説明

曲げ性に優れた高強度合金化溶融亜鉛めっき鋼板

【課題】引張強さが780MPa以上であって、しかもビッカースの硬さ変動が40Hv以下である曲げ性に優れた高強度合金化溶融亜鉛めっき鋼板を提供する。
【解決手段】C:0.05〜0.13質量%、Si:0.3〜0.8質量%、Mn:1.5〜2.3質量%、P:0.03質量%以下、S:0.01質量%以下、B:0.0005〜0.005質量%、Ti:0.05〜0.20質量%、Nb:0.01〜0.10質量%、かつTiとNb、C量が下記式を満足し、さらに必要に応じてCr:0.01〜1.0質量%、Mo:0.01〜1.0質量%、V:0.01〜0.5質量%の1種または2種以上を含み、残部がFeおよび不可避的不純物からなる成分組成を有するDP鋼板であって、平均粒径が5μm以下である主相フェライト中に、副相として分散しているマルテンサイトを3.0μm以下の平均粒径と0.7以上、好ましくは0.8〜1.0の平均アスペクト比を有し、マルテンサイトまたはマルテンサイトとベイナイトの面積率が15%以上45%未満となるような組織とした鋼板。
{Ti%+(Nb%/2)}/C% > 1.2

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車,建築,電気機器等の部材として有用な高強度鋼板、特に曲げ加工性に優れた高強度の合金化溶融亜鉛めっき鋼板に関する。
【背景技術】
【0002】
合金化溶融亜鉛めっき鋼板は、耐食性,塗装性,塗装後密着性,溶接性に優れていることから、自動車用車体,家電製品を始めとする種々の分野で防錆鋼板として汎用されている。このような用途では、必要形状に成形加工して使用されることから,耐食性に加えて加工性に優れていることも重要である。
加えて、特に、自動車用の分野では、衝突安全性の向上や軽量化による燃費向上の観点から高強度化が求められており、780MPa以上の高強度鋼板も使用され始めている。また、建築分野にあっても、コスト削減の観点から、薄肉高強度化が求められている。
【0003】
鋼板においては、一般的に、高強度化するにつれて加工性が低下する傾向にある。このため、高強度鋼板の適用範囲を拡大するにあたっては、加工性が良好な高強度鋼板を製造することが必要である。
例えば、質量%で、C:0.05〜0.20%、Si:0.3〜1.8%、Mn:1.0〜3.0%を含み、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成を有する鋼板に、(Ac3変態点−80℃)〜(Ac3変態点+100℃)の温度域で5sec以上保持する一次加熱処理後、Ms点以下の温度まで5℃/s以上10℃/s未満で冷却する一次工程と、2相域での二次加熱処理後、500℃以下の温度まで急冷する二次工程と、さらに溶融亜鉛めっき処理を施し、300℃まで急冷する三次工程とを順次施し、60%以上のフェライトと、5%以上のマルテンサイトと、2%以上の残留オーステナイトを含み、フェライトの平均結晶粒径が5μm以上の複合組織とすることが提案されている(特許文献1)。
【0004】
また、C:0.04〜0.25質量%,Si:0.2〜2.0質量%,Mn:0.5〜3.0質量%を含む鋼板に、付着量3〜15g/mのFe系めっき層を形成した後、ガス還元焼鈍し、420℃以上490℃未満の溶融亜鉛めっき浴に浸漬して溶融亜鉛めっきを施し、再加熱なしに、又は溶融めっき後に530℃未満の合金化熱処理を施して鋼板表面に合金化溶融亜鉛めっき層を形成することも提案されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−192767号公報
【特許文献2】特開2004−285385号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記特許文献1で提案された鋼板は、残留オーステナイトを2%以上残させることによって延性を向上させている。また、特許文献2の方法で製造される鋼板も、残留オーステナイト量が3%以上となって優れた延性を呈している。
ところで、780MPaを超えるような高強度鋼板は、曲げ加工に供される場合が多く、加工性の中でも曲げ性に優れることが要求される場合が多い。しかし、前記特許文献1,2で提供される鋼板は延性に優れているため、絞り加工等のプレス成形により成形される部材には好適に用いられるが、曲げ加工性に優れているとは言えないので、単に曲げ加工して用いられる部材としては好適ではない。
【0007】
本発明は、このような問題を解消すべく案出されたものであり、780MPa以上の引張強さを呈する合金化溶融亜鉛めっき鋼板であっても、組織を細かく調整することにより曲げ性に優れた高強度合金化溶融亜鉛めっき鋼板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の曲げ性に優れた高強度合金化溶融亜鉛めっき鋼板は、その目的を達成するため、C:0.05〜0.13質量%、Si:0.3〜0.8質量%、Mn:1.5〜2.3質量%、P:0.03質量%以下、S:0.01質量%以下、B:0.0005〜0.005質量%、Ti:0.05〜0.20質量%、Nb:0.01〜0.10質量%を含み、かつTiとNb、C量が下記(1)式を満足し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる成分組成と、主相としてのフェライトと副相としてのとしてマルテンサイトまたはマルテンサイトとベイナイトからなり、しかも、前記フェライトが5.0μm以下の平均粒径を、前記マルテンサイトが3.0μm以下の平均粒径と0.7以上の平均アスペクト比、マルテンサイトまたはマルテンサイトとベイナイトの面積率が15%以上45%未満の金属組織を備え、40Hv以下のビッカース硬さの変動、および780MPa以上の引張強さを呈することを特徴とする。
{Ti%+(Nb%/2)}/C% > 1.2 ・・・(1)
なお(1)式で、Ti%、Nb%、C%は、それぞれの成分の質量%を示す。
【0009】
成分組成としては、さらにCr:0.01〜1.0質量%、Mo:0.01〜1.0質量%、V:0.01〜0.5質量%の1種または2種以上を含むものであってもよい。
前記主相としてのフェライトが55%以上85%未満、第2相としてのとしてマルテンサイトまたはマルテンサイトとベイナイトが15%以上45%未満の割合で占めているものが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、成分組成および金属組織を細かく設定したことにより、780MPa以上の引張強さを呈する高強度合金化溶融亜鉛めっき鋼板であっても、ビッカース硬さの変動を小さくすることができ、その結果、曲げ性に優れた鋼板となっている。
したがって、本発明により、ピラー、ロッカー、メンバー等、特性の優れた部品が、簡便な曲げ加工を施すことにより低コストで提供できることになる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】板厚方向におけるビッカース硬さの変動を示す図
【発明を実施するための形態】
【0012】
780MPaを超えるような高強度を得るには、主相フェライトに副相マルテンサイトを配したDual Phase組織を有する、いわゆるDP鋼板とすることが有効である。しかしながら、DP鋼板は一般的には曲げ性が悪いために、曲げ加工が施されて用いられる部材への適用が進んでいない。
そこで、本発明者らは、DP鋼板の自動車分野や建材分野への利用拡大のために、曲げ加工性向上策について鋭意検討を重ね、本発明に到達した。
以下に、その詳細を説明する。
【0013】
DP鋼板は、主相フェライトに副相としてマルテンサイトが分散した複合組織を有する鋼板であり、軟質なフェライトを有するが故に延性に優れている。そして、マルテンサイトが材料の強度を高めている。しかしながら、フェライトとマルテンサイトの硬度差が大きいために変形能に差異があり、一方向への変形を行おうとすると2相の境界部に亀裂が発生するため、その結果として曲げ加工性が劣ることになる。
そこで、本発明では、曲げ加工性向上策として、組織の均一・微細化により2相の境界部での亀裂発生を抑制するために、フェライトおよびマルテンサイト粒径を細かく、かつマルテンサイトの形状を等軸状にすることにした。
【0014】
具体的には、DP鋼板を構成する副相としてマルテンサイトを、3.0μm以下の平均粒径と0.7以上、好ましくは0.8〜1.0の平均アスペクト比を有するものとした。
鋼板全体としては、C:0.05〜0.13質量%、Si:0.3〜0.8質量%、Mn:1.5〜2.3質量%、P:0.03質量%以下、S:0.01質量%以下、B:0.0005〜0.005質量%、Ti:0.05〜0.20質量%、Nb:0.01〜0.10質量%、さらに必要に応じてCr:0.01〜1.0質量%、Mo:0.01〜1.0質量%、V:0.01〜0.5質量%の1種または2種以上を含み、かつTiとNb、C量が下記(1)式を満足し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる成分組成を有するDP鋼板であって、平均粒径が5μm以下である主相フェライト中に、副相として分散しているマルテンサイトを3.0μm以下の平均粒径と0.7以上、好ましくは0.8〜1.0の平均アスペクト比を有するものとした。
{Ti%+(Nb%/2)}/C% > 1.2 ・・・(1)
なお(1)式で、Ti%、Nb%、C%は、それぞれの成分の質量%を示す。
このような、成分組成、金属組織とすることにより、ビッカースの硬さ変動が40Hv以下の均一な組織とすることができ、曲げ性に優れた高強度合金化溶融亜鉛めっき鋼板が得られる。
【0015】
本発明鋼板を構成する各要件の限定理由について説明する。まず、成分組成から説明する。なお、以下、組成における質量%は単に%と記す。
C:0.05〜0.13%
Cは鋼板の高強度化に必要不可欠な元素である。含有量が0.05%未満では、780MPa以上の引張強度を得るのが困難である。ただし、0.13%を超える添加は、組織の不均一性が顕著となり、曲げ性が劣化する。そのため、Cは0.05〜0.13%の範囲とする。
【0016】
Si:0.3〜0.8%
Siは曲げ性をあまり劣化させることなく、強度向上に寄与する元素であり、本発明では0.3%以上のSi添加が必要となる。しかし、過剰に添加すると、めっきラインでの加熱時に酸化物を形成し、めっき性を劣化させるため、Si量は0.3〜0.8%とする。
【0017】
Mn:1.5〜2.3%
Mnはオーステナイトを安定化させるとともに、加熱後の冷却時にパーライトが生成するのを抑制することで、マルテンサイトの生成に寄与する。含有量が1.5%未満では、780MPa以上の高強度を得るために必要なマルテンサイト量が確保できない。ただし、2.3%を超えるとバンド組織が顕著となり、不均一な組織となるため、曲げ性が劣化する。そのため、Mnは1.5〜2.3%の範囲とする。
【0018】
P:0.03%以下
Pは不可避的不純物元素であるが、過剰にPが含まれると溶接性等が劣化するため、0.03%以下とする。
【0019】
S:0.01%以下
SはMnS等の硫化物として存在し、多量に存在すると曲げ性が劣化する。そのため、S量は出来るだけ低い方が望ましいが、0.01%以下であれば、曲げ性に及ぼす影響は小さい。
【0020】
B:0.0005〜0.005%
Bは微量添加で強度向上に寄与し、かつ曲げ性の劣化も小さい元素である。本発明では、少なくとも0.0005%以上のB添加が必要である。ただし、0.005%を超える添加は、ホウ化物が生成し、曲げ性が劣化するため、0.0005〜0.005%とする。
【0021】
Ti:0.05〜0.20%
Tiは組織の微細化によって組織の均一性を向上させるとともに、炭化物の析出強化により、曲げ性を劣化させることなく、強度向上に寄与する元素である。組織微細化により、曲げ性を向上させるには、0.05%以上の添加が必要である。ただし、0.20%を超えて添加しても強度上昇の効果が飽和するだけでなく、コスト上昇にもつながるため、0.08〜0.20%とする。
【0022】
Nb:0.01〜0.10%
NbもTiと同様に、組織の微細化によって組織の均一性を向上させるとともに、炭化物の析出強化により、曲げ性を劣化させることなく、強度向上に寄与する元素である。その機能を発現させるには、少なくとも0.01%の含有を必要とする。ただし、0.10%を超えて添加しても強度上昇の効果が飽和するだけでなく、コスト上昇にもつながるため、0.01〜0.10%とする。
【0023】
{Ti%+(Nb%/2)}/C% > 1.2
曲げ性を向上させるには、組織の微細化・均一化が重要である。組織の均一化にはTi、Nbの添加が有効であるが、組織の均一性はC量にも影響を受け、C量の増加にともない組織の不均一性は増加する。そのため、これらのことを考慮し、Ti、Nbを添加する必要がある。
Ti、Nb、C量と曲げ性の関係を種々検討した結果、{Ti%+(Nb%/2)}/C% > 1.2 を満足すれば、良好な曲げ性が得られることが明らかとなった。
なお、上の式で、Ti%、Nb%、C%は、それぞれの成分の質量%を示す。
【0024】
Cr:0.01〜1.0%、Mo:0.01〜1.0%、V:0.01〜0.5%
これらは、高強度化に有効な元素である。必要に応じて添加される。780MPa以上の強度を得るために、Cr,Mo,Vの1種または2種以上の添加が有効である。
【0025】
続いて金属組織について説明する。
本発明の合金化溶融めっき鋼板は、主相フェライトに副相としてマルテンサイトまたはマルテンサイトとベイナイトが分散した複合組織を持つDP鋼板を基材とするものである。
基材鋼板の主相フェライトに分散する副相としてのマルテンサイトまたはマルテンサイトとベイナイトは、合計で15%以上45%未満とする。15%に満たないと780MPaなる引張強さは得られない。逆に45%以上になると硬くなりすぎて加工し難くなる。好ましくは25〜35%の範囲である。
なお、副相としてはマルテンサイトのみが好ましいが、部分的にベイナイトが分散していても良い。
【0026】
フェライトの平均粒径:5μm以下、マルテンサイトの平均粒径:3μm以下
本発明では、組織を微細にすることにより曲げ性を向上させている。フェライトおよびマルテンサイトの平均粒径が、それぞれ5μmおよび3μmを超える程に大きくなると、不均一組織となりやすく、曲げ性が劣化する。
【0027】
マルテンサイトの平均アスペクト比:0.7以上
本発明では、組織を微細にすることの他に、マルテンサイトを丸くしている。マルテンサイトのアスペクト比(短軸/長軸)は曲げ性と関係があり、アスペクト比が小さいマルテンサイトが増えると、組織の不均一性が増し、曲げ性は劣化する。そのため、0.7以上とする。好ましくは0.8〜1.0である。
【0028】
以上のような成分組成を具備し、またその金属組織を、残留オーステナイトのない主相としてのフェライトと副相としてのマルテンサイト、またはマルテンサイトとベイナイトからなるものとすることにより、780MPa以上の引張強さと40Hv以下のビッカース硬さの変動特性を発揮することができる。
なお、ビッカース硬さの変動を40Hv以下に抑えることができた結果、軟質部への変形の集中が抑制されて曲げ性が向上する。
【0029】
次に、本発明に係る高強度合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法について簡単に説明する。
上記の本発明成分からなる鋼を、転炉、電気炉等の通常の方法によって溶製し、成分調整を行った後、通常の鋳造工程、必要に応じて分塊圧延工程を経た後、熱延と酸洗、その後の冷延と焼鈍を行い、その後に、溶融亜鉛めっき処理とその後の合金化処理を行う。
冷延板焼鈍は溶融めっきラインで行い、所定の温度に所定時間加熱して所定の冷却速度で冷却した後、連続して溶融亜鉛めっき浴に浸漬し、さらに所定の温度に加熱して合金化処理することが好ましい。
熱延およびその後の酸洗工程までには格段の注意点はない。従前どおり、熱延前の加熱は、炭化物がマトリックス中に十分に固溶されるような温度とするべきである。
【0030】
めっきラインでの加熱温度:800〜900℃
本発明ではTi、Nbを含有しているため、再結晶温度が高い。加熱温度が800℃に満たないと、再結晶が完了せず未再結晶組織が残存するため、良好な曲げ性が得られない。また、900℃を超えると組織が粗大化し、曲げ性が劣化するので、800〜900℃が好ましい。
【0031】
加熱後の冷却速度:5℃/s以上
加熱後の冷却速度が5℃/s未満では、一部パーライトが生成し、780MPa以上の高強度を得ることが困難となる。また、フェライト粒径の微細化の点からも、冷却速度は5℃/s以上が好ましい。本発明では、所定のTiとNbを含有していることにより、加熱後の冷却速度をこのように選定することでフェライトの平均粒径が5μm以下となる。
その後、従前どおり、溶融亜鉛めっき浴に浸漬して溶融亜鉛めっきを施す。そして合金化処理をする。
【0032】
合金化温度:530℃以下
合金化温度が530℃を超えると、一部パーライトが生成し、780MPa以上の高強度を得ることが困難となるため、合金化温度は530℃以下とする。
また、この合金化処理の後の冷却時にマルテンサイト相が生成し、その平均粒径やアスペクト比は所定のものとなる。
【実施例】
【0033】
表1に示す化学組成を有するスラブを加熱温度:1250℃、仕上げ圧延温度:880℃にて熱間圧延を行った後、550℃にて巻取り、板厚2.4mmの熱延鋼板を得た。
熱延鋼板を酸洗後、板厚1.4mm(圧下率:43%)まで冷間圧延し、冷延鋼板を得た後、連続溶融めっきラインにて加熱温度:850℃、冷却速度:10℃/sで冷却した後、溶融亜鉛めっき浴に浸漬し、さらに510℃で合金化処理を行い、合金化溶融亜鉛めっき鋼板を得た。
【0034】
【表1】

【0035】
得られた合金化溶融亜鉛めっき鋼板について、組織観察、硬さ測定、引張試験、曲げ試験を実施した。
組織のフェライト、ベイナイト、マルテンサイトは、圧延方向の板厚断面についてレペラ試薬による着色エッチングにして識別し、画像解析によって各相の面積率、平均粒径、アスペクト比を求めた。
それらの測定結果を表2に示す。なお、表2には示していないが、ベイナイトが観察されたのはNo.2の試料のみであり、その面積率は3%であった。
【0036】
硬さ試験は、荷重を100gとしたマイクロビッカース硬さ試験機で、(坂本追記)圧延方向の板厚断面において、板厚1/4線上を150μmの間隔で30点測定を行い、得られた硬さの最大値と最小値の差を硬さ変動とした。
引張試験は、合金化溶融亜鉛めっき鋼板から圧延方向と直角な方向を長手方向とするJIS5号引張試験片を採取して行い、降伏強さ(YS)、引張強さ(TS)、全伸び(T.El)を算出した。
曲げ試験は、圧延方向と直角な方向を長手方向とする曲げ試験片を採取し、90°のVブロック曲げ試験を実施した。試験後に目視にて割れが認められない最小の先端Rを限界曲げRとして求めた。
それらの評価結果を合わせて表3に示す。また、本発明例のNo.1と比較例のNo.10の30点の測定位置でのビッカースの硬さ変動状況を図1に示す。
【0037】
【表2】

【0038】
【表3】

【0039】
本発明例のNo.1と比較例のNo.10のビッカースの硬さ変動を示した図1からも分かるように、発明例のNo.1は硬さ変動が20Hv程度と小さいのに対し、比較例のNo.10は硬さ変動が50Hv以上と大きく、不均一な組織となっている。
また、表2に示すように、本発明鋼板は引張強度が780MPa以上で、フェライトの平均粒径が5μm以下、マルテンサイトの平均粒径が3μm以下でかつマルテンサイトの平均アスペクト比が0.7以上、ビッカースの硬さ変動が40Hv以下と均一微細な組織となっている。そのため、90°Vブロック曲げにおける限界曲げRも0.5mm以下と優れた曲げ性を有している。
【0040】
これに対して、比較例であるNo.10〜15は鋼成分が本発明範囲から外れているため、No.10、No.12、No.13、No.15は曲げ性が悪く、No.11、No.14は780MPa以上の強度を得ることができない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
C:0.05〜0.13質量%、Si:0.3〜0.8質量%、Mn:1.5〜2.3質量%、P:0.03質量%以下、S:0.01質量%以下、B:0.0005〜0.005質量%、Ti:0.05〜0.20質量%、Nb:0.01〜0.10質量%を含み、かつTiとNb、C量が下記(1)式を満足し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる成分組成と、主相としてのフェライトと副相としてマルテンサイトまたはマルテンサイトとベイナイトからなり、しかも、マルテンサイトまたはマルテンサイトとベイナイトの面積率が15%以上45%未満、前記フェライトが5.0μm以下の平均粒径を、前記マルテンサイトが3.0μm以下の平均粒径と0.7以上の平均アスペクト比を有する金属組織を備え、40Hv以下のビッカース硬さの変動、および780MPa以上の引張強さを呈することを特徴とする曲げ性に優れた高強度合金化溶融亜鉛めっき鋼板。
{Ti%+(Nb%/2)}/C% > 1.2 ・・・(1)
上の式で、Ti%、Nb%、C%は、それぞれの成分の質量%を示す。
【請求項2】
成分組成が、さらにCr:0.01〜1.0質量%、Mo:0.01〜1.0質量%、V:0.01〜0.5質量%の1種または2種以上を含むものである請求項1に記載の曲げ性に優れた高強度合金化溶融亜鉛めっき鋼板。

【図1】
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【公開番号】特開2010−229493(P2010−229493A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−78408(P2009−78408)
【出願日】平成21年3月27日(2009.3.27)
【出願人】(000004581)日新製鋼株式会社 (1,178)
【Fターム(参考)】