曲げ成形方法およびその成形方法に用いる成形金型
【課題】 Z形あるいはハットチャンネル形部材の曲げ部の角度変化不良、平坦部の反りを防止することができる曲げ成形方法およびその成形金型を提供する。
【解決手段】 第1成形工程により、第1成形型部17の仮横平坦成形部11に載置保持された金属板Pを前記第1成形型部17の仮曲げ成形部12に沿って曲げ、第2成形型部18の仮縦平坦成形部13Aと第1成形型部17の仮縦平坦成形部13とに凸側表面が各々当接する、凸部が反対向きの2つのアーチ部A1,A2が連成されるように曲げ成形して、仮横平坦部から仮曲げ部2Aを介して反りのない仮縦平坦部を有し、この仮縦平坦部に目標角度をなして連成されたフランジ部を有する仮成形部材を得る。次に、第2成形工程により、前記仮横平坦部を曲げ成形すると共に仮曲げ部を曲げ戻し変形させて目標形状に成形する第2成形工程を有する。
【解決手段】 第1成形工程により、第1成形型部17の仮横平坦成形部11に載置保持された金属板Pを前記第1成形型部17の仮曲げ成形部12に沿って曲げ、第2成形型部18の仮縦平坦成形部13Aと第1成形型部17の仮縦平坦成形部13とに凸側表面が各々当接する、凸部が反対向きの2つのアーチ部A1,A2が連成されるように曲げ成形して、仮横平坦部から仮曲げ部2Aを介して反りのない仮縦平坦部を有し、この仮縦平坦部に目標角度をなして連成されたフランジ部を有する仮成形部材を得る。次に、第2成形工程により、前記仮横平坦部を曲げ成形すると共に仮曲げ部を曲げ戻し変形させて目標形状に成形する第2成形工程を有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車部品等の成形部材の曲げ成形方法に係り、成形金型から離型した後に生じる、弾性回復に起因する形状不良の防止に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、燃費の向上、環境への配慮、安全性の向上などを企図して、自動車の車体や部品の強化と軽量化が推し進められており、その手段の一つとして車体構成部品の大半を占める金属板のプレス成形部材に対して鋼板の高強度化(ハイテン化)やアルミニウム合金板等の軽量材への転換が進められている。
【0003】
前記プレス成形部材として、例えば、図1(A)は横平坦部1の一端に第1曲げ部2を介して縦平坦部3が下方に延設され、その他端に前記横平坦部1に平行にフランジ部5が第2曲げ部4を介して連成されたZ形部材を示し、同図(B)は前記Z形部材が左右対称に配置されたハットチャンネル形部材を示す。
【0004】
高強度鋼板等の金属板を用いてプレス成形すると、離型後の弾性回復(スプリングバック)が大きいため、成形部材の寸法精度が悪くなる。ハットチャンネル形部材を例として図2に示す。図において、離型前の部材形状(目標形状)を2点鎖線で、離型後の部材形状を実線で示すが、第1曲げ部2については離型後に角度変化不良Δθp(第1曲げ部の縦平坦部側の曲げ止まりにおける接線と目標成形形状の縦平坦部とのなす角)、曲げ曲げ戻しを受ける縦平坦部3には外側に湾曲した反り(縦平坦部の両端の曲げ止まりを結ぶ線分と反りの最大離間距離をδで示す。)が生じる。曲げ曲げ戻しとは、板材が一旦曲げ成形された後、その曲げ部が当初とは反対方向に曲げ成形(曲げ戻し)を受けることをいい、曲げ戻しされた部分は当初の曲げ方向に弾性回復して変形する。前記角度変化不良および反りによって、ハットチャンネル形部材の縦平坦部の下端には、口開き量ΔD(離型後の成形形状と目標成形形状における縦平坦部の下端間の水平距離)の口開きが生じる。なお、ハットチャンネル形部材(Z形部材も同様)の縦平坦部の下端とは、縦平坦部の内面とフランジ部の下面とを延長した交線部を意味する。
【0005】
前記成形部材の形状変化不良を防止する方法として、例えば、曲げ部の稜線に沿って成形曲げ方向と逆向きの逆曲げアール部を成形する方法、曲げ部の板厚方向に圧縮応力を付加し、残留応力を低減する方法が提案されている。これらの方法は、本来不要な形状を付与したり、特殊な設備を必要とするなどの問題がある。一方、これらの問題がなく、形状不良を改善する成形方法が、特開2003−103306号公報(特許文献1)や第53回塑性加工連合講演会論文集251−252頁(非特許文献1)に提案されている。この方法は、図3に示すように、曲げ刃52が成形パンチ51側に下降して金属板Pを曲げ成形する際、前記金属板Pが前記成形パンチ51の曲げ成形部55に沿ってアーチ状に曲げられ、さらに曲げ刃52が下降するに従って前記曲げ刃52の傾斜平坦成形部58と前記成形パンチ51の傾斜平坦成形部56とに凸側表面が当接する、凸部が反対向きのアーチ部A1,A2が連成形成される変形を生じるように成形することで、Z形部材やハットチャンネル形部材の第1曲げ部2での角度変化不良Δθpや縦平坦部3の反りδを抑制するものである。なお、上記のように凸部が反対向きの二つのアーチ部A1,A2が連成される変形挙動は「踊り」と呼ばれる。
【特許文献1】特開2003−103306号公報
【非特許文献1】第53回塑性加工連合講演会論文集251−252頁「踊り制御による寸法精度不良対策技術の検討」、2002年
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記踊りを利用した成形方法により、Z形部材やハットチャンネル形部材の第1曲げ部2の角度変形不良Δθpや縦平坦部3の反りδが抑制されるようになった。しかし、それらの変形を抑制するには、成形パンチ1の曲げ成形部55の曲げ角θpを鈍角に形成する必要があり、成形形状が、縦平坦部3が横平坦部1に対して傾斜した特定形状にならざるを得ないという問題がある。また、縦平坦部3とフランジ部5とのなす角度θdについても、θdが直角に近づくほど角度不良Δθdが大きく現れるようになるという問題がある。
本発明はかかる問題に鑑みなされたもので、フランジ部を有するZ形部材やハットチャンネル形部材の成形に際し、横平坦部と縦平坦部、縦平坦部とフランジ部とのなす角が直角の場合でも角度不良や反りを生じることなく容易に曲げ成形することができる方法およびその方法に用いる成形金型を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、Z形部材やハットチャンネル形部材を曲げ成形する場合、一段で目標形状に成形することは困難であるが、まず仮に成形した仮縦平坦部と、この仮縦平坦部に連成するフランジ部とは仮縦平坦部を成形する際に踊りを利用して成形することによって、仮縦平坦部に反りを生じさせることなく、また仮縦平坦部とフランジ部とのなす角θdについても角度不良を発生させることなく成形可能であることを知見した。そして、次に前記仮縦平坦部の一端に連成された仮横平坦部を曲げ成形する際、仮横平坦部と前記仮縦平坦部との間に形成された仮曲げ部を曲げ戻しするように成形することで、成形後の横平坦部と縦平坦部とのなす角θpに角度不良を生じさせることなく目標形状の部材を成形することができることを見出した。本発明は、かかる知見を基になされたものである。
【0008】
すなわち、本発明の曲げ成形方法は、横平坦部の一端から第1曲げ部を介して縦平坦部が連成され、前記縦平坦部の他端から第2曲げ部を介してフランジ部が連成されたZ形部材あるいはハットチャンネル形部材を金属板から曲げ成形する曲げ成形方法であって、前記金属板を曲げ成形して、仮横平坦部の一端から仮曲げ部を介して仮縦平坦部が連成され、前記仮縦平坦部の他端から前記第2曲げ部を介してフランジ部が連成された仮成形部材を成形する第1成形工程と、前記仮成形部材の仮平坦部、仮曲げ部および仮縦平坦部から前記横平坦部、第1曲げ部および縦平坦部を連成する第2成形工程とを備える。前記第1成形工程は、前記仮縦平坦部を成形する際に、当該仮縦平坦部を成形する一対の成形型部の仮縦平坦成形部の間で凸部が反対向きの二つのアーチ部が形成されるように変形させて成形し、前記第2成形工程は、前記仮成形部材の仮横平坦部を曲げ成形すると共に前記仮曲げ部を曲げ戻し成形する。
【0009】
前記曲げ成形方法は、下記の二つの金型を用いることによって、容易に実施することができる。まず、仮横平坦成形部と仮縦平坦成形部とが仮曲げ成形部を介して連成され、前記仮縦平坦成形部にフランジ成形部が連成された第1成形型部と、前記第1成形型部の仮縦平坦成形部およびフランジ成形部と各々協働して金属板を曲げ成形する仮縦平坦成形部とフランジ成形部を有する第2成形型部を備えた第1成形金型と、横平坦成形部と縦平坦成形部とが曲げ成形部を介して連成された第1成形型部と、前記第1成形型部の縦平坦成形部と協働して前記仮成形部材の仮横平坦部を前記曲げ成形部に沿って曲げ成形する縦平坦成形部を有する第2成形型部を備えた第2成形金型を準備する。そして、前記第1成形工程において、前記第1成形金型の第2成形型部を第1成形金型の第1成形型部に相対移動させることによって、前記第1成形型部の仮横平坦成形部に載置保持された金属板を前記第1成形型部の仮曲げ成形部に沿って第2成形型部の仮縦平坦成形部に凸側表面が当接するようにアーチ状に曲げ、さらに第2成形型部の仮縦平坦成形部および第1成形型部の仮縦平坦成形部の各々に凸側表面が当接し、凸部が反対向きの第1アーチ部および第2アーチ部を連成するように変形させて仮横平坦部の一端から仮曲げ部を介して仮縦平坦部が連成され、前記仮縦平坦部の他端から前記第2曲げ部を介してフランジ部が連成された仮成形部材を成形する。また、前記第2成形工程において、前記第2成形金型の第2成形型部を第2成形金型の第1成形型部に相対移動させることによって、前記仮成形部材の仮横平坦部を曲げ成形すると共に前記仮曲げ部を曲げ戻し成形する。
【0010】
前記第1成形金型の第1成形型部における仮横平坦成形部と仮縦平坦成形部とのなす角θp1を、好ましくは鈍角、より好ましくは105°〜150°程度に形成することによって、仮縦平坦部を成形する際に、この部分に容易に踊りを発生させることができる。
また、前記第2成形工程において、前記仮成形部材の仮曲げ部の仮横平坦側の曲げ止まり部を第2成形金型の第1成形型部の曲げ成形部の横平坦成形部側の曲げ止まり部から外側へずらして仮成形部材の仮横平坦部を第2成形金型の第1成形型部の横平坦成形部に載置し、前記仮成形部材の仮曲げ部の一部が第2成形金型の第1成形型部の曲げ成形部にかかるように曲げ戻し成形することが好ましく、これによって効果的に第1曲げ部の角度不良を防止して、目標角度に成形することができる。
さらに、前記第2成形工程において、前記第1成形金型の第1成形型部の仮曲げ成形部の曲率半径をrp1(mm)、前記第2成形金型の第1成形型部の曲げ成形部の曲率半径をrp2(mm)、前記仮成形部材のずらし量をΔW(mm)とし、Lを下記式(1) で表すとき、下記式(2) を満足するようにΔWを付与することが好ましい。
L=ΔW+π×rp1×(180-θp1)/180−π×rp2/2 ……(1)
L0−ΔL≦L≦L0+ΔL ……(2)
但し、L0=π×rp1×(180-θp1)/180+0.0435θp1−6.253
ΔL=−9.96×10-5×ek+2.66、k=0.163×(θp1−90)
また、本発明により提供される成形金型は、前記第1成形金型および第2成形金型を備えたものであり、本発明の曲げ成形方法の実施に好適に用いられる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の曲げ成形方法によれば、第1成形工程により、踊りを利用して、反りが防止された仮縦部材と、この仮縦部材と目標角度をなすフランジ部を同時に成形することができ、さらに第2成形工程により横平坦部と縦平坦部とのなす角に対して角度変化不良を防止して目的とするZ形部材やハットチャンネル形部材を曲げ成形することができる。また、本発明の成形金型を用いれば、通常のプレス成形装置により簡単に実施することができるため、生産性に優れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の曲げ成形方法について詳細に説明する。この実施形態では、角度変化不良、縦平坦部の反りが生じやすい、第1曲げ部2,第2曲げ部4の曲げ角θp,θdが直角のZ形部材(図1(A)参照)の曲げ成形について説明する。なお、ハットチャンネル形部材は、左右対称のZ形部材を連成したものであるので、以下説明するZ形部材と同様に考えることができる。
【0013】
前記Z形部材を成形するには、まず第1成形工程にて、図4に示すように、仮横平坦部1Aから仮曲げ部2Aを介して連成された、反りのない仮縦平坦部3Aを有し、この仮縦平坦部3Aに目標とする曲げ角θdをなすように第2曲げ部4を介して連成されたフランジ部5を有する仮成形部材7を曲げ成形する。次いで、第2成形工程にて、前記仮成形部材7から目標形状のZ形部材(図1(A)参照)を成形する。なお、図4では、前記仮成形部材7の仮横平坦部1Aと仮縦平坦部3Aとのなす角をθp1(後述する第1成形金型の仮横平坦成形部と仮縦平坦成形部とのなす角度(成形目標角度))として示すが、実際はθp1に角度変化Δθp1が付加された角度となる。
【0014】
ここで、前記第1成形工程において使用する第1成形金型について説明する。
この第1成形金型は、図5に示すように、仮横平坦成形部11と仮縦平坦成形部13とが仮曲げ成形部12を介して連成され、前記仮縦平坦成形部13にフランジ成形部15が連成された第1成形型部(成形パンチ)17と、前記第1成形型部17の仮縦平坦成形部13およびフランジ成形部15と各々協働して金属板Pを曲げ成形する仮縦平坦成形部13Aと曲げ成形部14Aを介して形成されたフランジ成形部15Aを有する第2成形型部(曲げ刃)18を備える。また、前記仮横平坦成形部11に載置された金属板Pを同成形部11との間で挟持する押さえ部材19が設けらている。なお、ハットチャンネル形部材を成形する場合は、仮横平坦部11で金属板Pを完全に固定する必要はなく、前記押さえ部材19を省略することができる。後述する第2成形金型についても同様である。
同図において、θp1は仮曲げ成形部12の曲げ角(仮横平坦成形部11と仮縦平坦成形部13とのなす角)、rp1は仮曲げ部12の曲率半径、Hpは前記仮縦平坦成形部13とフランジ成形部15との交叉部から仮横平坦成形部11の上面(板押さえ面)までの高さ、Hfは前記交叉部からフランジ成形部15の上面までの高さ、rd1は前記第2成形部18の曲げ成形部14Aの曲率半径を示す。前記θp1は、仮縦平坦部3Aの成形の際に踊りが生じるように鈍角、好ましくは105°〜150°に形成される。
【0015】
一方、前記第2成形工程において使用する第2成形金型は、図7に示すように、横平坦成形部21と縦平坦成形部23とが曲げ成形部22を介して連成された第1成形型部(成形パンチ)25と、前記第1成形型部25の縦平坦成形部23と協働して、仮成形部材7の仮横平坦部1Aを前記曲げ成形部22に沿って縦平坦成形部23側に曲げ成形する縦平坦成形部23Aを有する第2成形型部(曲げ刃)26を備える。また、前記横平坦成形部21に載置された仮成形部材7の仮横平坦部1Aを同成形部21との間で挟持する押さえ部材27が設けらている。
同図において、θp2は曲げ成形部22の曲げ角(横平坦成形部21と縦平坦成形部23とのなす角、この例ではθp2=θp=90°)、rp2は曲げ部22の曲率半径を示し、ΔWは仮成形部材7の仮曲げ部2Aの仮横平坦部1A側の曲げ止まり部(曲げ終端部)と第1成形型部25の曲げ成形部22の横平坦成形部21側の曲げ止まり部(曲げ終端部)との間隔、すなわち仮成形部材7のずらし量を示す。
【0016】
第1成形工程を図5を参照して説明する。まず、高張力鋼板などの金属板Pを第1成形金型の第1成形型部17の仮横平坦成形部11に載置保持し、第2成形型部18を上死点から下降させて、金属板Pを仮曲げ成形部12に沿って斜め下方へアーチ状に曲げ成形する。この際、アーチ部の凸部は第2成形型部18の仮縦平坦成形部13Aの成形面に当接する。さらに第2成形型部18を下降させると、図6に示すように、第2成形型部18の仮縦平坦成形部13Aと第1成形型部17の仮縦平坦成形部13とに凸側表面が当接する、凸部が反対向きの第1アーチ部A1、第2アーチ部A2が形成される。すなわち踊りが生じるように曲げ成形される。この場合、第1成形型部17のθp1(但し、θp1>90°)、Hp、Hf、rp1、rd1を適正に設定することにより、踊りの形態を制御することができ、これにより仮成形部材7の仮縦平坦部3Aに反りを生じさせることなく、しかも仮縦平坦部3Aとフランジ部5とのなす角θdに角度変化不良Δθdを発生させることなく、目標角度θd(=90°)に成形することができる。なお、図5中のLfは、フランジ長さであり、縦平坦部3(あるいは仮縦平坦部3A)の内面からフランジ部5の先端までの長さを示す。
【0017】
図6におけるM1〜M5は、踊りを発生させた状態で、第2成形型部18を下死点まで下降させ、成形部材を第1成形型部、第2成形型部の成形面によって拘束した際に、部材に発生する曲げモーメントを示す。前記第1アーチ部A1に対応した部位には、Z形部材の縦平坦部に生じる反りδを打ち消す向きに作用する曲げモーメントM2が生じる。一方、前記第2アーチ部A2およびフランジ部に対応した部位にはM3およびM5が生じ、これらの曲げモーメントはZ形部材の第2曲げ部に対応した部位に生じたM4(第2曲げ部に角度変化不良Δθdを生じさせるスプリングバック成分)とは向きが反対であり、第2曲げ部のスプリングバックを解消するスプリングゴー成分として作用する。このため、第2成形型部18を上昇させて解放すると、図4に示すように、仮縦平坦部3Aに反りδを発生させることなく、第2曲げ部4が所定の曲げ角θdとされた仮成形部材7が得られる。
【0018】
次に、前記仮成形部材7は第2成形工程にて目的形状に成形される。図7に示すように、第2成形金型の第1成形型部25の横平坦成形部21に仮成形部材7の仮横平坦部1Aを載置保持する。この際、好ましくは仮曲げ部2Aの一部が曲げ成形部22にかかるように、仮横平坦部1AをΔWだけずらして載置する。そして、第2成形型部26を下降すると、仮成形部材7の仮曲げ部2Aが第2成形型部26の縦平坦成形部23Aに沿って曲げ戻されて伸ばされる。この曲げ戻しを受けた部位には、図8(拘束状態を示す。)に示すように、第2成形型部26を解放した状態で第1成形型部25側に弾性回復する曲げモーメント(M2:スプリングゴー成分)が生じる。この際、第1成形金型の第1成形型部17のrp1に応じて、rp2、ΔWを適正に設定することにより、拘束時に第1曲げ部2に生じた曲げモーメント(M1:スプリングバック成分)に基づく解放時の弾性回復による変形と、前記M2に基づく解放時の弾性回復による変形とが相殺されて、第1曲げ部2での曲げ角θpの角度変形不良の発生を防止することができる。このため、第2成形工程後に、第1、第2曲げ部2,4における曲げ角度θp、θdが90°で、縦平坦部3で反りのないZ形部材を得ることができる。
【0019】
ここで、仮曲げ部2Aの一部が曲げ成形部22にかかるようにするためのΔW(仮成形部材7のずらし量)について、図9を参照して説明する。図9は、第2成形工程の成形完了時におけるZ形部材の要部を示している。図中、P21,P22は、それぞれ第2成形金型の第1成形型部25の曲げ成形部22の横平坦成形部21側の曲げ止まり部、及び縦平坦成形部23側の曲げ止まり部に対応する位置であり、P11,P12は、それぞれ第1成形金型の第1成形型部17の仮曲げ成形部12の仮横平坦成形部11側の曲げ止まり部、及び仮縦平坦成形部13側の曲げ止まり部に対応する位置である。また、L1は第1成形工程の成形完了時における仮曲げ成形部12に沿って曲げ成形された部分の長さ(P11からP12に沿った長さ)、L2は第2成形工程の成形完了時における曲げ成形部22に沿って曲げ成形された部分の長さ(P21からP22に沿った長さ)である。LはP22からP12に渡る長さを示しており、下記式(1) (単位:θp1は度、rp1,rp2はmm)によって表される。同図から明らかなように、仮曲げ部2Aの一部が曲げ成形部22にかかる条件は、ΔW≦L2であるが、仮曲げ部の一部が曲げ戻し変形を受けるには、L>0とすることが必要である。もっとも、Δθpを抑制するには、仮曲げ部2Aの全部が曲げ戻し変形を受けてもよいので、少なくともL>0となるようにΔWを設定すればよい。
L=ΔW+L1−L2
L1=π×rp1×(180−θp1)/180、L2=π×rp2/2であるから、
L=ΔW+π×rp1×(180-θp1)/180−π×rp2/2 ……(1)
【0020】
さらに、Δθpの小さいZ形部材を成形するには、下記式(2) を満足するようにΔWを設定すればよい。式(3) のL0は、後述するように340〜1470MPaの種々の引張強さの鋼板を用いて、105°〜150°のθp1に対して、ΔWを種々変えて曲げ成形した際のΔθpを求め、その最大値をΔθpmaxとするとき、Δθpmaxに対するΔθpの比(Δθp/Δθpmax)を調べ、その比が最小値を取る際のLの値である。一方、式(4) のΔLは、Δθp/Δθpmaxが0.5程度以下、すなわちΔθpがΔθpmaxの1/2程度以下になるL/2の範囲である。これらの式の各係数は、いずれも後述の実施例2による曲げ成形結果を基に回帰分析によって求められた。なお、前記Δθpmaxは、実施例2から明らかなように、いずれの鋼板についても、仮曲げ部2Aが曲げ戻し変形を受けない範囲(L<0)で生じた。
L0−ΔL≦L≦L0+ΔL ……(2)
但し、L0=π×rp1×(180-θp1)/180+0.0435θp1−6.253 ……(3)
ΔL=−9.96×10-5×ek+2.66、k=0.163×(θp1−90) ……(4)
【0021】
以上、Z形部材について本発明の曲げ成形方法を説明したが、Z形部材が左右対称に配置されたハットチャンネル形部材の曲げ成形においても同様に考えることができる。また、本発明の成形対象とする金属板は、鋼板に限らずアルミニウム合金板でもよい。また、本発明を実施するためのプレス装置には特に制限はなく、油圧プレスやメカニカルプレス、更には対向液圧プレス等のどのような形式のプレスでも使用可能である。
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はかかる実施例によって限定的に解釈されるものではない。
【実施例1】
【0022】
厚さ1.2mmの780MPa級、1180MPa級の高張力冷延鋼板(幅40mm)を用いて、鋼板の長さ方向の各部を曲げ成形して曲げ部の角度θp、θdが共に90°のZ形部材の曲げ成形例を具体的に示す。
寸法条件として、θp1=135°、Hp=37mm、Hf=37mm、rp1=5mm、rd1=5mmの第1成形金型を用いて第1成形工程を実施したところ、仮成形部材7の寸法変化は、780MPa級材の場合、仮曲げ部2AでのΔθp1=2.2°、仮縦平坦部3Aでのδ=−0.1mm、第2曲げ部4でのΔθd=0.5°であった。また、1180MPa級材の場合、Δθp1=7°、δ=0.0mm、Δθd=1.0°であった。これより、仮曲げ部2AでのΔθp1は強度の上昇に応じて急激に変化することが認められるものの、仮成形部材7は、材料強度によらず、縦平坦部3Aにおける反りδおよび第2曲げ部4でのΔθdはほとんど無視できる程度であることが確認された。
【0023】
次に、寸法条件がrp2=3mmの第2成形金型を用いて、ΔW=4mmとして前記仮成形部材7に第2成形工程を実施したところ、780MPa級材の場合Δθp=−0.5°、1180MPa級材の場合、Δθp=0.6°であり、Δθpは材料強度に依存せず、無視できる程度であった。なお、第2成形工程で得られたZ形部材の縦平坦部3の反り、第2曲げ部4でのΔθdは第2成形工程の実施前と同様、無視できる程度であり、第2成形工程によって影響されないことが確認された。
【実施例2】
【0024】
厚さ1.2mmで、340MPa級、440MPa級、590MPa級、780MPa級、980MPa級、1180MPa級、1470MPa級の7種の強度レベルの高張力冷延鋼板(板幅40mm)を用いて、鋼板の長さ方向の各部を曲げ成形して曲げ部の角度θp、θdが共に90°で、縦平坦部の長さが50mm、フランジ長Lfが16mm、26mmの2種のZ形部材を曲げ成形した。
【0025】
寸法条件として、θp1が90°,105°,120°,135°,150°の4種、Hp=37mm、Hf=37mm、rp1=5mm、rd1=5mmの第1成形金型を用いて第1成形工程を実施した。その結果の一例を図10及び図11に示す。同図中、各データ系列の第1番目の数字は強度レベル(MPa)、第2番目の数字はフランジ長Lf(mm)を示す。例えば「340−16」は、340MPa級材で、Lfが16mmのものを示す。また、図10の縦軸は、仮成形部材の仮縦平坦部の反りの曲率ρ(曲率半径をRとしたとき、ρ=1/R)であり、これにより反りの程度を示した。前記曲率半径Rは以下の要領で求めた。仮成形部材の仮縦平坦成形部3Aの両端曲げ止まり部の間の中心位置で、板幅方向の中央にダイヤルゲージの測定端子を当て、仮縦平坦成形部の長さ方向に測定スパン(23mm)を取り、測定スパン間における最大撓み量ΔRを測定し、下記式(三平方の定理)によりRを求めた。
R2 =(R−ΔR)2 +(測定スパン/2)2
同図より、θp1=90°の通常金型を用いた場合に比して、θp1を105°〜150°とした場合、同等かそれ以上の反りの曲率ρ、Δθdの抑制効果が認められた。特に、590MPa級以上の高強度鋼板ほど、その効果が著しいことが確認された。
【0026】
次に、上記のように一次成形した仮成形部材を用いて、寸法条件がrp2=5mmの第2成形金型を用いて、種々のΔWを設定して第2成形工程を実施した。その結果の一例(Lf=26mmのもの)を図12〜15に示す。また、rp2=3mmの第2成形金型を用いて、種々のΔWを設定して第2成形工程を実施した結果の一例(Lf=26mm)を図16に示す。各図の横軸は、前記式(1) で規定したL(mm)を表しており、点線の間の範囲は前記式(2) で示したL0−ΔL≦L≦L0+ΔLの範囲を示している。また、縦軸は、前記Δθp/Δθpmaxの比を示している。
同図より、LがL0±ΔLの範囲に入るようにΔWを設定することで、Δθpmaxに比してΔθpが概ね50%程度低減しており、Δθpに対して大きな低減効果が得られることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】Z形部材、ハットチャンネル形部材の断面模式図である。
【図2】ハットチャンネル形部材の形状変化不良を示す説明図である。
【図3】スプリングゴー成分を発生させる変形挙動(踊り)を示す説明図である。
【図4】第1成形工程によって成形された仮成形部材の断面模式図である。
【図5】第1成形工程で使用する第1成形金型の断面説明図である。
【図6】第1成形工程において仮縦平坦部に踊りが発生した成形状態を示す説明図である。
【図7】第2成形工程で使用する第2成形金型の断面説明図である。
【図8】第2成形工程における第2成形金型によって拘束されたZ形部材に生じる曲げモーメント発生状態を示す説明図である。
【図9】第2成形工程の成形完了時におけるZ形部材の要部を示す。
【図10】実施例2の第1成形工程における種々の引張強さの鋼板に対するθp1と反りの曲率ρとの関係を示すグラフである。
【図11】実施例2の第1成形工程における種々の引張強さの鋼板に対するθp1とΔθdとの関係を示すグラフである。
【図12】実施例2の第2成形工程における、rp2=5mm、θp1=105°の場合のLとΔθp/Δθpmaxとの関係を示すグラフである。
【図13】実施例2の第2成形工程における、rp2=5mm、θp1=120°の場合のLとΔθp/Δθpmaxとの関係を示すグラフである。
【図14】実施例2の第2成形工程における、rp2=5mm、θp1=135°の場合のLとΔθp/Δθpmaxとの関係を示すグラフである。
【図15】実施例2の第2成形工程における、rp2=5mm、θp1=150°の場合のLとΔθp/Δθpmaxとの関係を示すグラフである。
【図16】実施例2の第2成形工程における、rp2=3mm、θp1=135°の場合のLとΔθp/Δθpmaxとの関係を示すグラフである。
【符号の説明】
【0028】
1 横平坦部
1A 仮横平坦部
2 第1曲げ部
2A 仮曲げ部
3 縦平坦部
3A 仮縦平坦部
4 第2曲げ部
5 フランジ部
7 仮成形部材
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車部品等の成形部材の曲げ成形方法に係り、成形金型から離型した後に生じる、弾性回復に起因する形状不良の防止に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、燃費の向上、環境への配慮、安全性の向上などを企図して、自動車の車体や部品の強化と軽量化が推し進められており、その手段の一つとして車体構成部品の大半を占める金属板のプレス成形部材に対して鋼板の高強度化(ハイテン化)やアルミニウム合金板等の軽量材への転換が進められている。
【0003】
前記プレス成形部材として、例えば、図1(A)は横平坦部1の一端に第1曲げ部2を介して縦平坦部3が下方に延設され、その他端に前記横平坦部1に平行にフランジ部5が第2曲げ部4を介して連成されたZ形部材を示し、同図(B)は前記Z形部材が左右対称に配置されたハットチャンネル形部材を示す。
【0004】
高強度鋼板等の金属板を用いてプレス成形すると、離型後の弾性回復(スプリングバック)が大きいため、成形部材の寸法精度が悪くなる。ハットチャンネル形部材を例として図2に示す。図において、離型前の部材形状(目標形状)を2点鎖線で、離型後の部材形状を実線で示すが、第1曲げ部2については離型後に角度変化不良Δθp(第1曲げ部の縦平坦部側の曲げ止まりにおける接線と目標成形形状の縦平坦部とのなす角)、曲げ曲げ戻しを受ける縦平坦部3には外側に湾曲した反り(縦平坦部の両端の曲げ止まりを結ぶ線分と反りの最大離間距離をδで示す。)が生じる。曲げ曲げ戻しとは、板材が一旦曲げ成形された後、その曲げ部が当初とは反対方向に曲げ成形(曲げ戻し)を受けることをいい、曲げ戻しされた部分は当初の曲げ方向に弾性回復して変形する。前記角度変化不良および反りによって、ハットチャンネル形部材の縦平坦部の下端には、口開き量ΔD(離型後の成形形状と目標成形形状における縦平坦部の下端間の水平距離)の口開きが生じる。なお、ハットチャンネル形部材(Z形部材も同様)の縦平坦部の下端とは、縦平坦部の内面とフランジ部の下面とを延長した交線部を意味する。
【0005】
前記成形部材の形状変化不良を防止する方法として、例えば、曲げ部の稜線に沿って成形曲げ方向と逆向きの逆曲げアール部を成形する方法、曲げ部の板厚方向に圧縮応力を付加し、残留応力を低減する方法が提案されている。これらの方法は、本来不要な形状を付与したり、特殊な設備を必要とするなどの問題がある。一方、これらの問題がなく、形状不良を改善する成形方法が、特開2003−103306号公報(特許文献1)や第53回塑性加工連合講演会論文集251−252頁(非特許文献1)に提案されている。この方法は、図3に示すように、曲げ刃52が成形パンチ51側に下降して金属板Pを曲げ成形する際、前記金属板Pが前記成形パンチ51の曲げ成形部55に沿ってアーチ状に曲げられ、さらに曲げ刃52が下降するに従って前記曲げ刃52の傾斜平坦成形部58と前記成形パンチ51の傾斜平坦成形部56とに凸側表面が当接する、凸部が反対向きのアーチ部A1,A2が連成形成される変形を生じるように成形することで、Z形部材やハットチャンネル形部材の第1曲げ部2での角度変化不良Δθpや縦平坦部3の反りδを抑制するものである。なお、上記のように凸部が反対向きの二つのアーチ部A1,A2が連成される変形挙動は「踊り」と呼ばれる。
【特許文献1】特開2003−103306号公報
【非特許文献1】第53回塑性加工連合講演会論文集251−252頁「踊り制御による寸法精度不良対策技術の検討」、2002年
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記踊りを利用した成形方法により、Z形部材やハットチャンネル形部材の第1曲げ部2の角度変形不良Δθpや縦平坦部3の反りδが抑制されるようになった。しかし、それらの変形を抑制するには、成形パンチ1の曲げ成形部55の曲げ角θpを鈍角に形成する必要があり、成形形状が、縦平坦部3が横平坦部1に対して傾斜した特定形状にならざるを得ないという問題がある。また、縦平坦部3とフランジ部5とのなす角度θdについても、θdが直角に近づくほど角度不良Δθdが大きく現れるようになるという問題がある。
本発明はかかる問題に鑑みなされたもので、フランジ部を有するZ形部材やハットチャンネル形部材の成形に際し、横平坦部と縦平坦部、縦平坦部とフランジ部とのなす角が直角の場合でも角度不良や反りを生じることなく容易に曲げ成形することができる方法およびその方法に用いる成形金型を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、Z形部材やハットチャンネル形部材を曲げ成形する場合、一段で目標形状に成形することは困難であるが、まず仮に成形した仮縦平坦部と、この仮縦平坦部に連成するフランジ部とは仮縦平坦部を成形する際に踊りを利用して成形することによって、仮縦平坦部に反りを生じさせることなく、また仮縦平坦部とフランジ部とのなす角θdについても角度不良を発生させることなく成形可能であることを知見した。そして、次に前記仮縦平坦部の一端に連成された仮横平坦部を曲げ成形する際、仮横平坦部と前記仮縦平坦部との間に形成された仮曲げ部を曲げ戻しするように成形することで、成形後の横平坦部と縦平坦部とのなす角θpに角度不良を生じさせることなく目標形状の部材を成形することができることを見出した。本発明は、かかる知見を基になされたものである。
【0008】
すなわち、本発明の曲げ成形方法は、横平坦部の一端から第1曲げ部を介して縦平坦部が連成され、前記縦平坦部の他端から第2曲げ部を介してフランジ部が連成されたZ形部材あるいはハットチャンネル形部材を金属板から曲げ成形する曲げ成形方法であって、前記金属板を曲げ成形して、仮横平坦部の一端から仮曲げ部を介して仮縦平坦部が連成され、前記仮縦平坦部の他端から前記第2曲げ部を介してフランジ部が連成された仮成形部材を成形する第1成形工程と、前記仮成形部材の仮平坦部、仮曲げ部および仮縦平坦部から前記横平坦部、第1曲げ部および縦平坦部を連成する第2成形工程とを備える。前記第1成形工程は、前記仮縦平坦部を成形する際に、当該仮縦平坦部を成形する一対の成形型部の仮縦平坦成形部の間で凸部が反対向きの二つのアーチ部が形成されるように変形させて成形し、前記第2成形工程は、前記仮成形部材の仮横平坦部を曲げ成形すると共に前記仮曲げ部を曲げ戻し成形する。
【0009】
前記曲げ成形方法は、下記の二つの金型を用いることによって、容易に実施することができる。まず、仮横平坦成形部と仮縦平坦成形部とが仮曲げ成形部を介して連成され、前記仮縦平坦成形部にフランジ成形部が連成された第1成形型部と、前記第1成形型部の仮縦平坦成形部およびフランジ成形部と各々協働して金属板を曲げ成形する仮縦平坦成形部とフランジ成形部を有する第2成形型部を備えた第1成形金型と、横平坦成形部と縦平坦成形部とが曲げ成形部を介して連成された第1成形型部と、前記第1成形型部の縦平坦成形部と協働して前記仮成形部材の仮横平坦部を前記曲げ成形部に沿って曲げ成形する縦平坦成形部を有する第2成形型部を備えた第2成形金型を準備する。そして、前記第1成形工程において、前記第1成形金型の第2成形型部を第1成形金型の第1成形型部に相対移動させることによって、前記第1成形型部の仮横平坦成形部に載置保持された金属板を前記第1成形型部の仮曲げ成形部に沿って第2成形型部の仮縦平坦成形部に凸側表面が当接するようにアーチ状に曲げ、さらに第2成形型部の仮縦平坦成形部および第1成形型部の仮縦平坦成形部の各々に凸側表面が当接し、凸部が反対向きの第1アーチ部および第2アーチ部を連成するように変形させて仮横平坦部の一端から仮曲げ部を介して仮縦平坦部が連成され、前記仮縦平坦部の他端から前記第2曲げ部を介してフランジ部が連成された仮成形部材を成形する。また、前記第2成形工程において、前記第2成形金型の第2成形型部を第2成形金型の第1成形型部に相対移動させることによって、前記仮成形部材の仮横平坦部を曲げ成形すると共に前記仮曲げ部を曲げ戻し成形する。
【0010】
前記第1成形金型の第1成形型部における仮横平坦成形部と仮縦平坦成形部とのなす角θp1を、好ましくは鈍角、より好ましくは105°〜150°程度に形成することによって、仮縦平坦部を成形する際に、この部分に容易に踊りを発生させることができる。
また、前記第2成形工程において、前記仮成形部材の仮曲げ部の仮横平坦側の曲げ止まり部を第2成形金型の第1成形型部の曲げ成形部の横平坦成形部側の曲げ止まり部から外側へずらして仮成形部材の仮横平坦部を第2成形金型の第1成形型部の横平坦成形部に載置し、前記仮成形部材の仮曲げ部の一部が第2成形金型の第1成形型部の曲げ成形部にかかるように曲げ戻し成形することが好ましく、これによって効果的に第1曲げ部の角度不良を防止して、目標角度に成形することができる。
さらに、前記第2成形工程において、前記第1成形金型の第1成形型部の仮曲げ成形部の曲率半径をrp1(mm)、前記第2成形金型の第1成形型部の曲げ成形部の曲率半径をrp2(mm)、前記仮成形部材のずらし量をΔW(mm)とし、Lを下記式(1) で表すとき、下記式(2) を満足するようにΔWを付与することが好ましい。
L=ΔW+π×rp1×(180-θp1)/180−π×rp2/2 ……(1)
L0−ΔL≦L≦L0+ΔL ……(2)
但し、L0=π×rp1×(180-θp1)/180+0.0435θp1−6.253
ΔL=−9.96×10-5×ek+2.66、k=0.163×(θp1−90)
また、本発明により提供される成形金型は、前記第1成形金型および第2成形金型を備えたものであり、本発明の曲げ成形方法の実施に好適に用いられる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の曲げ成形方法によれば、第1成形工程により、踊りを利用して、反りが防止された仮縦部材と、この仮縦部材と目標角度をなすフランジ部を同時に成形することができ、さらに第2成形工程により横平坦部と縦平坦部とのなす角に対して角度変化不良を防止して目的とするZ形部材やハットチャンネル形部材を曲げ成形することができる。また、本発明の成形金型を用いれば、通常のプレス成形装置により簡単に実施することができるため、生産性に優れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の曲げ成形方法について詳細に説明する。この実施形態では、角度変化不良、縦平坦部の反りが生じやすい、第1曲げ部2,第2曲げ部4の曲げ角θp,θdが直角のZ形部材(図1(A)参照)の曲げ成形について説明する。なお、ハットチャンネル形部材は、左右対称のZ形部材を連成したものであるので、以下説明するZ形部材と同様に考えることができる。
【0013】
前記Z形部材を成形するには、まず第1成形工程にて、図4に示すように、仮横平坦部1Aから仮曲げ部2Aを介して連成された、反りのない仮縦平坦部3Aを有し、この仮縦平坦部3Aに目標とする曲げ角θdをなすように第2曲げ部4を介して連成されたフランジ部5を有する仮成形部材7を曲げ成形する。次いで、第2成形工程にて、前記仮成形部材7から目標形状のZ形部材(図1(A)参照)を成形する。なお、図4では、前記仮成形部材7の仮横平坦部1Aと仮縦平坦部3Aとのなす角をθp1(後述する第1成形金型の仮横平坦成形部と仮縦平坦成形部とのなす角度(成形目標角度))として示すが、実際はθp1に角度変化Δθp1が付加された角度となる。
【0014】
ここで、前記第1成形工程において使用する第1成形金型について説明する。
この第1成形金型は、図5に示すように、仮横平坦成形部11と仮縦平坦成形部13とが仮曲げ成形部12を介して連成され、前記仮縦平坦成形部13にフランジ成形部15が連成された第1成形型部(成形パンチ)17と、前記第1成形型部17の仮縦平坦成形部13およびフランジ成形部15と各々協働して金属板Pを曲げ成形する仮縦平坦成形部13Aと曲げ成形部14Aを介して形成されたフランジ成形部15Aを有する第2成形型部(曲げ刃)18を備える。また、前記仮横平坦成形部11に載置された金属板Pを同成形部11との間で挟持する押さえ部材19が設けらている。なお、ハットチャンネル形部材を成形する場合は、仮横平坦部11で金属板Pを完全に固定する必要はなく、前記押さえ部材19を省略することができる。後述する第2成形金型についても同様である。
同図において、θp1は仮曲げ成形部12の曲げ角(仮横平坦成形部11と仮縦平坦成形部13とのなす角)、rp1は仮曲げ部12の曲率半径、Hpは前記仮縦平坦成形部13とフランジ成形部15との交叉部から仮横平坦成形部11の上面(板押さえ面)までの高さ、Hfは前記交叉部からフランジ成形部15の上面までの高さ、rd1は前記第2成形部18の曲げ成形部14Aの曲率半径を示す。前記θp1は、仮縦平坦部3Aの成形の際に踊りが生じるように鈍角、好ましくは105°〜150°に形成される。
【0015】
一方、前記第2成形工程において使用する第2成形金型は、図7に示すように、横平坦成形部21と縦平坦成形部23とが曲げ成形部22を介して連成された第1成形型部(成形パンチ)25と、前記第1成形型部25の縦平坦成形部23と協働して、仮成形部材7の仮横平坦部1Aを前記曲げ成形部22に沿って縦平坦成形部23側に曲げ成形する縦平坦成形部23Aを有する第2成形型部(曲げ刃)26を備える。また、前記横平坦成形部21に載置された仮成形部材7の仮横平坦部1Aを同成形部21との間で挟持する押さえ部材27が設けらている。
同図において、θp2は曲げ成形部22の曲げ角(横平坦成形部21と縦平坦成形部23とのなす角、この例ではθp2=θp=90°)、rp2は曲げ部22の曲率半径を示し、ΔWは仮成形部材7の仮曲げ部2Aの仮横平坦部1A側の曲げ止まり部(曲げ終端部)と第1成形型部25の曲げ成形部22の横平坦成形部21側の曲げ止まり部(曲げ終端部)との間隔、すなわち仮成形部材7のずらし量を示す。
【0016】
第1成形工程を図5を参照して説明する。まず、高張力鋼板などの金属板Pを第1成形金型の第1成形型部17の仮横平坦成形部11に載置保持し、第2成形型部18を上死点から下降させて、金属板Pを仮曲げ成形部12に沿って斜め下方へアーチ状に曲げ成形する。この際、アーチ部の凸部は第2成形型部18の仮縦平坦成形部13Aの成形面に当接する。さらに第2成形型部18を下降させると、図6に示すように、第2成形型部18の仮縦平坦成形部13Aと第1成形型部17の仮縦平坦成形部13とに凸側表面が当接する、凸部が反対向きの第1アーチ部A1、第2アーチ部A2が形成される。すなわち踊りが生じるように曲げ成形される。この場合、第1成形型部17のθp1(但し、θp1>90°)、Hp、Hf、rp1、rd1を適正に設定することにより、踊りの形態を制御することができ、これにより仮成形部材7の仮縦平坦部3Aに反りを生じさせることなく、しかも仮縦平坦部3Aとフランジ部5とのなす角θdに角度変化不良Δθdを発生させることなく、目標角度θd(=90°)に成形することができる。なお、図5中のLfは、フランジ長さであり、縦平坦部3(あるいは仮縦平坦部3A)の内面からフランジ部5の先端までの長さを示す。
【0017】
図6におけるM1〜M5は、踊りを発生させた状態で、第2成形型部18を下死点まで下降させ、成形部材を第1成形型部、第2成形型部の成形面によって拘束した際に、部材に発生する曲げモーメントを示す。前記第1アーチ部A1に対応した部位には、Z形部材の縦平坦部に生じる反りδを打ち消す向きに作用する曲げモーメントM2が生じる。一方、前記第2アーチ部A2およびフランジ部に対応した部位にはM3およびM5が生じ、これらの曲げモーメントはZ形部材の第2曲げ部に対応した部位に生じたM4(第2曲げ部に角度変化不良Δθdを生じさせるスプリングバック成分)とは向きが反対であり、第2曲げ部のスプリングバックを解消するスプリングゴー成分として作用する。このため、第2成形型部18を上昇させて解放すると、図4に示すように、仮縦平坦部3Aに反りδを発生させることなく、第2曲げ部4が所定の曲げ角θdとされた仮成形部材7が得られる。
【0018】
次に、前記仮成形部材7は第2成形工程にて目的形状に成形される。図7に示すように、第2成形金型の第1成形型部25の横平坦成形部21に仮成形部材7の仮横平坦部1Aを載置保持する。この際、好ましくは仮曲げ部2Aの一部が曲げ成形部22にかかるように、仮横平坦部1AをΔWだけずらして載置する。そして、第2成形型部26を下降すると、仮成形部材7の仮曲げ部2Aが第2成形型部26の縦平坦成形部23Aに沿って曲げ戻されて伸ばされる。この曲げ戻しを受けた部位には、図8(拘束状態を示す。)に示すように、第2成形型部26を解放した状態で第1成形型部25側に弾性回復する曲げモーメント(M2:スプリングゴー成分)が生じる。この際、第1成形金型の第1成形型部17のrp1に応じて、rp2、ΔWを適正に設定することにより、拘束時に第1曲げ部2に生じた曲げモーメント(M1:スプリングバック成分)に基づく解放時の弾性回復による変形と、前記M2に基づく解放時の弾性回復による変形とが相殺されて、第1曲げ部2での曲げ角θpの角度変形不良の発生を防止することができる。このため、第2成形工程後に、第1、第2曲げ部2,4における曲げ角度θp、θdが90°で、縦平坦部3で反りのないZ形部材を得ることができる。
【0019】
ここで、仮曲げ部2Aの一部が曲げ成形部22にかかるようにするためのΔW(仮成形部材7のずらし量)について、図9を参照して説明する。図9は、第2成形工程の成形完了時におけるZ形部材の要部を示している。図中、P21,P22は、それぞれ第2成形金型の第1成形型部25の曲げ成形部22の横平坦成形部21側の曲げ止まり部、及び縦平坦成形部23側の曲げ止まり部に対応する位置であり、P11,P12は、それぞれ第1成形金型の第1成形型部17の仮曲げ成形部12の仮横平坦成形部11側の曲げ止まり部、及び仮縦平坦成形部13側の曲げ止まり部に対応する位置である。また、L1は第1成形工程の成形完了時における仮曲げ成形部12に沿って曲げ成形された部分の長さ(P11からP12に沿った長さ)、L2は第2成形工程の成形完了時における曲げ成形部22に沿って曲げ成形された部分の長さ(P21からP22に沿った長さ)である。LはP22からP12に渡る長さを示しており、下記式(1) (単位:θp1は度、rp1,rp2はmm)によって表される。同図から明らかなように、仮曲げ部2Aの一部が曲げ成形部22にかかる条件は、ΔW≦L2であるが、仮曲げ部の一部が曲げ戻し変形を受けるには、L>0とすることが必要である。もっとも、Δθpを抑制するには、仮曲げ部2Aの全部が曲げ戻し変形を受けてもよいので、少なくともL>0となるようにΔWを設定すればよい。
L=ΔW+L1−L2
L1=π×rp1×(180−θp1)/180、L2=π×rp2/2であるから、
L=ΔW+π×rp1×(180-θp1)/180−π×rp2/2 ……(1)
【0020】
さらに、Δθpの小さいZ形部材を成形するには、下記式(2) を満足するようにΔWを設定すればよい。式(3) のL0は、後述するように340〜1470MPaの種々の引張強さの鋼板を用いて、105°〜150°のθp1に対して、ΔWを種々変えて曲げ成形した際のΔθpを求め、その最大値をΔθpmaxとするとき、Δθpmaxに対するΔθpの比(Δθp/Δθpmax)を調べ、その比が最小値を取る際のLの値である。一方、式(4) のΔLは、Δθp/Δθpmaxが0.5程度以下、すなわちΔθpがΔθpmaxの1/2程度以下になるL/2の範囲である。これらの式の各係数は、いずれも後述の実施例2による曲げ成形結果を基に回帰分析によって求められた。なお、前記Δθpmaxは、実施例2から明らかなように、いずれの鋼板についても、仮曲げ部2Aが曲げ戻し変形を受けない範囲(L<0)で生じた。
L0−ΔL≦L≦L0+ΔL ……(2)
但し、L0=π×rp1×(180-θp1)/180+0.0435θp1−6.253 ……(3)
ΔL=−9.96×10-5×ek+2.66、k=0.163×(θp1−90) ……(4)
【0021】
以上、Z形部材について本発明の曲げ成形方法を説明したが、Z形部材が左右対称に配置されたハットチャンネル形部材の曲げ成形においても同様に考えることができる。また、本発明の成形対象とする金属板は、鋼板に限らずアルミニウム合金板でもよい。また、本発明を実施するためのプレス装置には特に制限はなく、油圧プレスやメカニカルプレス、更には対向液圧プレス等のどのような形式のプレスでも使用可能である。
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はかかる実施例によって限定的に解釈されるものではない。
【実施例1】
【0022】
厚さ1.2mmの780MPa級、1180MPa級の高張力冷延鋼板(幅40mm)を用いて、鋼板の長さ方向の各部を曲げ成形して曲げ部の角度θp、θdが共に90°のZ形部材の曲げ成形例を具体的に示す。
寸法条件として、θp1=135°、Hp=37mm、Hf=37mm、rp1=5mm、rd1=5mmの第1成形金型を用いて第1成形工程を実施したところ、仮成形部材7の寸法変化は、780MPa級材の場合、仮曲げ部2AでのΔθp1=2.2°、仮縦平坦部3Aでのδ=−0.1mm、第2曲げ部4でのΔθd=0.5°であった。また、1180MPa級材の場合、Δθp1=7°、δ=0.0mm、Δθd=1.0°であった。これより、仮曲げ部2AでのΔθp1は強度の上昇に応じて急激に変化することが認められるものの、仮成形部材7は、材料強度によらず、縦平坦部3Aにおける反りδおよび第2曲げ部4でのΔθdはほとんど無視できる程度であることが確認された。
【0023】
次に、寸法条件がrp2=3mmの第2成形金型を用いて、ΔW=4mmとして前記仮成形部材7に第2成形工程を実施したところ、780MPa級材の場合Δθp=−0.5°、1180MPa級材の場合、Δθp=0.6°であり、Δθpは材料強度に依存せず、無視できる程度であった。なお、第2成形工程で得られたZ形部材の縦平坦部3の反り、第2曲げ部4でのΔθdは第2成形工程の実施前と同様、無視できる程度であり、第2成形工程によって影響されないことが確認された。
【実施例2】
【0024】
厚さ1.2mmで、340MPa級、440MPa級、590MPa級、780MPa級、980MPa級、1180MPa級、1470MPa級の7種の強度レベルの高張力冷延鋼板(板幅40mm)を用いて、鋼板の長さ方向の各部を曲げ成形して曲げ部の角度θp、θdが共に90°で、縦平坦部の長さが50mm、フランジ長Lfが16mm、26mmの2種のZ形部材を曲げ成形した。
【0025】
寸法条件として、θp1が90°,105°,120°,135°,150°の4種、Hp=37mm、Hf=37mm、rp1=5mm、rd1=5mmの第1成形金型を用いて第1成形工程を実施した。その結果の一例を図10及び図11に示す。同図中、各データ系列の第1番目の数字は強度レベル(MPa)、第2番目の数字はフランジ長Lf(mm)を示す。例えば「340−16」は、340MPa級材で、Lfが16mmのものを示す。また、図10の縦軸は、仮成形部材の仮縦平坦部の反りの曲率ρ(曲率半径をRとしたとき、ρ=1/R)であり、これにより反りの程度を示した。前記曲率半径Rは以下の要領で求めた。仮成形部材の仮縦平坦成形部3Aの両端曲げ止まり部の間の中心位置で、板幅方向の中央にダイヤルゲージの測定端子を当て、仮縦平坦成形部の長さ方向に測定スパン(23mm)を取り、測定スパン間における最大撓み量ΔRを測定し、下記式(三平方の定理)によりRを求めた。
R2 =(R−ΔR)2 +(測定スパン/2)2
同図より、θp1=90°の通常金型を用いた場合に比して、θp1を105°〜150°とした場合、同等かそれ以上の反りの曲率ρ、Δθdの抑制効果が認められた。特に、590MPa級以上の高強度鋼板ほど、その効果が著しいことが確認された。
【0026】
次に、上記のように一次成形した仮成形部材を用いて、寸法条件がrp2=5mmの第2成形金型を用いて、種々のΔWを設定して第2成形工程を実施した。その結果の一例(Lf=26mmのもの)を図12〜15に示す。また、rp2=3mmの第2成形金型を用いて、種々のΔWを設定して第2成形工程を実施した結果の一例(Lf=26mm)を図16に示す。各図の横軸は、前記式(1) で規定したL(mm)を表しており、点線の間の範囲は前記式(2) で示したL0−ΔL≦L≦L0+ΔLの範囲を示している。また、縦軸は、前記Δθp/Δθpmaxの比を示している。
同図より、LがL0±ΔLの範囲に入るようにΔWを設定することで、Δθpmaxに比してΔθpが概ね50%程度低減しており、Δθpに対して大きな低減効果が得られることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】Z形部材、ハットチャンネル形部材の断面模式図である。
【図2】ハットチャンネル形部材の形状変化不良を示す説明図である。
【図3】スプリングゴー成分を発生させる変形挙動(踊り)を示す説明図である。
【図4】第1成形工程によって成形された仮成形部材の断面模式図である。
【図5】第1成形工程で使用する第1成形金型の断面説明図である。
【図6】第1成形工程において仮縦平坦部に踊りが発生した成形状態を示す説明図である。
【図7】第2成形工程で使用する第2成形金型の断面説明図である。
【図8】第2成形工程における第2成形金型によって拘束されたZ形部材に生じる曲げモーメント発生状態を示す説明図である。
【図9】第2成形工程の成形完了時におけるZ形部材の要部を示す。
【図10】実施例2の第1成形工程における種々の引張強さの鋼板に対するθp1と反りの曲率ρとの関係を示すグラフである。
【図11】実施例2の第1成形工程における種々の引張強さの鋼板に対するθp1とΔθdとの関係を示すグラフである。
【図12】実施例2の第2成形工程における、rp2=5mm、θp1=105°の場合のLとΔθp/Δθpmaxとの関係を示すグラフである。
【図13】実施例2の第2成形工程における、rp2=5mm、θp1=120°の場合のLとΔθp/Δθpmaxとの関係を示すグラフである。
【図14】実施例2の第2成形工程における、rp2=5mm、θp1=135°の場合のLとΔθp/Δθpmaxとの関係を示すグラフである。
【図15】実施例2の第2成形工程における、rp2=5mm、θp1=150°の場合のLとΔθp/Δθpmaxとの関係を示すグラフである。
【図16】実施例2の第2成形工程における、rp2=3mm、θp1=135°の場合のLとΔθp/Δθpmaxとの関係を示すグラフである。
【符号の説明】
【0028】
1 横平坦部
1A 仮横平坦部
2 第1曲げ部
2A 仮曲げ部
3 縦平坦部
3A 仮縦平坦部
4 第2曲げ部
5 フランジ部
7 仮成形部材
【特許請求の範囲】
【請求項1】
横平坦部の一端から第1曲げ部を介して縦平坦部が連成され、前記縦平坦部の他端から第2曲げ部を介してフランジ部が連成されたZ形部材あるいはハットチャンネル形部材を金属板から曲げ成形する曲げ成形方法であって、
前記金属板を曲げ成形して、仮横平坦部の一端から仮曲げ部を介して仮縦平坦部が連成され、前記仮縦平坦部の他端から前記第2曲げ部を介してフランジ部が連成された仮成形部材を成形する第1成形工程と、前記仮成形部材の仮平坦部、仮曲げ部および仮縦平坦部から前記横平坦部、第1曲げ部および縦平坦部を連成する第2成形工程とを備え、
前記第1成形工程は、前記仮縦平坦部を成形する際に、当該仮縦平坦部を成形する一対の仮縦平坦成形部の間で凸部が反対向きの二つのアーチ部が形成されるように変形させて成形し、
前記第2成形工程は、前記仮成形部材の仮横平坦部を曲げ成形すると共に前記仮曲げ部を曲げ戻し成形する、曲げ成形方法。
【請求項2】
請求項1に記載した曲げ成形方法であって、
仮横平坦成形部と仮縦平坦成形部とが仮曲げ成形部を介して連成され、前記仮縦平坦成形部にフランジ成形部が連成された第1成形型部と、前記第1成形型部の仮縦平坦成形部およびフランジ成形部と各々協働して金属板を曲げ成形する仮縦平坦成形部とフランジ成形部を有する第2成形型部を備えた第1成形金型と、
横平坦成形部と縦平坦成形部とが曲げ成形部を介して連成された第1成形型部と、前記第1成形型部の縦平坦成形部と協働して前記仮成形部材の仮横平坦部を前記曲げ成形部に沿って曲げ成形する縦平坦成形部を有する第2成形型部を備えた第2成形金型を準備し、
前記第1成形工程は、前記第1成形金型の第2成形型部を第1成形金型の第1成形型部に相対移動させることによって、前記第1成形型部の仮横平坦成形部に載置保持された金属板を前記第1成形型部の仮曲げ成形部に沿って第2成形型部の仮縦平坦成形部に凸側表面が当接するようにアーチ状に曲げ、さらに第2成形型部の仮縦平坦成形部および第1成形型部の仮縦平坦成形部の各々に凸側表面が当接し、凸部が反対向きの第1アーチ部および第2アーチ部を連成するように変形させて仮横平坦部の一端から仮曲げ部を介して仮縦平坦部が連成され、前記仮縦平坦部の他端から前記第2曲げ部を介してフランジ部が連成された仮成形部材を成形し、
前記第2成形工程は、前記第2成形金型の第2成形型部を第2成形金型の第1成形型部に相対移動させることによって、前記仮成形部材の仮横平坦部を曲げ成形すると共に前記仮曲げ部を曲げ戻し成形する、曲げ成形方法。
【請求項3】
前記第1成形金型の第1成形型部における仮横平坦成形部と仮縦平坦成形部とのなす角θp1が鈍角に形成された請求項2に記載した曲げ成形方法。
【請求項4】
前記θp1が105°〜150°とされた請求項3に記載した曲げ成形方法。
【請求項5】
前記第2成形工程において、前記仮成形部材の仮曲げ部の仮横平坦側の曲げ止まり部を第2成形金型の第1成形型部の曲げ成形部の横平坦成形部側の曲げ止まり部から外側へずらして仮成形部材の仮横平坦部を第2成形金型の第1成形型部の横平坦成形部に載置し、前記仮成形部材の仮曲げ部の一部が第2成形金型の第1成形型部の曲げ成形部にかかるように曲げ戻し成形する請求項3又は4に記載した曲げ成形方法。
【請求項6】
前記第1成形金型の第1成形型部の仮曲げ成形部の曲率半径をrp1(mm)、前記第2成形金型の第1成形型部の曲げ成形部の曲率半径をrp2(mm)、前記仮成形部材のずらし量をΔW(mm)とし、Lを下記式(1) で表すとき、下記式(2) を満足するようにΔWを付与する請求項3又は4に記載した曲げ成形方法。
L=ΔW+π×rp1×(180-θp1)/180−π×rp2/2 ……(1)
L0−ΔL≦L≦L0+ΔL ……(2)
但し、L0=π×rp1×(180-θp1)/180+0.0435θp1−6.253
ΔL=−9.96×10-5×ek+2.66、k=0.163×(θp1−90)
【請求項7】
請求項2から6のいずれか1項に記載した曲げ成形方法を実施するための成形金型であって、前記第1成形金型および第2成形金型を備えた、成形金型。
【請求項1】
横平坦部の一端から第1曲げ部を介して縦平坦部が連成され、前記縦平坦部の他端から第2曲げ部を介してフランジ部が連成されたZ形部材あるいはハットチャンネル形部材を金属板から曲げ成形する曲げ成形方法であって、
前記金属板を曲げ成形して、仮横平坦部の一端から仮曲げ部を介して仮縦平坦部が連成され、前記仮縦平坦部の他端から前記第2曲げ部を介してフランジ部が連成された仮成形部材を成形する第1成形工程と、前記仮成形部材の仮平坦部、仮曲げ部および仮縦平坦部から前記横平坦部、第1曲げ部および縦平坦部を連成する第2成形工程とを備え、
前記第1成形工程は、前記仮縦平坦部を成形する際に、当該仮縦平坦部を成形する一対の仮縦平坦成形部の間で凸部が反対向きの二つのアーチ部が形成されるように変形させて成形し、
前記第2成形工程は、前記仮成形部材の仮横平坦部を曲げ成形すると共に前記仮曲げ部を曲げ戻し成形する、曲げ成形方法。
【請求項2】
請求項1に記載した曲げ成形方法であって、
仮横平坦成形部と仮縦平坦成形部とが仮曲げ成形部を介して連成され、前記仮縦平坦成形部にフランジ成形部が連成された第1成形型部と、前記第1成形型部の仮縦平坦成形部およびフランジ成形部と各々協働して金属板を曲げ成形する仮縦平坦成形部とフランジ成形部を有する第2成形型部を備えた第1成形金型と、
横平坦成形部と縦平坦成形部とが曲げ成形部を介して連成された第1成形型部と、前記第1成形型部の縦平坦成形部と協働して前記仮成形部材の仮横平坦部を前記曲げ成形部に沿って曲げ成形する縦平坦成形部を有する第2成形型部を備えた第2成形金型を準備し、
前記第1成形工程は、前記第1成形金型の第2成形型部を第1成形金型の第1成形型部に相対移動させることによって、前記第1成形型部の仮横平坦成形部に載置保持された金属板を前記第1成形型部の仮曲げ成形部に沿って第2成形型部の仮縦平坦成形部に凸側表面が当接するようにアーチ状に曲げ、さらに第2成形型部の仮縦平坦成形部および第1成形型部の仮縦平坦成形部の各々に凸側表面が当接し、凸部が反対向きの第1アーチ部および第2アーチ部を連成するように変形させて仮横平坦部の一端から仮曲げ部を介して仮縦平坦部が連成され、前記仮縦平坦部の他端から前記第2曲げ部を介してフランジ部が連成された仮成形部材を成形し、
前記第2成形工程は、前記第2成形金型の第2成形型部を第2成形金型の第1成形型部に相対移動させることによって、前記仮成形部材の仮横平坦部を曲げ成形すると共に前記仮曲げ部を曲げ戻し成形する、曲げ成形方法。
【請求項3】
前記第1成形金型の第1成形型部における仮横平坦成形部と仮縦平坦成形部とのなす角θp1が鈍角に形成された請求項2に記載した曲げ成形方法。
【請求項4】
前記θp1が105°〜150°とされた請求項3に記載した曲げ成形方法。
【請求項5】
前記第2成形工程において、前記仮成形部材の仮曲げ部の仮横平坦側の曲げ止まり部を第2成形金型の第1成形型部の曲げ成形部の横平坦成形部側の曲げ止まり部から外側へずらして仮成形部材の仮横平坦部を第2成形金型の第1成形型部の横平坦成形部に載置し、前記仮成形部材の仮曲げ部の一部が第2成形金型の第1成形型部の曲げ成形部にかかるように曲げ戻し成形する請求項3又は4に記載した曲げ成形方法。
【請求項6】
前記第1成形金型の第1成形型部の仮曲げ成形部の曲率半径をrp1(mm)、前記第2成形金型の第1成形型部の曲げ成形部の曲率半径をrp2(mm)、前記仮成形部材のずらし量をΔW(mm)とし、Lを下記式(1) で表すとき、下記式(2) を満足するようにΔWを付与する請求項3又は4に記載した曲げ成形方法。
L=ΔW+π×rp1×(180-θp1)/180−π×rp2/2 ……(1)
L0−ΔL≦L≦L0+ΔL ……(2)
但し、L0=π×rp1×(180-θp1)/180+0.0435θp1−6.253
ΔL=−9.96×10-5×ek+2.66、k=0.163×(θp1−90)
【請求項7】
請求項2から6のいずれか1項に記載した曲げ成形方法を実施するための成形金型であって、前記第1成形金型および第2成形金型を備えた、成形金型。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2006−15404(P2006−15404A)
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−349473(P2004−349473)
【出願日】平成16年12月2日(2004.12.2)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成16年6月3日に開催された「2004年度第1回 薄鋼板成形技術研究会研究討論会」で発表
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年12月2日(2004.12.2)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成16年6月3日に開催された「2004年度第1回 薄鋼板成形技術研究会研究討論会」で発表
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)
【Fターム(参考)】
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