暖房装置
【課題】躯体部分に蓄熱された熱を余熱として利用し、これによって省エネルギー運転を行うことができる暖房装置を提供する。
【解決手段】暖房対象域を暖房するための暖房装置本体と、暖房装置本体を作動制御するための制御手段と、制御手段に操作指令を送るための操作手段とを具備する暖房装置。操作手段は、暖房対象域の躯体部分に蓄熱された熱を利用する蓄熱利用モードと、暖房対象域の躯体部分に蓄熱された熱を利用しない通常モードとの設定が可能であり、通常モードの運転においては、制御手段は、設定された通常サイクル期間(TX+TY)でもって暖房装置本体を作動制御し、蓄熱利用モードの運転においては、制御手段は、通常サイクル期間(YX+TY)の後に暖房対象域の躯体部分に蓄熱された熱を利用して余熱暖房する余熱利用期間(TW)を設けて暖房装置本体を作動制御する。
【解決手段】暖房対象域を暖房するための暖房装置本体と、暖房装置本体を作動制御するための制御手段と、制御手段に操作指令を送るための操作手段とを具備する暖房装置。操作手段は、暖房対象域の躯体部分に蓄熱された熱を利用する蓄熱利用モードと、暖房対象域の躯体部分に蓄熱された熱を利用しない通常モードとの設定が可能であり、通常モードの運転においては、制御手段は、設定された通常サイクル期間(TX+TY)でもって暖房装置本体を作動制御し、蓄熱利用モードの運転においては、制御手段は、通常サイクル期間(YX+TY)の後に暖房対象域の躯体部分に蓄熱された熱を利用して余熱暖房する余熱利用期間(TW)を設けて暖房装置本体を作動制御する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、暖房対象域を暖房するために用いる暖房装置に関する。
【背景技術】
【0002】
暖房対象域を暖房する暖房装置として、一般家庭のリビングなどに設置される床暖房装置、温風暖房装置などが広く実用に供されている。この暖房装置の代表的な一つとしての床暖房装置は、熱媒としての温水を循環させて温水の熱を利用して暖房する温水循環式のもの、また熱電線に電気を流して熱電線の発熱を利用して暖房する電熱式のものがある。
【0003】
これらの床暖房装置においては、暖房対象域を暖房する床暖房装置本体と、この床暖房装置本体を作動制御するための制御手段と、制御手段に操作指令を送るための操作手段(例えば、操作リモコン)とを備え、操作手段からの運転指令に基づいて、制御手段は床暖房装置本体を作動制御する(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
床暖房装置本体は、床面に設置される床暖房パネルと、温水を生成するための熱源機とを備え、この床暖房パネルに蛇行状に温水チューブが設けられている。操作手段を運転操作すると、操作手段からの運転指令に基づいて熱源機が作動し、熱源機からの温水が床暖房パネルの温水チューブを通して循環され、かく循環される温水の熱を利用して床面からが暖房される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5−248647号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような床暖房装置では、暖房運転を停止した後においてもかなりの長時間にわたって暖房対象域(例えば、床暖房パネルが設置された室内空間)が暖められた状態に保たれる。更に説明すると、床暖房装置を作動して暖房運転すると、床暖房パネルからの熱が暖房対象域の室内空間のみならず、この暖房対象域を規定する床部、側壁部及び天井部などの躯体部分にも伝達されて暖められる。従って、床暖房パネルからの熱は、この躯体部分に蓄熱され、運転を停止した後は、この躯体部分に蓄熱された熱が暖房対象域(室内空間)に放熱されるようになり、この躯体部分に蓄熱された熱によって暖房運転停止後においても暖められた状態に保たれる。
【0007】
しかし、従来の床暖房装置においては、暖房対象域(室内空間)の温度(温度検出手段により検出された室温)と暖房設定温度(操作手段により設定された温度)との温度差に基づいて床暖房装置本体が作動制御され、暖房運転中に躯体部分に蓄熱された熱を考慮する制御となっておらず、充分な省エネルギー運転が行われているとはいえない。このようなことは、暖房装置としての温風暖房装置にも同様に存在する。
【0008】
本発明の目的は、躯体部分に蓄熱された熱を余熱として利用し、これによって省エネルギー運転を行うことができる暖房装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の請求項1に記載の暖房装置は、暖房対象域を暖房するための暖房装置本体と、前記暖房装置本体を作動制御するための制御手段と、前記制御手段に操作指令を送るための操作手段と、を具備する暖房装置であって、
前記操作手段は、前記暖房対象域の躯体部分に蓄熱された熱を利用する蓄熱利用モードと、前記暖房対象域の躯体部分に蓄熱された熱を利用しない通常モードとの設定が可能であり、
前記通常モードの運転においては、前記制御手段は、設定された通常サイクル期間でもって前記暖房装置本体を作動制御し、前記蓄熱利用モードの運転においては、前記制御手段は、前記通常サイクル期間の後に前記暖房対象域の躯体部分に蓄熱された熱を利用して余熱暖房する余熱利用期間を設けて前記暖房装置本体を作動制御することを特徴とする。
【0010】
また、本発明の請求項2に記載の暖房装置では、前記暖房装置本体に関連して、前記暖房対象空間の温度を検知するための温度検知手段が設けられており、前記蓄熱利用モードの運転においては、前記温度検知手段は、前記通常サイクル期間後の前記余熱利用期間において前記暖房対象空間の温度を検知し、前記温度検知手段の検知温度が余熱下限温度まで低下すると、前記余熱利用期間が終了することを特徴とする。
【0011】
また、本発明の請求項3に記載の暖房装置では、前記暖房装置本体に関連して、前記暖房対象空間の温度を検知するための温度検知手段が設けられており、前記蓄熱利用モードの運転においては、前記温度検知手段は、前記通常サイクル期間後の前記余熱利用期間において前記暖房対象空間の温度を検知し、前記制御手段は、前記温度検知手段の検知温度が余熱下限温度まで低下する時間に基づいて前記余熱利用期間を設定することを特徴とする。
【0012】
また、本発明の請求項4に記載の暖房装置では、前記通常モードの運転における前記通常サイクル期間及び前記蓄熱利用モードの運転における前記通常サイクル期間においては、前記制御手段は、前記暖房装置本体を作動させる作動時間と前記暖房装置本体の作動を停止させる非作動時間との比を演算したデューティ比でもって制御し、前記蓄熱利用モードの運転においては、前記通常サイクル期間の後に前記温度検知手段が前記暖房対象空間の温度を検知し、前記制御手段は、前記温度検知手段の検知温度が前記余熱下限温度まで低下していると前記余熱利用期間を省略して前記暖房装置本体を運転制御することを特徴とする。
【0013】
また、本発明の請求項5に記載の暖房装置は、暖房対象域を暖房するための暖房装置本体と、前記暖房装置本体を作動制御するための制御手段と、前記制御手段に操作指令を送るための操作手段と、を具備し、前記制御手段は、前記熱暖房装置本体を作動させる作動時間と前記暖房装置本体の作動を停止させる非作動時間との比を演算したデューティ比でもって制御する暖房装置であって、
前記操作手段は、前記暖房対象域の躯体部分に蓄熱された熱を利用する蓄熱利用モードと、前記暖房対象域の躯体部分に蓄熱された熱を利用しない通常モードとの設定が可能であり、
前記制御手段は、前記通常モードの運転において前記暖房対象域の躯体部分に蓄熱された熱を考慮しないで前記デューティ比を決定し、前記蓄熱利用モードの運転において前記暖房対象域の躯体部分に蓄熱された熱を考慮して前記デューティ比を決定することを特徴とする。
【0014】
更に、本発明の請求項6に記載の暖房装置では、前記暖房装置本体に関連して、前記暖房対象空間の温度を検知するための温度検知手段が設けられており、前記蓄熱利用モードの運転においては、前記温度検知手段は、前記通常サイクル期間後の前記余熱利用期間において前記暖房対象空間の温度を検知し、前記制御手段は、前記温度検知手段の検知温度が余熱下限温度まで低下する時間を考慮して前記デューティ比を決定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明の請求項1に記載の暖房装置によれば、操作手段による入力操作により、蓄熱利用モード及び通常モードの設定が可能であり、通常モードを設定したときには、制御手段は、設定された通常サイクル期間でもって暖房装置本体を作動制御し、また、蓄熱利用モードを設定したときには、制御手段は、通常サイクル期間の後に余熱利用期間を設けて暖房装置本体を作動制御するので、この蓄熱利用モードを設定することによって、暖房対象域の躯体部分に蓄熱された熱を利用して余熱暖房を行うことができ、これによって、暖房装置本体を省エネルギー運転することができる。尚、この暖房装置本体とは、温水からの熱(又は熱電線からの熱)を利用して床を暖める床暖房装置本体、温風を利用して室内空間を暖める温風暖房装置本体などである。
【0016】
また、本発明の請求項2に記載の暖房装置によれば、蓄熱利用モードの運転においては、温度検知手段の検知温度が余熱下限温度まで低下すると、暖房対象域の躯体に蓄熱された熱を利用して余熱暖房する余熱利用期間が終了するので、簡単な制御でもって、暖房対象域の温度が下がり過ぎるのを防止しながら暖房装置本体の省エネルギー運転を行うことができる。
【0017】
また、本発明の請求項3に記載の暖房装置によれば、蓄熱利用モードの運転においては、制御手段は温度検知手段の検知温度が余熱下限温度まで低下する時間に基づいて余熱利用期間を設定するので、暖房対象域の温度が下がり過ぎるのを防止しながら暖房装置本体の省エネルギー運転を行うことができる。
【0018】
また、本発明の請求項4に記載の暖房装置によれば、通常モードの運転及び蓄熱利用モードの運転における通常サイクル期間においては、制御手段は、暖房装置本体を作動させる作動時間と暖房装置本体の作動を停止させる非作動時間との比を演算したデューティ比でもって制御し、蓄熱利用モードの運転においては、通常サイクル期間後における温度検知手段の検知温度が余熱下限温度まで低下していると、制御手段は余熱利用期間(換言すると、暖房対象域の躯体部分に蓄熱された熱を利用して暖房する余熱暖房)が終了されるので、暖房対象域の温度を下がり過ぎるのを防止することができる。
【0019】
また、本発明の請求項5に記載の暖房装置によれば、操作手段による入力操作により、蓄熱利用モード及び通常モードの設定が可能であり、通常モードを設定したときには、暖房対象域の躯体部分に蓄熱された熱を考慮しないで暖房装置本体を運転制御するデューティ比が決定され、蓄熱利用モードを設定したときには、暖房対象域の躯体部分に蓄熱された熱を考慮してこのデューティ比が設定されるので、このように構成した場合においても、この蓄熱利用モードを設定することによって、暖房対象域の躯体部分に蓄熱された熱を利用して余熱暖房を行うことができ、これによって、暖房装置本体を省エネルギー運転することができる。
【0020】
更に、本発明の請求項6に記載の暖房装置によれば、蓄熱利用モードの運転においては、制御手段は、温度検知手段の検知温度が余熱下限温度まで低下する時間を考慮してデューティ比を決定するので、暖房対象域の温度が下がり過ぎるのを防止しながら省エネルギー運転を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に従う暖房装置の一例としての床暖房装置の第1の実施形態を簡略的に示す全体簡略図。
【図2】図1の床暖房装置における操作手段を示す正面図。
【図3】図1の床暖房装置の制御系を簡略的に示すブロック図。
【図4】図1の床暖房装置を通常モードで運転したときの床暖房装置本体の作動を説明するための図。
【図5】図1の床暖房装置を蓄熱利用モードで運転したときの床暖房装置本体の作動を説明するための図。
【図6】図3の制御系による制御を示すフローチャート。
【図7】暖房対象域の温度変化と床暖房装置の運転制御との関係を示す図。
【図8】床暖房装置の第2の実施形態における制御系を簡略的に示すブロック図。
【図9】図8の制御系による制御を示すフローチャート。
【図10】図9のフローチャートにおける継続余熱サイクルの運転の内容を具体的に示すフローチャート。
【図11】床暖房装置の第3の実施形態における制御系を簡略的に示すブロック図。
【図12】図11の制御系による制御を示すフローチャート。
【図13】図12のフローチャートにおける継続余熱サイクルの運転の内容を具体的に示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、添付図面を参照して、本発明に従う暖房装置の実施形態について説明する。尚、以下の実施形態においては、暖房装置の一例としての床暖房装置に適用して説明するが、温風暖房装置などのその他の形態の暖房装置にも同様に適用することができる。
【0023】
図1において、第1の実施形態の床暖房装置は、床暖房装置本体2(暖房装置本体を構成する)と、この床暖房装置本体2を作動制御するための制御手段4とを備えている。この床暖房装置本体2は、暖房対象域である室内空間6を暖めるために用いられる。
【0024】
床暖房装置本体2は、床に設置される床暖房パネル8を有し、この床暖房パネル8には、例えば蛇行状に温水チューブ10が設けられ、この温水チューブ10を通して温水が後述するように循環される。
【0025】
この床暖房装置は、更に温水を供給するための熱源機12(この実施形態では、床暖房装置本体2の一部を構成する)を含んでいる。熱源機12には、燃焼バーナ14及び送給ポンプ16(図3参照)が内蔵され、燃焼バーナ14の燃焼熱を利用して温水が生成される。この熱源機12の供給側には温水供給ライン18の一端側が接続され、その他端側は床暖房パネル8の流入側に接続され、また熱源機12の戻り側には温水戻りライン20の一端側が接続され、その他端側は床暖房パネル8の流出側に接続される。また、温水供給ライン18には熱動弁22が配設されている。このように構成されているので、熱源機12及び熱動弁22が作動すると、熱源機12にて生成された温水は、矢印24で示すように、温水供給ライン18を通して床暖房パネル8の流入側に供給され、その温水チューブ10を通して流れる。そして、温水チューブ10を流れた温水は、矢印26で示すように、温水戻りライン20を通して熱源機12に戻り、この熱源機12で再び加熱されて温水供給ライン18を通して供給され、このようにして熱源機12からの温水が床暖房パネル8を通して循環される。
【0026】
この床暖房装置本体2は、操作リモコン30(操作手段を構成する)からの操作指令によって作動制御され、操作リモコン30からの操作指令は制御手段4に送給され、制御手段4は、この操作指令に基づいて後述するように床暖房装置本体2を作動制御する。尚、操作リモコン30は、赤外線など利用した無線式のもの、信号線を利用した有線式のものなどでよい。
【0027】
図2及び図3を参照して、操作リモコン30は、例えば、図2に示す形態のものを用いることができ、電源スイッチ32、蓄熱利用モードスイッチ34、温度設定スイッチ36及びタイマ設定スイッチ38を有している。電源スイッチ32は、床暖房装置を作動、作動停止するためのもので、一度操作すると床暖房装置が作動し、もう一度操作するとその作動が停止する。蓄熱利用モードスイッチ34は、後述する蓄熱利用モードを設定するためのもので、一度操作すると蓄熱利用モードが設定され、もう一度操作すると蓄熱利用モードが解除される。温度設定スイッチ36は、設定温度を上げるためのアップスイッチ40と、設定温度を下げるためのダウンスイッチ42とから構成され、アップスイッチ40及びダウンスイッチ42を操作することによって所望の設定温度t1(図7参照)に設定される。タイマスイッチ38は、床暖房装置が作動開始及び作動停止するまでの時間を設定するものである。また、操作リモコン30には、各種スイッチを操作したときに指令内容を表示するための表示装置44(例えば、液晶表示装置)が設けられている。
【0028】
この床暖房装置では、室内空間6(暖房対象域)の温度を検知するための温度センサ46が設けられ、この温度センサ46は、操作リモコン30に設けられている。尚、この温度センサ46は、操作リモコン30とは別個に室内空間6を規定する側壁部などに設けるようにしてもよい。
【0029】
制御手段4は、例えばマイクロプロセッサから構成され、作動制御手段50、運転モード設定手段52、モード切換手段54、温度比較手段56、異常温度低下判定手段57、温度差演算手段58及びデューティ比設定手段60を含んでいる。作動制御手段50は、床暖房装置本体2を作動制御するためのもので、熱源機12(燃焼バーナ14及び送給ポンプ16)及び熱動弁22を作動制御する。運転モード設定手段52は、操作リモコン30からの指令に基づいて運転モードを設定し、蓄熱利用モードスイッチ34を操作して蓄熱利用モードを選択したときには蓄熱利用モードを設定し、蓄熱利用モードスイッチ34をもう一度操作して蓄熱利用モードを解除したときには通常モードを設定する。モード切換手段54は、蓄熱利用モードの運転において室内空間6の温度(温度センサ46の検出温度)が急激に低下したときに後述するように蓄熱利用モードから通常モードに強制的に切り換える。また、温度比較手段56は、後述するように室内空間6の温度と余熱下限温度t2(図7参照)及び異常下限温度t3(図7参照)とを比較し、異常温度低下判定手段57は、室内空間6の温度が異常下限温度t3よりも低下すると異常温度低下状態であると判定し、この実施形態では、その異常温度低下の判定結果に基づいて異常温度低下信号を生成する。
【0030】
また、温度差演算手段58は、室内空間6の温度と操作リモコン30の設定温度t1との温度差を演算し、デューティ比演算手段60は、温度差演算手段58の温度差に基づいて床暖房装置本体2が作動されるオン(ON)状態(換言すると、床暖房パネル8により暖房する状態)と床暖房装置本体2が作動停止されるオフ(OFF)状態(換言すると、床暖房パネル8による暖房が停止する状態)との比率を設定し、例えば、この温度差が1℃であるときには、オン状態とオフ状態との比率が1:1に設定される。例えば、通常モードの運転制御においては、通常サイクル期間でもって運転制御され、各通常サイクル期間を1サイクルとしてデューティ比制御される。この形態では、1サイクルの時間が、例えば20分に設定されており、従って、デューティ比が1:1である場合、20分間の1サイクル時間(各通常サイクル期間)のうち半分の10分間がオン状態となり、残りの10分間がオフ状態となるように作動制御される。
【0031】
この制御手段4は、更に、計時手段62及びメモリ手段64を含んでいる。計時手段62は時間を計時し、この形態では、操作リモコン30の電源スイッチ32をオン操作してからの経過時間などを計時する。また、メモリ手段64には、後述する蓄熱利用運転を終了する基準温度となる余熱下限温度t2、後述するように蓄熱利用モードから通常モードに切り換わる基準温度となる異常下限温度t3などが記憶されている。
【0032】
次に、図4を参照して、通常モードの運転について説明する。この形態では、通常モードの運転においては、床暖房装置本体2(熱源機12及び熱動弁22)は、通常サイクル期間TS(換言すると、デューティ比でもって制御されるデューティ比制御期間とも称する)を1サイクルとしてデューティ比制御される。通常サイクル期間TS(デューティ比制御期間)が例えば20分に設定され、デューティ比が例えば1:1であるときには、オン状態の作動時間TXが10分間となり、オフ状態の停止時間TYが10分間となり、このような通常サイクル期間TSが繰り返し遂行される。
【0033】
次いで、図5を参照して、蓄熱利用モードの運転について説明する。この形態では、蓄熱利用モードの運転においては、床暖房装置本体2(熱源機12及び熱動弁22)は、余熱サイクル期間TVを1サイクルとして制御され、余熱サイクル期間TVのうち前半が通常モードにおける通常サイクル期間TS(即ち、デューティ比制御期間)となり、その後半が余熱利用期間TWとなり、通常サイクル期間TS(デューティ比制御期間)においては、通常モードの運転における通常サイクル期間TSと同様にデューティ比制御され、例えばデューティ比が1:1であるときには、オン状態の作動時間TXが10分間となり、オフ状態の停止時間TYが10分間となる。また、余熱利用期間TWは、暖房運転中に室内空間6を規定する躯体部分(床部、側壁部及び天井部などから構成される)に蓄熱された熱を利用して余熱暖房する期間であり、この期間中においては床暖房装置本体2は作動停止され、このような余熱サイクル期間TV(通常サイクル期間TS+余熱利用期間TW)が繰り返し遂行される。
【0034】
この床暖房装置は、例えば、次のように運転制御される。主として、図1、図3及び図6を参照して、床暖房装置を運転するには、操作リモコン30の電源スイッチ32をオン操作すればよい(ステップS1)。かくすると、制御手段4の計時手段62が計時を開始する(ステップS2)。この電源スイッチ32を操作して運転するときには、ステップS3からステップS4に進み、制御手段4の運転モード設定手段52は、操作リモコン30からの運転指令に基づいて通常モードを設定し、作動制御手段50は、図4に示す通りの通常モードでもって床暖房装置本体2を作動運転する。この通常モードの運転中に電源スイッチ32をオフ操作すると、ステップS6からステップS7に移り、床暖房装置の運転が終了する。
【0035】
電源スイッチ32をオン操作した後に蓄熱利用モードスイッチ34を操作する(又は通常モードの運転中に蓄熱利用モードスイッチ34を操作する)と、ステップS3(又はステップS5)からステップS8に進む。そして、計時手段62が計時を開始してから所定時間(例えば、2〜4時間程度に設定される)が経過するまでは、ステップS8からステップS9を経てステップS10に進み、通常モードの運転が継続され、この所定時間が経過するまで後述する蓄熱利用モードの運転が行われることはない。尚、この通常モードの運転中に電源スイッチ32をオフ操作すると、ステップS9からステップS11に移り、床暖房装置の運転が終了する。
【0036】
電源スイッチ32をオン操作して暖房運転を開始すると、床暖房装置本体2(熱源機12及び熱動弁22)が作動され、熱源機12にて生成された温水が床暖房パネル8の温水チューブ10を通して循環され、循環される温水の熱によって床暖房パネル8が暖められ、かく暖められた床暖房パネル8の表面から室内空間6(暖房対象域)が暖められ、このようにして床暖房パネル8及びその上方空間が暖房される。そして、このように暖房されると、床暖房パネル8及び室内空間6の熱が、室内空間6を規定する建物の躯体部分(即ち、床部、側壁部及び天井部など)に伝達され、かかる熱が躯体部分に蓄熱される。この躯体部分への蓄熱は除々に行われ、暖房運転開始から所定時間が経過すると、この躯体部分に充分な熱が蓄熱され(換言すると、室内空間6の温度とほぼ同じ温度となる)、躯体部分に蓄熱された熱の利用が可能となる。
【0037】
このようなことから、暖房運転の開始から所定時間が経過するまでは通常モードの運転が行われ、この所定時間経過後は、床暖房装置の蓄熱利用モードへの運転が許容され、ステップS3(又はステップS5)において蓄熱利用モードの運転が選択されているときには、ステップS12に進み、床暖房装置は蓄熱利用モードでもって運転制御される。即ち、制御手段4の運転モード設定手段52は、操作リモコン30の蓄熱利用モードスイッチ34からの蓄熱利用モード指令に基づいて蓄熱利用モードを設定し、作動制御手段50は、図5で示す通りの蓄熱利用モードでもって床暖房装置本体2(熱源機12及び熱動弁22)を作動制御する。
【0038】
図7をも参照して、蓄熱利用モードの運転が開始されると、余熱サイクル運転が開始され(ステップS13)、余熱サイクル期間TVの前半の通常サイクル期間TS(デューティ比制御期間)において、床暖房装置本体2が上述したようにデューティ比制御され、このデューティ比制御が終了した後、その後半の余熱利用期間TWにおいて蓄熱利用運転を行うかが判断される。
【0039】
この実施形態では、通常サイクル期間TS(デューティ比制御期間)が終了した時点で、温度比較手段56は室内空間6の温度(温度センサ46の検出温度)とメモリ手段64に記憶された余熱下限温度t2との比較を行い、室内空間6の温度が余熱下限温度t2以上である場合、ステップS14からステップS15を経てステップS16に移り、躯体部分に蓄熱された熱を利用して余熱する蓄熱利用運転が行われる。この蓄熱利用運転は、室内空間6の温度が余熱下限温度t2より更に低下するまで行われ、室内空間6の温度がこのように低下すると、図7に示すように、蓄熱利用運転が終了して余熱サイクル期間TVの1サイクルが終了し、ステップS15からステップS17を経てステップS13に戻り、次の余熱サイクル期間TVに移って、床暖房装置本体2が上述したと同様にして作動制御される。このように躯体部分に蓄熱された熱を利用して蓄熱利用運転を行うことにより、暖房装置の省エネルギー運転を行うことができる。
【0040】
また、通常サイクル期間TS(デューティ比制御期間)が終了した時点で、室内空間6の温度が余熱下限温度t2よりも低下している(図7参照)と、ステップS15からステップS17に進み、温度比較手段56は室内空間6の温度(温度センサ46の検出温度)とメモリ手段64に記憶された異常下限温度t3との比較を行い、室内空間6の温度が異常下限温度t3以上である場合、ステップS17からステップS13に戻り、蓄熱利用運転が行われることなく、次の余熱サイクル期間TVに移り、床暖房装置本体2が上述したと同様にして作動制御され、このように運転制御することによって、室内空間6の温度が異常に低下するのを防止することができる。
【0041】
更に、デューティ比制御が終了した時点で、室内空間6の温度が異常下限温度t3よりも低下している(図7参照)と、ステップS17からステップS18に進み、異常温度低下判定手段57は、室内空間6の温度が急激に低下して冷えた状態になっているとして異常温度低下と判定し、この判定に基づいて異常温度低下信号を生成し、モード切換手段54は、かかる異常温度低下信号に基づいて蓄熱利用モードから通常モードに切り換え(ステップS19)、ステップS4に戻って床暖房装置本体2は通常モードで上述したように運転される。例えば、蓄熱利用モードの運転中に窓、ドアなどを開放して冷気が室内空間6に大量に流入したときには、流入した冷気によって室内空間6の温度が急激に低下して異常下限温度t3よりも低くなり、このように温度低下したときには、蓄熱利用モードの運転から通常モードの運転に切り換えられる。
【0042】
尚、予熱サイクル運転中における通常サイクル期間TS(デューティ制御期間)中に電源スイッチ32をオフ操作すると、ステップS14からステップS20を経てステップS21に移り、床暖房装置の運転が終了する。また、予熱サイクル運転中における蓄熱利用運転中に電源スイッチ32をオフ操作すると、ステップS16からステップS22を経てステップS23に移り、床暖房装置の運転が終了する。
【0043】
次に、図8〜図10を参照して、第2の実施形態の床暖房装置について説明する。この第2の実施形態においては、余熱利用時間TWが暖房対象域の躯体部分に蓄熱された蓄熱状態に応じて設定されるように構成されている。
【0044】
図8において、第2の実施形態の床暖房装置における制御手段4Aは、余熱利用時間TWを後述する如くして演算して設定する余熱利用時間設定手段72を備えており、この余熱利用時間演算手段72により設定された余熱利用時間TWは、メモリ手段64Aに登録される。この第2の実施形態における床暖房装置のその他の構成は、上述した第1の実施形態と実質上同一であり、床暖房装置の基本的構成については、図1及び図2に示す構成と実質上同一であり、またその制御系の構成については、図3に示す構成と実質上同一である。
【0045】
この第2の実施形態における床暖房装置は、例えば、次のように運転制御される。尚、以下の制御の説明において、第1の実施形態における制御と相違する部分を中心に説明する。図8とともに図9及び図10を参照して、この第2の実施形態の制御におけるステップS31〜ステップ42の内容については、上述した第1の実施形態におけるステップS1〜ステップS22の内容と実質上同一であるので、それらの説明を省略し、余熱サイクル運転が開始されるときから説明する。
【0046】
ステップS43において蓄熱利用モードにおける余熱サイクル運転が開始されると、上述したと同様に、余熱サイクル期間TVの前半の通常サイクル期間TS(デューティ比制御期間)において、床暖房装置本体2が上述したようにデューティ比制御され、このデューティ比制御が終了した後、その後半の余熱利用期間TWにおいて蓄熱利用運転を行うかが判断される。
【0047】
この実施形態では、通常サイクル期間TS(デューティ比制御期間)が終了した時点で、温度比較手段56は室内空間6の温度(温度センサ46の検出温度)とメモリ手段64に記憶された余熱下限温度t2との比較を行い、室内空間6の温度が余熱下限温度t2以上である場合、ステップS44からステップS45を経てステップS46に移り、躯体部分に蓄熱された熱を利用して余熱する蓄熱利用運転が行われ、このように蓄熱利用運転が行われて余熱利用期間TWの時間(即ち、余熱利用時間)が設定される。
【0048】
即ち、蓄熱利用運転が開始されると、計時手段60が計時を開始し(ステップS47)、この蓄熱利用運転は、室内空間6の温度が余熱下限温度t2まで低下するまで行われ、室内空間6の温度が余熱下限温度t2まで低下すると、ステップS48からステップS49に進み、蓄熱利用運転が終了して計時手段62による計時が終了し、余熱利用時間設定手段72は,計時手段60が計時した時間を余熱利用期間TWの時間として設定し、この設定された余熱利用時間がメモリ手段64Aに登録され、以降ステップS51に進み、この余熱利用時間を利用した継続余熱サイクル運転が行われる。
【0049】
また、通常サイクル期間TS(デューティ比制御期間)が終了した時点で、室内空間6の温度が余熱下限温度t2よりも低下していると、ステップS45からステップS52に進み、温度比較手段56は室内空間6の温度(温度センサ46の検出温度)とメモリ手段64に記憶された異常下限温度t3との比較を行い、室内空間6の温度が異常下限温度t3以上である場合、ステップS52からステップS43に戻り、余熱利用時間が設定されることなく、再度余熱サイクル期間TVに移り、床暖房装置本体2が上述したと同様にして作動制御され、このように運転制御が余熱利用時間が設定されるまで行われる。
【0050】
更に、デューティ比制御が終了した時点で、室内空間6の温度が異常下限温度t3よりも低下していると、ステップS52からステップS53に進み、異常温度低下判定手段57は、室内空間6の温度が急激に低下して冷えた状態になっているとして異常温度低下と判定し、モード切換手段54は、蓄熱利用モードから通常モードに切り換え(ステップS54)、ステップS34に戻って床暖房装置本体2は通常モードで上述したように運転される。
【0051】
継続余熱サイクル運転が開始されると、ステップS57からステップS58に進み、通常サイクル期間において上述したように床暖房装置本体2のデューティ比制御が行われ、この通常サイクル期間TS(デューティ比制御期間)が終了した時点で、上述したと同様に、温度比較手段56は室内空間6の温度(温度センサ46の検出温度)とメモリ手段64に記憶された余熱下限温度t2との比較を行い、室内空間6の温度が余熱下限温度t2以上である場合、ステップS58からステップS59を経てステップS40に移り、躯体部分に蓄熱された熱を利用して余熱する蓄熱利用運転が行われ、この蓄熱利用運転は、余熱利用時間設定手段72により設定された余熱利用時間行われ、蓄熱利用運転が終了すると、ステップS61からステップS57に戻り、この継続余熱サイクル運転が繰り返し遂行される。
【0052】
また、通常サイクル期間TS(デューティ比制御期間)が終了した時点で、室内空間6の温度が余熱下限温度t2よりも低下していると、ステップS59からステップS62に進み、温度比較手段56は室内空間6の温度(温度センサ46の検出温度)とメモリ手段64に記憶された異常下限温度t3との比較を行い、室内空間6の温度が異常下限温度t3以上である場合、ステップS62からステップS42に戻り、再度余熱利用時間の設定が行われる。
【0053】
更に、デューティ比制御が終了した時点で、室内空間6の温度が異常下限温度t3よりも低下していると、ステップSS62からステップS63に進み、異常温度低下判定手段57は、室内空間6の温度が急激に低下して冷えた状態になっているとして異常温度低下と判定し、モード切換手段54は、蓄熱利用モードから通常モードに切り換え(ステップS64)、ステップS34に戻って床暖房装置本体2は通常モードで上述したように運転される。
【0054】
次に、図11〜図13を参照して、第3の実施形態の床暖房装置について説明する。この第3の実施形態においては、通常サイクル期間TSの後に余熱利用期間TWを設けることに代えて、暖房対象域の躯体部分に蓄熱された熱を利用して余熱暖房する時間を考慮して通常サイクル期間TSにおけるデューティ比が蓄熱利用デューティ比に変更設定されるように構成されている。
【0055】
図11において、第3の実施形態の床暖房装置における制御手段4Bは、蓄熱利用デューティ比演算手段82及び蓄熱利用デューティ比設定手段84を含んでいる。蓄熱利用デューティ比演算手段82は、後述する如くして蓄熱利用デューティ比を演算し、演算された蓄熱利用デューティ比はメモリ手段64Bに登録されるとともに、蓄熱利用デューティ比設定手段84は、この演算された蓄熱利用デューティ比を設定し、後述するように、継続余熱サイクル運転において、この設定された蓄熱利用デューティ比を用いた余熱サイクル運転が行われる。この第3の実施形態における床暖房装置のその他の構成は、上述した第1の実施形態と実質上同一であり、床暖房装置の基本的構成については、図1及び図2に示す構成と実質上同一であり、またその制御系の構成については、図3に示す構成と実質上同一である。
【0056】
この第3の実施形態における床暖房装置は、例えば、次のように運転制御される。図11とともに図12及び図13を参照して、この第3の実施形態の制御におけるステップS71〜ステップ82の内容については、上述した第1の実施形態におけるステップS1〜ステップS22の内容と実質上同一であるので、それらの説明を省略し、余熱サイクル運転が開始されるときから説明する。
【0057】
ステップS83において蓄熱利用モードにおける余熱サイクル運転が開始されると、通常サイクル期間TS(デューティ比制御期間)において、床暖房装置本体2が上述したよう通常のデューティ比でもってデューティ比制御され、このデューティ比制御が終了した後、デューティ比の変更を行って継続的に余熱サイクル運転を行うかが判断される。
【0058】
この実施形態では、通常サイクル期間TS(デューティ比制御期間)が終了した時点で、温度比較手段56は室内空間6の温度(温度センサ46の検出温度)とメモリ手段64Bに記憶された余熱下限温度t2との比較を行い、室内空間6の温度が余熱下限温度t2以上である場合、ステップS84からステップS85を経てステップS86に移り、躯体部分に蓄熱された熱を利用して余熱する蓄熱利用運転が行われ、このように蓄熱利用運転を行った時間を考慮して蓄熱利用デューティ比の演算が行われる。
【0059】
即ち、蓄熱利用運転が開始されると、計時手段60が計時を開始し(ステップS87)、この蓄熱利用運転は、室内空間6の温度が余熱下限温度t2まで低下するまで行われ、室内空間6の温度が余熱下限温度t2まで低下すると、ステップS88からステップS89に進み、蓄熱利用運転が終了して計時手段62による計時が終了し、蓄熱利用デューティ比演算手段82は、計時手段60が計時した時間を考慮して次の通りに蓄熱利用デューティ比を演算する(ステップS90)。
【0060】
例えば、通常サイクル期間TSの1サイクル期間が、例えば20分であり、この通常サイクル期間のデューティ比が1:1であるとすると、この通常サイクル期間TSにおける床暖房装置本体2の作動期間TX(オン状態の時間)が10分であり、その非作動時間TY(オフ状態の時間)が10分である。このようなデューティ比の状態において、蓄熱利用運転における計時手段62の計時時間TZが例えば5分であるとすると、余熱利用デューティ比演算手段82は、作動時間TX’として10分、非作動時間TY’として15分(TY+TZ=10+5=15)として蓄熱利用デューティ比を2:3と設定する。
【0061】
蓄熱利用デューティ比演算手段82により演算された蓄熱利用デューティ比は、メモリ手段64Bに登録され、蓄熱利用デューティ比設定手段84は、上記デューティ比に代えてこの演算された蓄熱利用デューティ比を設定し(ステップS91)、以降ステップS92に進み、この蓄熱利用デューティを用いた継続余熱サイクル運転が行われる。
【0062】
また、通常サイクル期間TS(デューティ比制御期間)が終了した時点で、室内空間6の温度が余熱下限温度t2よりも低下していると、ステップS85からステップS93に進み、温度比較手段56は室内空間6の温度(温度センサ46の検出温度)とメモリ手段64Bに記憶された異常下限温度t3との比較を行い、室内空間6の温度が異常下限温度t3以上である場合、ステップS93からステップS83に戻り、蓄熱利用デューティ比が設定されることなく、再度余熱サイクル運転に移り、床暖房装置本体2が上述したと同様にして作動制御され、このように運転制御が余熱利用デューティ比が設定されるまで行われる。
【0063】
更に、デューティ比制御が終了した時点で、室内空間6の温度が異常下限温度t3よりも低下していると、ステップS93からステップS94に進み、異常温度低下判定手段57は、室内空間6の温度が急激に低下して冷えた状態になっているとして異常温度低下と判定し、モード切換手段54は、蓄熱利用モードから通常モードに切り換え(ステップS95)、ステップS74に戻って床暖房装置本体2は通常モードで上述したように運転される。
【0064】
継続余熱サイクル運転が開始されると、ステップS98からステップS99に進み、通常サイクル期間において蓄熱利用デューティ比を用いた床暖房装置本体2のデューティ比制御が行われ、この通常サイクル期間TS(デューティ比制御期間)が終了した時点で、上述したと同様に、温度比較手段56は室内空間6の温度(温度センサ46の検出温度)とメモリ手段64Bに記憶された余熱下限温度t2との比較を行い、室内空間6の温度が余熱下限温度t2以上である場合、ステップS99からステップS100を経てステップS98に戻り、この蓄熱利用デューティ比を用いた継続余熱サイクル運転が繰り返し遂行される。
【0065】
また、通常サイクル期間TS(デューティ比制御期間)が終了した時点で、室内空間6の温度が余熱下限温度t2よりも低下していると、ステップS100からステップS101に進み、温度比較手段56は室内空間6の温度(温度センサ46の検出温度)とメモリ手段64Bに記憶された異常下限温度t3との比較を行い、室内空間6の温度が異常下限温度t3以上である場合、ステップS101からステップS83に戻り、蓄熱利用デューティ比の演算が再度行われて設定される。
【0066】
更に、デューティ比制御が終了した時点で、室内空間6の温度が異常下限温度t3よりも低下していると、ステップS101からステップS102に進み、異常温度低下判定手段57は、室内空間6の温度が急激に低下して冷えた状態になっているとして異常温度低下と判定し、モード切換手段54は、蓄熱利用モードから通常モードに切り換え(ステップS103)、ステップS74に戻って床暖房装置本体2は通常モードで上述したように運転される。
【0067】
以上、本発明に従う暖房装置の一実施形態について説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲を逸脱することなく種々の変形乃至修正が可能である。
【0068】
例えば、上述した実施形態では、蓄熱利用モードの運転中において通常サイクル期間TS(デューティ比制御期間)が終了した時点で室内空間6の温度と異常下限温度t3とを比較して異常温度低下状態であるかを判定しているが、このような構成に限定されず、蓄熱利用モードの運転中に(即ち、通常サイクル期間TS及び余熱利用期間TWにおいて)室内空間6の温度が上記異常下限温度t3よりも低下したときに異常温度低下と判定して蓄熱利用モードから通常モードに切り換えるようにしてもよい。
【0069】
2 床暖房装置本体(暖房装置本体)
4,4A,4B 制御手段
6 室内空間
8 床暖房パネル
12 熱源機
30 操作リモコン(操作手段)
34 蓄熱利用モードスイッチ
46 温度センサ
52 運転モード設定手段
54 モード切換手段
57 異常温度低下判定手段
TS 通常サイクル期間(デューティ比制御期間)
TV 余熱サイクル期間
TW 余熱利用期間
【技術分野】
【0001】
本発明は、暖房対象域を暖房するために用いる暖房装置に関する。
【背景技術】
【0002】
暖房対象域を暖房する暖房装置として、一般家庭のリビングなどに設置される床暖房装置、温風暖房装置などが広く実用に供されている。この暖房装置の代表的な一つとしての床暖房装置は、熱媒としての温水を循環させて温水の熱を利用して暖房する温水循環式のもの、また熱電線に電気を流して熱電線の発熱を利用して暖房する電熱式のものがある。
【0003】
これらの床暖房装置においては、暖房対象域を暖房する床暖房装置本体と、この床暖房装置本体を作動制御するための制御手段と、制御手段に操作指令を送るための操作手段(例えば、操作リモコン)とを備え、操作手段からの運転指令に基づいて、制御手段は床暖房装置本体を作動制御する(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
床暖房装置本体は、床面に設置される床暖房パネルと、温水を生成するための熱源機とを備え、この床暖房パネルに蛇行状に温水チューブが設けられている。操作手段を運転操作すると、操作手段からの運転指令に基づいて熱源機が作動し、熱源機からの温水が床暖房パネルの温水チューブを通して循環され、かく循環される温水の熱を利用して床面からが暖房される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5−248647号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような床暖房装置では、暖房運転を停止した後においてもかなりの長時間にわたって暖房対象域(例えば、床暖房パネルが設置された室内空間)が暖められた状態に保たれる。更に説明すると、床暖房装置を作動して暖房運転すると、床暖房パネルからの熱が暖房対象域の室内空間のみならず、この暖房対象域を規定する床部、側壁部及び天井部などの躯体部分にも伝達されて暖められる。従って、床暖房パネルからの熱は、この躯体部分に蓄熱され、運転を停止した後は、この躯体部分に蓄熱された熱が暖房対象域(室内空間)に放熱されるようになり、この躯体部分に蓄熱された熱によって暖房運転停止後においても暖められた状態に保たれる。
【0007】
しかし、従来の床暖房装置においては、暖房対象域(室内空間)の温度(温度検出手段により検出された室温)と暖房設定温度(操作手段により設定された温度)との温度差に基づいて床暖房装置本体が作動制御され、暖房運転中に躯体部分に蓄熱された熱を考慮する制御となっておらず、充分な省エネルギー運転が行われているとはいえない。このようなことは、暖房装置としての温風暖房装置にも同様に存在する。
【0008】
本発明の目的は、躯体部分に蓄熱された熱を余熱として利用し、これによって省エネルギー運転を行うことができる暖房装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の請求項1に記載の暖房装置は、暖房対象域を暖房するための暖房装置本体と、前記暖房装置本体を作動制御するための制御手段と、前記制御手段に操作指令を送るための操作手段と、を具備する暖房装置であって、
前記操作手段は、前記暖房対象域の躯体部分に蓄熱された熱を利用する蓄熱利用モードと、前記暖房対象域の躯体部分に蓄熱された熱を利用しない通常モードとの設定が可能であり、
前記通常モードの運転においては、前記制御手段は、設定された通常サイクル期間でもって前記暖房装置本体を作動制御し、前記蓄熱利用モードの運転においては、前記制御手段は、前記通常サイクル期間の後に前記暖房対象域の躯体部分に蓄熱された熱を利用して余熱暖房する余熱利用期間を設けて前記暖房装置本体を作動制御することを特徴とする。
【0010】
また、本発明の請求項2に記載の暖房装置では、前記暖房装置本体に関連して、前記暖房対象空間の温度を検知するための温度検知手段が設けられており、前記蓄熱利用モードの運転においては、前記温度検知手段は、前記通常サイクル期間後の前記余熱利用期間において前記暖房対象空間の温度を検知し、前記温度検知手段の検知温度が余熱下限温度まで低下すると、前記余熱利用期間が終了することを特徴とする。
【0011】
また、本発明の請求項3に記載の暖房装置では、前記暖房装置本体に関連して、前記暖房対象空間の温度を検知するための温度検知手段が設けられており、前記蓄熱利用モードの運転においては、前記温度検知手段は、前記通常サイクル期間後の前記余熱利用期間において前記暖房対象空間の温度を検知し、前記制御手段は、前記温度検知手段の検知温度が余熱下限温度まで低下する時間に基づいて前記余熱利用期間を設定することを特徴とする。
【0012】
また、本発明の請求項4に記載の暖房装置では、前記通常モードの運転における前記通常サイクル期間及び前記蓄熱利用モードの運転における前記通常サイクル期間においては、前記制御手段は、前記暖房装置本体を作動させる作動時間と前記暖房装置本体の作動を停止させる非作動時間との比を演算したデューティ比でもって制御し、前記蓄熱利用モードの運転においては、前記通常サイクル期間の後に前記温度検知手段が前記暖房対象空間の温度を検知し、前記制御手段は、前記温度検知手段の検知温度が前記余熱下限温度まで低下していると前記余熱利用期間を省略して前記暖房装置本体を運転制御することを特徴とする。
【0013】
また、本発明の請求項5に記載の暖房装置は、暖房対象域を暖房するための暖房装置本体と、前記暖房装置本体を作動制御するための制御手段と、前記制御手段に操作指令を送るための操作手段と、を具備し、前記制御手段は、前記熱暖房装置本体を作動させる作動時間と前記暖房装置本体の作動を停止させる非作動時間との比を演算したデューティ比でもって制御する暖房装置であって、
前記操作手段は、前記暖房対象域の躯体部分に蓄熱された熱を利用する蓄熱利用モードと、前記暖房対象域の躯体部分に蓄熱された熱を利用しない通常モードとの設定が可能であり、
前記制御手段は、前記通常モードの運転において前記暖房対象域の躯体部分に蓄熱された熱を考慮しないで前記デューティ比を決定し、前記蓄熱利用モードの運転において前記暖房対象域の躯体部分に蓄熱された熱を考慮して前記デューティ比を決定することを特徴とする。
【0014】
更に、本発明の請求項6に記載の暖房装置では、前記暖房装置本体に関連して、前記暖房対象空間の温度を検知するための温度検知手段が設けられており、前記蓄熱利用モードの運転においては、前記温度検知手段は、前記通常サイクル期間後の前記余熱利用期間において前記暖房対象空間の温度を検知し、前記制御手段は、前記温度検知手段の検知温度が余熱下限温度まで低下する時間を考慮して前記デューティ比を決定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明の請求項1に記載の暖房装置によれば、操作手段による入力操作により、蓄熱利用モード及び通常モードの設定が可能であり、通常モードを設定したときには、制御手段は、設定された通常サイクル期間でもって暖房装置本体を作動制御し、また、蓄熱利用モードを設定したときには、制御手段は、通常サイクル期間の後に余熱利用期間を設けて暖房装置本体を作動制御するので、この蓄熱利用モードを設定することによって、暖房対象域の躯体部分に蓄熱された熱を利用して余熱暖房を行うことができ、これによって、暖房装置本体を省エネルギー運転することができる。尚、この暖房装置本体とは、温水からの熱(又は熱電線からの熱)を利用して床を暖める床暖房装置本体、温風を利用して室内空間を暖める温風暖房装置本体などである。
【0016】
また、本発明の請求項2に記載の暖房装置によれば、蓄熱利用モードの運転においては、温度検知手段の検知温度が余熱下限温度まで低下すると、暖房対象域の躯体に蓄熱された熱を利用して余熱暖房する余熱利用期間が終了するので、簡単な制御でもって、暖房対象域の温度が下がり過ぎるのを防止しながら暖房装置本体の省エネルギー運転を行うことができる。
【0017】
また、本発明の請求項3に記載の暖房装置によれば、蓄熱利用モードの運転においては、制御手段は温度検知手段の検知温度が余熱下限温度まで低下する時間に基づいて余熱利用期間を設定するので、暖房対象域の温度が下がり過ぎるのを防止しながら暖房装置本体の省エネルギー運転を行うことができる。
【0018】
また、本発明の請求項4に記載の暖房装置によれば、通常モードの運転及び蓄熱利用モードの運転における通常サイクル期間においては、制御手段は、暖房装置本体を作動させる作動時間と暖房装置本体の作動を停止させる非作動時間との比を演算したデューティ比でもって制御し、蓄熱利用モードの運転においては、通常サイクル期間後における温度検知手段の検知温度が余熱下限温度まで低下していると、制御手段は余熱利用期間(換言すると、暖房対象域の躯体部分に蓄熱された熱を利用して暖房する余熱暖房)が終了されるので、暖房対象域の温度を下がり過ぎるのを防止することができる。
【0019】
また、本発明の請求項5に記載の暖房装置によれば、操作手段による入力操作により、蓄熱利用モード及び通常モードの設定が可能であり、通常モードを設定したときには、暖房対象域の躯体部分に蓄熱された熱を考慮しないで暖房装置本体を運転制御するデューティ比が決定され、蓄熱利用モードを設定したときには、暖房対象域の躯体部分に蓄熱された熱を考慮してこのデューティ比が設定されるので、このように構成した場合においても、この蓄熱利用モードを設定することによって、暖房対象域の躯体部分に蓄熱された熱を利用して余熱暖房を行うことができ、これによって、暖房装置本体を省エネルギー運転することができる。
【0020】
更に、本発明の請求項6に記載の暖房装置によれば、蓄熱利用モードの運転においては、制御手段は、温度検知手段の検知温度が余熱下限温度まで低下する時間を考慮してデューティ比を決定するので、暖房対象域の温度が下がり過ぎるのを防止しながら省エネルギー運転を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に従う暖房装置の一例としての床暖房装置の第1の実施形態を簡略的に示す全体簡略図。
【図2】図1の床暖房装置における操作手段を示す正面図。
【図3】図1の床暖房装置の制御系を簡略的に示すブロック図。
【図4】図1の床暖房装置を通常モードで運転したときの床暖房装置本体の作動を説明するための図。
【図5】図1の床暖房装置を蓄熱利用モードで運転したときの床暖房装置本体の作動を説明するための図。
【図6】図3の制御系による制御を示すフローチャート。
【図7】暖房対象域の温度変化と床暖房装置の運転制御との関係を示す図。
【図8】床暖房装置の第2の実施形態における制御系を簡略的に示すブロック図。
【図9】図8の制御系による制御を示すフローチャート。
【図10】図9のフローチャートにおける継続余熱サイクルの運転の内容を具体的に示すフローチャート。
【図11】床暖房装置の第3の実施形態における制御系を簡略的に示すブロック図。
【図12】図11の制御系による制御を示すフローチャート。
【図13】図12のフローチャートにおける継続余熱サイクルの運転の内容を具体的に示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、添付図面を参照して、本発明に従う暖房装置の実施形態について説明する。尚、以下の実施形態においては、暖房装置の一例としての床暖房装置に適用して説明するが、温風暖房装置などのその他の形態の暖房装置にも同様に適用することができる。
【0023】
図1において、第1の実施形態の床暖房装置は、床暖房装置本体2(暖房装置本体を構成する)と、この床暖房装置本体2を作動制御するための制御手段4とを備えている。この床暖房装置本体2は、暖房対象域である室内空間6を暖めるために用いられる。
【0024】
床暖房装置本体2は、床に設置される床暖房パネル8を有し、この床暖房パネル8には、例えば蛇行状に温水チューブ10が設けられ、この温水チューブ10を通して温水が後述するように循環される。
【0025】
この床暖房装置は、更に温水を供給するための熱源機12(この実施形態では、床暖房装置本体2の一部を構成する)を含んでいる。熱源機12には、燃焼バーナ14及び送給ポンプ16(図3参照)が内蔵され、燃焼バーナ14の燃焼熱を利用して温水が生成される。この熱源機12の供給側には温水供給ライン18の一端側が接続され、その他端側は床暖房パネル8の流入側に接続され、また熱源機12の戻り側には温水戻りライン20の一端側が接続され、その他端側は床暖房パネル8の流出側に接続される。また、温水供給ライン18には熱動弁22が配設されている。このように構成されているので、熱源機12及び熱動弁22が作動すると、熱源機12にて生成された温水は、矢印24で示すように、温水供給ライン18を通して床暖房パネル8の流入側に供給され、その温水チューブ10を通して流れる。そして、温水チューブ10を流れた温水は、矢印26で示すように、温水戻りライン20を通して熱源機12に戻り、この熱源機12で再び加熱されて温水供給ライン18を通して供給され、このようにして熱源機12からの温水が床暖房パネル8を通して循環される。
【0026】
この床暖房装置本体2は、操作リモコン30(操作手段を構成する)からの操作指令によって作動制御され、操作リモコン30からの操作指令は制御手段4に送給され、制御手段4は、この操作指令に基づいて後述するように床暖房装置本体2を作動制御する。尚、操作リモコン30は、赤外線など利用した無線式のもの、信号線を利用した有線式のものなどでよい。
【0027】
図2及び図3を参照して、操作リモコン30は、例えば、図2に示す形態のものを用いることができ、電源スイッチ32、蓄熱利用モードスイッチ34、温度設定スイッチ36及びタイマ設定スイッチ38を有している。電源スイッチ32は、床暖房装置を作動、作動停止するためのもので、一度操作すると床暖房装置が作動し、もう一度操作するとその作動が停止する。蓄熱利用モードスイッチ34は、後述する蓄熱利用モードを設定するためのもので、一度操作すると蓄熱利用モードが設定され、もう一度操作すると蓄熱利用モードが解除される。温度設定スイッチ36は、設定温度を上げるためのアップスイッチ40と、設定温度を下げるためのダウンスイッチ42とから構成され、アップスイッチ40及びダウンスイッチ42を操作することによって所望の設定温度t1(図7参照)に設定される。タイマスイッチ38は、床暖房装置が作動開始及び作動停止するまでの時間を設定するものである。また、操作リモコン30には、各種スイッチを操作したときに指令内容を表示するための表示装置44(例えば、液晶表示装置)が設けられている。
【0028】
この床暖房装置では、室内空間6(暖房対象域)の温度を検知するための温度センサ46が設けられ、この温度センサ46は、操作リモコン30に設けられている。尚、この温度センサ46は、操作リモコン30とは別個に室内空間6を規定する側壁部などに設けるようにしてもよい。
【0029】
制御手段4は、例えばマイクロプロセッサから構成され、作動制御手段50、運転モード設定手段52、モード切換手段54、温度比較手段56、異常温度低下判定手段57、温度差演算手段58及びデューティ比設定手段60を含んでいる。作動制御手段50は、床暖房装置本体2を作動制御するためのもので、熱源機12(燃焼バーナ14及び送給ポンプ16)及び熱動弁22を作動制御する。運転モード設定手段52は、操作リモコン30からの指令に基づいて運転モードを設定し、蓄熱利用モードスイッチ34を操作して蓄熱利用モードを選択したときには蓄熱利用モードを設定し、蓄熱利用モードスイッチ34をもう一度操作して蓄熱利用モードを解除したときには通常モードを設定する。モード切換手段54は、蓄熱利用モードの運転において室内空間6の温度(温度センサ46の検出温度)が急激に低下したときに後述するように蓄熱利用モードから通常モードに強制的に切り換える。また、温度比較手段56は、後述するように室内空間6の温度と余熱下限温度t2(図7参照)及び異常下限温度t3(図7参照)とを比較し、異常温度低下判定手段57は、室内空間6の温度が異常下限温度t3よりも低下すると異常温度低下状態であると判定し、この実施形態では、その異常温度低下の判定結果に基づいて異常温度低下信号を生成する。
【0030】
また、温度差演算手段58は、室内空間6の温度と操作リモコン30の設定温度t1との温度差を演算し、デューティ比演算手段60は、温度差演算手段58の温度差に基づいて床暖房装置本体2が作動されるオン(ON)状態(換言すると、床暖房パネル8により暖房する状態)と床暖房装置本体2が作動停止されるオフ(OFF)状態(換言すると、床暖房パネル8による暖房が停止する状態)との比率を設定し、例えば、この温度差が1℃であるときには、オン状態とオフ状態との比率が1:1に設定される。例えば、通常モードの運転制御においては、通常サイクル期間でもって運転制御され、各通常サイクル期間を1サイクルとしてデューティ比制御される。この形態では、1サイクルの時間が、例えば20分に設定されており、従って、デューティ比が1:1である場合、20分間の1サイクル時間(各通常サイクル期間)のうち半分の10分間がオン状態となり、残りの10分間がオフ状態となるように作動制御される。
【0031】
この制御手段4は、更に、計時手段62及びメモリ手段64を含んでいる。計時手段62は時間を計時し、この形態では、操作リモコン30の電源スイッチ32をオン操作してからの経過時間などを計時する。また、メモリ手段64には、後述する蓄熱利用運転を終了する基準温度となる余熱下限温度t2、後述するように蓄熱利用モードから通常モードに切り換わる基準温度となる異常下限温度t3などが記憶されている。
【0032】
次に、図4を参照して、通常モードの運転について説明する。この形態では、通常モードの運転においては、床暖房装置本体2(熱源機12及び熱動弁22)は、通常サイクル期間TS(換言すると、デューティ比でもって制御されるデューティ比制御期間とも称する)を1サイクルとしてデューティ比制御される。通常サイクル期間TS(デューティ比制御期間)が例えば20分に設定され、デューティ比が例えば1:1であるときには、オン状態の作動時間TXが10分間となり、オフ状態の停止時間TYが10分間となり、このような通常サイクル期間TSが繰り返し遂行される。
【0033】
次いで、図5を参照して、蓄熱利用モードの運転について説明する。この形態では、蓄熱利用モードの運転においては、床暖房装置本体2(熱源機12及び熱動弁22)は、余熱サイクル期間TVを1サイクルとして制御され、余熱サイクル期間TVのうち前半が通常モードにおける通常サイクル期間TS(即ち、デューティ比制御期間)となり、その後半が余熱利用期間TWとなり、通常サイクル期間TS(デューティ比制御期間)においては、通常モードの運転における通常サイクル期間TSと同様にデューティ比制御され、例えばデューティ比が1:1であるときには、オン状態の作動時間TXが10分間となり、オフ状態の停止時間TYが10分間となる。また、余熱利用期間TWは、暖房運転中に室内空間6を規定する躯体部分(床部、側壁部及び天井部などから構成される)に蓄熱された熱を利用して余熱暖房する期間であり、この期間中においては床暖房装置本体2は作動停止され、このような余熱サイクル期間TV(通常サイクル期間TS+余熱利用期間TW)が繰り返し遂行される。
【0034】
この床暖房装置は、例えば、次のように運転制御される。主として、図1、図3及び図6を参照して、床暖房装置を運転するには、操作リモコン30の電源スイッチ32をオン操作すればよい(ステップS1)。かくすると、制御手段4の計時手段62が計時を開始する(ステップS2)。この電源スイッチ32を操作して運転するときには、ステップS3からステップS4に進み、制御手段4の運転モード設定手段52は、操作リモコン30からの運転指令に基づいて通常モードを設定し、作動制御手段50は、図4に示す通りの通常モードでもって床暖房装置本体2を作動運転する。この通常モードの運転中に電源スイッチ32をオフ操作すると、ステップS6からステップS7に移り、床暖房装置の運転が終了する。
【0035】
電源スイッチ32をオン操作した後に蓄熱利用モードスイッチ34を操作する(又は通常モードの運転中に蓄熱利用モードスイッチ34を操作する)と、ステップS3(又はステップS5)からステップS8に進む。そして、計時手段62が計時を開始してから所定時間(例えば、2〜4時間程度に設定される)が経過するまでは、ステップS8からステップS9を経てステップS10に進み、通常モードの運転が継続され、この所定時間が経過するまで後述する蓄熱利用モードの運転が行われることはない。尚、この通常モードの運転中に電源スイッチ32をオフ操作すると、ステップS9からステップS11に移り、床暖房装置の運転が終了する。
【0036】
電源スイッチ32をオン操作して暖房運転を開始すると、床暖房装置本体2(熱源機12及び熱動弁22)が作動され、熱源機12にて生成された温水が床暖房パネル8の温水チューブ10を通して循環され、循環される温水の熱によって床暖房パネル8が暖められ、かく暖められた床暖房パネル8の表面から室内空間6(暖房対象域)が暖められ、このようにして床暖房パネル8及びその上方空間が暖房される。そして、このように暖房されると、床暖房パネル8及び室内空間6の熱が、室内空間6を規定する建物の躯体部分(即ち、床部、側壁部及び天井部など)に伝達され、かかる熱が躯体部分に蓄熱される。この躯体部分への蓄熱は除々に行われ、暖房運転開始から所定時間が経過すると、この躯体部分に充分な熱が蓄熱され(換言すると、室内空間6の温度とほぼ同じ温度となる)、躯体部分に蓄熱された熱の利用が可能となる。
【0037】
このようなことから、暖房運転の開始から所定時間が経過するまでは通常モードの運転が行われ、この所定時間経過後は、床暖房装置の蓄熱利用モードへの運転が許容され、ステップS3(又はステップS5)において蓄熱利用モードの運転が選択されているときには、ステップS12に進み、床暖房装置は蓄熱利用モードでもって運転制御される。即ち、制御手段4の運転モード設定手段52は、操作リモコン30の蓄熱利用モードスイッチ34からの蓄熱利用モード指令に基づいて蓄熱利用モードを設定し、作動制御手段50は、図5で示す通りの蓄熱利用モードでもって床暖房装置本体2(熱源機12及び熱動弁22)を作動制御する。
【0038】
図7をも参照して、蓄熱利用モードの運転が開始されると、余熱サイクル運転が開始され(ステップS13)、余熱サイクル期間TVの前半の通常サイクル期間TS(デューティ比制御期間)において、床暖房装置本体2が上述したようにデューティ比制御され、このデューティ比制御が終了した後、その後半の余熱利用期間TWにおいて蓄熱利用運転を行うかが判断される。
【0039】
この実施形態では、通常サイクル期間TS(デューティ比制御期間)が終了した時点で、温度比較手段56は室内空間6の温度(温度センサ46の検出温度)とメモリ手段64に記憶された余熱下限温度t2との比較を行い、室内空間6の温度が余熱下限温度t2以上である場合、ステップS14からステップS15を経てステップS16に移り、躯体部分に蓄熱された熱を利用して余熱する蓄熱利用運転が行われる。この蓄熱利用運転は、室内空間6の温度が余熱下限温度t2より更に低下するまで行われ、室内空間6の温度がこのように低下すると、図7に示すように、蓄熱利用運転が終了して余熱サイクル期間TVの1サイクルが終了し、ステップS15からステップS17を経てステップS13に戻り、次の余熱サイクル期間TVに移って、床暖房装置本体2が上述したと同様にして作動制御される。このように躯体部分に蓄熱された熱を利用して蓄熱利用運転を行うことにより、暖房装置の省エネルギー運転を行うことができる。
【0040】
また、通常サイクル期間TS(デューティ比制御期間)が終了した時点で、室内空間6の温度が余熱下限温度t2よりも低下している(図7参照)と、ステップS15からステップS17に進み、温度比較手段56は室内空間6の温度(温度センサ46の検出温度)とメモリ手段64に記憶された異常下限温度t3との比較を行い、室内空間6の温度が異常下限温度t3以上である場合、ステップS17からステップS13に戻り、蓄熱利用運転が行われることなく、次の余熱サイクル期間TVに移り、床暖房装置本体2が上述したと同様にして作動制御され、このように運転制御することによって、室内空間6の温度が異常に低下するのを防止することができる。
【0041】
更に、デューティ比制御が終了した時点で、室内空間6の温度が異常下限温度t3よりも低下している(図7参照)と、ステップS17からステップS18に進み、異常温度低下判定手段57は、室内空間6の温度が急激に低下して冷えた状態になっているとして異常温度低下と判定し、この判定に基づいて異常温度低下信号を生成し、モード切換手段54は、かかる異常温度低下信号に基づいて蓄熱利用モードから通常モードに切り換え(ステップS19)、ステップS4に戻って床暖房装置本体2は通常モードで上述したように運転される。例えば、蓄熱利用モードの運転中に窓、ドアなどを開放して冷気が室内空間6に大量に流入したときには、流入した冷気によって室内空間6の温度が急激に低下して異常下限温度t3よりも低くなり、このように温度低下したときには、蓄熱利用モードの運転から通常モードの運転に切り換えられる。
【0042】
尚、予熱サイクル運転中における通常サイクル期間TS(デューティ制御期間)中に電源スイッチ32をオフ操作すると、ステップS14からステップS20を経てステップS21に移り、床暖房装置の運転が終了する。また、予熱サイクル運転中における蓄熱利用運転中に電源スイッチ32をオフ操作すると、ステップS16からステップS22を経てステップS23に移り、床暖房装置の運転が終了する。
【0043】
次に、図8〜図10を参照して、第2の実施形態の床暖房装置について説明する。この第2の実施形態においては、余熱利用時間TWが暖房対象域の躯体部分に蓄熱された蓄熱状態に応じて設定されるように構成されている。
【0044】
図8において、第2の実施形態の床暖房装置における制御手段4Aは、余熱利用時間TWを後述する如くして演算して設定する余熱利用時間設定手段72を備えており、この余熱利用時間演算手段72により設定された余熱利用時間TWは、メモリ手段64Aに登録される。この第2の実施形態における床暖房装置のその他の構成は、上述した第1の実施形態と実質上同一であり、床暖房装置の基本的構成については、図1及び図2に示す構成と実質上同一であり、またその制御系の構成については、図3に示す構成と実質上同一である。
【0045】
この第2の実施形態における床暖房装置は、例えば、次のように運転制御される。尚、以下の制御の説明において、第1の実施形態における制御と相違する部分を中心に説明する。図8とともに図9及び図10を参照して、この第2の実施形態の制御におけるステップS31〜ステップ42の内容については、上述した第1の実施形態におけるステップS1〜ステップS22の内容と実質上同一であるので、それらの説明を省略し、余熱サイクル運転が開始されるときから説明する。
【0046】
ステップS43において蓄熱利用モードにおける余熱サイクル運転が開始されると、上述したと同様に、余熱サイクル期間TVの前半の通常サイクル期間TS(デューティ比制御期間)において、床暖房装置本体2が上述したようにデューティ比制御され、このデューティ比制御が終了した後、その後半の余熱利用期間TWにおいて蓄熱利用運転を行うかが判断される。
【0047】
この実施形態では、通常サイクル期間TS(デューティ比制御期間)が終了した時点で、温度比較手段56は室内空間6の温度(温度センサ46の検出温度)とメモリ手段64に記憶された余熱下限温度t2との比較を行い、室内空間6の温度が余熱下限温度t2以上である場合、ステップS44からステップS45を経てステップS46に移り、躯体部分に蓄熱された熱を利用して余熱する蓄熱利用運転が行われ、このように蓄熱利用運転が行われて余熱利用期間TWの時間(即ち、余熱利用時間)が設定される。
【0048】
即ち、蓄熱利用運転が開始されると、計時手段60が計時を開始し(ステップS47)、この蓄熱利用運転は、室内空間6の温度が余熱下限温度t2まで低下するまで行われ、室内空間6の温度が余熱下限温度t2まで低下すると、ステップS48からステップS49に進み、蓄熱利用運転が終了して計時手段62による計時が終了し、余熱利用時間設定手段72は,計時手段60が計時した時間を余熱利用期間TWの時間として設定し、この設定された余熱利用時間がメモリ手段64Aに登録され、以降ステップS51に進み、この余熱利用時間を利用した継続余熱サイクル運転が行われる。
【0049】
また、通常サイクル期間TS(デューティ比制御期間)が終了した時点で、室内空間6の温度が余熱下限温度t2よりも低下していると、ステップS45からステップS52に進み、温度比較手段56は室内空間6の温度(温度センサ46の検出温度)とメモリ手段64に記憶された異常下限温度t3との比較を行い、室内空間6の温度が異常下限温度t3以上である場合、ステップS52からステップS43に戻り、余熱利用時間が設定されることなく、再度余熱サイクル期間TVに移り、床暖房装置本体2が上述したと同様にして作動制御され、このように運転制御が余熱利用時間が設定されるまで行われる。
【0050】
更に、デューティ比制御が終了した時点で、室内空間6の温度が異常下限温度t3よりも低下していると、ステップS52からステップS53に進み、異常温度低下判定手段57は、室内空間6の温度が急激に低下して冷えた状態になっているとして異常温度低下と判定し、モード切換手段54は、蓄熱利用モードから通常モードに切り換え(ステップS54)、ステップS34に戻って床暖房装置本体2は通常モードで上述したように運転される。
【0051】
継続余熱サイクル運転が開始されると、ステップS57からステップS58に進み、通常サイクル期間において上述したように床暖房装置本体2のデューティ比制御が行われ、この通常サイクル期間TS(デューティ比制御期間)が終了した時点で、上述したと同様に、温度比較手段56は室内空間6の温度(温度センサ46の検出温度)とメモリ手段64に記憶された余熱下限温度t2との比較を行い、室内空間6の温度が余熱下限温度t2以上である場合、ステップS58からステップS59を経てステップS40に移り、躯体部分に蓄熱された熱を利用して余熱する蓄熱利用運転が行われ、この蓄熱利用運転は、余熱利用時間設定手段72により設定された余熱利用時間行われ、蓄熱利用運転が終了すると、ステップS61からステップS57に戻り、この継続余熱サイクル運転が繰り返し遂行される。
【0052】
また、通常サイクル期間TS(デューティ比制御期間)が終了した時点で、室内空間6の温度が余熱下限温度t2よりも低下していると、ステップS59からステップS62に進み、温度比較手段56は室内空間6の温度(温度センサ46の検出温度)とメモリ手段64に記憶された異常下限温度t3との比較を行い、室内空間6の温度が異常下限温度t3以上である場合、ステップS62からステップS42に戻り、再度余熱利用時間の設定が行われる。
【0053】
更に、デューティ比制御が終了した時点で、室内空間6の温度が異常下限温度t3よりも低下していると、ステップSS62からステップS63に進み、異常温度低下判定手段57は、室内空間6の温度が急激に低下して冷えた状態になっているとして異常温度低下と判定し、モード切換手段54は、蓄熱利用モードから通常モードに切り換え(ステップS64)、ステップS34に戻って床暖房装置本体2は通常モードで上述したように運転される。
【0054】
次に、図11〜図13を参照して、第3の実施形態の床暖房装置について説明する。この第3の実施形態においては、通常サイクル期間TSの後に余熱利用期間TWを設けることに代えて、暖房対象域の躯体部分に蓄熱された熱を利用して余熱暖房する時間を考慮して通常サイクル期間TSにおけるデューティ比が蓄熱利用デューティ比に変更設定されるように構成されている。
【0055】
図11において、第3の実施形態の床暖房装置における制御手段4Bは、蓄熱利用デューティ比演算手段82及び蓄熱利用デューティ比設定手段84を含んでいる。蓄熱利用デューティ比演算手段82は、後述する如くして蓄熱利用デューティ比を演算し、演算された蓄熱利用デューティ比はメモリ手段64Bに登録されるとともに、蓄熱利用デューティ比設定手段84は、この演算された蓄熱利用デューティ比を設定し、後述するように、継続余熱サイクル運転において、この設定された蓄熱利用デューティ比を用いた余熱サイクル運転が行われる。この第3の実施形態における床暖房装置のその他の構成は、上述した第1の実施形態と実質上同一であり、床暖房装置の基本的構成については、図1及び図2に示す構成と実質上同一であり、またその制御系の構成については、図3に示す構成と実質上同一である。
【0056】
この第3の実施形態における床暖房装置は、例えば、次のように運転制御される。図11とともに図12及び図13を参照して、この第3の実施形態の制御におけるステップS71〜ステップ82の内容については、上述した第1の実施形態におけるステップS1〜ステップS22の内容と実質上同一であるので、それらの説明を省略し、余熱サイクル運転が開始されるときから説明する。
【0057】
ステップS83において蓄熱利用モードにおける余熱サイクル運転が開始されると、通常サイクル期間TS(デューティ比制御期間)において、床暖房装置本体2が上述したよう通常のデューティ比でもってデューティ比制御され、このデューティ比制御が終了した後、デューティ比の変更を行って継続的に余熱サイクル運転を行うかが判断される。
【0058】
この実施形態では、通常サイクル期間TS(デューティ比制御期間)が終了した時点で、温度比較手段56は室内空間6の温度(温度センサ46の検出温度)とメモリ手段64Bに記憶された余熱下限温度t2との比較を行い、室内空間6の温度が余熱下限温度t2以上である場合、ステップS84からステップS85を経てステップS86に移り、躯体部分に蓄熱された熱を利用して余熱する蓄熱利用運転が行われ、このように蓄熱利用運転を行った時間を考慮して蓄熱利用デューティ比の演算が行われる。
【0059】
即ち、蓄熱利用運転が開始されると、計時手段60が計時を開始し(ステップS87)、この蓄熱利用運転は、室内空間6の温度が余熱下限温度t2まで低下するまで行われ、室内空間6の温度が余熱下限温度t2まで低下すると、ステップS88からステップS89に進み、蓄熱利用運転が終了して計時手段62による計時が終了し、蓄熱利用デューティ比演算手段82は、計時手段60が計時した時間を考慮して次の通りに蓄熱利用デューティ比を演算する(ステップS90)。
【0060】
例えば、通常サイクル期間TSの1サイクル期間が、例えば20分であり、この通常サイクル期間のデューティ比が1:1であるとすると、この通常サイクル期間TSにおける床暖房装置本体2の作動期間TX(オン状態の時間)が10分であり、その非作動時間TY(オフ状態の時間)が10分である。このようなデューティ比の状態において、蓄熱利用運転における計時手段62の計時時間TZが例えば5分であるとすると、余熱利用デューティ比演算手段82は、作動時間TX’として10分、非作動時間TY’として15分(TY+TZ=10+5=15)として蓄熱利用デューティ比を2:3と設定する。
【0061】
蓄熱利用デューティ比演算手段82により演算された蓄熱利用デューティ比は、メモリ手段64Bに登録され、蓄熱利用デューティ比設定手段84は、上記デューティ比に代えてこの演算された蓄熱利用デューティ比を設定し(ステップS91)、以降ステップS92に進み、この蓄熱利用デューティを用いた継続余熱サイクル運転が行われる。
【0062】
また、通常サイクル期間TS(デューティ比制御期間)が終了した時点で、室内空間6の温度が余熱下限温度t2よりも低下していると、ステップS85からステップS93に進み、温度比較手段56は室内空間6の温度(温度センサ46の検出温度)とメモリ手段64Bに記憶された異常下限温度t3との比較を行い、室内空間6の温度が異常下限温度t3以上である場合、ステップS93からステップS83に戻り、蓄熱利用デューティ比が設定されることなく、再度余熱サイクル運転に移り、床暖房装置本体2が上述したと同様にして作動制御され、このように運転制御が余熱利用デューティ比が設定されるまで行われる。
【0063】
更に、デューティ比制御が終了した時点で、室内空間6の温度が異常下限温度t3よりも低下していると、ステップS93からステップS94に進み、異常温度低下判定手段57は、室内空間6の温度が急激に低下して冷えた状態になっているとして異常温度低下と判定し、モード切換手段54は、蓄熱利用モードから通常モードに切り換え(ステップS95)、ステップS74に戻って床暖房装置本体2は通常モードで上述したように運転される。
【0064】
継続余熱サイクル運転が開始されると、ステップS98からステップS99に進み、通常サイクル期間において蓄熱利用デューティ比を用いた床暖房装置本体2のデューティ比制御が行われ、この通常サイクル期間TS(デューティ比制御期間)が終了した時点で、上述したと同様に、温度比較手段56は室内空間6の温度(温度センサ46の検出温度)とメモリ手段64Bに記憶された余熱下限温度t2との比較を行い、室内空間6の温度が余熱下限温度t2以上である場合、ステップS99からステップS100を経てステップS98に戻り、この蓄熱利用デューティ比を用いた継続余熱サイクル運転が繰り返し遂行される。
【0065】
また、通常サイクル期間TS(デューティ比制御期間)が終了した時点で、室内空間6の温度が余熱下限温度t2よりも低下していると、ステップS100からステップS101に進み、温度比較手段56は室内空間6の温度(温度センサ46の検出温度)とメモリ手段64Bに記憶された異常下限温度t3との比較を行い、室内空間6の温度が異常下限温度t3以上である場合、ステップS101からステップS83に戻り、蓄熱利用デューティ比の演算が再度行われて設定される。
【0066】
更に、デューティ比制御が終了した時点で、室内空間6の温度が異常下限温度t3よりも低下していると、ステップS101からステップS102に進み、異常温度低下判定手段57は、室内空間6の温度が急激に低下して冷えた状態になっているとして異常温度低下と判定し、モード切換手段54は、蓄熱利用モードから通常モードに切り換え(ステップS103)、ステップS74に戻って床暖房装置本体2は通常モードで上述したように運転される。
【0067】
以上、本発明に従う暖房装置の一実施形態について説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲を逸脱することなく種々の変形乃至修正が可能である。
【0068】
例えば、上述した実施形態では、蓄熱利用モードの運転中において通常サイクル期間TS(デューティ比制御期間)が終了した時点で室内空間6の温度と異常下限温度t3とを比較して異常温度低下状態であるかを判定しているが、このような構成に限定されず、蓄熱利用モードの運転中に(即ち、通常サイクル期間TS及び余熱利用期間TWにおいて)室内空間6の温度が上記異常下限温度t3よりも低下したときに異常温度低下と判定して蓄熱利用モードから通常モードに切り換えるようにしてもよい。
【0069】
2 床暖房装置本体(暖房装置本体)
4,4A,4B 制御手段
6 室内空間
8 床暖房パネル
12 熱源機
30 操作リモコン(操作手段)
34 蓄熱利用モードスイッチ
46 温度センサ
52 運転モード設定手段
54 モード切換手段
57 異常温度低下判定手段
TS 通常サイクル期間(デューティ比制御期間)
TV 余熱サイクル期間
TW 余熱利用期間
【特許請求の範囲】
【請求項1】
暖房対象域を暖房するための暖房装置本体と、前記暖房装置本体を作動制御するための制御手段と、前記制御手段に操作指令を送るための操作手段と、を具備する暖房装置であって、
前記操作手段は、前記暖房対象域の躯体部分に蓄熱された熱を利用する蓄熱利用モードと、前記暖房対象域の躯体部分に蓄熱された熱を利用しない通常モードとの設定が可能であり、
前記通常モードの運転においては、前記制御手段は、設定された通常サイクル期間でもって前記暖房装置本体を作動制御し、前記蓄熱利用モードの運転においては、前記制御手段は、前記通常サイクル期間の後に前記暖房対象域の躯体部分に蓄熱された熱を利用して余熱暖房する余熱利用期間を設けて前記暖房装置本体を作動制御することを特徴とする暖房装置。
【請求項2】
前記暖房装置本体に関連して、前記暖房対象空間の温度を検知するための温度検知手段が設けられており、前記蓄熱利用モードの運転においては、前記温度検知手段は、前記通常サイクル期間後の前記余熱利用期間において前記暖房対象空間の温度を検知し、前記温度検知手段の検知温度が余熱下限温度まで低下すると、前記余熱利用期間が終了することを特徴とする請求項1に記載の暖房装置。
【請求項3】
前記暖房装置本体に関連して、前記暖房対象空間の温度を検知するための温度検知手段が設けられており、前記蓄熱利用モードの運転においては、前記温度検知手段は、前記通常サイクル期間後の前記余熱利用期間において前記暖房対象空間の温度を検知し、前記制御手段は、前記温度検知手段の検知温度が余熱下限温度まで低下する時間に基づいて前記余熱利用期間を設定することを特徴とする請求項1に記載の暖房装置。
【請求項4】
前記通常モードの運転における前記通常サイクル期間及び前記蓄熱利用モードの運転における前記通常サイクル期間においては、前記制御手段は、前記暖房装置本体を作動させる作動時間と前記暖房装置本体の作動を停止させる非作動時間との比を演算したデューティ比でもって制御し、前記蓄熱利用モードの運転においては、前記通常サイクル期間の後に前記温度検知手段が前記暖房対象空間の温度を検知し、前記制御手段は、前記温度検知手段の検知温度が前記余熱下限温度まで低下していると前記余熱利用期間を省略して前記暖房装置本体を運転制御することを特徴とする請求項2又は3に記載の暖房装置。
【請求項5】
暖房対象域を暖房するための暖房装置本体と、前記暖房装置本体を作動制御するための制御手段と、前記制御手段に操作指令を送るための操作手段と、を具備し、前記制御手段は、前記熱暖房装置本体を作動させる作動時間と前記暖房装置本体の作動を停止させる非作動時間との比を演算したデューティ比でもって制御する暖房装置であって、
前記操作手段は、前記暖房対象域の躯体部分に蓄熱された熱を利用する蓄熱利用モードと、前記暖房対象域の躯体部分に蓄熱された熱を利用しない通常モードとの設定が可能であり、
前記制御手段は、前記通常モードの運転において前記暖房対象域の躯体部分に蓄熱された熱を考慮しないで前記デューティ比を決定し、前記蓄熱利用モードの運転において前記暖房対象域の躯体部分に蓄熱された熱を考慮して前記デューティ比を決定することを特徴とする暖房装置。
【請求項6】
前記暖房装置本体に関連して、前記暖房対象空間の温度を検知するための温度検知手段が設けられており、前記蓄熱利用モードの運転においては、前記温度検知手段は、前記通常サイクル期間後の前記余熱利用期間において前記暖房対象空間の温度を検知し、前記制御手段は、前記温度検知手段の検知温度が余熱下限温度まで低下する時間を考慮して前記デューティ比を決定することを特徴とする請求項5に記載の暖房装置。
【請求項1】
暖房対象域を暖房するための暖房装置本体と、前記暖房装置本体を作動制御するための制御手段と、前記制御手段に操作指令を送るための操作手段と、を具備する暖房装置であって、
前記操作手段は、前記暖房対象域の躯体部分に蓄熱された熱を利用する蓄熱利用モードと、前記暖房対象域の躯体部分に蓄熱された熱を利用しない通常モードとの設定が可能であり、
前記通常モードの運転においては、前記制御手段は、設定された通常サイクル期間でもって前記暖房装置本体を作動制御し、前記蓄熱利用モードの運転においては、前記制御手段は、前記通常サイクル期間の後に前記暖房対象域の躯体部分に蓄熱された熱を利用して余熱暖房する余熱利用期間を設けて前記暖房装置本体を作動制御することを特徴とする暖房装置。
【請求項2】
前記暖房装置本体に関連して、前記暖房対象空間の温度を検知するための温度検知手段が設けられており、前記蓄熱利用モードの運転においては、前記温度検知手段は、前記通常サイクル期間後の前記余熱利用期間において前記暖房対象空間の温度を検知し、前記温度検知手段の検知温度が余熱下限温度まで低下すると、前記余熱利用期間が終了することを特徴とする請求項1に記載の暖房装置。
【請求項3】
前記暖房装置本体に関連して、前記暖房対象空間の温度を検知するための温度検知手段が設けられており、前記蓄熱利用モードの運転においては、前記温度検知手段は、前記通常サイクル期間後の前記余熱利用期間において前記暖房対象空間の温度を検知し、前記制御手段は、前記温度検知手段の検知温度が余熱下限温度まで低下する時間に基づいて前記余熱利用期間を設定することを特徴とする請求項1に記載の暖房装置。
【請求項4】
前記通常モードの運転における前記通常サイクル期間及び前記蓄熱利用モードの運転における前記通常サイクル期間においては、前記制御手段は、前記暖房装置本体を作動させる作動時間と前記暖房装置本体の作動を停止させる非作動時間との比を演算したデューティ比でもって制御し、前記蓄熱利用モードの運転においては、前記通常サイクル期間の後に前記温度検知手段が前記暖房対象空間の温度を検知し、前記制御手段は、前記温度検知手段の検知温度が前記余熱下限温度まで低下していると前記余熱利用期間を省略して前記暖房装置本体を運転制御することを特徴とする請求項2又は3に記載の暖房装置。
【請求項5】
暖房対象域を暖房するための暖房装置本体と、前記暖房装置本体を作動制御するための制御手段と、前記制御手段に操作指令を送るための操作手段と、を具備し、前記制御手段は、前記熱暖房装置本体を作動させる作動時間と前記暖房装置本体の作動を停止させる非作動時間との比を演算したデューティ比でもって制御する暖房装置であって、
前記操作手段は、前記暖房対象域の躯体部分に蓄熱された熱を利用する蓄熱利用モードと、前記暖房対象域の躯体部分に蓄熱された熱を利用しない通常モードとの設定が可能であり、
前記制御手段は、前記通常モードの運転において前記暖房対象域の躯体部分に蓄熱された熱を考慮しないで前記デューティ比を決定し、前記蓄熱利用モードの運転において前記暖房対象域の躯体部分に蓄熱された熱を考慮して前記デューティ比を決定することを特徴とする暖房装置。
【請求項6】
前記暖房装置本体に関連して、前記暖房対象空間の温度を検知するための温度検知手段が設けられており、前記蓄熱利用モードの運転においては、前記温度検知手段は、前記通常サイクル期間後の前記余熱利用期間において前記暖房対象空間の温度を検知し、前記制御手段は、前記温度検知手段の検知温度が余熱下限温度まで低下する時間を考慮して前記デューティ比を決定することを特徴とする請求項5に記載の暖房装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
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【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2012−207859(P2012−207859A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−73959(P2011−73959)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(000000284)大阪瓦斯株式会社 (2,453)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(000000284)大阪瓦斯株式会社 (2,453)
【Fターム(参考)】
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