暗渠の合流部構造体および暗渠の合流部施工方法
【課題】ボックスカルバートからなる暗渠の合流部の施工における作業性の向上と低コスト化が可能な暗渠の合流部構造体および暗渠の合流部施工方法を提供する。
【解決手段】直線状の暗渠1,2に直角に暗渠3を合流させて、T字路を形成する。このT字路部分に、合流部構造体10が構築される。合流部構造体10は、概略四角筒状に形成され、軸方向に沿った前後の開口部にそれぞれ暗渠1,2を構成する筒状構造体4が接続される。また、側面に開口部を有し、当該開口部に暗渠3を構成する筒状構造体4が接続される。前記側面に形成された開口部を前後に分割する位置で、前後の筒部20,30に分割されている。各筒部20,30は、底版部材21.31と、当該底版部材21,31の左右側縁部に立設される左右それぞれの側壁部材22,23,32,33と、これらの上に配置される頂版部材24,34とからなる。
【解決手段】直線状の暗渠1,2に直角に暗渠3を合流させて、T字路を形成する。このT字路部分に、合流部構造体10が構築される。合流部構造体10は、概略四角筒状に形成され、軸方向に沿った前後の開口部にそれぞれ暗渠1,2を構成する筒状構造体4が接続される。また、側面に開口部を有し、当該開口部に暗渠3を構成する筒状構造体4が接続される。前記側面に形成された開口部を前後に分割する位置で、前後の筒部20,30に分割されている。各筒部20,30は、底版部材21.31と、当該底版部材21,31の左右側縁部に立設される左右それぞれの側壁部材22,23,32,33と、これらの上に配置される頂版部材24,34とからなる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボックスカルバート等のプレキャストコンクリート筒状構造体を連接して形成される暗渠において、三差路(たとえばT字路)や四差路(たとえば、十字路)部分となる暗渠の合流用構造体および当該暗渠の合流部を構築するための暗渠の合流部施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば、共同溝、公共下水、用排水路、人道等の各種暗渠の構築にボックスカルバートが用いられている。ボックスカルバートは、筒状構造体であり、この筒状構造体を連接することにより暗渠を構築するものである。
また、基本的に各筒状構造体は、同形状をしており、プレキャストコンクリート製となっている。したがって、ボックスカルバートとしての筒状構造体は、予め、工場やその他の設備で、型枠内に鉄筋を配筋するとともにコンクリートを打設することにより製造され、暗渠の構築現場にトラック等で搬送され、複数の筒状構造体を連接することにより暗渠が構築される。
【0003】
ここで、同形状のボックスカルバートを連接した場合には、直線状の一本の路となる暗渠が構築されるが、暗渠によっては、一本の路が途中から2本に分岐したり、他の暗渠に合流したりすることにより、3本以上の路が合流する合流部が形成される。すなわち、たとえば、T字路や、十字路となる暗渠が設けられることになる。
ここで、暗渠の3本以上の路が合流する部分は、上述の互いに同形状のボックスカルバートで構築することができないので、たとえば、T字路や、十字路となる合流部を現場打ちコンクリートで構築していた。
【0004】
しかし、複数の暗渠の合流部を現場打ちコンクリートで構築する場合には、比較的複雑な形状の合流部を構築するための型枠の設置等に手間がかかり、現場作業が煩雑になるとともに、作業コストが増大することになる。
そこで、予め、T字状や、十字状でかつ筒状構造を有する合流部構造体をプレキャストコンクリートで構築することで、現場作業におけるコストの低減と、作業の容易化を図った提案がされている(たとえば、特許文献1参照)。
【0005】
【特許文献1】特開平08−120746号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、ボックスカルバートは、それぞれが同形状であることにより、同じ型枠で製造可能であり、これによってコストの低減がなされるが、上述の合流部をプレキャストコンクリート製とした場合に、複数の暗渠が合流することで、ボックスカルバートより複雑な形状となり、型枠も複雑になることで、型枠のコストが高くなる。さらに、合流部を有する暗渠は必ずしも多くなく、また、合流部を有する暗渠でも、合流部が1つだったり、数カ所だったりする場合が多い。したがって、プレキャストコンクリート製の合流部は、僅かな数しか製造されず、型枠の高いコストが数少ない合流部の製造費にかかることになる。
【0007】
すなわち、プレキャストコンクリート製の合流部は、コストが高くなる、また、T字状や、十字状となる合流部は、他のプレキャストコンクリートよりも大きくなり、トラックによる搬送に支障を来す可能性ある。また、暗渠が形成される地下部分への搬入と設置が難しくなるといった問題がある。たとえば、大きな合流部は、重量も大きいので、吊り上げるのに大きな重機が必要になるなどによりコスト増の要因となる。
したがって、現場打ちコンクリートによる構築される合流部よりコスト的に安くなるとは限らない。また、プレキャストコンクリート製の設置だけでなく、製造、搬送から設置までを考えた場合に、大きく作業が軽減されるとは限らないといった問題がある。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みて為されたもので、暗渠の合流部をプレキャストコンクリート製とし、かつ、製造から設置までの作業性を向上するとともに全体的なコストの低減を図ることができる暗渠の合流部構造体および暗渠の合流部施工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載の暗渠の合流部構造体は、概略四角筒状に形成され、軸方向に沿った前後の開口部にそれぞれ暗渠を構成する筒状構造体が接続され、かつ、左右側面のうちの少なくとも一方の側面に開口部を有し、当該開口部に暗渠を構成する筒状構造体が接続される暗渠の合流部構造体であって、
前記側面に形成された開口部を前後に分割する位置で、前後の筒部に分割された構成を有し、
各筒部は、底版部材と、当該底版部材の左右側縁部に立設される左右それぞれの側壁部材と、当該側壁部材上に掛け渡されて配置される頂版部材とからなり、
これら底版部材、左右の側壁部材、頂版部材は、それぞれ、別体で概略板状のプレキャストコンクリート製とされ、
これら底版部材、左右の側壁部材、頂版部材を組み立てることにより筒部が構築され、
前後の筒部を接続した状態で、これら筒部のうちの少なくとも一方の側面をそれぞれ構成する側壁部材同士の間の間隔が、前記側面に形成される開口部となっていることを特徴とする。
【0010】
請求項1記載の発明においては、暗渠の合流部構造体が、一体に設けられたものではなく、二つの分割部に分けられるとともに、さらに、各分割部が、それぞれ別体で、概略板状のプレキャストコンクリートである底版部材、左右の側壁部材、頂版部材とを接合したものであることから、製造時に型枠が複雑な構造となることがなく、製造コストの低減を図ることができる。
【0011】
また、合流部構造体全体が通常の暗渠の構築に用いられるボックスカルバートに比較して大きな構造となっていても、製造場所から現場への輸送時や、現場における地下への搬入時には板体として取り扱うことができるので輸送および搬入が容易になる。たとえば、合流部構造体となる各部材が概略板状なので、トラックの荷台に容易に載せることができるとともに、重ねて載せることで、荷台におけるスペース効率が向上し、各部材の重量によっては、一度に多くの部材を運ぶことも可能となる。
【0012】
また、各部材は、合流部構造体全体よりも軽量なので、各部材毎に吊り上げて設置場所に搬入するものとすれば、合流部構造体全体を吊り上げるような大型の重機を必要とせず、通常のボックスカルバートが吊り上げ可能な重機で十分に吊り上げることができる。
また、概略四角筒状の合流部構造体を側面の開口部の部分で前後に分割することで、側面を構成する側壁部材に開口部を設ける必要がなく、前側の筒部の側面を構成する側壁部材と、後側の筒部の側面を構成する側壁部材との間に間隔があく構成とすることで、分岐する暗渠が接続される開口部を構成することができる。
【0013】
これにより、側壁部材を開口部がない単純な構造とすることが可能となり、側壁部材の製造コストを低減することができる。
なお、合流部構造体が複数の部材からなり、現場で組み立てる必要があることから、一体の合流部構造体を設置するよりも現場作業が多くなるが、現場でコンクリートを打設して合流部構造体全体を構築するよりも現場作業が容易となるとともに、型枠の形成や、製造、輸送、搬入等が容易となることから、全体としては作業性が向上する。
【0014】
請求項2に記載の暗渠の合流部施工方法は、請求項1に記載の暗渠の合流部構造体を用いた暗渠の合流部施工方法であって、
先に地下に構築された暗渠の合流部の設置空間で、暗渠の合流部に前後の筒部のうちの一方の筒部を構築するに際し、当該筒部の底版部材を設置し、
次いで、底版部材の左右の側縁部上にそれぞれ左右の側壁部材を設置し、
次いで、側壁部材上に頂版部材を設置した後に、底版部材から側壁部材を通って頂版部材に至るPC鋼材を用いて接合し、
同様に他方の筒部を構築した後に、これら筒部同士をこれら筒部同士に渡って配置されたPC鋼材を用いて接合し、
前側の筒部の前端の開口部と、後側の筒部の後端の開口部と、前後の接合された筒部の側面の開口部とにそれぞれ暗渠を構成する筒状構造体を接続することを特徴とする。
【0015】
請求項2記載の発明においては、請求項1に記載の発明と同様の作用効果を奏することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の暗渠の合流部構造体および暗渠の合流部施工方法によれば、暗渠の合流部を比較的容易な作業で、低コストに構築することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態の暗渠の合流部構造体10および暗渠の合流部施工方法を図1〜図17を参照して説明する。
この例の暗渠の合流部構造体10は、暗渠のT字路となる部分に設置されるもので、たとえば、図17に示すように直線状の暗渠1,2に対して直角に別の暗渠3が合流した状態となっている。
【0018】
また、各暗渠1,2,3は、ボックスカルバートとなる四角いプレキャストコンクリート製の筒状構造体4を一列に連接していくことにより構築されている。
なお、この例では、合流する三つの暗渠1,2,3は、その断面形状がサイズも含めて同様のものとなっており、用いられる筒状構造体4も同じものとなっているが、各暗渠を異なる形状やサイズとしたり、一つの暗渠だけ他の二つの暗渠と異なるサイズや形状としてもよい。
【0019】
そして、暗渠1,2は、同軸上に配置されたものであり、暗渠3が合流しなければ、一本の暗渠として構築される部分であるが、暗渠3を合流させるために、この例の合流部構造体10が間に配置されて二つの暗渠1,2に分かれたものとなっており、一つの暗渠と解釈してもよい。
そして、暗渠1,2,3の合流部構造体10は、図13〜図17に示すように概略四角筒状に形成され、軸方向に沿った前後の開口部11,12にそれぞれ暗渠1,2を構成する筒状構造体4が接続され、かつ、左右側面のうちの少なくとも一方の側面に開口部13を有し、当該開口部13に暗渠3を構成する筒状構造体4が接続される用になっている。
【0020】
そして、合流部構造体10は、前記側面に形成された開口部13を前後に分割する位置で、前後の筒部20,30に分割された構成を有する。
また、前後の筒部20,30は、それぞれ底版部材21,31と、当該底版部材21,31の左右側縁部に立設される左右それぞれの側壁部材22,23,32,33と、当該側壁部材22,23,32,33上に掛け渡されて配置される頂版部材24,34とからなっている。
【0021】
これら底版部材21,31、左右の側壁部材22,23,32,33、頂版部材24,34は、それぞれ、別体で概略板状のプレキャストコンクリート製とされている。
そして、底版部材21,31、左右の側壁部材22,23,32,33、頂版部材24,34を組み立てることにより筒部20,30が構築されている。
【0022】
前後の筒部20,30を接続した状態で、これら筒部20,30のうちの少なくとも一方の側面をそれぞれ構成する側壁部材23,33同士の間の間隔が、前記側面に形成される開口部13となっている。したがって、合流部構造体10は、概略板状の部材から構成され、かつ、板面に開口部を有する部材は用いられていない。
【0023】
前の筒部20の底版部材21は、左右の側壁部材22,23が載せられる左右両側縁部が上方に突出した状態となっている。そして、この上方に突出した部分に板状の側壁部材22,23が載せられて底版部材21の左右側縁部の上方に突出した部分と連続する筒部20の側面を構成するようになっている。
【0024】
すなわち、底版と側壁との角部26,27が底版部材21側に設けられた形状となっており、側壁部材22,23が平板上なのに対して、底版部材21は、その左右側縁部が上に突出した状態に形成され、底版と側壁との角部26,27を構成している。また、角部26,27の内隅側はテーパー面となっている。また、角部26,27のうちの開口部13が形成される側の角部27においては、開口部13となる部分がそれより外側(前側)となる部分より一段低くなった状態となっている。
また、底版部材21の角部26,27の上面には、図2に示すように、側壁部材22,23を載せる部分に側壁部材22,23の位置決めピン41が先端を上に突出させた状態に埋設されている。
【0025】
また、底版部材21の角部26,27より内側となる部分の上面には、底版部材21の角部26,27上に配置された側壁部材22,23が後述のようにPC鋼材で固定されるまで、側壁部材22,23を支持するパイプ状の仮支持部材42の下端部側の雄ねじ部分に螺合する雌ねじ孔を備えたインサート43が埋設されている。
【0026】
また、図4に示すように、底版部材21の左右の角部26,27の側壁部材22,23が接合される上面には、ボルト44が固定した状態に埋設されるとともに、カップラ45がボルト44に螺合した状態で、角部26,27の上面に開口する孔内に露出した状態とされ、カップラ45にPC鋼材50の端部を接合可能となっている。なお、左右の角部26,27には、それぞれ筒部20の軸方向に沿って一列に互いに間隔をあけて複数のボルト44およびカップラ45が配置されている。
【0027】
また、図5に示すように、底版部材21は、筒部20の軸方向にそって、その角部26,27にそれぞれPC鋼材を挿通するためのシース管47が軸方向(前後方向)に沿って埋設されている。また、角部26,27の前後の中央部には、シース管47に挿通されるPC鋼材48の前端部を固定する固定部49が設けられている。なお、固定部49には支圧板が埋設されて固定され、当該支圧板を貫通した状態のPC鋼材の端部がナットにより固定されるようになっている。
【0028】
同様に、後の筒部30の底版部材31にも、前の筒部20の場合と同形状の角部36,37が設けられている。但し、後の筒部30と、前の筒部20とは前後方向が逆(左右方向が逆)となっており鏡像の関係となっている。したがって、角部37においては、開口部13となる部分がその後側より一段低くなった状態となっている。なお、底版部材31においても、その他の構成として、上述の底版部材21と同様に、位置決めピン41、インサート43、ボルト44、カップラ45、シース管47および固定部49が設けられている。
【0029】
筒部20および筒部30の側壁部材22、32は、開口部13が設けられない側の側壁を構成するもので、その前後幅が、底版部材21および頂版部材24とほぼ等しくされている。すなわち、側壁部材22、32は、筒部20の軸方向の幅と同じ幅を有する。一方、開口部13が形成される側の側壁部材23、33の前後幅は、筒部20,30、すなわち、底版部材21,31、頂版部材24,34の約半分となっている。そして、この側壁部材23(33)は、筒部20(筒部30)、すなわち、底版部材21(31)および頂版部材24(34)の前半分側(後半分側)に配置され、筒部20(30)の後半分(前半分)となる側面が開放された状態となるように配置される。そして、この開放部分が開口部13の前半部分(後半部分)となる。
【0030】
また、側壁部材22,23,32,33には、それぞれ、PC鋼材50を挿通する上下方向に沿ったシース管51がその前後幅方向に複数並んで埋設されている。
また、側壁部材22,23,32,33の内面側には、上述の側壁部材22,23,32,33を支持するパイプ状の仮支持部材42の上端部側の雄ねじ部分に螺合する雌ねじ孔を備えたインサート52が埋設されている。この側壁部材22,23,32,33のインサート52に仮支持部材42の上端部が螺合されて接続され、上述の底版部材21,31のインサート43に仮支持部材42の下端部が螺合されて接続される。なお、左側の側壁部材22,32に上端部を固定された仮支持部材42は、下端部を底版部材21,31の右側のインサート43に接続され、右側の側壁部材23,33に上端部を固定された仮支持部材42は、下端部を底版部材21,31の左側のインサート43に接続されるようになっている。
【0031】
これにより、これら仮支持部材42,42が斜交い状に斜めに交差して配置されることになる。
また、側壁部材22,23,32,33には、その下端面に前記底版部材21,31の角部26,27,36,37上面から突出する位置決めピン41が挿入される位置決め孔を有する位置決め孔部材54が下面に孔を開口させた状態で埋設されている。
また、側壁部材22,23,32,33には、その上端面に、後述の頂版部材24,34に設けられる位置決め孔部材63に挿入される位置決めピン55が設けられている。
【0032】
頂版部材24の基本的な構成は、底版部材21とほぼ同様の構造となっており、上下方向が逆(左右方向が逆)となって鏡像の関係となっている。したがって、前の筒部20の底版部材21と鏡像の関係にある後の筒部30の底版部材31は、前の筒部20の頂版部材24と同形状となっており、同じ型枠で製造可能となっている。
【0033】
また、頂版部材24の両側縁部には、底版部材21と同様に角部56,57が設けられている。そして、角部56,57が側壁部材22,23上に載せられた状態となる。また、開口部13側の角部57においては、開口部13上となる部分が側壁部材23に載せられる部分より一段高くなっている。これにより開口部13は、上側が側壁部材22,23より高く、下側が側壁部材22,23より低くなっており、側壁部材22,23より上下長さが長くなっている。
また、角部56,57の側壁部材22,23に対向する下面には、上述の位置決め孔部材63が孔を下面に開放した状態に埋設されている。
【0034】
但し、頂版部材24には、図4に示すように、上述のインサート43が埋設されず、かつ、PC鋼材50の下端部が接続されるボルト44およびカップラ45に代えて、上面側に開放し、PC鋼材50の上端部を固定する固定部62が設けられている。なお、固定部62の部分で、頂版部材24をPC鋼材50が貫通可能となるように孔が形成されている。
また、後の筒部30の頂版部材34は、前の筒部20の頂版部材24に対して基本的に前後方向が逆(左右方向が逆)となる鏡像の関係となっているが、その他の構成は同じとなっており、角部58,59を有するものとなっている。
【0035】
したがって、後の筒部30の頂版部材34は、前の筒部20の底版部材21とほぼ同形状となっており、同じ型枠で製造可能となっている。
また、上述の頂版部材24と底版部材31との関係と同様に、頂版部材34には、上述のインサート43が埋設されず、かつ、PC鋼材50の下端部が接続されるボルト44およびカップラ45に代えて、上面側に開放し、PC鋼材50の上端部を固定する固定部62が設けられている。また、居決めピン41に代えて,位置決め孔部材63が設けられている。
また、図5に示すように、頂版部材24,34には、底版部材21,31と同様に、その角部56,57,58,59にそれぞれPC鋼材を挿通するためのシース管47が軸方向(前後方向)に沿って埋設されている。また、角部26,27の前後の中央部には、シース管47に挿通されるPC鋼材48の前端部を固定する固定部49が設けられている。
【0036】
以上のような各部材からなる各筒部20,30は、底版部材21、31の左右側縁部に側壁部材22,23,32,33を載せた状態とし、これら底版部材21,31上に頂版部材24,34を載せることで筒状に構成される。
また、これら筒部20,30を軸方向に沿って対向した状態に接合したものが合流部構造体10となる。
【0037】
このような暗渠の合流部構造体10を用いた暗渠の合流部施工方法を説明する。
開削工事等により暗渠の施工を行う。ここでは、T字路となる暗渠の交差部分における工事で暗渠1と暗渠2が直線状に接合され、これら暗渠1と暗渠2との接合部分にこれら暗渠1,2に対して直角に暗渠3が接合されるようになっている。
そして、図1および図9に示すように、暗渠1については、合流部構造体10と接合される筒状構造体4を除く部分まで構築されている。すなわち、現在既に設置されている筒状構造体4を連接された暗渠1にもう一つ筒状構造体4を加えることで合流部構造体10に接合される状態となっている。
【0038】
なお、暗渠1の下側には、割栗石とコンクリートもしくはモルタルからなる基礎部71が構築されている。
そして、現状の暗渠1に対して、筒状構造体4一つ分だけ間隔をあけて、合流部構造体10の設置位置となるが、合流部構造体10の設置位置にも、割栗石とコンクリートもしはモルタルからなる基礎部72が設けられている。
【0039】
なお、基礎部72は、基礎部71より一段低くなっている。すなわち、合流部構造体10の設置位置は、他の暗渠1,2,3の設置位置より一段低く浅い穴を設けた状態となっている。なお、この浅い穴,すなわち、基礎部72の部分は、合流部構造体10の軸方向の長さよりも長くなっている。これは、後述するように合流部構造体10を構成する筒部20と筒部30をPC鋼材48で接合する際に用いるジャッキ81用のスペースを確保するためと、後述の端版73を配置するためとなっている。
また、穴の深さは、底版部材21,31の角部26,27,36,37の高さより僅かに浅いものとなっている。
【0040】
そして、筒部20の底版部材21を地上側からクレーンで吊り下げて基礎部72の最も前側の暗渠1に隣接する部分に設置する。なお、この際に、暗渠1との境となる部分にプレキャストコンクリート製の端版73を配置する。なお、底版部材21も端版73も基礎部72上に配置されるのでこれらの下面の高さ位置は同じとなる。そして、端版73は、底版部材21の角部26,27の高さと略同じで高さ(僅かに低い)で、かつ、底版部材21とほぼ同じ左右幅となっている。
【0041】
そして、この端版73は、合流部構造体10の方が,暗渠1の筒状構造体4より上下に長く、開口部11が暗渠1の筒状構造体4より上下に長いので、開口部11の下側の一部が露出するのを防止するために設置される。
なお、端版73の上に筒状構造体4の端部が載った状態に配置される。
【0042】
なお、合流部構造体10においては、側面の開口部13に暗渠1,2の筒状構造体4と同じサイズの暗渠3の筒状構造体4の端部が挿入された状態に接合されるようになっているので、合流部構造体10の上下長さは、筒状構造体4の上下長さよりも長いものとなっており、開口部11,12が暗渠1,2より上下に長いものとなっている。したがって、開口部11,12の上端部および下端部を端版73で塞ぐ必要がある。
【0043】
図2および図10に示すように、底版部材21を設置した後に次に側壁部材22,23をそれぞれ吊り下げて底版部材21の角部26,27上に載置する。この際に、図2に示すように、角部26,27の上面に突出する位置合わせピン41を、側壁部材22,23の下面に設けられた位置合わせ孔部材54に挿入させることで、底版部材21と側壁部材22,23の位置を合わせる。これにより、側壁部材22,23のシース管51と、底版部材21のカップラ45との位置が正確に合わされ,カップラ45にシース管51を通るPC鋼材50を連結することができる。
【0044】
また、底版部材21に吊り下げた状態の側壁部材22,23をそれぞれ設置した際に、仮支持部材42を側壁部材22,23と底版部材21との間に配置し、下端を底版部材21の上面のインサート43の雌ねじに螺合し、上端を側壁部材22,23のインサート52の雌ねじに螺合して接合する。これにより、斜交い状の仮支持部材42により、側壁部材22,23が地震等により倒れるのが防止される。
【0045】
次に、図3および図11に示すように、頂版部材24を側壁部材22,23上に設置する。この際には、側壁部材22,23上に突出する位置決めピン55を頂版部材24の角部56,57の下面に設けられた位置決め孔部材2の孔内に挿入して側壁部材22,23に対する頂版部材24の位置を合わせる。これにより、頂版部材24の固定部62と、側壁部材22,23のシース管51の位置が合わせられることになる。
【0046】
次に、図4に示すように底版部材21,側壁部材22,23、頂版部材24をPC鋼材50で連結固定する。まず、PC鋼材50を頂版部材24の固定部62の開口部からPC鋼材50を頂版部材24を貫通するともに、それぞれの側壁部材22,23のいずれのシース管51を挿通させ、PC鋼材50の下端部を底版部材21に固定されたカップラ45に螺合する。なお、PC鋼材50の上下端には雄ねじが形成されており、カップラ45には雌ねじが形成されている。
【0047】
そして、PC鋼材50の下端部が底版部材21に固定された状態で、頂版部材24の固定部においてPC鋼材50の上端部にジャッキ82(デビダークジャッキ)を接続して、PC鋼材に緊張力を導入し、次いで固定部62にPC鋼材50の上端部を固定する。これにより、筒部20の左側で底版部材21、側壁部材22、頂版部材24がPC鋼材50により連結され、筒部20の右側で底版部材21、側壁部材23、頂版部材24がPC鋼材50により連結される。
【0048】
次に、図5および図12に示すように、前後の向きが逆となる後の筒部30を前の筒部20と同様に組み立てる。すなわち、底版部材31を設置し、底版部材31上の左右に側壁部材32,33を載置し、それらの上に頂版部材34を載置する。そして、筒部20の場合と同様にこれらをPC鋼材50によりこれらを連結する。なお、後側の筒部30の底版部材31を基礎部72上に設置する際に、予め、筒部20と筒部30を連結するためのPC鋼材48を底版部材31のシース管47内に挿入しておくことが好ましい。PC鋼材48は、筒部20の中央部から筒部30の中央部まで配置される長さとなっているので、その長さは、底版部材31の前後長さとほぼ同じ長さとなっており、底版部材31のシース管47内に挿入した状態で、底版部材31から大きく延出するようなことがない。
【0049】
ここで、底版部材21、31は、当該底版部材21,31の上下長さとほぼ同じ深さの穴内である基礎部72上に配置されるので、穴の前後幅が二つの底版部材21,31を合わせた長さよりあまり長くないと、底版部材31後端側から底版部材31を貫通して底版部材21にPC鋼材48を挿入する際に、穴の外側からPC鋼材を挿入しなければならなくなるが、そうするとPC鋼材48が斜めとなり、うまく、PC鋼材48を挿入できない。
そこで、予め後側の底版部材31内にPC鋼材48を挿入しておき、底版部材31を設置した後にPC鋼材48のおよそ半分を後の底版部材31から前の底版部材21側に移動する。なお、これにより、基礎部72となる穴をあまり長くしなくても、筒部20と筒部30のPC鋼材による連結が可能となる。
【0050】
次に、後側の筒部30の底版部材31、側壁部材32,33および頂版部材34が連結された後に、前後二つの底版部材21.31の角部26,27、36,37において、シース管47内に挿入されたPC鋼材48の先端部を前の底版部材21の固定部49に固定する。また、PC鋼材48の後端部にカップラ45を介して延長用鋼材46が接続され、当該延長用鋼材46を介してPC鋼材48に、底版部材31の後端側から延長用鋼材46に接続されたジャッキ81(センターホールジャッキ)により緊張力を導入し、次いでPC鋼材48の後端部を後の筒部30の固定部49に固定する。これにより筒部20と筒部30の下部を連結した状態とする。
【0051】
また、前側の頂版部材24の角部56,57と、後側の頂版部材34の角部58,59において、底版部材21,31と同様にPC鋼材48を挿通して、PC鋼材48により頂版部材24と頂版部材34の部分で、筒部20と筒部30を連結する。
次に、シース管47、51内にグラウト材を注入する。なお、この状態で合流部構造体10は単独の構造としてはほぼ完成した状態であるが、暗渠1,2,3を接合する必要がある。
【0052】
次に、図13に示すように、筒部30の後側に隣接して、筒部20の前側と同様に端版73を設置する。次に図6および図14に示すように、基礎部72の穴の筒部30より後側の部分にコンクリートを打設する。この打設されたコンクリート部分75は、暗渠2用の基礎部74と連続する暗渠2用の基礎部となる。
次に、筒部20と暗渠1との間に暗渠1と筒部20とを連結する筒状構造体4を吊り下げてこの筒状構造体4を暗渠1の既に設置された筒状構造体4と連結するとともに筒部20とを連結する。なお、筒部20および筒状構造体4の互いに当接する端面(継手面)には、それぞれボルト締結用の継手部材が埋設されており、これら継手部材同士をボルトで締結することにより、筒部20と暗渠1の筒部20に隣接する筒状構造体4とを連結する。
【0053】
なお、継手部材は、暗渠1および合流部構造体10内に開放された状態となっており、内側から締結が可能となっている。
次に、図15および図6に示すように、筒部30の後端側に暗渠2の筒状構造体4を連結する。なお、連結は、筒部20の前端側に暗渠1の筒状構造体4を連結した場合と同様に行われる。
【0054】
次に、図16および図6に示すように、端版73を暗渠1および暗渠2のそれぞれ合流部構造体10に隣接する筒状構造体4,4の上で合流部構造体10に隣接する部分に設置する。これら端版73も筒状構造体4,4よりも上下に長い開口部11,12の筒状構造体4,4の上側に露出する部分を塞ぐために配置される。
次に、図7、図8および図17に示すように、合流部構造体10の筒部20と筒部30を連結することにより形成された開口部13に、直線状の暗渠1,2に直角に接合される暗渠3の合流部構造体10に隣接する筒状構造体4を接合する。
【0055】
この際には、筒状構造体4の先端部を側壁部材23,33の厚み程度分だけ、開口部13内に挿入した状態とする。また、筒状構造体4の外形よりも、開口部13の方が僅かに広く形成されており、筒状構造体4の先端部外周面と開口部13の内周面との間には、隙間があり、この隙間には無収縮モルタルが打設され、隙間を塞ぐとともに、無収縮モルタルを用いることで、硬化した後に収縮して隙間が生じるのを防止するようになっている。
【0056】
さらに、この例では、合流部構造体10の開口部13が設けられた側面に当接し、かつ、開口部13内の先端部が挿入された筒状構造体4の周囲となる位置に現場打ちコンクリートが打設されるようになっている。
すなわち、図7、図8に示すように、暗渠3となる筒状構造体4の合流部構造体10に隣接する部分の周囲に現場打ちの巻立てコンクリート78が設けられている。
【0057】
これにより、合流部構造体10と暗渠3との接合部の止水性や強度の向上が図られているが、必ずしも巻立てコンクリート78を設けないものとしてもよい。
また、合流部構造体10においては、暗渠1,2,3よりも床面が低くなっているので、図8に示すように、合流部構造体10内の床側にコンクリートを打設して床部79形成し、暗渠1,2,3の床面の高さと、合流部構造体10内の床面の高さとをほぼ等しくするものとしてもよい。
【0058】
なお、基本的に合流部構造体10の各底版部材21.31、側壁部材22,23,32,33、頂版部材24,34同士の接合部や、筒部20と筒部30との接合部や、合流部構造体10と暗渠3を除く暗渠1,2の筒状構造体4との接合部には、これら部材の接合端面同士の間にたとえばゴム等の止水材が配置されるようになっている。
【0059】
以上のような暗渠の合流部構造体10や、暗渠の合流部施工方法によれば、暗渠同士の接合部が現場打ちのコンクリートではなく、概略板状のプレキャストコンクリートの部材を互いに連結することにより構成されるので、現場での作業性の向上,工期の短縮を図ることができる。
【0060】
また、合流部全体を一つのプレキャストコンクリート製とした場合のように複雑な形状の型枠にコストがかかることがなく、概略板状のプレキャストコンクリートを製造するので型枠にかかるコストが安くなる。また、合流部構造体10を側面の開口部の部分で、2分割した状態に構成することで、開口部を有する部材を必要とせず、各部材は、開口部のない部材から構成され、開口部は各部材で囲まれて構成される。したがって、開口部を有する煩雑な形状のプレキャストコンクリートを製造する必要がなく、コストダウンを図ることができる。
【0061】
また、底版部材21,31および頂版部材24,34は、角部を有することで少し煩雑な形状となるが、上述の鏡像関係でない底版部材21,31と頂版部材24,34は、同じ形状の部材として同じ型枠で製造可能となる。また、一方の側面にだけ開口部を形成することで鏡像関係の部材が生じるが、後述のように十字路用とした場合には、全ての底版部材21,31および頂版部材24,34を同じ型枠で製造可能となり、さらにコストの低減を図ることできる。また、十字路とした場合には、側壁部材22,23,32,33も同じ部材を用いることができる。
【0062】
なお、この例ではT字路となる合流部構造体10および暗渠の合流部施工方法を説明したが、合流部構造体10の側壁部材22,32を開口部13を有する側面の側壁部材23,33と同様の形状とし、かつ、底版部材21,31や、頂版部材24,34において、角部26,36、56、58の形状を角部27,37、57,59のように段差を有する形状することで、開口部13が設けられた側面の反対側の側面にも開口部13を形成し、この開口部に4つめの暗渠を構成する筒状構造体4を開口部13の場合と同様に接合するものとして、十字路を構成するものとしてもよい。
【0063】
暗渠1,2,3の断面形状を同じ形状としたが、たとえば、暗渠1,2,3の中に他の暗渠と幅や高さが異なるものとが含まれていてもよい。この場合に、合流部構造体10は、基本的に最も大きなサイズの暗渠に合わせて構成し、小さいサイズの暗渠との接合部分に
隙間等が生じる場合は、たとえば、端版73等と同様のプレキャストコンクリート版により隙間を塞ぐものとしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の実施の形態に係る暗渠の合流部施工方法を説明するための構築途中の合流部構造体を示す側面図である。
【図2】前記暗渠の合流部施工方法を説明するための構築途中の合流部構造体を示す正面図である。
【図3】前記構築途中の合流部構造体を示す正面図である。
【図4】前記構築途中の合流部構造体を示す正面図である。
【図5】前記構築途中の合流部構造体を示す側面図である。
【図6】前記構築途中の合流部構造体を示す側面図である。
【図7】前記合流部構造体を示す側面図である。
【図8】前記合流部構造体の筒部を示す正面図である。
【図9】前記構築途中の合流部構造体を示す斜視図である。
【図10】前記構築途中の合流部構造体を示す斜視図である。
【図11】前記構築途中の合流部構造体を示す斜視図である。
【図12】前記構築途中の合流部構造体を示す斜視図である。
【図13】前記構築途中の合流部構造体を示す斜視図である。
【図14】前記構築途中の合流部構造体を示す斜視図である。
【図15】前記構築途中の合流部構造体を示す斜視図である。
【図16】前記構築途中の合流部構造体を示す斜視図である。
【図17】前記合流部構造体を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0065】
1,2,3 暗渠
4 筒状構造体
10 合流部構造体
11,12,13 開口部
20,30 筒部
21,31 底版部材
22,23,32,33 側壁部材
24,34 頂版部材
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボックスカルバート等のプレキャストコンクリート筒状構造体を連接して形成される暗渠において、三差路(たとえばT字路)や四差路(たとえば、十字路)部分となる暗渠の合流用構造体および当該暗渠の合流部を構築するための暗渠の合流部施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば、共同溝、公共下水、用排水路、人道等の各種暗渠の構築にボックスカルバートが用いられている。ボックスカルバートは、筒状構造体であり、この筒状構造体を連接することにより暗渠を構築するものである。
また、基本的に各筒状構造体は、同形状をしており、プレキャストコンクリート製となっている。したがって、ボックスカルバートとしての筒状構造体は、予め、工場やその他の設備で、型枠内に鉄筋を配筋するとともにコンクリートを打設することにより製造され、暗渠の構築現場にトラック等で搬送され、複数の筒状構造体を連接することにより暗渠が構築される。
【0003】
ここで、同形状のボックスカルバートを連接した場合には、直線状の一本の路となる暗渠が構築されるが、暗渠によっては、一本の路が途中から2本に分岐したり、他の暗渠に合流したりすることにより、3本以上の路が合流する合流部が形成される。すなわち、たとえば、T字路や、十字路となる暗渠が設けられることになる。
ここで、暗渠の3本以上の路が合流する部分は、上述の互いに同形状のボックスカルバートで構築することができないので、たとえば、T字路や、十字路となる合流部を現場打ちコンクリートで構築していた。
【0004】
しかし、複数の暗渠の合流部を現場打ちコンクリートで構築する場合には、比較的複雑な形状の合流部を構築するための型枠の設置等に手間がかかり、現場作業が煩雑になるとともに、作業コストが増大することになる。
そこで、予め、T字状や、十字状でかつ筒状構造を有する合流部構造体をプレキャストコンクリートで構築することで、現場作業におけるコストの低減と、作業の容易化を図った提案がされている(たとえば、特許文献1参照)。
【0005】
【特許文献1】特開平08−120746号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、ボックスカルバートは、それぞれが同形状であることにより、同じ型枠で製造可能であり、これによってコストの低減がなされるが、上述の合流部をプレキャストコンクリート製とした場合に、複数の暗渠が合流することで、ボックスカルバートより複雑な形状となり、型枠も複雑になることで、型枠のコストが高くなる。さらに、合流部を有する暗渠は必ずしも多くなく、また、合流部を有する暗渠でも、合流部が1つだったり、数カ所だったりする場合が多い。したがって、プレキャストコンクリート製の合流部は、僅かな数しか製造されず、型枠の高いコストが数少ない合流部の製造費にかかることになる。
【0007】
すなわち、プレキャストコンクリート製の合流部は、コストが高くなる、また、T字状や、十字状となる合流部は、他のプレキャストコンクリートよりも大きくなり、トラックによる搬送に支障を来す可能性ある。また、暗渠が形成される地下部分への搬入と設置が難しくなるといった問題がある。たとえば、大きな合流部は、重量も大きいので、吊り上げるのに大きな重機が必要になるなどによりコスト増の要因となる。
したがって、現場打ちコンクリートによる構築される合流部よりコスト的に安くなるとは限らない。また、プレキャストコンクリート製の設置だけでなく、製造、搬送から設置までを考えた場合に、大きく作業が軽減されるとは限らないといった問題がある。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みて為されたもので、暗渠の合流部をプレキャストコンクリート製とし、かつ、製造から設置までの作業性を向上するとともに全体的なコストの低減を図ることができる暗渠の合流部構造体および暗渠の合流部施工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載の暗渠の合流部構造体は、概略四角筒状に形成され、軸方向に沿った前後の開口部にそれぞれ暗渠を構成する筒状構造体が接続され、かつ、左右側面のうちの少なくとも一方の側面に開口部を有し、当該開口部に暗渠を構成する筒状構造体が接続される暗渠の合流部構造体であって、
前記側面に形成された開口部を前後に分割する位置で、前後の筒部に分割された構成を有し、
各筒部は、底版部材と、当該底版部材の左右側縁部に立設される左右それぞれの側壁部材と、当該側壁部材上に掛け渡されて配置される頂版部材とからなり、
これら底版部材、左右の側壁部材、頂版部材は、それぞれ、別体で概略板状のプレキャストコンクリート製とされ、
これら底版部材、左右の側壁部材、頂版部材を組み立てることにより筒部が構築され、
前後の筒部を接続した状態で、これら筒部のうちの少なくとも一方の側面をそれぞれ構成する側壁部材同士の間の間隔が、前記側面に形成される開口部となっていることを特徴とする。
【0010】
請求項1記載の発明においては、暗渠の合流部構造体が、一体に設けられたものではなく、二つの分割部に分けられるとともに、さらに、各分割部が、それぞれ別体で、概略板状のプレキャストコンクリートである底版部材、左右の側壁部材、頂版部材とを接合したものであることから、製造時に型枠が複雑な構造となることがなく、製造コストの低減を図ることができる。
【0011】
また、合流部構造体全体が通常の暗渠の構築に用いられるボックスカルバートに比較して大きな構造となっていても、製造場所から現場への輸送時や、現場における地下への搬入時には板体として取り扱うことができるので輸送および搬入が容易になる。たとえば、合流部構造体となる各部材が概略板状なので、トラックの荷台に容易に載せることができるとともに、重ねて載せることで、荷台におけるスペース効率が向上し、各部材の重量によっては、一度に多くの部材を運ぶことも可能となる。
【0012】
また、各部材は、合流部構造体全体よりも軽量なので、各部材毎に吊り上げて設置場所に搬入するものとすれば、合流部構造体全体を吊り上げるような大型の重機を必要とせず、通常のボックスカルバートが吊り上げ可能な重機で十分に吊り上げることができる。
また、概略四角筒状の合流部構造体を側面の開口部の部分で前後に分割することで、側面を構成する側壁部材に開口部を設ける必要がなく、前側の筒部の側面を構成する側壁部材と、後側の筒部の側面を構成する側壁部材との間に間隔があく構成とすることで、分岐する暗渠が接続される開口部を構成することができる。
【0013】
これにより、側壁部材を開口部がない単純な構造とすることが可能となり、側壁部材の製造コストを低減することができる。
なお、合流部構造体が複数の部材からなり、現場で組み立てる必要があることから、一体の合流部構造体を設置するよりも現場作業が多くなるが、現場でコンクリートを打設して合流部構造体全体を構築するよりも現場作業が容易となるとともに、型枠の形成や、製造、輸送、搬入等が容易となることから、全体としては作業性が向上する。
【0014】
請求項2に記載の暗渠の合流部施工方法は、請求項1に記載の暗渠の合流部構造体を用いた暗渠の合流部施工方法であって、
先に地下に構築された暗渠の合流部の設置空間で、暗渠の合流部に前後の筒部のうちの一方の筒部を構築するに際し、当該筒部の底版部材を設置し、
次いで、底版部材の左右の側縁部上にそれぞれ左右の側壁部材を設置し、
次いで、側壁部材上に頂版部材を設置した後に、底版部材から側壁部材を通って頂版部材に至るPC鋼材を用いて接合し、
同様に他方の筒部を構築した後に、これら筒部同士をこれら筒部同士に渡って配置されたPC鋼材を用いて接合し、
前側の筒部の前端の開口部と、後側の筒部の後端の開口部と、前後の接合された筒部の側面の開口部とにそれぞれ暗渠を構成する筒状構造体を接続することを特徴とする。
【0015】
請求項2記載の発明においては、請求項1に記載の発明と同様の作用効果を奏することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の暗渠の合流部構造体および暗渠の合流部施工方法によれば、暗渠の合流部を比較的容易な作業で、低コストに構築することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態の暗渠の合流部構造体10および暗渠の合流部施工方法を図1〜図17を参照して説明する。
この例の暗渠の合流部構造体10は、暗渠のT字路となる部分に設置されるもので、たとえば、図17に示すように直線状の暗渠1,2に対して直角に別の暗渠3が合流した状態となっている。
【0018】
また、各暗渠1,2,3は、ボックスカルバートとなる四角いプレキャストコンクリート製の筒状構造体4を一列に連接していくことにより構築されている。
なお、この例では、合流する三つの暗渠1,2,3は、その断面形状がサイズも含めて同様のものとなっており、用いられる筒状構造体4も同じものとなっているが、各暗渠を異なる形状やサイズとしたり、一つの暗渠だけ他の二つの暗渠と異なるサイズや形状としてもよい。
【0019】
そして、暗渠1,2は、同軸上に配置されたものであり、暗渠3が合流しなければ、一本の暗渠として構築される部分であるが、暗渠3を合流させるために、この例の合流部構造体10が間に配置されて二つの暗渠1,2に分かれたものとなっており、一つの暗渠と解釈してもよい。
そして、暗渠1,2,3の合流部構造体10は、図13〜図17に示すように概略四角筒状に形成され、軸方向に沿った前後の開口部11,12にそれぞれ暗渠1,2を構成する筒状構造体4が接続され、かつ、左右側面のうちの少なくとも一方の側面に開口部13を有し、当該開口部13に暗渠3を構成する筒状構造体4が接続される用になっている。
【0020】
そして、合流部構造体10は、前記側面に形成された開口部13を前後に分割する位置で、前後の筒部20,30に分割された構成を有する。
また、前後の筒部20,30は、それぞれ底版部材21,31と、当該底版部材21,31の左右側縁部に立設される左右それぞれの側壁部材22,23,32,33と、当該側壁部材22,23,32,33上に掛け渡されて配置される頂版部材24,34とからなっている。
【0021】
これら底版部材21,31、左右の側壁部材22,23,32,33、頂版部材24,34は、それぞれ、別体で概略板状のプレキャストコンクリート製とされている。
そして、底版部材21,31、左右の側壁部材22,23,32,33、頂版部材24,34を組み立てることにより筒部20,30が構築されている。
【0022】
前後の筒部20,30を接続した状態で、これら筒部20,30のうちの少なくとも一方の側面をそれぞれ構成する側壁部材23,33同士の間の間隔が、前記側面に形成される開口部13となっている。したがって、合流部構造体10は、概略板状の部材から構成され、かつ、板面に開口部を有する部材は用いられていない。
【0023】
前の筒部20の底版部材21は、左右の側壁部材22,23が載せられる左右両側縁部が上方に突出した状態となっている。そして、この上方に突出した部分に板状の側壁部材22,23が載せられて底版部材21の左右側縁部の上方に突出した部分と連続する筒部20の側面を構成するようになっている。
【0024】
すなわち、底版と側壁との角部26,27が底版部材21側に設けられた形状となっており、側壁部材22,23が平板上なのに対して、底版部材21は、その左右側縁部が上に突出した状態に形成され、底版と側壁との角部26,27を構成している。また、角部26,27の内隅側はテーパー面となっている。また、角部26,27のうちの開口部13が形成される側の角部27においては、開口部13となる部分がそれより外側(前側)となる部分より一段低くなった状態となっている。
また、底版部材21の角部26,27の上面には、図2に示すように、側壁部材22,23を載せる部分に側壁部材22,23の位置決めピン41が先端を上に突出させた状態に埋設されている。
【0025】
また、底版部材21の角部26,27より内側となる部分の上面には、底版部材21の角部26,27上に配置された側壁部材22,23が後述のようにPC鋼材で固定されるまで、側壁部材22,23を支持するパイプ状の仮支持部材42の下端部側の雄ねじ部分に螺合する雌ねじ孔を備えたインサート43が埋設されている。
【0026】
また、図4に示すように、底版部材21の左右の角部26,27の側壁部材22,23が接合される上面には、ボルト44が固定した状態に埋設されるとともに、カップラ45がボルト44に螺合した状態で、角部26,27の上面に開口する孔内に露出した状態とされ、カップラ45にPC鋼材50の端部を接合可能となっている。なお、左右の角部26,27には、それぞれ筒部20の軸方向に沿って一列に互いに間隔をあけて複数のボルト44およびカップラ45が配置されている。
【0027】
また、図5に示すように、底版部材21は、筒部20の軸方向にそって、その角部26,27にそれぞれPC鋼材を挿通するためのシース管47が軸方向(前後方向)に沿って埋設されている。また、角部26,27の前後の中央部には、シース管47に挿通されるPC鋼材48の前端部を固定する固定部49が設けられている。なお、固定部49には支圧板が埋設されて固定され、当該支圧板を貫通した状態のPC鋼材の端部がナットにより固定されるようになっている。
【0028】
同様に、後の筒部30の底版部材31にも、前の筒部20の場合と同形状の角部36,37が設けられている。但し、後の筒部30と、前の筒部20とは前後方向が逆(左右方向が逆)となっており鏡像の関係となっている。したがって、角部37においては、開口部13となる部分がその後側より一段低くなった状態となっている。なお、底版部材31においても、その他の構成として、上述の底版部材21と同様に、位置決めピン41、インサート43、ボルト44、カップラ45、シース管47および固定部49が設けられている。
【0029】
筒部20および筒部30の側壁部材22、32は、開口部13が設けられない側の側壁を構成するもので、その前後幅が、底版部材21および頂版部材24とほぼ等しくされている。すなわち、側壁部材22、32は、筒部20の軸方向の幅と同じ幅を有する。一方、開口部13が形成される側の側壁部材23、33の前後幅は、筒部20,30、すなわち、底版部材21,31、頂版部材24,34の約半分となっている。そして、この側壁部材23(33)は、筒部20(筒部30)、すなわち、底版部材21(31)および頂版部材24(34)の前半分側(後半分側)に配置され、筒部20(30)の後半分(前半分)となる側面が開放された状態となるように配置される。そして、この開放部分が開口部13の前半部分(後半部分)となる。
【0030】
また、側壁部材22,23,32,33には、それぞれ、PC鋼材50を挿通する上下方向に沿ったシース管51がその前後幅方向に複数並んで埋設されている。
また、側壁部材22,23,32,33の内面側には、上述の側壁部材22,23,32,33を支持するパイプ状の仮支持部材42の上端部側の雄ねじ部分に螺合する雌ねじ孔を備えたインサート52が埋設されている。この側壁部材22,23,32,33のインサート52に仮支持部材42の上端部が螺合されて接続され、上述の底版部材21,31のインサート43に仮支持部材42の下端部が螺合されて接続される。なお、左側の側壁部材22,32に上端部を固定された仮支持部材42は、下端部を底版部材21,31の右側のインサート43に接続され、右側の側壁部材23,33に上端部を固定された仮支持部材42は、下端部を底版部材21,31の左側のインサート43に接続されるようになっている。
【0031】
これにより、これら仮支持部材42,42が斜交い状に斜めに交差して配置されることになる。
また、側壁部材22,23,32,33には、その下端面に前記底版部材21,31の角部26,27,36,37上面から突出する位置決めピン41が挿入される位置決め孔を有する位置決め孔部材54が下面に孔を開口させた状態で埋設されている。
また、側壁部材22,23,32,33には、その上端面に、後述の頂版部材24,34に設けられる位置決め孔部材63に挿入される位置決めピン55が設けられている。
【0032】
頂版部材24の基本的な構成は、底版部材21とほぼ同様の構造となっており、上下方向が逆(左右方向が逆)となって鏡像の関係となっている。したがって、前の筒部20の底版部材21と鏡像の関係にある後の筒部30の底版部材31は、前の筒部20の頂版部材24と同形状となっており、同じ型枠で製造可能となっている。
【0033】
また、頂版部材24の両側縁部には、底版部材21と同様に角部56,57が設けられている。そして、角部56,57が側壁部材22,23上に載せられた状態となる。また、開口部13側の角部57においては、開口部13上となる部分が側壁部材23に載せられる部分より一段高くなっている。これにより開口部13は、上側が側壁部材22,23より高く、下側が側壁部材22,23より低くなっており、側壁部材22,23より上下長さが長くなっている。
また、角部56,57の側壁部材22,23に対向する下面には、上述の位置決め孔部材63が孔を下面に開放した状態に埋設されている。
【0034】
但し、頂版部材24には、図4に示すように、上述のインサート43が埋設されず、かつ、PC鋼材50の下端部が接続されるボルト44およびカップラ45に代えて、上面側に開放し、PC鋼材50の上端部を固定する固定部62が設けられている。なお、固定部62の部分で、頂版部材24をPC鋼材50が貫通可能となるように孔が形成されている。
また、後の筒部30の頂版部材34は、前の筒部20の頂版部材24に対して基本的に前後方向が逆(左右方向が逆)となる鏡像の関係となっているが、その他の構成は同じとなっており、角部58,59を有するものとなっている。
【0035】
したがって、後の筒部30の頂版部材34は、前の筒部20の底版部材21とほぼ同形状となっており、同じ型枠で製造可能となっている。
また、上述の頂版部材24と底版部材31との関係と同様に、頂版部材34には、上述のインサート43が埋設されず、かつ、PC鋼材50の下端部が接続されるボルト44およびカップラ45に代えて、上面側に開放し、PC鋼材50の上端部を固定する固定部62が設けられている。また、居決めピン41に代えて,位置決め孔部材63が設けられている。
また、図5に示すように、頂版部材24,34には、底版部材21,31と同様に、その角部56,57,58,59にそれぞれPC鋼材を挿通するためのシース管47が軸方向(前後方向)に沿って埋設されている。また、角部26,27の前後の中央部には、シース管47に挿通されるPC鋼材48の前端部を固定する固定部49が設けられている。
【0036】
以上のような各部材からなる各筒部20,30は、底版部材21、31の左右側縁部に側壁部材22,23,32,33を載せた状態とし、これら底版部材21,31上に頂版部材24,34を載せることで筒状に構成される。
また、これら筒部20,30を軸方向に沿って対向した状態に接合したものが合流部構造体10となる。
【0037】
このような暗渠の合流部構造体10を用いた暗渠の合流部施工方法を説明する。
開削工事等により暗渠の施工を行う。ここでは、T字路となる暗渠の交差部分における工事で暗渠1と暗渠2が直線状に接合され、これら暗渠1と暗渠2との接合部分にこれら暗渠1,2に対して直角に暗渠3が接合されるようになっている。
そして、図1および図9に示すように、暗渠1については、合流部構造体10と接合される筒状構造体4を除く部分まで構築されている。すなわち、現在既に設置されている筒状構造体4を連接された暗渠1にもう一つ筒状構造体4を加えることで合流部構造体10に接合される状態となっている。
【0038】
なお、暗渠1の下側には、割栗石とコンクリートもしくはモルタルからなる基礎部71が構築されている。
そして、現状の暗渠1に対して、筒状構造体4一つ分だけ間隔をあけて、合流部構造体10の設置位置となるが、合流部構造体10の設置位置にも、割栗石とコンクリートもしはモルタルからなる基礎部72が設けられている。
【0039】
なお、基礎部72は、基礎部71より一段低くなっている。すなわち、合流部構造体10の設置位置は、他の暗渠1,2,3の設置位置より一段低く浅い穴を設けた状態となっている。なお、この浅い穴,すなわち、基礎部72の部分は、合流部構造体10の軸方向の長さよりも長くなっている。これは、後述するように合流部構造体10を構成する筒部20と筒部30をPC鋼材48で接合する際に用いるジャッキ81用のスペースを確保するためと、後述の端版73を配置するためとなっている。
また、穴の深さは、底版部材21,31の角部26,27,36,37の高さより僅かに浅いものとなっている。
【0040】
そして、筒部20の底版部材21を地上側からクレーンで吊り下げて基礎部72の最も前側の暗渠1に隣接する部分に設置する。なお、この際に、暗渠1との境となる部分にプレキャストコンクリート製の端版73を配置する。なお、底版部材21も端版73も基礎部72上に配置されるのでこれらの下面の高さ位置は同じとなる。そして、端版73は、底版部材21の角部26,27の高さと略同じで高さ(僅かに低い)で、かつ、底版部材21とほぼ同じ左右幅となっている。
【0041】
そして、この端版73は、合流部構造体10の方が,暗渠1の筒状構造体4より上下に長く、開口部11が暗渠1の筒状構造体4より上下に長いので、開口部11の下側の一部が露出するのを防止するために設置される。
なお、端版73の上に筒状構造体4の端部が載った状態に配置される。
【0042】
なお、合流部構造体10においては、側面の開口部13に暗渠1,2の筒状構造体4と同じサイズの暗渠3の筒状構造体4の端部が挿入された状態に接合されるようになっているので、合流部構造体10の上下長さは、筒状構造体4の上下長さよりも長いものとなっており、開口部11,12が暗渠1,2より上下に長いものとなっている。したがって、開口部11,12の上端部および下端部を端版73で塞ぐ必要がある。
【0043】
図2および図10に示すように、底版部材21を設置した後に次に側壁部材22,23をそれぞれ吊り下げて底版部材21の角部26,27上に載置する。この際に、図2に示すように、角部26,27の上面に突出する位置合わせピン41を、側壁部材22,23の下面に設けられた位置合わせ孔部材54に挿入させることで、底版部材21と側壁部材22,23の位置を合わせる。これにより、側壁部材22,23のシース管51と、底版部材21のカップラ45との位置が正確に合わされ,カップラ45にシース管51を通るPC鋼材50を連結することができる。
【0044】
また、底版部材21に吊り下げた状態の側壁部材22,23をそれぞれ設置した際に、仮支持部材42を側壁部材22,23と底版部材21との間に配置し、下端を底版部材21の上面のインサート43の雌ねじに螺合し、上端を側壁部材22,23のインサート52の雌ねじに螺合して接合する。これにより、斜交い状の仮支持部材42により、側壁部材22,23が地震等により倒れるのが防止される。
【0045】
次に、図3および図11に示すように、頂版部材24を側壁部材22,23上に設置する。この際には、側壁部材22,23上に突出する位置決めピン55を頂版部材24の角部56,57の下面に設けられた位置決め孔部材2の孔内に挿入して側壁部材22,23に対する頂版部材24の位置を合わせる。これにより、頂版部材24の固定部62と、側壁部材22,23のシース管51の位置が合わせられることになる。
【0046】
次に、図4に示すように底版部材21,側壁部材22,23、頂版部材24をPC鋼材50で連結固定する。まず、PC鋼材50を頂版部材24の固定部62の開口部からPC鋼材50を頂版部材24を貫通するともに、それぞれの側壁部材22,23のいずれのシース管51を挿通させ、PC鋼材50の下端部を底版部材21に固定されたカップラ45に螺合する。なお、PC鋼材50の上下端には雄ねじが形成されており、カップラ45には雌ねじが形成されている。
【0047】
そして、PC鋼材50の下端部が底版部材21に固定された状態で、頂版部材24の固定部においてPC鋼材50の上端部にジャッキ82(デビダークジャッキ)を接続して、PC鋼材に緊張力を導入し、次いで固定部62にPC鋼材50の上端部を固定する。これにより、筒部20の左側で底版部材21、側壁部材22、頂版部材24がPC鋼材50により連結され、筒部20の右側で底版部材21、側壁部材23、頂版部材24がPC鋼材50により連結される。
【0048】
次に、図5および図12に示すように、前後の向きが逆となる後の筒部30を前の筒部20と同様に組み立てる。すなわち、底版部材31を設置し、底版部材31上の左右に側壁部材32,33を載置し、それらの上に頂版部材34を載置する。そして、筒部20の場合と同様にこれらをPC鋼材50によりこれらを連結する。なお、後側の筒部30の底版部材31を基礎部72上に設置する際に、予め、筒部20と筒部30を連結するためのPC鋼材48を底版部材31のシース管47内に挿入しておくことが好ましい。PC鋼材48は、筒部20の中央部から筒部30の中央部まで配置される長さとなっているので、その長さは、底版部材31の前後長さとほぼ同じ長さとなっており、底版部材31のシース管47内に挿入した状態で、底版部材31から大きく延出するようなことがない。
【0049】
ここで、底版部材21、31は、当該底版部材21,31の上下長さとほぼ同じ深さの穴内である基礎部72上に配置されるので、穴の前後幅が二つの底版部材21,31を合わせた長さよりあまり長くないと、底版部材31後端側から底版部材31を貫通して底版部材21にPC鋼材48を挿入する際に、穴の外側からPC鋼材を挿入しなければならなくなるが、そうするとPC鋼材48が斜めとなり、うまく、PC鋼材48を挿入できない。
そこで、予め後側の底版部材31内にPC鋼材48を挿入しておき、底版部材31を設置した後にPC鋼材48のおよそ半分を後の底版部材31から前の底版部材21側に移動する。なお、これにより、基礎部72となる穴をあまり長くしなくても、筒部20と筒部30のPC鋼材による連結が可能となる。
【0050】
次に、後側の筒部30の底版部材31、側壁部材32,33および頂版部材34が連結された後に、前後二つの底版部材21.31の角部26,27、36,37において、シース管47内に挿入されたPC鋼材48の先端部を前の底版部材21の固定部49に固定する。また、PC鋼材48の後端部にカップラ45を介して延長用鋼材46が接続され、当該延長用鋼材46を介してPC鋼材48に、底版部材31の後端側から延長用鋼材46に接続されたジャッキ81(センターホールジャッキ)により緊張力を導入し、次いでPC鋼材48の後端部を後の筒部30の固定部49に固定する。これにより筒部20と筒部30の下部を連結した状態とする。
【0051】
また、前側の頂版部材24の角部56,57と、後側の頂版部材34の角部58,59において、底版部材21,31と同様にPC鋼材48を挿通して、PC鋼材48により頂版部材24と頂版部材34の部分で、筒部20と筒部30を連結する。
次に、シース管47、51内にグラウト材を注入する。なお、この状態で合流部構造体10は単独の構造としてはほぼ完成した状態であるが、暗渠1,2,3を接合する必要がある。
【0052】
次に、図13に示すように、筒部30の後側に隣接して、筒部20の前側と同様に端版73を設置する。次に図6および図14に示すように、基礎部72の穴の筒部30より後側の部分にコンクリートを打設する。この打設されたコンクリート部分75は、暗渠2用の基礎部74と連続する暗渠2用の基礎部となる。
次に、筒部20と暗渠1との間に暗渠1と筒部20とを連結する筒状構造体4を吊り下げてこの筒状構造体4を暗渠1の既に設置された筒状構造体4と連結するとともに筒部20とを連結する。なお、筒部20および筒状構造体4の互いに当接する端面(継手面)には、それぞれボルト締結用の継手部材が埋設されており、これら継手部材同士をボルトで締結することにより、筒部20と暗渠1の筒部20に隣接する筒状構造体4とを連結する。
【0053】
なお、継手部材は、暗渠1および合流部構造体10内に開放された状態となっており、内側から締結が可能となっている。
次に、図15および図6に示すように、筒部30の後端側に暗渠2の筒状構造体4を連結する。なお、連結は、筒部20の前端側に暗渠1の筒状構造体4を連結した場合と同様に行われる。
【0054】
次に、図16および図6に示すように、端版73を暗渠1および暗渠2のそれぞれ合流部構造体10に隣接する筒状構造体4,4の上で合流部構造体10に隣接する部分に設置する。これら端版73も筒状構造体4,4よりも上下に長い開口部11,12の筒状構造体4,4の上側に露出する部分を塞ぐために配置される。
次に、図7、図8および図17に示すように、合流部構造体10の筒部20と筒部30を連結することにより形成された開口部13に、直線状の暗渠1,2に直角に接合される暗渠3の合流部構造体10に隣接する筒状構造体4を接合する。
【0055】
この際には、筒状構造体4の先端部を側壁部材23,33の厚み程度分だけ、開口部13内に挿入した状態とする。また、筒状構造体4の外形よりも、開口部13の方が僅かに広く形成されており、筒状構造体4の先端部外周面と開口部13の内周面との間には、隙間があり、この隙間には無収縮モルタルが打設され、隙間を塞ぐとともに、無収縮モルタルを用いることで、硬化した後に収縮して隙間が生じるのを防止するようになっている。
【0056】
さらに、この例では、合流部構造体10の開口部13が設けられた側面に当接し、かつ、開口部13内の先端部が挿入された筒状構造体4の周囲となる位置に現場打ちコンクリートが打設されるようになっている。
すなわち、図7、図8に示すように、暗渠3となる筒状構造体4の合流部構造体10に隣接する部分の周囲に現場打ちの巻立てコンクリート78が設けられている。
【0057】
これにより、合流部構造体10と暗渠3との接合部の止水性や強度の向上が図られているが、必ずしも巻立てコンクリート78を設けないものとしてもよい。
また、合流部構造体10においては、暗渠1,2,3よりも床面が低くなっているので、図8に示すように、合流部構造体10内の床側にコンクリートを打設して床部79形成し、暗渠1,2,3の床面の高さと、合流部構造体10内の床面の高さとをほぼ等しくするものとしてもよい。
【0058】
なお、基本的に合流部構造体10の各底版部材21.31、側壁部材22,23,32,33、頂版部材24,34同士の接合部や、筒部20と筒部30との接合部や、合流部構造体10と暗渠3を除く暗渠1,2の筒状構造体4との接合部には、これら部材の接合端面同士の間にたとえばゴム等の止水材が配置されるようになっている。
【0059】
以上のような暗渠の合流部構造体10や、暗渠の合流部施工方法によれば、暗渠同士の接合部が現場打ちのコンクリートではなく、概略板状のプレキャストコンクリートの部材を互いに連結することにより構成されるので、現場での作業性の向上,工期の短縮を図ることができる。
【0060】
また、合流部全体を一つのプレキャストコンクリート製とした場合のように複雑な形状の型枠にコストがかかることがなく、概略板状のプレキャストコンクリートを製造するので型枠にかかるコストが安くなる。また、合流部構造体10を側面の開口部の部分で、2分割した状態に構成することで、開口部を有する部材を必要とせず、各部材は、開口部のない部材から構成され、開口部は各部材で囲まれて構成される。したがって、開口部を有する煩雑な形状のプレキャストコンクリートを製造する必要がなく、コストダウンを図ることができる。
【0061】
また、底版部材21,31および頂版部材24,34は、角部を有することで少し煩雑な形状となるが、上述の鏡像関係でない底版部材21,31と頂版部材24,34は、同じ形状の部材として同じ型枠で製造可能となる。また、一方の側面にだけ開口部を形成することで鏡像関係の部材が生じるが、後述のように十字路用とした場合には、全ての底版部材21,31および頂版部材24,34を同じ型枠で製造可能となり、さらにコストの低減を図ることできる。また、十字路とした場合には、側壁部材22,23,32,33も同じ部材を用いることができる。
【0062】
なお、この例ではT字路となる合流部構造体10および暗渠の合流部施工方法を説明したが、合流部構造体10の側壁部材22,32を開口部13を有する側面の側壁部材23,33と同様の形状とし、かつ、底版部材21,31や、頂版部材24,34において、角部26,36、56、58の形状を角部27,37、57,59のように段差を有する形状することで、開口部13が設けられた側面の反対側の側面にも開口部13を形成し、この開口部に4つめの暗渠を構成する筒状構造体4を開口部13の場合と同様に接合するものとして、十字路を構成するものとしてもよい。
【0063】
暗渠1,2,3の断面形状を同じ形状としたが、たとえば、暗渠1,2,3の中に他の暗渠と幅や高さが異なるものとが含まれていてもよい。この場合に、合流部構造体10は、基本的に最も大きなサイズの暗渠に合わせて構成し、小さいサイズの暗渠との接合部分に
隙間等が生じる場合は、たとえば、端版73等と同様のプレキャストコンクリート版により隙間を塞ぐものとしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の実施の形態に係る暗渠の合流部施工方法を説明するための構築途中の合流部構造体を示す側面図である。
【図2】前記暗渠の合流部施工方法を説明するための構築途中の合流部構造体を示す正面図である。
【図3】前記構築途中の合流部構造体を示す正面図である。
【図4】前記構築途中の合流部構造体を示す正面図である。
【図5】前記構築途中の合流部構造体を示す側面図である。
【図6】前記構築途中の合流部構造体を示す側面図である。
【図7】前記合流部構造体を示す側面図である。
【図8】前記合流部構造体の筒部を示す正面図である。
【図9】前記構築途中の合流部構造体を示す斜視図である。
【図10】前記構築途中の合流部構造体を示す斜視図である。
【図11】前記構築途中の合流部構造体を示す斜視図である。
【図12】前記構築途中の合流部構造体を示す斜視図である。
【図13】前記構築途中の合流部構造体を示す斜視図である。
【図14】前記構築途中の合流部構造体を示す斜視図である。
【図15】前記構築途中の合流部構造体を示す斜視図である。
【図16】前記構築途中の合流部構造体を示す斜視図である。
【図17】前記合流部構造体を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0065】
1,2,3 暗渠
4 筒状構造体
10 合流部構造体
11,12,13 開口部
20,30 筒部
21,31 底版部材
22,23,32,33 側壁部材
24,34 頂版部材
【特許請求の範囲】
【請求項1】
概略四角筒状に形成され、軸方向に沿った前後の開口部にそれぞれ暗渠を構成する筒状構造体が接続され、かつ、左右側面のうちの少なくとも一方の側面に開口部を有し、当該開口部に暗渠を構成する筒状構造体が接続される暗渠の合流部構造体であって、
前記側面に形成された開口部を前後に分割する位置で、前後の筒部に分割された構成を有し、
各筒部は、底版部材と、当該底版部材の左右側縁部に立設される左右それぞれの側壁部材と、当該側壁部材上に掛け渡されて配置される頂版部材とからなり、
これら底版部材、左右の側壁部材、頂版部材は、それぞれ、別体で概略板状のプレキャストコンクリート製とされ、
これら底版部材、左右の側壁部材、頂版部材を組み立てることにより筒部が構築され、
前後の筒部を接続した状態で、これら筒部のうちの少なくとも一方の側面をそれぞれ構成する側壁部材同士の間の間隔が、前記側面に形成される開口部となっていることを特徴とする暗渠の合流部構造体。
【請求項2】
請求項1に記載の暗渠の合流部構造体を用いた暗渠の合流部施工方法であって、
先に地下に構築された暗渠の合流部の設置空間で、暗渠の合流部に前後の筒部のうちの一方の筒部を構築するに際し、当該筒部の底版部材を設置し、
次いで、底版部材の左右の側縁部上にそれぞれ左右の側壁部材を設置し、
次いで、側壁部材上に頂版部材を設置した後に、底版部材から側壁部材を通って頂版部材に至るPC鋼材を用いて接合し、
同様に他方の筒部を構築した後に、これら筒部同士をこれら筒部同士に渡って配置されたPC鋼材を用いて接合し、
前側の筒部の前端の開口部と、後側の筒部の後端の開口部と、前後の接合された筒部の側面の開口部とにそれぞれ暗渠を構成する筒状構造体を接続することを特徴とする暗渠の合流部施工方法。
【請求項1】
概略四角筒状に形成され、軸方向に沿った前後の開口部にそれぞれ暗渠を構成する筒状構造体が接続され、かつ、左右側面のうちの少なくとも一方の側面に開口部を有し、当該開口部に暗渠を構成する筒状構造体が接続される暗渠の合流部構造体であって、
前記側面に形成された開口部を前後に分割する位置で、前後の筒部に分割された構成を有し、
各筒部は、底版部材と、当該底版部材の左右側縁部に立設される左右それぞれの側壁部材と、当該側壁部材上に掛け渡されて配置される頂版部材とからなり、
これら底版部材、左右の側壁部材、頂版部材は、それぞれ、別体で概略板状のプレキャストコンクリート製とされ、
これら底版部材、左右の側壁部材、頂版部材を組み立てることにより筒部が構築され、
前後の筒部を接続した状態で、これら筒部のうちの少なくとも一方の側面をそれぞれ構成する側壁部材同士の間の間隔が、前記側面に形成される開口部となっていることを特徴とする暗渠の合流部構造体。
【請求項2】
請求項1に記載の暗渠の合流部構造体を用いた暗渠の合流部施工方法であって、
先に地下に構築された暗渠の合流部の設置空間で、暗渠の合流部に前後の筒部のうちの一方の筒部を構築するに際し、当該筒部の底版部材を設置し、
次いで、底版部材の左右の側縁部上にそれぞれ左右の側壁部材を設置し、
次いで、側壁部材上に頂版部材を設置した後に、底版部材から側壁部材を通って頂版部材に至るPC鋼材を用いて接合し、
同様に他方の筒部を構築した後に、これら筒部同士をこれら筒部同士に渡って配置されたPC鋼材を用いて接合し、
前側の筒部の前端の開口部と、後側の筒部の後端の開口部と、前後の接合された筒部の側面の開口部とにそれぞれ暗渠を構成する筒状構造体を接続することを特徴とする暗渠の合流部施工方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2010−13859(P2010−13859A)
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−174988(P2008−174988)
【出願日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【出願人】(593012402)SMCコンクリート株式会社 (16)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【出願人】(593012402)SMCコンクリート株式会社 (16)
【Fターム(参考)】
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