説明

曲げ自在ノズル及び狭小空間における付着ゴミの除去清掃方法

【課題】建造物や機器類等の狭小空間に付着しているゴミを除去する際に、この狭小空間に見合うように自在に曲げることが出来るノズルにより清掃を可能とすること。また、このノズルを使用して狭小空間における付着ゴミ除去清掃方法を可能とすること。
【解決手段】曲げ変形した形状を維持できる可塑性ノズル本体2の一端側に、圧力流体供給側と連結する連結部材3を具備し、他端側に放出口4を具備したことを特徴とする曲げ自在ノズル1とこのノズル1を使用した狭小空間における付着ゴミの除去清掃方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、建造物や機器類に付着して剥れ難い付着物に流体を噴射して除去する際に使用する曲げ自在ノズル及びこの曲げ自在ノズルを用いて行う付着ゴミの除去清掃方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アスベストは、軽くて安価であることから、建造物等に付着させて、断熱材、耐火材、結露防止材等々の用途に広く用いられていた。しかし、近年、その粉塵が人体の健康を害することが判り、社会問題化し、撤去作業が急速に進められている。このような撤去作業として、建造物に付着しているアスベストにドライアイスを噴射して、そのアスベストを建造物の表面からきれいに除去するアスベスト除去工法及び装置が開発されている(例えば、特許文献1)。
【0003】
この従来のアスベスト除去装置としてのドライアイスブロアブラスト機は、ドライアイスホッパに入れられた粒状のドライアイスをブロアの力によって、ドライアイスホースを通じてドライアイスノズルから噴射し、この噴射力でもって、建造物の表面に付着しているアスベストを完全に除去する装置である。そして、このドライアイスブロアブラスト機に用いられているドライアイスノズルは、図8に示されているように、金属製の丸型のノズル20や、図9に示すように取付板に取付けられて、その根元を中心に自由方向に曲げられる金属製の細長いノズル30などが知られている。又、手に持って行う作業の場合には、図10に示すように、機関銃型のドライアイスノズル40も用いられている。これらのノズルから空気と共にドライアイスを噴射することによって、アスベストはその衝撃力により施工面より剥離するのみならず、当該施工面の飛泡までも昇華した炭酸ガスが侵入して、除去作業を容易にすることができ、実質的にほとんどアスベストを残すことがないきれいな仕上り面を得る効果がある。
【特許文献1】特願2007−120033
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前述のようにドライアイスノズルが金属製であると、その材質の如何を問わず、外形状を簡単に変えることが出来ないために、外形状を施工現場に見合ったものとするためには、何種類も準備しておかなければならないという問題点がある。とくに施工現場がノズルの入り難い曲りくねった狭小空間である場合には、作業者が手でノズルを持って作業を行うに際し、長短のノズル、曲がり角度が異なるノズルなどを準備しておかないと隅々まできれいにアスベストを除去することができなく、現実にはそのような何種類ものノズルを準備することは経済上難かしく、又、仮に準備が出来たとしても作業現場への運搬手数がかかるという問題点がある。更に、このような問題点を克服できたとしても、ノズルとドライアイスホースとを取り替える作業が頻繁に生じて手数が掛るなど、作業能率を著しく低下させるという問題点がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明は上記事情に鑑みてなされたものであって、その手段とするところは、請求項1の発明においては、曲げ変形した形状を維持できる可塑性ノズル本体の一端側に圧力流体供給側と連結する連結部材を具備し、他端側に放出口を具備したことを特徴とする曲げ自在ノズルとしたことにある。
【0006】
請求項2の発明においては、前記可塑性ノズル本体が、長尺なフレキシブルパイプと、該フレキシブルパイプの外周面の長手方向に添うパイプ曲形状保持材と、該パイプ曲形状保持材の外周を覆って前記フレキシブルパイプの外周面に密着させる被覆締付部材とを具備することにある。
【0007】
請求項3の発明においては、前記フレキシブルがシリコンゴムからなることにある。
【0008】
請求項4の発明においては、前記可塑性ノズル本体が、連結部材を具備した一端側よりも放出口を具備した他端側の方の内径が小さいことにある。
【0009】
請求項5の発明においては、前記可塑性ノズル本体又は放出口の外周に該放出口の前方を照明する照明灯を具備したことにある。
【0010】
請求項6の発明においては、前記可塑性ノズル本体又は放出口の外周に該放出口の前方を撮影する小型カメラを具備したことにある。
【0011】
請求項7の発明においては、前記小型カメラが赤外線暗視カメラであることにある。
【0012】
請求項8の発明においては、前記請求項1の曲げ自在ノズルを用いて、狭小空間内の曲がりくねったゴミ除去空間に見合うように、前記可塑性ノズル本体を曲げてから、当該狭小空間内へ曲げ自在ノズルを挿入し、当該曲げ自在ノズルを持ったまま放出口から噴射されるドライアイスを施工面に付着しているゴミに吹付けて衝撃を与え、この衝撃力により、ゴミの剥離作業をする狭小空間における付着ゴミの除去清掃方法としたことにある。
【0013】
請求項9の発明においては、前記可塑性ノズル本体又は放出口の外周に具備した該放出口の前方を照明する照明灯によってゴミが付着した施工面を照らしながらゴミの剥離作業をする狭小空間におけるアスベストの除去清掃方法としたことにある。
【0014】
請求項10の発明においては、前記可塑性ノズル本体又は放出口の外周に具備した該放出口の前方を撮影する小型カメラによって撮像された狭小空間内の施工面のゴミ付着状態の画像を見ながら、ゴミの剥離作業をする狭小空間における付着ゴミの除去清掃方法としたことにある。
【0015】
請求項11の発明においては、前記小型カメラが、赤外線暗視カメラである狭小空間における付着ゴミの除去清掃方法としたことにある。
【0016】
請求項12の発明においては、前記画像が、作業者のヘルメットに取付けたディスプレイに現れる画像である狭小空間における付着ゴミの除去清掃方法としたことにある。
【0017】
請求項13の発明においては、前記ゴミが、アスベストである狭小空間における付着ゴミの除去清掃方法としたことにある。
【発明の効果】
【0018】
前記請求項1の曲げ自在ノズルによると、可塑性ノズル本体を使用しているので、使用時に建造物や機器類の狭い作業現場の状況に合わせて自在に曲げることができる。従って、人手が入り難い曲がりくねった狭小空間のような場所であっても、その曲がりくねった狭小空間に可塑性ノズル本体の曲げ形状を合わせておくことによって入れることができる。このような可塑性ノズル本体の曲げは、作業現場で狭小空間を観察しながら人手で容易に行うことができるので作業能率は向上する。又、何度も繰り返して曲げ変形を行うことができるので、一つの曲げ自在ノズルで種々の狭小空間の清掃を行うことができる。そのため、一端の連結部材を通じて供給された液体等の流体は、この曲がった可塑性ノズル本体を通じて放出口から目的とする付着物に噴射し、その衝動でもって、付着物を除去することができる。
【0019】
前記請求項2の曲げ自在ノズルによると、作業現場の狭小空間に合わせて可塑性ノズル本体を曲げてもフレキシブルパイプの外周面に被覆締付部材により密着しているパイプ曲形状保持部材によって元通りに復元しなくて曲げた形状を維持することができる。これによって、汚れた壁面等の施工面に流体等を連続して噴射して衝撃力によって剥離し清掃できる。清掃する施工面の位置が異なった場合には、その施工面側を放出口が向くようにこの可塑性ノズル本体を手で曲げてから作業を再開する。この時、作業者は一旦コンプレッサの電源を切断した状態で両手を使用して曲げることが安全上好ましい。
【0020】
前記請求項3の曲げ自在ノズルによると、フレキシブルパイプが熱伝導率の低い且つ耐寒性のあるシリコンゴムからなっているので、作業者が内部を通過するドライアイスの昇華に伴う低温の影響を受けにくくなり、手が凍ることもなく作業能率が向上する。加えてフレキシブルパイプが常温にまで昇温することなく次の曲げを行うことができる。
【0021】
前記請求項5の曲げ自在ノズルによると、放出口の前方を照明灯によって照明することができるので、狭小空間で外部からの光が届かない場所であっても、ドライアイスの噴射方向を目で確認しながら作業を行うことができる。これによって、より清掃作業の能率化を図ることができると共に、剥離残し等の清掃漏れを防止できる。
【0022】
前記請求項4記載の曲げ自在ノズルによると、可塑性ノズル本体の内径が、圧力流体供給側である連結部材を具備した一端側よりも放出口を具備した他端側の方が小さくなっているので、放出口に内径が小さい分だけ圧力の高い流体を送り込めることとなり、衝動の大きい流体を放出できる。
【0023】
前記請求項6の曲げ自在ノズルによると、小型カメラを付設しているので、これによって、視線が届かない曲がりくねった狭小空間であっても、清掃しながら剥離すべき施工面を常時見ることができる。従って、曲げ自在ノズルの放出口を常時剥離すべき施工面に向けることができることとなり、作業能率の向上を図ることができる。又、剥離作業を全て終えた段階で最終チェックのために施工面を観察することもでき、必要ならば録画して施主に出来上り具合を見てもらうことも可能となる。又、照明灯の照明があればより鮮明な画像を得られるが、もし、照明灯がない場合であっても、わずかな光が狭小空間へ入れば高性能カメラを使用することによって撮像できる。
【0024】
請求項7の曲げ自在ノズルによると、小型カメラとして赤外線暗視カメラを使用しているので、狭小空間に放出口からのドライアイスの噴射による衝撃によって剥離された粉塵やドライアイスの粒子が蔓延して透明度が低い場合であっても、比較的鮮明な画像を得ることができるので、作業能率の低下を防止できる。
【0025】
請求項8の付着ゴミの除去清掃方法によると、前記曲げ自在ノズルを用いて、狭小空間内の曲がりくねったゴミ除去空間に見合うように、前記可塑性ノズル本体を曲げてから、当該狭小空間内へ曲げ自在ノズルを挿入し、当該曲げ自在ノズルを持ったまま放出口から噴射されるドライアイスを施工面に付着しているゴミに吹付けて衝撃を与え、この衝撃力により、ゴミの剥離作業をするので、狭小空間が曲げ自在ノズルが入るだけの隙間を有している限りにおいて、付着ゴミの除去清掃を行うことができる。
【0026】
請求項9の付着ゴミの除去清掃方法によると、照明灯によってゴミが付着した施工面を照らしながらゴミの剥離作業を行えるので、作業能率が向上すると共に、より取りこぼしなく施工面をきれいに清掃することができる。
【0027】
請求項10の付着ゴミの除去清掃方法によると、小型カメラによって撮像された狭小空間内の施工面のゴミ付着状態の画像を見ながら行えるので、作業者が直接に目で確認できない箇所でもきれいに清掃できる利点がある。また作業の終了時において撮像画面を録画して施主に報告することも出来て、より信頼性を高めることができる。
【0028】
請求項11の付着ゴミの除去清掃方法によると、赤外線暗視カメラであることから、狭小空間におけるゴミやドライアイスの微細粒子の散乱によって空気が混濁していても、内部が比較的よく見えるので作業能率が向上する。
【0029】
請求項12の発付着ゴミの除去清掃方法によると、狭小空間内の施工面の画像が、作業者のヘルメットに取付けたディスプレイに現れるので、作業者は両手で曲げ自在ノズルを持ったまま画面を見ながら清掃作業を行うことができ、より作業能率を向上できる。
【0030】
請求項13の付着ゴミの除去清掃方法によると、ゴミが、アスベストであるので、人体に有害なこの物質をよりきれいに除去することができ、衛生環境上より有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
この発明の曲げ自在ノズルを実施するための最良の形態について以下図に基づいて説明する。図1示すように、曲げ自在ノズル1は、曲げ変形した形状をそのまま維持できる可塑性ノズル本体2の一端側に、図5に示すように、流体の供給源となるドライアイスブロアブラスト機Aによって供給される流体を搬送するホースBと連結する連結部材3を具備し、他端側に放出口4を具備している。この実施形態で使用するドライアイスブロアブラスト機Aは、ブロアによって空気と共にドライアイス粒状物を比較的低圧力でもってホースBへと送り出す機器であるが、コンプレッサーなどにより圧縮された空気を送り込む他の装置であっても良い。前記可塑性ノズル本体2は、圧力を加えられた流体と共にドライアイスが通過するフレキシブルパイプ5と、該フレキシブルパイプ5の外周面の長手方向に添うパイプ曲形状保持材6と、該パイプ曲形状保持材6の外周を覆って前記フレキシブルパイプ5の外周面に密着させて前記フレキシブルパイプ5と共にパイプ形状保持材6が曲折するように締付けながら被覆する被覆締付部材8とからなる。
【0032】
前記フレキシブルパイプ5は、その内部にドライアイスの粒状物を含んだ圧力が加わった空気等の流体が通過したような場合であっても対応できるようにある程度の硬度を有していると共に、現場の作業者の手等で曲げた後に元の形状に復元すると作業が出来なくなるために、又、曲がりくねった狭小空間において使用可能なように曲げが自在な可塑性の材質若しくは可塑性の構造となっている。従って、このフレキシブルパイプ5は、曲がりくねった狭小空間に見合った形状に常温あるいは低温で曲げても元の形状に復帰しないか、あるいは極めて緩い速度で時間をかけて復帰する性質を有している。具体的には、フレキシブル管、螺旋管、フレックス管、案内管、金属管、樹脂管、スタンド管、チューブ管などの名称で一般的に呼ばれている管を使用することができる。
【0033】
このフレキシブルパイプ5の内部を、昇華温度が−78.5℃のドライアイスと空気を同時に通過させる場合には、温度が−20〜50℃となるために、手でこのフレキシブルパイプ5を内部に有する可塑性ノズル本体2を持って作業することを考慮すると、熱伝導率が低く且つ低温に対しても強いシリコンゴム、弾性のある塩化ビニールや硬質合成樹脂が望ましい。フレキシブルパイプ5の長さはとくに限定されるものではないが、通常は50〜150cmの範囲内で使用目的に応じて適宜選択されて使用される。又、このフレキシブルパイプ5の内径は、一端側の連結部材3を取付けた側が太く、他端側の放出口4を取付けた側を細くなるようにして、放出口4から高速で噴出するようにしている。実際の例では、一端側の最も太い内径が20mmで長さが40cm、他端側の内径が16mmで長さが40cm、内径が13mmで長さ20cmの放出口4と連結している。このようなフレキシブルパイプ5や放出口4の内径は上記した範囲に限定されるものではなく、使用目的に応じて適宜選択して使用される。
【0034】
前記パイプ曲形状保持材6としては、可塑性を有する金属線を使用している。すなわち、曲げた形状はそのまま維持して元に戻らない金属線であり、具体的には、材質が可塑性の性質を有する、すなわち元の形状に自身では復帰することがないしんちゅう合金などからなる直径が2〜5mmの針金を使用している。このような針金を数本束にしたものを間隔を置いて3〜6ヵ所フレキシブルパイプ5の外周の長手方向に沿って密着させてから被覆締付部材8を用いてフレキシブルパイプ5に固定している。この実施の形態では可塑性を有する針金を束ねたものや一本ものを使用したが、フレキシブルパイプ5の外周の長手方向に沿うように配置すれば、1本ずつを多数並べたものであってもよい。又、針金に限定されることなく、同じしんちゅう合金で長尺な薄板状のものなどであってもよいし、銅線その他の可塑性を有する材質のものであってもよい。
【0035】
前記被覆締付部材8としては、合成樹脂からなる片面にのりを付着させたテープ状のものが適しているが、柔軟性を有していればゴムや不織布などのあるいはその他のであってもよく、とくに材質は限定されないが、断熱性が高ければ内部をドライアイスが流体と共に通過して、低温になった場合でも作業者の手がさほど冷たくならないので、作業がし易い利点がある。なお、この被覆締付部材8の締付けだけでは不十分な場合には、針金などでパイプ曲形状保持材6を予めフレキシブルパイプ5に巻付け固定しておいても良い。
なお、この実施形態においては、前記したように、可塑性ノズル本体2としては、フレキシブルパイプ5、パイプ曲形状保持材6及び被覆締付部材8からなる構成のパイプについて説明したが、同じ機能、即ち、人手で曲げた形状をその内部に所定の勢いで流体が通過する時にでもそのまま維持できる機能を有するパイプであれば、この発明の範囲に含まれるものである。
【0036】
前記連結部材3は、ドライアイスブロアブラスト機Aから供給されるドライアイスと空気が混合した流体等を搬送するホースBと取外し自在に連結するもので、金属や硬質合成樹脂等の材質からなっている。
【0037】
前記放出口4は、可塑性ノズル本体2の前記連結部材3と連結した反対側の端部に取付けられ、流体等を噴射して施工面に付着しているアスベストなどのゴミに衝撃を与えて剥離して、きれいに仕上げるものである。この実施の形態においては、前記のように放出口4の長さは20cm程度で内径は13mm程度である。
【0038】
この放出口4又は可塑性ノズル本体2の周囲には、必要に応じて照明灯9が固定されていて、放出口4の前方、すなわち施工面を照明するようにしている。この照明灯9と作業者のベルトC等に付けた電源(バッテリー)Dとは、フレキシブルパイプ5の外周の長手方向に沿って配置された図示しない電線と連結部材3の近辺に設置しているコネクター12を介して着脱自在に接続される配線Fを介して接続されている。照明灯9の光源としては電力消費が少ないLEDが好適に使用されるが他の光源であってもよい。これらの光源のスイッチは、コネクターEの近辺若しくは電源Dの近辺に設けられてオンオフが容易に切替できる構造になっている。電源Dやスイッチは作業者のベルトC等につけて一緒に移動できれば便利である。
【0039】
又、前記放出口4又は可塑性ノズル本体2の周囲には、必要に応じて、前記照明灯9と共に又は単独で放出口4からの流体の噴出方向を撮像する小型カメラ10が固定されている。この小型カメラ10によって狭小空間で曲がりくねった箇所にある施工面であっても外部から良く観察することができるので、取り残しなく施工面をきれいに清掃することができる。この小型カメラ10の作動スイッチや電源Dは前記照明灯9と同じように作業者のベルトC等につけておくと可塑性ノズル本体2と一緒に移動できるので便利である。又、小型カメラ10が赤外線暗視カメラである場合には光がほとんど達していない場所でも映像でよく観察することができる。加えて、粉塵によって空気が汚れていたり、噴射したドライアイスなどが霧状になって蔓延している場合であってもよく見ることができる。又、小型カメラ10によって撮影した画像は、作業者が作業中でも常時見ることができるように、例えば、図6に示すように、ヘルメットGから吊り下げた小型ディスプレイ11に表示するようにすればよい。この小型カメラ10の配線やスイッチは前記した照明灯9と同様にすることができる。
【0040】
次に上記構成からなるこの曲げ自在ノズル1を用いて橋梁Hの裏側の狭小空間に付着しているアスベストIを除去する場合について説明する。橋梁Hの下方の橋桁Jの間には、電話回線が入った電話配管Kなどの配管類が束になって通っており、これら束の電話配管Kには、耐熱性、耐寒性、耐衝撃性向上等を目的としてアスベストIが下方から吹き付けられて電話配管Kの周囲を覆うと共にこれらアスベストIで覆われた電話配管Kの周囲を更にカバーLで覆っている。このようなアスベストIで保護する箇所は橋梁Hの両側の陸に位置する上方に限られてはいるが、このアスベスト吹付工事の際に、一部のアスベストIが橋梁Hの裏側や橋桁Jの側面に付着しており、近年のアスベスト公害が社会問題化していることに鑑み、これらの除去と清掃の要請がある。
【0041】
このような場合において、図5に示すように、まず、アスベストIを除去する狭小空間をペットボトルと同材料からなるPETシートMで密封養生してから、水等を噴霧して橋梁Hの裏面や橋桁J等の施工面に付着しているアスベストIを湿潤させて飛散防止対策を講じてから、ケレン作業でまず大まかにアスベストIを除去する。そして、ドライアイスブロアブラスト機Aから供給されるドライアイスペレットを含んだ空気を施工面に吹きつける。この時、ドライアイスブロアブラスト機AからホースBを通じて図外のドライアイスペレットが混合している空気が送られて、このホースBと連結部材3を介して連結されている曲げ自在ノズル1の中を通って、先端の放出口4からアスベストIが残っている施工面に噴射される。これらの作業は密封養生した空間内部で行われるために除去されたアスベストIは図外の吸引機で吸い込まれて破棄処分される。橋梁Hの裏面、2つの橋桁J、及び前記カバーLで囲まれる狭小空間は当然狭くて曲がりくねっているので、この曲がりくねった空間形状に合わせるように曲げ自在ノズル1の可塑性ノズル本体2を手であらかじめ曲げておくことによって、真直ぐなノズルでは届かない狭小空間であっても、アスベストIに到達して除去することが出来る。
【0042】
曲げノズル1の内部を通過する流体の圧力が高い場合には、パイプ曲形状保持部材6によって曲げ形状を維持しているフレキシブルパイプ5の曲がり部分に大きな衝撃力が作用してパイプ曲形状部材6の可塑性のみでは耐え切れずに曲げ形状を維持できなくなる可能性があるので、ドライアイスブロアブラスト機Aから供給される流体の圧力が高くなる程パイプ曲形状保持部材6の耐曲げ強度を大きくする材質若しくは形状のものを選択して使用する必要がある。
【0043】
除去作業時に、図3,4に示すように、放出口4の周囲に照明灯9を付設しておくことにより、施工面を明るく照らすことができるので作業能率が上がる。又、同様に、小型カメラ10を付設しておけば、放出口4の噴射方向の施工面を見ながら作業を行えるのでより一層作業能率が向上する。照明灯9と小型カメラ10の電気配線は、可塑性ノズル本体2を構成するフレキシブルパイプ5の外周の長手方向にパイプ曲形状保持材6と同様に添わせて破覆締付部材8によって締付固定し、その端部を配管部材3の手前で外へ出してコネクター12と接続し、このコネクター12と作業者のベルトCなどに固着されている電源Dと配線Fで接続することによって作業者と共に移動することができるので作業の邪魔になることはない。又、電源スイッチは、曲げ自在ノズル1の可塑性ノズル本体2の外周でコネクター12に隣接して設けても、あるいは、電源Dに設けてもよい。これによって、小刻みに入切できて消費電力を節約できる。更に、小型カメラ10の配線も同様に作業者のベルトCを経由して、ヘルメットGの日差しの下方に取付けた小型ディスプレイ11に画像が映るようにしておけば、作業者が常時施工面を見ながら放出口4をアスベストIが残っているところ向けることができ、作業能率が向上すると共にドライアイスの無駄使いを省くことができる。又、この映像を録画すれば、施主に工事状況を正確に報告することができる効果がある。
【0044】
以上の説明においては、曲がりくねった狭小空間におけるアスベストIの除去作業にこの曲げ自在ノズル1を利用する場合について説明したが、食品衛生上から清潔さを要される飲食品製造機械の狭小空間におけるゴミなど付着物の除去作業にもこのドライアイスを用いた噴射衝撃力による作業が同様に適している。その他の機械類、装置類、建設物などの狭小空間においても適用できることは勿論である。
【0045】
又、以上の説明においては、曲げ自在ノズル及び付着ゴミの除去清掃方法共にドライアイスブロアブラスト機Aで発生させた圧力空気をドライアイスと共に噴射する場合について説明したが、これに限定されることなく、他の気体、あるいは水などの液体の狭小空間における比較的低圧による噴射の場合にも同様に利用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0046】
この発明の曲げ自在ノズル及び付着ゴミの除去清掃方法は、曲がりくねった狭小空間における流体の噴射に適しているので、建造物の隙間、機器類の隙間などの清掃等に広く利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】曲げ自在ノズルの実施例の全体正面図
【図2】図1のX−X線断面図
【図3】曲げ自在ノズルの他の実施例の全体正面図
【図4】図3の矢符Y視図
【図5】狭小空間におけるアスベスト除去作業説明図
【図6】図5の作業者を中心とした一部拡大説明図
【図7】曲げ自在ノズルの狭小空間における曲げた状態の使用説明図
【図8】従来のノズルの説明図
【図9】従来のノズルの説明図
【図10】従来のノズルの説明図
【符号の説明】
【0048】
1 曲げ自在ノズル
2 可塑性ノズル本体
3 連結部材
4 放出口
5 フレキシブルパイプ
6 パイプ曲形状保持材
8 被覆締付部材
9 照明灯
10 小型カメラ
11 小型ディスプレイ
12 コネクター
A ドライアイスブロアブラスト機
B ホース
C ベルト
D 電源
F 配線
G ヘルメット
H 橋梁
I アスベスト
J 橋桁
K 電話配管
L カバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
曲げ変形した形状を維持できる可塑性ノズル本体の一端側に、圧力流体供給側と連結する連結部材を具備し、他端側に放出口を具備したことを特徴とする曲げ自在ノズル。
【請求項2】
前記可塑性ノズル本体が、長尺なフレキシブルパイプと、該フレキシブルパイプの外周面の長手方向に添うパイプ曲形状保持材と、該パイプ曲形状保持材の外周を覆って前記フレキシブルパイプの外周面に密着させる被覆締付部材とを具備することを特徴とする請求項1記載の曲げ自在ノズル。
【請求項3】
前記フレキシブルパイプが、シリコンゴムからなることを特徴とする請求項1又は2に記載の曲げ自在ノズル。
【請求項4】
前記可塑性ノズル本体が、連結部材を具備した一端側よりも放出口を具備した他端側の方の内径が小さいことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の曲げ自在ノズル。
【請求項5】
前記可塑性ノズル本体又は放出口の外周に該放出口の前方を照明する照明灯を具備したことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の曲げ自在ノズル。
【請求項6】
前記可塑性ノズル本体又は放出口の外周に該放出口の前方を撮影する小型カメラを具備したことを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の曲げ自在ノズル。
【請求項7】
前記小型カメラが赤外線暗視カメラであることを特徴とする請求項6記載の曲げ自在ノズル。
【請求項8】
前記請求項1の曲げ自在ノズルを用いて、狭小空間内の曲がりくねったゴミ除去空間に見合うように、前記可塑性ノズル本体を曲げてから、当該狭小空間内へ曲げ自在ノズルを挿入し、当該曲げ自在ノズルを持ったまま放出口から噴射されるドライアイスを施工面に付着しているゴミに吹付けて衝撃を与え、この衝撃力により、ゴミの剥離作業をすることを特徴とする狭小空間における付着ゴミの除去清掃方法。
【請求項9】
前記可塑性ノズル本体又は放出口の外周に具備した該放出口の前方を照明する照明灯によってゴミが付着した施工面を照らしながらゴミの剥離作業をすることを特徴とする請求項8に記載の狭小空間におけるアスベストの除去清掃方法。
【請求項10】
前記可塑性ノズル本体又は放出口の外周に具備した該放出口の前方を撮影する小型カメラによって撮像された狭小空間内の施工面のゴミ付着状態の画像を見ながら、ゴミの剥離作業をすることを特徴とする請求項8又は9に記載の狭小空間における付着ゴミの除去清掃方法。
【請求項11】
前記小型カメラが、赤外線暗視カメラであることを特徴とする請求項10に記載の狭小空間における付着ゴミの除去清掃方法。
【請求項12】
前記画像が、作業者のヘルメットに取付けたディスプレイに現れる画像であることを特徴とする請求項10又は11に記載の狭小空間における付着ゴミの除去清掃方法。
【請求項13】
前記ゴミが、アスベストであることを特徴とする請求項8乃至12のいずれかにに記載の狭小空間における付着ゴミの除去清掃方法。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2010−12405(P2010−12405A)
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−174309(P2008−174309)
【出願日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【出願人】(508201455)ウィキャンテクノ株式会社 (1)
【Fターム(参考)】