説明

暗号化された画像を閲覧権者に応じた強度の不鮮明化処理を施した画像を出力することを特徴とする画像暗号化システム

【課題】監視カメラで撮影された映像を暗号化して保存し,閲覧者に応じて復号化された画像に対して不鮮明化処理を施された画像を表示することで,プライバシーを守りつつ,画像を閲覧することを可能にする.
【解決手段】映像を専用ソフトウェアで暗号化し,それを復号化するためのキーを1つ用意する.このキーを用いて復号化ソフトウェアは予め定められた強度の
モザイク化処理などの不鮮明化処理を施した画像を表示する.閲覧者がどこまで撮影された画像を閲覧してよいかにより利用可能なソフトウェアを配布すること
で,決められた強度の不鮮明化処理が施された画像しか閲覧できなくなる.または,映像を専用ソフトウェアで暗号化し,閲覧することができる者それぞれに異
なる画像閲覧用キーを配布し,さらに復号化ソフトウェアを配布する.復号化ソフトウェアは画像閲覧用キーの内容に基づいた強度で不鮮明化処理を画像に施したものを表示する.

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,監視カメラシステムに関するものであり,さらに詳細には,様々な場所に設置されている監視カメラについて,その保存されている画像を閲覧することができる者(閲覧権者)に応じてモザイク処理などの不鮮明化処理の強度を変えて表示するシステムである.
【0002】
現在,監視カメラが広く普及しており,その理由は犯罪の抑止や犯罪者の逮捕への有効性が認められているからである.一方,監視カメラは常に家の周りや公園や商店街などの公の場所の映像を撮影しその画像を保存するため,そのカメラの前を通る人のすべての映像を撮影しその画像を保存することとなる.その画像は犯罪者の追跡等に利用されることを目的としているが,その防犯カメラの所有者が興味本位で画像を見て楽しむといったことを行うと,プライバシーの侵害になりうる.そこで,画像を暗号化して保存し,その暗号を復号できる装置を有する人や組織だけが閲覧できる監視カメラシステムを発明者らが組織する特定非営利活動法人e自警ネットワーク研究会が提案されている.
【0003】
しかしながら,これは監視カメラの映像の様々な利用方法を排除してしまい,その利便性を失わせてしまっている.つまり,監視カメラの映像は犯罪の抑止や犯罪者の追跡以外の様々な用途が存在する.例えば,公園に設置された監視カメラの映像を見ることで公園の混雑具合を確認することができるが,画像を暗号化してしまうとその復号化方法を知らなければ画像自体見ることができないので,公園の混雑具合を知ることはできず,また,不特定多数に復号化方法を知らせてしまえば,そもそもの暗号化の意味が亡くなってしまい,誰が公園にいるのかを誰もが知ることができるようになってしまうとプライバシーの侵害になってしまう.そこで,適度な強度のモザイクをかけて画像を提供することにより,公園がどの程度混雑しているのかがわかるが,誰が居るのかわからず,プライバシーの侵害をすることがなく,公園の混雑の情報を提供することができる.
【0004】
監視カメラの映像は,老人や幼い子供が迷子になったときにも役に立つが,撮影された画像には捜索対象となっている老人や子供以外の人物も映っていることがあり,そのような画像をみることはプライバシーを侵害することになりうる.しかし,捜索対象がわかっている場合には,画像に多少のモザイクが掛かっていても,画像に捜索対象が映っていれば探し出すことができ,画像はモザイクが施されているので,捜索対象以外の人物がどのような人なのか何をしているのかを見ることはできない.このように,適度なモザイクを利用することで,プライバシーの侵害を防ぎつつ監視カメラの映像を有効に利用することができ,閲覧権者に応じてモザイクの強度を変えて監視カメラの画像を表示することは監視カメラの有効利用という点から有効である.
【背景技術】
【0005】
画像を暗号化することを通して,画像を所有・管理する者(所有者)と,その画像を閲覧することができる者(閲覧権者)を,分離することを特長とする,防犯カメラ運用に関する新しいコンセプトを,発明者らが組織する特定非営利活動法人e自警ネットワーク研究会では提案している.これにより,事件発生など,所有者と閲覧権者の双方が,必要と認める場合にのみ,暗号化された画像が,所有者から閲覧権者に渡され,閲覧権者により暗号が解除され閲覧されることになる.これにより,不要不急な場合以外は,誰も画像を閲覧できないことになる.このコンセプトは,プライバシー侵害の危険性を抑制し,同時に,第3者に与えうる無用な精神的な負荷を低減することにより,防犯カメラの地域社会全域に渡る普及を促進することを目的として提案される.
【0006】
このように,監視カメラの映像の所有者と閲覧権者を分離することでプライバシー侵害,および,その懸念を大幅に低減することが可能となるが,監視カメラの設置者や映像の所有者がその映像をまったく閲覧できないというのは,所有者からみると監視カメラ設置による利益が非常に少ない.また,上述したコンセプトに基づく監視カメラシステムの普及の障害にもなりうる.そこで,画像を完全に復号化して所有者に閲覧させることはせずに,適度な強度のモザイクを画像に掛けて所有者等の閲覧権者に閲覧させることで,この問題を解決する.
【0007】
このように閲覧権者が複数人または複数グループ存在し,監視カメラの画像を暗号化して保存し必要があれば各閲覧権者に応じてモザイクの強度を変えた画像を提示することは,監視カメラのプライバシー侵害の問題を解決するとともに監視カメラの利便性も向上する.
【0008】
監視カメラに限らず画像の暗号化や復号化の方法には,これまでに特許文献1,特許文献2,特許文献3などに限らず多数の特許文献がある.特許文献1では画像全体の暗号化や画像の一部分の暗号化の方法が提案されている.特許文献2では印刷物やデジタル画像の暗号化や復号化の方法や多重に暗号化されている部分の復号化方法が提案されている.特許文献3ではセンサーネットワークにおけるセンサと画像処理装置の間での画像の暗号化方法が提案されている.画像の暗号化方法は数多く提案されているが,1つの画像から複数のモザイクを施した画像を作成して暗号化を行うといった方法は提案されていない.
【特許文献1】特許第4348381号
【特許文献2】特開2009−232333
【特許文献3】特許第4112509号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
このような背景から,本発明では監視カメラで撮影された映像を暗号化して保存し,暗号化された映像を閲覧するために復号するときに,閲覧者に応じて復号化された画像に対してモザイク化処理などの不鮮明化処理を施された画像を表示することで,プライバシーを守りつつ,画像を閲覧することを可能にする.
【課題を解決するための手段】
【0010】
監視カメラで撮影された映像を暗号化して保存し,暗号化された映像を閲覧するために復号するときに,閲覧者や復号キーに応じて復号化された画像に対してモザイク化処理などの不鮮明化処理を施し表示することで,上記の課題を解決する.
【0011】
閲覧権者ごとに強度が異なるモザイクが施された画像しか閲覧することができないようにするための方法としては,表示する画像のモザイク化処理などの不鮮明化処理の強度を閲覧者が利用する装置ごとに変えるという方法がある.つまり,監視カメラで撮影された映像を専用装置で暗号化し,それを復号化するためのキーを1つ用意する.暗号化された映像はこの復号キーを用いて復号する専用装置を利用して復号を行うが,この専用装置は予め定められた強度のモザイク化処理などの不鮮明化処理を施した画像を表示する.閲覧者がどこまで撮影された画像を閲覧してよいかにより利用可能な装置を配布することで,決められた強度のモザイク化処理などの不鮮明化処理が施された画像しか閲覧できなくなる.
【0012】
別の方法としては,閲覧者ごとに異なる画像閲覧用キーを配布し,復号化する装置は同一のものを利用するという方法がある.つまり,監視カメラで撮影された映像を専用装置で暗号化し,閲覧することができる者それぞれに異なる画像閲覧用キーを配布し,さらに復号化装置を配布する.閲覧者は暗号化された画像を復号化装置へ入力し,さらに配布された画像閲覧用キーも入力する.復号化装置は画像閲覧用キーに基づいて画像を復号化及び画像閲覧用キーの内容に基づいた強度でモザイク化処理などの不鮮明化処理を画像に施したものを表示する.
【0013】
この方法の実現方法としては2つある.1つは監視カメラで撮影された映像を暗号化して保存する.画像を閲覧するときには,復号化装置は画像閲覧用キーから復号化キーを取り出し,この復号化キーで画像を復号する.その後,画像閲覧用キーからモザイク化処理などの不鮮明化処理の強度を表すデータを取り出し,それに基づいてモザイクが施された画像を出力または表示する.
【0014】
もう1つの方法は,監視カメラで撮影された画像に様々な強度のモザイク化処理などの不鮮明化処理を施した画像を作成し,それらを各々暗号化し,暗号化された画像を繋げて1つの暗号化された画像データとして保存する.この画像データはモザイク化処理などの不鮮明化処理を施された画像の暗号化されたデータが複数をまとまったものとなっている.復号化する場合には,各閲覧者に配布された画像閲覧用キーを画像データに含まれているいずれかのモザイク化処理などの不鮮明化処理が施された画像を復号するためのキーとして利用することで,画像を得ることができる.
【0015】
不鮮明化処理としては,モザイク化処理のほか,さまざまな既存の手法を用いることができる.また,不鮮明化処理も,全画面に渡る処理から,場所によって強度を設定することも有効である.たとえば,敷地内はモザイク化の強度を低く設定し,敷地外はモザイク化の強度を高く設定するという使い方も有効である.さらに,動体検知を行い,動くものに対して特定の強度の不鮮明化処理を施すことも有効である.さらに,動体の識別を行い,男性,女性,自動車など,対象に応じたモザイク化処理を施すことも有効である.さらに,識別した対象を,抽象化して図形で置き換える処理も有効である.
【0016】
また,暗号化された画像には,各種センサ情報,識別解析の結果(男性,女性,大人,子供,自動車,自転車など)などの解析結果を組み込むことも有効である.センサ情報としては,ICタグの読み取り情報,音,気圧,気温,などが有用である.特に,音の録音は,有用な場合が多い.
【0017】
また,画像は,静止画でも,適当な時間間隔で区切った動画でも,どちらでもよい.マイクロフォンで拾った音を入れる場合は,画像の取得間隔,取得期間内のみとしてもよいし,互いにオーバーラップさせ,余分目に記録することが便利なこともある.
【0018】
専用の装置のみにより,暗号化画像ファイルの元ファイルに対する取り扱いができるようにすることは,改ざん防止,改ざんがないことの証明するうえで,有効である.また,その際,暗号化画像ファイルの元ファイルに対して,暗号化解除・不鮮明化処理の履歴を記録することも有効である.
【0019】
暗号キーを複数用意し,キーごとに,モザイク強度を変えた出力をする,画像復元装置は有効である.当該ソフト自体にも,暗号が仕込まれており,暗号化された画像は,この装置でしか復元できないということにしても,有効である.また,キーは何種類も用意し,たとえば,以下のように使う.装置は,皆が同じものを持ってもいいし,別々でも良い.
・ e自警カメラの所有者: 強いモザイクがかかった状態の画像のみ出力される.(モニターと同程度)
・ 工事業者,自治会など: 弱いモザイクがかかった状態の画像が出力される.
・ 警察: モザイクのない鮮明な画像が出力される.
【0020】
本発明は,e自警カメラ,e自警灯の運用において使用することで,特に,高い効果が発揮される.なお,e自警カメラ,e自警灯は,NPO法人e自警ネットワーク研究会らによって開発された製品である.

【0021】
閲覧権者に応じて画像に不鮮明化処理を施す場合や閲覧権者に応じて不鮮明化の程度を変えた画像を提示する場合のいずれにおいても閲覧権者に関するキーを必要とする。そのキーを画像とともに合わせて暗号化することで、画像自体に閲覧権者に応じたキー、つまり、閲覧権の強さに関連したキーを埋め込む方法をとることもできる。
1例をあげると、画像に複数の閲覧権者に関するキーを添付し、それを暗号化する。閲覧権者には復号化するためのキーとその閲覧権者の権限の強さに応じて閲覧権者に関するキーを与えることにより、閲覧権者により異なる閲覧権者に関するキーを有することとなる。暗号化された画像を閲覧するときには、閲覧権者は有している復号化するためのキーと閲覧権者に関するキーを画像閲覧用装置に入力する。画像閲覧用装置は復号化のキーにより暗号化された画像を復号化し、入力された閲覧権者に関するキーが画像に添付されている閲覧権者に関するキーのいずれかに一致するかどうかを調べ、一致したキーに応じて画像に対して不鮮明化処理を行った画像を閲覧権者に提示する。
【0022】
画像にキーを添付し暗号化する場合、キーの添付の仕方には様々な方法が考えられる。単純に画像のデータに閲覧権者に関するキーを添付する方法の他に、画像データの内部に挿入してしまう方法があり、画像データや閲覧権者に関するキーを推測されにくくする方法は数多く考えられる。

閲覧権者ごとに強度が異なる不鮮明化処理が施された画像しか閲覧することができないようにするための他の方法として画像に対して段階的に不鮮明化処理を行うという方法がある.閲覧権者が複数人の場合,その人数に応じて段階的に不鮮明化処理を施す.例えば,画像が640x480の画素からなり,閲覧権者がAとBの2名いるとし,Aが不鮮明化処理を施された画像しか見ることができず,Bが不鮮明化処理を施されていない画像を見ることができるとする.このとき,2つのキーKaとKbを用意し,1つのキーKbで640x480の画素の各10x10の画素に対して画素の構成要素,例えば各画素のRGBの値を入れ替えるなど可逆的な方法で不鮮明化処理を行う.次にもうひとつのキーKaにより,画像全体を対象として画素の構成要素を入れ替えるなどの可逆的な方法でさらに不鮮明化処理を行う.この2段階の不鮮明化処理により得られた画像に対して,必要があればさらに暗号化を行うなどにより保存すべき画像を得ることができる.
画像を閲覧する方法は次のようになる.画像が暗号化されている場合には,閲覧権者AとBは復号キーを持ち,さらにAはキーKa,BはキーKaとKbを持つものとする.Aは画像を暗号化されている場合には復号キーにより復号化し,さらにキーKaにより,入れ替えられた画素の構成要素を元に戻す.これによりAは各10x10の画素内で画素の構成要素が入れ替えられている画像を閲覧することができる.BはキーKbも持っているため,この画像の各10x10の画素内の画素の構成要素の入れ替えられた状態を元に戻すことができ,Bは不鮮明化処理がなされていない画像を見ることができる.
閲覧権者が3人以上いる場合には,最初に各10x10の画素,次に100x100の画素,最後に画素全体に対して画素の構成要素の入れ替えを行うことで閲覧権者が2人の場合と同じように閲覧権者がその閲覧権者に応じて不鮮明化処理の高度を変えた画像を閲覧することができる.
【発明の効果】
【0023】
防犯カメラに付属する「プライバシー侵害の危険性」という必要悪とみなされていた部分をキレイに取り去ることができるともに,適度なモザイク化処理などの不鮮明化処理を画像に施すことにより,監視カメラの利便性も維持することができる.テロの脅威が増すなか,必要悪として監視カメラが爆発的に普及しつつある昨今,世界中から注目される可能性が高い.
【0024】
プライバシーの侵害の危険性が小さくなり,利便性も確保できれば,監視カメラの普及の障害がなくなり,多くのところが防犯カメラの監視範囲となる.犯罪者は防犯カメラの監視外に逃れることはできなくなり,犯罪者逮捕への絶大な効果があり,結果として犯罪を減少させることができる.
【0025】
本発明のシステムにより,各世帯では自らを家だけではなく家の前の道など公的な場所も監視することが可能になり,各自の家のセキュリティを向上させることができる.さらに,適度なモザイク化処理などの不鮮明化処理を施すことにより,プライバシーを侵害することなく監視カメラの映像を防犯以外にも利用することが可能となる.さらに,公的な場所も各世帯の設置した防犯カメラにより監視できるため,警察・行政は,財政的負担なしに,町中の安全・安心を高めることが可能になる.本発明は,e自警カメラ(=暗号化によるプライバシー保護機能付防犯カメラシステム)が普及する上で,キーとなるアイデアである.
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
図1は,閲覧者に応じて配布する画像閲覧用装置を変えることで,モザイクの強度を変える場合の実現例である.監視カメラ1は画像を撮影しその画像を暗号化して保存する.暗号化された画像2を閲覧することができる人である閲覧権者には,それぞれ異なる強度のモザイクを施した画像を表示する画像閲覧用装置を配布する.図1の閲覧権者3,4,5はそれぞれ,復号化キー6,8,10を持ち,画像表示用装置7,9,11を持つ.復号化キー6,8,10は同一のものであるが,画像表示用装置7,9,11は表示する画像が異なる装置である.各閲覧権者は閲覧したい画像と各自が持つ復号キーを各自が持つ画像表示用装置に入力する.装置は画像を復号し,装置に予め定められているモザイクの強度を施した画像を出力する.
【0027】
図2は,画像それ自体を暗号化して保存し,閲覧者にモザイクの強度の異なる画像閲覧用キーを配布して,各閲覧者に画像の閲覧を行わせるシステムを示している.監視カメラ1は画像を撮影しその画像を暗号化して保存する.暗号化された画像2を閲覧することができる人である閲覧権者には,それぞれ異なる強度のモザイクを施した画像を表示するための画像閲覧用キーを配布する.図2の閲覧権者3,4,5はそれぞれ画像閲覧用キー6,8,10を持ち,画像表示用装置7,9,11を持つ.画像閲覧用キー6,8,10は暗号化された画像を復号化するキーとモザイクの強度を示す部分から構成され,閲覧権者3,4,5が見ることができる画像のモザイクの強度に応じて画像閲覧用キー6,8,10は異なる.画像表示用装置7,9,11は同一の装置である.各閲覧権者は閲覧したい画像が正しいものであれば,画像閲覧用装置は画像を復号し,画像閲覧用キーで指定されている強度のモザイクを施した画像を出力する.図2で用いている画像閲覧用キーは暗号化された画像を復号化するための復号キーとモザイクの強度を表す部分からなる.図3に示すように復号キーとモザイクの強度表す部分を合わせることで画像閲覧用キーを作ることができる.復号キーとモザイクの強度を表すデータを簡単に分離できてしまうと,復号キーを用いて本来は強いモザイクでしか閲覧できない者がモザイクの強度を表すデータをより弱いモザイクに変えて画像閲覧用キーを作り,弱いモザイクが掛かった画像も閲覧できてしまう可能性がある.このため,画像閲覧用キーの構成を秘密にすること,暗号化や復号化の方法を秘密にすること,暗号化や復号化の装置の内部を秘密にすること,モザイクの強度を示すデータを非常に大きなビットにより表現することにより復号化キーやモザイクの強度を示すデータの推測を困難にする.
【0028】
これまで示してきた発明を実施するための形態は,閲覧権者が異なる復号化装置の配布を受け共通の復号キーを用いる形態と,閲覧権者が異なる画像閲覧用キーの配布を受け共通の装置を用いる形態である.これらの2つを合わせた形態もある.つまり,閲覧権者それぞれに異なる復号化装置と異なる画像閲覧用キーを配布し,各閲覧権者に暗号化された画像を渡し,それぞれが持つ復号化装置と画像閲覧用キーを用いて画像を復号化する.配布された画像閲覧キーや復号化装置とは異なるものを利用すると復号化できない.
【0029】
図4は,監視カメラに撮影された画像それ自体に強度を変えてモザイクを施した画像をつくり,各モザイク画像を異なるキーで暗号化したデータを作成し合わせて1つのデータとする方法を示している.図4では,監視カメラ1で撮影された画像2に対してモザイクの強度に応じて,非常に強いモザイクが施された画像3,強いモザイクが施された画像4,弱いモザイクが施された画像5,モザイクがない画像6の4つの画像を作り出す.これら4つの画像をそれぞれ異なるキーで暗号化し,暗号化された非常に強いモザイクが施された画像7,暗号化された強いモザイクが施された画像8,暗号化された弱いモザイクが施された画像9,暗号化されたモザイクがない画像10の4つの画像を作り出し,これらの4つの暗号化された画像を合わせて保存データ12を作り出す.
【0030】
図5は,図4の方法で保存されたデータの復号化方法を示している.復号化装置3は保存データ1とA,B,C,Dのいずれかの復号化キー2を入力として受け取る.正しい復号化キーが入力されない場合にはエラーとなる.復号化装置3は復号化キー2がA,B,C,Dのいずれかであるかに応じて,保存データ1から該当する暗号化されたデータを取り出し,復号化キー2により画像を復号化して出力する.
【0031】
図4と図5で示した方法では,複数の暗号化された画像を連結させたデータから復号化可能な画像を出力するが,その方法の1つを図6と図7により説明する.図6は撮影された画像から保存データを生成する方法を示している.監視カメラで撮影された画像1に不鮮明化処理により得られる不鮮明化処理がされた画像2からメッセージダイジェスト3を得る.不鮮明化処理がされた画像2とメッセージダイジェスト3をあわせたもの4に対して暗号化を行い,暗号化されたデータ6を得る.不鮮明化処理の強度を変えて同様の処理を行うことで暗号化されたデータ5,7,8を生成し,暗号化されたデータ6とともに合わせることで保存データ9を得る.図7は保存データから画像を取り出す方法を示している.取り出す場合には,保存データ1と複合化キー2が復号化装置3に与えられる.保存データ1は複数の暗号化されたデータから構成されており,図7では4つの暗号化されたデータから構成されている.復号化装置3は保存データ1に含まれる各暗号化されたデータに対して復号化キー2を適用し,復号化されたデータ4,5,6,7を得る.復号化されたデータは不鮮明化処理がされた画像とメッセージダイジェストから構成される.復号化されたデータ5は不鮮明化処理がされた画像8とメッセージダイジェスト9からなる.不鮮明化処理がされた画像8からメッセージダイジェスト10を生成し,メッセージダイジェスト9と比較し,メッセージダイジェスト9と10が一致すれば,不鮮明化処理がされた画像8を復号化装置3は出力する.同様の処理を復号化されたデータ4,6,7に対して復号化装置3は行い,画像の取り出しを行う.
図8は画像に閲覧権者に対応したキーを画像データに加え,それを暗号化して保存データとする処理の流れを示している.カメラで撮影された画像に閲覧権者に応じたキーを加え,そのデータを暗号化する.各閲覧権者は復号化キーと閲覧権者のキーを持つ.閲覧権者が画像を閲覧する場合には,画像閲覧装置に閲覧権者は復号化キーと閲覧権者のキーを入力する.画像閲覧装置は,復号キーによりデータを復号化し,入力された閲覧権者のキーとデータに含まれている閲覧権者のキーの中で一致するものを探す.一致するものがあれば,その一致した閲覧権者のキーに決められている不鮮明化処理を施した画像を表示する.一致するものがなければ何も表示しないか,あるいは,予め設定された強度で不鮮明化した画像の全て,または,一部を出力する.
【0032】
図9は閲覧権者に応じて,画像を画素よりも荒い区分で分割しその区分内で画素を暗号キーに基づいて入れ替えることを特徴とする画像の暗号化方法を示している.図2では閲覧権者が2名いる場合を説明している.撮影された画像を10x10の画素単位に分割し,100個の画素のRGBの各要素,合計300個の値をキーKbに基づいて置換する.さらに,画像全体のRGBの各要素をキーKaに基づいて置換する.この結果を暗号化して保存データとする.閲覧権者は復号化キーを持ち,1人の閲覧権者はキーKaを持ち,もう1人の閲覧権者はキーKaとKbの両方を持つ.
画像を閲覧する際には,閲覧権者は復号化キーと所有するキーを画像閲覧装置に入力し,画像閲覧装置は復号化キーで画像を復号化した後に,入力されたキーに基づいて,画像の構成要素の置換を元に戻し,画像を表示する.入力されたキーがKaだけであれば各10x10の画像内部の置換を元に戻すことはできないので,各10x10の画像の構成要素が置換されたままの画像が表示されることになる.入力されたキーがKaとKbであるときには,各10x10の画像内の置換も元に戻すことが可能となるため,撮影された画像がそのまま表示されることとなる.
入力されたキーがKaだけの場合,得られた画像に対し,各10x10画素に平均化処理(モザイク化処理)を施したものは,もと画像に対して,各10x10画素に平均化処理(モザイク化処理)を施したものと一致する.これは,各10x10画素に画素の入替がなされているだけであり,それらの平均値は変化しないからである.
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明は,住宅街,公園などの公的な場所などの監視カメラシステムとして好適である.
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】閲覧権者に異なる復号化装置を配布し,復号キーと暗号化された画像を入力することで各装置が強度の異なるモザイクを施した画像を表示する方法の説明図である.
【図2】閲覧権者に復号化装置と閲覧権者ごとに異なる画像閲覧用キーを配布し,復号キーと暗号化された画像を入力することで装置が強度の異なるモザイクを施した画像を表示する方法の説明図である.
【図3】画像閲覧用キーの構成の説明図である.
【図4】監視カメラで撮影された画像から異なる強度のモザイクを施された画像を複数個作成し,それらを異なる暗号キーで暗号化し結合された画像データの構成方法の説明図である.
【図5】図4で生成された画像データから,復号化して画像を取り出す方法の説明図である.
【図6】監視カメラで撮影された画像から異なる強度のモザイクを施された画像を複数個作成し,それぞれを異なる暗号化キーで暗号化し結合することで画像データを構成する場合にメッセージダイジェストを用いる場合の暗号化の方法の説明図である.
【図7】監視カメラで撮影された画像から異なる強度のモザイクを施された画像を複数個作成し,それぞれを異なる暗号化キーで暗号化し結合することで画像データを構成する場合にメッセージダイジェストを用いる場合の復号化の方法の説明図である.
【図8】閲覧権者に対応したキーを画像データに加え,それを暗号化して保存する方法の説明図である.
【図9】画像を分割し,各分割された部分ごとに不鮮明化処理を行い,さらに画像全体に対して不鮮明化処理を行うことで保存データを生成する方法の説明図である.

【特許請求の範囲】
【請求項1】
暗号化された画像を解除キーにより復元する際,予め定められたルールにしたがい,不鮮明化処理を施した画像を出力することを特徴とする,画像暗号化及び復号化方法.
【請求項2】
暗号化された画像を解除キーにより復元するための装置が複数個あり,各装置が強度の異なる不鮮明化処理を施した画像を出力することを特徴とする請求項1の画像暗号化及び復号化方法.
【請求項3】
暗号化された画像を解除キーにより復元した後に,閲覧するために別のキーを必要とし,そのキーに応じて強度で不鮮明化処理を施して出力することを特徴とする請求項1の画像暗号化及び復号化方法.
【請求項4】
暗号化された画像を復号することが可能な復号キーが複数存在し,その復号化キーに応じて不鮮明化の強度が異なる画像が復元されることを特徴とする請求項1の画像暗号化および復号化方法.
【請求項5】
画像の場所に応じて,不鮮明化の強度を調節することを特徴とする請求項1,2,3,または,4に記載の画像暗号化および復号化方法.
【請求項6】
不鮮明化の手法として,モザイク化を用いることを特徴とする請求項1,2,3,4,または,5に記載の画像暗号化および復号化方法.
【請求項7】
暗号化する画像に、閲覧権強弱に関連したキーを埋め込むことを特徴とする請求項1,3,4,5,6の画像暗号化及び復号化方法.
【請求項8】
画像を画素よりも荒い区分で分割しその区分内で画素を暗号キーに基づいて入れ替えることにより不鮮明化や暗号化を行うことを特徴とする請求項1,2,3,4,5,6,7の画像暗号化及び復号化方法.

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−151770(P2011−151770A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−167800(P2010−167800)
【出願日】平成22年7月27日(2010.7.27)
【出願人】(709003492)特定非営利活動法人e自警ネットワーク研究会 (6)
【出願人】(507266037)イージケイシステム株式会社 (5)
【出願人】(509295446)株式会社 トステック (3)
【Fターム(参考)】