説明

暖房便座

【課題】着座面の幅方向全体に渡り効率的に加温することができ、着座面の温度ムラも抑制できる暖房便座を提供する。
【解決手段】上面部8が着座面9となる高熱伝導性の着座部材6の幅方向の両側縁部に高分子材料製の嵌合部材14a、14bが一体に設けられた着座部5と、着座部5の下部に配置され、着座部5の嵌合部材14a、14bと嵌合して接合された便座ベース17とを備え、着座部5と便座ベース17とから形成される空洞部23に着座面9を加温するための加温手段が設けられた暖房便座2であって、着座部材6の下面部10における少なくとも幅方向の略全体に渡り加温手段として面状ヒータ24が設けられ、面状ヒータ24の幅方向の中央部28に、着座部材6の幅方向の両側縁部の嵌合部材14a、14bから離間して、面状ヒータ24の熱を放熱する放熱部材29が設けられていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、暖房便座に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、暖房便座として、加温手段のヒータに常時通電して着座面を加温するものや、さらに近年では、使用時のみヒータに通電して加温を行い瞬時に着座面を暖める瞬間暖房式のものが提案されている(特許文献1〜4参照)。
【0003】
このような従来の暖房便座は、金属製等の高熱伝導性の着座部材と合成樹脂製の便座ベースとから形成される空洞部に着座部材を加温するためのヒータが設けられた構造を有している。
【0004】
このような着座部材と便座ベースとを接合させる構造として、特許文献4には、高分子材料製の嵌合部材をインサート成形により金属製の着座部材の幅方向の両側縁部に一体化し、この嵌合部材を便座ベースに嵌合して接合する構造が提案されている。この構造によれば、着座部材と便座ベースとの接合部における強度を確保し、熱等による変形やひずみに対する耐久性を得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−110837号公報
【特許文献2】特開2008−036064号公報
【特許文献3】実公昭56−039439号公報
【特許文献4】特開2008−105325号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献4のように着座部材に嵌合部材を一体化した構造では、使用時に着座部材を加温したときに、着座部材の幅方向の両側縁部の近傍では、着座部材と一体化した嵌合部材が着座部材の熱を奪うことで、着座部材の中央部に比べて温度上昇に遅れが生じる。そのため、着座面は幅方向に温度ムラが生じることになる。
【0007】
そして加温手段として着座部材の下面部に幅方向の略全体に渡り面状ヒータを設けた場合、温度上昇が早い着座部材の中央部の温度を検知し、着座部材の中央部の温度が熱くなり過ぎないように面状ヒータへの最大消費電力での通電時間を制御することになる。
【0008】
従って、着座部材の両側縁部の近傍が嵌合部材への放熱により十分に暖まっていなくても、温度上昇の早い着座部材の中央部が一定温度まで上昇すると面状ヒータへの最大消費電力での通電を停止しなければならない。そのため、着座部材の両側縁部の近傍まで効率的に加温することができないという問題点があった。
【0009】
本発明は、以上の通りの事情に鑑みてなされたものであり、着座面の幅方向全体に渡り効率的に加温することができ、着座面の温度ムラも抑制できる暖房便座を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記の課題を解決するために、以下のことを特徴としている。
【0011】
第1に、本発明の暖房便座は、上面部が着座面となる高熱伝導性の着座部材の幅方向の両側縁部に高分子材料製の嵌合部材が一体に設けられた着座部と、着座部の下部に配置され、着座部の嵌合部材と嵌合して接合された便座ベースとを備え、着座部と便座ベースとから形成される空洞部に着座面を加温するための加温手段が設けられた暖房便座であって、着座部材の下面部における少なくとも幅方向の略全体に渡り加温手段として面状ヒータが設けられ、面状ヒータの幅方向の中央部に、着座部材の幅方向の両側縁部の嵌合部材から離間して、面状ヒータの熱を放熱する放熱部材が設けられている。
【0012】
第2に、上記第1の暖房便座において、着座部材は、金属製である。
【発明の効果】
【0013】
上記第1および第2の発明によれば、面状ヒータの幅方向の中央部に、着座部材の幅方向の両側縁部の嵌合部材から離間して放熱部材を設けることで、面状ヒータの幅方向の全体からの発熱のうち中央部からの発熱のみが放熱部材に放熱される。従って、着座部材の中央部の温度上昇が抑制され、面状ヒータへの最大消費電力での通電時間を長くすることができる。そのため、着座部材から嵌合部材への放熱により温度上昇が遅くなる着座部材の両側縁部の近傍も十分に加温することができ、着座面の幅方向全体に渡り効率的に加温することができる。さらに、着座部材の中央部と両側縁部の近傍との温度上昇の差異が緩和されて温度差を小さくすることができるため、着座面の温度ムラも抑制され、使用者に不快感を与えることを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の暖房便座の実施形態を示す断面図である。
【図2】図1の暖房便座の平面図である。
【図3】図1の暖房便座を備えた便器の斜視図である。
【図4】面状ヒータの通電制御シーケンスを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
【0016】
図1は、本発明の暖房便座の実施形態を示す断面図、図2は、図1の暖房便座の平面図、図3は、図1の暖房便座を備えた便器の斜視図である。なお、図1の断面図は図2のA−A線の断面を示す。
【0017】
図1および図2に示す本実施形態の暖房便座2は、着座部5と、着座部5の下部に配置された便座ベース17とを備え、着座部5と便座ベース17とから形成される空洞部23には、着座部5を加温するための加温手段として面状ヒータ24を備えている。
【0018】
着座部5は、金属製の成形品である着座部材6を備え、着座部材6は、図2に示すように平面視において中央に開口部7を有する形状であり、上面部8が着座面9を構成し、また図1に示すように、内部に空洞部23が形成されるように幅方向の両側縁部、すなわち内周縁部11および外周縁部12は下方に屈曲して側面部を構成している。
【0019】
着座部材6を構成する金属材料としては、例えば、アルミニウム等の熱伝導性の高いものを用いることができる。また、このような金属材料の表面に、表面硬度、耐薬品性能、光沢等を考慮した表面化粧層を設けるようにしてもよい。
【0020】
着座部5はさらに、着座部材6の内周縁部11および外周縁部12に、高分子材料製の嵌合部材14a、14bを備えている。
【0021】
嵌合部材14a、14bは、着座部材6の内周縁部11および外周縁部12のそれぞれの内面部に、射出によるインサート成形により着座部材6と一体に設けられ、下端部には嵌合部15が形成されている。
【0022】
嵌合部材14a、14bを構成する高分子材料としては、例えば、射出によるインサート成形に適した熱可塑性樹脂、エラストマー等を用いることができる。
【0023】
便座ベース17は、平面視が着座部5と略同一の板形状であり、合成樹脂製の成形品である。そして幅方向の両側縁部、すなわち内周縁部18および外周縁部19の上面側に嵌合部20が形成されている。
【0024】
便座ベース17を構成する合成樹脂としては、例えば、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂等を用いることができる。
【0025】
着座部5と便座ベース17とは、それぞれの内周縁部11、18および外周縁部12、19で着座部5の嵌合部15と便座ベース17の嵌合部20とを嵌合して接合される。
【0026】
本実施形態では、着座部5の嵌合部15には凹部16が形成され、便座ベース17の嵌合部20には端部突起21が形成されている。そして凹部16に端部突起21を挿入し、次いで凹部16に2次成形用の樹脂22を充填溶着することにより、嵌合構造を備えた着座部5と便座ベース17との接合が形成される。
【0027】
このようにして着座部5と便座ベース17とが一体化され、これらの内部には空洞部23が形成される。このとき、面状ヒータ24は、着座部5と便座ベース17とを接合する前に、予め着座部材6の下面部10に設置しておくことにより、空洞部23内に収容される。
【0028】
本実施形態では、面状ヒータ24として、通電により高効率に発熱するヒータ線25を表裏面のシート状の絶縁層26a、26b内に配置したものを用いている。
【0029】
面状ヒータ24の下面部27には、その幅方向の中央部28に、着座部材6の幅方向の両側縁部の嵌合部材14a、14bから離間して、面状ヒータ24の熱を放熱する放熱部材29が貼着されている。
【0030】
放熱部材29としては、例えば、銅、アルミニウム等の金属板や、これらの金属板に放熱フィン等を形成したもの、グラファイトシート等を用いることができる。
【0031】
以上のように構成される本実施形態の暖房便座2は、図3に示すように、便器本体3の後端部に回動自在に軸支され、便蓋4も便器本体3の後端部に回動自在に軸支される。そして暖房便座2、便器本体3、および便蓋4は便器1を構成する。
【0032】
そして便器1の使用時には、暖房便座2の着座面9は面状ヒータ24の発熱により、瞬時に昇温するようになっている。
【0033】
具体的には、図3の便器本体3は、マイクロコンピュータ等を有する不図示の制御部を備えている。この制御部は、マイクロコンピュータに記憶された通電制御シーケンスに従って面状ヒータ24への通電の開始と停止の制御を行い、人体を検知するセンサや着座を検知するセンサ等により、使用者の存在や使用者の暖房便座2への着座等を検知すると、面状ヒータ24への通電を開始する。
【0034】
通電制御シーケンスは、図4(a)に示すように、面状ヒータ24への通電を開始した後、着座部材6に設置した不図示の温度検知手段により温度上昇が早い着座部材6の中央部13の温度を検知した結果に基づき、着座部材6の幅方向の中央部13の温度が熱くなり過ぎないように、同図点線内の最大消費電力での通電時間を制御する。そして最大消費電力での通電後、それよりも消費電力の小さい通電状態を経由して通電を停止するようになっている。
【0035】
このとき、本実施形態では面状ヒータ24の幅方向の中央部28に放熱部材29を設けているので、面状ヒータ24の幅方向の中央部28の発熱が放熱部材29により放熱されて中央部13の温度上昇が抑制され、図4(a)に示すように、放熱部材29を設けない図4(b)の場合に比べて面状ヒータ24の最大消費電力での通電時間を長くすることができる。
【0036】
そのため、着座部材6から嵌合部材14a、14bへの放熱により温度上昇が遅くなる着座部材6の幅方向の両側縁部の近傍も十分に加温することができる。そして放熱部材29は、面状ヒータ24の幅方向の中央部28に、着座部材6の幅方向の両側縁部の嵌合部材14a、14bから離間して設けているので、着座部材6の幅方向の両側縁部の近傍は、面状ヒータ24の放熱部材29を設けていない部分からの強い発熱により加温されることになる。従って、着座面9の幅方向全体に渡り効率的に加温することができる。
【0037】
さらに、着座部材6の幅方向の中央部13と両側縁部の近傍との温度上昇の差異が緩和されて温度差を小さくすることができるため、着座面9の温度ムラも抑制され、使用者に不快感を与えることを防止できる。
【0038】
以上に、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は何らこの実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内において各種の変更が可能である。
【0039】
例えば、本実施形態では着座部材6として金属製の成形体を用いたが、高熱伝導性のものであれば金属以外の材料を用いることもできる。
【0040】
着座部5の嵌合部15と便座ベース17の嵌合部20との嵌合構造は、本実施形態のような凹部16と端部突起21とによる構造以外のものであってもよい。
【0041】
面状ヒータ24は、通電により面状に発熱して着座部材6を加温できるものであれば、従来より知られているもの等、各種のものを用いることができる。
【符号の説明】
【0042】
2 暖房便座
5 着座部
6 着座部材
8 上面部
9 着座面
10 下面部
13 中央部
14a、14b 嵌合部材
17 便座ベース
23 空洞部
24 面状ヒータ
28 中央部
29 放熱部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面部が着座面となる高熱伝導性の着座部材の幅方向の両側縁部に高分子材料製の嵌合部材が一体に設けられた着座部と、着座部の下部に配置され、着座部の嵌合部材と嵌合して接合された便座ベースとを備え、着座部と便座ベースとから形成される空洞部に着座面を加温するための加温手段が設けられた暖房便座であって、着座部材の下面部における少なくとも幅方向の略全体に渡り加温手段として面状ヒータが設けられ、面状ヒータの幅方向の中央部に、着座部材の幅方向の両側縁部の嵌合部材から離間して、面状ヒータの熱を放熱する放熱部材が設けられていることを特徴とする暖房便座。
【請求項2】
着座部材は、金属製であることを特徴とする請求項1に記載の暖房便座。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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