱体を昇温することができる時間は、使用者がトイレ室内に入ってきたことを認知した瞬間から、使用者が便座に着座する前までであるから数秒程度の極めて短い時間となる。このような短い時間に発熱体を昇温するためには、投入するエネルギーに対する温度上昇度合いを大きくする必要があるので、発熱体を薄くして熱容量を下げる必要がある。このように発熱体を薄くすれば短時間で昇温することが可能になるけれども、磁束の発生を停止させれば、その熱容量の小ささ故に温度の低下も早くなってしまうものである。そのため、着座する前に磁束を発生させて発熱体を昇温させ、使用者が着座する際には磁束の発生を終了させると、着座した瞬間は暖かく感じるものの、その後は着座部分の温度が急激に下がってしまい快適なものとはいえない。特に、発熱体を便座に当接して配置した場合には、便座に熱を奪われることにもなるので、温度の低下速度はより速いものとなってしまう。
【0007】
このような状況に対して、上記従来の技術では、抵抗発熱体を配置し、電磁誘導による昇温とは独立させて、便座が所定の温度になるように抵抗発熱体による昇温を実行している。確かに抵抗発熱体を追加設置すれば、便座の温度を維持することは可能になるけれども、抵抗発熱体を発熱させるためのエネルギーを別途投入する必要があることから、省エネルギーの観点からは好ましいものとはいえない。
【0008】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、便器の使用時における磁束の影響を確実に抑制しつつ、即暖性能を満足し便座の温度が急激に低下することがなく、投入するエネルギーを効率的に利用することが可能な暖房便座装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために本発明に係る暖房便座装置は、トイレ室内に配置され着座使用可能な大便器に取り付けられ、使用者が着座するための便座を有し、その便座を暖めることができる暖房便座装置であって、使用者が着座する着座面を有する着座面部と、前記着座面に交わる側面を有する側面部とを有し、少なくとも前記着座面部及び前記側面部は磁束が内部を通っても電磁誘導が発生しない材料によって形成され、前記便座の一部を構成する便座本体と、磁束が内部を通ることで電磁誘導が発生する材料によって形成され、前記着座面部に当接して設けられている第一被加熱部と、前記被加熱部の内部を通るように磁束を発生させる誘導加熱部と、トイレ室内への使用者の立ち入りを検知する入室検知部と、磁束を発生させる発生指示信号と磁束の発生を停止させる停止指示信号とを選択的に前記誘導加熱部に出力する制御部と、を備える。前記制御部は、トイレ室内へ使用者が立ち入ったことを示す入室信号を前記入室検知部より受信すると、その受信に応じて前記誘導加熱部へ前記発生指示信号を出力する一方で、使用者が大便器に近づいたと判断した場合に前記誘導加熱部へ前記停止指示信号を出力する。前記便座本体には、前記側面側であって少なくともトイレ室内に立ち入った使用者が近づいてくる方向に、磁束が内部を通ることで電磁誘導が発生する材料によって形成された第二被加熱部が設けられている。前記第二被加熱部の熱容量が前記第一被加熱部の熱容量よりも高くなるように構成されている。
【0010】
大便器が配置されているトイレ室には、いつも使用者がいるわけではなく、大便器を使用する際に使用者が入室するものである。トイレ室に入ってくる使用者は、トイレ室の入口を通過し、その入口から大便器へと近づき、大便器に取り付けられた便座に着座する。便座を暖める機能は、このようにトイレ室内に入ってくる使用者が便座に着座するタイミングまでに便座を暖めることを満足するように求められている。そこで本発明では、使用者が着座する着座面を有する着座面部に被加熱部を設け、誘導加熱部によって発生させた磁束が被加熱部の内部を通るように構成し、電磁誘導によるすばやい昇温機構を採用している。
【0011】
このように電磁誘導を利用した被加熱部の即暖機能は、使用者のトイレ室内への立ち入りを検知したことに応じて誘導加熱部への通電を行えばよいことから、省エネルギーの観点からも有用なものである。しかしながら、電磁誘導を利用した被加熱部の昇温は、被加熱部の内部を磁束が通ることによって実現されることから、被加熱部を通った磁束が便座外部に漏れ出し、使用者へ影響を与えることが懸念される。そこで本発明では、使用者が大便器に近づいたと判断した場合に誘導加熱部へ停止指示信号を出力することで、使用者が便座に着座する前に磁束の発生を停止し、便座に着座した使用者が磁束の漏れの影響を受けないように構成している。
【0012】
本発明では、便座の着座面部に当接して設けられる第一被加熱部の熱容量を相対的に低くすることで、電磁誘導を利用した加熱によって第一被加熱部を素早く昇温することができる。そしてこのように昇温のレスポンスに特化した第一被加熱部を設ける一方で、持続的な昇温を行うために、相対的に熱容量の高い第二被加熱部を設けている。熱容量の高い第二被加熱部は、昇温のレスポンスは低いものの、蓄熱性能は高いものであるので、便座に奪われる熱を補完する役割を果たすことができる。このように、便座本体に第一被加熱部と第二被加熱部とを設け、第一被加熱部よりも第二被加熱部の熱容量を高めるという簡単な構成で、投入されるエネルギーを有効に活用し、磁束の通過が停止され第一被加熱部の温度が低下した場合であっても、便座本体に熱を奪われて温度が極端に低下することなく、第二被加熱部から徐々に伝達される熱によって快適な着座使用を確保することができる。
【0013】
また本発明に係る暖房便座装置によれば、前記着座面部の温度は、前記第一被加熱部からの熱伝達によって上昇が開始され、その後、前記第二被加熱部からの熱伝達による上昇が追随することも好ましい。
【0014】
このように、着座面部の温度は、第一被加熱部からの熱伝達によって上昇が開始され、その後、第二被加熱部からの熱伝達による上昇が追随するように構成することで、使用者が着座した直後の温度保持は第一被加熱部によって行う一方で、使用者が着座した後に徐々に温度低下することを抑制する温度保持は第二被加熱部によって行うことが可能になる。従って、誘導加熱部が発生させる磁束を増やすことなく、第一被加熱部と第二被加熱部との熱容量を異ならせるという簡単な構成で、着座初期の昇温と着座初期以降の温度維持とを少ないエネルギーで確実に行うことができる。
【0015】
また本発明に係る暖房便座装置によれば、前記第一被加熱部は前記便座本体の前記着座面に配置され、前記第二被加熱部は前記便座本体の内部であって、前記側面部に配置されていることも好ましい。
【0016】
この好ましい態様では、第一被加熱部を着座面上に配置することで、第一被加熱部の温度を直接的に使用者に届けている。従って、誘導加熱部が発生する磁束を増やすことなく、少ない投入エネルギーで着座面を適温まで昇温することが可能になる。また、第二被加熱部を便座本体の内部であって側面部に配置することで、外気による冷却が抑制されて蓄熱を確実に行うことができ、着座面の温度維持に有効に利用することができる。
【0017】
また本発明に係る暖房便座装置によれば、前記第一被加熱部と前記第二被加熱部とは、前記着座面側から見通した場合に重なり合うように配置されており、前記第二被加熱部から前記第一被加熱部へと熱が伝達されるように構成されていることも好ましい。
【0018】
この好ましい態様では、第一被加熱部と第二被加熱部とを、着座面側から見通した場合に重なり合うように配置することで、第二被加熱部が蓄積した熱を第一被加熱部に積極的に伝達することができる。従って、より少ない投入エネルギーで、着座面を適温まで昇温すると共に、着座面の温度維持を確実に行うことができる。
【0019】
また本発明に係る暖房便座装置によれば、前記第二被加熱部は、前記便座本体の内壁に当接するように配置されていることも好ましい。
【0020】
この好ましい態様では、第二被加熱部を便座本体の内壁に当接させることで、便座本体に第二被加熱部からの熱を、直接的且つ損失を最小限に止めて伝えることができる。従って、より少ない投入エネルギーで、着座面の温度維持を確実に行うことができる。
【0021】
また本発明に係る暖房便座装置によれば、前記第二被加熱部は、前記内壁に当接する第一部分と、前記内壁に当接しない第二部分とを有することも好ましい。
【0022】
この好ましい態様では、第二被加熱部を第一部分のみにおいて便座本体の内壁に当接しているので、この第一部分を介して、第二被加熱部からの熱を便座本体に、直接的且つ損失を最小限に止めて伝えることができる。
【0023】
また本発明に係る暖房便座装置によれば、前記第二被加熱部は、前記着座面部に当接する第三部分と、前記着座面部に当接しない第四部分とを有することも好ましい。
【0024】
この好ましい態様では、第二被加熱部を第三部分のみにおいて便座本体の着座面部に当接しているので、この第三部分を介して、第二被加熱部からの熱を便座本体の着座面部に、直接的且つ損失を最小限に止めて伝えることができる。
【0025】
また本発明に係る暖房便座装置によれば、前記第二被加熱部は、前記便座本体の内壁に部分的に設けられた突起部に当接するように配置されていることも好ましい。
【0026】
この好ましい態様では、便座本体の内壁に部分的に突起部を形成し、第二被加熱部との接触をこの突起部において行っているので、リブといった突起部を内壁に設けるという簡単な構成で、第二被加熱部からの熱を便座本体に確実に伝達することができる。
【0027】
また本発明に係る暖房便座装置によれば、前記第二被加熱部は、前記突起部によって挟まれて保持されていることも好ましい。
【0028】
この好ましい態様では、第二被加熱部を突起部によって挟んで保持しているので、ネジや接着剤といった中間物を介在させずに、第二被加熱部を便座本体に直接接触させて保持することができる。従って、中間物の介在による熱伝達の損失を回避することができ、簡単な構成で、第二被加熱部からの熱を便座本体に確実に伝達することができる。
【0029】
また本発明に係る暖房便座装置によれば、前記第二被加熱部は、使用者が着座した際に前記着座面に接触する領域に対して熱を伝達することができるように、前記外側の側面及び前記着座面部の少なくとも一方に当接されていることも好ましい。
【0030】
この好ましい態様では、使用者が着座した際に着座面に接触する領域に対して熱を伝達することができるように第二被加熱部を配置しているので、使用者が温感を感じることができる領域に直接的に熱を効率よく伝達することができる。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、便器の使用時における磁束の影響を確実に抑制しつつ、即暖性能を満足し便座の温度が急激に低下することがなく、投入するエネルギーを効率的に利用することが可能な暖房便座装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本願発明の実施形態である暖房便座装置を設置した態様を示す概略図である。
【図2】本願発明の実施形態である暖房便座装置を設置した態様を示す概略図である。
【図3】本願発明の実施形態である暖房便座装置の模式的な断面図である。
【図4】本願発明の実施形態である暖房便座装置の模式的な断面図である。
【図5】本願発明の実施形態である暖房便座装置の制御ブロック図である。
【図6】本願発明の実施形態である暖房便座装置の動作を示すフローチャートである。
【図7】暖房便座装置における便座の温度変化を示す図である。
【図8】図4に示す暖房便座装置の変形例を示す模式的な断面図である。
【図9】図3に示す暖房便座装置の変形例を示す模式的な断面図である。
【図10】図3に示す暖房便座装置の変形例を示す模式的な断面図である。
【図11】図10のA部分を示す模式的な縦断面図である。
【図12】図10のB部分を示す模式的な縦断面図である。
【図13】図10のC部分を示す模式的な縦断面図である。
【図14】図13の変形例を示す模式的な縦断面図である。
【図15】便蓋に防磁材を設けた変形例を示す模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
【0034】
最初に、本発明の実施形態である暖房便座装置をトイレ室に設置した状態を、図1及び図2を参照しながら説明する。図1は、本発明の実施形態である暖房便座装置WSをトイレ室TRに設置した状態を示す図であって、使用者Hがトイレ室TRに入室した直後の状態を示す図である。図2は、本発明の実施形態である暖房便座装置WSをトイレ室TRに設置した状態を示す図であって、使用者Hがトイレ室TRに入室し、大便器CRに近づいた状態を示す図である。図1及び図2においては、大便器CRからドアDRに向う方向をx軸とし、大便器CRからトイレ室TRの天井に向かう方向をy軸とし、トイレ室TRの幅方向(図1及び図2の紙面を貫く方向)をz軸としている。これらx軸、y軸、z軸は、他の図においても適宜用いるものとする。
【0035】
図1及び図2に示すように、暖房便座装置WSは、大便器CRの上に戴置されるものである。暖房便座装置WSは、装置本体WSaと、便座WSbと、便蓋WScと、リモートコントローラーWSdとを備えている。装置本体WSaは、便座WSb及び便蓋WScを回動自在に保持する部分であって、制御機構や局部洗浄のための給湯機構を含むものである。便座WSbは、大便器CRを使用する使用者Hが着座するためのものである。便蓋WScは、未使用時に便座WSbを覆うためのものである。リモートコントローラーWSdは、トイレ室TRの壁面に取り付けられるものである。使用者HがリモートコントローラーWSdを操作すると、その操作に応じた信号が装置本体WSaに送信される。
【0036】
図1では、使用者Hが、トイレ室TRのドアDRを開けてトイレ室TRの中に入り、位置Haにいる状態を示している。この後、使用者Hは、大便器CRに向けて移動する。本実施形態の暖房便座装置WSは、使用者Hが位置Haにいる状態を検知し、使用者Hがトイレ室TRに立ち入ったものと判断している。
【0037】
図2では、使用者Hが、トイレ室TR内をドアDR側から大便器CRの近くまで移動し、位置Hbにいる状態を示している。この後、使用者Hは、大便器CR上の便座WSbに着座する。暖房便座装置WSは、使用者Hが位置Hbにいる状態をセンサーや経過時間によって判断し、使用者Hが大便器CRを使用する段階であることを認識して、便蓋WScを開く。
【0038】
暖房便座装置WSは、使用者Hが位置Haにいる状態から便座WSbの即暖機能をスタートさせ、使用者Hが位置Hbまで移動すると、便蓋WScを開く。そして、便蓋WScを開いた後に、便座WSbの即暖機能を停止させる。従って、後述するように電磁誘導を利用したIH(Induction Heating)の即暖機能を用いた場合には、使用者Hが、位置Haから位置Hbまで移動する間に即暖機能を働かせることで、使用者Hが位置Hbに到達した際には既に便座WSbの昇温が完了するように構成することができる。
【0039】
更に本実施形態では、便座WSbからドアDRに向う方向(x軸の正方向)には、磁束の漏れが抑制されるように構成されている。従って、使用者Hが位置Haから位置Hbまで移動する間は、漏れ磁束による悪影響を受けないように構成されている。一方、便座WSbから天井に向う方向(y軸の正方向)には、磁束の漏れをある程度許容するように構成されている。このように構成することで、y軸の正方向には磁束が漏れるものの、使用者Hが位置Hbまで到達し、使用者Hが便座WSbに着座する前に磁束の発生を停止するように構成しているので、使用者Hが漏れ磁束による悪影響を受けないように構成されている。
【0040】
続いて、図3及び図4を参照しながら、暖房便座装置WSの側暖機能を実現する構成について説明する。図3は、暖房便座装置WSの特に便座WSbの、内部構造を模式的に示す断面図である。図4は、便座WSbの横断面を模式的に示す図である。
【0041】
図3に示すように、便座WSbは、便座本体10と、外側金属板20と、内側金属板21と、誘導加熱コイル30とを備えている。便座本体10の外側の立壁である外側側面部101の内側に沿って、外側金属板20が配置されている。また、便座本体10の内側の立壁である内側側面部102の内側に沿って、内側金属板21が配置されている。誘導加熱コイル30は、外側金属板20と内側金属板21との間を巻回するように配置されている。外側金属板20及び内側金属板21は、SUS430や鉄といった磁性金属によって形成されている。便座本体10は、樹脂成形によって形成されている。
【0042】
図4に示すように、便座本体10は、外側側面部101と内側側面部102とを繋ぐように、着座面部103と底面部104とが形成されている。着座面部103は、使用者Hが着座する着座面103aを有している。外側側面部101は、着座面103aに交わる側面101aを有している。内側側面部102は、着座面103aに交わる側面102aを有している。底面部104は、着座面103aに対向する底面104aを有している。
【0043】
着座面部103の着座面103aには、金属層40が形成されている。金属層40を覆い、側面101a、着座面103a、側面102aを繋げて覆うように、コーティング層105が形成されている。金属層40は、SUS430や鉄といった磁性金属によって形成されている。コーティング層105は、着色層である。
【0044】
誘導加熱コイル30は、便座本体10内の、底面部104に近い側に配置されている。誘導加熱コイル30は空芯コイルであり、金属層40は薄い金属層であるので、誘導加熱コイル30に通電すると磁束が発生し、その発生した磁束は金属層40を貫通する。従って、金属層40の内部に磁束が通ることになり、非常に密度の高い渦電流を誘導し(電磁誘導)、その電磁誘導によるジュール熱で表面が加熱される。このように、被加熱部としての金属層40を着座面103aに配置することで、即暖性能を発揮することができる。
【0045】
本実施形態では、誘導加熱コイル30の側方を囲むように、外側金属板20及び内側金属板21が配置されている。外側金属板20及び内側金属板21は、着座面部103側に延びており、便座本体10の内側に当接している。具体的には、外側金属板20は着座面部103と外側側面部101とが交わる近傍の領域に当接し、内側金属板21は着座面部103に当接している。外側金属板20及び内側金属板21がこのように便座本体10の内側に当接することで、後述するような熱伝達がより効率的に行われる。外側金属板20及び内側金属板21は、金属層40に比較して十分な厚みを確保している。従って、誘導加熱コイル30が発生する磁束は、外側金属板20及び内側金属板21の内部を通るものの、便座本体10の外部への漏れは抑制される。従って、外側金属板20及び内側金属板21は、防磁部として機能する。特に外側金属板20は、トイレ室TR内に入った使用者Hが近づいてくる方向への磁束の漏れを抑制している。
【0046】
一方で、外側金属板20及び内側金属板21は、磁束が内部を通ることで、非常に密度の高い渦電流を誘導し(電磁誘導)、その電磁誘導によるジュール熱で表面が加熱される。そして、外側金属板20及び内側金属板21は、金属層40に比較して十分な厚みを有しているので、熱容量が比較的高い。従って、温度は上がり難いものの、一度熱が蓄積されれば冷めにくい性質を有している。このことは、外側金属板20及び内側金属板21が、防磁部としての機能のみならず第二の被加熱部としての機能を有していることを示している。
【0047】
続いて、図5を参照しながら、暖房便座装置WSの制御的な構成について説明する。図5に示すように、制御部としてのCPU50に対して、リモートコントローラーWSdから出力される指示信号や、着座検知センサー51及び入室検知センサー52から出力される検知信号が入力される。CPU50は、入力される指示信号や検知信号に基づいて、各部に動作信号を出力する。
【0048】
具体的には、CPU50は、誘導加熱部53に、磁束を発生させるための発生指示信号と、磁束の発生を停止させる停止指示信号とを条件に応じて選択的に出力する。CPU50は、抵抗加熱部54に、通電を開始して加温を開始させるための加温開始信号と、通電を停止して加温を停止するための加温停止信号とを条件に応じて選択的に出力する。CPU50は、局部洗浄部55に、局部洗浄を開始させるための洗浄開始信号や、局部洗浄を停止させるための洗浄停止信号や、局部洗浄のパターンを指示するための洗浄パターン信号など条件に応じて出力する。CPU50は、便蓋駆動部56に、便蓋WScを開放させる開放指示信号と、便蓋WScを閉じさせる閉塞指示信号とを条件に応じて選択的に出力する。
【0049】
誘導加熱部53は、誘導加熱コイル30と、誘導加熱コイル30を駆動するための駆動回路とを含んでいる。駆動回路は、CPU50から出力される発生指示信号や停止指示信号に基づいて、誘導加熱コイル30に通電する回路である。
【0050】
抵抗加熱部54は、後述する抵抗加熱体と、抵抗加熱体を駆動するための駆動回路とを含んでいる。駆動回路は、CPU50から出力される加温指示信号や加温停止信号に基づいて、抵抗加熱体に通電する回路である。
【0051】
局部洗浄部55は、水を局部に吐出するためのノズルや、ノズルに水を送り込むための管路や、管路に水を送り込むためのポンプや、管路に送り込む水を加温するヒーターや、ポンプやヒーターを駆動するための回路を含む部分である。
【0052】
便蓋駆動部56は、便蓋WScを回動するためのモーターと、モーターを駆動するための駆動回路とを含んでいる。駆動回路は、CPU50から出力される開放指示信号や閉塞指示信号に基づいて、モーターに通電する回路である。
【0053】
続いて、図6を参照しながら、暖房便座装置WSの動作について説明する。図6は、暖房便座装置WSの即暖機能に関する動作を示すフローチャートであって、主にCPU50によって実行が指示される動作を示すものである。
【0054】
ステップS01では、使用者Hがトイレ室TRに入室したか否かを判断する。具体的には、入室検知センサー52から検知信号が出力されているか否かをCPU50が判断する。図1の位置Haに使用者Hがいる場合には、入室検知センサー52から検知信号が出力されるので、CPU50は使用者Hがトイレ室TRに入室したと判断する。
【0055】
ステップS01において、使用者Hがトイレ室TRに入室していないと判断すると、リターンする。一方、ステップS01において、使用者Hがトイレ室TRに入室したと判断すると、ステップS02の処理に進む。
【0056】
ステップS02では、誘導加熱部53による誘導加熱を開始する。具体的には、CPU50が誘導加熱部53に、発生指示信号を出力する。誘導加熱部53は、発生指示信号を受け取ると、駆動回路が誘導加熱コイル30に通電する。誘導加熱コイル30は通電されると、磁束を発生させる。この磁束の発生によって、便座WSbの金属層40が発熱し、誘導加熱が開始される。
【0057】
ステップS02に続くステップS03では、誘導加熱を開始してから3秒が経過したか否かを判断する。誘導加熱を開始してから3秒が経過していなければ、ステップS02の判断を繰り返す。誘導加熱を開始してから3秒が経過してれば、ステップS04の処理に進む。
【0058】
ステップS04では、便蓋駆動部56によって便蓋WScを開放する。具体的には、CPU50が便蓋駆動部56に、開放指示信号を出力する。便蓋駆動部56は、開放指示信号を受け取ると、駆動回路がモーターに通電する。モーターは通電されると回転し、便蓋WScを開放するように駆動する。このステップS04の状態は、図2を参照しながら説明した状態である。図2に示されているように、使用者Hは位置Hbまで進んでおり、大便器CRの前に立っている状態である。
【0059】
ステップS04に続くステップS05では、便蓋WScを開放してから2秒が経過したか否かを判断する。便蓋WScを開放してから2秒が経過していなければ、ステップS04の判断を繰り返す。便蓋WScを開放してから2秒が経過していれば、使用者Hが着座するタイミングだと判断してステップS06の処理に進む。
【0060】
ステップS06では、誘導加熱部53による誘導加熱を停止する。具体的には、CPU50が誘導加熱部53に、停止指示信号を出力する。誘導加熱部53は、停止指示信号を受け取ると、駆動回路から誘導加熱コイル30への通電を停止する。誘導加熱コイル30は通電が停止されると、磁束の発生を停止する。この磁束の発生の停止によって、便座WSbの金属層40の発熱は停止する。
【0061】
図6を参照しながら説明したように、本実施形態の暖房便座装置WSでは、使用者Hが便座WSbに着座する前に誘導加熱コイル30からの磁束の発生を停止し、誘導加熱を停止する。誘導加熱コイル30によって加熱される金属層40は、即暖性能を重視して熱容量の小さい薄い膜として形成されているので、発熱が停止すれば温度は急速に低下してしまう。
【0062】
そこで本実施形態では、図4を参照しながら説明したように、便座本体10の内部に金属層40よりも熱容量の大きな外側金属板20と内側金属板21とを配置している。この外側金属板20及び内側金属板21の効果について、図7を参照しながら説明する。図7は、便座WSbの温度変化を示す図である。図7において、時刻t1は、図6のステップS02に相当し、時刻t2は、図6のステップS06に相当する。線L1は、便座WSbの表面温度を示し、線L2は、外側金属板20及び内側金属板21を設けていない場合の便座WSbの表面温度を示している。また、線L3は、外側金属板20及び内側金属板21の表面温度を示している。
【0063】
図7に示されるように、外側金属板20及び内側金属板21を設けていない場合の便座WSbの表面温度である線L2は、誘導加熱コイル30からの磁束の発生を停止する時刻t2以降に急激に下降する曲線を描いている。これは、上述したように、誘導加熱コイル30によって加熱される金属層40は、即暖性能を重視して熱容量の小さい薄い膜として形成されているので、発熱が停止すれば温度は急速に低下してしまうことによる。
【0064】
一方、外側金属板20及び内側金属板21を設けた場合の便座WSbの表面温度である線L1は、誘導加熱コイル30からの磁束の発生を停止する時刻t2以降においても急激に下降せず、緩やかに下降する曲線を描いている。これは、外側金属板20及び内側金属板21に蓄積された熱が、便座WSbの表面に徐々に伝達されていることによる。
【0065】
外側金属板20及び内側金属板21の表面温度である線L3は緩やかに上昇し、時刻t2付近をピークとして、それ以降は緩やかに下降している。外側金属板20及び内側金属板21の蓄熱作用によって、一方、外側金属板20及び内側金属板21を設けた場合の便座WSbの表面温度である線L1は、緩やかに下降する。従って、本実施形態によれば、便座WSbの表面温度を、着座時の好適な温度域である、温度T1から温度T2の間に維持することができる。
【0066】
このような外側金属板20及び内側金属板21の蓄熱作用を補完するものとして、抵抗加熱体を便座WSbに設ける例について、図8を参照しながら説明する。図8は、抵抗加熱体541を設けた便座WSbaの模式的な断面図である。
【0067】
図8に示すように、便座本体10は、外側側面部101と内側側面部102とを繋ぐように、着座面部103と底面部104とが形成されている。着座面部103は、使用者Hが着座する着座面103aを有している。外側側面部101は、着座面103aに交わる側面101aを有している。内側側面部102は、着座面103aに交わる側面102aを有している。底面部104は、着座面103aに対向する底面104aを有している。
【0068】
着座面部103の着座面103aには、金属層40が形成されている。金属層40を覆い、側面101a、着座面103a、側面102aを繋げて覆うように、コーティング層105が形成されている。
【0069】
誘導加熱コイル30は、便座本体10内の、着座面部103に近い側に配置されている。誘導加熱コイル30は空芯コイルであり、金属層40は薄い金属層であるので、誘導加熱コイル30に通電すると磁束が発生し、その発生した磁束は金属層40を貫通する。従って、金属層40の内部に磁束が通ることになり、非常に密度の高い渦電流を誘導し(電磁誘導)、その電磁誘導によるジュール熱で表面が加熱される。このように、被加熱部としての金属層40を着座面103aに配置することで、即暖性能を発揮することができる。
【0070】
図8に示す便座WSbaでは、誘導加熱コイル30の側方を囲むように、外側金属板201及び内側金属板211が配置されている。外側金属板201及び内側金属板211は、着座面部103側に延びており、便座本体10の内側に当接している。具体的には、外側金属板20は着座面部103と外側側面部101とが交わる近傍の領域に当接し、内側金属板21は着座面部103に当接している。更に、外側金属板201の下端は、外側側面部101側にも延びており、便座本体10の内側に当接している。一方、内側金属板211の下端は、内側側面部102側にも延びており、便座本体10の内側に当接している。外側金属板201及び内側金属板211がこのように便座本体10の内側に当接することで、後述するような熱伝達がより効率的に行われる。外側金属板201及び内側金属板211は、金属層40に比較して十分な厚みを確保している。従って、誘導加熱コイル30が発生する磁束は、外側金属板201及び内側金属板211の内部を通るものの、便座本体10の外部への漏れは抑制される。従って、外側金属板201及び内側金属板211は、防磁部として機能する。特に外側金属板201は、トイレ室TR内に入った使用者Hが近づいてくる方向への磁束の漏れを抑制している。
【0071】
一方で、外側金属板201及び内側金属板211は、磁束が内部を通ることで、非常に密度の高い渦電流を誘導し(電磁誘導)、その電磁誘導によるジュール熱で表面が加熱される。そして、外側金属板201及び内側金属板211は、金属層40に比較して十分な厚みを有しているので、熱容量が比較的高い。従って、温度が上がり難いものの、一度熱が蓄積されれば冷めにくい性質を有している。このことは、外側金属板201及び内側金属板211が、防磁部としての機能のみならず第二の被加熱部としての機能を有していることを示している。
【0072】
更に便座WSbaでは、外側金属板201及び内側金属板211に沿わせて、抵抗加熱体541を配置している。抵抗加熱体541は、抵抗加熱部54の一部を構成するものである。上述したように、CPU50から抵抗加熱部54に加温指示信号が出力されると、抵抗加熱部54の駆動回路が抵抗加熱体541に通電し、抵抗加熱体541が発熱する。抵抗加熱体541から発せられる熱は、外側金属板201及び内側金属板211に伝達され、便座WSbaの温度維持に貢献する。また、CPU50から抵抗加熱部54に加温停止信号が出力されると、抵抗加熱部54の駆動回路が抵抗加熱体541への通電を停止する。
【0073】
抵抗加熱体541は、便座本体10の底面部104側に配置されている。一方、誘導加熱コイル30は、便座本体10の着座面部103側に配置されている。誘導加熱コイル30は、金属層40に磁束を通して加熱するためのものであるから、誘導加熱コイル30と金属層40との間には他の金属物が存在しないことが、エネルギーの効率的な利用の観点から好ましいものである。従って、抵抗加熱体541を、誘導加熱コイル30を挟んで金属層40とは反対側に配置することで、抵抗加熱体541が金属層40へ向かう磁束の妨げとなることがないものとすることができる。
【0074】
続いて、金属層40の配置態様について説明する。金属層40は、便座本体10の着座面部103全周に渡って設けられることも好ましいけれども、更に熱容量を小さくし、効率よく加熱を行うという観点から形態を変えることも好ましいものである。そのような変形例を図9に示す。図9は、変形例としての金属層40aを示す図である。
【0075】
図9に示すように、金属層40aには、便座WSbの前方における切り欠き部分401と、便座WSbの後方における切り欠き部分402とが形成されている。使用者Hが便座WSbに着座した場合に、便座WSbと接する着座領域Rhは図9の二点鎖線に示す領域であるから、金属層40aを設けることで加熱する領域もこの着座領域Rhを含んでいれば足りるものである。そこでこの変形例では、切り欠き部分401,402を有する金属層40aを形成することで、使用者Hが着座しない領域を加熱することなくエネルギーを効率よく使えるようにしている。
【0076】
本実施形態において、外側金属板20及び内側金属板21は、様々な形成態様があると共に、様々な取付態様もある。外側金属板20及び内側金属板21と便座本体10との接触状態を調整することで、外側金属板20及び内側金属板21から伝達される熱を効率的に用いることができる。そのような効率的な熱伝達について工夫した変形例について、図10,11,12,13、14を参照しながら説明する。
【0077】
図10は、変形例としての外側金属板20a及び内側金属板21aを有する暖房便座装置WS1を示す模式的な断面図である。図11は、図10のA部分におけるy軸方向に沿った模式的な縦断面図である。図12は、図10のB部分におけるy軸方向に沿った模式的な縦断面図である。図13は、図10のC部分におけるy軸方向に沿った模式的な縦断面図である。図14は、図13の変形例を示す模式的な縦断面図である。
【0078】
図10に示すように、外側金属板20aは、便座本体70の外側側面部701に沿って設けられている。内側金属板21aは、便座本体70の内側側面部702に沿って設けられている。
【0079】
図10及び図11に示すように、外側金属板20aは、着座面部703から底面部704側に延びるリブ701h及びリブ701jによって挟まれて保持されている。外側金属板20aは、リブ701h及びリブ701jによって挟まれ、リブ701h及びリブ701jの間の空間を埋めるように上方に延びている。外側金属板20aは、着座面部703と外側側面部701とが交わる近傍の領域に当接している。リブ701h及びリブ701jは、図10に示すように、着座領域Rhに対応させて部分的に設けられている内部突起である。同様に、内側金属板21aは、着座面部703から底面部704側に延びるリブ702h及びリブ702jによって挟まれて保持されている。内側金属板21aは、リブ702h及びリブ702jによって挟まれ、リブ702h及びリブ702jの間の空間を埋めるように上方に延びている。内側金属板21aは、着座面部703に当接している。リブ702h及びリブ702jは、図10に示すように、着座領域Rhに対応させて部分的に設けられている内部突起である。
【0080】
外側金属板20aをリブ701h,701jによって、内側金属板21aをリブ702h,702jによって、それぞれ部分的に保持することで、外側金属板20a及び内側金属板21aが発する熱は、リブ701h,701j,702h,702jを通って便座本体70に伝達され、着座面部703に伝わる。また、このように部分的にリブ701h,701j,702h,702jを設けることで、成形に用いる材料の使用量を減じることができる。また、このようにリブ701h,701j,702h,702jによって挟んで保持することで、接着剤などで取り付けるのに比較して熱伝達の損失が減少し、エネルギーを効率的に利用することができる。
【0081】
外側金属板20a及び内側金属板21aから着座面部703への熱伝達をコントロールするためには、外側金属板20a及び内側金属板21aと、便座本体70との接触部分を一部のみに設けることが好ましいものである。図10において、外側金属板20aは、実線部分において便座本体70に接触しており、破線部分において便座本体70に接触していない。同様に、内側金属板21aは、実線部分において便座本体70に接触しており、破線部分において便座本体70に接触していない。
【0082】
外側金属板20a及び内側金属板21aは、便座本体70と接触していない部分、例えば図10のB部分においては、図12に示すような状態となっている。図12に示すように、外側金属板20a及び内側金属板21aが便座本体70と接触していない部分では、外側金属板20a及び内側金属板21aから便座本体70へ伝達される熱は減少する。従って、外側金属板20a及び内側金属板21aが便座本体70と接触していない部分は、図10に示す着座領域Rhの外に設けることが好ましいものである。
【0083】
外側金属板20a及び内側金属板21aと便座本体70とが接触する態様は、図13に示すように、リブ701h,701j,702h,702jが設けられている部分とそれらが設けられていない部分との全体に渡って接触することも好ましいものである。また、図14に示すように、外側金属板20b及び内側金属板21bと便座本体70とが部分的に便座本体70と接触するのも好ましい態様である。
【0084】
上述したように本実施形態では、誘導加熱コイル30への通電時間を制限することで、使用者Hに磁束の影響を与えないようにしている。この効果をより高めるために、便蓋WScに防磁層を設けることも好ましいものである。図15に、防磁層60を設けた便蓋WScの一例を示す。図15に示すように、防磁層60は、便蓋WScの全体に渡って形成されることが好ましいものである。防磁層60は、磁束を反射する金属によって形成されている層である。
【0085】
上述したように本実施形態に係る暖房便座装置WS(暖房便座装置WS1も含む)は、トイレ室TR内に配置され着座使用可能な大便器CRに取り付けられ、使用者Hが着座するための便座WSbを有し、その便座WSbを暖めることができる暖房便座装置である。暖房便座装置WSは、便座本体10と、被加熱部である金属層40と、誘導加熱部53の一部である誘導加熱コイル30と、入室検知部としての入室検知センサー52と、制御部としてのCPU50とを備えている。
【0086】
便座本体10は、使用者Hが着座する着座面103aを有する着座面部103と、着座面103aに交わる側面101a,102aを有する外側側面部101,内側側面部102とを有し、少なくとも着座面部103及び外側側面部101,内側側面部102は磁束が内部を通っても電磁誘導が発生しない樹脂といった材料によって形成されている。被加熱部としての金属層40は、磁束が内部を通ることで電磁誘導が発生する磁性金属材料によって形成され、着座面部103に当接して設けられている。誘導加熱コイル30は、金属層40の内部を通るように磁束を発生させるように配置されている。入室検知センサー52は、トイレ室TR内への使用者Hの立ち入りを検知するように設けられている。CPU50は、磁束を発生させる発生指示信号と磁束の発生を停止させる停止指示信号とを選択的に誘導加熱部53に出力する。
【0087】
CPU50は、トイレ室TR内へ使用者Hが立ち入ったことを示す入室信号を入室検知センサー52より受信すると、その受信に応じて誘導加熱部へ発生指示信号を出力する一方で、使用者Hが大便器CRに近づいたと判断した場合に誘導加熱部53へ停止指示信号を出力する。便座本体10には、着座面103a側への磁束の通過を抑制する第一防磁部としても機能する金属層40と、側面101a,102a側であって少なくともトイレ室TR内に立ち入った使用者Hが近づいてくる方向への磁束の通過を抑制する第二防磁部として機能する外側金属板20及び内側金属板21と、が設けられている。第二防磁部としての外側金属板20及び内側金属板21による磁束の通過抑制度合いは、第一防磁部としての金属層40による磁束の通過抑制度合いよりも高くなっている。
【0088】
大便器CRが配置されているトイレ室TRには、いつも使用者Hがいるわけではなく、図1に示すように大便器CRを使用する際に使用者Hが入室するものである。トイレ室TRに入ってくる使用者Hは、トイレ室TRの入口のドアDRを通過し、その入口から大便器CRへと近づき、大便器CRに取り付けられた便座WSbに着座する。便座WSbを暖める機能は、このようにトイレ室TR内に入ってくる使用者Hが便座WSbに着座するタイミングまでに便座WSbを暖めることを満足するように求められている。そこで本実施形態では、使用者Hが着座する着座面103aを有する着座面部103に被加熱部としての金属層40を設け、誘導加熱コイル30によって発生させた磁束が金属層40の内部を通るように構成し、電磁誘導による素早い昇温機構を採用している。
【0089】
このように電磁誘導を利用した金属層40の即暖機能は、使用者Hのトイレ室TR内への立ち入りを検知したことに応じて誘導加熱コイル30への通電を行えばよいことから、省エネルギーの観点からも有用なものである。しかしながら、電磁誘導を利用した金属層40の昇温は、金属層40の内部を磁束が通ることによって実現されることから、金属層40を通った磁束が便座外部に漏れ出し、使用者Hへ影響を与えることが懸念される。そこで、電磁誘導による金属層40の即暖機能のメリットを確保しつつ、磁束の漏れによる使用者Hへの影響を低減させるため、上述したようなトイレ室TR特有の状況に着目した。
【0090】
具体的には、便座WSbを構成する便座本体10に、着座面103a側への磁束の通過を抑制する第一防磁部としても機能する金属層40と、側面101a,102a側であって少なくともトイレ室TR内に立ち入った使用者Hが近づいてくる方向への磁束の通過を抑制する第二防磁部として機能する外側金属板20及び内側金属板21と、を設けている。そして、外側金属板20及び内側金属板21による磁束の通過抑制度合いが、金属層40による磁束の通過抑制度合いよりも高いように構成している。このように構成することで、誘導加熱コイル30が金属層40を昇温するために磁束を発生させても、着座面103a側へは磁束を通過させ易く、側面101a,102a側であって少なくとも使用者Hが近づいてくる方向へは磁束を通過させ難いようにするものである。
【0091】
本実施形態では、便座本体10に金属層40と外側金属板20及び内側金属板21とを設け、側面101a,102a側であって少なくとも使用者Hが近づいてくる方向へは磁束を通過させ難いようにすることで、使用者Hがトイレ室TRに入室して大便器CRに近づいてくる間に磁束を発生させても、その近づいてくる使用者H側に磁束が漏れ出すことを有効に抑制することができる。また、便座本体10に金属層40と外側金属板20及び内側金属板21とを設け、着座面103a側へは磁束を通過させ易いようにすることで、金属層40を確実に昇温させ、使用者Hが便座WSbに着座するタイミングまでに確実に、金属層40及び便座本体10を含む便座WSbを昇温させることができる。
【0092】
このように本実施形態によれば、便座本体10に金属層40と外側金属板20及び内側金属板21とを設け、着座面103a側へは磁束を通過させ易く、側面101a,102a側であって少なくとも使用者Hが近づいてくる方向へは磁束を通過させ難いように構成することで、便座WSbの即暖性能を確保しつつ省エネルギー性も確保し、更には使用者Hへの安全性も十分に確保した暖房便座装置WSを提供することができる。
【0093】
また本実施形態では、外側金属板20及び内側金属板21の熱容量が金属層40の熱容量よりも高くなるように構成されている。
【0094】
上述したように本実施形態では、便座本体10は磁束が内部を通っても電磁誘導が発生しない材料によって形成する一方で、着座面部103に設けられる金属層40を磁束が通ることで電磁誘導が発生する材料によって構成することで金属層40を昇温させ、便座本体10の昇温に係わらず便座WSb全体としては昇温させている。そして本実施形態では、使用者Hが大便器CRに近づいたと判断した場合にCPU50が誘導加熱部53へ停止指示信号を出力するので、実際に使用者Hが着座するタイミングでは金属層40の更なる温度上昇は行われていない。
【0095】
便座本体10は電磁誘導によって昇温しないような材料によって形成されていることから、何らの工夫も講じなければ、使用者Hが便座WSbに着座した後には、金属層40の余熱のみで即暖機能が確保されることになる。金属層40は着座する使用者Hへ違和感を与えないように発熱するものであるから、金属層40は便座本体10を暖められるほど十分には昇温されていない。従って、便座本体10は金属層40から熱を奪うと共に、着座している使用者Hからも熱を奪うことになり、使用者Hは着座後に熱を奪われるような違和感を覚えることも考えられる。
【0096】
そこで本実施形態では、外側金属板20及び内側金属板21の熱容量が金属層40の熱容量よりも高くなるように構成することで、外側金属板20及び内側金属板21に熱を蓄えて徐々に便座本体10に受け渡す役割を果たさせることができ、上述したような違和感を使用者Hが覚えないように工夫している。
【0097】
また本実施形態では、外側金属板20及び内側金属板21は、磁束が内部に通ることで電磁誘導が発生する材料によって形成され、外側側面部101,内側側面部102に設けられており、第一防磁部としての機能は、被加熱部である金属層40によって果たされている。
【0098】
このように、第二防磁部としても機能する外側金属板20及び内側金属板21は、磁束がその内部を通ることで電磁誘導が発生する材料によって形成しているので、誘導加熱コイル30の磁束の発生に応じて発熱することができる。第二防磁部としても機能する外側金属板20及び内側金属板21の熱容量は第一防磁部としても機能する金属層40の熱容量よりも大きいので、第二防磁部としても機能する外側金属板20及び内側金属板21は、この発熱した熱を蓄える蓄熱機能を有することになる。従って、便座本体10の外側側面部101,内側側面部102に設けられる外側金属板20及び内側金属板21は、発熱することに加えその熱を蓄えることで磁束の漏れも抑制する機能を果たすので、誘導加熱コイル30で消費されるエネルギーを無駄に使うことなく、快適な便座の昇温を行うことができる。
【0099】
また本実施形態に係る暖房便座装置WSでは、図15を参照しながら説明したように、便座本体10の着座面103aを覆う便蓋WScaを、磁束の通過を抑制するように構成することも好ましい。また、便蓋WScaは、磁束を反射する材料によって形成される防磁層60を有することで、その機能を果たすことも好ましいものである。
【0100】
このように、便蓋WScaが磁束の通過を抑制するように構成しているので、便座本体10の着座面103aから漏れることを許容した磁束が便蓋WScaよりも更に外側へ通過することを抑制し、着座面103aを便蓋WScaで覆うことでより確実な防磁機能を実現することができる。また、防磁層60を設けることにより、着座面103aから漏れる磁束を便蓋WScaが反射することで防磁機能を果たしている。従って、便蓋WScaでは磁束によって電磁誘導を起こして発熱することがなく、便蓋WScaにおける発熱というエネルギーの無駄使いをすることがなく、全体としてより省エネルギーに資する暖房便座装置とすることができる。
【0101】
また本実施形態では、第一防磁部として機能する金属層40は、便座本体10の着座面103a上に配置され、第二防磁部として機能する外側金属板20及び内側金属板21は、便座本体10の内部に配置されている。
【0102】
このように、金属層40を便座本体10の着座面103a上に配置することで、使用者Hに金属層40を直接触れさせることができ、より効果的な即暖機能を実現することができる。また、外側金属板20及び内側金属板21は便座本体10の内部に配置するので、熱を蓄えて徐々に放出する機能と側面側への磁束の漏れを抑制する機能とをより効果的に実現することができる。
【0103】
本実施形態を外側金属板20及び内側金属板21による蓄熱の観点から把握すると、次のような特徴がある。本実施形態では、便座WSbの着座面部103に当接して設けられる第一被加熱部としての金属層40の熱容量を相対的に低くすることで、電磁誘導を利用した加熱によって金属層40を素早く昇温することができる。そしてこのように昇温のレスポンスに特化した第一被加熱部としての金属層40を設ける一方で、持続的な昇温を行うために、相対的に熱容量の高い第二被加熱部としての外側金属板20及び内側金属板21を設けている。
【0104】
熱容量の高い外側金属板20及び内側金属板21は、昇温のレスポンスは低いものの、蓄熱性能は高いものであるので、便座本体10に奪われる熱を補完する役割を果たすことができる。このように、便座本体10に第一被加熱部としての金属層40と第二被加熱部としての外側金属板20及び内側金属板21とを設け、金属層40よりも外側金属板20及び内側金属板21の熱容量を高めるという簡単な構成で、投入されるエネルギーを有効に活用し、磁束の通過が停止され金属層40の温度が低下した場合であっても、便座本体10に熱を奪われて温度が極端に低下することなく、外側金属板20及び内側金属板21から徐々に伝達される熱によって快適な着座使用を確保することができる。
【0105】
また本実施形態によれば、着座面部103の温度は、金属層40からの熱伝達によって上昇が開始され、その後、外側金属板20及び内側金属板21からの熱伝達による上昇が追随するように構成されている(図7及び、図7に関する上記記述参照)。
【0106】
このように、着座面部103の温度は、金属層40からの熱伝達によって上昇が開始され、その後、外側金属板20及び内側金属板21からの熱伝達による上昇が追随するように構成することで、使用者Hが着座した直後の温度保持は金属層40によって行う一方で、使用者Hが着座した後に徐々に温度低下することを抑制する温度保持は外側金属板20及び内側金属板21によって行うことが可能になる。従って、誘導加熱コイル30が発生させる磁束を増やすことなく、金属層40と外側金属板20及び内側金属板21との熱容量を異ならせるという簡単な構成で、着座初期の昇温と着座初期以降の温度維持とを少ないエネルギーで確実に行うことができる。
【0107】
また本実施形態では、金属層40は便座本体10の着座面103aに配置され、外側金属板20及び内側金属板21は便座本体10の内部であって、外側側面部101,内側側面部102に配置されている。
【0108】
このように、金属層40を着座面103a上に配置することで、金属層40の温度を直接的に使用者Hに届けている。従って、誘導加熱コイル30が発生する磁束を増やすことなく、少ない投入エネルギーで着座面103aを適温まで昇温することが可能になる。また、外側金属板20及び内側金属板21を便座本体10の内部であって外側側面部101,内側側面部102に配置することで、外気による冷却が抑制されて蓄熱を確実に行うことができ、着座面103aの温度維持に有効に利用することができる。
【0109】
また本実施形態では、金属層40と外側金属板20及び内側金属板21とは、着座面103a側から見通した場合に重なり合うように配置されており、外側金属板20及び内側金属板21から金属層40へと熱が伝達されるように構成されている。
【0110】
このように配置することで、外側金属板20及び内側金属板21が蓄積した熱を金属層40に積極的に伝達することができる。従って、より少ない投入エネルギーで、着座面103aを適温まで昇温すると共に、着座面103aの温度維持を確実に行うことができる。
【0111】
また本実施形態では、外側金属板20及び内側金属板21は、便座本体10の内壁に当接するように配置されている。このようにすることで、便座本体10に外側金属板20及び内側金属板21からの熱を、直接的且つ損失を最小限に止めて伝えることができる。従って、より少ない投入エネルギーで、着座面103aの温度維持を確実に行うことができる。
【0112】
また本実施形態では、図10を参照しながら説明した外側金属板20a及び内側金属板21aのように、内壁に当接する第一部分と、内壁に当接しない第二部分とを有することも好ましい。このように構成することで、内壁に当接する第一部分を介して、外側金属板20a及び内側金属板21aからの熱を便座本体70に、直接的且つ損失を最小限に止めて伝えることができる。
【0113】
また、外側金属板20a及び内側金属板21aは、図14を参照しながら説明した外側金属板20bのように、着座面部703に当接する第三部分と、着座面部703に当接しない第四部分とを有することも好ましい。このように構成することで、着座面部703に当接する第三部分を介して、外側金属板20bからの熱を便座本体70の着座面部703に、直接的且つ損失を最小限に止めて伝えることができる。
【0114】
また本実施形態では、外側金属板20a及び内側金属板21aは、便座本体10の内壁に部分的に設けられた突起部としてのリブ701h,701j,702h,702jに当接するように配置されている。また、外側金属板20a及び内側金属板21aは、リブ701h,701j,702h,702jによって挟まれて保持されている。
【0115】
このように、リブといった突起部を内壁に設けるという簡単な構成で、外側金属板20a及び内側金属板21aからの熱を便座本体70に確実に伝達することができる。また、外側金属板20a及び内側金属板21aをリブ701h,701j,702h,702jによって挟んで保持しているので、ネジや接着剤といった中間物を介在させずに、外側金属板20a及び内側金属板21aを便座本体70に直接接触させて保持することができる。従って、中間物の介在による熱伝達の損失を回避することができ、簡単な構成で、外側金属板20a及び内側金属板21aからの熱を便座本体70に確実に伝達することができる。
【0116】
また、外側金属板20a及び内側金属板21aは、使用者Hが着座した際に着座面部703に接触する着座領域Rhに対して熱を伝達することができるように、外側側面部701,内側側面部702及び着座面部703の少なくとも一方に当接されている。このように、使用者Hが着座した際に着座面に接触する着座領域Rhに対して熱を伝達することができるように外側金属板20a及び内側金属板21aを配置しているので、使用者Hが温感を感じることができる領域に直接的に熱を効率よく伝達することができる。
【0117】
また本実施形態を、抵抗加熱部54を設けて、蓄熱の補助をさせる観点から捉えると次のような特徴がある。図8に示すように本実施形態では、抵抗加熱部54を構成する抵抗加熱体541を外側金属板20及び内側金属板21に当接させて設けることで、外側金属板20及び内側金属板21を介して抵抗加熱体541が発生する熱を便座本体10に受け渡すことができる。抵抗加熱体541の発熱は、外側金属板20及び内側金属板21の発熱とは独立して行うことができるので、便座本体10の温度ムラを確実に抑制することができる。
【0118】
本実施形態では、抵抗加熱体541を、誘導加熱コイル30よりも便座本体10の着座面103a側と対向する底面104a側に配置している(図8参照)。このように、抵抗加熱体541を誘導加熱コイル30よりも底面104a側に配置することで、誘導加熱コイル30から金属層40に向う磁束が抵抗加熱体541を通らないように配置することができる。抵抗加熱体541は金属で形成されているため、磁束が通ると電磁誘導が発生し、金属層40に向う磁束が減少してしまう。そこで、誘導加熱コイル30から金属層40に向う磁束が抵抗加熱体541を通らないように構成することで、金属層40による即暖機能を十分に発揮させつつ、抵抗加熱体541による補助昇温効果も十分に発揮させることができる。
【0119】
また本実施形態では、抵抗加熱体541を、外側金属板20及び内側金属板21よりも内側に配置している。このように配置することで、外側金属板20及び内側金属板21による防磁効果を阻害せず、抵抗加熱体541が発生する熱も外部に逃すことがない。従って、金属層40による即暖機能を十分に発揮させつつ、抵抗加熱体541による補助昇温効果も十分に発揮させることができる。
【0120】
以上、具体例を参照しつつ本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明はこれらの具体例に限定されるものではない。すなわち、これら具体例に、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。例えば、前述した各具体例が備える各要素およびその配置、材料、条件、形状、サイズなどは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。また、前述した各実施の形態が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。
【符号の説明】
【0121】
10:便座本体
20:外側金属板
20a:外側金属板
20b:外側金属板
21:内側金属板
21a:内側金属板
30:誘導加熱コイル
40:金属層
40a:金属層
51:着座検知センサー
52:入室検知センサー
53:誘導加熱部
54:抵抗加熱部
55:局部洗浄部
56:便蓋駆動部
60:防磁層
70:便座本体
101:外側側面部
101a,102a:側面
102:内側側面部
103:着座面部
103a:着座面
104:底面部
104a:底面
105:コーティング層
401,402:切り欠き部分
541:抵抗加熱体
701:外側側面部
701h,701j,702h,702j:リブ
702:内側側面部
703:着座面部
704:底面部
CR:大便器
DR:ドア
H:使用者
Rh:着座領域
TR:トイレ室
WS:暖房便座装置
WS1:暖房便座装置
WSa:装置本体
WSb:便座
WSba:便座
WSc:便蓋
WSca:便蓋
WSd:リモートコントローラー
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トイレ室内に配置され着座使用可能な大便器に取り付けられ、使用者が着座するための便座を有し、その便座を暖めることができる暖房便座装置であって、
使用者が着座する着座面を有する着座面部と、前記着座面に交わる側面を有する側面部とを有し、少なくとも前記着座面部及び前記側面部は磁束が内部を通っても電磁誘導が発生しない材料によって形成され、便座の一部を構成する便座本体と、
磁束が内部を通ることで電磁誘導が発生する材料によって形成され、前記着座面部に当接して設けられている第一被加熱部と、
前記被加熱部の内部を通るように磁束を発生させる誘導加熱部と、
トイレ室内への使用者の立ち入りを検知する入室検知部と、
磁束を発生させる発生指示信号と磁束の発生を停止させる停止指示信号とを選択的に前記誘導加熱部に出力する制御部と、を備え、
前記制御部は、トイレ室内へ使用者が立ち入ったことを示す入室信号を前記入室検知部より受信すると、その受信に応じて前記誘導加熱部へ前記発生指示信号を出力する一方で、使用者が大便器に近づいたと判断した場合に前記誘導加熱部へ前記停止指示信号を出力するものであって、
前記便座本体には、前記側面側であって少なくともトイレ室内に立ち入った使用者が近づいてくる方向に、磁束が内部を通ることで電磁誘導が発生する材料によって形成された第二被加熱部が設けられており、
前記第二被加熱部の熱容量が前記第一被加熱部の熱容量よりも高くなるように構成されていることを特徴とする暖房便座装置。
【請求項2】
前記着座面部の温度は、前記第一被加熱部からの熱伝達によって上昇が開始され、その後、前記第二被加熱部からの熱伝達による上昇が追随することを特徴とする請求項1に記載の暖房便座装置。
【請求項3】
前記第一被加熱部は前記便座本体の前記着座面に配置され、前記第二被加熱部は前記便座本体の内部であって、前記側面部に配置されていることを特徴とする請求項2に記載の暖房便座装置。
【請求項4】
前記第一被加熱部と前記第二被加熱部とは、前記着座面側から見通した場合に重なり合うように配置されており、前記第二被加熱部から前記第一被加熱部へと熱が伝達されるように構成されていることを特徴とする請求項3に記載の暖房便座装置。
【請求項5】
前記第二被加熱部は、前記便座本体の内壁に当接するように配置されていることを特徴とする請求項4に記載の暖房便座装置。
【請求項6】
前記第二被加熱部は、前記内壁に当接する第一部分と、前記内壁に当接しない第二部分とを有することを特徴とする請求項5に記載の暖房便座装置。
【請求項7】
前記第二被加熱部は、前記着座面部に当接する第三部分と、前記着座面部に当接しない第四部分とを有することを特徴とする請求項6に記載の暖房便座装置。
【請求項8】
前記第二被加熱部は、前記便座本体の内壁に部分的に設けられた突起部に当接するように配置されていることを特徴とする請求項5に記載の暖房便座装置。
【請求項9】
前記第二被加熱部は、前記突起部によって挟まれて保持されていることを特徴とする請求項8に記載の暖房便座装置。
【請求項10】
前記第二被加熱部は、使用者が着座した際に前記着座面に接触する領域に対して熱を伝達することができるように、前記外側の側面及び前記着座面部の少なくとも一方に当接されていることを特徴とする請求項6又は7に記載の暖房便座装置。
【請求項1】
トイレ室内に配置され着座使用可能な大便器に取り付けられ、使用者が着座するための便座を有し、その便座を暖めることができる暖房便座装置であって、
使用者が着座する着座面を有する着座面部と、前記着座面に交わる側面を有する側面部とを有し、少なくとも前記着座面部及び前記側面部は磁束が内部を通っても電磁誘導が発生しない材料によって形成され、便座の一部を構成する便座本体と、
磁束が内部を通ることで電磁誘導が発生する材料によって形成され、前記着座面部に当接して設けられている第一被加熱部と、
前記被加熱部の内部を通るように磁束を発生させる誘導加熱部と、
トイレ室内への使用者の立ち入りを検知する入室検知部と、
磁束を発生させる発生指示信号と磁束の発生を停止させる停止指示信号とを選択的に前記誘導加熱部に出力する制御部と、を備え、
前記制御部は、トイレ室内へ使用者が立ち入ったことを示す入室信号を前記入室検知部より受信すると、その受信に応じて前記誘導加熱部へ前記発生指示信号を出力する一方で、使用者が大便器に近づいたと判断した場合に前記誘導加熱部へ前記停止指示信号を出力するものであって、
前記便座本体には、前記側面側であって少なくともトイレ室内に立ち入った使用者が近づいてくる方向に、磁束が内部を通ることで電磁誘導が発生する材料によって形成された第二被加熱部が設けられており、
前記第二被加熱部の熱容量が前記第一被加熱部の熱容量よりも高くなるように構成されていることを特徴とする暖房便座装置。
【請求項2】
前記着座面部の温度は、前記第一被加熱部からの熱伝達によって上昇が開始され、その後、前記第二被加熱部からの熱伝達による上昇が追随することを特徴とする請求項1に記載の暖房便座装置。
【請求項3】
前記第一被加熱部は前記便座本体の前記着座面に配置され、前記第二被加熱部は前記便座本体の内部であって、前記側面部に配置されていることを特徴とする請求項2に記載の暖房便座装置。
【請求項4】
前記第一被加熱部と前記第二被加熱部とは、前記着座面側から見通した場合に重なり合うように配置されており、前記第二被加熱部から前記第一被加熱部へと熱が伝達されるように構成されていることを特徴とする請求項3に記載の暖房便座装置。
【請求項5】
前記第二被加熱部は、前記便座本体の内壁に当接するように配置されていることを特徴とする請求項4に記載の暖房便座装置。
【請求項6】
前記第二被加熱部は、前記内壁に当接する第一部分と、前記内壁に当接しない第二部分とを有することを特徴とする請求項5に記載の暖房便座装置。
【請求項7】
前記第二被加熱部は、前記着座面部に当接する第三部分と、前記着座面部に当接しない第四部分とを有することを特徴とする請求項6に記載の暖房便座装置。
【請求項8】
前記第二被加熱部は、前記便座本体の内壁に部分的に設けられた突起部に当接するように配置されていることを特徴とする請求項5に記載の暖房便座装置。
【請求項9】
前記第二被加熱部は、前記突起部によって挟まれて保持されていることを特徴とする請求項8に記載の暖房便座装置。
【請求項10】
前記第二被加熱部は、使用者が着座した際に前記着座面に接触する領域に対して熱を伝達することができるように、前記外側の側面及び前記着座面部の少なくとも一方に当接されていることを特徴とする請求項6又は7に記載の暖房便座装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図5】
【図6】
【図7】
【図9】
【図10】
【図13】
【図4】
【図8】
【図11】
【図12】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図5】
【図6】
【図7】
【図9】
【図10】
【図13】
【図4】
【図8】
【図11】
【図12】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2012−75557(P2012−75557A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−221990(P2010−221990)
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】
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