説明

暖房装置とそれを用いた暖房便座およびトイレ装置

【課題】便座の保温のための非使用時の待機電力を削減し極めて省エネルギであるとともに便座の表面温度が均一化された使い心地の良い暖房便座を提供する。
【解決手段】内部に空洞部27を有する便座22と、空洞部27に設けられたランプヒータ30と、輻射エネルギ透過性を有する材料からなる便座22の着座部28と、着座部28の外表面に設けた輻射エネルギ吸収層43と、ランプヒータ30の略下部に設けた輻射エネルギ反射板29と、ランプヒータ30の輻射エネルギ量を抑制する輻射エネルギ抑制部としてのアルミ板52とを備えることにより、着座部28を短時間で暖めることが可能で非常に省エネルギになるとともに、便座表面温度が均一化され、使用者にとって快適な暖房便座を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、輻射型発熱体を使用した暖房装置とそれを搭載した暖房機能を有する便座とそれを用いたトイレ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の暖房便座では、図11に示すように、着座部1aを上側に有する便座1の空洞部2に設けられた輻射エネルギ反射板3は、その内側と外側の端部全周に上方への折り曲げ部3aを有しており、その折り曲げ部3aによりランプヒータ4から放射状に放射された輻射エネルギが点線矢印で示すように偏向されるので、ランプヒータ4から離れている着座部1aの外周縁部11aおよび内周縁部11bの輻射エネルギ密度を上げるように作用し、便座1の上部である着座部1aへの輻射エネルギ分布の均一化を図っているという構成をしている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2000−210230号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、前記従来の構成ではランプヒーター4の光の輻射エネルギを効率的に着座部1aに取り出すための輻射エネルギ反射板3を利用しての着座部1aへの輻射エネルギ分布の均一化なので、不十分であった。すなわち、ランプヒーター4の輻射エネルギが放射状に放射されるので、折り曲げ部3aを有する輻射エネルギ反射板3のみで均一に着座部1aの表面温度、つまり上部の着座部1aと外周、内周の縁部11a、11bとの間にはどうしても温度差が生じ使用者が十分に満足できるレベルには到達しておらず、より一層の着座面の温度分布の均一化が求められている。
【0004】
前記従来の問題点に鑑み、本発明が解決しようとする課題は、素早く暖められ、かつ着座面の温度分布が均一になるようにすることによって、快適な暖房が得られ、省エネも得られる暖房装置にある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するために本発明は、輻射型発熱体の輻射エネルギ量を抑制して着座部の温度を均一化する輻射エネルギ抑制部、または輻射型発熱体の上部に位置し、輻射エネルギ量を抑制する輻射エネルギ抑制部を備えた構成としたものである。
【0006】
この構成によって、輻射型発熱体からの輻射エネルギの届きやすい着座部の箇所に対しての輻射エネルギの抑制が作用し全体として着座部の温度分布をより一層均一化させることができる。
【発明の効果】
【0007】
本発明の暖房装置は、着座部の温度分布が均一になるように素早く暖めることによって、快適な暖房が得られ、省エネにも効果のある暖房装置を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
第1の発明は、輻射エネルギ透過性の材料で形成した着座部と、前記着座部の内部に設け、輻射エネルギを放射する輻射型発熱体と、前記着座部の外表面側に設け、前記輻射エネルギを吸収して前記着座部の外面を暖房する輻射エネルギ吸収層と、前記輻射型発熱体の輻射エネルギ量を抑制して前記着座部の温度を均一化する輻射エネルギ抑制部とを備えた暖房装置である。
【0009】
上記実施の形態によれば、輻射エネルギ抑制部は輻射型発熱体の輻射エネルギ量を抑制して着座部の外面温度を均一化する作用をなすので、着座部が素早く暖められて均一な温度分布になり、快適暖房と省エネにできる。
【0010】
第2の発明は、輻射エネルギ透過性の材料で形成した着座部と、前記着座部の内部に設け、輻射エネルギを放射する輻射型発熱体と、前記着座部の外表面側に設け、前記輻射エネルギを吸収して前記着座部の外面を暖房する輻射エネルギ吸収層と、前記輻射型発熱体の上部に位置し、輻射エネルギ量を抑制する輻射エネルギ抑制部とを備えた暖房装置である。
【0011】
上記実施の形態によれば、輻射エネルギ抑制部は輻射型発熱体の上部に放射される輻射エネルギ量を抑制するので、輻射型発熱体の上部で他より温度が高くなる着座部の箇所へ輻射エネルギが届きにくくなり、着座部の全体としての温度分布をより一層均一化させることが可能となる。従って、快適な暖房が得ることができる暖房装置を実現することができる。
【0012】
第3の発明は、特に、第1の発明または第2の発明の輻射エネルギ抑制部を、輻射型発熱体の表面に設けることにより、輻射型発熱体から上部の着座部の箇所に向かって放射される輻射エネルギ量を調節することができる。従って、輻射型発熱体の上部で他より温度が高くなる着座部の箇所への輻射エネルギが届きにくくなり、着座部の全体としての温度分布の均一化を図ることが可能であるとともに、構成を簡単にできる。
【0013】
第4の発明は、特に、第1の発明または第2の発明の輻射エネルギ抑制部を、輻射型発熱体と着座部との空間に設けることにより、輻射型発熱体から上部の着座部の箇所に向かって放射される輻射エネルギ量を調節することができる。従って、輻射型発熱体の上部で他より温度が高くなる着座部の箇所への輻射エネルギが届きにくくなり、着座部の全体としての温度分布の均一化を図ることが可能であるとともに、比較的に安価な材料で形成できる。
【0014】
第5の発明は、特に、第1の発明または第2の発明の輻射エネルギ抑制部を、着座部に設けた輻射エネルギ低透過部としたことにより、その着座部の輻射エネルギ抑制部を通過する輻射エネルギが低くなり輻射エネルギ量を調節することができる。従って、輻射型発熱体の上部で他より温度が高くなる着座部の箇所への輻射エネルギが届きにくくなり、着座部の全体としての温度分布の均一化を図ることが可能であるとともに、構成が簡単で、かつ容易に形成できる。
【0015】
なお、輻射エネルギ抑制部は輻射エネルギ透過率を変更するには、着座部に用いている材質を変更することによっても可能である。
【0016】
第6の発明は、特に、第1の発明または第2の発明の輻射エネルギ抑制部を、輻射エネルギ吸収層に設けた輻射エネルギ低吸収部としたことにより、その輻射エネルギ吸収層の輻射エネルギ抑制部を通過する輻射エネルギが低くなり輻射エネルギ量を調節することができる。従って、輻射型発熱体の上部で他より温度が高くなる着座部の箇所への輻射エネルギが届きにくくなり、着座部の全体としての温度分布の均一化を図ることが可能である。なお、輻射エネルギ抑制部は輻射エネルギ吸収率を変更するには、輻射エネルギ吸収層の材質や色を変更することによっても可能である。
【0017】
第7の発明は、特に、第1の発明または第2の発明の輻射エネルギ抑制部を、輻射エネルギ吸収層に設け、かつの厚みを変化させた多熱容量部としたことにより、その輻射エネルギ吸収層の輻射エネルギ抑制部を通過する速度が遅くなり輻射エネルギが低くなり輻射エネルギ量を調節することができる。従って、輻射型発熱体の上部で他より温度が高くなる着座部の箇所への輻射エネルギが届きにくくなり、着座部の全体としての温度分布の均一化を図ることが可能である。
【0018】
第8の発明は、特に、第1の発明〜第7の発明のいずれか一つの発明において、着座部の温度を検知する温度検知手段と、前記温度検知手段の信号により輻射型発熱体を制御する制御部とを設けているので、それぞれの温度を別制御するきめ細かい温度制御が可能であるし、また、異常温度上昇、また、輻射型発熱体の発熱停止なども検知できて、適切に対応できる。
【0019】
第9の発明は、特に、第1の発明〜第8の発明のいずれか一つの発明において、着座部の一部に第2発熱体を備えたものであり、輻射型発熱体により加熱しにくい部位、または即暖しなくてもよい着座部位などは第2発熱体による加熱で暖房して、着座部のうち、速暖したい着座部位は輻射型発熱体により立ち上がりのみ瞬時の加熱を行って暖房し、長時間の継続暖房が必要な場合は、第2発熱体に切り換えるか、輻射型発熱体の出力を低減させるなどして、省エネで使い勝手の良い暖房装置が実現できる。
【0020】
第10の発明は、第1の発明〜第9の発明のいずれかに記載した暖房装置を便座に搭載した暖房便座であり、第1の発明〜第9の発明のいずれかに記載した暖房装置の作用が得られ、快適暖房と省エネの暖房便座を実現できる。
【0021】
第11の発明は、特に、第10の発明に記載した暖房便座を備えたトイレ装置であり、使用環境の快適なトイレ装置を実現できる。
【0022】
本発明の目的は、第1の発明〜第11の発明を実施の形態の要部とすることにより達成できるので、各請求項に対応する実施の形態の詳細を、以下に図面を参照しながら説明し、本発明を実施するための最良の形態の説明とする。なお、本発明は本実施の形態により限定されるものではない。また、本実施の形態の説明において、同一構成並びに作用効果を奏するところには同一符号を付して重複した説明を行わないものとする。
【0023】
(実施の形態1)
本発明の実施の形態1における暖房装置を便座に搭載した暖房便座の形態で説明し、図1はその要部を断面した概略構成図で、図2は同暖房便座を搭載したトイレ装置の斜視図で、図3は同暖房便座の一部を切り欠いて示した平面図で、図4は同暖房便座の輻射型発熱体の要部斜視図で、図5は同暖房便座の便座ケースの要部断面図ある。
【0024】
図1から図5において、用便後の肛門およびビデを洗う温水洗浄機能付きの暖房便座は、トイレ装置の便器20の後端部に横長の本体21が取り付けられており、この本体21内には温水洗浄機能の一部が内装され、かつ便器20上に載せられた輪状の便座22および便蓋23が回動自在に設けられている。
【0025】
また、本体21の袖部にはトイレ室の人体の有無を赤外線により検知する人体検知センサ24や、使用者の便座22への着座を検知する着座検知センサ25が内装されている。便座22は、図1に示すように合成樹脂製の上・下2つの部材を、それぞれの内周縁および外周縁で溶着接合することにより便座ケース26を形成し、その内部には水等の浸入を阻止できる密閉された空洞部27を有する構造となっている。
【0026】
輪状の便座ケース26は、便器20の左右両側に載る左右両側の空洞部27に、トイレ装置を使用する使用者が腰掛ける便座22の上面に相当する着座部28に対向して、アルミ板を鏡面仕上げし、かつ内側と外側の端部の全周を上向きに傾斜させた折り曲げ部29aを有する輻射エネルギ反射板29と、輻射エネルギを効率良く着座部に28に取り出せるように輻射エネルギ反射板29の上に位置し、即暖(通電すると素早く発熱して暖房する)機能を備えた輻射型発熱体である2本のランプヒータ30とが便座22の形状に合わせて設けられている。
【0027】
従って、便座22の着座部28はランプヒータ30の点灯により放射状に放射する光を受けて即暖される。一方、ランプヒータ30は即暖する際に着座部28の全体、すなわちランプヒータ30に最も近い上部になる着座部28の箇所、そしてランプヒータ30から比較的に遠い内周縁部および外周縁部になる着座部28の箇所の温度が均一になるように図4に示すような輻射エネルギ抑制部を備えている。
【0028】
すなわち、輻射エネルギ抑制部は着座部28に対抗するランプヒータ30の長手方向の表面に塗布または印刷し、光を減光または遮断する細幅条の耐熱塗料31と耐熱塗料の無い光を通す細幅条のスリット32を交互に設けて構成されている。そして、輻射エネルギ抑制部はランプヒータ30と着座部28の外面(着座面ともいう)との距離が近い部分(ランプヒータ30の真上部分)は耐熱塗料31の幅を太くし、スリット32の幅を細くして着座面を加熱する輻射エネルギ量の通過を少なくし、ランプヒータ30と着座面との距離が遠い箇所では、耐熱塗料31の幅を細くし、スリット32の幅を太くすることによって着座面を暖める輻射エネルギ量の通過を多くすることによって全体としての着座部28の温度均一化を図る構成にしている。
【0029】
なお、本実施の形態ではランプヒータ30を2本使用している例を示しているが、ランプヒータ30の本数を何本使用しても、本発明の目的を達成できるなら何ら問題はない。
【0030】
ランプヒータ30の近傍には、ランプヒータ30と電気的に直列接続されたサーモスタット33および温度ヒューズ34が設けられ、万一の不安全事態に対して温度過昇を防止するよう作用する。サーモスタット33および温度ヒューズ34は2本のランプヒータ30のそれぞれに対応するように設ければ、安全性は更に向上する。
【0031】
ランプヒータ30は、ガラス管35の内部にタングステンからなるフィラメント36を貫通しハロゲンガス37を封入して構成されており、フィラメント36の発熱に伴ってハロゲン化タングステンを形成するハロゲンサイクル反応を繰り返すことにより、フィラメント36の消耗を防止するよう作用している。この作用により熱容量の非常に小さいフィラメント36を熱源とすることができ、極めて温度上昇の急峻な立ち上がりを行わせることができる。
【0032】
このランプヒータ30は、弾性材であるゴムブッシュ38を有するランプヒータ固定具39により輻射エネルギ反射板29に固定され、輻射エネルギ反射板29はゴム足40を介して便座ケース26の下部材に固定されている。
【0033】
図5は、暖房便座の便座ケース26における上部材の要部断面図である。便座22を構成する便座ケース26は、透明ポリプロピレン樹脂材料で構成され、ケース本体42の上面にカーボンブラックを多量に含有する輻射エネルギ吸収層43を形成し、さらにその上にランプヒータ30から放射される全ての可視光を遮蔽するとともに、表面硬度、耐薬品性能、光沢等を考慮した光遮断層である表面化粧層44を形成したものである。
【0034】
便座22を構成する便座ケース26のケース本体42は透明ポリプロピレン樹脂材料を平均厚み2.5mmにて成形することにより、輻射熱透過率を70%以上に設定するとともに、その剛性から便座22の構造矩体として機能している。また、形成されている輻射熱吸収層43の厚みは0.1mm、表面化粧層44の厚みは0.2mmであり、これら両層はケース本体42を透過した光の輻射エネルギ(輻射熱ともいう)を完全に吸収し、着座部28の外面側にあって熱容量が非常に小さいので、熱伝導することなく瞬時に昇温して着座部28を暖房すると同時に、放射可視光を完全に遮蔽する。
【0035】
なお、便座ケース26は透明ポリプロピレン樹脂材料を用いた例を挙げたが、透明ポリエチレン樹脂材料などの透明性のある樹脂であれば、本発明の目的を達成できる。また、表面化粧層44はランプヒータ30から放射される全ての可視光を遮るものでなくても、本発明の目的を達成できる。
【0036】
また便座22を構成する便座ケース26のケース本体42には、その内面に開口した凹部に、温度検知手段であるサーミスタ45が設定されており、輻射エネルギ吸収層43近傍の温度を検知できるようになっている。このサーミスタ45は2本のランプヒータ30が加熱する着座部28に対応して設けているので、それぞれの温度を別制御するきめ細かい温度制御が可能であるし、また、異常温度上昇、また、ランプヒータ30の発熱停止なども検知できて、適切に対応できる。
【0037】
また、便座22はその回動軸46に電極47が形成され、本体21の軸受け部(図示せず)とともに便座22の便座位置検知手段48を構成し、便座22が起立状態にあるか、着座して使用される略水平の使用位置にあるかを検出するようになっている。本体21には、室温検知手段としての室温サーミスタ49の検知信号を取り込んでランプヒータ30の温度制御を行い、かつ便座22のランプヒータ30に通電することにより昇温を開始した時点からの経過時間をカウントするタイマー部50を有するマイクロコンピュータを主体とする制御部51が設けられている。
【0038】
そして、制御部51は人体検知センサ24や着座検知センサ25と便座位置検知手段48の信号を取り込んでランプヒータ30への通電の開始と停止の制御と、サーミスタ45、室温サーミスタ49からの信号を取り込んで採暖面である着座部28の温度が適温である所定の温度になるようランプヒータ30の温度制御が行えるようになっている。
【0039】
以上のように構成された暖房便座について、以下その動作、作用を説明する。使用者がトイレに入室した場合、人体検知センサ24がそれを検知し、その検知信号が制御部51に送られる。このとき、便座位置検知手段48の信号により便座22が略水平の使用位置にあるのを確認すると、制御部51はランプヒータ30に通電を開始する。
【0040】
この初期通電により投入エネルギは瞬時に輻射エネルギに変換され、フィラメント36からガラス管35および輻射エネルギ反射板29、輻射エネルギ抑制部(耐熱塗料31、スリット32)を経てケース本体42の方向に放射される。ランプヒータ30の輻射エネルギは、便座ケース22の上部材であるケース本体42の内部で一部吸収あるいは反射されるが、その大半は透過し着座部28の輻射エネルギ吸収層43および表面化粧層44の昇温に寄与する。
【0041】
従って、ランプヒータ30は、人体検知センサ24により使用者がトイレ室に入室したことを検知した後に着座部28の昇温を開始し、使用者が衣服を下ろし、着座部28に着座するまでの例えば、数秒間で着座部28を適温まで瞬時に昇温させることができる。そのため、常時通電させておいて便座22を保温させておく必要のない非常に省電力型の暖房便座を実現できる。
【0042】
またこの時、輻射エネルギ反射板29の折り曲げ部29aにより、ランプヒータ30から放射状に放射される輻射エネルギが偏向される。そのため、ランプヒータ30からの輻射エネルギを着座部28に向かって効率よく取り出す輻射エネルギ反射板29ではあるが、ランプヒータ30から離れている着座部28の外周縁部および内周縁部の輻射密度を上げるようにも作用して、便座ケース26の着座部28に相当する上部への輻射エネルギ分布の均一化にも貢献するが、基本的に不十分である。
【0043】
そこで、本実施の形態では輻射エネルギ抑制部としての複数の細幅条の異なる耐熱塗料31とスリット32が、ランプヒータ30と着座部28の外面との距離が近いランプヒータ30の真上箇所では、スリット32の幅を細くして着座部28の外面を暖房する輻射エネルギ量を小さくし、ランプヒータ30と着座部28の外面との距離が遠いランプヒータ30の略左右箇所では、スリット32の幅を太くしランプヒータ30から着座部28の外面へ直接届く輻射エネルギ量の調節を行っている。
【0044】
なお、輻射エネルギ抑制部としてスリット32を介して耐熱塗料31を塗布した例を示しているが、耐熱塗料31でなくてもアルミテープなどをランプヒータ30の表面に貼付することによっても同様の効果を得ることができる。また、ここに挙げた例以外でも、ランプヒータ30から放射状に放射され、特定形状の着座部28の外面でランプヒータ30の真上箇所と、内周および外周の縁部の箇所とに達する輻射エネルギを異なるように抑制して着座部28の外面の温度均一化することが可能であればどのようなものを用いても何ら問題はない。すなわち、図6から図9に示すものが考えられる。
【0045】
輻射エネルギ抑制部は、図6に示すようにランプヒータ30と着座部28との間隙に相当する空隙部27にランプヒータ30の上面の一部を覆うようにアルミ板52を設けたものである。これによって、ランプヒータ30から放射された輻射エネルギは、ランプヒータ30に近接している真上になる着座部28の箇所ではアルミ板52に遮られ、アルミ板52を介しての輻射エネルギとなり、温度上昇を抑えることが可能であり、ランプヒータ30より遠い着座部28の内周および外周の縁部では直接に放射された輻射エネルギとなり温度上昇し、全体としての着座部28の外面における温度の均一化を実現できる。なお、ここではアルミ板52を用いた例を示したが、ステンレス板や他の金属、あるいは合成樹脂の板を用いても何ら問題はない。
【0046】
また、輻射エネルギ抑制部は図7に示すように、便座ケース26のランプヒータ30に近接している真上になる箇所に、便座ケース26を構成している合成樹脂材料の肉厚を厚くして輻射エネルギ低透過部53を設けることによって構成している。従って、ランプヒータ30から放射された輻射エネルギは、ランプヒータ30に近接している真上になる着座部28の箇所では輻射エネルギ低透過部53により輻射エネルギ透過率が減少し低輻射エネルギとなり、温度上昇を抑えることが可能であり、ランプヒータ30より遠い着座部28の内周および外周の縁部では便座ケース26の合成樹脂の肉厚にして輻射エネルギの透過が通常通りとなり温度上昇し、全体としての着座部28の外面における温度の均一化を実現できる。
【0047】
また、輻射エネルギ抑制部は図8に示すように、便座ケース26のランプヒータ30に近接している真上に相当する輻射エネルギ吸収層43の箇所に、輻射エネルギ吸収層43の材質を変化させた輻射エネルギ低吸収部54を設けることによって構成している。従って、ランプヒータ30から放射された輻射エネルギは、ランプヒータ30に近接している真上になる着座部28の箇所では輻射エネルギ低吸収部54により輻射エネルギ吸収率が減少し輻射エネルギが低くなり、温度上昇を抑えることが可能であり、ランプヒータ30より遠い着座部28の内周および外周の縁部では輻射エネルギ吸収層43なので輻射エネルギの吸収が通常通りとなり温度上昇し、全体としての着座部28の外面における温度の均一化を実現できる。
【0048】
また、輻射エネルギ抑制部は図9に示すように、便座ケース26のランプヒータ30に近接している真上に相当する輻射エネルギ吸収層43の箇所に、輻射エネルギ吸収層43の厚さを厚くした多熱容量部55を設けることによって構成している。従って、ランプヒータ30から放射された輻射エネルギは、ランプヒータ30の真上になる着座部28の箇所の多熱容量部55により輻射エネルギ吸収層43の熱容量を増やし昇温速度を遅らせ、ランプヒータ30より遠い着座部28の内周及び外周の縁部では通常の温度上昇速度となり、全体としての着座部28の外面における温度均一化を実現できる。
【0049】
なお、制御部51は、通電開始時のサーミスタ45および室温サーミスタ49の信号をもとに、両者の温度差やそれぞれの温度から演算を行い、あらかじめ設定・記憶されている初期通電の通電制限時間の最適値を選択し、タイマー部50でカウントしている経過時間が通電制限時間に到達すると通電量を低減またはゼロにし、その後サーミスタ45の信号をもとに便座22の着座部28が適温になるよう通電量を制御する。
【0050】
これにより、サーミスタ45は実際に使用者が触れる着座部28付近の温度を検知し、制御部51は精度良く適温まで昇温・維持するので便座22の使用が快適であり、さらにサーミスタ45および室温サーミスタ49の信号をもとに負荷量に合わせて輻射エネルギの投入量を制御するので、より精度良く安全に適温まで加熱することができる。
【0051】
一方、便座22が起立状態であったり、男子使用者が入室後小用のために便座22を起立状態に持っていったときは、便座位置検知手段48の信号をもとに制御部51がランプヒータ30への通電を停止する。これにより、無駄に便座22を加温することを低減でき、さらに省エネを図ることができるとともに、フィラメント36の張力方向である長さ方向に重力がかかって断線することを防止できる。
【0052】
また、使用者が目的に合わせて、便座22を起立状態と略水平状態に開閉しても、弾性材であるゴムブッシュ38を有するランプヒータ固定具39の衝撃減衰効果に加えてゴム足40の効果により、ランプヒータ30への衝撃が吸収され、ガラス管35やフィラメント36の破損を防ぐことができる。
【0053】
次に、使用者が排便のために着座すると、着座検知センサ25の信号によりランプヒータ30への通電量をゼロまたは便座温度が過昇しないところまで、上述のようにハロゲンサイクルが有効な出力範囲で通電サイクルを変化させて制御する。これにより、使用中に便座温度が過昇することなく、火傷等が生じる心配なく安全であり、使用者が快適に使用できる。
【0054】
一般に暖房便座は、ヒータを内蔵した便座22に直接皮膚を接触させて着座するため、安全に対しては十分な配慮が必要である。通常の使用状態では上述のように安全に快適に使用できるが、万一何らかの原因でマイコン(図示せず)に不具合が生じ、ランプヒータ30への通電が継続して行われた場合などにも安全に動作することが必要である。本実施の形態ではそれを実現するために、サーモスタット33を用いている。
【0055】
また、上記実施の形態ではランプヒータ30は左右一対設ける構成で説明したが、これに限ったものではない。また、輻射エネルギ吸収層43、表面化粧層44はランプヒータ30から発せられる光や輻射を完全に遮蔽する構成としているが、意図的に一部もしくはその大部分を透過させるようにしても良い。
【0056】
(実施の形態2)
図10は本発明の実施の形態2における温水洗浄機能付き暖房便座の一部切り欠き平面図である。本実施の形態は、図1〜図5に示した実施の形態1と異なる点は、便座22のデザイン上の都合等でランプヒータ30を配設するスペースがない等によりランプヒータ30による加熱が行われにくい部位または即暖しなくてもよい左右の着座部28の間に位置する後部などには、着座部28の裏面に空洞部27に位置してコード状のヒータ56を蛇行状に配設した第2発熱体が設置されている。
【0057】
なお、図10では第2発熱体を便座22の後方部分に設けているが、これに限ったものではない。また、第2発熱体はコード状のヒータで説明したが、これに限るものではなく、金属をパターニングして平面状に形成したものや、PTC特性を有するヒータなども使用可能である。
【0058】
以上のように構成されたトイレ装置について、以下その動作、作用を説明する。第2発熱体としてのヒータ56は、ランプヒータ30とは電気的に並列接続され、第2発熱体が配設された着座部28の裏面に設けられたサーミスタ45および室温サーミスタ49の信号をもとに、着座部28の温度が適温になるように制御部51で制御する。
【0059】
そして、第2発熱体はランプヒータ30による加熱が行われにくい部分を加熱するので、暖房便座を快適に使用することができる。この、第2発熱体は熱伝導によって便座表面を暖めるため、常時通電している。しかし、第2発熱体は着座部28の一部にしか設けていないので、大幅に消費電力が増加することはない。
【0060】
以上のように、複数のランプヒータ30を設けることにより便座22に加えられる歪みや衝撃に対しても破損の心配がなく安全であるとともに、ランプヒータ30を分割することによって生じる非加熱部分を第2発熱体で加熱することにより、快適な暖房感が得られる暖房便座を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0061】
以上のように、本発明の暖房装置は、輻射エネルギ抑制部を設けることによって、着座部の表面温度の均一化を図ることが可能となるので、安全に使用しうる暖房装置を得ることができ、着座する機器である便座、椅子などの暖房技術として適用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の実施の形態1における暖房装置を搭載した暖房便座の概略構成図
【図2】本発明の実施の形態1における暖房装置を搭載した暖房便座を備えたトイレ装置の斜視図
【図3】本発明の実施の形態1における暖房便座の一部切り欠き平面図
【図4】本発明の実施の形態1における暖房便座の輻射エネルギ抑制部を示すランプヒータの要部斜視図
【図5】本発明の実施の形態1における暖房便座の便座ケースの要部を示す上部材の断面図
【図6】本発明の実施の形態1における暖房便座の輻射エネルギ抑制部の他の例を示す便座ケースの断面図
【図7】本発明の実施の形態1における暖房便座の輻射エネルギ抑制部の他の例を示す便座ケースの断面図
【図8】本発明の実施の形態1における暖房便座の輻射エネルギ抑制部の他の例を示す便座ケースの断面図
【図9】本発明の実施の形態1における暖房便座の輻射エネルギ抑制部の他の例を示す便座ケースの断面図
【図10】本発明の実施の形態2における暖房装置を搭載した暖房便座の切り欠き平面図
【図11】従来の暖房便座の要部の断面図
【符号の説明】
【0063】
22 便座
27 空洞部(空間)
28 着座部
30 ランプヒータ(輻射型発熱体)
31 耐熱塗料(輻射エネルギ抑制部)
32 スリット(輻射エネルギ抑制部)
43 輻射エネルギ吸収層
45 サーミスタ(温度検知手段)
51 制御部
52 アルミ板(輻射エネルギ抑制部)
53 輻射エネルギ低透過部(輻射エネルギ抑制部)
54 輻射エネルギ低吸収部(輻射エネルギ抑制部)
55 多熱容量部(輻射エネルギ抑制部)
56 ヒータ(第2発熱体)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
輻射エネルギ透過性の材料で形成した着座部と、前記着座部の内部に設け、輻射エネルギを放射する輻射型発熱体と、前記着座部の外表面側に設け、前記輻射エネルギを吸収して前記着座部の外面を暖房する輻射エネルギ吸収層と、前記輻射型発熱体の輻射エネルギ量を抑制して前記着座部の温度を均一化する輻射エネルギ抑制部とを備えた暖房装置。
【請求項2】
輻射エネルギ透過性の材料で形成した着座部と、前記着座部の内部に設け、輻射エネルギを放射する輻射型発熱体と、前記着座部の外表面側に設け、前記輻射エネルギを吸収して前記着座部の外面を暖房する輻射エネルギ吸収層と、前記輻射型発熱体の上部に位置し、輻射エネルギ量を抑制する輻射エネルギ抑制部とを備えた暖房装置。
【請求項3】
輻射エネルギ抑制部は、輻射型発熱体表面に設けた請求項1または請求項2記載の暖房装置。
【請求項4】
輻射エネルギ抑制部は、輻射型発熱体と着座部との空間に設けた請求項1または請求項2記載の暖房装置。
【請求項5】
輻射エネルギ抑制部は、輻射エネルギ低透過部を着座部に設けてなる請求項1または請求項2記載の暖房装置。
【請求項6】
輻射エネルギ抑制部は、輻射エネルギ低吸収部を輻射エネルギ吸収層に設けてなる請求項1または請求項2記載の暖房装置。
【請求項7】
輻射エネルギ抑制部は、輻射エネルギ吸収層の厚みを変化させた多熱容量部を輻射エネルギ吸収層に設けてなる請求項1または請求項2記載の暖房装置。
【請求項8】
着座部の温度を検知する温度検知手段と、前記温度検知手段の信号により輻射型発熱体を制御する制御部とを備えた請求項1〜7のいずれか1項に記載の暖房装置。
【請求項9】
着座部の一部に第二発熱体を備えた請求項1〜8のいずれか1項に記載の暖房装置。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれかに記載した暖房装置を便座に搭載した暖房便座。
【請求項11】
請求項10に記載した暖房便座を備えたトイレ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2006−34311(P2006−34311A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−214022(P2004−214022)
【出願日】平成16年7月22日(2004.7.22)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】