説明

暖房便座

【課題】材料ロスを減らすとともに、成形金型のコストを低減することができる暖房便座を提供する。
【解決手段】暖房便座2は、輻射エネルギ透過性の材料で形成されて内部に空洞を有する着座ケース8と、着座ケース8の空洞7内に配置された輻射エネルギを放射する輻射型発熱体9と、空洞7内の下方に配置されて輻射型発熱体9の放射する輻射エネルギを反射する反射体10とを備えた暖房便座であって、前記反射体10は分割された概略L字形状の分割反射部材11とこれと対称形の概略逆L字形状の分割反射部材12からU字形状に配置してなることを特徴とする。従来輪状に打ち抜いて成形していた反射体をL字形状と逆L字形状に分割した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は使用時のみ加熱する暖房便座に関し、詳細には、より材料のロスを少なくしてコストダウンを図った暖房便座に関するものである。
【背景技術】
【0002】
製作が容易で
最近、使用者がトイレに入室した後、便座に着座するまでの短時間で便座の着座部を適温に昇温させ、ヒーターを常時通電させておいて便座を加温しておく必要がなく、極めて省エネルギーな暖房便座が各種提案されている。
【0003】
例えば、輻射エネルギ透過性の材料で形成した着座部と、前記着座部の内部に設け、輻射エネルギを放射する輻射型発熱体と、前記着座部の外表面側に設け、前記輻射エネルギを吸収して前記着座部の外面を暖房する輻射エネルギ吸収層と、人体に損傷を与えない温度で前記着座部を加熱するように前記輻射型発熱体の通電を制御する制御部とを備えた暖房便座が提案されている(特許文献1参照)。
【0004】
これらの従来の暖房便座では、着座部を上側に有する便座の空洞部の下部に設けられた輻射エネルギを反射する輻射エネルギ反射板は、1枚の板状材料からプレス成形により輪状に形成されている。この輻射エネルギ反射板は内側と外側の端部全周に上方への折り曲げ部を有しており、その折り曲げ部により、輻射型発熱体であるランプヒータから放射状に放射された輻射エネルギが偏向される。そして、輻射エネルギ反射板はランプヒータから離れている着座部の外周縁部および内周縁部の輻射エネルギ密度を上げるように作用し、便座の上部である着座部への輻射エネルギ分布の均一化を図るように構成をしている。
【特許文献1】特開2006−34311号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のような暖房便座は、輻射エネルギ反射板を1枚の板状材から輪状に形成しており、輪状に成形するために大きな金型が必要であると共に、材料ロスが多くなり、それだけコストが多くかかった。
【0006】
本願発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、プレス成型時に廃棄する部分を少なくして材料ロスを減らし、コストを低減することができる暖房便座を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、請求項1記載の発明に暖房便座は、輻射エネルギ透過性の材料で形成されて内部に空洞を有する着座ケースと、該着座ケースの空洞内に配置された輻射エネルギを放射する輻射型発熱体と、空洞内の下方に配置されて該輻射型発熱体の放射する輻射エネルギを反射する反射体とを備えた暖房便座であって、前記反射体は分割された分割反射部材からなることを特徴とする。
【0008】
請求項2記載の発明に係る暖房便座は、請求項1記載の暖房便座において、前記反射体は概略形状がL字形の分割反射部材とこれと対称形の概略形状が逆L字形の分割反射部材とで概略形状がU字形とされ、かつ、開放端が後方に位置して配置されてなることを特徴とする。
【0009】
請求項3記載の発明に係る暖房便座は、請求項1または2記載の暖房便座において、前記反射体は前記L字形状とこれと対称形の逆L字形状の分割反射部材と補助反射部材とが輪状に配置されてなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1記載の発明によれば、素早く暖められ、かつ着座面の温度分布が均一になることによって、快適な暖房が得られ、省エネ効果も得ることができる。さらに、材料のロスを減らすことができ、プレス金型を小さくでき、コストを低減することができる。
【0011】
請求項2記載の発明によれば、請求項1の効果に加えて、L字形状と逆L字形状の分割部材とすることで、金型を1つで良くして一層コストを低減することができる。
【0012】
請求項3記載の発明によれば、請求項1の効果に加えて、着座面の後部の温度分布をより均一にすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。図1は本発明の実施の形態に係る暖房便座の上部を破断した平面図、図2は本発明の実施の形態における暖房便座を示す断面図、図3は暖房便座を備えた便器の斜視図である。この実施の形態の暖房便座2は、便器本体3の後端部に回動自在に設けられ、便蓋4とともに便器1を構成している。また、便蓋4も便器本体3の後端部に回動自在に設けられている。
【0014】
暖房便座2は、上ケース5と下ケース6とから内部に空洞7を有するように形成された着座ケース8と、着座ケース8の空洞7内に配置された輻射エネルギを放射する輻射型発熱体9と、空洞7内の前方の下方に配置された反射体10とを備える。暖房便座2の着座ケース8は、上ケース5と下ケース6の2つの部材を、それぞれの内周縁および外周縁で溶着接合することにより形成され、その内部には水等の浸入を阻止できる密閉された空洞部7を有する構造とすると共に、剛性を有する構造矩体として機能するようになっている。
【0015】
暖房便座2の反射体10はアルミニウム板からなり、分割された概略の形状がL字形の分割反射部材11と、これと対称形の概略の形状が逆L字形の分割反射部材12とから構成され、U字形状に便座空洞7内の下部に配置される。反射体10は、概略の形状がU字形状に配置される分割反射部材11、12のU字の開放端部にあたる着座ケース8の後端部の下方に配置される補助反射部材13を有している。また、分割反射部材11、12は、長手に沿う縁が上方に折り曲げられた縁部11a,12aを有している。分割反射部材11、12は、アルミニウム板から打ち抜き成形により形成され、補助分割部材13はアルミシートにより形成されている。
【0016】
反射体10上方の輻射型発熱体9から放射状に放射された輻射エネルギは分割反射部材11、12により反射される。反射体9の縁方向に放射された輻射エネルギは分割反射部材11、12の折り曲げ部11a,12aにより中心側に反射される。
【0017】
このように、着座ケース8前部の反射体10をL字形の分割反射部材11と対称形の逆L字形の分割反射部材12とすることにより、成形金型をL字形状のもの1個で逆L字形状の加工もできるので、金型を1個ですますことができ、コストを低減することができる。また輪状に打ち抜かなくても良く、L字形と逆L字形を交互に成形するように型取り配置ができるので原料ロスを大幅に低減することができる。
【0018】
着座ケース8の上ケース5を効率よく加熱する必要のある便座の前部は輻射エネルギを効率よく反射するように板材から成形した分割反射部材11,12を配置し、それほど加熱を要しない便座後部はアルミシート等の簡易な補助反射部材とすることでも、暖房便座のコストを低減することができる。
【0019】
また、着座ケース8の上ケース5はアルミニウム材料で構成され、表面に表面硬度、耐薬品性能、光沢等を考慮した光遮断層である表面化粧層14が形成されている。下ケース6は、例えば、透明ポリプロピレン樹脂材料を平均厚み2.5mmにて成形されている。上ケース5の表面化粧層14の厚みは、例えば0.2mmとされ、上ケース5層及び表面化粧層14は輻射型発熱体9から放射された輻射エネルギを完全に吸収し、熱容量が非常に小さいので瞬時に昇温すると同時に、放射可視光を完全に遮蔽する。
【0020】
また、着座ケース8の上ケース5には、その内面に温度検知手段であるサーミスタ15が設けられており、上ケース5の温度を検知できるようになっている。このサーミスタ15は2本の輻射型発熱体9が加熱する着座部に対応して設けているので、それぞれの温度を別制御するきめ細かい温度制御が可能である。また、異常温度上昇、輻射型発熱体9の発熱停止なども検知できて、適切に対応できる。
【0021】
輻射型発熱体9は、着座ケース8の前部と後部にそれぞれ1本を、一部重複してい配置している。輻射型発熱体9は、いわゆるランプヒータが用いられている。輻射型発熱体(以下、ランプヒータという)9は、ガラス管16の内部にタングステンからなるフィラメント17を貫通し、ハロゲンガス18を封入して構成されている。フィラメント17の発熱に伴ってハロゲン化タングステンを形成するハロゲンサイクル反応を繰り返すことにより、フィラメント17の消耗を防止するよう作用している。この作用により熱容量の非常に小さいフィラメント17を熱源とすることができ、極めて温度上昇の急峻な立ち上がりを行わせることができる。
【0022】
ランプヒータ9の近傍には、ランプヒータ9と電気的に直列接続されたサーモスタット19および温度ヒューズ20が設けられ、万一の不安全事態に対して温度過昇を防止するよう作用する。サーモスタット19および温度ヒューズ20は2本のランプヒータ9のそれぞれに対応するように設ければ、安全性は更に向上する。このランプヒータ9は、弾性材であるゴムブッシュ21を有するランプヒータ固定具22により分割反射部材11,12に固定され、分割反射部材11,12はゴム足23を介して便座ケース8の下ケース6に固定されている。
【0023】
また、暖房便座2はその回動軸24に、図示していない、電極が形成され、本体3の軸受け部とともに暖房便座2の便座位置検知手段を構成し、暖房便座2が起立状態にあるか、着座して使用される略水平の使用位置にあるかを検出するようになっている。便座本体3には、室温検知手段としての室温サーミスタの検知信号を取り込んでランプヒータ9の温度制御を行い、かつ暖房便座2のランプヒータ9に通電することにより昇温を開始した時点からの経過時間をカウントするタイマー部を有するマイクロコンピュータを主体とする制御部(図示していない)が設けられている。
【0024】
そして、制御部は人体検知センサや着座検知センサと便座位置検知手段の信号を取り込んでランプヒータ9への通電の開始と停止の制御と、着座ケース8のサーミスタ15、室温サーミスタからの信号を取り込んで採暖面である着座部の温度が適温である所定の温度になるようランプヒータ9の温度制御が行えるようになっている。
【0025】
以上のように構成された暖房便座について、以下に、その動作、作用を説明する。使用者がトイレに入室した場合、人体検知センサがそれを検知し、その検知信号が制御部に送られる。このとき、便座位置検知手段の信号により暖房便座2が略水平の使用位置にあるのを確認すると、制御部はランプヒータ9に通電を開始する。
【0026】
この初期通電により投入エネルギは瞬時に輻射エネルギに変換され、フィラメント17より出射されガラス管16から直接又は分割反射部材11,12及び補助反射部材を経て上ケース5に放射される。ランプヒータ9の輻射エネルギは、着座ケース8の上部材である上ケース5の内部で一部吸収あるいは反射されるが、その大半は透過し着座部の表面化粧層14の昇温に寄与する。
【0027】
従って、ランプヒータ9は、人体検知センサにより使用者がトイレ室に入室したことを検知した後に着座部の昇温を開始し、使用者が衣服を下ろし、着座ケース8に着座するまでの例えば、数秒間で着座ケース8を適温まで瞬時に昇温させることができる。そのため、常時通電させておいて暖房便座2を保温させておく必要のない非常に省電力型の暖房便座を実現できる。
【0028】
またこの時、輻射エネルギを反射する分割反射部材11,12の折り曲げ部11a、12aにより、ランプヒータ9から放射状に放射される輻射エネルギが偏向される。そのため、ランプヒータ9からの輻射エネルギを着座ケース8に向かって効率よく取り出す分割反射部材11,12ではあるが、ランプヒータ9から離れている着座ケースの外周縁部および内周縁部の輻射密度を上げるようにも作用して、上部ケース5への輻射エネルギ分布の均一化することができる。
【0029】
なお、本願発明は上記実施の形態に限られないことは勿論である。例えば、輻射エネルギを反射する反射体10を、上記実施の形態においては、L字形状の分割反射部材11と、逆L字形状の分割反射部材11と、補助反射部材13で構成し、分割反射部材11、12をアルミニウム板材で成形し、補助反射部材をアルミニウムシートで形成する例で示したが、全部をアルミニウム板材で成形しても良い。また、分割反射部材を便座に沿うような円弧状に形成したものであっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の実施の形態に係る暖房便座を示す上面を破断した平面図である。
【図2】その暖房便座の断面図である。
【図3】暖房便座を備えた便器の斜視図である。
【符号の説明】
【0031】
1 便器
2 暖房便座
3 便器本体
4 便蓋
5 上ケース
6 下ケース
7 空洞
8 着座ケース
9 輻射型発熱体(ランプヒータ)
10 反射体
11、12 分割反射部材
13 補助反射部材
14 表面化粧層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
輻射エネルギ透過性の材料で形成されて内部に空洞を有する着座ケースと、該着座ケースの空洞内に配置された輻射エネルギを放射する輻射型発熱体と、空洞内の下方に配置されて該輻射型発熱体の放射する輻射エネルギを反射する反射体とを備えた暖房便座であって、前記反射体は分割された分割反射部材からなることを特徴とする暖房便座。
【請求項2】
前記反射体は概略形状がL字形の分割反射部材とこれと対称形の概略形状が逆L字形の分割反射部材とで概略形状がU字形とされ、かつ、開放端が後方に位置して配置されてなることを特徴とする請求項1記載の暖房便座。
【請求項3】
前記反射体は前記L字形状とこれと対称形の前記逆L字形状の分割反射部材と補助反射部材とが輪状に配置されてなることを特徴とする請求項1または2記載の暖房便座。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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