曲げ加工用マンドレルおよびそれを用いたパイプ体の曲げ加工方法
【課題】曲げ加工後のパイプ体からマンドレルを引き抜く際に、パイプ体に負荷をかけることなく行うことができる曲げ加工用マンドレルおよびそのマンドレルを用いたパイプ体の曲げ加工方法を提供する。
【解決手段】曲げ用コマ20の一方端面22の半分のそれぞれを、連設されたコマ20と同芯状にしたときに、当該コマ20の他方端面23の対向部分に対して平行な平行面と傾斜面とに形成する。平行面22a側の貫通孔24aに挿通された直線用紐状部材50を引っ張ることで、マンドレル1を直線状にできる。一方、傾斜面22b側の貫通孔24bに挿通された曲げ用紐状部材60を引っ張ることで、マンドレル1を曲げ形状にできる。
【解決手段】曲げ用コマ20の一方端面22の半分のそれぞれを、連設されたコマ20と同芯状にしたときに、当該コマ20の他方端面23の対向部分に対して平行な平行面と傾斜面とに形成する。平行面22a側の貫通孔24aに挿通された直線用紐状部材50を引っ張ることで、マンドレル1を直線状にできる。一方、傾斜面22b側の貫通孔24bに挿通された曲げ用紐状部材60を引っ張ることで、マンドレル1を曲げ形状にできる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、曲げ加工用マンドレル、および、それを用いたパイプ体の曲げ加工方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
樹脂製やゴム製のパイプ体の曲げ加工を行う場合、直線状のパイプ体にマンドレルを挿入して、当該マンドレルを曲げた状態に変形させることで、マンドレルの変形力によってパイプ体を曲げ加工することがある。このマンドレルとして、例えば、特開昭58−100918号公報(特許文献1)に記載されたものがある。
【0003】
特許文献1に記載のマンドレルは、複数のコマの中心にワイヤを挿通することにより、複数のコマを数珠つなぎに連結して形成されている。それぞれのコマの当接面が、連設されるコマに対して角度を有するように形成されている。そして、コマの中心に挿通されたワイヤを引っ張ることにより、数珠つなぎに連結された複数のコマが曲がった状態になる。さらに、複数のコマに対して曲げ位相(曲げ方向)に対して直角になるように板バネが取り付けられている。これにより、複数のコマが曲がった状態に変化する際に複数のコマの方向規制を行うと共に、複数のコマが直線状に復帰するような力が作用するようにしている。
【0004】
なお、パイプ体の外周側から力を加えてパイプ体の曲げ加工を行う場合に、パイプ体がつぶれないようにするために、パイプ体の中に挿入されるマンドレルが、例えば、特開平6−335730号公報(特許文献2)および実開昭62−20710号公報(特許文献3)に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭58−100918号公報
【特許文献2】特開平6−335730号公報
【特許文献3】実開昭62−20710号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載されているように、マンドレルの変形力によってパイプ体を曲げ加工する場合には、板バネを用いていることにより、二つの課題を有する。第一の課題は、以下の通りである。パイプ体を曲げ加工した後の状態において、曲げられた状態の板バネのバネ力によって、パイプ体にはマンドレルから常に負荷が作用している。ここで、曲げ加工後のパイプ体からマンドレルを引き抜く際には、パイプ体に負荷をかけずに行うことが望まれる。しかし、板バネの作用によって、曲げ加工後のパイプ体からマンドレルを引き抜く際に、パイプ体に負荷をかけることなく行うことは容易ではない。例えば、ワイヤの引張力を低減しながらパイプ体からマンドレルを引き抜くと、マンドレルは、パイプ体に対してパイプ体を直線状にするような力を与える。
【0007】
また、第二の課題は、以下の通りである。板バネの作用によって、パイプ体の曲がる位相(曲がる方向)が一方向のみに制限される。例えば、複数箇所の曲げ部がそれぞれ異なる位相(方向)となるようなパイプ体、螺旋形状に曲げられたパイプ体など、複雑な曲げ形状を有するパイプ体を加工することができない。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、第一の課題を解決することができる曲げ加工用マンドレルおよびそのマンドレルを用いたパイプ体の曲げ加工方法を提供することを目的とする。また、本発明は、第二の課題を解決することができる曲げ加工用マンドレルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)第一の曲げ加工用マンドレル
・本発明に係る曲げ加工用マンドレルは、パイプ体の中に挿入して前記パイプ体の曲げ加工を行う曲げ加工用マンドレルであって、複数のコマと、複数の前記コマの芯方向の端面同士を対向するように数珠つなぎに連結する可撓性の紐状部材とを備える。
前記コマは、曲げ用コマを備え、前記曲げ用コマの一方端面の半分は、連設された前記コマと同芯状にしたときに、当該コマの他方端面の対向部分に対して平行な平行面に形成され、前記曲げ用コマの前記一方端面の残りの半分は、連設された前記コマと同芯状にしたときに、当該コマの他方端面の対向部分に対して傾斜する傾斜面に形成され、前記曲げ用コマには、前記平行面側にて両端面間を貫通する直線用貫通孔と前記傾斜面側にて両端面間を貫通する曲げ用貫通孔とが形成される。
【0010】
前記紐状部材は、前記曲げ用コマの前記直線用貫通孔に挿通されており、引っ張ることにより前記曲げ用コマの一方端面の前記平行面と当該曲げ用コマに連設する前記コマの他方端面とを接触させて、前記曲げ用コマの芯と当該曲げ用コマに連設する前記コマの芯とを直線状に位置決めする直線用紐状部材と、前記曲げ用コマの前記曲げ用貫通孔に挿通されており、引っ張ることにより前記曲げ用コマの一方端面の前記傾斜面と当該曲げ用コマに連設する前記コマの他方端面とを接触させて、前記曲げ用コマの芯と当該曲げ用コマに連設する前記コマの芯とを傾斜した状態に位置決めする曲げ用紐状部材とを備える。
【0011】
本発明によれば、可撓性の2種の紐状部材を用いている。そして、一方の紐状部材を直線用紐状部材として適用し、他方の紐状部材を曲げ用紐状部材として適用している。つまり、直線用紐状部材を引っ張り、かつ、曲げ用紐状部材を自由状態にすることで、複数の曲げ用コマを直線状に位置決めする。一方、曲げ用紐状部材を引っ張り、かつ、直線用紐状部材を自由状態にすることで、複数の曲げ用コマを曲げ形状に位置決めする。
【0012】
このように、どちらかの紐状部材を引っ張り、他方を自由状態にすることで、複数の曲げ用コマを直線状または曲げ形状に位置決めできる。従って、直線状のパイプ体に対して曲げ加工する際には、直線用紐状部材を引っ張ってマンドレルを直線状にしておき、パイプ体を挿入することが容易にできる。その後、曲げ用紐状部材を引っ張ってマンドレルを曲げ形状にすることで、マンドレルの変形力によってパイプ体を曲げ加工できる。その後、マンドレルをパイプ体から引き抜く際に、両紐状部材に何ら負荷をかけずに行えば、パイプ体に対して何ら負荷をかけずにできる。なお、直線用紐状部材の引張力を曲げ用紐状部材の引張力より大きくすることで、複数の曲げ用コマを直線状に位置決めすることもできる。また、曲げ用紐状部材の引張力を直線用紐状部材の引張力より大きくすることで、複数の曲げ用コマを曲げ形状に位置決めすることもできる。
【0013】
ここで、従来において、板バネに外力を加えることでマンドレルを曲げ形状に変形させ、板バネへの復元力を利用してマンドレルを直線状にしている。つまり、外力は、板バネを変形させる方向のみに付与している。これに対して、本発明によれば、マンドレルを直線状にするためにも外力を付与し、マンドレルを曲げ形状にするためにも外力を付与している。従って、両紐状部材に対して何ら負荷をかけなければ、マンドレルは自由な形状になる。そこで、本発明によれば、マンドレルをパイプ体から引き抜く際に、パイプ体に対して負荷をかけることなく行うことができる。なお、連設されるコマとは、数珠つなぎに複数のコマが連結された状態において、隣りに繋がれているコマを意味する。
【0014】
・また、複数の前記コマは、複数の前記曲げ用コマを備え、前記曲げ用紐状部材は、各前記曲げ用コマの前記曲げ用貫通孔同士に挿通され、前記直線用紐状部材は、各前記曲げ用コマの前記直線用貫通孔同士に挿通され、各前記コマの両端面には、凹凸状に形成され、連設された前記コマ同士の相対的な芯回りの回転を規制する回転規制部を備えるようにしてもよい。
【0015】
つまり、連設されるコマの相対的な位相が規制されている。特に、連設されるコマに設けられた回転規制部は、当該コマの両端面に凹凸状に形成されている。従って、あるコマの一方端面に形成される回転規制部は、当該コマの端面に対向するコマの回転規制部に対して回転規制する。つまり、当該回転規制部は、連設されていないコマとは何ら無関係であり、連設されていないコマに対して回転を規制しない。さらに、曲げ用コマの回転規制部は、当該曲げ用コマと当該曲げ用コマに連設されるコマとの曲げを許容する位置に形成されることになる。従って、離れた位置に位置する曲げ用コマの曲げ位相を異ならせることが可能となる。これにより、曲げ用紐状部材を引っ張ることにより、マンドレルの形状を所望の曲げ形状にすることができる。つまり、所望の曲げ形状のパイプ体を加工することができる。例えば、複数の曲げ部の曲げ位相(曲げ方向)が異なるパイプ体や、螺旋形状のパイプ体など、複雑な曲げ形状のパイプ体を加工することができる。
【0016】
・また、各前記コマは、連設する前記コマ同士を連結すると共に、対向する端面同士を接触可能にし、かつ、対向する端面同士の離間距離を設定距離以内で離間可能にする連結部を備えるようにしてもよい。
【0017】
つまり、直線状紐状部材または曲げ用紐状部材を引っ張ったときには、連設するコマ同士の端面が接触し得る。一方、直線状紐状部材および曲げ用紐状部材を自由状態にしたときには、連設するコマ同士が紐状部材によっては規制されなくなる。従って、連設するコマの端面が離れる状態となり得る。このとき、連結部によって、連設するコマの端面の離間距離は、設定距離以内となるように規制されている。
【0018】
このように、連設するコマの端面の離間距離を制限することで、非常に容易にかつ確実に、マンドレルを曲げ加工後のパイプ体から引き抜くことができる。この理由について説明する。マンドレルをパイプ体から引き抜く際に、連設するコマの端面が接触した状態になってしまうと、当該コマ同士により形成され得る形状が制限されるため、コマをパイプ体から引き抜くことができない場合が生じる。しかし、連結部を備えることで、マンドレルをパイプ体から引き抜く際には、連設するコマの端面が離れた状態になることで、連設するコマにより形成される形状の自由度が高くなる。そのため、コマがパイプ体の形状に倣って移動することが可能となり、結果として、マンドレルをパイプ体から引き抜くことができるようになる。
【0019】
・また、前記コマは、前記曲げ用コマと、それぞれ連設される複数の直線用コマと、を備え、各前記直線用コマの一方端面は、連設された前記コマと同芯状にしたときに、当該コマの他方端面の対向部分に対して平行な平行面に形成され、前記直線用コマには、両端面間を貫通し前記直線用紐状部材を挿通する直線用貫通孔と両端面間を貫通し前記曲げ用紐状部材を挿通する曲げ用貫通孔とが形成されるようにしてもよい。
【0020】
つまり、加工後のパイプ体における曲げ部および直線部の両者ともに、それぞれ複数のコマによりマンドレルを形成する。連設する直線用コマは、端面同士が接触していない状態であれば、曲げ形状に移動することができる。従って、曲げ加工後のパイプ体からマンドレルを引き抜く際に、直線用コマがパイプ体の曲げ部を通過することができる。
【0021】
・また、加工後の前記パイプ体は、第一曲げ部と、前記第一曲げ部の曲げ位相に対して異なる位相に曲げられる第二曲げ部と、前記第一曲げ部と前記第二曲げ部との間の直線部とを備え、前記直線部に配置される複数の前記直線用コマの前記曲げ用貫通孔は、前記第一曲げ部を形成する前記曲げ用コマの前記曲げ用貫通孔と前記第二曲げ部を形成する前記曲げ用コマの前記曲げ用貫通孔との間にて、位相を変化させながら形成され、前記直線部に配置される複数の前記直線用コマの前記直線用貫通孔は、前記第一曲げ部を形成する前記曲げ用コマの前記直線用貫通孔と前記第二曲げ部を形成する前記曲げ用コマの前記直線用貫通孔との間にて、位相を変化させながら形成されるようにしてもよい。
【0022】
ここで、加工後のパイプ体が曲げ位相の異なる曲げ部を複数有する場合には、それぞれの曲げ部に対応する曲げ用コマの位相が、それぞれの曲げ部の曲げ内側となるようにしなければならない。そうすると、それぞれの曲げ部に対応する曲げ用コマの位相が、異なる位相となる。つまり、第一曲げ部に対応する曲げ用コマと第二曲げ部に対応する曲げ用コマとの間において、曲げ用紐状部材を捻るように位相をずらす必要がある。そこで、本発明によれば、加工後のパイプ体が第一曲げ部と第二曲げ部との間に直線部を有する場合には、直線部に対応する直線用コマを利用して、曲げ用紐状部材を捻るように位相をずらすことができる。これにより、複雑な曲げ形状のパイプ体を確実に加工することができる。
【0023】
(2)第二の曲げ加工用マンドレル
・また、本発明に係る曲げ加工用マンドレルは、パイプ体の中に挿入して前記パイプ体の曲げ加工を行う曲げ加工用マンドレルであって、複数のコマと、複数の前記コマの芯方向の端面同士を対向するように数珠つなぎに連結する可撓性の紐状部材とを備える。複数の前記コマは、複数の曲げ用コマを備え、各前記曲げ用コマの一方端面は、連設された前記コマと同芯状にしたときに、当該曲げ用コマの他方端面に対して傾斜する傾斜面に形成され、各前記曲げ用コマには、両端面間を貫通する曲げ用貫通孔が形成される。
前記紐状部材は、前記曲げ用貫通孔同士に挿通されており、引っ張ることにより前記曲げ用コマの一方端面の前記傾斜面と当該曲げ用コマに連設する前記コマの他方端面とを接触させて、前記曲げ用コマの芯と当該曲げ用コマに連設する前記コマの芯とを傾斜した状態に位置決めする曲げ用紐状部材を備える。各前記コマの両端面には、凹凸状に形成され、連設された前記コマ同士の相対的な芯回りの回転を規制する回転規制部を備える。
【0024】
本発明によれば、可撓性の曲げ用紐状部材を引っ張ることで、複数の曲げ用コマを曲げ形状に位置決めする。つまり、直線状のパイプ体を直線状のマンドレルに挿入した後に、曲げ用紐状部材を引っ張ることで、パイプ体を曲げ加工できる。さらに、連設されるコマの相対的な位相が規制されている。特に、連設されるコマに設けられた回転規制部は、当該コマの両端面に凹凸状に形成されている。従って、あるコマの一方端面に形成される回転規制部は、当該コマの端面に対向するコマの回転規制部に対して回転規制する。つまり、当該回転規制部は、連設されていないコマとは何ら無関係であり、連設されていないコマに対して回転を規制しない。さらに、曲げ用コマの回転規制部は、当該曲げ用コマと当該曲げ用コマに連設されるコマとの曲げを許容する位置に形成されることになる。従って、離れた位置に位置する曲げ用コマの曲げ位相を異ならせることが可能となる。これにより、曲げ用コマを引っ張ることにより、マンドレルの形状を所望の曲げ形状にすることができる。つまり、所望の曲げ形状のパイプ体を加工することができる。例えば、複数の曲げ部の曲げ位相(曲げ方向)が異なるパイプ体や、螺旋形状のパイプ体など、複雑な曲げ形状のパイプ体を加工することができる。
【0025】
・また、各前記コマは、連設する前記コマ同士を連結すると共に、対向する端面同士を接触可能にし、かつ、対向する端面同士の離間距離を設定距離以内で離間可能にする連結部を備えるようにしてもよい。
【0026】
つまり、紐状部材を引っ張ったときには、連設するコマ同士の端面が接触し得る。一方、紐状部材を自由状態にしたときには、連設するコマ同士が紐状部材によっては規制されなくなる。従って、連設するコマの端面が離れる状態となり得る。このとき、連結部によって、連設するコマの端面の離間距離は、設定距離以内となるように規制されている。
【0027】
このように、連設するコマの端面の離間距離を制限することで、非常に容易にかつ確実に、マンドレルを曲げ加工後のパイプ体から引き抜くことができる。この理由について説明する。マンドレルをパイプ体から引き抜く際に、連設するコマの端面が接触した状態になってしまうと、当該コマ同士により形成され得る形状が制限されるため、コマをパイプ体から引き抜くことができない場合が生じる。しかし、連結部を備えることで、マンドレルをパイプ体から引き抜く際には、連設するコマの端面が離れた状態になることで、連設するコマにより形成される形状の自由度が高くなる。そのため、コマがパイプ体の形状に倣って移動することが可能となり、結果として、マンドレルをパイプ体から引き抜くことができるようになる。
【0028】
・また、前記コマは、前記曲げ用コマと、それぞれ連設される複数の直線用コマと、を備え、各前記直線用コマの一方端面は、連設された前記コマと同芯状にしたときに、当該コマの他方端面の対向部分に対して平行な平行面に形成され、前記直線用コマには、両端面間を貫通し前記曲げ用紐状部材を挿通する曲げ用貫通孔が形成されるようにしてもよい。
【0029】
つまり、加工後のパイプ体における曲げ部および直線部の両者ともに、それぞれ複数のコマによりマンドレルを形成する。連設する直線用コマは、端面同士が接触していない状態であれば、曲げ形状に移動することができる。従って、曲げ加工後のパイプ体からマンドレルを引き抜く際に、直線用コマがパイプ体の曲げ部を通過することができる。
【0030】
・また、加工後の前記パイプ体は、第一曲げ部と、前記第一曲げ部の曲げ位相に対して異なる位相に曲げられる第二曲げ部と、前記第一曲げ部と前記第二曲げ部との間の直線部とを備え、前記直線部に配置される複数の前記直線用コマの前記曲げ用貫通孔は、前記第一曲げ部を形成する前記曲げ用コマの前記曲げ用貫通孔と前記第二曲げ部を形成する前記曲げ用コマの前記曲げ用貫通孔との間にて、位相を変化させながら形成されるようにしてもよい。
【0031】
ここで、加工後のパイプ体が曲げ位相の異なる曲げ部を複数有する場合には、それぞれの曲げ部に対応する曲げ用コマの位相が、それぞれの曲げ部の曲げ内側となるようにしなければならない。そうすると、それぞれの曲げ部に対応する曲げ用コマの位相が、異なる位相となる。つまり、第一曲げ部に対応する曲げ用コマと第二曲げ部に対応する曲げ用コマとの間において、曲げ用紐状部材を捻るように位相をずらす必要がある。そこで、本発明によれば、加工後のパイプ体が第一曲げ部と第二曲げ部との間に直線部を有する場合には、直線部に対応する直線用コマを利用して、曲げ用紐状部材を捻るように位相をずらすことができる。これにより、複雑な曲げ形状のパイプ体を確実に加工することができる。
【0032】
(3)曲げ加工用マンドレルを用いたパイプ体の曲げ加工方法
・本発明に係るパイプ体の曲げ加工方法は、上述した第一の曲げ加工用マンドレルを用いたパイプ体の曲げ加工方法であって、前記直線状紐状部材を引っ張ることにより、前記曲げ用コマの芯と当該曲げ用コマに連設する前記コマの芯とを直線状に位置決めして、前記曲げ加工用マンドレルを直線状にする直線状位置決め工程と、直線状に形成された前記パイプ体を、直線状に位置決めされた前記曲げ加工用マンドレルに外挿するパイプ体外挿工程と、前記曲げ用紐状部材を引っ張ることにより、前記曲げ用コマの芯と当該曲げ用コマに連設する前記コマの芯とを傾斜した状態に位置決めして、前記パイプ体を曲げ加工する曲げ工程とを備える。このようにすることで、確実にかつ容易にパイプ体の曲げ加工ができる。
【0033】
・また、前記曲げ工程の後に、前記曲げ用紐状部材および前記直線用紐状部材を自由にした状態で、前記曲げ加工用マンドレルから前記パイプ体を離脱させるパイプ体離脱工程を備える。これにより、曲げ加工用マンドレルからパイプ体を離脱させること、換言するとパイプ体から曲げ加工用マンドレルを引き抜くことが容易にできる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本実施形態の曲げ加工用マンドレルを直線状にした図であり、図19のS1の状態を示す。
【図2】本実施形態の曲げ加工用マンドレルを部分的に曲げ形状にした図である。
【図3】曲げ加工用マンドレルを構成する曲げ用コマの正面図である。
【図4】図3のIV方向から見た図である。
【図5】図3のV方向から見た図である。
【図6】図3のVI方向から見た図である。
【図7】図5のVII−VII断面図である。
【図8】図5のVIII−VIII断面図である。
【図9】曲げ加工用マンドレルを構成する第一直線用コマの正面図である。
【図10】図9のX方向から見た図である。
【図11】図9のXI方向から見た図である。
【図12】図9のXII方向から見た図である。
【図13】図11のXIII−XIII断面図である。
【図14】図11のXIV−XIV断面図である。
【図15】曲げ加工用マンドレルを構成する第二直線用コマの正面図である。
【図16】図15のXVI方向から見た図である。
【図17】図15のXVII方向から見た図である。
【図18】図15のXVIII方向から見た図である。
【図19】図1の曲げ加工用マンドレルを用いた樹脂製パイプ体の曲げ加工方法を示すフローチャートである。
【図20】図19のS2の状態を示す。
【図21】図19のS4の状態を示す。
【図22】図19のS6の状態を示す。
【図23】図1の曲げ加工用マンドレルを用いたゴム製パイプ体の曲げ加工方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0035】
<第一実施形態>
第一実施形態の曲げ加工用マンドレル(以下、「マンドレル」と称する)およびパイプ体の曲げ加工方法について、図1〜図22を参照して説明する。
【0036】
(マンドレルの概要)
マンドレル1は、主として樹脂製パイプ体またはゴム製パイプ体に曲げ加工を施すための部材である。そして、直線状のパイプ体にマンドレル1を挿入して、マンドレル1を曲げ形状に変形させることにより、マンドレル1の変形力によってパイプ体を曲げ加工する。なお、マンドレル1は、金属製パイプ体の曲げ加工に対しても、パイプ体の剛性によって適用可能である。
【0037】
このマンドレル1は、図1および図2に示すように、複数のコマ20,30,40を2本の可撓性の紐状部材50,60により数珠つなぎに連結されている。そして、マンドレル1の基端部には、基端部材70が設けられており、紐状部材50,60により、複数のコマ20,30,40と連結されている。以下、それぞれの構成部材について説明した後に、マンドレル1の詳細構成について説明する。
【0038】
(コマの詳細構成)
マンドレル1を構成するコマには、曲げ用コマ20、第一直線用コマ30および第二直線用コマ40が含まれている。曲げ用コマ20は、図2におけるマンドレル1の曲げ部11,13に対応する部分を形成する。第一直線用コマ30は、先端部に繋がれており、図2における直線部14に対応する部分を形成する。第二直線用コマ40は、第一曲げ部11と第二曲げ部13との間に位置する直線部12に対応する部分を形成する。以下、それぞれのコマ20,30,40について説明する。
【0039】
(曲げ用コマ)
曲げ用コマ20について図3〜図8を参照して説明する。曲げ用コマ20は、樹脂により形成されており、本体部21と、回転規制突起27と、連結突起28とが一体的に形成されている。
【0040】
本体部21は、ほぼ円板状に形成されている。ここで、本体部21の芯方向は、円板形状の中心軸とする。図3および図5に示すように、本体部21の芯方向の一方端面22(図3の上面)の半分(図3の左半分)は、芯方向に直交する非傾斜面22a(本発明における「平行面」に相当する)に形成されている。一方端面22の残りの半分(図3の右半分)は、芯方向に対して傾斜する傾斜面22bに形成されている。本体部21の芯方向の他方端面23(図3の下面)は、芯方向に直交する平面に形成されている。つまり、本体部21の一方端面22の非傾斜面22aと他方端面23とは、平行に形成されている。一方、本体部21の一方端面22の傾斜面22bと他方端面23とは、平行ではなく、傾斜している。つまり、図2に示すように、非傾斜面22a側における本体部21の芯方向幅よりも、傾斜面22b側における本体部21の芯方向幅の方が小さくなるように形成されている。
【0041】
また、図5〜図7に示すように、本体部21には、芯方向に平行な2つの貫通孔24a,24bが形成されている。一方の貫通孔24aは、非傾斜面22aのうち周方向の中央部と他方端面23との間を、芯方向に平行に貫通する。ここで、一方の貫通孔24aは、マンドレル1を直線状にするための貫通孔であるため、以下において、直線用貫通孔と称する。
【0042】
他方の貫通孔24bは、傾斜面22bのうち周方向の中央部と他方端面23との間を、芯方向に平行に貫通する。そして、他方の貫通孔24bは、傾斜面22bの周方向において、本体部21の芯方向幅が狭くなる位相に形成されている。従って、他方の貫通孔24bと直線用貫通孔24aとは、本体部21の芯に対して線対称に形成されている。ここで、他方の貫通孔24bは、マンドレル1を曲げ形状にするための貫通孔であるため、以下において、曲げ用貫通孔と称する。
【0043】
さらに、図6〜図8に示すように、本体部21には、他方端面23側に中心に開口する中心凹所25が形成されている。この中心凹所25は、本体部21の芯中心に形成されており、円筒状空間を有している。さらに、中心凹所25の開口縁25aは、中心凹所25の円筒状空間の内径よりも狭くなるように形成されている。この開口縁25aは、図6に示すように、長円形に近似した形状に形成されている。そして、開口縁25aの開口幅の狭い部分が、貫通孔24a,24bの形成されている位相の部分に位置し、開口幅の広い部分が、それに直交する位相の部分に位置する。
【0044】
回転規制凹所26,26は、本体部21の他方端面23側に、その中心からそれぞれ径方向の反対側にずれた位置に開口するように形成されている。つまり、回転規制凹所26,26は、本体部21の芯に対して線対称に形成されている。回転規制凹所26,26は、長方形または長円形の開口を有する。回転規制凹所26,26の長手方向が、本体部21の径方向に一致するように形成されている。
【0045】
回転規制突起27,27は、本体部21の一方端面22側に、その中心からそれぞれ径方向反対側にずれた位置に設けられている。つまり、回転規制突起27,27は、本体部21の芯に対して線対称に形成されている。回転規制突起27,27は、芯方向から見た場合に、長方形または長円形に形成されている。回転規制突起27,27の長手方向が、本体部21の径方向に一致するように形成されている。さらに、回転規制突起27,27は、回転規制凹所26,26に入り込むことができるような形状に形成されている。そして、回転規制突起27,27は、非傾斜面22aと傾斜面22bとの境界部分に形成されている。つまり、回転規制突起27,27と回転規制凹所26,26は、相互に同位相に形成されている。ここで、回転規制凹所26,26と回転規制突起27,27が、本発明における凹凸状に形成された回転規制部に相当する。
【0046】
連結突起28は、本体部21の一方端面22側の中心から芯方向に突出するように設けられている。連結突起28は、キノコ状に形成されている。つまり、連結突起28の先端側の幅が根元側より大きくなるように形成されている。連結突起28の根元側から中間付近までは、ほぼ円柱形状に形成されている。連結突起28の先端部は、中心凹所25の開口縁25aの形状に対応する形状に形成されている。つまり、連結突起28の先端部の幅は、位相によって異なる。そして、連結突起28の先端部は、中心凹所25の開口縁25aから挿入可能である。
【0047】
さらに、連結突起28の先端部の芯方向長さは、中心凹所25の円筒状空間の芯方向長さよりも短い。つまり、連結突起28が中心凹所25に挿入された状態において、連結突起28は、中心凹所25内において芯方向に相対移動可能であると共に、中心凹所25に対して揺動可能となる。
【0048】
また、連結突起28の先端部の長手方向幅は、中心凹所25の開口縁25aの短手方向幅より大きい。つまり、連結突起28の先端部を中心凹所25に挿入した後に、芯回りに相対回転させると、連結突起28の先端部は、中心凹所25の開口縁25aに対して芯方向に係止される。ただし、連結突起28の中心凹所25に対する芯方向の相対移動は、設定範囲内で許容されている。ここで、中心凹所25と連結突起28が、本発明における連結部に相当する。
【0049】
(第一直線用コマ)
第一直線用コマ30について、図9〜図14を参照して説明する。第一直線用コマ30は、本体部31と、回転規制突起37と、連結突起38とが一体的に形成されている。ここで、第一直線用コマ30は、曲げ用コマ20に対して一方端面22が相違する。ここで、第一直線用コマ30の構成部のうち、曲げ用コマ20の構成部と同一構成については、符号を、23→33、24→34、25→35、26→36、27→37、28→38に変更して示す。
【0050】
ここで、第一直線用コマ30の本体部31の一方端面32は、芯方向に直交する平面に形成されている。つまり、本体部31における一方端面32と他方端面23とは、平行に形成されている。その他の構成部は、曲げ用コマ20と同一構成であるため、説明を省略する。つまり、直線用貫通孔34aおよび曲げ用貫通孔34bは、芯方向に平行に形成されている。また、回転規制突起37,37と回転規制凹所36,36は、相互に同位相に形成されている。
【0051】
(第二直線用コマ)
第二直線用コマ40について、図15〜図18を参照して説明する。第二直線用コマ40は、本体部41と、回転規制突起47と、連結突起48とが一体的に形成されている。ここで、第二直線用コマ40は、第一直線用コマ30に対して、本体部41の一方端面42側の構成部の位相と、本体部41の他方端面33側の構成部の位相とが相違する。ここで、第二直線用コマ40の構成部のうち、第一直線用コマ30の構成部と対応する構成については、符号を、31→41、32→42、33→43、34→44、35→45、36→46、37→47、38→48に変更して示す。
【0052】
第二直線用コマ40の直線用貫通孔44aは、芯方向に進むに従って位相を変化させながら形成されている。つまり、直線用貫通孔44aは、螺旋状の一部分に相当する形状に形成されている。また、第二直線用コマ40の曲げ用貫通孔44bは、芯方向に進むに従って位相を変化させながら形成されている。つまり、曲げ用貫通孔44bは、螺旋状の一部分に相当する形状に形成されている。さらに、直線用貫通孔44aの位相変化方向と曲げ用貫通孔44bの位相変化方向とは、同一方向としている。
【0053】
また、回転規制突起47,47と回転規制凹所46,46は、位相をずらして形成されている。さらに、中心凹所45の開口縁45aの位相と、連結突起48の位相ともずらして形成されている。
【0054】
(マンドレルの詳細構成)
次に、マンドレル1の詳細構成について、図1を参照して説明する。基端部材70の先端には、第一直線用コマ30の連結突起38と同様の形状の突起が形成されている。そして、基端部材70の先端部に、それぞれのコマ20,30,40の芯方向の端面同士が対向するように、多数のコマ20,30,40が数珠つなぎに連結されている。
【0055】
まず、基端部材70の先端部に、第一曲げ部11に対応する部分を形成する8個の曲げ用コマ20が、数珠つなぎに連結されている。具体的には、基端部材70の先端部が、曲げ用コマ20の中心凹所25に挿入されており、中心凹所25の開口縁25aに対して芯方向に係合している。ここで、当該曲げ用コマ20の一方端面22の傾斜面22bは、図1の右側に位置している。
【0056】
さらに、当該曲げ用コマ20の連結突起28が、当該曲げ用コマ20に連設する曲げ用コマ20の中心凹所25に挿入されており、中心凹所25の開口縁25aに対して芯方向に係合している。また、基端部材70側の曲げ用コマ20の回転規制突起27,27が、連設される曲げ用コマ20の回転規制凹所26,26に挿入されている。つまり、回転規制突起27,27と回転規制凹所26,26の係合によって、連設される曲げ用コマ20,20同士の相対的な芯回りの回転が規制される。このようにして、8個の曲げ用コマ20が数珠つなぎに連結されている。
【0057】
このとき、連設される8個の曲げ用コマ20における非傾斜面22aが、同位相に位置している。従って、図1に示すように、曲げ用コマ20の非傾斜面22aは、当該曲げ用コマ20と連設される曲げ用コマ20と同芯状にしたとき、当該曲げ用コマ20の他方端面23の対向部分に対して平行となる。一方、連設される8個の曲げ用コマ20における傾斜面22bが、同位相に位置している。従って、曲げ用コマ20の傾斜面22bは、当該曲げ用コマ20と連設される曲げ用コマ20と同芯状にしたとき、当該曲げ用コマ20の他方端面23の対向部分に対して傾斜する。さらに、図1において、直線用貫通孔24aおよび曲げ用貫通孔24bは、直線状に連通された状態となる。
【0058】
第一曲げ部11に対応する部分を形成する8個の曲げ用コマ20の次には、直線部12に対応する部分を形成する8個の第二直線用コマ40が数珠つなぎに連結されている。連設される第二直線用コマ40同士の連結状態は、曲げ用コマ20同士の連結状態と同様である。
【0059】
ただし、第二直線用コマ40において、回転規制突起47,47と回転規制凹所46,46の位相がずれている。さらに、中心凹所45の開口縁45aの位相と、連結突起48の先端部の位相も同様にずれている。従って、連設される第二直線用コマ40における直線用貫通孔44aは、第一曲げ部11を形成する曲げ用コマ20の直線用貫通孔24aと第二曲げ部13を形成する曲げ用コマ20の直線用貫通孔24aとの間にて、位相を変化させながら形成される。また、連設される第二直線用コマ40における曲げ用貫通孔も、同様に、位相を変化させながら形成される。つまり、図1において、連設される8個の第二直線用コマ40において、直線用貫通孔44aおよび曲げ用貫通孔44bは、螺旋状に連通された状態となる。
【0060】
直線部12に対応する部分を形成する8個の直線用コマ30の次には、第二曲げ部13に対応する部分を形成する7個の曲げ用コマ20が数珠つなぎに連結されている。連設される曲げ用コマ20同士の連結状態は、上述した第一曲げ部11における曲げ用コマ20同士の連結状態と同様である。ただし、第一曲げ部11における曲げ用コマ20の傾斜面22bの位相と、第二曲げ部13における曲げ用コマ20の傾斜面22bの位相は、本実施形態においては、180°ずれている。ここで、図1において、第二曲げ部13において、曲げ用コマ20の直線用貫通孔24aおよび曲げ用貫通孔24bは、直線状に連通された状態となる。
【0061】
第二曲げ部13に対応する部分を形成する7個の曲げ用コマ20の次には、直線部14に対応する部分を形成する3個の第一直線用コマ30が数珠つなぎに連結されている。連設される第一直線用コマ30同士の連結状態は、曲げ用コマ20同士の連結状態と同様である。ここで、図1において、直線部14において、第一直線用コマ30の直線用貫通孔34aおよび曲げ用貫通孔34bは、直線状に連通された状態となる。
【0062】
そして、連設されたコマ20,30,40のそれぞれの直線用貫通孔24a,34a,44aには、可撓性を有する直線用紐状部材50が挿通されている。この直線用紐状部材50は、縄でも良いし、ロープでも良いし、金属製のワイヤでも良い。そして、直線用紐状部材50の先端部には、直線用貫通孔24a,34a,44aを挿通不能な係止部51が固定されている。つまり、直線用紐状部材50の基端側が引っ張られた場合に、直線用紐状部材50の先端側の係止部51が第一直線用コマ30の一方端面32に引っかかり、直線用紐状部材50が連設されたコマ20,30,40から抜けないようにされている。
【0063】
さらに、連設されたコマ20,30,40のそれぞれの曲げ用貫通孔24b,34b,44bには、可撓性を有する曲げ用紐状部材60が挿通されている。この曲げ用紐状部材60は、直線用紐状部材50と同様に、縄でも良いし、ロープでも良いし、金属製のワイヤでも良い。そして、曲げ用紐状部材60の先端部には、曲げ用貫通孔24b,34b,44bを挿通不能な係止部61が固定されている。つまり、曲げ用紐状部材60の基端側が引っ張られた場合に、曲げ用紐状部材60の先端側の係止部61が第一直線用コマ30の一方端面32に引っかかり、曲げ用紐状部材60が連結されたコマ20,30,40から抜けないようにされている。
【0064】
(マンドレルの動作)
次に、マンドレル1の動作について、図1および図2を参照して説明する。図1には、直線用紐状部材50の基端側を引っ張った状態を示す。ただし、この状態において、曲げ用紐状部材60は自由状態としている。図1に示すように、直線用紐状部材50の基端側を引っ張ることにより、第一曲げ部11および第二曲げ部13において、曲げ用コマ20の一方端面22の非傾斜面22aが連設する曲げ用コマ20の他方端面23に接触する。また、直線部12,14においては、連設される直線用コマ30,40の一方端面32,42と他方端面33,43とが接触する。その結果、連設されるコマ20,30,40同士の芯が直線状となるように、それぞれのコマ20,30,40が位置決めされる。つまり、マンドレル1は、直線状に形成される。
【0065】
一方、図2には、曲げ用紐状部材60の基端側を引っ張った状態を示す。ただし、この状態において、直線用紐状部材50は自由状態としている。図2に示すように、曲げ用紐状部材60の基端側を引っ張ることにより、第一曲げ部11において、曲げ用コマ20の一方端面22の傾斜面22bが連設する曲げ用コマ20の他方端面23に接触する。その結果、連設される曲げ用コマ20同士の芯が傾斜した状態に位置決めされる。
【0066】
また、直線部12,14においては、直線用紐状部材50の場合と同様に、連設される直線用コマ30,40の一方端面32,42と他方端面33,43とが接触する。その結果、マンドレル1は、曲げ部11,13においては、曲げ形状に形成され、直線部12,14においては、直線状に形成される。そして、第一曲げ部11において曲げ用コマ20の傾斜面22bの位相と、第二曲げ部13において曲げ用コマ20の傾斜面22bの位相とは、異なる位相である。従って、第一曲げ部11の曲げ位相と、第二曲げ部13の曲げ位相とは異なる状態となる。このように、マンドレル1は、複雑な形状に変形することができる。
【0067】
(パイプ体の曲げ加工方法(曲げパイプ体の製造方法))
次に、上述したマンドレル1を用いて、直線状のパイプ体100に対して曲げ加工を行う方法について、図19のフローチャートと、図1〜図2および図20〜図22を参照して説明する。ここで、パイプ体100の素材は、熱可塑性樹脂により円筒状に形成されたものを用いる。
【0068】
まず、図1に示すように、直線用紐状部材50の基端側を引っ張り、マンドレル1を直線状に位置決めする(S1)(直線状位置決め工程)。続いて、直線用紐状部材50を引っ張った状態を維持しつつ、図20に示すように、直線状のパイプ体100の素材をマンドレル1に外挿する(S2)(パイプ体外挿工程)。このとき、マンドレル1は直線状に維持されているため、直線状のパイプ体100の素材を外挿することは非常に容易となる。
【0069】
続いて、パイプ体100を加熱する(S3)(加熱工程)。そうすると、パイプ体100は熱可塑性樹脂製であるため、加熱することにより、パイプ体100が軟化する。つまり、パイプ体100は変形可能な状態となる。なお、S3の加熱工程は、S1の直線状位置決め工程の前に行っても良く、S1の直線状位置決め工程とS2のパイプ体外挿工程の間に行っても良い。
【0070】
パイプ体100を加熱した状態で、曲げ用紐状部材60の基端側を引っ張る(S4)(曲げ加工工程)。そうすると、図21に示すように、マンドレル1における第一曲げ部11および第二曲げ部13が曲げ変形する。マンドレル1の変形力によって、パイプ体100の素材が、マンドレル1の形状に倣って変形する。つまり、パイプ体100は、マンドレル1と同様に、第一曲げ部101と、第一直線部102と、第二曲げ部103と、第二直線部104とが連続的に形成される。このとき、パイプ体100において、第一曲げ部101と第二曲げ部103の曲げ位相は異なる。続いて、冷却する(S5)。そうすると、熱可塑性樹脂製のパイプ体100は、図21に示す状態で固化する。
【0071】
続いて、パイプ体100をマンドレル1から離脱させる。ここでは、説明上、パイプ体100からマンドレル1を引き抜くことにする(S6)(パイプ体離脱工程)。このとき、両紐状部材50,60を自由状態にして、基端部材70側から引き抜く。ここで、連設されたコマ20,30,40は、本体部21,31,41の対向する端面同士の離間距離を設定距離以内で離間しながら、連結突起28,38,48と中心凹所25,35,45の開口縁25a,35a,45aとが係合する。
【0072】
ここで、上述したように、紐状部材50,60を引っ張ったときには、連設するコマ20,30,40同士の端面が接触し得る。一方、紐状部材50,60を自由状態にしたときには、連設するコマ20,30,40同士が紐状部材50,60によっては規制されなくなる。従って、連設するコマ20,30,40の端面が離れる状態となり得る。このとき、連結突起28,38,48と中心凹所25,35,45の開口縁25a,35a,45aとによって、連設するコマ20,30,40の端面同士の離間距離は、設定距離以内となるように規制されている。従って、基端部材70が引き抜かれると、基端部材70側の曲げ用コマ20が、連設される曲げ用コマ20を引っ張る。この動作が、連設されるコマ20,30,40同士において連続的に伝達される。そうすると、図22のようになる。
【0073】
ここで、マンドレル1をパイプ体100から引き抜く際に、連設するコマ20,30,40の端面同士が接触した状態になってしまうと、当該コマ20,30,40同士により形成され得る形状が制限される。そうすると、コマ20,30,40をパイプ体100から引き抜くことができない場合が生じる。しかし、連結突起28,38,48と中心凹所25,35,45とにより、マンドレル1をパイプ体100から引き抜く際には、連設するコマ20,30,40の端面同士が離れた状態になる。従って、連設するコマ20,30,40により形成される形状の自由度が高くなる。そのため、コマ20,30,40がパイプ体100の形状に倣って移動することが可能となり、結果として、マンドレル1をパイプ体100から非常に容易にかつ確実に引き抜くことができるようになる。
【0074】
さらに、直線部12,14を1つのコマにより形成するのではなく、複数の直線用コマ30,40により形成している。連設する直線用コマ30,40は、端面同士が接触していない状態であれば、曲げ形状に移動することができる。従って、曲げ加工後のパイプ体100からマンドレル1を引き抜く際に、直線用コマ30,40がパイプ体100の曲げ部11,13を通過することができる。つまり、マンドレル1をパイプ体100から引き抜くことができるようになる。
【0075】
以上説明したように、本実施形態によれば、可撓性の2種の紐状部材50,60を用いている。そして、一方の紐状部材を直線用紐状部材50として適用し、他方の紐状部材を曲げ用紐状部材60として適用している。つまり、直線用紐状部材50を引っ張り、かつ、曲げ用紐状部材60を自由状態にすることで、複数の曲げ用コマ20を直線状に位置決めする。一方、曲げ用紐状部材60を引っ張り、かつ、直線用紐状部材50を自由状態にすることで、複数の曲げ用コマ20を曲げ形状に位置決めする。
【0076】
このように、どちらかの紐状部材50,60を引っ張り、他方を自由状態にすることで、複数の曲げ用コマ20を直線状または曲げ形状に位置決めできる。従って、直線状のパイプ体100に対して曲げ加工する際には、直線用紐状部材50を引っ張ってマンドレル1を直線状にしておき、パイプ体100を挿入することが容易にできる。その後、曲げ用紐状部材60を引っ張ってマンドレル1を曲げ形状にすることで、マンドレル1の変形力によってパイプ体100を曲げ加工できる。その後、マンドレル1をパイプ体100から引き抜く際に、両紐状部材50,60に何ら負荷をかけずに行えば、パイプ体100に対して何ら負荷をかけずにできる。
【0077】
また、連設されるコマ20,30,40同士において、回転規制突起27,37,47と回転規制凹所26,36,46とが凹凸係合する。つまり、連設されるコマ20,30,40における回転規制突起27,37,47と回転規制凹所26,36,46とは、連設されていないコマ20,30,40とは何ら無関係であり、連設されていないコマ20,30,40に対して回転を規制しない。さらに、曲げ用コマ20の回転規制突起27および回転規制凹所26は、当該曲げ用コマ20とそれに連設される曲げ用コマ20との曲げを許容する位置に形成されている。従って、第一曲げ部11における曲げ用コマ20の曲げ位相と、離れた位置に位置する第二曲げ部13における曲げ用コマ20の曲げ位相を異ならせることが可能となる。つまり、曲げ用紐状部材60を引っ張ることにより、マンドレル1の形状を所望の曲げ形状にすることができる。つまり、所望の曲げ形状のパイプ体100を加工することができる。例えば、複数の曲げ部の曲げ位相(曲げ方向)が異なるパイプ体100や、螺旋形状のパイプ体100など、複雑な曲げ形状のパイプ体100を加工することができる。
【0078】
<第二実施形態>
第二実施形態のパイプ体の曲げ加工方法について、図23を参照して説明する。本実施形態は、パイプ体100をゴム製とした場合の方法である。図1に示すように、直線用紐状部材50を引っ張り、マンドレル1を直線状にする(S11)(直線状位置決め工程)。続いて、直線用紐状部材50を引っ張った状態を維持しつつ、図20に示すように、直線状のパイプ体100の素材をマンドレル1に外挿する(S12)(パイプ体外挿工程)。
【0079】
続いて、曲げ用紐状部材60の基端側を引っ張る(S13)(曲げ加工工程)。そうすると、図21に示すように、マンドレル1における第一曲げ部11および第二曲げ部13が曲げ変形する。マンドレル1の変形力によって、パイプ体100が、マンドレル1の形状に倣って変形する。続いて、パイプ体100に熱を加えて加硫する(S14)。冷却した後に、パイプ体100からマンドレル1を離脱させる(S15)(パイプ体離脱工程)。このとき、図22に示すように、両紐状部材50,60を自由状態にして、基端部材70側から引き抜く。本実施形態によれば、第一実施形態に対して、パイプ体100の材質が異なるだけで、同様の効果を奏する。
【0080】
<その他>
上記実施形態において、マンドレル1を直線状に形成する際に、直線用紐状部材50を引っ張り、曲げ用紐状部材60を自由状態とした。また、マンドレル1を曲げ形状にする際に、曲げ用紐状部材60を引っ張り、直線用紐状部材50を自由状態とした。この他に、両紐状部材50,60を引っ張った状態を維持した場合にも、マンドレル1を直線状または曲げ形状にすることができる。すなわち、直線用紐状部材50の引張力を曲げ用紐状部材60の引張力より大きくすることで、マンドレル1を直線状に形成することができる。また、曲げ用紐状部材60の引張力を直線用紐状部材50の引張力より大きくすることで、マンドレル1を曲げ形状に位置決めすることができる。
【符号の説明】
【0081】
1:マンドレル、 11,13:曲げ部、 12,14:直線部、 20:曲げ用コマ、 21,31,41:本体部、 22,32,42:一方端面、 22a,32a,42a:非傾斜面(平行面)、 22b,32b,42b:傾斜面、 23:他方端面、 24a,34a,44a:直線用貫通孔、 24b,34b,44b:曲げ用貫通孔、 25,35,45:中心凹所(連結部)、 26,36,46:回転規制凹所(回転規制部)、 27,37,47:回転規制突起(回転規制部)、 28,38,48:連結突起(連結部)、 30,40:直線用コマ、 50:直線用紐状部材、 60:曲げ用紐状部材、 100:パイプ体、 101:第一曲げ部、 102:第一直線部、 103:第二曲げ部、 104:第二直線部
【技術分野】
【0001】
本発明は、曲げ加工用マンドレル、および、それを用いたパイプ体の曲げ加工方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
樹脂製やゴム製のパイプ体の曲げ加工を行う場合、直線状のパイプ体にマンドレルを挿入して、当該マンドレルを曲げた状態に変形させることで、マンドレルの変形力によってパイプ体を曲げ加工することがある。このマンドレルとして、例えば、特開昭58−100918号公報(特許文献1)に記載されたものがある。
【0003】
特許文献1に記載のマンドレルは、複数のコマの中心にワイヤを挿通することにより、複数のコマを数珠つなぎに連結して形成されている。それぞれのコマの当接面が、連設されるコマに対して角度を有するように形成されている。そして、コマの中心に挿通されたワイヤを引っ張ることにより、数珠つなぎに連結された複数のコマが曲がった状態になる。さらに、複数のコマに対して曲げ位相(曲げ方向)に対して直角になるように板バネが取り付けられている。これにより、複数のコマが曲がった状態に変化する際に複数のコマの方向規制を行うと共に、複数のコマが直線状に復帰するような力が作用するようにしている。
【0004】
なお、パイプ体の外周側から力を加えてパイプ体の曲げ加工を行う場合に、パイプ体がつぶれないようにするために、パイプ体の中に挿入されるマンドレルが、例えば、特開平6−335730号公報(特許文献2)および実開昭62−20710号公報(特許文献3)に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭58−100918号公報
【特許文献2】特開平6−335730号公報
【特許文献3】実開昭62−20710号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載されているように、マンドレルの変形力によってパイプ体を曲げ加工する場合には、板バネを用いていることにより、二つの課題を有する。第一の課題は、以下の通りである。パイプ体を曲げ加工した後の状態において、曲げられた状態の板バネのバネ力によって、パイプ体にはマンドレルから常に負荷が作用している。ここで、曲げ加工後のパイプ体からマンドレルを引き抜く際には、パイプ体に負荷をかけずに行うことが望まれる。しかし、板バネの作用によって、曲げ加工後のパイプ体からマンドレルを引き抜く際に、パイプ体に負荷をかけることなく行うことは容易ではない。例えば、ワイヤの引張力を低減しながらパイプ体からマンドレルを引き抜くと、マンドレルは、パイプ体に対してパイプ体を直線状にするような力を与える。
【0007】
また、第二の課題は、以下の通りである。板バネの作用によって、パイプ体の曲がる位相(曲がる方向)が一方向のみに制限される。例えば、複数箇所の曲げ部がそれぞれ異なる位相(方向)となるようなパイプ体、螺旋形状に曲げられたパイプ体など、複雑な曲げ形状を有するパイプ体を加工することができない。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、第一の課題を解決することができる曲げ加工用マンドレルおよびそのマンドレルを用いたパイプ体の曲げ加工方法を提供することを目的とする。また、本発明は、第二の課題を解決することができる曲げ加工用マンドレルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)第一の曲げ加工用マンドレル
・本発明に係る曲げ加工用マンドレルは、パイプ体の中に挿入して前記パイプ体の曲げ加工を行う曲げ加工用マンドレルであって、複数のコマと、複数の前記コマの芯方向の端面同士を対向するように数珠つなぎに連結する可撓性の紐状部材とを備える。
前記コマは、曲げ用コマを備え、前記曲げ用コマの一方端面の半分は、連設された前記コマと同芯状にしたときに、当該コマの他方端面の対向部分に対して平行な平行面に形成され、前記曲げ用コマの前記一方端面の残りの半分は、連設された前記コマと同芯状にしたときに、当該コマの他方端面の対向部分に対して傾斜する傾斜面に形成され、前記曲げ用コマには、前記平行面側にて両端面間を貫通する直線用貫通孔と前記傾斜面側にて両端面間を貫通する曲げ用貫通孔とが形成される。
【0010】
前記紐状部材は、前記曲げ用コマの前記直線用貫通孔に挿通されており、引っ張ることにより前記曲げ用コマの一方端面の前記平行面と当該曲げ用コマに連設する前記コマの他方端面とを接触させて、前記曲げ用コマの芯と当該曲げ用コマに連設する前記コマの芯とを直線状に位置決めする直線用紐状部材と、前記曲げ用コマの前記曲げ用貫通孔に挿通されており、引っ張ることにより前記曲げ用コマの一方端面の前記傾斜面と当該曲げ用コマに連設する前記コマの他方端面とを接触させて、前記曲げ用コマの芯と当該曲げ用コマに連設する前記コマの芯とを傾斜した状態に位置決めする曲げ用紐状部材とを備える。
【0011】
本発明によれば、可撓性の2種の紐状部材を用いている。そして、一方の紐状部材を直線用紐状部材として適用し、他方の紐状部材を曲げ用紐状部材として適用している。つまり、直線用紐状部材を引っ張り、かつ、曲げ用紐状部材を自由状態にすることで、複数の曲げ用コマを直線状に位置決めする。一方、曲げ用紐状部材を引っ張り、かつ、直線用紐状部材を自由状態にすることで、複数の曲げ用コマを曲げ形状に位置決めする。
【0012】
このように、どちらかの紐状部材を引っ張り、他方を自由状態にすることで、複数の曲げ用コマを直線状または曲げ形状に位置決めできる。従って、直線状のパイプ体に対して曲げ加工する際には、直線用紐状部材を引っ張ってマンドレルを直線状にしておき、パイプ体を挿入することが容易にできる。その後、曲げ用紐状部材を引っ張ってマンドレルを曲げ形状にすることで、マンドレルの変形力によってパイプ体を曲げ加工できる。その後、マンドレルをパイプ体から引き抜く際に、両紐状部材に何ら負荷をかけずに行えば、パイプ体に対して何ら負荷をかけずにできる。なお、直線用紐状部材の引張力を曲げ用紐状部材の引張力より大きくすることで、複数の曲げ用コマを直線状に位置決めすることもできる。また、曲げ用紐状部材の引張力を直線用紐状部材の引張力より大きくすることで、複数の曲げ用コマを曲げ形状に位置決めすることもできる。
【0013】
ここで、従来において、板バネに外力を加えることでマンドレルを曲げ形状に変形させ、板バネへの復元力を利用してマンドレルを直線状にしている。つまり、外力は、板バネを変形させる方向のみに付与している。これに対して、本発明によれば、マンドレルを直線状にするためにも外力を付与し、マンドレルを曲げ形状にするためにも外力を付与している。従って、両紐状部材に対して何ら負荷をかけなければ、マンドレルは自由な形状になる。そこで、本発明によれば、マンドレルをパイプ体から引き抜く際に、パイプ体に対して負荷をかけることなく行うことができる。なお、連設されるコマとは、数珠つなぎに複数のコマが連結された状態において、隣りに繋がれているコマを意味する。
【0014】
・また、複数の前記コマは、複数の前記曲げ用コマを備え、前記曲げ用紐状部材は、各前記曲げ用コマの前記曲げ用貫通孔同士に挿通され、前記直線用紐状部材は、各前記曲げ用コマの前記直線用貫通孔同士に挿通され、各前記コマの両端面には、凹凸状に形成され、連設された前記コマ同士の相対的な芯回りの回転を規制する回転規制部を備えるようにしてもよい。
【0015】
つまり、連設されるコマの相対的な位相が規制されている。特に、連設されるコマに設けられた回転規制部は、当該コマの両端面に凹凸状に形成されている。従って、あるコマの一方端面に形成される回転規制部は、当該コマの端面に対向するコマの回転規制部に対して回転規制する。つまり、当該回転規制部は、連設されていないコマとは何ら無関係であり、連設されていないコマに対して回転を規制しない。さらに、曲げ用コマの回転規制部は、当該曲げ用コマと当該曲げ用コマに連設されるコマとの曲げを許容する位置に形成されることになる。従って、離れた位置に位置する曲げ用コマの曲げ位相を異ならせることが可能となる。これにより、曲げ用紐状部材を引っ張ることにより、マンドレルの形状を所望の曲げ形状にすることができる。つまり、所望の曲げ形状のパイプ体を加工することができる。例えば、複数の曲げ部の曲げ位相(曲げ方向)が異なるパイプ体や、螺旋形状のパイプ体など、複雑な曲げ形状のパイプ体を加工することができる。
【0016】
・また、各前記コマは、連設する前記コマ同士を連結すると共に、対向する端面同士を接触可能にし、かつ、対向する端面同士の離間距離を設定距離以内で離間可能にする連結部を備えるようにしてもよい。
【0017】
つまり、直線状紐状部材または曲げ用紐状部材を引っ張ったときには、連設するコマ同士の端面が接触し得る。一方、直線状紐状部材および曲げ用紐状部材を自由状態にしたときには、連設するコマ同士が紐状部材によっては規制されなくなる。従って、連設するコマの端面が離れる状態となり得る。このとき、連結部によって、連設するコマの端面の離間距離は、設定距離以内となるように規制されている。
【0018】
このように、連設するコマの端面の離間距離を制限することで、非常に容易にかつ確実に、マンドレルを曲げ加工後のパイプ体から引き抜くことができる。この理由について説明する。マンドレルをパイプ体から引き抜く際に、連設するコマの端面が接触した状態になってしまうと、当該コマ同士により形成され得る形状が制限されるため、コマをパイプ体から引き抜くことができない場合が生じる。しかし、連結部を備えることで、マンドレルをパイプ体から引き抜く際には、連設するコマの端面が離れた状態になることで、連設するコマにより形成される形状の自由度が高くなる。そのため、コマがパイプ体の形状に倣って移動することが可能となり、結果として、マンドレルをパイプ体から引き抜くことができるようになる。
【0019】
・また、前記コマは、前記曲げ用コマと、それぞれ連設される複数の直線用コマと、を備え、各前記直線用コマの一方端面は、連設された前記コマと同芯状にしたときに、当該コマの他方端面の対向部分に対して平行な平行面に形成され、前記直線用コマには、両端面間を貫通し前記直線用紐状部材を挿通する直線用貫通孔と両端面間を貫通し前記曲げ用紐状部材を挿通する曲げ用貫通孔とが形成されるようにしてもよい。
【0020】
つまり、加工後のパイプ体における曲げ部および直線部の両者ともに、それぞれ複数のコマによりマンドレルを形成する。連設する直線用コマは、端面同士が接触していない状態であれば、曲げ形状に移動することができる。従って、曲げ加工後のパイプ体からマンドレルを引き抜く際に、直線用コマがパイプ体の曲げ部を通過することができる。
【0021】
・また、加工後の前記パイプ体は、第一曲げ部と、前記第一曲げ部の曲げ位相に対して異なる位相に曲げられる第二曲げ部と、前記第一曲げ部と前記第二曲げ部との間の直線部とを備え、前記直線部に配置される複数の前記直線用コマの前記曲げ用貫通孔は、前記第一曲げ部を形成する前記曲げ用コマの前記曲げ用貫通孔と前記第二曲げ部を形成する前記曲げ用コマの前記曲げ用貫通孔との間にて、位相を変化させながら形成され、前記直線部に配置される複数の前記直線用コマの前記直線用貫通孔は、前記第一曲げ部を形成する前記曲げ用コマの前記直線用貫通孔と前記第二曲げ部を形成する前記曲げ用コマの前記直線用貫通孔との間にて、位相を変化させながら形成されるようにしてもよい。
【0022】
ここで、加工後のパイプ体が曲げ位相の異なる曲げ部を複数有する場合には、それぞれの曲げ部に対応する曲げ用コマの位相が、それぞれの曲げ部の曲げ内側となるようにしなければならない。そうすると、それぞれの曲げ部に対応する曲げ用コマの位相が、異なる位相となる。つまり、第一曲げ部に対応する曲げ用コマと第二曲げ部に対応する曲げ用コマとの間において、曲げ用紐状部材を捻るように位相をずらす必要がある。そこで、本発明によれば、加工後のパイプ体が第一曲げ部と第二曲げ部との間に直線部を有する場合には、直線部に対応する直線用コマを利用して、曲げ用紐状部材を捻るように位相をずらすことができる。これにより、複雑な曲げ形状のパイプ体を確実に加工することができる。
【0023】
(2)第二の曲げ加工用マンドレル
・また、本発明に係る曲げ加工用マンドレルは、パイプ体の中に挿入して前記パイプ体の曲げ加工を行う曲げ加工用マンドレルであって、複数のコマと、複数の前記コマの芯方向の端面同士を対向するように数珠つなぎに連結する可撓性の紐状部材とを備える。複数の前記コマは、複数の曲げ用コマを備え、各前記曲げ用コマの一方端面は、連設された前記コマと同芯状にしたときに、当該曲げ用コマの他方端面に対して傾斜する傾斜面に形成され、各前記曲げ用コマには、両端面間を貫通する曲げ用貫通孔が形成される。
前記紐状部材は、前記曲げ用貫通孔同士に挿通されており、引っ張ることにより前記曲げ用コマの一方端面の前記傾斜面と当該曲げ用コマに連設する前記コマの他方端面とを接触させて、前記曲げ用コマの芯と当該曲げ用コマに連設する前記コマの芯とを傾斜した状態に位置決めする曲げ用紐状部材を備える。各前記コマの両端面には、凹凸状に形成され、連設された前記コマ同士の相対的な芯回りの回転を規制する回転規制部を備える。
【0024】
本発明によれば、可撓性の曲げ用紐状部材を引っ張ることで、複数の曲げ用コマを曲げ形状に位置決めする。つまり、直線状のパイプ体を直線状のマンドレルに挿入した後に、曲げ用紐状部材を引っ張ることで、パイプ体を曲げ加工できる。さらに、連設されるコマの相対的な位相が規制されている。特に、連設されるコマに設けられた回転規制部は、当該コマの両端面に凹凸状に形成されている。従って、あるコマの一方端面に形成される回転規制部は、当該コマの端面に対向するコマの回転規制部に対して回転規制する。つまり、当該回転規制部は、連設されていないコマとは何ら無関係であり、連設されていないコマに対して回転を規制しない。さらに、曲げ用コマの回転規制部は、当該曲げ用コマと当該曲げ用コマに連設されるコマとの曲げを許容する位置に形成されることになる。従って、離れた位置に位置する曲げ用コマの曲げ位相を異ならせることが可能となる。これにより、曲げ用コマを引っ張ることにより、マンドレルの形状を所望の曲げ形状にすることができる。つまり、所望の曲げ形状のパイプ体を加工することができる。例えば、複数の曲げ部の曲げ位相(曲げ方向)が異なるパイプ体や、螺旋形状のパイプ体など、複雑な曲げ形状のパイプ体を加工することができる。
【0025】
・また、各前記コマは、連設する前記コマ同士を連結すると共に、対向する端面同士を接触可能にし、かつ、対向する端面同士の離間距離を設定距離以内で離間可能にする連結部を備えるようにしてもよい。
【0026】
つまり、紐状部材を引っ張ったときには、連設するコマ同士の端面が接触し得る。一方、紐状部材を自由状態にしたときには、連設するコマ同士が紐状部材によっては規制されなくなる。従って、連設するコマの端面が離れる状態となり得る。このとき、連結部によって、連設するコマの端面の離間距離は、設定距離以内となるように規制されている。
【0027】
このように、連設するコマの端面の離間距離を制限することで、非常に容易にかつ確実に、マンドレルを曲げ加工後のパイプ体から引き抜くことができる。この理由について説明する。マンドレルをパイプ体から引き抜く際に、連設するコマの端面が接触した状態になってしまうと、当該コマ同士により形成され得る形状が制限されるため、コマをパイプ体から引き抜くことができない場合が生じる。しかし、連結部を備えることで、マンドレルをパイプ体から引き抜く際には、連設するコマの端面が離れた状態になることで、連設するコマにより形成される形状の自由度が高くなる。そのため、コマがパイプ体の形状に倣って移動することが可能となり、結果として、マンドレルをパイプ体から引き抜くことができるようになる。
【0028】
・また、前記コマは、前記曲げ用コマと、それぞれ連設される複数の直線用コマと、を備え、各前記直線用コマの一方端面は、連設された前記コマと同芯状にしたときに、当該コマの他方端面の対向部分に対して平行な平行面に形成され、前記直線用コマには、両端面間を貫通し前記曲げ用紐状部材を挿通する曲げ用貫通孔が形成されるようにしてもよい。
【0029】
つまり、加工後のパイプ体における曲げ部および直線部の両者ともに、それぞれ複数のコマによりマンドレルを形成する。連設する直線用コマは、端面同士が接触していない状態であれば、曲げ形状に移動することができる。従って、曲げ加工後のパイプ体からマンドレルを引き抜く際に、直線用コマがパイプ体の曲げ部を通過することができる。
【0030】
・また、加工後の前記パイプ体は、第一曲げ部と、前記第一曲げ部の曲げ位相に対して異なる位相に曲げられる第二曲げ部と、前記第一曲げ部と前記第二曲げ部との間の直線部とを備え、前記直線部に配置される複数の前記直線用コマの前記曲げ用貫通孔は、前記第一曲げ部を形成する前記曲げ用コマの前記曲げ用貫通孔と前記第二曲げ部を形成する前記曲げ用コマの前記曲げ用貫通孔との間にて、位相を変化させながら形成されるようにしてもよい。
【0031】
ここで、加工後のパイプ体が曲げ位相の異なる曲げ部を複数有する場合には、それぞれの曲げ部に対応する曲げ用コマの位相が、それぞれの曲げ部の曲げ内側となるようにしなければならない。そうすると、それぞれの曲げ部に対応する曲げ用コマの位相が、異なる位相となる。つまり、第一曲げ部に対応する曲げ用コマと第二曲げ部に対応する曲げ用コマとの間において、曲げ用紐状部材を捻るように位相をずらす必要がある。そこで、本発明によれば、加工後のパイプ体が第一曲げ部と第二曲げ部との間に直線部を有する場合には、直線部に対応する直線用コマを利用して、曲げ用紐状部材を捻るように位相をずらすことができる。これにより、複雑な曲げ形状のパイプ体を確実に加工することができる。
【0032】
(3)曲げ加工用マンドレルを用いたパイプ体の曲げ加工方法
・本発明に係るパイプ体の曲げ加工方法は、上述した第一の曲げ加工用マンドレルを用いたパイプ体の曲げ加工方法であって、前記直線状紐状部材を引っ張ることにより、前記曲げ用コマの芯と当該曲げ用コマに連設する前記コマの芯とを直線状に位置決めして、前記曲げ加工用マンドレルを直線状にする直線状位置決め工程と、直線状に形成された前記パイプ体を、直線状に位置決めされた前記曲げ加工用マンドレルに外挿するパイプ体外挿工程と、前記曲げ用紐状部材を引っ張ることにより、前記曲げ用コマの芯と当該曲げ用コマに連設する前記コマの芯とを傾斜した状態に位置決めして、前記パイプ体を曲げ加工する曲げ工程とを備える。このようにすることで、確実にかつ容易にパイプ体の曲げ加工ができる。
【0033】
・また、前記曲げ工程の後に、前記曲げ用紐状部材および前記直線用紐状部材を自由にした状態で、前記曲げ加工用マンドレルから前記パイプ体を離脱させるパイプ体離脱工程を備える。これにより、曲げ加工用マンドレルからパイプ体を離脱させること、換言するとパイプ体から曲げ加工用マンドレルを引き抜くことが容易にできる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本実施形態の曲げ加工用マンドレルを直線状にした図であり、図19のS1の状態を示す。
【図2】本実施形態の曲げ加工用マンドレルを部分的に曲げ形状にした図である。
【図3】曲げ加工用マンドレルを構成する曲げ用コマの正面図である。
【図4】図3のIV方向から見た図である。
【図5】図3のV方向から見た図である。
【図6】図3のVI方向から見た図である。
【図7】図5のVII−VII断面図である。
【図8】図5のVIII−VIII断面図である。
【図9】曲げ加工用マンドレルを構成する第一直線用コマの正面図である。
【図10】図9のX方向から見た図である。
【図11】図9のXI方向から見た図である。
【図12】図9のXII方向から見た図である。
【図13】図11のXIII−XIII断面図である。
【図14】図11のXIV−XIV断面図である。
【図15】曲げ加工用マンドレルを構成する第二直線用コマの正面図である。
【図16】図15のXVI方向から見た図である。
【図17】図15のXVII方向から見た図である。
【図18】図15のXVIII方向から見た図である。
【図19】図1の曲げ加工用マンドレルを用いた樹脂製パイプ体の曲げ加工方法を示すフローチャートである。
【図20】図19のS2の状態を示す。
【図21】図19のS4の状態を示す。
【図22】図19のS6の状態を示す。
【図23】図1の曲げ加工用マンドレルを用いたゴム製パイプ体の曲げ加工方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0035】
<第一実施形態>
第一実施形態の曲げ加工用マンドレル(以下、「マンドレル」と称する)およびパイプ体の曲げ加工方法について、図1〜図22を参照して説明する。
【0036】
(マンドレルの概要)
マンドレル1は、主として樹脂製パイプ体またはゴム製パイプ体に曲げ加工を施すための部材である。そして、直線状のパイプ体にマンドレル1を挿入して、マンドレル1を曲げ形状に変形させることにより、マンドレル1の変形力によってパイプ体を曲げ加工する。なお、マンドレル1は、金属製パイプ体の曲げ加工に対しても、パイプ体の剛性によって適用可能である。
【0037】
このマンドレル1は、図1および図2に示すように、複数のコマ20,30,40を2本の可撓性の紐状部材50,60により数珠つなぎに連結されている。そして、マンドレル1の基端部には、基端部材70が設けられており、紐状部材50,60により、複数のコマ20,30,40と連結されている。以下、それぞれの構成部材について説明した後に、マンドレル1の詳細構成について説明する。
【0038】
(コマの詳細構成)
マンドレル1を構成するコマには、曲げ用コマ20、第一直線用コマ30および第二直線用コマ40が含まれている。曲げ用コマ20は、図2におけるマンドレル1の曲げ部11,13に対応する部分を形成する。第一直線用コマ30は、先端部に繋がれており、図2における直線部14に対応する部分を形成する。第二直線用コマ40は、第一曲げ部11と第二曲げ部13との間に位置する直線部12に対応する部分を形成する。以下、それぞれのコマ20,30,40について説明する。
【0039】
(曲げ用コマ)
曲げ用コマ20について図3〜図8を参照して説明する。曲げ用コマ20は、樹脂により形成されており、本体部21と、回転規制突起27と、連結突起28とが一体的に形成されている。
【0040】
本体部21は、ほぼ円板状に形成されている。ここで、本体部21の芯方向は、円板形状の中心軸とする。図3および図5に示すように、本体部21の芯方向の一方端面22(図3の上面)の半分(図3の左半分)は、芯方向に直交する非傾斜面22a(本発明における「平行面」に相当する)に形成されている。一方端面22の残りの半分(図3の右半分)は、芯方向に対して傾斜する傾斜面22bに形成されている。本体部21の芯方向の他方端面23(図3の下面)は、芯方向に直交する平面に形成されている。つまり、本体部21の一方端面22の非傾斜面22aと他方端面23とは、平行に形成されている。一方、本体部21の一方端面22の傾斜面22bと他方端面23とは、平行ではなく、傾斜している。つまり、図2に示すように、非傾斜面22a側における本体部21の芯方向幅よりも、傾斜面22b側における本体部21の芯方向幅の方が小さくなるように形成されている。
【0041】
また、図5〜図7に示すように、本体部21には、芯方向に平行な2つの貫通孔24a,24bが形成されている。一方の貫通孔24aは、非傾斜面22aのうち周方向の中央部と他方端面23との間を、芯方向に平行に貫通する。ここで、一方の貫通孔24aは、マンドレル1を直線状にするための貫通孔であるため、以下において、直線用貫通孔と称する。
【0042】
他方の貫通孔24bは、傾斜面22bのうち周方向の中央部と他方端面23との間を、芯方向に平行に貫通する。そして、他方の貫通孔24bは、傾斜面22bの周方向において、本体部21の芯方向幅が狭くなる位相に形成されている。従って、他方の貫通孔24bと直線用貫通孔24aとは、本体部21の芯に対して線対称に形成されている。ここで、他方の貫通孔24bは、マンドレル1を曲げ形状にするための貫通孔であるため、以下において、曲げ用貫通孔と称する。
【0043】
さらに、図6〜図8に示すように、本体部21には、他方端面23側に中心に開口する中心凹所25が形成されている。この中心凹所25は、本体部21の芯中心に形成されており、円筒状空間を有している。さらに、中心凹所25の開口縁25aは、中心凹所25の円筒状空間の内径よりも狭くなるように形成されている。この開口縁25aは、図6に示すように、長円形に近似した形状に形成されている。そして、開口縁25aの開口幅の狭い部分が、貫通孔24a,24bの形成されている位相の部分に位置し、開口幅の広い部分が、それに直交する位相の部分に位置する。
【0044】
回転規制凹所26,26は、本体部21の他方端面23側に、その中心からそれぞれ径方向の反対側にずれた位置に開口するように形成されている。つまり、回転規制凹所26,26は、本体部21の芯に対して線対称に形成されている。回転規制凹所26,26は、長方形または長円形の開口を有する。回転規制凹所26,26の長手方向が、本体部21の径方向に一致するように形成されている。
【0045】
回転規制突起27,27は、本体部21の一方端面22側に、その中心からそれぞれ径方向反対側にずれた位置に設けられている。つまり、回転規制突起27,27は、本体部21の芯に対して線対称に形成されている。回転規制突起27,27は、芯方向から見た場合に、長方形または長円形に形成されている。回転規制突起27,27の長手方向が、本体部21の径方向に一致するように形成されている。さらに、回転規制突起27,27は、回転規制凹所26,26に入り込むことができるような形状に形成されている。そして、回転規制突起27,27は、非傾斜面22aと傾斜面22bとの境界部分に形成されている。つまり、回転規制突起27,27と回転規制凹所26,26は、相互に同位相に形成されている。ここで、回転規制凹所26,26と回転規制突起27,27が、本発明における凹凸状に形成された回転規制部に相当する。
【0046】
連結突起28は、本体部21の一方端面22側の中心から芯方向に突出するように設けられている。連結突起28は、キノコ状に形成されている。つまり、連結突起28の先端側の幅が根元側より大きくなるように形成されている。連結突起28の根元側から中間付近までは、ほぼ円柱形状に形成されている。連結突起28の先端部は、中心凹所25の開口縁25aの形状に対応する形状に形成されている。つまり、連結突起28の先端部の幅は、位相によって異なる。そして、連結突起28の先端部は、中心凹所25の開口縁25aから挿入可能である。
【0047】
さらに、連結突起28の先端部の芯方向長さは、中心凹所25の円筒状空間の芯方向長さよりも短い。つまり、連結突起28が中心凹所25に挿入された状態において、連結突起28は、中心凹所25内において芯方向に相対移動可能であると共に、中心凹所25に対して揺動可能となる。
【0048】
また、連結突起28の先端部の長手方向幅は、中心凹所25の開口縁25aの短手方向幅より大きい。つまり、連結突起28の先端部を中心凹所25に挿入した後に、芯回りに相対回転させると、連結突起28の先端部は、中心凹所25の開口縁25aに対して芯方向に係止される。ただし、連結突起28の中心凹所25に対する芯方向の相対移動は、設定範囲内で許容されている。ここで、中心凹所25と連結突起28が、本発明における連結部に相当する。
【0049】
(第一直線用コマ)
第一直線用コマ30について、図9〜図14を参照して説明する。第一直線用コマ30は、本体部31と、回転規制突起37と、連結突起38とが一体的に形成されている。ここで、第一直線用コマ30は、曲げ用コマ20に対して一方端面22が相違する。ここで、第一直線用コマ30の構成部のうち、曲げ用コマ20の構成部と同一構成については、符号を、23→33、24→34、25→35、26→36、27→37、28→38に変更して示す。
【0050】
ここで、第一直線用コマ30の本体部31の一方端面32は、芯方向に直交する平面に形成されている。つまり、本体部31における一方端面32と他方端面23とは、平行に形成されている。その他の構成部は、曲げ用コマ20と同一構成であるため、説明を省略する。つまり、直線用貫通孔34aおよび曲げ用貫通孔34bは、芯方向に平行に形成されている。また、回転規制突起37,37と回転規制凹所36,36は、相互に同位相に形成されている。
【0051】
(第二直線用コマ)
第二直線用コマ40について、図15〜図18を参照して説明する。第二直線用コマ40は、本体部41と、回転規制突起47と、連結突起48とが一体的に形成されている。ここで、第二直線用コマ40は、第一直線用コマ30に対して、本体部41の一方端面42側の構成部の位相と、本体部41の他方端面33側の構成部の位相とが相違する。ここで、第二直線用コマ40の構成部のうち、第一直線用コマ30の構成部と対応する構成については、符号を、31→41、32→42、33→43、34→44、35→45、36→46、37→47、38→48に変更して示す。
【0052】
第二直線用コマ40の直線用貫通孔44aは、芯方向に進むに従って位相を変化させながら形成されている。つまり、直線用貫通孔44aは、螺旋状の一部分に相当する形状に形成されている。また、第二直線用コマ40の曲げ用貫通孔44bは、芯方向に進むに従って位相を変化させながら形成されている。つまり、曲げ用貫通孔44bは、螺旋状の一部分に相当する形状に形成されている。さらに、直線用貫通孔44aの位相変化方向と曲げ用貫通孔44bの位相変化方向とは、同一方向としている。
【0053】
また、回転規制突起47,47と回転規制凹所46,46は、位相をずらして形成されている。さらに、中心凹所45の開口縁45aの位相と、連結突起48の位相ともずらして形成されている。
【0054】
(マンドレルの詳細構成)
次に、マンドレル1の詳細構成について、図1を参照して説明する。基端部材70の先端には、第一直線用コマ30の連結突起38と同様の形状の突起が形成されている。そして、基端部材70の先端部に、それぞれのコマ20,30,40の芯方向の端面同士が対向するように、多数のコマ20,30,40が数珠つなぎに連結されている。
【0055】
まず、基端部材70の先端部に、第一曲げ部11に対応する部分を形成する8個の曲げ用コマ20が、数珠つなぎに連結されている。具体的には、基端部材70の先端部が、曲げ用コマ20の中心凹所25に挿入されており、中心凹所25の開口縁25aに対して芯方向に係合している。ここで、当該曲げ用コマ20の一方端面22の傾斜面22bは、図1の右側に位置している。
【0056】
さらに、当該曲げ用コマ20の連結突起28が、当該曲げ用コマ20に連設する曲げ用コマ20の中心凹所25に挿入されており、中心凹所25の開口縁25aに対して芯方向に係合している。また、基端部材70側の曲げ用コマ20の回転規制突起27,27が、連設される曲げ用コマ20の回転規制凹所26,26に挿入されている。つまり、回転規制突起27,27と回転規制凹所26,26の係合によって、連設される曲げ用コマ20,20同士の相対的な芯回りの回転が規制される。このようにして、8個の曲げ用コマ20が数珠つなぎに連結されている。
【0057】
このとき、連設される8個の曲げ用コマ20における非傾斜面22aが、同位相に位置している。従って、図1に示すように、曲げ用コマ20の非傾斜面22aは、当該曲げ用コマ20と連設される曲げ用コマ20と同芯状にしたとき、当該曲げ用コマ20の他方端面23の対向部分に対して平行となる。一方、連設される8個の曲げ用コマ20における傾斜面22bが、同位相に位置している。従って、曲げ用コマ20の傾斜面22bは、当該曲げ用コマ20と連設される曲げ用コマ20と同芯状にしたとき、当該曲げ用コマ20の他方端面23の対向部分に対して傾斜する。さらに、図1において、直線用貫通孔24aおよび曲げ用貫通孔24bは、直線状に連通された状態となる。
【0058】
第一曲げ部11に対応する部分を形成する8個の曲げ用コマ20の次には、直線部12に対応する部分を形成する8個の第二直線用コマ40が数珠つなぎに連結されている。連設される第二直線用コマ40同士の連結状態は、曲げ用コマ20同士の連結状態と同様である。
【0059】
ただし、第二直線用コマ40において、回転規制突起47,47と回転規制凹所46,46の位相がずれている。さらに、中心凹所45の開口縁45aの位相と、連結突起48の先端部の位相も同様にずれている。従って、連設される第二直線用コマ40における直線用貫通孔44aは、第一曲げ部11を形成する曲げ用コマ20の直線用貫通孔24aと第二曲げ部13を形成する曲げ用コマ20の直線用貫通孔24aとの間にて、位相を変化させながら形成される。また、連設される第二直線用コマ40における曲げ用貫通孔も、同様に、位相を変化させながら形成される。つまり、図1において、連設される8個の第二直線用コマ40において、直線用貫通孔44aおよび曲げ用貫通孔44bは、螺旋状に連通された状態となる。
【0060】
直線部12に対応する部分を形成する8個の直線用コマ30の次には、第二曲げ部13に対応する部分を形成する7個の曲げ用コマ20が数珠つなぎに連結されている。連設される曲げ用コマ20同士の連結状態は、上述した第一曲げ部11における曲げ用コマ20同士の連結状態と同様である。ただし、第一曲げ部11における曲げ用コマ20の傾斜面22bの位相と、第二曲げ部13における曲げ用コマ20の傾斜面22bの位相は、本実施形態においては、180°ずれている。ここで、図1において、第二曲げ部13において、曲げ用コマ20の直線用貫通孔24aおよび曲げ用貫通孔24bは、直線状に連通された状態となる。
【0061】
第二曲げ部13に対応する部分を形成する7個の曲げ用コマ20の次には、直線部14に対応する部分を形成する3個の第一直線用コマ30が数珠つなぎに連結されている。連設される第一直線用コマ30同士の連結状態は、曲げ用コマ20同士の連結状態と同様である。ここで、図1において、直線部14において、第一直線用コマ30の直線用貫通孔34aおよび曲げ用貫通孔34bは、直線状に連通された状態となる。
【0062】
そして、連設されたコマ20,30,40のそれぞれの直線用貫通孔24a,34a,44aには、可撓性を有する直線用紐状部材50が挿通されている。この直線用紐状部材50は、縄でも良いし、ロープでも良いし、金属製のワイヤでも良い。そして、直線用紐状部材50の先端部には、直線用貫通孔24a,34a,44aを挿通不能な係止部51が固定されている。つまり、直線用紐状部材50の基端側が引っ張られた場合に、直線用紐状部材50の先端側の係止部51が第一直線用コマ30の一方端面32に引っかかり、直線用紐状部材50が連設されたコマ20,30,40から抜けないようにされている。
【0063】
さらに、連設されたコマ20,30,40のそれぞれの曲げ用貫通孔24b,34b,44bには、可撓性を有する曲げ用紐状部材60が挿通されている。この曲げ用紐状部材60は、直線用紐状部材50と同様に、縄でも良いし、ロープでも良いし、金属製のワイヤでも良い。そして、曲げ用紐状部材60の先端部には、曲げ用貫通孔24b,34b,44bを挿通不能な係止部61が固定されている。つまり、曲げ用紐状部材60の基端側が引っ張られた場合に、曲げ用紐状部材60の先端側の係止部61が第一直線用コマ30の一方端面32に引っかかり、曲げ用紐状部材60が連結されたコマ20,30,40から抜けないようにされている。
【0064】
(マンドレルの動作)
次に、マンドレル1の動作について、図1および図2を参照して説明する。図1には、直線用紐状部材50の基端側を引っ張った状態を示す。ただし、この状態において、曲げ用紐状部材60は自由状態としている。図1に示すように、直線用紐状部材50の基端側を引っ張ることにより、第一曲げ部11および第二曲げ部13において、曲げ用コマ20の一方端面22の非傾斜面22aが連設する曲げ用コマ20の他方端面23に接触する。また、直線部12,14においては、連設される直線用コマ30,40の一方端面32,42と他方端面33,43とが接触する。その結果、連設されるコマ20,30,40同士の芯が直線状となるように、それぞれのコマ20,30,40が位置決めされる。つまり、マンドレル1は、直線状に形成される。
【0065】
一方、図2には、曲げ用紐状部材60の基端側を引っ張った状態を示す。ただし、この状態において、直線用紐状部材50は自由状態としている。図2に示すように、曲げ用紐状部材60の基端側を引っ張ることにより、第一曲げ部11において、曲げ用コマ20の一方端面22の傾斜面22bが連設する曲げ用コマ20の他方端面23に接触する。その結果、連設される曲げ用コマ20同士の芯が傾斜した状態に位置決めされる。
【0066】
また、直線部12,14においては、直線用紐状部材50の場合と同様に、連設される直線用コマ30,40の一方端面32,42と他方端面33,43とが接触する。その結果、マンドレル1は、曲げ部11,13においては、曲げ形状に形成され、直線部12,14においては、直線状に形成される。そして、第一曲げ部11において曲げ用コマ20の傾斜面22bの位相と、第二曲げ部13において曲げ用コマ20の傾斜面22bの位相とは、異なる位相である。従って、第一曲げ部11の曲げ位相と、第二曲げ部13の曲げ位相とは異なる状態となる。このように、マンドレル1は、複雑な形状に変形することができる。
【0067】
(パイプ体の曲げ加工方法(曲げパイプ体の製造方法))
次に、上述したマンドレル1を用いて、直線状のパイプ体100に対して曲げ加工を行う方法について、図19のフローチャートと、図1〜図2および図20〜図22を参照して説明する。ここで、パイプ体100の素材は、熱可塑性樹脂により円筒状に形成されたものを用いる。
【0068】
まず、図1に示すように、直線用紐状部材50の基端側を引っ張り、マンドレル1を直線状に位置決めする(S1)(直線状位置決め工程)。続いて、直線用紐状部材50を引っ張った状態を維持しつつ、図20に示すように、直線状のパイプ体100の素材をマンドレル1に外挿する(S2)(パイプ体外挿工程)。このとき、マンドレル1は直線状に維持されているため、直線状のパイプ体100の素材を外挿することは非常に容易となる。
【0069】
続いて、パイプ体100を加熱する(S3)(加熱工程)。そうすると、パイプ体100は熱可塑性樹脂製であるため、加熱することにより、パイプ体100が軟化する。つまり、パイプ体100は変形可能な状態となる。なお、S3の加熱工程は、S1の直線状位置決め工程の前に行っても良く、S1の直線状位置決め工程とS2のパイプ体外挿工程の間に行っても良い。
【0070】
パイプ体100を加熱した状態で、曲げ用紐状部材60の基端側を引っ張る(S4)(曲げ加工工程)。そうすると、図21に示すように、マンドレル1における第一曲げ部11および第二曲げ部13が曲げ変形する。マンドレル1の変形力によって、パイプ体100の素材が、マンドレル1の形状に倣って変形する。つまり、パイプ体100は、マンドレル1と同様に、第一曲げ部101と、第一直線部102と、第二曲げ部103と、第二直線部104とが連続的に形成される。このとき、パイプ体100において、第一曲げ部101と第二曲げ部103の曲げ位相は異なる。続いて、冷却する(S5)。そうすると、熱可塑性樹脂製のパイプ体100は、図21に示す状態で固化する。
【0071】
続いて、パイプ体100をマンドレル1から離脱させる。ここでは、説明上、パイプ体100からマンドレル1を引き抜くことにする(S6)(パイプ体離脱工程)。このとき、両紐状部材50,60を自由状態にして、基端部材70側から引き抜く。ここで、連設されたコマ20,30,40は、本体部21,31,41の対向する端面同士の離間距離を設定距離以内で離間しながら、連結突起28,38,48と中心凹所25,35,45の開口縁25a,35a,45aとが係合する。
【0072】
ここで、上述したように、紐状部材50,60を引っ張ったときには、連設するコマ20,30,40同士の端面が接触し得る。一方、紐状部材50,60を自由状態にしたときには、連設するコマ20,30,40同士が紐状部材50,60によっては規制されなくなる。従って、連設するコマ20,30,40の端面が離れる状態となり得る。このとき、連結突起28,38,48と中心凹所25,35,45の開口縁25a,35a,45aとによって、連設するコマ20,30,40の端面同士の離間距離は、設定距離以内となるように規制されている。従って、基端部材70が引き抜かれると、基端部材70側の曲げ用コマ20が、連設される曲げ用コマ20を引っ張る。この動作が、連設されるコマ20,30,40同士において連続的に伝達される。そうすると、図22のようになる。
【0073】
ここで、マンドレル1をパイプ体100から引き抜く際に、連設するコマ20,30,40の端面同士が接触した状態になってしまうと、当該コマ20,30,40同士により形成され得る形状が制限される。そうすると、コマ20,30,40をパイプ体100から引き抜くことができない場合が生じる。しかし、連結突起28,38,48と中心凹所25,35,45とにより、マンドレル1をパイプ体100から引き抜く際には、連設するコマ20,30,40の端面同士が離れた状態になる。従って、連設するコマ20,30,40により形成される形状の自由度が高くなる。そのため、コマ20,30,40がパイプ体100の形状に倣って移動することが可能となり、結果として、マンドレル1をパイプ体100から非常に容易にかつ確実に引き抜くことができるようになる。
【0074】
さらに、直線部12,14を1つのコマにより形成するのではなく、複数の直線用コマ30,40により形成している。連設する直線用コマ30,40は、端面同士が接触していない状態であれば、曲げ形状に移動することができる。従って、曲げ加工後のパイプ体100からマンドレル1を引き抜く際に、直線用コマ30,40がパイプ体100の曲げ部11,13を通過することができる。つまり、マンドレル1をパイプ体100から引き抜くことができるようになる。
【0075】
以上説明したように、本実施形態によれば、可撓性の2種の紐状部材50,60を用いている。そして、一方の紐状部材を直線用紐状部材50として適用し、他方の紐状部材を曲げ用紐状部材60として適用している。つまり、直線用紐状部材50を引っ張り、かつ、曲げ用紐状部材60を自由状態にすることで、複数の曲げ用コマ20を直線状に位置決めする。一方、曲げ用紐状部材60を引っ張り、かつ、直線用紐状部材50を自由状態にすることで、複数の曲げ用コマ20を曲げ形状に位置決めする。
【0076】
このように、どちらかの紐状部材50,60を引っ張り、他方を自由状態にすることで、複数の曲げ用コマ20を直線状または曲げ形状に位置決めできる。従って、直線状のパイプ体100に対して曲げ加工する際には、直線用紐状部材50を引っ張ってマンドレル1を直線状にしておき、パイプ体100を挿入することが容易にできる。その後、曲げ用紐状部材60を引っ張ってマンドレル1を曲げ形状にすることで、マンドレル1の変形力によってパイプ体100を曲げ加工できる。その後、マンドレル1をパイプ体100から引き抜く際に、両紐状部材50,60に何ら負荷をかけずに行えば、パイプ体100に対して何ら負荷をかけずにできる。
【0077】
また、連設されるコマ20,30,40同士において、回転規制突起27,37,47と回転規制凹所26,36,46とが凹凸係合する。つまり、連設されるコマ20,30,40における回転規制突起27,37,47と回転規制凹所26,36,46とは、連設されていないコマ20,30,40とは何ら無関係であり、連設されていないコマ20,30,40に対して回転を規制しない。さらに、曲げ用コマ20の回転規制突起27および回転規制凹所26は、当該曲げ用コマ20とそれに連設される曲げ用コマ20との曲げを許容する位置に形成されている。従って、第一曲げ部11における曲げ用コマ20の曲げ位相と、離れた位置に位置する第二曲げ部13における曲げ用コマ20の曲げ位相を異ならせることが可能となる。つまり、曲げ用紐状部材60を引っ張ることにより、マンドレル1の形状を所望の曲げ形状にすることができる。つまり、所望の曲げ形状のパイプ体100を加工することができる。例えば、複数の曲げ部の曲げ位相(曲げ方向)が異なるパイプ体100や、螺旋形状のパイプ体100など、複雑な曲げ形状のパイプ体100を加工することができる。
【0078】
<第二実施形態>
第二実施形態のパイプ体の曲げ加工方法について、図23を参照して説明する。本実施形態は、パイプ体100をゴム製とした場合の方法である。図1に示すように、直線用紐状部材50を引っ張り、マンドレル1を直線状にする(S11)(直線状位置決め工程)。続いて、直線用紐状部材50を引っ張った状態を維持しつつ、図20に示すように、直線状のパイプ体100の素材をマンドレル1に外挿する(S12)(パイプ体外挿工程)。
【0079】
続いて、曲げ用紐状部材60の基端側を引っ張る(S13)(曲げ加工工程)。そうすると、図21に示すように、マンドレル1における第一曲げ部11および第二曲げ部13が曲げ変形する。マンドレル1の変形力によって、パイプ体100が、マンドレル1の形状に倣って変形する。続いて、パイプ体100に熱を加えて加硫する(S14)。冷却した後に、パイプ体100からマンドレル1を離脱させる(S15)(パイプ体離脱工程)。このとき、図22に示すように、両紐状部材50,60を自由状態にして、基端部材70側から引き抜く。本実施形態によれば、第一実施形態に対して、パイプ体100の材質が異なるだけで、同様の効果を奏する。
【0080】
<その他>
上記実施形態において、マンドレル1を直線状に形成する際に、直線用紐状部材50を引っ張り、曲げ用紐状部材60を自由状態とした。また、マンドレル1を曲げ形状にする際に、曲げ用紐状部材60を引っ張り、直線用紐状部材50を自由状態とした。この他に、両紐状部材50,60を引っ張った状態を維持した場合にも、マンドレル1を直線状または曲げ形状にすることができる。すなわち、直線用紐状部材50の引張力を曲げ用紐状部材60の引張力より大きくすることで、マンドレル1を直線状に形成することができる。また、曲げ用紐状部材60の引張力を直線用紐状部材50の引張力より大きくすることで、マンドレル1を曲げ形状に位置決めすることができる。
【符号の説明】
【0081】
1:マンドレル、 11,13:曲げ部、 12,14:直線部、 20:曲げ用コマ、 21,31,41:本体部、 22,32,42:一方端面、 22a,32a,42a:非傾斜面(平行面)、 22b,32b,42b:傾斜面、 23:他方端面、 24a,34a,44a:直線用貫通孔、 24b,34b,44b:曲げ用貫通孔、 25,35,45:中心凹所(連結部)、 26,36,46:回転規制凹所(回転規制部)、 27,37,47:回転規制突起(回転規制部)、 28,38,48:連結突起(連結部)、 30,40:直線用コマ、 50:直線用紐状部材、 60:曲げ用紐状部材、 100:パイプ体、 101:第一曲げ部、 102:第一直線部、 103:第二曲げ部、 104:第二直線部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パイプ体の中に挿入して前記パイプ体の曲げ加工を行う曲げ加工用マンドレルであって、
複数のコマと、
複数の前記コマの芯方向の端面同士を対向するように数珠つなぎに連結する可撓性の紐状部材と、
を備え、
前記コマは、曲げ用コマを備え、
前記曲げ用コマの一方端面の半分は、連設された前記コマと同芯状にしたときに、当該コマの他方端面の対向部分に対して平行な平行面に形成され、
前記曲げ用コマの前記一方端面の残りの半分は、連設された前記コマと同芯状にしたときに、当該コマの他方端面の対向部分に対して傾斜する傾斜面に形成され、
前記曲げ用コマには、前記平行面側にて両端面間を貫通する直線用貫通孔と前記傾斜面側にて両端面間を貫通する曲げ用貫通孔とが形成され、
前記紐状部材は、
前記曲げ用コマの前記直線用貫通孔に挿通されており、引っ張ることにより前記曲げ用コマの一方端面の前記平行面と当該曲げ用コマに連設する前記コマの他方端面とを接触させて、前記曲げ用コマの芯と当該曲げ用コマに連設する前記コマの芯とを直線状に位置決めする直線用紐状部材と、
前記曲げ用コマの前記曲げ用貫通孔に挿通されており、引っ張ることにより前記曲げ用コマの一方端面の前記傾斜面と当該曲げ用コマに連設する前記コマの他方端面とを接触させて、前記曲げ用コマの芯と当該曲げ用コマに連設する前記コマの芯とを傾斜した状態に位置決めする曲げ用紐状部材と、
を備える曲げ加工用マンドレル。
【請求項2】
請求項1において、
複数の前記コマは、複数の前記曲げ用コマを備え、
前記曲げ用紐状部材は、各前記曲げ用コマの前記曲げ用貫通孔同士に挿通され、
前記直線用紐状部材は、各前記曲げ用コマの前記直線用貫通孔同士に挿通され、
各前記コマの両端面には、凹凸状に形成され、連設された前記コマ同士の相対的な芯回りの回転を規制する回転規制部を備える曲げ加工用マンドレル。
【請求項3】
請求項1または2において、
各前記コマは、連設する前記コマ同士を連結すると共に、対向する端面同士を接触可能にし、かつ、対向する端面同士の離間距離を設定距離以内で離間可能にする連結部を備える曲げ加工用マンドレル。
【請求項4】
請求項3において、
前記コマは、前記曲げ用コマと、それぞれ連設される複数の直線用コマと、を備え、
各前記直線用コマの一方端面は、連設された前記コマと同芯状にしたときに、当該コマの他方端面の対向部分に対して平行な平行面に形成され、
前記直線用コマには、両端面間を貫通し前記直線用紐状部材を挿通する直線用貫通孔と両端面間を貫通し前記曲げ用紐状部材を挿通する曲げ用貫通孔とが形成される曲げ加工用マンドレル。
【請求項5】
請求項4において、
加工後の前記パイプ体は、第一曲げ部と、前記第一曲げ部の曲げ位相に対して異なる位相に曲げられる第二曲げ部と、前記第一曲げ部と前記第二曲げ部との間の直線部とを備え、
前記直線部に配置される複数の前記直線用コマの前記曲げ用貫通孔は、前記第一曲げ部を形成する前記曲げ用コマの前記曲げ用貫通孔と前記第二曲げ部を形成する前記曲げ用コマの前記曲げ用貫通孔との間にて、位相を変化させながら形成され、
前記直線部に配置される複数の前記直線用コマの前記直線用貫通孔は、前記第一曲げ部を形成する前記曲げ用コマの前記直線用貫通孔と前記第二曲げ部を形成する前記曲げ用コマの前記直線用貫通孔との間にて、位相を変化させながら形成される曲げ加工用マンドレル。
【請求項6】
パイプ体の中に挿入して前記パイプ体の曲げ加工を行う曲げ加工用マンドレルであって、
複数のコマと、
複数の前記コマの芯方向の端面同士を対向するように数珠つなぎに連結する可撓性の紐状部材と、
を備え、
複数の前記コマは、複数の曲げ用コマを備え、
各前記曲げ用コマの一方端面は、連設された前記コマと同芯状にしたときに、当該曲げ用コマの他方端面に対して傾斜する傾斜面に形成され、
各前記曲げ用コマには、両端面間を貫通する曲げ用貫通孔が形成され、
前記紐状部材は、前記曲げ用貫通孔同士に挿通されており、引っ張ることにより前記曲げ用コマの一方端面の前記傾斜面と当該曲げ用コマに連設する前記コマの他方端面とを接触させて、前記曲げ用コマの芯と当該曲げ用コマに連設する前記コマの芯とを傾斜した状態に位置決めする曲げ用紐状部材を備え、
各前記コマの両端面には、凹凸状に形成され、連設された前記コマ同士の相対的な芯回りの回転を規制する回転規制部を備える曲げ加工用マンドレル。
【請求項7】
請求項6において、
各前記コマは、連設する前記コマ同士を連結すると共に、対向する端面同士を接触可能にし、かつ、対向する端面同士の離間距離を設定距離以内で離間可能にする連結部を備える曲げ加工用マンドレル。
【請求項8】
請求項7において、
前記コマは、前記曲げ用コマと、それぞれ連設される複数の直線用コマと、を備え、
各前記直線用コマの一方端面は、連設された前記コマと同芯状にしたときに、当該コマの他方端面の対向部分に対して平行な平行面に形成され、
前記直線用コマには、両端面間を貫通し前記曲げ用紐状部材を挿通する曲げ用貫通孔が形成される曲げ加工用マンドレル。
【請求項9】
請求項8において、
加工後の前記パイプ体は、第一曲げ部と、前記第一曲げ部の曲げ位相に対して異なる位相に曲げられる第二曲げ部と、前記第一曲げ部と前記第二曲げ部との間の直線部とを備え、
前記直線部に配置される複数の前記直線用コマの前記曲げ用貫通孔は、前記第一曲げ部を形成する前記曲げ用コマの前記曲げ用貫通孔と前記第二曲げ部を形成する前記曲げ用コマの前記曲げ用貫通孔との間にて、位相を変化させながら形成される曲げ加工用マンドレル。
【請求項10】
請求項1〜5の何れか一項に記載の曲げ加工用マンドレルを用いたパイプ体の曲げ加工方法であって、
前記直線状紐状部材を引っ張ることにより、前記曲げ用コマの芯と当該曲げ用コマに連設する前記コマの芯とを直線状に位置決めして、前記曲げ加工用マンドレルを直線状にする直線状位置決め工程と、
直線状に形成された前記パイプ体を、直線状に位置決めされた前記曲げ加工用マンドレルに外挿するパイプ体外挿工程と、
前記曲げ用紐状部材を引っ張ることにより、前記曲げ用コマの芯と当該曲げ用コマに連設する前記コマの芯とを傾斜した状態に位置決めして、前記パイプ体を曲げ加工する曲げ工程と、
を備えるパイプ体の曲げ加工方法。
【請求項11】
請求項10において、
前記曲げ工程の後に、前記曲げ用紐状部材および前記直線用紐状部材を自由にした状態で、前記曲げ加工用マンドレルから前記パイプ体を離脱させるパイプ体離脱工程を備えるパイプ体の曲げ加工方法。
【請求項1】
パイプ体の中に挿入して前記パイプ体の曲げ加工を行う曲げ加工用マンドレルであって、
複数のコマと、
複数の前記コマの芯方向の端面同士を対向するように数珠つなぎに連結する可撓性の紐状部材と、
を備え、
前記コマは、曲げ用コマを備え、
前記曲げ用コマの一方端面の半分は、連設された前記コマと同芯状にしたときに、当該コマの他方端面の対向部分に対して平行な平行面に形成され、
前記曲げ用コマの前記一方端面の残りの半分は、連設された前記コマと同芯状にしたときに、当該コマの他方端面の対向部分に対して傾斜する傾斜面に形成され、
前記曲げ用コマには、前記平行面側にて両端面間を貫通する直線用貫通孔と前記傾斜面側にて両端面間を貫通する曲げ用貫通孔とが形成され、
前記紐状部材は、
前記曲げ用コマの前記直線用貫通孔に挿通されており、引っ張ることにより前記曲げ用コマの一方端面の前記平行面と当該曲げ用コマに連設する前記コマの他方端面とを接触させて、前記曲げ用コマの芯と当該曲げ用コマに連設する前記コマの芯とを直線状に位置決めする直線用紐状部材と、
前記曲げ用コマの前記曲げ用貫通孔に挿通されており、引っ張ることにより前記曲げ用コマの一方端面の前記傾斜面と当該曲げ用コマに連設する前記コマの他方端面とを接触させて、前記曲げ用コマの芯と当該曲げ用コマに連設する前記コマの芯とを傾斜した状態に位置決めする曲げ用紐状部材と、
を備える曲げ加工用マンドレル。
【請求項2】
請求項1において、
複数の前記コマは、複数の前記曲げ用コマを備え、
前記曲げ用紐状部材は、各前記曲げ用コマの前記曲げ用貫通孔同士に挿通され、
前記直線用紐状部材は、各前記曲げ用コマの前記直線用貫通孔同士に挿通され、
各前記コマの両端面には、凹凸状に形成され、連設された前記コマ同士の相対的な芯回りの回転を規制する回転規制部を備える曲げ加工用マンドレル。
【請求項3】
請求項1または2において、
各前記コマは、連設する前記コマ同士を連結すると共に、対向する端面同士を接触可能にし、かつ、対向する端面同士の離間距離を設定距離以内で離間可能にする連結部を備える曲げ加工用マンドレル。
【請求項4】
請求項3において、
前記コマは、前記曲げ用コマと、それぞれ連設される複数の直線用コマと、を備え、
各前記直線用コマの一方端面は、連設された前記コマと同芯状にしたときに、当該コマの他方端面の対向部分に対して平行な平行面に形成され、
前記直線用コマには、両端面間を貫通し前記直線用紐状部材を挿通する直線用貫通孔と両端面間を貫通し前記曲げ用紐状部材を挿通する曲げ用貫通孔とが形成される曲げ加工用マンドレル。
【請求項5】
請求項4において、
加工後の前記パイプ体は、第一曲げ部と、前記第一曲げ部の曲げ位相に対して異なる位相に曲げられる第二曲げ部と、前記第一曲げ部と前記第二曲げ部との間の直線部とを備え、
前記直線部に配置される複数の前記直線用コマの前記曲げ用貫通孔は、前記第一曲げ部を形成する前記曲げ用コマの前記曲げ用貫通孔と前記第二曲げ部を形成する前記曲げ用コマの前記曲げ用貫通孔との間にて、位相を変化させながら形成され、
前記直線部に配置される複数の前記直線用コマの前記直線用貫通孔は、前記第一曲げ部を形成する前記曲げ用コマの前記直線用貫通孔と前記第二曲げ部を形成する前記曲げ用コマの前記直線用貫通孔との間にて、位相を変化させながら形成される曲げ加工用マンドレル。
【請求項6】
パイプ体の中に挿入して前記パイプ体の曲げ加工を行う曲げ加工用マンドレルであって、
複数のコマと、
複数の前記コマの芯方向の端面同士を対向するように数珠つなぎに連結する可撓性の紐状部材と、
を備え、
複数の前記コマは、複数の曲げ用コマを備え、
各前記曲げ用コマの一方端面は、連設された前記コマと同芯状にしたときに、当該曲げ用コマの他方端面に対して傾斜する傾斜面に形成され、
各前記曲げ用コマには、両端面間を貫通する曲げ用貫通孔が形成され、
前記紐状部材は、前記曲げ用貫通孔同士に挿通されており、引っ張ることにより前記曲げ用コマの一方端面の前記傾斜面と当該曲げ用コマに連設する前記コマの他方端面とを接触させて、前記曲げ用コマの芯と当該曲げ用コマに連設する前記コマの芯とを傾斜した状態に位置決めする曲げ用紐状部材を備え、
各前記コマの両端面には、凹凸状に形成され、連設された前記コマ同士の相対的な芯回りの回転を規制する回転規制部を備える曲げ加工用マンドレル。
【請求項7】
請求項6において、
各前記コマは、連設する前記コマ同士を連結すると共に、対向する端面同士を接触可能にし、かつ、対向する端面同士の離間距離を設定距離以内で離間可能にする連結部を備える曲げ加工用マンドレル。
【請求項8】
請求項7において、
前記コマは、前記曲げ用コマと、それぞれ連設される複数の直線用コマと、を備え、
各前記直線用コマの一方端面は、連設された前記コマと同芯状にしたときに、当該コマの他方端面の対向部分に対して平行な平行面に形成され、
前記直線用コマには、両端面間を貫通し前記曲げ用紐状部材を挿通する曲げ用貫通孔が形成される曲げ加工用マンドレル。
【請求項9】
請求項8において、
加工後の前記パイプ体は、第一曲げ部と、前記第一曲げ部の曲げ位相に対して異なる位相に曲げられる第二曲げ部と、前記第一曲げ部と前記第二曲げ部との間の直線部とを備え、
前記直線部に配置される複数の前記直線用コマの前記曲げ用貫通孔は、前記第一曲げ部を形成する前記曲げ用コマの前記曲げ用貫通孔と前記第二曲げ部を形成する前記曲げ用コマの前記曲げ用貫通孔との間にて、位相を変化させながら形成される曲げ加工用マンドレル。
【請求項10】
請求項1〜5の何れか一項に記載の曲げ加工用マンドレルを用いたパイプ体の曲げ加工方法であって、
前記直線状紐状部材を引っ張ることにより、前記曲げ用コマの芯と当該曲げ用コマに連設する前記コマの芯とを直線状に位置決めして、前記曲げ加工用マンドレルを直線状にする直線状位置決め工程と、
直線状に形成された前記パイプ体を、直線状に位置決めされた前記曲げ加工用マンドレルに外挿するパイプ体外挿工程と、
前記曲げ用紐状部材を引っ張ることにより、前記曲げ用コマの芯と当該曲げ用コマに連設する前記コマの芯とを傾斜した状態に位置決めして、前記パイプ体を曲げ加工する曲げ工程と、
を備えるパイプ体の曲げ加工方法。
【請求項11】
請求項10において、
前記曲げ工程の後に、前記曲げ用紐状部材および前記直線用紐状部材を自由にした状態で、前記曲げ加工用マンドレルから前記パイプ体を離脱させるパイプ体離脱工程を備えるパイプ体の曲げ加工方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【公開番号】特開2013−71143(P2013−71143A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−210833(P2011−210833)
【出願日】平成23年9月27日(2011.9.27)
【出願人】(000219602)東海ゴム工業株式会社 (1,983)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月27日(2011.9.27)
【出願人】(000219602)東海ゴム工業株式会社 (1,983)
【Fターム(参考)】
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