説明

暖房装置

【課題】床暖房パネルの温度の立ち上がりを速くする。
【解決手段】暖房装置は、床暖房パネル4A、4Bの設定温度を変更するリモコンと、設定温度に基づいて、床暖房パネル4A、4Bから暖房ユニットに戻される戻り温水温度の基準目標温度を決定する基準目標温度決定部62と、基準目標温度決定部62で決定された基準目標温度を、床暖房パネル4の床材厚さが薄いほど低くなるように補正して、補正目標温度を決定する補正目標温度決定部63と、ヒートポンプユニット及び暖房ユニットを制御して暖房運転を行う制御部60とを有する。制御部60は、基準目標温度決定部62で決定された目標温度に基づいて暖房運転を開始すると共に、戻り温水の温度が補正目標温度決定部63で決定された補正目標温度に達した後は、補正目標温度に基づいて暖房運転を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、暖房ユニットから供給される温調水によって加熱される床暖房パネルを備える暖房装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
暖房装置として、ヒートポンプユニットと、床暖房パネルと、ヒートポンプユニットから供給された冷媒によって床暖房パネルに供給する温水を加熱する暖房ユニットとを備えたものが知られている(例えば特許文献1)。暖房ユニットは、ヒートポンプユニットから供給された冷媒と、暖房端末に供給される温水との間で熱交換させる水熱交換器を備えている。床暖房パネルは、冷媒が流れるパイプと、パイプの上に配置される床材とを有する。
【0003】
特許文献1の暖房装置では、様々な厚さの床材を用いることができ、床材の厚さに応じた設定で制御を行っている。床材の厚さが薄いほど、床暖房パネルのパイプの熱が床表面に伝わりやすいため、床材の厚さが薄い場合に、厚い場合と同じ温度の温調水を床暖房パネルに供給すると、床暖房パネルの温度が設定温度よりも高くなってしまう。そのため、暖房パネルに供給される温調水の目標温度を、床材の厚さが薄いほど低くなるように補正して、この補正された目標温度に基づいて制御を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−121763号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、この暖房装置では、床暖房パネルの床材厚さが薄い場合、温調水の目標温度が低くなり、暖房運転の開始時には、この低い目標温度に基づいて制御されるため、床暖房パネルの温度の立ち上がりが遅くなるという問題があった。
【0006】
そこで、本発明は、床暖房パネルの温度の立ち上がりを速くできる暖房装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明に係る暖房装置は、ヒートポンプユニットと、前記ヒートポンプユニットに接続され且つ温調水の温度を調整する暖房ユニットと、前記暖房ユニットから温調水が供給される床暖房パネルとを備えた暖房装置であって、前記床暖房パネルの設定温度を変更する設定温度変更手段と、前記設定温度変更手段により変更された設定温度に基づいて、前記暖房ユニットから前記床暖房パネルに供給される往き温水温度または前記床暖房パネルから前記暖房ユニットに戻される戻り温水温度の基準目標温度を決定する基準目標温度決定手段と、前記基準目標温度決定手段で決定された基準目標温度を、前記床暖房パネルの床材厚さが薄いほど低くなるように補正して、補正目標温度を決定する補正目標温度決定手段と、前記ヒートポンプユニット及び前記暖房ユニットを制御して暖房運転を行う制御手段とを有し、前記制御手段は、前記基準目標温度決定手段で決定された目標温度に基づいて暖房運転を開始すると共に、前記往き温水または前記戻り温水の温度が前記補正目標温度決定手段で決定された補正目標温度に達した後は、補正目標温度に基づいて暖房運転を行うことを特徴とする。
【0008】
この暖房装置では、暖房運転の開始時には、補正目標温度よりも高い基準目標温度に基づいて制御されるため、運転開始時の制御を補正目標温度に基づいて行う場合に比べて、床暖房パネルの温度の立ち上がりを速くすることができる。
また、戻り温水温度が補正目標温度に達した後は、床材の厚さに応じて補正された補正目標温度に基づいて戻り温水温度が制御されるため、床暖房パネルを設定温度にすることができる。
【発明の効果】
【0009】
以上の説明に述べたように、本発明によれば、以下の効果が得られる。
【0010】
第1の発明では、暖房運転の開始時には、補正目標温度よりも高い基準目標温度に基づいて制御されるため、運転開始時の制御を補正目標温度に基づいて行う場合に比べて、床暖房パネルの温度の立ち上がりを速くすることができる。
また、戻り温水温度が補正目標温度に達した後は、床材の厚さに応じて補正された補正目標温度に基づいて戻り温水温度が制御されるため、床暖房パネルを設定温度にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態に係る暖房装置の概略構成を示す回路図である。
【図2】図1の暖房装置の制御ブロック図である。
【図3】図1の暖房装置の暖房運転時における床暖房パネルの温度、戻り温水温度、戻り温水の目標温度、熱動弁の開度を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態に係る暖房装置1について説明する。
【0013】
<暖房装置1の全体構成>
図1に示すように、本実施形態の暖房装置1は、室外機2(ヒートポンプユニット)と、暖房ユニット3と、複数(本実施形態では2つ)の床暖房パネル(暖房端末)4(4A、4B)と、2つのリモコン5とを備えている。床暖房パネル4は、家屋の床面に設置され、室外機2と暖房ユニット3は屋外に設置される。暖房装置1では、室外機2と暖房ユニット3とによって冷媒循環回路6が構成されていると共に、暖房ユニット3と2つの床暖房パネル4とによって温水循環回路が構成されている。この暖房装置1では、室外機2から暖房ユニット3に高温冷媒が供給され、暖房ユニット3において高温冷媒との熱交換により加熱された温水が床暖房パネル4に供給される。
【0014】
<暖房装置1の冷媒循環回路6の構成>
暖房装置1の冷媒循環回路6を構成する各部について説明する。
室外機2は、圧縮機11、室外熱交換器12、および電動膨張弁13がこの順に設けられた冷媒流路6aを有する。この冷媒流路6aには、四路切換弁14が設けられており、四路切換弁14を切り換えることにより、圧縮機11の吐出側と吸入側のいずれかが室外熱交換器12に接続されるようになっている。また、冷媒流路6aにおける圧縮機11の吸入側と四路切換弁14との間にはアキュムレータ15が設けられている。室外熱交換器12の近傍には、室外ファン16が配置されている。電動膨張弁13は、その開度が変化することによって、暖房ユニット3に送る冷媒量を変更でき、減圧機構として機能する。
【0015】
冷媒流路6aにおける圧縮機11の吐出側には、吐出温度センサ17が付設されている。また、冷媒流路6aにおける四路切換弁14の下流側(図1に示す冷媒の流れ方向における下流側)には、冷媒温度センサ18が付設されている。また、冷媒流路6aにおける電動膨張弁13の上流側(図1に示す冷媒の流れ方向における上流側)には、冷媒温度センサ19が付設されている。また、室外熱交換器12には、室外熱交温度センサ20が付設されている。
【0016】
また、室外機2は、上述の冷媒流路6aに加えて、制御部21と、外気温度センサ22とを備える。制御部21は、暖房ユニット3の制御部37と信号線で接続されている。
【0017】
暖房ユニット3は、水熱交換器31が設けられた冷媒流路6bを有している。この冷媒流路6bは、室外機2の冷媒流路6aに接続されている。これにより、圧縮機11、水熱交換器31、電動膨張弁13、および室外熱交換器12が順に接続された冷媒循環回路6が構成される。この冷媒循環回路6においては、圧縮機11により圧縮された高温高圧の冷媒が暖房ユニット3に供給され、暖房ユニット3の水熱交換器31を通過した冷媒が室外機2に戻される。冷媒流路6aにおける水熱交換器31の下流側(図1に示す冷媒の流れ方向における下流側)には、流出冷媒温度センサ23が設けられている。
【0018】
<暖房装置1の温水循環回路の構成>
次に、暖房装置1の温水循環回路を構成する各部について説明する。
暖房ユニット3は、上述の冷媒流路6aに加えて、温水流路7aを有する。この温水流路7aは、水熱交換器31と、水熱交換器31に接続された往き管41および戻り管42と、ヘッダ45を介して往き管41に接続された複数本の分岐往き管43と、ヘッダ46を介して戻り管42に接続された複数本の分岐戻り管44とで構成される。
【0019】
往き管41には、水熱交換器31側から順に、貯留タンク32と循環ポンプ33が介設されている。また、分岐往き管43には、熱動弁34(34A、34B)が介設されている。熱動弁34A、34Bは、床暖房パネル4A、4Bに送る温調水の流量を個別に変更するためのものである。
【0020】
往き管41における貯留タンク32と循環ポンプ33との間には、往き温度センサ35が付設されており、戻り管42における水熱交換器31とヘッダ46との間には、戻り温度センサ36が付設されている。また、暖房ユニット3は、上述の冷媒流路6aと温水流路7aに加えて、暖房ユニット3の電気的制御を行う制御部37を備える。
【0021】
床暖房パネル4(4A、4B)は、温水循環回路の一部を構成する蛇行形状のパイプと、パイプの上に設置される床材(図示省略)とを有する。床材としては、厚さの異なる様々な種類の床材を用いることがができる。
【0022】
床暖房パネル4のパイプは、水配管7b、7cを介して、暖房ユニット3の分岐往き管43と分岐戻り管44に接続されている。これにより、水熱交換器31、貯留タンク32、循環ポンプ33、熱動弁34、および床暖房パネル4が順に接続された温水循環回路が構成される。この温水循環回路においては、水熱交換器31によって加熱された温調水が床暖房パネル4に供給され、床暖房パネル4から流出した冷媒が水熱交換器31に戻されて、床暖房が行われる。
【0023】
<リモコン5>
リモコン5では、ユーザーによって、運転の開始/停止の操作、床暖房パネル4の設定温度の変更などが行われる。リモコン5は、運転の開始/停止の操作、および温度設定は、床暖房パネル4A、4Bごとに行うことができる。
【0024】
このリモコン5では、レベル1〜9の9段階の設定温度レベルのいずれかを選択できるようになっており、1つの設定温度レベルが選択されると、その設定温度レベルに対応した設定温度が選択される。
【0025】
また、リモコン5では、床暖房パネル4の床材の厚さに応じて、レベル1〜3の3段階の床材の厚さレベルのいずれかを選択できるようになっている。厚さレベル1は、床材厚さが最も薄いレベルである。
【0026】
<制御部60>
次に、図2を参照しつつ、暖房装置1を制御する制御部60について説明する。
制御部60は、上述のように室外機2に備えられた制御部21と、暖房ユニット3に備えられた制御部37とで構築されるものである。制御部60は、記憶部61と、基準目標温度決定部62と、補正目標温度決定部63と、目標温度切換部64と、熱動弁制御部65と、循環ポンプ制御部66と、膨張弁制御部67と、圧縮機制御部68とを備えている。暖房装置1は、暖房ユニット3の戻り管42を流れる温調水(以下、戻り温水という)の温度が目標温度になるように室外機2および暖房ユニット3を制御して暖房運転を行う。また、本実施形態の暖房装置1は、戻り温水の温度に基づいて目標温度を切り換えるようになっている。
【0027】
記憶部61には、設定温度や、制御プログラムや、制御プログラムの実行に必要なデータテーブルなどが記憶されている。さらに、記憶部61には、床暖房パネル4の床材厚さレベルに応じた補正値が記憶されている。
【0028】
基準目標温度決定部62は、リモコン52で設定された床暖房パネル4の設定温度に基づいて、戻り管42を流れる戻り温水の基準目標温度を決定する。基準目標温度は、床材厚さレベルが最大レベル3の場合に、床暖房パネル4の床面温度が設定温度に一致するときの戻り温水の温度に基づいて設定される。
【0029】
補正目標温度決定部63は、床暖房パネル4の床材厚さレベルに基づいて、基準目標温度を補正して補正目標温度を決定する。補正目標温度決定部63は、床暖房パネル4の床材厚さが最大レベル3よりも薄いほど、補正目標温度が低くなるように補正する。具体的には、例えば、床材厚さレベル1の場合には、基準目標温度から例えば9℃引いた値を、補正目標温度とし、床材厚さレベル2の場合には、基準目標温度から例えば5℃引いた値を、補正目標温度とする。また、床材厚さレベル3の場合には、基準目標温度と同じ値を補正目標温度とする。床材厚さレベル1、2の場合の補正値は、上記に限定されるものではない。
【0030】
目標温度切換部64は、暖房ユニット3に設けられた戻り温度センサ36で検出される戻り温水温度Twに基づいて、戻り温水の目標温度を切り換える。
暖房運転の起動時は、基準目標温度を目標温度とする。そして、戻り温水温度Twが補正目標温度に達すると、目標温度を補正目標温度に切り換える。2つの床暖房パネル4の暖房運転を同時に起動する場合には、高い方の設定温度に基づいて決定された基準目標温度を目標温度とする。そして、戻り温水温度Twが、高い方の設定温度に基づいて決定された補正目標温度に達すると、目標温度をこの補正目標温度に切り換える。
【0031】
また、目標温度切換部64は、一方の床暖房パネル4のみ暖房運転を行っている途中に、この床暖房パネル4の設定温度よりも高い設定温度で、他方の床暖房パネル4の暖房運転を開始する場合には、目標温度を高い方の設定温度に基づいて決定された基準目標温度に切り換える。そして、戻り温水温度Twが、高い方の設定温度に基づいて決定された補正目標温度に達すると、目標温度をこの補正目標温度に切り換える。
【0032】
また、目標温度切換部64は、一方の床暖房パネル4のみ暖房運転を行っている途中に、この床暖房パネル4の設定温度と同じ設定温度で、他方の床暖房パネル4の暖房運転を開始する場合には、目標温度を補正目標温度で維持してもよく、基準目標温度に切り換えてもよい。目標温度を基準目標温度に切り換える場合は、戻り温水温度Twが補正目標温度に達すると、目標温度を補正目標温度に切り換える。
【0033】
なお、本発明における「暖房運転を開始する」とは、2つの床暖房パネル4の暖房運転を停止している状態から暖房運転を開始(起動)する場合と、2つの床暖房パネル4のうちの一方の暖房運転を行っている途中に他方の床暖房パネル4の暖房運転を開始する場合を含む。
【0034】
熱動弁制御部65は、暖房ユニット3に設けられている熱動弁34の開閉を制御する。
リモコン52で運転開始の操作がなされた床暖房パネル4に対応する熱動弁34を開状態とする。2つの床暖房パネル4の設定温度が異なる場合には、設定温度の高い方の床暖房パネル4に対応した熱動弁53を開状態に維持し、設定温度の低い方の床暖房パネル4に対応した熱動弁53については、開状態と閉状態とに交互に切り換える制御(間欠制御)を行う。間欠制御では、高い方の設定温度と低い方の設定温度との差に基づいて、開状態と閉状態の時間の比率が調整される。
【0035】
循環ポンプ制御部66は、暖房ユニット3に設けられた循環ポンプ33の回転数を制御する。膨張弁制御部67は、室外機2に設けられた電動膨張弁13の開度を制御する。圧縮機制御部68は、室外機2に設けられた圧縮機11の運転周波数を制御する。
【0036】
循環ポンプ制御部66、膨張弁制御部67、および圧縮機制御部68は、暖房ユニット3に設けられた戻り温度センサ36で検出される戻り温水温度Twが、目標温度切換部64で決定された目標温度(基準目標温度または補正目標温度)に一致する(近づく)ように制御を行う。
より具体的には、循環ポンプ制御部66は、目標温度と戻り温水温度Twとの差に基づいて、循環する温調水の流量が変化するように循環ポンプ33を制御する。
また、膨張弁制御部67は、目標温度と戻り温水温度Twとの差が大きいほど、暖房ユニット3に供給される冷媒量が多くなるように電動膨張弁13を制御する。
圧縮機制御部68は、目標温度と戻り温水温度Twとの差が大きいほど、圧縮機11の周波数が増加するように圧縮機11を制御する。
なお、目標温度と戻り温水温度Twとの差とは、目標温度から戻り温水温度Twを引いた値である。
【0037】
<暖房装置1の動作>
次に、暖房装置1の動作について図3を参照しつつ説明する。
図3のグラフは、横軸が時間を示し、縦軸が、床暖房パネル4A、4Bの床面温度、戻り温水温度Tw、目標温度切換部64で決定される戻り温水の目標温度、熱動弁34A、34Bの開度をそれぞれ示している。
【0038】
図3に示すように、床暖房パネル4Bについて暖房運転を行っていない状態で、リモコン5により床暖房パネル4Aについて運転開始の操作が行われると、基準目標温度決定部62は、床暖房パネル4Aの設定温度(図3ではレベル5)に基づいて基準目標温度A1を決定し、補正目標温度決定部63は、床材厚さレベルに基づいて基準目標温度A1を補正して補正目標温度A2を決定する。目標温度切換部64は、目標温度を基準目標温度A1に設定する。循環ポンプ制御部66、膨張弁制御部67、および圧縮機制御部68は、戻り温水温度Twが基準目標温度A1となるように、循環ポンプ33、電動膨張弁13、および圧縮機11をそれぞれ制御する。熱動弁制御部65は、熱動弁34Aを開状態に維持し、熱動弁34Bを閉状態に維持する。
【0039】
戻り温水温度Twが、補正目標温度A2に達すると、目標温度切換部64は、目標温度を補正目標温度A2に切り換える。そして、循環ポンプ制御部66、膨張弁制御部67、および圧縮機制御部68は、戻り温水温度Twが補正目標温度A2となるように、循環ポンプ33、電動膨張弁13、および圧縮機11をそれぞれ制御する。
【0040】
床暖房パネル4Aについて暖房運転を行っている途中に、床暖房パネル4Aの設定温度よりも高い設定温度で、床暖房パネル4Bについて暖房運転を開始すると、基準目標温度決定部62は、床暖房パネル4Bの設定温度(図3ではレベル8)に基づいて基準目標温度B1を決定し、補正目標温度決定部63は、床材厚さレベルに基づいて基準目標温度B1を補正して補正目標温度B2を決定する。目標温度切換部64は、目標温度を基準目標温度B1に切り換える。循環ポンプ制御部66、膨張弁制御部67、および圧縮機制御部68は、戻り温水温度Twが基準目標温度B1となるように、循環ポンプ33、電動膨張弁13、および圧縮機11をそれぞれ制御する。熱動弁制御部65は、熱動弁34Bを開状態に切り換えると共に、熱動弁34Aについて間欠制御を開始する。
【0041】
戻り温水温度Twが、補正目標温度B2に達すると、目標温度切換部64は、目標温度を補正目標温度B2に切り換えて、循環ポンプ制御部66、膨張弁制御部67、および圧縮機制御部68は、戻り温水温度Twが補正目標温度A2となるように、循環ポンプ33、電動膨張弁13、および圧縮機11をそれぞれ制御する。
【0042】
図3には、目標温度を補正目標温度A2として床暖房パネル4Aの暖房運転を開始した場合、の床暖房パネル4Aの床面温度と戻り温水温度を一点鎖線で表示している。また、目標温度を補正目標温度B2として床暖房パネル4Bの暖房運転を開始した場合の床暖房パネル4Bの床面温度と戻り温水温度を二点鎖線で表示している。
【0043】
床暖房パネル4Aの暖房運転の開始時には、補正目標温度A2よりも高い基準目標温度A1に基づいて制御されるため、運転開始時の制御を補正目標温度A2に基づいて行う場合(図3中一点差線)に比べて、床暖房パネル4Aの温度の立ち上がりを速くすることができる。また、戻り温水温度が補正目標温度A2に達した後は、床材の厚さに応じて補正された補正目標温度A2に基づいて戻り温水温度が制御されるため、床暖房パネル4Aを設定温度にすることができる。
【0044】
また、床暖房パネル4Aのみ暖房運転を行っている途中に、床暖房パネル4Aの設定温度よりも高い設定温度で、床暖房パネル4Bの暖房運転を開始した場合、補正目標温度B2よりも高い基準目標温度B1に基づいて制御されるため、床暖房パネル4Bの運転開始時の制御を補正目標温度B2に基づいて行う場合(図3中二点差線)に比べて、床暖房パネル4Bの温度の立ち上がりを速くすることができる。また、戻り温水温度が補正目標温度B2に達した後は、床材の厚さに応じて補正された補正目標温度B2に基づいて戻り温水温度が制御されるため、床暖房パネル4Bを設定温度にすることができる。
【0045】
このように、本実施形態の暖房装置1では、暖房運転の開始時には、補正目標温度よりも高い基準目標温度に基づいて制御されるため、運転開始時の制御を補正目標温度に基づいて行う場合に比べて、床暖房パネル4の温度の立ち上がりを速くすることができる。
また、戻り温水温度が補正目標温度に達した後は、床材の厚さに応じて補正された補正目標温度に基づいて戻り温水温度が制御されるため、床暖房パネル4を設定温度にすることができる。
【0046】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、具体的な構成は、上記実施形態に限定されるものでないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0047】
例えば、上記実施形態の暖房装置1は、暖房運転の起動時と、一方の床暖房パネル4の暖房運転の途中に他方の床暖房パネル4の暖房運転を開始するときに、基準目標温度に基づいて制御を行っているが、暖房運転の起動時のみ、基準目標温度に基づいて制御を行ってもよい。つまり、一方の床暖房パネル4の暖房運転の途中に他方の床暖房パネル4の暖房運転を開始するときには、補正目標温度に基づいて制御を行ってもよい。
【0048】
上記実施形態では、制御部60は、戻り管42を流れる戻り温水の温度が目標温度になるように制御(戻り水温制御)して暖房運転を行うが、往き管41を流れる往き温水の温度が目標温度になるように制御(往き水温制御)して暖房運転を行ってもよい。この場合、基準目標温度決定部62は、往き温水の基準目標温度を決定し、補正目標温度決定部63は、床材厚さが薄いほど低くなるように、この基準目標温度を補正して補正目標温度を決定する。
【0049】
上記実施形態では、熱動弁34は、オンオフ制御される開閉弁であるが、この熱動弁34に代えて、開度を全開と全閉の間の複数位置に調整できる開閉弁を使用し、開度を制御することで、床暖房パネル4に供給される温水の流量を調整してもよい。
【0050】
上記実施形態の暖房装置では、1つの暖房ユニット3に対して、床暖房パネル4が2つ接続されているが、1つだけ接続されていてもよい。また、3つ以上の床暖房パネル4が接続されていてもよい。
【0051】
上記実施形態の暖房装置では、1つの室外機(ヒートポンプユニット)2に対して、暖房ユニット3が1つだけ接続されているが、2つ以上の暖房ユニット3が接続されていてもよい。また、1つの室外機2に対して、1つまたは複数の暖房ユニット3と、1つまたは複数の空気調和機が接続されていてもよい。空気調和機は、空気熱交換器とファンとを備え、暖房運転と冷房運転の両方を行う装置である。冷房運転を行う場合には、暖房ユニット3に供給する冷媒量を調整するための電動膨張弁13を閉じた状態で、四路切換弁14を図1中破線で示す状態に切り換える。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明を利用すれば、床暖房パネルの温度の立ち上がりを速くすることができる。
【符号の説明】
【0053】
1 暖房装置
2 室外機(ヒートポンプユニット)
3 暖房ユニット
4 床暖房パネル
5 リモコン(設定温度変更手段)
60 制御部(制御手段)
62 基準目標温度決定部
63 補正目標温度決定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒートポンプユニットと、前記ヒートポンプユニットに接続され且つ温調水の温度を調整する暖房ユニットと、前記暖房ユニットから温調水が供給される床暖房パネルとを備えた暖房装置であって、
前記床暖房パネルの設定温度を変更する設定温度変更手段と、
前記設定温度変更手段により変更された設定温度に基づいて、前記暖房ユニットから前記床暖房パネルに供給される往き温水温度または前記床暖房パネルから前記暖房ユニットに戻される戻り温水温度の基準目標温度を決定する基準目標温度決定手段と、
前記基準目標温度決定手段で決定された基準目標温度を、前記床暖房パネルの床材厚さが薄いほど低くなるように補正して、補正目標温度を決定する補正目標温度決定手段と、
前記ヒートポンプユニット及び前記暖房ユニットを制御して暖房運転を行う制御手段とを有し、
前記制御手段は、
前記基準目標温度決定手段で決定された目標温度に基づいて暖房運転を開始すると共に、前記往き温水または前記戻り温水の温度が前記補正目標温度決定手段で決定された補正目標温度に達した後は、補正目標温度に基づいて暖房運転を行うことを特徴とする暖房装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate