説明

暗渠の可撓性継手の補修交換方法およびその補修交換構造

【課題】 継手周辺の水密工事や溶接作業などが不要で、短時間に可撓性継手を補修交換することができる暗渠の可撓性継手の補修交換方法およびその補修交換構造を提供すること。
【解決手段】 暗渠の変位後に可撓性継手を交換する方法では、既設の可撓性継手20を撤去した後、変位後の暗渠に対して新設する可撓性継手30を取り付ける基準面31を設定し、この基準面31に応じて取付枠体14,14の既設の取付用ボルト15に連結用ボルト32を連結した後、これら連結用ボルト32を介して基準面31に応じた嵩上げ部材34を装着固定し、これら嵩上げ部材34に新設の可撓性継手30を組み付けて保護部材38,39で保護する。
これにより、新たな取付枠体のための溶接作業や現場での仮締切り後の暗渠自体の交換を不要にでき、短時間に新たな可撓性継手30に補修交換して復旧できるようになる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、暗渠の可撓性継手の補修交換方法およびその補修交換構造に関し、洞道、上下水道、地下鉄、共同溝等の大深度の暗渠の耐震性や止水性のための可撓性継手を地震などで変位が生じた後の補修交換に適用して好適なものである。
【背景技術】
【0002】
従来の暗渠の継手のひとつとして、互いに対向する一対の筒状の暗渠の対向端部に筒状の枠体をそれぞれ碇着させるとともに、ゴム・合成樹脂等の弾性体からなる短筒状に形成した可撓性継手の両端部を、前記枠体の内周面に水密的に取り付けて地盤の不等沈下や地震などに伴なう暗渠の相対変位を吸収させると共に、これらの暗渠間の止水を行なうようにしたものがある。
【0003】
このような暗渠の可撓性継手の一例として、特許文献1に開示されたものがあり、図12に外観斜視状態および底部の継手断面状態を示すように、1対の相対向させた暗渠a,aの端部の内周面に形成された段差部b,bに沿ってフランジh,hおよび端面部i,iを備えた取付枠体g,gをそれぞれ碇着させ、これらの取付枠体g,gの段差部b,bに沿うフランジh,hに跨って、ゴム・合成樹脂等の弾性材からなる短筒形に形成され、かつ中央に内周側に膨出した環状のくびれ部を有し、さらに、このくびれ部の両側から延びるフランジ部d,dを有する可撓性継手eをこれらフランジ部d,dにおいて固着し、前記段差部b,bと前記可撓性継手eとの間に形成された空間部に、この可撓性継手eの軸方向への膨出変形を防止する保護材を配設して構成してある。なお、kは継手の外周側に介在された目地材である。
【0004】
このような可撓性継手eで連結された暗渠a,aが地震などで変位を生じてしまうと、そのままの状態で使用することは好ましくなく、可撓性継手を次ぎの地震などに備えて常態に戻しておく必要がある。
【0005】
このような可撓性継手を補修交換する方法としては、相対向する一対の暗渠のうち、一方の暗渠に新たに用意した取付枠体を元の取付枠体に溶接することで、変位をなくし、この新たな取付枠体と他方の元の取付枠体との間に新たな可撓性継手を取り付けることが考えられる。
【0006】
また、継手部周辺を仮締切りした後、一方の暗渠を撤去し、他方の暗渠に合せて新たな暗渠を設置し、この新たな暗渠と他方の元の暗渠との間に新たな可撓性継手を設置することが考えられる。
【特許文献1】特公昭63−58982号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、一方の暗渠の取付枠体に新たな取付枠体を溶接する場合には、予め工場で新たな取付枠体を製造し、現場に運搬した後、現場での溶接作業が必要となり、可撓性継手の補修交換完了までにかなりの工期を要し、短時間に補修交換を行うことができない場合や溶接作業が困難な場合があるという問題がある。
【0008】
また、一方の暗渠ごと交換する場合には、継手周辺の仮締切りなどの水密作業が必要となり、新たな暗渠を設置した後に新たな可撓性継手を施工しなければならず、一層工期が長くなるという問題がある。
【0009】
この発明は、上記従来技術の問題点に鑑みてなされたもので、継手周辺の水密工事や溶接作業などが不要で、短時間に可撓性継手を補修交換することができる暗渠の可撓性継手の補修交換方法およびその補修交換構造を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
かかる従来技術の課題を解決するこの発明の請求項1記載の暗渠の可撓性継手の補修交換方法は、一対の相対向する筒状の暗渠の端部にそれぞれ設けた取付枠体をまたいで取り付けた可撓性継手をこれら暗渠の変位後に交換するに際し、前記一対の暗渠の前記取付枠体に取付用ボルトで取り付けられている既設の可撓性継手を撤去した後、前記変位後の一対の暗渠に対して新設する可撓性継手を取り付ける基準面を設定し、この基準面に応じて前記取付枠体の前記既設の取付用ボルトに連結用ボルトを連結した後、これら連結用ボルトを介して前記基準面に応じた嵩上げ部材を装着固定し、これら嵩上げ部材に新設する可撓性継手を組み付けるようにしたことを特徴とするものである。
【0011】
また、この発明の請求項2記載の暗渠の可撓性継手の補修交換方法は、請求項1記載の構成に加え、前記新設用の連結用ボルトは、前記暗渠の前記取付枠体のコーナ部分では、ボルト碇着板を前記既設の取付用ボルトに固定し連結して構成するとともに、当該ボルト碇着板には、新設の取付ボルト部材を植設して構成したことを特徴とするものである。
【0012】
さらに、この発明の請求項3記載の暗渠の可撓性継手の補修交換方法は、請求項1または2記載の構成に加え、前記嵩上げ部材を、合成樹脂製の嵩上げ部材で構成したことを特徴とするものである。
【0013】
また、この発明の請求項4記載の暗渠の可撓性継手の補修交換方法は、請求項1〜3のいずれかに記載の構成に加え、前記新設する可撓性継手の取り付けの基準面は、前記暗渠の対向する変位の大きさに応じて領域毎に設定するとともに、当該可撓性継手の前記暗渠の最内側位置とするようにしたことを特徴とするものである。
【0014】
さらに、この発明の請求項5記載の暗渠の可撓性継手の補修交換方法は、請求項1〜4のいずれかに記載の構成に加え、前記嵩上げ部材に前記可撓性継手を取り付けた後、この可撓性継手を保護する保護部材を設けるようにしたことを特徴とするものである。
【0015】
また、この発明の請求項6記載の暗渠の可撓性継手の補修交換方法は、請求項5に記載の構成に加え、前記保護部材は、前記連結用ボルトおよび前記新設の取付ボルト部材に装着して前記可撓性継手の変形を抑制する変形抑制部材と前記可撓性継手を挟む少なくとも一方側の前記取付枠体に配置固定され当該可撓性継手の前記暗渠の内側面からの突き出し部分を前記変形抑制部材を介して保護する継手保護枠部材とで構成してなることを特徴とするものである。
【0016】
さらに、この発明の請求項7記載の暗渠の可撓性継手の補修交換構造は、一対の相対向する筒状の暗渠の端部にそれぞれ設けた取付枠体をまたいで取り付けた可撓性継手をこれら暗渠の変位後に交換する可撓性継手の補修交換構造であって、
前記変位後の一対の暗渠に対して新設する可撓性継手を取り付ける基準面を設定し、前記一対の暗渠の既設の可撓性継手を撤去した前記取付枠体の前記既設の取付用ボルトに、前記基準面に応じて連結用ボルトを連結し、これら連結用ボルトを介して前記基準面に応じた嵩上げ部材を装着固定し、これら嵩上げ部材に新設する可撓性継手を組み付けたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0017】
この発明の請求項1記載の暗渠の可撓性継手の補修交換方法によれば、一対の相対向する筒状の暗渠の端部にそれぞれ設けた取付枠体をまたいで取り付けた可撓性継手をこれら暗渠の変位後に交換するに際し、前記一対の暗渠の前記取付枠体に取付用ボルトで取り付けられている既設の可撓性継手を撤去した後、前記変位後の一対の暗渠に対して新設する可撓性継手を取り付ける基準面を設定し、この基準面に応じて前記取付枠体の前記既設の取付用ボルトに連結用ボルトを連結した後、これら連結用ボルトを介して前記基準面に応じた嵩上げ部材を装着固定し、これら嵩上げ部材に新設する可撓性継手を設けるようにしたので、既設の可撓性継手を撤去した後、取付用ボルトを暗渠の変位に応じて連結用ボルトで延長し、この連結用ボルトを介して嵩上げ部材を装着して変位によって定めた基準面に応じて新たな可撓性継手を取り付けることで、新たな取付枠体や暗渠自体の交換を不要とすることができ、短時間に可撓性継手を交換することができる。これにより、現場での仮締切りや溶接作業の必要がなく、短時間に新たな可撓性継手に補修交換して復旧することができる。
【0018】
また、この発明の請求項2記載の暗渠の可撓性継手の補修交換方法によれば、前記新設用の連結用ボルトは、前記暗渠の前記取付枠体のコーナ部分では、ボルト碇着板を前記既設の取付用ボルトに固定し連結して構成するとともに、当該ボルト碇着板には、新設の取付ボルト部材を植設して構成したので、ボルト碇着板を介して新設のスタッドボルトと高ナットなどの取付ボルト部材を設けることで、連結用ボルトを連結することによるボルト同士の干渉を防止し、嵩上げ部材の取り付けが可能となり、コーナ部分への可撓性継手の取り付けも変位の影響を受けずに施工することができる。
【0019】
さらに、この発明の請求項3記載の暗渠の可撓性継手の補修交換方法によれば、前記嵩上げ部材を、合成樹脂製の嵩上げ部材で構成したので、嵩上げ作業を短時間に行うことができるとともに、現場での寸法の調整なども簡単にでき、効率良く施工できるとともに、腐食などの問題もない。
【0020】
また、この発明の請求項4記載の暗渠の可撓性継手の補修交換方法によれば、前記新設する可撓性継手の取り付けの基準面は、前記暗渠の対向する変位の大きさに応じて領域毎に設定するとともに、当該可撓性継手の前記暗渠の最内側位置とするようにしたので、例えば矩形の暗渠では、上辺、下辺、左辺、右辺等の各領域の変位に応じて基準面を定めて新たな可撓性継手を施工することで、暗渠の内空面への影響を最小限にすることができる。
【0021】
さらに、この発明の請求項5記載の暗渠の可撓性継手の補修交換方法によれば、 前記嵩上げ部材に前記可撓性継手を取り付けた後、この可撓性継手を保護する保護部材を設けるようにしたので、可撓性継手に大きな変位が加わった場合でも変形を保護部材によって抑制することができ、可撓性継手の損傷を防止することができる。
【0022】
また、この発明の請求項6記載の暗渠の可撓性継手の補修交換方法によれば、前記保護部材は、前記連結用ボルトおよび前記新設の取付ボルト部材に装着して前記可撓性継手の変形を抑制する変形抑制部材と前記可撓性継手を挟む少なくとも一方側の前記取付枠体に配置固定され当該可撓性継手の前記暗渠の内側面からの突き出し部分を前記変形抑制部材を介して保護する継手保護枠部材とで構成したので、ゴムなどの変形抑制部材とこの変形抑制部材の外側の継手保護部材とで可撓性継手が膨らむなどの大きな変形が生じてもこれを抑制して一層有効に損傷を防止することができるとともに、止水状態を保持することができる。
【0023】
さらに、この発明の請求項7記載の暗渠の可撓性継手の補修交換構造によれば、一対の相対向する筒状の暗渠の端部にそれぞれ設けた取付枠体をまたいで取り付けた可撓性継手をこれら暗渠の変位後に交換する可撓性継手の補修交換構造であって、
前記変位後の一対の暗渠に対して新設する可撓性継手を取り付ける基準面を設定し、前記一対の暗渠の既設の可撓性継手を撤去した前記取付枠体の前記既設の取付用ボルトに、前記基準面に応じて連結用ボルトを連結し、これら連結用ボルトを介して前記基準面に応じた嵩上げ部材を装着固定し、これら嵩上げ部材に新設する可撓性継手を組み付けたので、既設の可撓性継手を撤去した後、取付用ボルトを暗渠の変位に応じて連結用ボルトで延長し、この連結用ボルトを介して嵩上げ部材を装着して変位によって定めた基準面に応じて新たな可撓性継手を取り付けることで、新たな取付枠体や暗渠自体の交換を不要とすることができ、短時間に可撓性継手を交換することができる。これにより、現場での仮締切りや溶接作業の必要がなく、短時間に新たな可撓性継手に補修交換して復旧することができる。
なお、ここで、新設する可撓性継手とは、新たに用意した可撓性継手および既設の可撓性継手を新たな基準面に対応して長さを調整したものをいい、既設のものを用いることで、取付ボルトのピッチが同一であるので作業性が良く、短時間に交換補修することができるとともに、コスト低減を図ることもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、この発明を実施する最良の形態について図面を参照して詳細に説明する。
図1〜図10は、この発明の暗渠の可撓性継手の補修交換方法およびその補修交換構造の一実施の形態にかかり、図1は補修交換構造および補修交換完了状態の暗渠の外観斜視図および端面図、図2は図1のA−A断面図、図3は図1のB−B断面図、図4は補修交換工程の前半の説明図、図5は補修交換工程の中間の説明図、図6は補修交換工程の後半の説明図、図7はコーナ部分の断面図、図8はコーナ部分の補修交換工程の前半の説明図、図9はコーナ部分の補修交換工程の中間の説明図、図10はコーナ部分の補修交換工程の後半の説明図である。
【0025】
この暗渠の可撓性継手の補修交換方法が適用される暗渠は、例えばボックスカルバート型の暗渠で、捨石基盤上にコンクリートを打設することで断面が矩形に形成され、相対向する暗渠の端部のそれぞれに取り付けた取付枠体を介して可撓性継手が取り付けられた状態で設置された後、地震などにより暗渠に変位が生じることで、図1に示すように、相対的に一方の暗渠に横ずれBと沈降(縦ずれ)Hとが生じた状態のものである。
【0026】
この可撓性継手を補修交換する必要がある暗渠11には、常態では、相対向する暗渠11の端部の内周面にそれぞれ段差部12が形成されており、この段差部12の端面13に環状で板状の取付枠体14が暗渠11に埋設固定された取付用ボルトを構成するアンカー部材15にシール材17としてゴムワッシャ17aおよびブチルゴムシート17bを介してナット16で取り付けられる。
【0027】
このような対向する取付枠体14の内側に取り付けられる可撓性継手20は、例えばゴムや合成樹脂などの可撓性を備えた弾性体で略短筒状に形成され、中間部に内周側に断面U字状に形成された伸縮部20aを備えるとともに、この伸縮部20aの両側に膨出部20bを介して膨出部20bと直交するフランジ部20cを備えて一体に形成され、内部に補強用の補強布が入れて構成されている。
【0028】
そして、可撓性継手20の両端部のフランジ部20cの外側面がそれぞれ取付枠体14に当てられ、押え板21を介して取付枠体14とともに、取付用ボルトを構成するアンカー部材15にナット16で締め付けてある。
【0029】
また、アンカー部材15およびナット16を介して可撓性継手20の大きな変位や膨らみなどを抑制するためおよび可撓性継手20の損傷を防止するために、保護部材22が取り付けてある。
【0030】
(1)このような暗渠11、11の間に取り付けられた既設の可撓性継手20を暗渠11、11の間に変位が生じた後、新設の可撓性継手30(既設の可撓性継手20と同一仕様であるが、説明の都合上、新設のものを30とする。)に交換する本願の補修交換方法およびその補修交換構造では、まず、図4(a)に示すように、既設の可撓性継手20および保護部材22を撤去する。このため、保護部材22を取り外した後、ナット16をゆるめ、押え板21および可撓性継手20を取付用ボルトを構成するアンカー部材15から撤去する。そして、取付枠体14の表面を清掃しておく。
【0031】
なお、取付枠体14のコーナ部分では、一部のアンカー部材15はそのまま利用するが、後述する嵩上げ部材の取り付けためのボルト碇着板と干渉する一部のアンカー部材15を除去してこの部分の取付枠体14を平坦にしておく。
【0032】
(2)次ぎに、暗渠11、11の変位量に応じて各領域で新たな可撓性継手30を取り付けるための基準面31を設定する。この基準面31は、例えば図1(b)〜図3に示すように、一方の暗渠11(図示例では、相対的に変位が生じたとした右側の暗渠)の暗渠11の内側表面(内面)から新設する可撓性継手30の最も暗渠内面に突き出す面としており、上辺部では、暗渠上部内面から距離(縦ずれ量)がH1の水平面を、下辺部では、暗渠下部内面から距離(縦ずれ量)がH2の水平面を、左側辺では、暗渠左側内面から距離(横ずれ量)がB1の鉛直面を、右側辺では、暗渠右側内面から距離(横ずれ量)がB2の鉛直面を、それぞれ基準面31としている。これにより、領域ごとに縦ずれHまたは横ずれBに応じた異なる基準面31を設定することで、暗渠11の内空面の減少を極力抑えてできるだけ大きな内空部を確保するようにしている。
【0033】
(3)このような基準面31を設定した後、既設の取付用ボルトを構成するアンカー部材15を利用して新たな可撓性継手30を取り付けることができるように、連結用ボルト32を用意し、アンカー部材15に連結する。この連結用ボルト32は、スリーブ32a、高ナット32b、六角穴付止めねじ32cで構成され、アンカー部材15にスリーブ32aを装着し、高ナット32bで締付けるとともに、この高ナット32bに六角穴付止めねじ32cをねじ込むことで、アンカー部材15のボルトを延長した連結状態とする。そして、連結用ボルト32としては、基準面31までの距離に応じた長さのものをそれぞれの領域ごとに連結する。
【0034】
(3´)連結用ボルト32の連結を、取付枠体14のコーナ部分に施工する場合には、図7および図8(a)に示すように、取付用ボルトを構成するアンカー部材15にそのまま連結用ボルト32を連結すると、互いに干渉する恐れがあることから、ボルト碇着板33を用いる。このボルト碇着板33は、図8(b)に示すように、平板状の碇着板材33aを備え、この碇着板材33aにアンカー部材15を挿通する貫通穴33bと取付ボルト部材を構成する取付ボルト(例えばスタッドボルト)33cとを一定ピッチで形成・植設して構成してあり、既設のアンカー部材15の一部を利用して貫通穴33bを介してボルト碇着板33を取り付けるとともに、ボルト定着板33の貫通穴33bを貫通させた一部に連結用ボルト32を連結し、碇着板材33aと干渉する一部のアンカー部材15aは切除する。こうすることで、アンカー部材15を利用する場合の連結用ボルト32同士の干渉を防止すると同時に、一定の間隔で連結用ボルト32と取付ボルト33cとを配置することができる。
【0035】
(4)こうして取付枠体14に基準面32までの距離に応じた連結用ボルト32およびボルト定着板33を取り付けた後、これら連結用ボルト32および取付ボルト部材を構成する取付ボルト(例えばスタッドボルト)33cに、図5および図9〜図10に示すように、対向する暗渠11、11の間の変位を解消するための嵩上げ部材34を装着する。この嵩上げ部材34は、例えば合成樹脂製のブロック状に成形され、連結用ボルト32および取付ボルト部材を構成する取付ボルト33cの外形に対応する取付穴34aが貫通して形成してあり、連結用ボルト32や取付ボルト部材を構成する取付ボルト33cに装着し、取付枠体14との接触面にエポキシ樹脂などでシーリングし、養生のため可撓性継手30を押える新たに用意した押え板35およびナット36を利用して固定する。この嵩上げ部材34は取付枠体14のコーナ部分から取り付けるようにし、直線部分で、必要に応じて現場障害物などによる寸法調整などを行うようにする。また、シーリングを完全にするため、組み付け後、24時間程度養生を行う。
このような嵩上げ部材34の取り付けによって、暗渠11,11の対向する端面の取付枠体14,14には、それぞれの領域において同一平面の可撓性継手用の取付面37が形成される。
【0036】
(5)次に、新たな可撓性継手30を基準面31の全長に応じて現地にて一箇所を接合し、エンドレス状態にした後、嵩上げ部材34を押えていた押え板35およびナット36を取り外し、図5に示すように、嵩上げ部材34に可撓性継手30のフランジ部30cを2つの暗渠11,11を跨ぐように配置して押え板35およびナット36で締め付ける。これにより、相対的に変位が生じた暗渠11,11に常態の新たな可撓性継手30を取り付けることができ、暗渠11,11の新たな不等沈下や地震などに対応することができる。
なお、ここで、新たな可撓性継手30としては、新たに用意した可撓性継手あるいは既設の可撓性継手を各辺の一部などをカットし、新たな基準面に対応して現地にて加硫接合してエンドレス状態に長さを調整したものを用いるようにしても良く、こうすることで、取付用ボルトのピッチが同一であるので作業性が良く、短時間に交換補修することができるとともに、コスト低減を図ることもできる。
【0037】
(6)この新たな可撓性継手30を取り付けた後、可撓性継手30に大きな変位が生じて膨らむように変形することによる損傷などを防止するため、押え板35およびナット36に被せるように合成ゴムまたは合成樹脂の保護部材38を構成する変形抑制部材38が被せられ、ステンレス製のボルトで固定してある。
【0038】
また、新たな可撓性継手30を取り付けた状態では、既設の可撓性継手20を暗渠11,11間に取り付けた状態の段差部12に収納されて暗渠11,11の内面からは何ら突き出す部分がない状態にできるのとは異なり、この実施の形態のように可撓性継手30が両側の暗渠11,11の内面から突き出した状態となったり、図11に示すように、暗渠11,11の変位の状態によっては、可撓性継手30が一方(図示例では、左側)の暗渠11の段差部12内に収納された状態となるが、他方(図示例では、右側)の暗渠11では、暗渠11の内面から突き出した状態になる。そこで、図7に示すように、暗渠11の内面から突き出した可撓性継手30の両側を保護するための変形抑制部材38を介して可撓性継手30の膨らみなどを抑える継手保護部材39を用意し、取付枠体14にアンカー40を後施工したのち固定する。
【0039】
この継手保護部材39は、ステンレスや溶融亜鉛メッキなどの防食処理を施した金属材料で作られ、それぞれの領域の基準面31に対応する高さの外枠となるものを取り付けることで、可撓性継手30が両側の継手保護部材39の間、あるいは片側の暗渠11の段差部12と片側の継手保護部材39との間に収納されるようにして、可撓性継手30に加わる大きな変位や膨らみなどによる損傷を防止できるようにする。
こうして保護部材38,39を取り付けることで、暗渠の可撓性継手の補修交換が完了する。
【0040】
このような暗渠の可撓性継手の補修交換方法およびその補修交換構造によれば、図1(b)に示すように、変位が生じる前の暗渠11,11の内空部に対して、横ずれにともなう基準面のB1+B2の分だけ左右幅が狭くなるとともに、縦ずれにともなう基準面のH1+H2の分だけ上下幅が狭くなるものの内空欠損を最小限に抑えることができ、暗渠11の撤去・新設や取付枠体14の製造・溶接などの必要がなく、短時間に可撓性継手30を交換して暗渠として使用できる状態に復旧することができる。
【0041】
また、この暗渠の可撓性継手の補修交換方法およびその補修交換構造によれば、暗渠11,11の変位を嵩上げ部材34で解消して新たな可撓性継手30の取付面37を形成できるので、短時間に嵩上げ部材34を施工できるとともに、合成樹脂製の嵩上げ部材34とすることで、現場で寸法を簡単に調整でき、しかも嵩上げ部材の防食も不要となり、一層簡単に施工できる。
【0042】
なお、上記実施の形態では、可撓性継手として中間部に断面略U字状の伸縮部を備えたものを例に説明したが、他の断面形状の伸縮部を備えた可撓性継手であっても良く、また、既設の可撓性継手と新設する可撓性継手とが同一である必要はなく、暗渠同士を連結するのに必要な可撓性や止水性などの機能を備えていれば、異なる可撓性継手を用いて補修交換するようにしても良く、変位による損傷が許容できれば、既設のものを調整加工して用いることもできる。
さらに、新設する可撓性継手によっては、その配置上や形状などにより大きな変形や膨らみを保護する保護部材を設ける必要がない場合もあり、適宜選択すれば良い。
【0043】
さらに、可撓性継手の交換対象の適用対象となる暗渠も上記実施の形態のものに限らず、暗渠を工場で製作し輸送するなどの構築方法、暗渠の断面形状を円形とするなど、どのようなものであっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】この発明の暗渠の可撓性継手の補修交換方法およびその補修交換構造の一実施の形態にかかる補修交換構造および補修交換完了状態の暗渠の外観斜視図および端面図である。
【図2】この発明の暗渠の可撓性継手の補修交換方法およびその補修交換構造の一実施の形態にかかる図1のA−A断面図である。
【図3】この発明の暗渠の可撓性継手の補修交換方法およびその補修交換構造の一実施の形態にかかる図1のB−B断面図である。
【図4】この発明の暗渠の可撓性継手の補修交換方法の一実施の形態にかかる補修交換工程の前半の説明図である。
【図5】この発明の暗渠の可撓性継手の補修交換方法の一実施の形態にかかる補修交換工程の中間の説明図である。
【図6】この発明の暗渠の可撓性継手の補修交換方法の一実施の形態にかかる補修交換工程の後半の説明図である。
【図7】この発明の暗渠の可撓性継手の補修交換方法およびその補修交換構造の一実施の形態にかかるコーナ部分の断面図である。
【図8】この発明の暗渠の可撓性継手の補修交換方法の一実施の形態にかかるコーナ部分の補修交換工程の前半の説明図である。
【図9】この発明の暗渠の可撓性継手の補修交換方法の一実施の形態にかかるコーナ部分の補修交換工程の中間の説明図である。
【図10】この発明の暗渠の可撓性継手の補修交換方法の一実施の形態にかかるコーナ部分の補修交換工程の後半の説明図である。
【図11】この発明の暗渠の可撓性継手の補修交換方法の他の一実施の形態にかかる暗渠の底辺部分の断面図である。
【図12】従来の暗渠の外観斜視図および底辺部分の断面図である。
【符号の説明】
【0045】
11 暗渠
12 段差部
13 端面
14 取付枠体
15 アンカー部材
15a 切除するアンカー部材
16 ナット
17 シール材
17a ゴムワッシャ
20 既設の可撓止水部材
20a 伸縮部
20b 膨出部
20c フランジ部
21 既設の押え板
22 既設の保護部材
30 新設の可撓止水部材
31 基準面
32 連結用ボルト
32a スリーブ
32b 高ナット
32c 六角穴付止めねじ
33 ボルト碇着板
33a 碇着板材
33b 貫通穴
33c 取付ボルト部材
34 嵩上げ部材
34a 取付穴
35 新設の押え板
36 ナット
37 取付面
38 変形抑制部材(保護部材)
39 継手保護部材(保護部材)
40 アンカー
B 横ずれ
B1,B2 横ずれ量
H 縦ずれ
H1,H2 縦ずれ量

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の相対向する筒状の暗渠の端部にそれぞれ設けた取付枠体をまたいで取り付けた可撓性継手をこれら暗渠の変位後に交換するに際し、
前記一対の暗渠の前記取付枠体に取付用ボルトで取り付けられている既設の可撓性継手を撤去した後、前記変位後の一対の暗渠に対して新設する可撓性継手を取り付ける基準面を設定し、この基準面に応じて前記取付枠体の前記既設の取付用ボルトに連結用ボルトを連結した後、これら連結用ボルトを介して前記基準面に応じた嵩上げ部材を装着固定し、これら嵩上げ部材に新設する可撓性継手を組み付けるようにしたことを特徴とする暗渠の可撓性継手の補修交換方法。
【請求項2】
前記新設用の連結用ボルトは、前記暗渠の前記取付枠体のコーナ部分では、ボルト碇着板を前記既設の取付用ボルトに固定し連結して構成するとともに、当該ボルト碇着板には、新設の取付ボルト部材を植設して構成したことを特徴とする請求項1記載の暗渠の可撓性継手の補修交換方法。
【請求項3】
前記嵩上げ部材を、合成樹脂製の嵩上げ部材で構成したことを特徴とする請求項1または2記載の暗渠の可撓性継手の補修交換方法。
【請求項4】
前記新設する可撓性継手の取り付けの基準面は、前記暗渠の対向する変位の大きさに応じて領域毎に設定するとともに、当該可撓性継手の前記暗渠の最内側位置とするようにしたことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の暗渠の可撓性継手の補修交換方法。
【請求項5】
前記嵩上げ部材に前記可撓性継手を取り付けた後、この可撓性継手を保護する保護部材を設けるようにしたことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の暗渠の可撓性継手の補修交換方法。
【請求項6】
前記保護部材は、前記連結用ボルトおよび前記新設の取付ボルト部材に装着して前記可撓性継手の変形を抑制する変形抑制部材と前記可撓性継手を挟む少なくとも一方側の前記取付枠体に配置固定され当該可撓性継手の前記暗渠の内側面からの突き出し部分を前記変形抑制部材を介して保護する継手保護枠部材とで構成してなることを特徴とする請求項5記載の暗渠の可撓性継手の補修交換方法。
【請求項7】
一対の相対向する筒状の暗渠の端部にそれぞれ設けた取付枠体をまたいで取り付けた可撓性継手をこれら暗渠の変位後に交換する可撓性継手の補修交換構造であって、
前記変位後の一対の暗渠に対して新設する可撓性継手を取り付ける基準面を設定し、前記一対の暗渠の既設の可撓性継手を撤去した前記取付枠体の前記既設の取付用ボルトに、前記基準面に応じて連結用ボルトを連結し、これら連結用ボルトを介して前記基準面に応じた嵩上げ部材を装着固定し、これら嵩上げ部材に新設する可撓性継手を組み付けたことを特徴とする暗渠の可撓性継手の補修交換構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−106534(P2010−106534A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−279408(P2008−279408)
【出願日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【出願人】(000196624)西武ポリマ化成株式会社 (60)
【Fターム(参考)】