説明

暗号記録媒体

【課題】 視覚復号型秘密分散法を用いながらも、2つの暗号画像が同一の基材上に形成され、元の画像を復元する際には2つの暗号画像を厳密に重ね合わせるような面倒な操作を必要としない暗号記録媒体を提供することを課題とする。
【解決手段】 視覚復号型秘密分散法による暗号画像の画素をさらに分割し、かつ同暗号画像の情報セル61をそれぞれ異なる格子角度を持つ回折格子a67および回折格子b68で形成する。さらに、余白セル64に絵柄情報を表現するように回折格子を配置する。これにより、通常の観察状態では絵柄情報のみが視認されるが、前記2種の回折格子に適合した照射角を持つ2種の光源が照射された際には、2つの暗号画像が同時に視認されるため隠蔽された画像が復号され判読可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通常の状態では記録された画像が目視認識できない状態に隠蔽され、復元時には隠蔽された形状情報が、特定の条件の光源の下で可視化され、元の形状情報の判読が可能となる暗号記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
回折格子で構成したホログラムシールと呼ばれる偽造防止媒体が、クレジットカード、預金通帳、金券などの偽造を防止するための手段として広く利用されている。
ホログラムシールを作成するには、例えば、記録したい画像を回折格子パターンの集合で表現し、この回折格子パターンは電子線描画を用いた精密加工技術によって形成する、などの方法が知られている。下記の特許文献1には、絵柄の個々の画素の内部に、線幅、格子ピッチ、格子角度の3つパラメータを適宜変化させた回折格子を形成することにより、所望の絵柄のモチーフを表現した回折格子記録媒体を作成する方法が開示されている。また、特許文献2には、階調をもった二次元カラー画像を表現した回折格子記録媒体を作成する方法が開示されている。
【0003】
このように、ホログラムシールは、微細加工を要することから偽造が困難であり、あわせて、回折格子の光学特性により輝度や色彩に独特の視覚効果が得られことから意匠性にも優れるため、偽造防止と装飾性の両面から、特に高額商品に好んで採用されるに至っている。
ところが、ホログラムシール作成技術の知見が広まるにつれ、偽造や複製による模造品も出回り、現在では、用途によっては、単なるホログラムシールでは十分な偽造防止効果が得られなくなる可能性も出てきており、ホログラムの画像にさらに隠し画像等を組み合わせてより高度な偽造防止効果を狙う、などの試みも見られる。
【0004】
一方、通常状態では情報を隠蔽された状態で記録し、必要となった時点で利用したい、といったニーズは古くからあり、例えば、隠蔽シールや圧着ハガキなどは身近な例である。これらは、ワンタイム用途(使い捨て)であり、一過性の利用には好適であるが、これに対し、非利用時には高度な機密性を保ちながら、利用時には簡便な操作での復元し、かつ、繰り返し利用可能という相反する要求を満たすのは甚だ困難である。
【0005】
上記のような要求に対する技術の一つとして視覚復号型秘密分散法と呼ばれる視覚復号型暗号技術がある。これは元となる画像情報を、不規則なパターンで構成される複数の画像(シェア画像と呼ぶ)に分散させることによって目視認識できない状態の画像に加工し、それらのシェア画像を重ね合わせることによって元の画像情報が視認可能な状態に復元される技術である。
【0006】
例えば、特許文献3は、視覚復号型暗号技術の代表例であって、視覚復号型秘密分散法を用いて、隠蔽層等の手段によらずに情報を隠蔽する記録媒体の構成および製作に関する技術を開示している。
なお、視覚復号型秘密分散法やシェア画像の生成手段等については種々の方式のものが提案されているが、特に先駆的論文である非特許文献1に原理や生成法が詳しく述べられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平6−337622号公報
【特許文献2】特開平8−021909号公報
【特許文献3】特開2001−118122号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】M.Naor and A.Shamir,"Visual Cryptography", Proc. of Eurocrypt'94 May 1994
【0009】
上記のように、視覚復号型秘密分散法は、目視による手操作により復元が可能となる簡便さが利点であるが、一方で、複数のシェア画像を重ねて元の画像を復元することから、シェア画像の数の媒体を必要し、しかも元の画像を復元するには、これら複数の媒体を精密に重ね合わせる操作が必要となる。
【0010】
図1は、視覚復号型秘密分散法を用いて暗号化および復元する過程を表わす図であるが、例えば、図1のように2つのシェア画像から復元画像13の「T」を得ようとする場合、必要となる媒体の数は2となり複数の媒体を使用することになる。しかも図2に示すように、重ね合わせて目視することから、両媒体の重なり合う面は密着するよう平滑にする必要があり、かつ、少なくとも一方の媒体は透明媒体a21のように透明なシート状であることが必須となる。また、2つのシェア画像を重ねるにあたっては、重なりの僅かのずれで白の部分が現われ背景との濃淡差が小さくなるため、復元すべき画像と背景の判別が難しくなるという問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
そこで本発明は、視覚復号型秘密分散法を用いながらも、2つのシェア画像を同一の媒体上に形成でき、元の画像を復元する際には2つのシェア画像を厳密に重ね合わせるような面倒な操作を必要せず、同時に意匠性をも具備するような暗号記録媒体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決する本発明は、
隠蔽画像となる第1の絵柄および背景画像となる第2の絵柄のうち、
前記第1の絵柄を元として視覚復号型秘密分散法により暗号化した暗号画像から生成する第1の暗号パターンおよび第2の暗号パターンが基材上に重畳して形成され、
前記第1の暗号パターンと前記第2の暗号パターンは、前記暗号画像を構成する各画素を分割した小領域に配列された情報セルおよび余白セルの集合からなり、
前記第1の暗号パターンの画素を構成する第1の情報セルと、前記第2の暗号パターンの画素を構成する第2の情報セルとが、互いに重ならないように配列された暗号記録媒体において、
前記第1の情報セルおよび前記第2の情報セルは、それぞれ異なる格子角度を持つ回折格子により形成され、
前記余白セルは、線幅、格子ピッチ、格子角度の少なくとも1つを変化させることにより第2の絵柄を表わす回折格子により形成されることを特徴とする。
【0013】
なお、前記余白セルは、隣接する前記情報セルと、線幅、格子ピッチ、格子角度の少なくとも一つが異なる回折格子により形成されるとさらに好適である。
また、前記第1の情報セルを形成する回折格子の格子角度と、前記第2の情報セルを形成する回折格子の格子角度は、互いに直交することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明による暗号記録媒体によれば、2つのシェア画像を同一の媒体上に形成できるため媒体のコスト低減が図れるとともに、シェア画像同士を重ね合わるような操作の必要もなくなる。このため透明媒体を必要とせず、さらに平滑なシート状である必要もないことから、媒体の素材や形状の制約がなくなる。
また、本発明による暗号記録媒体は、通常の観察状態ではホログラムによる絵柄の装飾効果を呈することから、隠蔽画像の存在を意識させることなく、商品等の意匠性向上に資することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】視覚復号型秘密分散法の概念図
【図2】視覚復号型秘密分散法の復元の様子を示す図
【図3】暗号パターンの生成過程を示す図
【図4】復元画像を示す図
【図5】新暗号パターンの生成過程を示す図
【図6】観察状態を示す図
【図7】新暗号パターンによる復元画像の詳細を示す図
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図3〜7を用いて、本発明の暗号記録媒体の詳細を説明する。
図3は、本発明の暗号記録媒体に用いる暗号パターンの生成過程を、従来の視覚復号型秘密分散法による暗号パターンの生成過程と比較しながら示した模式図である。図3(A)は従来の視覚復号型秘密分散法による暗号パターンの生成過程について、また図3(B)は本発明による暗号パターンの生成過程について、それぞれのパターンを形成する画素に着目して説明したものである。なお、以下の説明では従来の視覚復号型秘密分散法による暗号パターンと本発明による暗号パターンを区別するために、前者をシェアパターン、後者を新暗号パターンと呼ぶこととする。
【0017】
まず、従来の視覚復号型秘密分散法によるシェアパターンについて説明する。
従来の視覚復号型秘密分散法によるシェアパターンは、図3(A)に示すように、元の画像を構成する画素(元画像の画素30)を整数比(図例では2×2)の分割領域35に分割し、各分割領域35に白または黒を割り当てることにより生成される。
このように生成されたシェアパターンがシェア画像Aおよびシェア画像Bを構成する画素である。すなわち、シェアパターンa32aおよびシェアパターンa33aのパターンがシェア画像Aの画素となり、シェアパターンb32bおよびシェアパターンb33bのパターンがシェア画像Bの画素となる。そしてシェア画像Aとシェア画像Bとを重ね合わせ元の画像を復元する際は、シェアパターンa32aとシェアパターンb32bのような2つのパターンの重ね合わせが復元画素32のような「白」を表わす画素となり、シェアパターンa33aとシェアパターンb33bの2つのパターンの重ね合わせが復元画素33のような「黒」を表わす画素となる。
【0018】
続いて、本発明の暗号記録媒体における新暗号パターンについて説明する。
本発明の新暗号パターンの生成にあたっては、図3(B)に示すように、まず、図3(A)に示した2×2の分割領域35をさらに整数比で分割する新分割パターン41(図例では6×6)を規定する。このように分割された小領域(これをセルと呼ぶ)に白または黒を割り当てることによりそれぞれ新暗号パターンa(a系列のパターン)および新暗号パターンb(b系列のパターン)を生成する。
【0019】
なお、これら2種の新暗号パターンを生成する過程は、後に図5を用いて詳述する。
また、図3(B)では、理解のために、a系列およびb系列のパターンの黒を割り当てたセルにそれぞれ異なるハッチングを施し、により新暗号パターンaと新暗号パターンbを区別して描いている。
【0020】
このように生成された2種の新暗号パターンの組み合せにより、新復元パターン42または新復元パターン43のような2種のパターンが形成される。例えば、新暗号パターンa42aと新暗号パターンb42bのような2つのパターンが同時に観察されると新暗号パターン42のように「集中した」セルの分布からなる画素(「粗」の画素と呼ぶ)となり、同様に、新暗号パターンa43aと新暗号パターンb43bの2つのパターンが同時に観察されると新暗号パターン43のような「分散した」セルの分布からなる画素(「密」の画素と呼ぶ)となる。
【0021】
図4は、このように生成された新暗号パターンによる復元画像を、従来の視覚復号型秘密分散法による復元画像と比較しながら示した図であり、図4(A)は従来の視覚復号型秘密分散法による復元画像を、また、図4(B)は本発明の暗号パターンによる復元画像を表わす。
【0022】
図4(A)および(B)は、何れも、2つのシェア画像の合成により「secret」の文字部が背景部から区別し識別できる様子を表わす。
従来の視覚復号型秘密分散法による復元画像を表わす図4(A)は、2つのシェア画像を重ね合わせた際に現れる画像を観察し、「白」を表わす不規則パターンと「黒」を表わす塗りつぶしパターンの濃度差により文字部36と背景部37を区別する。
【0023】
これに対し、本発明の暗号パターンによる復元画像では、図4(B)に示すように、文字部46と背景部47の画素パターンの粗密の差によって判別する。すなわち、図3(B)の新復元パターン42が集まった状態は「粗」の画素の分布として視認され、また、新復元パターン43の集まりは「密」の画素の分布として視認される。
【0024】
<新暗号パターンの生成>
図5は、元となる画素の分割により本発明に用いる新暗号パターンのセルを生成する様子を表わす。
図5(イ)は、本発明における暗号パターンの生成に用いるテンプレートを説明する図であり、図5(ロ)は、同テンプレートにより新暗号パターンを生成する過程を示す図である。
図5(イ)のテンプレート50は、新分割パターン41に千鳥格子状に「1」または「2」を割り振ったものであり、この「1」「2」のテンプレートを作用させることにより、元画像の画素40を、セルの重複なく2つの新暗号パターンに分割することができる。
【0025】
前記新暗号パターンのセルを生成する手順を以下に詳説する。
図5(ロ)に示すように、例えば、従来の視覚復号型秘密分散法によるシェアパターン32aに、テンプレート50の「1」(すなわちテンプレート51「1」)を作用させ、シェアパターンa32aのうち「1」に対応するセルを有功とするように操作すると、新暗号パターンa42aのようなセルのパターンが得られる。同様に、シェアパターンb32bにテンプレート52「2」を作用させることにより新暗号パターンb42bが得られ、また、シェアパターンb33bにテンプレート52「2」を作用させることにより新暗号パターンb43bが得られる。
【0026】
このように、従来の視覚復号型秘密分散法のおけるシェア画像Aおよびシェア画像Bの各画素にテンプレート50の「1」および「2」を作用させることにより、本発明の第1および第2の暗号パターンにあたる2種の暗号パターンを生成することができる。
【0027】
復元画像を構成する画素となる新復元パターン42および新復元パターン43は、新暗号パターンaと新暗号パターンbとの重畳(a系列とb系列の組み合わせ)により現われる。
すなわち、図5(ロ)に示すように、新暗号パターンa42aと新暗号パターンb42bとの重畳で新復元パターン42が現われ、同様に、新暗号パターンa42aと新暗号パターンb43bとの重畳で新復元パターン43が現われる。
このように、新復元パターン42と新復元パターン43が、それぞれ図4(B)における文字部46と背景部47を形成することになり、「粗」のパターンと「密」のパターンの視覚効果の違いにより復元情報が判読可能となる。
なお、図5(ロ)では、理解のために2種のハッチングにより新暗号パターンa(a系列のパターン)と新暗号パターンb(b系列のパターン)を区別している。
【0028】
なお、本発明の暗号記録媒体では、上記a系列のパターンとb系列のパターンを、それぞれ格子角度の異なる反射型の回折格子で構成している。すなわち、後述の図6に示すように、図3(B)におけるa系列のパターンに回折格子a67を配置し、b系列のパターンに回折格子b68を配置している。これにより、特定の照射角度を持つ光源を同時に照射するときのみ復元画像が出現し、通常の観察条件では復元画像が不可視(判読不可能)の状態とすることができる。また、単一の基材上に2つのシェア画像(暗号パターン)を重畳して形成することが可能となる。
【0029】
さらに図6に示す余白セル64には、線幅、格子ピッチ、格子角度の少なくとも1つを変化させることにより第2の絵柄を表わす回折格子を配置する構成としている。
【0030】
<本発明の暗号記録媒体の観察状態>
図6は、観察状態を示した図であり、図6(イ)は通常の観察条件である画像情報が隠蔽された状態を表わし、図6(ロ)は所定の光源の照射により暗号画像が復号され復元情報が現われた状態を表わす。
なお、図に示す情報セル61とは、図3(B)の説明において黒を割り当てたセルであり、情報セル61には、それぞれ異なる格子角度を持つ回折格子a62または回折格子b63が配置されている。
【0031】
本発明の暗号記録媒体1の見え方を図6(イ)および図6(ロ)で説明すると、図6(イ)の通常の観察状態では、余白セル64に配置した回折格子により背景部47が現われる。一方、情報セル61の回折格子a67と回折格子a68は、61観察像αおよび62観察像βのように、個々に不規則に光を反射するため、特定の画像を形成しない。
これに対し、図6(ロ)のように回折格子a67および回折格子b68に対して、それぞれ所定の照射角度を持った2つの光源の下では、回折格子a67と回折格子a68とが同時に強い強度で視認されるため、観察像Σ60のように「粗」と「密」のパターンが現われ、文字部46と背景部47の判別が可能となる。すなわち「ABC」の文字列が判読できるようになる。特に、図6(ロ)の背景部47では、余白セル64が現わす背景画像の加え、回折格子a67と回折格子a68とが離散的に分布しており、文字部と背景部の違いが一層際立つこととなる。
【0032】
なお、回折格子は入射光に対する回折と干渉の作用により入射光の角度と視線角度に角度依存性がある。すなわち光源位置と視点位置により視覚上の光強度に強弱が生じる。上記所定の光源とは、セルからの光強度が最も強く視認される照射角度を持った光源を意味する。
例えば、図6(ロ)において、光源a65と光源a66に白色光源を用い、光源a65と回折格子a67のなす角度、および光源b66と回折格子b68のなす角度をそれぞれ直交関係となるよう配置すると、新暗号パターンaと新暗号パターンbが同時に強い光強度で視認され、文字部46と背景部47が明瞭に判別できる。
【0033】
さらに、余白セル64の回折格子が、隣接する情報セル61の回折格子と、線幅、格子ピッチ、格子角度の少なくとも一つが異なるようにすると、情報セル61と余白セル64とで、等しい回折格子が連続するようなことがなくなるため、文字部46と背景部47の区別がより明確になる。
また、回折格子a67の回折格子の格子角度を角度a、回折格子b68の回折格子の格子角度を角度bとすると、角度aと角度bの差が大きいほど復元画像が鮮明になるため、角度aと角度bは直交関係にあることが望ましい。
【0034】
<復元画像の詳細>
図7は、本発明の暗号記録媒体の暗号パターンによる復元画像の詳細を表わす図である。
復元画像70は、第1の暗号パターン71と第2の暗号パターン72とが、ともに視認された状態にあることを示しており、この結果、文字部46と背景部47が識別でき、「s」の文字が判読できる。これに対し、第1の暗号パターン71、第2の暗号パターン72の何れかが単独で見える状態では、それぞれの不規則パターンが現われるのみで文字部46と背景部47の判別はできない。
境界拡大像76は、文字部46と背景部47の境界部の様子を拡大して示したものであり、これにより、背景部と文字部とでは、セルの分布に「粗」「密」の違いがあることがわかる。
【0035】
なお、図7では、第1の暗号パターン71および第2の暗号パターン72は、説明のため分離して表現されているが、実際は、同一基材上に重畳して形成されている。また、拡大像75は、暗号パターンのセルの態様を拡大して示したものである。
【0036】
上記のように、同一基材上に形成した第1の暗号パターン71と第2の暗号パターン72から復元画像70を得るために、本発明の暗号記録媒体では両パターンをそれぞれ異なる格子角度を持ったセルにより形成する。
【0037】
以上説明したように、本発明の暗号記録媒体によれば、2つの暗号パターンを同一の基材上に形成できるため、復元画像を得る際に、従来のように秘密画像同士の重ね合わせの操作を必要としない。また、透明媒体を必要とせず、しかも1つの媒体となるため媒体のコスト低減が図れるとともに、密着させる必要がないため表面が平滑でなくてもよい。シート状である必要もないことから、基材の素材や大きさの制約がなくなる。
【0038】
さらに、本発明の暗号記録媒体は、余白セルの回折格子を用いて絵柄情報を表現することができるため、単なる暗号記録媒体ではなく、意匠性や装飾性を併せ持つ暗号記録媒体とすることができる。
【0039】
本発明の暗号記録媒体を作成するには、反射型の回折格子により第1の暗号パターンおよび第2の暗号パターンを基材の上に形成すればよい。このような回折格子を形成するには、よく知られた方法としては、例えば、樹脂基材の表面に透明紫外線硬化性樹脂組成物を3μm程度塗布し、回折格子の複製用型の型面を接触させたまま紫外線を照射して、透明紫外線硬化性樹脂組成物を硬化させることにより回折格子を型取りし、その後、回折格子が形成された面にアルミ等の金属を真空蒸着して厚みが100nm程度の反射性層とする、などがある。
【0040】
また、基材としては紙、樹脂など種々のものが利用できるが、例えばカード用途であれば、ポリ塩化ビニール樹脂、非結晶性ポリエチレンテレフタレート(PET−G)樹脂、ポリカーボネ−ト樹脂、ポリ乳酸樹脂などがある。また、基材は、透明であっても、不透明であってもよい。
【符号の説明】
【0041】
1 暗号記録媒体
10 元画像
11 シェア画像a
12 シェア画像b
13 復元画像
21 透明媒体a
22 媒体b
30 元画像の画素
31 分割パターン
32 シェアパターン
33 シェアパターン
40 元画像の画素
41 新分割パターン
42 新復元パターン
43 新復元パターン
45 セル
46 文字部
47 背景部
50 テンプレート
61 情報セル
67 回折格子a
68 回折格子b
70 復元画像
71 第1の暗号パターン
72 第2の暗号パターン




【特許請求の範囲】
【請求項1】
隠蔽画像となる第1の絵柄および背景画像となる第2の絵柄のうち、
前記第1の絵柄を元として視覚復号型秘密分散法により暗号化した暗号画像から生成する第1および第2の暗号パターンが基材上に重畳して形成され、
前記第1の暗号パターンと前記第2の暗号パターンは、前記暗号画像を構成する各画素を分割した小領域に配列された情報セルおよび余白セルの集合からなり、
前記第1の暗号パターンの画素を構成する第1の情報セルと、前記第2の暗号パターンの画素を構成する第2の情報セルとが、互いに重ならないように配列された暗号記録媒体であって、
前記第1の情報セルおよび前記第2の情報セルは、それぞれ異なる格子角度を持つ回折格子により形成され、
前記余白セルは、線幅、格子ピッチ、格子角度の少なくとも1つを変化させることにより第2の絵柄を表わす回折格子により形成されることを特徴とする暗号記録媒体。
【請求項2】
前記余白セルは、隣接する前記情報セルと、線幅、格子ピッチ、格子角度の少なくとも一つが異なる回折格子により形成されることを特徴とする請求項1に記載の暗号記録媒体。
【請求項3】
前記第1の情報セルを形成する回折格子の格子角度と、前記第2の情報セルを形成する回折格子の格子角度は、互いに直交することを特徴とする請求項1または2に記載の暗号記録媒体。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−170029(P2011−170029A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−32419(P2010−32419)
【出願日】平成22年2月17日(2010.2.17)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】