暖房可能な床構造およびその施工方法
【課題】建造物(住宅)の既存床にビス止めや釘打ちを行わないで施工できる暖房可能な床構造、および、その施工方法を提供する。
【解決手段】暖房可能な床構造は、建造物の既存床1面に配置された暖房パネル4と、当該暖房パネルの上に配置された表装材8とを備えており、暖房パネル4は、表面側に刻設された埋設溝に熱媒チューブが埋設され且つその上側に可撓性薄板が貼着されて成る。そして、暖房パネル4には、既存床1面に対する位置ずれ及び浮上りを規制し得る程度の荷重が加えられている。
【解決手段】暖房可能な床構造は、建造物の既存床1面に配置された暖房パネル4と、当該暖房パネルの上に配置された表装材8とを備えており、暖房パネル4は、表面側に刻設された埋設溝に熱媒チューブが埋設され且つその上側に可撓性薄板が貼着されて成る。そして、暖房パネル4には、既存床1面に対する位置ずれ及び浮上りを規制し得る程度の荷重が加えられている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、暖房可能な床構造およびその施工方法に関する。更に詳しくは、新築、既築の建造物に適した暖房可能な床構造、及び、暖房可能な床構造の施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、多様な暖房技術が提案され、実用化されている。この暖房技術の例としては、発泡合成樹脂製成形体や木製板状体などを基体とし、その一方の面に溝を刻設し、この溝に熱媒チューブを埋設し、これらの表面を、アルミニウム箔などの可撓性薄板で被覆した構造の床暖房用の暖房パネル(放熱板)が挙げられる(特許文献1〜4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−170007号公報
【特許文献2】特開平11−281070号公報
【特許文献3】特開2000−655365号公報
【特許文献4】特開2003−166719号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の暖房パネルは、主に新築の建造物(住宅)に敷設する際に採用される。新築の家屋、既築の住宅の場合、持主であっても将来の改装や転居などを考慮すると、暖房可能な床構造を施工する際に、美麗な床面に剥離し難い接着剤を塗布したり、ビスや釘の穴をあけたりすることに躊躇することが多い。また、賃貸住宅・貸室の場合には、賃貸期間終了時に住宅・貸室を原状回復して家主に明け渡す義務が課されている場合が多いので、明け渡し時に美麗な床面に剥離し難い接着剤の塗布跡や、ビス穴、釘穴が残っていることは許されない。
【0005】
本発明の第1の目的は、建造物の既存の床を損傷しないで施工できる暖房可能な床構造を提供することにある。また、本発明の第2の目的は、賃貸期間終了時に原状回復するのに容易な暖房可能な床構造を提供することにある。更に、本発明の第3の目的は、既築の建造物に適した暖房可能な床構造の施工方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は、新築の住宅、賃貸住宅、貸室などにおいて、建造物(住宅)の床面にビスや釘の穴を設けることなく、また、種々の改造などを加えることなく又は可及的に少なくして施工し得る暖房可能な床構造について鋭意検討した結果、暖房パネルを敷設するにあたり、既存床面に対する位置ずれ及び浮上りを規制し得る程度の荷重(重み)を暖房パネルに加えることにより、既存床面を傷つけることなく簡便に暖房パネルを配置でき、暖房可能な床構造を構築できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、第一発明に係る暖房可能な床構造は、建造物の既存床面に配置された暖房パネルと、当該暖房パネルの上に配置された表装材とを備え、前記暖房パネルは、表面側に刻設された埋設溝に熱媒チューブが埋設され且つその上側に可撓性薄板が貼着されて成り、前記暖房パネルには、前記既存床面に対する位置ずれ及び浮上りを規制し得る程度の荷重が加えられていることを特徴とする。
【0008】
上記の第一発明の第一実施態様では、上記の暖房可能な床構造において、暖房パネルの下面に高比重シートが取り付けられている。
【0009】
上記の第一発明の第二実施態様では、上記の暖房可能な床構造において、暖房パネルの上に高比重シートが載せられている。
【0010】
また、第二発明に係る暖房可能な床構造の施工方法は、上記の第一発明の第一実施態様の暖房可能な床構造の施工方法であって、表面側に刻設された埋設溝に熱媒チューブが埋設され且つその上側に可撓性薄板が貼着されて成る暖房パネルを建造物の既存床表面に敷設するにあたり、前記既存床表面に高比重シートを配置する工程、当該高比重シートの上に前記暖房パネルを固定する工程、及び、当該暖房パネルの上に表装材を配置する工程を含むことを特徴とする。
【0011】
更に、第三発明に係る暖房可能な床構造の施工方法は、上記の第一発明の第二実施態様の暖房可能な床構造の施工方法であって、表面側に刻設された埋設溝に熱媒チューブが埋設され且つその上側に可撓性薄板が貼着されて成る暖房パネルを建造物の既存床表面に敷設するにあたり、前記既存床表面に前記暖房パネルを配置する工程、当該暖房パネルの上に高比重シートを載せる工程、当該高比重シートの上に仕切材を配置する工程、及び、当該仕切材の上に表装材を配置する工程を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
第一発明に係る暖房可能な床構造によれば、既存床面に対する位置ずれ及び浮上りを規制し得る程度の荷重が暖房パネルに加えられているため、暖房パネルをビスや釘で固定する必要がなく、既存床面にビス穴や釘穴が出来ない。
【0013】
第一発明の第一実施態様に係る暖房可能な床構造によれば、暖房パネルの下面に高比重シートが取り付けられており、既存床面に対する位置ずれ及び浮上りを規制し得る程度の荷重が高比重シートにより暖房パネルに加えられているため、暖房パネルの剥離、滑り(移動)などを防止することが出来る。
【0014】
第一発明の第二実施態様に係る暖房可能な床構造によれば、暖房パネルの上に高比重シートが載せられており、既存床面に対する位置ずれ及び浮上りを規制し得る程度の荷重が高比重シートにより暖房パネルに加えられているため、暖房パネルの剥離、滑り(移動)などを防止することが出来る。
【0015】
第二発明および第三発明に係る暖房可能な床構造の施工方法によれば、建造物の既存床表面に暖房パネルを敷設するにあたり、既存床表面に対し、高比重シート、暖房パネル、表装材を順次に配置するか、又は、暖房パネル、高比重シート、表装材を順次に配置するだけで、剥離、滑り(移動)などのない状態に暖房パネルを配置できるため、施工作業が極めて簡単である。
【0016】
第二発明および第三発明に係る暖房可能な床構造の施工方法によれば、建造物の既存床面と高比重シートの間、高比重シートと暖房パネルの間、暖房パネルと表装材の間、あるいは、建造物の既存床面と暖房パネルと間、暖房パネルと高比重シートの間、高比重シートと表装材の間は、何れも、ビス止めや釘打ちによって固定していないので、原状回復する作業が簡単であり、また、原状回復した後の床面に損傷が残らない。しかも、回収した高比重シート、暖房パネル、表装材は、ビス穴や釘穴がないので、再使用することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】第一発明の第一実施態様に係る暖房可能な床構造、及び、第二発明に係る暖房可能な床構造の施工方法を示す斜視組立図である。
【図2】第一発明の第一実施態様に係る暖房可能な床構造を示す縦断面図であり、暖房パネルの下に高比重シートが取り付けられた床構造の図である。
【図3】第一発明の第一実施態様に係る暖房可能な床構造を模式的に示す縦断面図であり、高比重シートの表面に不織布が配置され且つ暖房パネルの裏面に面ファスナーが配置された床構造の図である。
【図4】第二発明係る暖房可能な床構造の施工方法の1つの形態を示す縦断面図である。
【図5】第一発明の第一実施態様に係る暖房可能な床構造の他の形態を模式的に示す縦断面図であり、高比重シートの表面に面ファスナーが配置され且つ暖房パネルの裏面に不織布が配置された床構造の図である。
【図6】第一発明の第二実施態様に係る暖房可能な床構造を模式的に示す縦断面図であり、暖房パネルの上に高比重シートが載せられた床構造の図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明に係る暖房可能な床構造(以下、「床構造」と略記する。)及び暖房可能な床構造の施工方法(以下、「施工方法」と略記する。)について、その実施形態を説明する。本発明の床構造は、建造物の既存床面に適用できる。本発明において建造物とは、一戸建住宅、集合住宅、商業ビル、ホテル、各種擁護施設、病院、幼稚園、保育園などをいう。本発明は、賃貸ビル、賃貸住宅、貸室などにおける既存の床に好適に適用できる。建造物の既存床面とは上記の建造物の床面をいう。これら床面はコンクリート、木製板、合板などの床面であり、その材質は特に制限されない。
【0019】
第一発明は、床構造に関する発明であり、斯かる床構造は、建造物の既存床面に配置された暖房パネル(放熱板)と、当該暖房パネルの上に配置された表装材とを備え、暖房パネルは、表面側に刻設された埋設溝に熱媒チューブが埋設され且つその上側に可撓性薄板が貼着されて成り、暖房パネルには、既存床面に対する位置ずれ及び浮上りを規制し得る程度の荷重(重み)が加えられている。図1〜図3、図5及び図6に第一発明の床構造が示されており、図中の符号1は既存の床、符号4は暖房パネル、符号8は表装材、符号8’は接着剤、符号6は熱媒チューブ、符号7は可撓性薄板としてのアルミニウム箔をそれぞれ示している。
【0020】
上記の暖房パネルは、表面に埋設溝が刻設された薄手の板状体と、埋設溝に埋設された熱媒チューブと、板状体の表面を覆う可撓性薄板とから主に構成される。板状体は、その表面に設けられた埋設溝によって熱媒チューブを支持する機能を有する。板状体は、熱媒チューブの支持機能を発揮し得る様に、剛性が比較的高く、且つ、耐熱性を有する材料で構成される。斯かる材料の例としては、木製板、合板、合成樹脂板などを挙げることが出来る。これらの中では、発泡合成樹脂板が好適である。
【0021】
上記の合成樹脂としては、ポリアミド6、ポリアミド6・6、ポリアミドイミドなどのポリアミド系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体などのポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリウレタンなどを挙げることが出来る。上記の発泡合成樹脂板の発泡倍率は、1.5〜20倍程度の低倍率とするのが好ましい。
【0022】
板状体の広さや平面形状は特に限定されるものではないが、施工した後の平面形状が後述の高比重シート(図中の符号2で示すシート)と同一形または相似形を呈するのが好ましい。板状体は、梱包、輸送などの際に嵩張らない様に、その面積を比較的小さくするのが好ましく、施工の際に複数枚を組合せ易い形状にするのが好ましい。板状体の厚さは、板状体の材料の比重や剛性を勘案して適宜決めるものとするが、厚すぎると、梱包、輸送などの際に嵩張り、重くなるので、熱媒チューブを支持できる程度に可及的に薄くするのが好ましい。例えば、板状体は、発泡ポリスチレン製の場合、厚さを5〜25mm程度とするのが好ましい。
【0023】
板状体には、熱媒チューブを埋設可能な埋設溝が刻設される。刻設する埋設溝の態様は、これに埋設される熱媒チューブの配置態様に応じて適宜決定される。例えば、埋設溝は、熱媒チューブを直線状に延在させる場合、板状体に直線状に刻設され、熱媒チューブを部分的に湾曲させて配置する場合、板状体に直線部と円弧部とを組合せて刻設される。この埋設溝の幅や深さは、埋設溝に埋設させる熱媒チューブが容易に外れない様に、熱媒チューブの外径とほぼ同一寸法に設計されるのが好ましい。埋設溝の長さ方向に直交する断面形状は、熱媒チューブの外径に沿う様に、U字型に形成されるのが好ましい。
【0024】
熱媒チューブは、その内側空間(管内)に熱媒を流通させて外部に放熱する様に機能するものであり、可撓性、機械的強度、耐熱性、耐薬品性などに優れている必要がある。この様な特性を発揮する熱媒チューブとしては、架橋ポリエチレン管、ポリブテン管、ポリプロピレン管、管の壁面に金属線を埋設した樹脂管などを挙げることが出来る。これらの中でも好ましいのは、架橋ポリエチレン管、ポリブテン管である。熱媒チューブの直径は、暖房パネルの用途によって異なるが、一般的には、外径が5〜30mm、内径が3〜25mmの範囲とされる。この熱媒チューブの内部を流通させる熱媒としては、温水、水蒸気、オイルなどを挙げることが出来る。
【0025】
可撓性薄板は、板状体の埋設溝に埋設した熱媒チューブが埋設溝から飛び出すのを防ぐとともに、熱媒チューブからの熱を暖房パネル全体に均等に行き渡らせる様に機能する。可撓性薄板は、熱伝導性に優れた材料で構成された可撓性の薄板であればよく、例えば、アルミニウム箔、錫箔、銅箔、ステンレス鋼箔などの金属箔、織布や不織布、樹脂フィルム又は樹脂シート、及び、これらを組合せた積層体などを挙げることが出来る。織布や不織布は、鉄、軟鋼、ステンレス鋼、ニッケル合金、銅合金、チタン合金、アルミニウム合金などの熱伝導性に優れた金属によって作製されたものが好ましい。上記の可撓性薄板の中でも、製造の容易さやコストなどを勘案すると、アルミニウム箔が最も好ましい。
【0026】
可撓性薄板の平面形状および大きさは、暖房パネルと同一の平面形状および同一の大きさとするのが好ましいが、暖房パネルの平面形状の面積よりも小さくすることも出来る。暖房パネルの面積よりも小さくする場合は、少なくとも熱媒チューブが埋設されている部分を被覆する大きさとされる。可撓性薄板の厚さは、材料によっても異なるが、薄すぎると強度が不十分で破損し易くなり、厚すぎると暖房パネルが重くなり且つコストが高くなるため、10μm〜2mmの範囲が好ましい。
【0027】
上記の第一発明において、暖房パネルに荷重を加える態様としては、特に制限はないが、例えば、暖房パネルの下面に高比重シートが取り付けられることにより、暖房パネルに荷重が加えられる態様(第一実施態様)、あるいは、暖房パネルの上に高比重シートが載せられることにより、暖房パネルに荷重が加えられる態様(第二実施態様)が挙げられる。図1〜図3及び図5に第一実施態様が示されており、図6に第二実施態様が示されている。図中の符号2は高比重シートを示している。
【0028】
上記の第一実施態様に係る床構造においては、暖房パネルの下面に高比重シートが取り付けられる。すなわち、既存床面に配置された高比重シートの上面側に暖房パネルが固定される。暖房パネルの重さは3〜4kg/m2程度であり、その表面に後述する表装材が配置されたとしても6.5〜7.5kg/m2程度である。従って、そのままの状態で床面に配置した場合、暖房パネルが浮き上がったり、ずれたりする恐れがある。そこで、本発明においては、暖房パネルを高比重シートに固定することにより、浮き上がりやずれを防止する。
【0029】
本発明において、高比重シートとは、密度が通常は1.5g/cm3以上、好ましくは1.8g/cm3以上であって、上限は特に制限はないが、通常は4.0g/cm3以下のシートをいう。そして、高比重シートによって床面に掛かる単位面積当たりの荷重は1.5kg/m2以上、好ましくは1.5〜50kg/m2、より好ましくは3〜30kg/m2の範囲とされる。上記の様な密度の高比重シートは、既存床面に配置した際、自重により床面に密着し、床面からの浮き上がりがなく、床面における滑り(移動)が防止される。床面における滑り(移動)を一層防ぐ目的で、高比重シートと床面との界面に接着剤を介在させることも出来る。介在させる接着剤としては、接着力が弱く且つこれを除去した際に塗布跡が残り難いものがよい。
【0030】
高比重シートとしては、アスファルト含有短繊維シート、充填材含有ゴムシートなどが挙げられる。高比重シートの厚さは、密度にもよるが、通常は1〜10mmの範囲とされる。高比重シートの面積は、暖房床を構築する場所の広さに応じて決定されるが、一般的には100〜500cm2とされる。面積が広い場所では、小面積の高比重シートを複数枚組合せることにより、全体の面積を広げればよい。高比重シートは、板状のものであっても、巻回可能なものであってもよいが、原状回復時に巻回しながら撤去できる点で、巻回可能なものが好ましい。
【0031】
アスファルト含有短繊維シートの短繊維としては、天然繊維、合成繊維の何れでもよく、短繊維の長さは、アスファルトと混合して高比重シートとした場合にロール状に巻回可能な程度に柔軟性を発揮できる長さであり、1〜30mmの範囲が好ましい。アスファルトは、固体または半固体の瀝青質混合物であって、主成分は複雑な炭化水素であり、天然アスファルト、石油精留の際の残留物として得られる石油アスファルトの何れでもよい。アスファルトの混合割合は、5〜30重量%の範囲が好ましい。
【0032】
充填材含有ゴムシートのゴムとしては、天然ゴム、合成ゴムの何れでもよい。中でも合成ゴムが好ましく、合成ゴムとしてはアクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、スチレン−ブタジエンゴム(BR)、ポリブタジエン、ポリクロロプレン(CR)、ポリイソプレン、イソプレン−イソブチレンゴム(IIR)、エチレン−プロピレンゴム(EPR、EPDM)、クロルスルホン化ポリエチレン、塩素化ポリエチレンなどが挙げられる。充填材としては、粉末状の無機質充填材が好ましく、カーボンブラック、シリカ、マイカ、クレー、グラファイト、炭酸カルシウム、酸化チタン、アルミナ、水酸化アルミニウムなどが挙げられる。充填材の混合割合は、5〜60重量%の範囲が好ましい。
【0033】
第一発明の第一実施態様において、高比重シートは、暖房パネルの下面に対し、アンカー効果、接着力、粘着力、吸着力、磁力またはこれらの何れかの組合せを利用して取り付けられる。暖房パネルの固定において上記の様な原理を利用することにより、高比重シート及び暖房パネルの表面の傷付きがなく、再度の着脱が容易である。なお、「再度の脱着が容易である」とは、以下の剥離試験を行った場合に、15N/10mm以下、好ましくは10N/10mm以下の力で剥がれることを言う。
【0034】
上記の剥離試験は、JIS Z 0237「90°引き剥がし試験」に準拠した試験であり、斯かる試験においては、20mm×50mm以上の試験片を5つ準備してそれぞれに接着し、各試験片に対してローラーで3kgfの荷重をかけて2往復させた後、24時間程度養生し、次いで、常温下で300mm/minの速度で剥がすときの力を測定する。例えば、面ファスナーとして、70mm×100mmの10倍発泡の樹脂製被着体試験片基材の上に固定した20mm×100mmの面ファスナーを使用し、不織布として、PEシート基材に粘着材で固定した20mm×50mmの不織布シートを使用し、これら不織布と面ファスナーを上記の条件で張り合わせた後、剥離試験を行う。これにより10N/10mm以下であることが確認できる。
【0035】
また、上記の高比重シートと暖房パネルの固定において、アンカー効果を利用する方法とは、いわゆる機械的結合またはファスナー効果によって結合する方法である。具体的には、高比重シートの表面側および暖房パネルの裏面側の一方の面に面ファスナー(オス)を貼着し且つ他方の面に不織布を貼着するか、又は、一方の面に面ファスナー(オス)を貼着し且つ他方の面に面ファスナー(メス)を貼着する等して、高比重シートと暖房パネルを固定する方法が挙げられる。第一実施態様を示す図1〜図3及び図5において、符号3は不織布を示し、符号9は面ファスナーを示している。
【0036】
上記の不織布とは、天然繊維、合成繊維などを適当な方法でマット状や薄綿状にして、接着剤や繊維自身の融着力によって繊維同士を接合して製造した布であり、その製法には乾式法と湿式法がある。第一発明の第一実施態様において不織布を使用する目的は、対向面(高比重シートの表面側または暖房パネルの裏面側の例えば面ファスナー)との結合強度を大きくし且つ保つことであるので、不織布としては乾式法で製造されて嵩張ったものが好ましい。不織布の厚みは0.1〜10mmの範囲、好ましくは0.5〜5mmの範囲であり、目付量(単位面積当たりの質量)は10〜500g/m2、好ましくは40〜200g/m2の範囲である。
【0037】
また、高比重シートもしくは暖房パネルに不織布を貼着する際には、接着剤を介在させるのが好ましい。この際使用できる接着剤に特に制限はないが、高比重シート又は暖房パネル、及び、不織布を侵食しないものが好ましい。接着剤は市販されている商品の中から適宜選んで使用することが出来る。不織布を貼着する接着剤の量は可及的に少なくして、不織布の嵩張りを残す様にするのが好ましい。不織布は、対向面に貼り付けられた面ファスナー、両面接着テープなどの接着テープと密着し、両者の界面での滑り(移動)を防ぐ。
【0038】
なお、面ファスナー(オス)とは、シート表面に小さな突起を有し、この小さな突起が不織布または面ファスナー(メス)のシート表面の繊維の隙間に突入することにより両者を結合する構造のものをいう。面ファスナー(オス)と不織布または面ファスナー(メス)との結合においては、小さな突起が繊維の隙間に突入することにより、不織布や面ファスナー(メス)との界面での剥離、滑り(移動)などが防止される。
【0039】
また、第一発明の第一実施態様において、接着力を利用して高比重シートと暖房パネルを固定する方法としては、具体的には、接着力の弱い両面接着テープ、ホットメルト接着剤などを介して高比重シートと暖房パネルを固定する方法が挙げられる。弱い接着力とは、上記の剥離試験による剥がれ易さを満たす接着力をいう。ホットメルト接着剤は、電磁誘導加熱などで脱着可能である。また、粘着力を利用して固定する方法としては、具体的には、両面に粘着性を有する部材を挟むことにより、高比重シートと暖房パネルを固定する方法があげられる。粘着性を有する部材としては、粘着シート、粘着テープなどが挙げられる。
【0040】
更に、吸着力を利用して高比重シートと暖房パネルを固定する方法としては、両面に吸着性を有する部材を挟むことにより、高比重シートと暖房パネルを固定する方法が挙げられる。吸着性を有する部材としては、吸着シート、吸盤、吸盤シートなどが挙げられる。この中で、吸盤を使用する場合は、高比重シート又は暖房パネルに対し、接着剤または接着テープによって吸盤を予め固定した状態で使用する。
【0041】
また、磁力を利用して固定する方法としては、具体的には、高比重シートの表面側および暖房パネルの裏面側の何れか一方の面に磁石を固定し且つ他方の面に磁石が吸着する金属を固定するか、又は、両方の面に磁石を固定することにより、両者を磁力によって固定する方法が挙げられる。磁石や磁石が吸着する金属は、予め接着剤もしくは接着テープによって固定される。磁石の種類は、永久磁石であっても、磁化・消磁の可能な磁化金属であってもよい。また、これらの原理を組合せて固定する方法としては、例えば、両面接着テープと不織布を組合せたり、複数の固定方法を併用する方法などが考えられる。
【0042】
高比重シートと暖房パネルを固定するにあたり、上記の面ファスナー、接着力の弱い両面接着テープ、ホットメルト接着剤、吸着シート、吸盤、吸盤シート、磁石などのいわゆる固定用部材を使用した場合は、再度の脱着が容易であり、例えば賃貸期間終了時の原状回復作業が簡単になる。上記の固定用部材を取り付ける位置は、暖房パネルの裏面全体とする必要はなく、暖房パネルの外周と熱媒チューブの埋設溝に沿った位置などの一部に限定するのが好ましい。例えば、固定用部材として接着テープを用いる場合、接着テープの幅は5〜100mmとされ、その取付面積は暖房パネルの面積の2〜50%、好ましくは5〜20%の範囲とされる。
【0043】
上記の様に、高比重シートと暖房パネルを固定する手段には幾つかあるが、より具体的には、上記の第一発明の第一実施態様においては、1つの形態として、暖房パネルが、その裏面側に貼着された接着テープによって高比重シート表面の不織布に固定された構造を挙げることが出来、また、他の形態として、暖房パネルが、その裏面側に貼着された不織布によって高比重シート表面の接着テープに固定された構造を挙げることが出来る。図1〜図3は、上記の第一発明の第一実施態様における1つの形態を示しており、図5は、上記の第一発明の第一実施態様における他の形態を示している。
【0044】
また、上記の暖房パネルの上には、床の外観を高めるため、表装材(仕上げ材)が配置される。表装材は、暖房パネルの可撓性薄板の表面に対し、必要に応じて弱接着剤または粘着剤を介在させて配置される。通常、表装材は、厚さが薄く、自重が軽いため、暖房パネルに固定することにより、浮き上がりや反りが防止する。すなわち、暖房パネルと表装材との間に弱接着剤または粘着剤を介在させることにより、暖房パネルと表装材との界面で滑り(移動)を防止することが出来る。弱接着剤または粘着剤は、上記の機能を発揮するものであれば、市販されている製品の中から適宜選んで使用することが出来る。
【0045】
表装材としては、化粧板、畳、カーペットなどが挙げられる。化粧板は、木、発泡合成樹脂、不織布、ゴム、タイル、石材などで作製された板状のものが好適である。また、一定のパターンに形成された多数の部材を組み合わせて敷設する表装材としては、平面視した場合に側縁部を互いに凹凸嵌合させて一体化するいわゆる置き床方式のものが好ましい。表装材の厚みが薄く撓みやすい場合、あるいは、タイルや石材を表装材として使用する場合には、合板などの剛性板を介在させ、この剛性板の上に表装材が貼着されてもよい。
【0046】
次に、第二発明に係る施工方法を説明する。第二発明は、上記の第一発明の第一実施態様に係る床構造の施工方法に関するものであり、斯かる施工方法は、上記の暖房パネルを既存床表面に敷設するにあたり、既存床表面に高比重シートを配置する工程、高比重シートの上に暖房パネルを固定する工程、及び、暖房パネルの上に表装材を配置する工程を含む。
【0047】
最初の高比重シートを配置する工程においては、高比重シートの面積(広さ)を通常は既存床の面積と同じにする。既存床面と高比重シートとの間には、賃貸期間終了時の原状回復作業を容易にするため、接着剤を介在させないのが好ましい。例外的に接着剤を介在させる場合は、前述の通り、接着力が弱く且つこれを除去した後に塗布跡が残り難いものがよい。
【0048】
高比重シートの上に暖房パネルを固定する工程においては、高比重シートに暖房パネルを固定して当該暖房パネルに下向きの荷重を加えるが、暖房パネルを固定するにあたり、高比重シートの上に暖房パネルを仮置きし、位置合わせ行う。その場合、高比重シートの表面側、暖房パネルの裏面側の一方または双方に上記の様な固定用部材が取り付けられているため、仮置きした際に両者が結合するのを防ぐ目的で仕切薄板を配置する。図4中に符号10で仕切薄板が示されている。
【0049】
仕切薄板としては、紙類、樹脂製フィルム、金属箔、及び、これらを組合せた積層体などが挙げられる。仕切薄板の配置方法は、(1)予め高比重シートの表面側に配置する方法、(2)予め暖房パネルの裏面側に配置する方法、(3)床表面に高比重シートを配置した後に当該高比重シートの表面に載せる方法の何れでもよい。上記(1)及び(2)の方法においては、暖房パネルの仮置きの際に剥離や移動が生じない程度の強さで仕切薄板を高比重シートの表面側、又は、暖房パネルの裏面側に仮止めするのが好ましい。
【0050】
仕切薄板は、位置合わせした後、高比重シートと暖房パネルとの間から取り除くので、厚さは薄く、重量は軽く、取り除く際に破損しない程度の強度を有しているのが好ましい。仕切薄板は、材料の種類にもよるが、厚さが0.005〜2mm、重量が1〜1000g/m2、引張り強度が1N/5cm(JIS L1096)以上の薄板が好適である。暖房パネルの位置合わせをした後は、暖房パネルを捲り、仕切薄板を取り除く。そして、薄板を取り除き、暖房パネルを上側から押圧することにより、高比重シートと暖房パネルの間に介在させた固定用部材を結合させる。すなわち、高比重シートの不織布に暖房パネルの接着テープを固定する。または、高比重シートの接着テープに暖房パネルの不織布を固定する。これにより、高比重シートと暖房パネルの界面における滑り(移動)を防止することが出来る。図4は、第二発明に係る施工方法を示しており、上面に不織布が貼着された高比重シートに対し、下面に接着テープが貼着された暖房パネルを固定する1つの形態を示している。
【0051】
床表面において暖房パネルを配置する箇所は、暖房したい部分に限定することも出来、暖房パネルの面積は、高比重シートの面積よりも小さくすることが出来る。暖房パネルが配置されずに高比重シートが露出している部分には、ダミー板(暖房パネルを構成する同じ板状体に流体チューブが埋設されていない構造もの)を配置する。そして、最後に、暖房パネル及びダミー板の上に表装材を配置する。暖房パネル及びダミー板と表装材との間には、上記の様に、必要に応じて弱接着剤または粘着剤を介在させる。
【0052】
なお、施工・敷設した暖房パネルの熱媒チューブに流通させる熱媒は、熱媒循環装置によって温度と圧力を調整し、ヘッダを介して熱媒チューブに分散流通(循環)させる。熱媒循環装置は、屋外や屋内の適所に設置される。上記の第一発明に係る床構造は、新築、既築の建造物の双方に施工することが出来る。
【0053】
次に、上記の床構造が施工された建造物において、特に賃貸期間終了時などに原状回復するために床構造を撤去する手順を説明する。先ず、表面の表装材を剥離し、次いで、暖房パネルを剥離する。表装材と暖房パネルとの間は、弱接着剤または粘着剤が介在しているだけなので、両者の界面を分離することは容易であり、また、暖房パネルとその下層の高比重シートとは、不織布と接着テープとによって密着されているに過ぎず、これらの界面を剥離する際に不織布が破壊されるだけなので、高比重シートから暖房パネルを分離することも容易である。
【0054】
暖房パネルを取り除いた後は、最後に、高比重シートを既存床面から剥離する。既存床表面と高比重シートとの間には、多くの場合は接着剤を介在させていないし、介在させるとしても接着跡が残り難い弱接着剤を使用しているので、弱接着剤の一部が既存床面に残っても除去が容易であり、接着剤跡として残ることがない。また、表装材、暖房パネル及び高比重シートの何れも、ビス止めや釘打ちをしていないので、床面にこれらの固定穴が残ることもない。従って、既存床面の外観は些かも損傷されず、美観を維持できる。剥離した表装材、暖房パネル及び高比重シートも、損傷していないので、再使用することが出来る。
【0055】
次に、本発明の第一発明の第二実施態様に係る床構造について説明する。斯かる床構造は、上記の第一発明の床構造において、暖房パネルの上に高比重シートが載せられる。すなわち、既存床面に暖房パネルが配置され、その上に高比重シートが載せられる。上記の様に暖房パネルの上に高比重シートが配置されることにより、暖房パネルに荷重(重み)が加えられるため、床面からの暖房パネルの浮き上がりを防止できると共に、暖房パネルと既存床面との摩擦力を高め、暖房パネルと上既存床面との界面での滑り(移動)を防ぐことが出来る。換言すれば、既存床面に対する暖房パネルの位置ずれや浮上りを防止できる。図6に第一発明の第二実施態様が示されており、図中の符号4が暖房パネル、符号2が高比重シート、符号11が後述する仕切材、符号8が表装材をそれぞれ示している。
【0056】
また、界面での滑り(移動)を防ぐ目的で、暖房パネルと既存床面との界面に接着剤を介在させることも出来る。接着剤を介在させる場合は、接着力が弱く且つこれを除去した後に塗布跡が残り難いものがよい。なお、上記の第一発明の第二実施態様において使用される暖房パネル、高比重シート、表装材は、前述の第一発明の第一実施態様におけるのと同様である。
【0057】
第一発明の第二実施態様においては、高比重シートの上、すなわち、高比重シートと表装材の間に仕切材が設けるのが好ましい。仕切材の材質としては、樹脂、紙、木材、耐熱性の高い無機物などが挙げられる。具体的には、可撓性または剛性を有する各種の薄板、粉体、不織布、織布などが挙げられ、最も汎用的には不織布または織布が使用される。上記の様な仕切材を設け、高比重シートとその上に配置する表装材との縁切りを行うことにより、高比重シートが熱変形して表装材に固着することを防ぎ、暖房パネルや高比重シートの熱による伸縮が表装材に伝わらない様にすることが出来る。
【0058】
更に、暖房パネルと高比重シートの固着を防ぐため、暖房パネルと高比重シートの間にも不織布を介在させるのが好ましい。上記の様な不織布は、暖房パネルの上に配置するため、出来る限り熱抵抗が低いことが好ましい。具体的には、熱抵抗が、0.01m2K/W以下、好ましくは0.001m2K/W以下であればよい。仕切材としての不織布の厚みは0.01〜1mmの範囲、好ましくは0.05〜0.5mmの範囲が好ましい。
【0059】
次に、第三発明に係る施工方法を説明する。第三発明に係る施工方法は、上記の第一発明の第二実施態様に係る床構造の施工方法であり、暖房パネルを既存床表面に敷設するにあたり、既存床表面に暖房パネルを配置する工程、当該暖房パネルの上に高比重シートを載せる工程、当該高比重シートの上に仕切材を配置する工程、および、当該仕切材の上に表装材を配置する工程を含む。図6において符号11が仕切材を示している。
【0060】
具体的には、先ず、既存床表面に暖房パネルを配置する。既存床面と暖房パネルとの間には、賃貸期間終了時の原状回復作業を勘案すると、接着剤を介在させないのが好ましい。例外的に接着剤を介在させる場合は、前記した通り、接着力が弱く且つこれを除去した後に塗布跡が残り難いものがよい。暖房パネルを配置する箇所は、既存床表面の暖房したい部分に限定することが出来、暖房パネルの面積は、その上に載置する高比重シートの面積よりも小さくすることが出来る。暖房パネルを配置せず既存床面が露出している部分には、ダミー板(暖房パネルを構成する同じ板状体に流体チューブが埋設されていないもの)を配置する。
【0061】
暖房パネルを配置した後は、当該暖房パネル及びダミー板の上に高比重シートを載せる。なお、高比重シートを載せる前に、暖房パネルの上に更に第2の仕切材を挟んでもよい。暖房パネルと高比重シートの間に第2の仕切材を介在させることにより、暖房パネルと高比重シートの固着を防ぐことが出来る。高比重シートは、暖房パネル及びダミー板に荷重(重み)を加えることにより、既存床面からの暖房パネル及びダミー板の浮き上がりを防止すると共に、既存床面と暖房パネル及びダミー板との摩擦力を高め、暖房パネル及びダミー板を既存床面に固定させる。高比重シートは、上記の摩擦力を十分に発揮させるため、暖房パネル及びダミー板の表面の60%以上、好ましくは80%以上を覆う様に配置するのが望ましい。最も効果的に暖房パネル及びダミー板を固定するには、高比重シートを隙間なく敷設することである。
【0062】
次いで、高比重シートの上に仕切材(図6中の符号11で示す仕切材)を配置する。仕切材を配置して高比重シートと表装材との縁切りを行うことにより、高比重シートの表装材への固着を防止でき、暖房パネルや高比重シートの熱による伸縮が表装材に伝わらない様にすることが出来る。従って、仕切材は、高比重シートの表面の80%以上、好ましくは90%以上に亙って敷設するのが望ましい。最も好ましくは、複数枚の不織布を1cm程の厚さに重ね合わせながら隙間なく敷き詰めることにより、高比重シートと表装材とが確実に接触しない様にするのがよい。なお、不織布は、高比重シート上に両面テープにて仮止めするのが好ましい。但し、仮止めの目的は、固定ではなく、施工時のずれを防止することであり、仮止めは、通常、2mに1箇所程度の間隔で行い、狭い範囲を施工する場合は必要ではない。
【0063】
また、仕切材の上に表装材を配置する際には、現場回復をより容易にするため、固定しない方が好ましい。なお、施工・敷設した暖房パネルの熱媒チューブに流通させる熱媒は、熱媒循環装置によって温度と圧力を調整し、ヘッダを介して熱媒チューブに分散流通(循環)させる。熱媒循環装置は、屋外や屋内の適所に設置される。上記の第一発明の第二実施態様に係る床構造ならびに第三発明に係る施工方法は、前述の第一発明の第一実施態様と同様に、新築、既築の建造物の双方に適用することが出来る。
【0064】
次に、上記の床構造が施工された建造物において、特に賃貸期間終了時などに原状回復するために床構造を撤去する手順を説明する。先ず、表面の表装材を剥離し、次いで、高比重シートを剥離する。表装材と高比重シートとの間には、仕切材を介在させているので、両者の界面を分離することは容易であり、また、高比重シートとその下層の暖房パネルとの界面は、荷重により密着されているに過ぎず、暖房パネルの上の高比重シートは容易に剥がすことが出来る。
【0065】
高比重シートを取り除いた後は、最後に、暖房パネルを既存床面から剥離する。既存床表面と暖房パネルとの間には、多くの場合は接着剤を介在させていないし、介在させるとしても接着跡が残り難い弱接着剤を使用しているので、弱接着剤の一部が既存床面に残っても除去が容易であり、接着剤跡として残ることがない。また、表装材、暖房パネル及び高比重シートの何れも、ビス止めや釘打ちをしていないので、床面にこれらの固定穴が残ることもない。従って、既存床面の外観は些かも損傷されず、美観を維持できる。剥離した表装材、暖房パネル及び高比重シートも、損傷していないので、再使用することが出来る。
【実施例】
【0066】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明するが、本発明は、その趣旨を超えない限り、以下の記載例に限定されるものではない。
【0067】
実施例1:
図1及び図2において、符号1は広さが360cm×270cmの既存床であり、この既存床1の表面にロール状に巻回された高比重シート2を巻き戻しながら配置した。高比重シート2としては、厚さ1mm、幅350cm、長さ360cm、密度が2.5g/cm3の充填材含有ゴムシート(早川ゴム社製)を使用した。既存床1と高比重シート(充填材含有ゴムシート)2の界面には接着剤を介在させず、ビス止め、釘打ちも行わなかった。高比重シート2の表面には、厚み1mm、目付量が120g/m2の不織布3(東亜紡織社製)をアクリル系接着剤(三洋化成工業社製、商品名「ポリシックス」)によって貼着した。
【0068】
次いで、高比重シート2の上側に暖房パネル4を配置した。暖房パネル4は、240cm×300cmの四角形の平面形状を有し、且つ、図2及び図3に示す様に、厚さ12mmの板状体5の表面側に幅7.2mm、深さ7.2mmの溝が刻設され、当該溝に外径7.2mmの流体チューブ6が埋設され、その表面側に厚さ1mmのアルミニウム箔と樹脂シートの複合板(三菱化学産資社製、商品名「アルポリック」)が貼着されたものである。また、暖房パネル4の裏面側には、幅15mmの面ファスナー9(スリーエム社製、商品名「マジックテープ(登録商標)」)を流体チューブの埋設溝に沿って300mm間隔で張付けた。高比重シート2の上面側に暖房パネル4を配置するにあたっては、図4に示す様に、高比重シート2表面の不織布3上に仕切薄板10を配置し、この上に暖房パネル4を仮置きして位置合わせした。
【0069】
高比重シート2の上面側の暖房パネル4を位置合わせした後は、暖房パネル4を一旦捲り、仕切薄板10を取り除きつつ、暖房パネル4の上側から仕切薄板10を取り除いた部分について順次押圧することにより、高比重シート2の表面側に貼着された不織布3と、暖房パネル4の裏面側に貼着された面ファスナーとを密着させて締結した。なお、露出した高比重シート2の上にはダミー板を配置した。その場合、ダミー板の裏面にも面ファスナーを張付け、高比重シート2に貼着した不織布3と締結させた。そして、暖房パネル4及びダミー板の上に厚さ3mmの合板製の表装材8を配置することにより、図2に示す様な床構造を得た。なお、暖房パネル4と表装材8の界面には、アクリル系粘着剤(スリーエム社製、商品名:VHX207)を介在させた。
【0070】
上記の手順で施工した図2及び図3に示す床構造を3か月放置した後、原状回復する作業(撤去作業)を行った。撤去作業では、上記の様に施工する際にビス止めや釘打ちなどで固定していないので、表装材8、暖房パネル4、高比重シート2を順次に剥がすにあたり、極めて簡単に作業を行うことが出来た。また、施工の際、既存床1と高比重シート2との界面に接着剤を介在させていないので、撤去した際、既存床1の表面に接着跡も残らず、既存床1の最初の美麗な外観を再現することが出来た。
【0071】
実施例2:
図5に示す床構造を施工した。図5に示す床構造は、図3に示す構造と比べ、高比重シート2の表面に面ファスナー9を貼着し、暖房パネル4の裏面に不織布3を貼着することにより、高比重シート2に暖房パネル4を固定した点が主に異なる。図5に示す床構造の施工においては、暖房パネル4を敷設するにあたり、高比重シート2表面の不織布3上に仕切薄板10を配置し、この上に暖房パネル4を仮置きして位置合わせを行い、その後、暖房パネル4を捲り、仕切薄板10を取り除きつつ、暖房パネル4を上面側から押圧することにより、高比重シート2の表面側に貼着された不織布3と、暖房パネル4の裏面側に貼着された面ファスナーとを密着させて締結した。上記の場合と同様に図5に示す床構造を撤去したところ、極めて簡単に撤去することが出来、既存床1の最初の美麗な外観を再現することが出来た。
【0072】
実施例3:
図6に示す床構造を施工した。図6に示す床構造は、図1〜5に示す構造と比べ、暖房パネル4の上に高比重シート2を配置し、高比重シート2の上に仕切材11を介して表装材8を配置した点が主に異なる。高比重シート2としては、実施例1と同様にロール状に巻回されたシートであって、厚さ2mm、幅909cm、長さ500cm、密度が2.0g/cm3の充填材含有ゴムシート(早川ゴム社製)を使用した。また、高比重シート2は、下面に離型紙が貼られていたが、その一部だけを剥がして使用した。なお、暖房パネル4は、実施例1及び2におけるのと同様のものを使用した。
【0073】
図6に示す床構造の施工においては、既存床1の表面に暖房パネル4を配置した。その際、暖房パネル4の周囲にダミー板を配置した。次いで、暖房パネル4及びダミー板の上にこれら全体を覆う様に高比重シート2を載せ、暖房パネル4及びダミー板に荷重を加えた。更に、高比重シート2の上面に対し、その一部を除き、仕切材11として、厚さ0.1mm、幅90mmの不織布(東亜紡織社製)を隙間なく敷き詰めた。仕切材11は、高比重シート2の表面に両面テープ(3M社製)で仮止めした。そして、仕切材11の表面に表装材8を配置した。表装材8としては、厚さ8mmの木質フローリングの置き床を配置した。
【0074】
上記の手順で施工した図6に示す床構造に対し、80℃の温水を流して300時間床暖房を行った後、上記の実施例と同様に撤去した。木質フローリングの表装材8は、不織布の仕切材11を敷いた部位では何ら問題なく剥がすことが出来たが、仕切材11を敷かなかった部位では熱により変質したゴムと木質フローリングが接着し、剥がすのに多少の力が必要であった。また、木質フローリングとの接触部分が変色していた。また、仕切材11については何ら問題なく剥がすことが出来た。そして、高比重シート2を剥がしたところ、離型紙が貼られた部位は容易に剥がすことが出来たが、離型紙のない部位はゴムと暖房パネル4が熱により接着しており、剥がすのに大きな力を必要とした。
【0075】
上記の様に、図6に示す床構造においても、施工する際にビス止めや釘打ちなどで固定していないため、表装材8、仕切材11、高比重シート2、暖房パネル4を比較的簡単に剥がすことが出来た。特に、高比重シート2に離型紙が貼られていた部位、および、仕切材11を配置した部位については、表装材8、高比重シート2、暖房パネル4を新品同様の状態で回収できた。そして、施工の際、既存床1と暖房パネル4との界面に接着剤を介在させていないので、撤去した際、既存床1の表面に接着跡も残らず、既存床1の最初の美麗な外観を再現することが出来た。
【符号の説明】
【0076】
1 :既存床
2 :高比重シート
3 :不織布
4 :暖房パネル
5 :板状体
6 :熱媒チューブ
7 :アルミニウム箔
8 :表装材
8’:接着剤
9 :面ファスナー
10:仕切薄板
11:仕切材
【技術分野】
【0001】
本発明は、暖房可能な床構造およびその施工方法に関する。更に詳しくは、新築、既築の建造物に適した暖房可能な床構造、及び、暖房可能な床構造の施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、多様な暖房技術が提案され、実用化されている。この暖房技術の例としては、発泡合成樹脂製成形体や木製板状体などを基体とし、その一方の面に溝を刻設し、この溝に熱媒チューブを埋設し、これらの表面を、アルミニウム箔などの可撓性薄板で被覆した構造の床暖房用の暖房パネル(放熱板)が挙げられる(特許文献1〜4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−170007号公報
【特許文献2】特開平11−281070号公報
【特許文献3】特開2000−655365号公報
【特許文献4】特開2003−166719号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の暖房パネルは、主に新築の建造物(住宅)に敷設する際に採用される。新築の家屋、既築の住宅の場合、持主であっても将来の改装や転居などを考慮すると、暖房可能な床構造を施工する際に、美麗な床面に剥離し難い接着剤を塗布したり、ビスや釘の穴をあけたりすることに躊躇することが多い。また、賃貸住宅・貸室の場合には、賃貸期間終了時に住宅・貸室を原状回復して家主に明け渡す義務が課されている場合が多いので、明け渡し時に美麗な床面に剥離し難い接着剤の塗布跡や、ビス穴、釘穴が残っていることは許されない。
【0005】
本発明の第1の目的は、建造物の既存の床を損傷しないで施工できる暖房可能な床構造を提供することにある。また、本発明の第2の目的は、賃貸期間終了時に原状回復するのに容易な暖房可能な床構造を提供することにある。更に、本発明の第3の目的は、既築の建造物に適した暖房可能な床構造の施工方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は、新築の住宅、賃貸住宅、貸室などにおいて、建造物(住宅)の床面にビスや釘の穴を設けることなく、また、種々の改造などを加えることなく又は可及的に少なくして施工し得る暖房可能な床構造について鋭意検討した結果、暖房パネルを敷設するにあたり、既存床面に対する位置ずれ及び浮上りを規制し得る程度の荷重(重み)を暖房パネルに加えることにより、既存床面を傷つけることなく簡便に暖房パネルを配置でき、暖房可能な床構造を構築できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、第一発明に係る暖房可能な床構造は、建造物の既存床面に配置された暖房パネルと、当該暖房パネルの上に配置された表装材とを備え、前記暖房パネルは、表面側に刻設された埋設溝に熱媒チューブが埋設され且つその上側に可撓性薄板が貼着されて成り、前記暖房パネルには、前記既存床面に対する位置ずれ及び浮上りを規制し得る程度の荷重が加えられていることを特徴とする。
【0008】
上記の第一発明の第一実施態様では、上記の暖房可能な床構造において、暖房パネルの下面に高比重シートが取り付けられている。
【0009】
上記の第一発明の第二実施態様では、上記の暖房可能な床構造において、暖房パネルの上に高比重シートが載せられている。
【0010】
また、第二発明に係る暖房可能な床構造の施工方法は、上記の第一発明の第一実施態様の暖房可能な床構造の施工方法であって、表面側に刻設された埋設溝に熱媒チューブが埋設され且つその上側に可撓性薄板が貼着されて成る暖房パネルを建造物の既存床表面に敷設するにあたり、前記既存床表面に高比重シートを配置する工程、当該高比重シートの上に前記暖房パネルを固定する工程、及び、当該暖房パネルの上に表装材を配置する工程を含むことを特徴とする。
【0011】
更に、第三発明に係る暖房可能な床構造の施工方法は、上記の第一発明の第二実施態様の暖房可能な床構造の施工方法であって、表面側に刻設された埋設溝に熱媒チューブが埋設され且つその上側に可撓性薄板が貼着されて成る暖房パネルを建造物の既存床表面に敷設するにあたり、前記既存床表面に前記暖房パネルを配置する工程、当該暖房パネルの上に高比重シートを載せる工程、当該高比重シートの上に仕切材を配置する工程、及び、当該仕切材の上に表装材を配置する工程を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
第一発明に係る暖房可能な床構造によれば、既存床面に対する位置ずれ及び浮上りを規制し得る程度の荷重が暖房パネルに加えられているため、暖房パネルをビスや釘で固定する必要がなく、既存床面にビス穴や釘穴が出来ない。
【0013】
第一発明の第一実施態様に係る暖房可能な床構造によれば、暖房パネルの下面に高比重シートが取り付けられており、既存床面に対する位置ずれ及び浮上りを規制し得る程度の荷重が高比重シートにより暖房パネルに加えられているため、暖房パネルの剥離、滑り(移動)などを防止することが出来る。
【0014】
第一発明の第二実施態様に係る暖房可能な床構造によれば、暖房パネルの上に高比重シートが載せられており、既存床面に対する位置ずれ及び浮上りを規制し得る程度の荷重が高比重シートにより暖房パネルに加えられているため、暖房パネルの剥離、滑り(移動)などを防止することが出来る。
【0015】
第二発明および第三発明に係る暖房可能な床構造の施工方法によれば、建造物の既存床表面に暖房パネルを敷設するにあたり、既存床表面に対し、高比重シート、暖房パネル、表装材を順次に配置するか、又は、暖房パネル、高比重シート、表装材を順次に配置するだけで、剥離、滑り(移動)などのない状態に暖房パネルを配置できるため、施工作業が極めて簡単である。
【0016】
第二発明および第三発明に係る暖房可能な床構造の施工方法によれば、建造物の既存床面と高比重シートの間、高比重シートと暖房パネルの間、暖房パネルと表装材の間、あるいは、建造物の既存床面と暖房パネルと間、暖房パネルと高比重シートの間、高比重シートと表装材の間は、何れも、ビス止めや釘打ちによって固定していないので、原状回復する作業が簡単であり、また、原状回復した後の床面に損傷が残らない。しかも、回収した高比重シート、暖房パネル、表装材は、ビス穴や釘穴がないので、再使用することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】第一発明の第一実施態様に係る暖房可能な床構造、及び、第二発明に係る暖房可能な床構造の施工方法を示す斜視組立図である。
【図2】第一発明の第一実施態様に係る暖房可能な床構造を示す縦断面図であり、暖房パネルの下に高比重シートが取り付けられた床構造の図である。
【図3】第一発明の第一実施態様に係る暖房可能な床構造を模式的に示す縦断面図であり、高比重シートの表面に不織布が配置され且つ暖房パネルの裏面に面ファスナーが配置された床構造の図である。
【図4】第二発明係る暖房可能な床構造の施工方法の1つの形態を示す縦断面図である。
【図5】第一発明の第一実施態様に係る暖房可能な床構造の他の形態を模式的に示す縦断面図であり、高比重シートの表面に面ファスナーが配置され且つ暖房パネルの裏面に不織布が配置された床構造の図である。
【図6】第一発明の第二実施態様に係る暖房可能な床構造を模式的に示す縦断面図であり、暖房パネルの上に高比重シートが載せられた床構造の図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明に係る暖房可能な床構造(以下、「床構造」と略記する。)及び暖房可能な床構造の施工方法(以下、「施工方法」と略記する。)について、その実施形態を説明する。本発明の床構造は、建造物の既存床面に適用できる。本発明において建造物とは、一戸建住宅、集合住宅、商業ビル、ホテル、各種擁護施設、病院、幼稚園、保育園などをいう。本発明は、賃貸ビル、賃貸住宅、貸室などにおける既存の床に好適に適用できる。建造物の既存床面とは上記の建造物の床面をいう。これら床面はコンクリート、木製板、合板などの床面であり、その材質は特に制限されない。
【0019】
第一発明は、床構造に関する発明であり、斯かる床構造は、建造物の既存床面に配置された暖房パネル(放熱板)と、当該暖房パネルの上に配置された表装材とを備え、暖房パネルは、表面側に刻設された埋設溝に熱媒チューブが埋設され且つその上側に可撓性薄板が貼着されて成り、暖房パネルには、既存床面に対する位置ずれ及び浮上りを規制し得る程度の荷重(重み)が加えられている。図1〜図3、図5及び図6に第一発明の床構造が示されており、図中の符号1は既存の床、符号4は暖房パネル、符号8は表装材、符号8’は接着剤、符号6は熱媒チューブ、符号7は可撓性薄板としてのアルミニウム箔をそれぞれ示している。
【0020】
上記の暖房パネルは、表面に埋設溝が刻設された薄手の板状体と、埋設溝に埋設された熱媒チューブと、板状体の表面を覆う可撓性薄板とから主に構成される。板状体は、その表面に設けられた埋設溝によって熱媒チューブを支持する機能を有する。板状体は、熱媒チューブの支持機能を発揮し得る様に、剛性が比較的高く、且つ、耐熱性を有する材料で構成される。斯かる材料の例としては、木製板、合板、合成樹脂板などを挙げることが出来る。これらの中では、発泡合成樹脂板が好適である。
【0021】
上記の合成樹脂としては、ポリアミド6、ポリアミド6・6、ポリアミドイミドなどのポリアミド系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体などのポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリウレタンなどを挙げることが出来る。上記の発泡合成樹脂板の発泡倍率は、1.5〜20倍程度の低倍率とするのが好ましい。
【0022】
板状体の広さや平面形状は特に限定されるものではないが、施工した後の平面形状が後述の高比重シート(図中の符号2で示すシート)と同一形または相似形を呈するのが好ましい。板状体は、梱包、輸送などの際に嵩張らない様に、その面積を比較的小さくするのが好ましく、施工の際に複数枚を組合せ易い形状にするのが好ましい。板状体の厚さは、板状体の材料の比重や剛性を勘案して適宜決めるものとするが、厚すぎると、梱包、輸送などの際に嵩張り、重くなるので、熱媒チューブを支持できる程度に可及的に薄くするのが好ましい。例えば、板状体は、発泡ポリスチレン製の場合、厚さを5〜25mm程度とするのが好ましい。
【0023】
板状体には、熱媒チューブを埋設可能な埋設溝が刻設される。刻設する埋設溝の態様は、これに埋設される熱媒チューブの配置態様に応じて適宜決定される。例えば、埋設溝は、熱媒チューブを直線状に延在させる場合、板状体に直線状に刻設され、熱媒チューブを部分的に湾曲させて配置する場合、板状体に直線部と円弧部とを組合せて刻設される。この埋設溝の幅や深さは、埋設溝に埋設させる熱媒チューブが容易に外れない様に、熱媒チューブの外径とほぼ同一寸法に設計されるのが好ましい。埋設溝の長さ方向に直交する断面形状は、熱媒チューブの外径に沿う様に、U字型に形成されるのが好ましい。
【0024】
熱媒チューブは、その内側空間(管内)に熱媒を流通させて外部に放熱する様に機能するものであり、可撓性、機械的強度、耐熱性、耐薬品性などに優れている必要がある。この様な特性を発揮する熱媒チューブとしては、架橋ポリエチレン管、ポリブテン管、ポリプロピレン管、管の壁面に金属線を埋設した樹脂管などを挙げることが出来る。これらの中でも好ましいのは、架橋ポリエチレン管、ポリブテン管である。熱媒チューブの直径は、暖房パネルの用途によって異なるが、一般的には、外径が5〜30mm、内径が3〜25mmの範囲とされる。この熱媒チューブの内部を流通させる熱媒としては、温水、水蒸気、オイルなどを挙げることが出来る。
【0025】
可撓性薄板は、板状体の埋設溝に埋設した熱媒チューブが埋設溝から飛び出すのを防ぐとともに、熱媒チューブからの熱を暖房パネル全体に均等に行き渡らせる様に機能する。可撓性薄板は、熱伝導性に優れた材料で構成された可撓性の薄板であればよく、例えば、アルミニウム箔、錫箔、銅箔、ステンレス鋼箔などの金属箔、織布や不織布、樹脂フィルム又は樹脂シート、及び、これらを組合せた積層体などを挙げることが出来る。織布や不織布は、鉄、軟鋼、ステンレス鋼、ニッケル合金、銅合金、チタン合金、アルミニウム合金などの熱伝導性に優れた金属によって作製されたものが好ましい。上記の可撓性薄板の中でも、製造の容易さやコストなどを勘案すると、アルミニウム箔が最も好ましい。
【0026】
可撓性薄板の平面形状および大きさは、暖房パネルと同一の平面形状および同一の大きさとするのが好ましいが、暖房パネルの平面形状の面積よりも小さくすることも出来る。暖房パネルの面積よりも小さくする場合は、少なくとも熱媒チューブが埋設されている部分を被覆する大きさとされる。可撓性薄板の厚さは、材料によっても異なるが、薄すぎると強度が不十分で破損し易くなり、厚すぎると暖房パネルが重くなり且つコストが高くなるため、10μm〜2mmの範囲が好ましい。
【0027】
上記の第一発明において、暖房パネルに荷重を加える態様としては、特に制限はないが、例えば、暖房パネルの下面に高比重シートが取り付けられることにより、暖房パネルに荷重が加えられる態様(第一実施態様)、あるいは、暖房パネルの上に高比重シートが載せられることにより、暖房パネルに荷重が加えられる態様(第二実施態様)が挙げられる。図1〜図3及び図5に第一実施態様が示されており、図6に第二実施態様が示されている。図中の符号2は高比重シートを示している。
【0028】
上記の第一実施態様に係る床構造においては、暖房パネルの下面に高比重シートが取り付けられる。すなわち、既存床面に配置された高比重シートの上面側に暖房パネルが固定される。暖房パネルの重さは3〜4kg/m2程度であり、その表面に後述する表装材が配置されたとしても6.5〜7.5kg/m2程度である。従って、そのままの状態で床面に配置した場合、暖房パネルが浮き上がったり、ずれたりする恐れがある。そこで、本発明においては、暖房パネルを高比重シートに固定することにより、浮き上がりやずれを防止する。
【0029】
本発明において、高比重シートとは、密度が通常は1.5g/cm3以上、好ましくは1.8g/cm3以上であって、上限は特に制限はないが、通常は4.0g/cm3以下のシートをいう。そして、高比重シートによって床面に掛かる単位面積当たりの荷重は1.5kg/m2以上、好ましくは1.5〜50kg/m2、より好ましくは3〜30kg/m2の範囲とされる。上記の様な密度の高比重シートは、既存床面に配置した際、自重により床面に密着し、床面からの浮き上がりがなく、床面における滑り(移動)が防止される。床面における滑り(移動)を一層防ぐ目的で、高比重シートと床面との界面に接着剤を介在させることも出来る。介在させる接着剤としては、接着力が弱く且つこれを除去した際に塗布跡が残り難いものがよい。
【0030】
高比重シートとしては、アスファルト含有短繊維シート、充填材含有ゴムシートなどが挙げられる。高比重シートの厚さは、密度にもよるが、通常は1〜10mmの範囲とされる。高比重シートの面積は、暖房床を構築する場所の広さに応じて決定されるが、一般的には100〜500cm2とされる。面積が広い場所では、小面積の高比重シートを複数枚組合せることにより、全体の面積を広げればよい。高比重シートは、板状のものであっても、巻回可能なものであってもよいが、原状回復時に巻回しながら撤去できる点で、巻回可能なものが好ましい。
【0031】
アスファルト含有短繊維シートの短繊維としては、天然繊維、合成繊維の何れでもよく、短繊維の長さは、アスファルトと混合して高比重シートとした場合にロール状に巻回可能な程度に柔軟性を発揮できる長さであり、1〜30mmの範囲が好ましい。アスファルトは、固体または半固体の瀝青質混合物であって、主成分は複雑な炭化水素であり、天然アスファルト、石油精留の際の残留物として得られる石油アスファルトの何れでもよい。アスファルトの混合割合は、5〜30重量%の範囲が好ましい。
【0032】
充填材含有ゴムシートのゴムとしては、天然ゴム、合成ゴムの何れでもよい。中でも合成ゴムが好ましく、合成ゴムとしてはアクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、スチレン−ブタジエンゴム(BR)、ポリブタジエン、ポリクロロプレン(CR)、ポリイソプレン、イソプレン−イソブチレンゴム(IIR)、エチレン−プロピレンゴム(EPR、EPDM)、クロルスルホン化ポリエチレン、塩素化ポリエチレンなどが挙げられる。充填材としては、粉末状の無機質充填材が好ましく、カーボンブラック、シリカ、マイカ、クレー、グラファイト、炭酸カルシウム、酸化チタン、アルミナ、水酸化アルミニウムなどが挙げられる。充填材の混合割合は、5〜60重量%の範囲が好ましい。
【0033】
第一発明の第一実施態様において、高比重シートは、暖房パネルの下面に対し、アンカー効果、接着力、粘着力、吸着力、磁力またはこれらの何れかの組合せを利用して取り付けられる。暖房パネルの固定において上記の様な原理を利用することにより、高比重シート及び暖房パネルの表面の傷付きがなく、再度の着脱が容易である。なお、「再度の脱着が容易である」とは、以下の剥離試験を行った場合に、15N/10mm以下、好ましくは10N/10mm以下の力で剥がれることを言う。
【0034】
上記の剥離試験は、JIS Z 0237「90°引き剥がし試験」に準拠した試験であり、斯かる試験においては、20mm×50mm以上の試験片を5つ準備してそれぞれに接着し、各試験片に対してローラーで3kgfの荷重をかけて2往復させた後、24時間程度養生し、次いで、常温下で300mm/minの速度で剥がすときの力を測定する。例えば、面ファスナーとして、70mm×100mmの10倍発泡の樹脂製被着体試験片基材の上に固定した20mm×100mmの面ファスナーを使用し、不織布として、PEシート基材に粘着材で固定した20mm×50mmの不織布シートを使用し、これら不織布と面ファスナーを上記の条件で張り合わせた後、剥離試験を行う。これにより10N/10mm以下であることが確認できる。
【0035】
また、上記の高比重シートと暖房パネルの固定において、アンカー効果を利用する方法とは、いわゆる機械的結合またはファスナー効果によって結合する方法である。具体的には、高比重シートの表面側および暖房パネルの裏面側の一方の面に面ファスナー(オス)を貼着し且つ他方の面に不織布を貼着するか、又は、一方の面に面ファスナー(オス)を貼着し且つ他方の面に面ファスナー(メス)を貼着する等して、高比重シートと暖房パネルを固定する方法が挙げられる。第一実施態様を示す図1〜図3及び図5において、符号3は不織布を示し、符号9は面ファスナーを示している。
【0036】
上記の不織布とは、天然繊維、合成繊維などを適当な方法でマット状や薄綿状にして、接着剤や繊維自身の融着力によって繊維同士を接合して製造した布であり、その製法には乾式法と湿式法がある。第一発明の第一実施態様において不織布を使用する目的は、対向面(高比重シートの表面側または暖房パネルの裏面側の例えば面ファスナー)との結合強度を大きくし且つ保つことであるので、不織布としては乾式法で製造されて嵩張ったものが好ましい。不織布の厚みは0.1〜10mmの範囲、好ましくは0.5〜5mmの範囲であり、目付量(単位面積当たりの質量)は10〜500g/m2、好ましくは40〜200g/m2の範囲である。
【0037】
また、高比重シートもしくは暖房パネルに不織布を貼着する際には、接着剤を介在させるのが好ましい。この際使用できる接着剤に特に制限はないが、高比重シート又は暖房パネル、及び、不織布を侵食しないものが好ましい。接着剤は市販されている商品の中から適宜選んで使用することが出来る。不織布を貼着する接着剤の量は可及的に少なくして、不織布の嵩張りを残す様にするのが好ましい。不織布は、対向面に貼り付けられた面ファスナー、両面接着テープなどの接着テープと密着し、両者の界面での滑り(移動)を防ぐ。
【0038】
なお、面ファスナー(オス)とは、シート表面に小さな突起を有し、この小さな突起が不織布または面ファスナー(メス)のシート表面の繊維の隙間に突入することにより両者を結合する構造のものをいう。面ファスナー(オス)と不織布または面ファスナー(メス)との結合においては、小さな突起が繊維の隙間に突入することにより、不織布や面ファスナー(メス)との界面での剥離、滑り(移動)などが防止される。
【0039】
また、第一発明の第一実施態様において、接着力を利用して高比重シートと暖房パネルを固定する方法としては、具体的には、接着力の弱い両面接着テープ、ホットメルト接着剤などを介して高比重シートと暖房パネルを固定する方法が挙げられる。弱い接着力とは、上記の剥離試験による剥がれ易さを満たす接着力をいう。ホットメルト接着剤は、電磁誘導加熱などで脱着可能である。また、粘着力を利用して固定する方法としては、具体的には、両面に粘着性を有する部材を挟むことにより、高比重シートと暖房パネルを固定する方法があげられる。粘着性を有する部材としては、粘着シート、粘着テープなどが挙げられる。
【0040】
更に、吸着力を利用して高比重シートと暖房パネルを固定する方法としては、両面に吸着性を有する部材を挟むことにより、高比重シートと暖房パネルを固定する方法が挙げられる。吸着性を有する部材としては、吸着シート、吸盤、吸盤シートなどが挙げられる。この中で、吸盤を使用する場合は、高比重シート又は暖房パネルに対し、接着剤または接着テープによって吸盤を予め固定した状態で使用する。
【0041】
また、磁力を利用して固定する方法としては、具体的には、高比重シートの表面側および暖房パネルの裏面側の何れか一方の面に磁石を固定し且つ他方の面に磁石が吸着する金属を固定するか、又は、両方の面に磁石を固定することにより、両者を磁力によって固定する方法が挙げられる。磁石や磁石が吸着する金属は、予め接着剤もしくは接着テープによって固定される。磁石の種類は、永久磁石であっても、磁化・消磁の可能な磁化金属であってもよい。また、これらの原理を組合せて固定する方法としては、例えば、両面接着テープと不織布を組合せたり、複数の固定方法を併用する方法などが考えられる。
【0042】
高比重シートと暖房パネルを固定するにあたり、上記の面ファスナー、接着力の弱い両面接着テープ、ホットメルト接着剤、吸着シート、吸盤、吸盤シート、磁石などのいわゆる固定用部材を使用した場合は、再度の脱着が容易であり、例えば賃貸期間終了時の原状回復作業が簡単になる。上記の固定用部材を取り付ける位置は、暖房パネルの裏面全体とする必要はなく、暖房パネルの外周と熱媒チューブの埋設溝に沿った位置などの一部に限定するのが好ましい。例えば、固定用部材として接着テープを用いる場合、接着テープの幅は5〜100mmとされ、その取付面積は暖房パネルの面積の2〜50%、好ましくは5〜20%の範囲とされる。
【0043】
上記の様に、高比重シートと暖房パネルを固定する手段には幾つかあるが、より具体的には、上記の第一発明の第一実施態様においては、1つの形態として、暖房パネルが、その裏面側に貼着された接着テープによって高比重シート表面の不織布に固定された構造を挙げることが出来、また、他の形態として、暖房パネルが、その裏面側に貼着された不織布によって高比重シート表面の接着テープに固定された構造を挙げることが出来る。図1〜図3は、上記の第一発明の第一実施態様における1つの形態を示しており、図5は、上記の第一発明の第一実施態様における他の形態を示している。
【0044】
また、上記の暖房パネルの上には、床の外観を高めるため、表装材(仕上げ材)が配置される。表装材は、暖房パネルの可撓性薄板の表面に対し、必要に応じて弱接着剤または粘着剤を介在させて配置される。通常、表装材は、厚さが薄く、自重が軽いため、暖房パネルに固定することにより、浮き上がりや反りが防止する。すなわち、暖房パネルと表装材との間に弱接着剤または粘着剤を介在させることにより、暖房パネルと表装材との界面で滑り(移動)を防止することが出来る。弱接着剤または粘着剤は、上記の機能を発揮するものであれば、市販されている製品の中から適宜選んで使用することが出来る。
【0045】
表装材としては、化粧板、畳、カーペットなどが挙げられる。化粧板は、木、発泡合成樹脂、不織布、ゴム、タイル、石材などで作製された板状のものが好適である。また、一定のパターンに形成された多数の部材を組み合わせて敷設する表装材としては、平面視した場合に側縁部を互いに凹凸嵌合させて一体化するいわゆる置き床方式のものが好ましい。表装材の厚みが薄く撓みやすい場合、あるいは、タイルや石材を表装材として使用する場合には、合板などの剛性板を介在させ、この剛性板の上に表装材が貼着されてもよい。
【0046】
次に、第二発明に係る施工方法を説明する。第二発明は、上記の第一発明の第一実施態様に係る床構造の施工方法に関するものであり、斯かる施工方法は、上記の暖房パネルを既存床表面に敷設するにあたり、既存床表面に高比重シートを配置する工程、高比重シートの上に暖房パネルを固定する工程、及び、暖房パネルの上に表装材を配置する工程を含む。
【0047】
最初の高比重シートを配置する工程においては、高比重シートの面積(広さ)を通常は既存床の面積と同じにする。既存床面と高比重シートとの間には、賃貸期間終了時の原状回復作業を容易にするため、接着剤を介在させないのが好ましい。例外的に接着剤を介在させる場合は、前述の通り、接着力が弱く且つこれを除去した後に塗布跡が残り難いものがよい。
【0048】
高比重シートの上に暖房パネルを固定する工程においては、高比重シートに暖房パネルを固定して当該暖房パネルに下向きの荷重を加えるが、暖房パネルを固定するにあたり、高比重シートの上に暖房パネルを仮置きし、位置合わせ行う。その場合、高比重シートの表面側、暖房パネルの裏面側の一方または双方に上記の様な固定用部材が取り付けられているため、仮置きした際に両者が結合するのを防ぐ目的で仕切薄板を配置する。図4中に符号10で仕切薄板が示されている。
【0049】
仕切薄板としては、紙類、樹脂製フィルム、金属箔、及び、これらを組合せた積層体などが挙げられる。仕切薄板の配置方法は、(1)予め高比重シートの表面側に配置する方法、(2)予め暖房パネルの裏面側に配置する方法、(3)床表面に高比重シートを配置した後に当該高比重シートの表面に載せる方法の何れでもよい。上記(1)及び(2)の方法においては、暖房パネルの仮置きの際に剥離や移動が生じない程度の強さで仕切薄板を高比重シートの表面側、又は、暖房パネルの裏面側に仮止めするのが好ましい。
【0050】
仕切薄板は、位置合わせした後、高比重シートと暖房パネルとの間から取り除くので、厚さは薄く、重量は軽く、取り除く際に破損しない程度の強度を有しているのが好ましい。仕切薄板は、材料の種類にもよるが、厚さが0.005〜2mm、重量が1〜1000g/m2、引張り強度が1N/5cm(JIS L1096)以上の薄板が好適である。暖房パネルの位置合わせをした後は、暖房パネルを捲り、仕切薄板を取り除く。そして、薄板を取り除き、暖房パネルを上側から押圧することにより、高比重シートと暖房パネルの間に介在させた固定用部材を結合させる。すなわち、高比重シートの不織布に暖房パネルの接着テープを固定する。または、高比重シートの接着テープに暖房パネルの不織布を固定する。これにより、高比重シートと暖房パネルの界面における滑り(移動)を防止することが出来る。図4は、第二発明に係る施工方法を示しており、上面に不織布が貼着された高比重シートに対し、下面に接着テープが貼着された暖房パネルを固定する1つの形態を示している。
【0051】
床表面において暖房パネルを配置する箇所は、暖房したい部分に限定することも出来、暖房パネルの面積は、高比重シートの面積よりも小さくすることが出来る。暖房パネルが配置されずに高比重シートが露出している部分には、ダミー板(暖房パネルを構成する同じ板状体に流体チューブが埋設されていない構造もの)を配置する。そして、最後に、暖房パネル及びダミー板の上に表装材を配置する。暖房パネル及びダミー板と表装材との間には、上記の様に、必要に応じて弱接着剤または粘着剤を介在させる。
【0052】
なお、施工・敷設した暖房パネルの熱媒チューブに流通させる熱媒は、熱媒循環装置によって温度と圧力を調整し、ヘッダを介して熱媒チューブに分散流通(循環)させる。熱媒循環装置は、屋外や屋内の適所に設置される。上記の第一発明に係る床構造は、新築、既築の建造物の双方に施工することが出来る。
【0053】
次に、上記の床構造が施工された建造物において、特に賃貸期間終了時などに原状回復するために床構造を撤去する手順を説明する。先ず、表面の表装材を剥離し、次いで、暖房パネルを剥離する。表装材と暖房パネルとの間は、弱接着剤または粘着剤が介在しているだけなので、両者の界面を分離することは容易であり、また、暖房パネルとその下層の高比重シートとは、不織布と接着テープとによって密着されているに過ぎず、これらの界面を剥離する際に不織布が破壊されるだけなので、高比重シートから暖房パネルを分離することも容易である。
【0054】
暖房パネルを取り除いた後は、最後に、高比重シートを既存床面から剥離する。既存床表面と高比重シートとの間には、多くの場合は接着剤を介在させていないし、介在させるとしても接着跡が残り難い弱接着剤を使用しているので、弱接着剤の一部が既存床面に残っても除去が容易であり、接着剤跡として残ることがない。また、表装材、暖房パネル及び高比重シートの何れも、ビス止めや釘打ちをしていないので、床面にこれらの固定穴が残ることもない。従って、既存床面の外観は些かも損傷されず、美観を維持できる。剥離した表装材、暖房パネル及び高比重シートも、損傷していないので、再使用することが出来る。
【0055】
次に、本発明の第一発明の第二実施態様に係る床構造について説明する。斯かる床構造は、上記の第一発明の床構造において、暖房パネルの上に高比重シートが載せられる。すなわち、既存床面に暖房パネルが配置され、その上に高比重シートが載せられる。上記の様に暖房パネルの上に高比重シートが配置されることにより、暖房パネルに荷重(重み)が加えられるため、床面からの暖房パネルの浮き上がりを防止できると共に、暖房パネルと既存床面との摩擦力を高め、暖房パネルと上既存床面との界面での滑り(移動)を防ぐことが出来る。換言すれば、既存床面に対する暖房パネルの位置ずれや浮上りを防止できる。図6に第一発明の第二実施態様が示されており、図中の符号4が暖房パネル、符号2が高比重シート、符号11が後述する仕切材、符号8が表装材をそれぞれ示している。
【0056】
また、界面での滑り(移動)を防ぐ目的で、暖房パネルと既存床面との界面に接着剤を介在させることも出来る。接着剤を介在させる場合は、接着力が弱く且つこれを除去した後に塗布跡が残り難いものがよい。なお、上記の第一発明の第二実施態様において使用される暖房パネル、高比重シート、表装材は、前述の第一発明の第一実施態様におけるのと同様である。
【0057】
第一発明の第二実施態様においては、高比重シートの上、すなわち、高比重シートと表装材の間に仕切材が設けるのが好ましい。仕切材の材質としては、樹脂、紙、木材、耐熱性の高い無機物などが挙げられる。具体的には、可撓性または剛性を有する各種の薄板、粉体、不織布、織布などが挙げられ、最も汎用的には不織布または織布が使用される。上記の様な仕切材を設け、高比重シートとその上に配置する表装材との縁切りを行うことにより、高比重シートが熱変形して表装材に固着することを防ぎ、暖房パネルや高比重シートの熱による伸縮が表装材に伝わらない様にすることが出来る。
【0058】
更に、暖房パネルと高比重シートの固着を防ぐため、暖房パネルと高比重シートの間にも不織布を介在させるのが好ましい。上記の様な不織布は、暖房パネルの上に配置するため、出来る限り熱抵抗が低いことが好ましい。具体的には、熱抵抗が、0.01m2K/W以下、好ましくは0.001m2K/W以下であればよい。仕切材としての不織布の厚みは0.01〜1mmの範囲、好ましくは0.05〜0.5mmの範囲が好ましい。
【0059】
次に、第三発明に係る施工方法を説明する。第三発明に係る施工方法は、上記の第一発明の第二実施態様に係る床構造の施工方法であり、暖房パネルを既存床表面に敷設するにあたり、既存床表面に暖房パネルを配置する工程、当該暖房パネルの上に高比重シートを載せる工程、当該高比重シートの上に仕切材を配置する工程、および、当該仕切材の上に表装材を配置する工程を含む。図6において符号11が仕切材を示している。
【0060】
具体的には、先ず、既存床表面に暖房パネルを配置する。既存床面と暖房パネルとの間には、賃貸期間終了時の原状回復作業を勘案すると、接着剤を介在させないのが好ましい。例外的に接着剤を介在させる場合は、前記した通り、接着力が弱く且つこれを除去した後に塗布跡が残り難いものがよい。暖房パネルを配置する箇所は、既存床表面の暖房したい部分に限定することが出来、暖房パネルの面積は、その上に載置する高比重シートの面積よりも小さくすることが出来る。暖房パネルを配置せず既存床面が露出している部分には、ダミー板(暖房パネルを構成する同じ板状体に流体チューブが埋設されていないもの)を配置する。
【0061】
暖房パネルを配置した後は、当該暖房パネル及びダミー板の上に高比重シートを載せる。なお、高比重シートを載せる前に、暖房パネルの上に更に第2の仕切材を挟んでもよい。暖房パネルと高比重シートの間に第2の仕切材を介在させることにより、暖房パネルと高比重シートの固着を防ぐことが出来る。高比重シートは、暖房パネル及びダミー板に荷重(重み)を加えることにより、既存床面からの暖房パネル及びダミー板の浮き上がりを防止すると共に、既存床面と暖房パネル及びダミー板との摩擦力を高め、暖房パネル及びダミー板を既存床面に固定させる。高比重シートは、上記の摩擦力を十分に発揮させるため、暖房パネル及びダミー板の表面の60%以上、好ましくは80%以上を覆う様に配置するのが望ましい。最も効果的に暖房パネル及びダミー板を固定するには、高比重シートを隙間なく敷設することである。
【0062】
次いで、高比重シートの上に仕切材(図6中の符号11で示す仕切材)を配置する。仕切材を配置して高比重シートと表装材との縁切りを行うことにより、高比重シートの表装材への固着を防止でき、暖房パネルや高比重シートの熱による伸縮が表装材に伝わらない様にすることが出来る。従って、仕切材は、高比重シートの表面の80%以上、好ましくは90%以上に亙って敷設するのが望ましい。最も好ましくは、複数枚の不織布を1cm程の厚さに重ね合わせながら隙間なく敷き詰めることにより、高比重シートと表装材とが確実に接触しない様にするのがよい。なお、不織布は、高比重シート上に両面テープにて仮止めするのが好ましい。但し、仮止めの目的は、固定ではなく、施工時のずれを防止することであり、仮止めは、通常、2mに1箇所程度の間隔で行い、狭い範囲を施工する場合は必要ではない。
【0063】
また、仕切材の上に表装材を配置する際には、現場回復をより容易にするため、固定しない方が好ましい。なお、施工・敷設した暖房パネルの熱媒チューブに流通させる熱媒は、熱媒循環装置によって温度と圧力を調整し、ヘッダを介して熱媒チューブに分散流通(循環)させる。熱媒循環装置は、屋外や屋内の適所に設置される。上記の第一発明の第二実施態様に係る床構造ならびに第三発明に係る施工方法は、前述の第一発明の第一実施態様と同様に、新築、既築の建造物の双方に適用することが出来る。
【0064】
次に、上記の床構造が施工された建造物において、特に賃貸期間終了時などに原状回復するために床構造を撤去する手順を説明する。先ず、表面の表装材を剥離し、次いで、高比重シートを剥離する。表装材と高比重シートとの間には、仕切材を介在させているので、両者の界面を分離することは容易であり、また、高比重シートとその下層の暖房パネルとの界面は、荷重により密着されているに過ぎず、暖房パネルの上の高比重シートは容易に剥がすことが出来る。
【0065】
高比重シートを取り除いた後は、最後に、暖房パネルを既存床面から剥離する。既存床表面と暖房パネルとの間には、多くの場合は接着剤を介在させていないし、介在させるとしても接着跡が残り難い弱接着剤を使用しているので、弱接着剤の一部が既存床面に残っても除去が容易であり、接着剤跡として残ることがない。また、表装材、暖房パネル及び高比重シートの何れも、ビス止めや釘打ちをしていないので、床面にこれらの固定穴が残ることもない。従って、既存床面の外観は些かも損傷されず、美観を維持できる。剥離した表装材、暖房パネル及び高比重シートも、損傷していないので、再使用することが出来る。
【実施例】
【0066】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明するが、本発明は、その趣旨を超えない限り、以下の記載例に限定されるものではない。
【0067】
実施例1:
図1及び図2において、符号1は広さが360cm×270cmの既存床であり、この既存床1の表面にロール状に巻回された高比重シート2を巻き戻しながら配置した。高比重シート2としては、厚さ1mm、幅350cm、長さ360cm、密度が2.5g/cm3の充填材含有ゴムシート(早川ゴム社製)を使用した。既存床1と高比重シート(充填材含有ゴムシート)2の界面には接着剤を介在させず、ビス止め、釘打ちも行わなかった。高比重シート2の表面には、厚み1mm、目付量が120g/m2の不織布3(東亜紡織社製)をアクリル系接着剤(三洋化成工業社製、商品名「ポリシックス」)によって貼着した。
【0068】
次いで、高比重シート2の上側に暖房パネル4を配置した。暖房パネル4は、240cm×300cmの四角形の平面形状を有し、且つ、図2及び図3に示す様に、厚さ12mmの板状体5の表面側に幅7.2mm、深さ7.2mmの溝が刻設され、当該溝に外径7.2mmの流体チューブ6が埋設され、その表面側に厚さ1mmのアルミニウム箔と樹脂シートの複合板(三菱化学産資社製、商品名「アルポリック」)が貼着されたものである。また、暖房パネル4の裏面側には、幅15mmの面ファスナー9(スリーエム社製、商品名「マジックテープ(登録商標)」)を流体チューブの埋設溝に沿って300mm間隔で張付けた。高比重シート2の上面側に暖房パネル4を配置するにあたっては、図4に示す様に、高比重シート2表面の不織布3上に仕切薄板10を配置し、この上に暖房パネル4を仮置きして位置合わせした。
【0069】
高比重シート2の上面側の暖房パネル4を位置合わせした後は、暖房パネル4を一旦捲り、仕切薄板10を取り除きつつ、暖房パネル4の上側から仕切薄板10を取り除いた部分について順次押圧することにより、高比重シート2の表面側に貼着された不織布3と、暖房パネル4の裏面側に貼着された面ファスナーとを密着させて締結した。なお、露出した高比重シート2の上にはダミー板を配置した。その場合、ダミー板の裏面にも面ファスナーを張付け、高比重シート2に貼着した不織布3と締結させた。そして、暖房パネル4及びダミー板の上に厚さ3mmの合板製の表装材8を配置することにより、図2に示す様な床構造を得た。なお、暖房パネル4と表装材8の界面には、アクリル系粘着剤(スリーエム社製、商品名:VHX207)を介在させた。
【0070】
上記の手順で施工した図2及び図3に示す床構造を3か月放置した後、原状回復する作業(撤去作業)を行った。撤去作業では、上記の様に施工する際にビス止めや釘打ちなどで固定していないので、表装材8、暖房パネル4、高比重シート2を順次に剥がすにあたり、極めて簡単に作業を行うことが出来た。また、施工の際、既存床1と高比重シート2との界面に接着剤を介在させていないので、撤去した際、既存床1の表面に接着跡も残らず、既存床1の最初の美麗な外観を再現することが出来た。
【0071】
実施例2:
図5に示す床構造を施工した。図5に示す床構造は、図3に示す構造と比べ、高比重シート2の表面に面ファスナー9を貼着し、暖房パネル4の裏面に不織布3を貼着することにより、高比重シート2に暖房パネル4を固定した点が主に異なる。図5に示す床構造の施工においては、暖房パネル4を敷設するにあたり、高比重シート2表面の不織布3上に仕切薄板10を配置し、この上に暖房パネル4を仮置きして位置合わせを行い、その後、暖房パネル4を捲り、仕切薄板10を取り除きつつ、暖房パネル4を上面側から押圧することにより、高比重シート2の表面側に貼着された不織布3と、暖房パネル4の裏面側に貼着された面ファスナーとを密着させて締結した。上記の場合と同様に図5に示す床構造を撤去したところ、極めて簡単に撤去することが出来、既存床1の最初の美麗な外観を再現することが出来た。
【0072】
実施例3:
図6に示す床構造を施工した。図6に示す床構造は、図1〜5に示す構造と比べ、暖房パネル4の上に高比重シート2を配置し、高比重シート2の上に仕切材11を介して表装材8を配置した点が主に異なる。高比重シート2としては、実施例1と同様にロール状に巻回されたシートであって、厚さ2mm、幅909cm、長さ500cm、密度が2.0g/cm3の充填材含有ゴムシート(早川ゴム社製)を使用した。また、高比重シート2は、下面に離型紙が貼られていたが、その一部だけを剥がして使用した。なお、暖房パネル4は、実施例1及び2におけるのと同様のものを使用した。
【0073】
図6に示す床構造の施工においては、既存床1の表面に暖房パネル4を配置した。その際、暖房パネル4の周囲にダミー板を配置した。次いで、暖房パネル4及びダミー板の上にこれら全体を覆う様に高比重シート2を載せ、暖房パネル4及びダミー板に荷重を加えた。更に、高比重シート2の上面に対し、その一部を除き、仕切材11として、厚さ0.1mm、幅90mmの不織布(東亜紡織社製)を隙間なく敷き詰めた。仕切材11は、高比重シート2の表面に両面テープ(3M社製)で仮止めした。そして、仕切材11の表面に表装材8を配置した。表装材8としては、厚さ8mmの木質フローリングの置き床を配置した。
【0074】
上記の手順で施工した図6に示す床構造に対し、80℃の温水を流して300時間床暖房を行った後、上記の実施例と同様に撤去した。木質フローリングの表装材8は、不織布の仕切材11を敷いた部位では何ら問題なく剥がすことが出来たが、仕切材11を敷かなかった部位では熱により変質したゴムと木質フローリングが接着し、剥がすのに多少の力が必要であった。また、木質フローリングとの接触部分が変色していた。また、仕切材11については何ら問題なく剥がすことが出来た。そして、高比重シート2を剥がしたところ、離型紙が貼られた部位は容易に剥がすことが出来たが、離型紙のない部位はゴムと暖房パネル4が熱により接着しており、剥がすのに大きな力を必要とした。
【0075】
上記の様に、図6に示す床構造においても、施工する際にビス止めや釘打ちなどで固定していないため、表装材8、仕切材11、高比重シート2、暖房パネル4を比較的簡単に剥がすことが出来た。特に、高比重シート2に離型紙が貼られていた部位、および、仕切材11を配置した部位については、表装材8、高比重シート2、暖房パネル4を新品同様の状態で回収できた。そして、施工の際、既存床1と暖房パネル4との界面に接着剤を介在させていないので、撤去した際、既存床1の表面に接着跡も残らず、既存床1の最初の美麗な外観を再現することが出来た。
【符号の説明】
【0076】
1 :既存床
2 :高比重シート
3 :不織布
4 :暖房パネル
5 :板状体
6 :熱媒チューブ
7 :アルミニウム箔
8 :表装材
8’:接着剤
9 :面ファスナー
10:仕切薄板
11:仕切材
【特許請求の範囲】
【請求項1】
暖房可能な床構造であって、建造物の既存床面に配置された暖房パネルと、当該暖房パネルの上に配置された表装材とを備え、前記暖房パネルは、表面側に刻設された埋設溝に熱媒チューブが埋設され且つその上側に可撓性薄板が貼着されて成り、前記暖房パネルには、前記既存床面に対する位置ずれ及び浮上りを規制し得る程度の荷重が加えられていることを特徴とする暖房可能な床構造。
【請求項2】
請求項1に記載の暖房可能な床構造において、暖房パネルの下面に高比重シートが取り付けられている暖房可能な床構造。
【請求項3】
請求項1に記載の暖房可能な床構造において、暖房パネルの上に高比重シートが載せられている暖房可能な床構造。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の暖房可能な床構造において、高比重シートの密度が1.5g/cm3以上である暖房可能な床構造。
【請求項5】
請求項2〜4の何れかに記載の暖房可能な床構造において、高比重シートが、アスファルト含有短繊維シート又は充填材含有ゴムシートである暖房可能な床構造。
【請求項6】
請求項2〜5の何れかに記載の暖房可能な床構造において、暖房パネルの可撓性薄板が、金属箔、織布、不織布、樹脂シート及びこれらを組合せた積層体からなる群から選ばれた薄板である暖房可能な床構造。
【請求項7】
請求項2に記載の暖房可能な床構造において、暖房パネルの下面に対し、アンカー効果、接着力、粘着力、吸着力、磁力またはこれらの何れかの組合せを利用して高比重シートが取り付けられている暖房可能な床構造。
【請求項8】
請求項2に記載の暖房可能な床構造において、暖房パネルと表装材との間に弱接着剤または粘着剤が介在している暖房可能な床構造。
【請求項9】
暖房可能な床構造の施工方法であって、表面側に刻設された埋設溝に熱媒チューブが埋設され且つその上側に可撓性薄板が貼着されて成る暖房パネルを建造物の既存床表面に敷設するにあたり、前記既存床表面に高比重シートを配置する工程、当該高比重シートの上に前記暖房パネルを固定する工程、および、当該暖房パネルの上に表装材を配置する工程を含むことを特徴とする暖房可能な床構造の施工方法。
【請求項10】
暖房可能な床構造の施工方法であって、表面側に刻設された埋設溝に熱媒チューブが埋設され且つその上側に可撓性薄板が貼着されて成る暖房パネルを建造物の既存床表面に敷設するにあたり、前記既存床表面に前記暖房パネルを配置する工程、当該暖房パネルの上に高比重シートを載せる工程、当該高比重シートの上に仕切材を配置する工程、および、当該仕切材の上に表装材を配置する工程を含むことを特徴とする暖房可能な床構造の施工方法。
【請求項1】
暖房可能な床構造であって、建造物の既存床面に配置された暖房パネルと、当該暖房パネルの上に配置された表装材とを備え、前記暖房パネルは、表面側に刻設された埋設溝に熱媒チューブが埋設され且つその上側に可撓性薄板が貼着されて成り、前記暖房パネルには、前記既存床面に対する位置ずれ及び浮上りを規制し得る程度の荷重が加えられていることを特徴とする暖房可能な床構造。
【請求項2】
請求項1に記載の暖房可能な床構造において、暖房パネルの下面に高比重シートが取り付けられている暖房可能な床構造。
【請求項3】
請求項1に記載の暖房可能な床構造において、暖房パネルの上に高比重シートが載せられている暖房可能な床構造。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の暖房可能な床構造において、高比重シートの密度が1.5g/cm3以上である暖房可能な床構造。
【請求項5】
請求項2〜4の何れかに記載の暖房可能な床構造において、高比重シートが、アスファルト含有短繊維シート又は充填材含有ゴムシートである暖房可能な床構造。
【請求項6】
請求項2〜5の何れかに記載の暖房可能な床構造において、暖房パネルの可撓性薄板が、金属箔、織布、不織布、樹脂シート及びこれらを組合せた積層体からなる群から選ばれた薄板である暖房可能な床構造。
【請求項7】
請求項2に記載の暖房可能な床構造において、暖房パネルの下面に対し、アンカー効果、接着力、粘着力、吸着力、磁力またはこれらの何れかの組合せを利用して高比重シートが取り付けられている暖房可能な床構造。
【請求項8】
請求項2に記載の暖房可能な床構造において、暖房パネルと表装材との間に弱接着剤または粘着剤が介在している暖房可能な床構造。
【請求項9】
暖房可能な床構造の施工方法であって、表面側に刻設された埋設溝に熱媒チューブが埋設され且つその上側に可撓性薄板が貼着されて成る暖房パネルを建造物の既存床表面に敷設するにあたり、前記既存床表面に高比重シートを配置する工程、当該高比重シートの上に前記暖房パネルを固定する工程、および、当該暖房パネルの上に表装材を配置する工程を含むことを特徴とする暖房可能な床構造の施工方法。
【請求項10】
暖房可能な床構造の施工方法であって、表面側に刻設された埋設溝に熱媒チューブが埋設され且つその上側に可撓性薄板が貼着されて成る暖房パネルを建造物の既存床表面に敷設するにあたり、前記既存床表面に前記暖房パネルを配置する工程、当該暖房パネルの上に高比重シートを載せる工程、当該高比重シートの上に仕切材を配置する工程、および、当該仕切材の上に表装材を配置する工程を含むことを特徴とする暖房可能な床構造の施工方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【公開番号】特開2010−133250(P2010−133250A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−57432(P2010−57432)
【出願日】平成22年3月15日(2010.3.15)
【分割の表示】特願2004−206037(P2004−206037)の分割
【原出願日】平成16年7月13日(2004.7.13)
【出願人】(000006172)三菱樹脂株式会社 (1,977)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月15日(2010.3.15)
【分割の表示】特願2004−206037(P2004−206037)の分割
【原出願日】平成16年7月13日(2004.7.13)
【出願人】(000006172)三菱樹脂株式会社 (1,977)
【Fターム(参考)】
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