説明

暖房便座

【課題】便座本体の温度の測定精度が高く、便座本体の温度制御を的確に行うことができる暖房便座を提供する。
【解決手段】便座本体2の外殻は、その上面側の座表体8と下面側の座裏体9とが組み合わされることにより構成されている。座面部8aの裏面には、ヒータ線7からの熱を該座面部8aに均一に伝えるために、アルミや銅などの熱伝導率の大きい金属の箔等よりなる均熱体10が設けられている。ヒータ線7は、座面部8aの裏面のほぼ全域にわたって延設され、一部では蛇行状に引き回されている。均熱体10に開口部10aが設けられ、座面部8aの裏面が露呈している。この座面部8aの裏面に設けられた凹所13内にサーミスタ5が配置され、断熱テープ14によって座面部8aの裏面に該サーミスタ5が取り付けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、便器に設置される暖房便座に係り、特に温度センサの設置構造を改良した暖房便座に関する。
【背景技術】
【0002】
暖房便座は、ヒータ線によって座面を加温可能としたものである。ヒータ線の熱を座面に均一に伝達させるために、座面の裏面にアルミ箔等の均熱体を設けることが行われている。
【0003】
また、便座本体の温度をサーミスタ等の温度センサによって検知し、ヒータ線への通電を制御する。特公平4−3966の第6図には、便器の裏面に設けた凹部にサーミスタを配置し、粘着テープによって取り付けることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特公平4−3966号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、便座本体の温度の測定精度が高く、便座本体の温度制御を的確に行うことができる暖房便座を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の暖房便座は、内部が中空部となっている便座本体と、該中空部内の上面に設けられているヒータ線及び温度センサとを有し、該温度センサはテープによって該中空部上面に取り付けられている暖房便座において、該テープが断熱テープであることを特徴とするものである。
【0007】
請求項2の暖房便座は、請求項1において、該温度センサは、該便座本体の上面の温度分布の平均温度部の裏面に配置されていることを特徴とするものである。
【0008】
請求項3の暖房便座は、請求項1又は2において、前記中空部内の上面にシート状の均熱体が付着され、該均熱体の下面に前記ヒータ線が取り付けられており、該均熱体に開口が設けられ、前記温度センサ及び断熱テープは、該開口内に配置され、該均熱体と非接触となっていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の暖房便座にあっては、温度センサが中空部の上面に対し断熱テープによって取り付けられているので、温度センサやその周囲からの熱放散が抑制され、便座本体の温度が高精度にて測定される。これにより、便座本体の温度制御を的確に行うことが可能となる。
【0010】
温度センサを便座本体の上面の温度分布の平均温度部の裏面に配置することにより、便座本体の平均温度を検知することができる。
【0011】
温度センサ及び断熱テープを均熱体の開口内に配置し、均熱体と非接触とすることにより、均熱体を介してヒータの熱が温度センサに伝播することが防止され、温度の測定精度が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施の形態に係る暖房便座の座表体の裏面図である。
【図2】(a)図は実施の形態に係る暖房便座の裏面側の斜視図、(b)図は(a)図のB−B線断面図である。
【図3】(a)図は温度センサ設置部の断面図、(b)図は(a)図のB−B線断面図である。
【図4】(a)図は別の実施の形態に係る暖房便座の温度センサ設置部の断面図、(b)図は(a)図のB−B線断面図である。
【図5】平均温度部の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、第1図〜第3図及び第5図を参照して第1の実施の形態について説明する。
【0014】
この実施の形態に係る暖房便座1は、洋風便器のリム部(便鉢の上縁部)の上面に倒伏配置可能なリング形(略C字形とされることもある。)の便座本体2と、該便座本体2の左右の後部からそれぞれ後方(便座本体2が倒伏姿勢となっているときの後方)に延出する1対の支脚部3,3とを有している。該支脚部3,3は、それぞれ、ヒンジ軸(図示略)を介して便座ボックスやロータンクカバー(図示略)などに対し上下回動可能に取り付けられている。
【0015】
便座本体2は、第2図(b)に示すように、内部が中空部6となっている。この中空部6内にヒータ線7と、温度センサとしてのサーミスタ5が配設されている。この便座本体2の外殻は、その上面側の座表体8と下面側の座裏体9とが組み合わされることにより構成されている。この座表体8は、便器使用者が着座する座面部(便座本体2の上面部)8aと、該便座本体2の内周側及び外周側の各側周面部8b,8cとを有する無底中空状のものとなっており、座裏体9は、この座表体8の底部を塞ぐ底蓋状のものとなっている。座裏体9の下面には、洋風便器1のリム部の上面に当接する複数個の脚部9aが設けられている。
【0016】
なお、第2図(b)に示すように、座表体8の各側周面部8b,8cの下端部には、各々の中空部6側の角縁部を切り欠く如くして段差部8eが形成されており、座裏体9は、その内周側及び外周側の両縁部がそれぞれこの段差部8eに係合している。
【0017】
座面部8aの裏面には、ヒータ線7からの熱を該座面部8aに均一に伝えるために、アルミや銅などの熱伝導率の大きい金属の箔等よりなる均熱体10が設けられている。この均熱体10は、該座面部8aの裏側のほぼ全面にわたって設けられており、その外縁部は、各側周面部8b,8cの裏面にまで達している。なお、図面を明瞭とするために、第1図では、この均熱体10の図示は省略されている。
【0018】
ヒータ線7は、ニクロム線等よりなるヒータ素線と、該ヒータ素線の外周囲を被覆する塩化ビニル、シリコーンゴム、熱可塑性エラストマー等の被覆体とからなる。このヒータ線7は、均熱体10を介して座面部8aの裏面に沿って延設され、接着剤(図示略)等によって接着されている。ヒータ線7は、座面部8aの裏面のほぼ全域にわたって延設され、一部では蛇行状に引き回されている。この実施の形態では、ヒータ線7は往線と戻線とを引き揃えて1条にまとめたものとなっているが、これに限定されない。ヒータ線7は通電ハーネス11及び温感ヒューズ(図示略)を介して通電が行われる。このハーネス11は支脚部3の孔4及びヒンジ軸を通って便座ボックス又はロータンクカバー等の内部に延設されている。なお、前記サーミスタ5に接続されたハーネス12も支脚部3の孔4及びヒンジ軸を通って便座ボックス又はロータンクカバー等の内部に延設されている。
【0019】
この便座本体2の温度を検知するための温度センサとしてのサーミスタ5は、座面部8aの裏面のうち、平均温度部に設けられている。サーミスタ5はヒータ線7と重ならない位置に設けられるので、第1図のA,Bのようにヒータ線7同士の間隔があいている箇所に設けられる。
【0020】
第3図に示すように、サーミスタ5を設ける箇所では、均熱体10に開口部10aが設けられ、座面部8aの裏面が露呈している。この座面部8aの裏面に設けられた凹所13内にサーミスタ5が配置され、断熱テープ14によって座面部8aの裏面に該サーミスタ5が取り付けられている。このサーミスタ5及び断熱テープ14は開口部10a内にのみ配置され、均熱体10とは非接触となっている。
【0021】
断熱テープ14は、発泡ポリエチレン、発泡ポリウレタンなどの発泡合成樹脂よりなる基材テープと、該基材テープに付着された粘着剤とを備えている。
【0022】
なお、ここで平均温度部について第5図を参照して説明する。
【0023】
前記第1図のように、座面部8aの裏面の全域にヒータ線7が引き回されているが、ヒータ線7同士の間には間隔があいていると共に、合成樹脂製の便座本体2の樹脂密度分布などにより、便座本体2の上面には温度分布が存在する。第5図は温度分布の一例を示すものであり、(a)図は便座本体2の平面図、(b)図は(a)図のB(前部中央)からB(後部中央)までの線分B上の温度分布図である。なお、この線分Bは便座本体2の径方向(内周端と外周端とを結ぶ方向)の中間を通る線である。(c)図は便座前後方向の中間付近Cにおける内周縁Cから外周縁Cまでの温度分布図である。この温度分布は、赤外線サーモグラフィーによって測定される。
【0024】
便座1を陶器製の便器上に倒伏させ、人が着座していない状態でヒータ線7に通電し、温度分布が安定した状態となった後、便座本体上面の温度を測定すると、第5図(b),(c)のように分布が存在する。
【0025】
便座1の内周縁及び外周縁は、側周面部8b,8cからの放熱量が多く、中央側よりも温度が低くなるのは止むを得ないので、内周縁から5mm以内及び外周縁から5mm以内の領域は平均温度部の特定の際には除外し、内周縁から5mm〜外周縁から5mmの範囲fにおける便座本体上面領域の温度を検出する。例えば、便座本体上面の5mm間隔の正方枡目状の格子点の全点について温度を検出し、これを平均することにより平均温度が求まる。この平均温度に対し±0.5℃の箇所を平均温度部とする。サーミスタ5は、この平均温度部の裏面に設置される。
【0026】
このように構成された暖房便座1にあっては、サーミスタ5が座面部8aの裏面に対し断熱テープ14によって取り付けられているので、サーミスタ5やその周囲の座面部からの熱放散が抑制され、便座本体2の温度が高精度にて測定される。これにより、便座本体2の温度制御を的確に行うことが可能となる。
【0027】
この実施の形態では、サーミスタ5を便座本体の上面の温度分布の平均温度部の裏面に配置しているので、便座本体2の平均温度を容易に求めることができる。
【0028】
また、この実施の形態では、サーミスタ5及び断熱テープ14を均熱体10の開口10a内に配置し、均熱体10と非接触とすることにより、均熱体10を介してヒータ線7の熱がサーミスタ5に伝播することが防止され、温度の測定精度が向上する。
【0029】
[別の実施の形態]
上記実施の形態では、断熱テープ14が均熱体10に接触しないように構成しているが、第4図のように、断熱テープ14が均熱体10に付着するように構成してもよい。第4図のその他の構成は第3図と同様である。
【符号の説明】
【0030】
1 暖房便座
2 便座本体
3 支脚部
5 サーミスタ
6 中空部
7 ヒータ線
8 座表体
8a 座面部
9 座裏体
10 均熱体
11,12 通電ハーネス
13 凹所
14 断熱テープ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部が中空部となっている便座本体と、
該中空部内の上面に設けられているヒータ線及び温度センサと
を有し、該温度センサはテープによって該中空部上面に取り付けられている暖房便座において、
該テープが断熱テープであることを特徴とする暖房便座。
【請求項2】
請求項1において、該温度センサは、該便座本体の上面の温度分布の平均温度部の裏面に配置されていることを特徴とする暖房便座。
【請求項3】
請求項1又は2において、前記中空部内の上面にシート状の均熱体が付着され、該均熱体の下面に前記ヒータ線が取り付けられており、
該均熱体に開口が設けられ、前記温度センサ及び断熱テープは、該開口内に配置され、該均熱体と非接触となっていることを特徴とする暖房便座。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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