説明

曲線修正方法および装置並びにプログラム

【課題】画像表示装置上に複数の点が配列されてなる曲線上の任意の点を選択・移動してその曲線を修正するとき、修正の前後において曲線上の点を常に所定の分布状態に維持するとともに、常に曲線の任意の位置で修正を可能とし、作業の能率を向上させる。
【解決手段】曲線上の複数の点のうち移動の前におけるその選択された点の近傍領域の外側に存在する点と、移動の後におけるその選択された点の位置とを通るように曲線の軌道の一部を修正し、修正された一部の軌道上に、該一部の軌道の長さに応じて複数の新たな点を配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像表示装置上に複数の点が配列されてなる曲線における、複数の点のうち選択された点を移動することによって曲線を修正する曲線修正方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、医療分野においては、高い診断性能を有する画像を提供するために、たとえば、医用画像中の所定の臓器領域等の対象領域の輪郭を自動的に抽出して画像表示装置に表示する処理が行われている。
【0003】
しかし、計算機を用いた自動抽出処理だけでは、対象領域の輪郭が正しく抽出できない場合があり、自動抽出により対象領域の輪郭として得られた曲線に対して、手動操作による修正を加えることにより、所望の輪郭を取得することが必要とされる。
【0004】
このような手動操作による曲線の修正方法としては、曲線上の複数の点のうち操作者により選択・移動された点の変位を用いて、他の点の変位を決定することにより、修正後にも曲線全体の滑らかさが維持できる手法が、特許文献1に提案されている。
【特許文献1】特開平 10−293859号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載されている曲線の修正方法では、曲線上の点の数が修正の前後において一定であり、曲線の修正によって曲線の長さが変化する場合、隣接する点間の間隔が変化するため、続く修正において、操作者は毎回その間隔の変化に従って密集又は分散した複数の点の分布状態を認識した上で、それらの複数の点から適切な点を選択する必要があり、操作者による作業能率の低下を招く恐れがある。
【0006】
また、曲線の修正によって曲線の長さが長くなるほど、隣接する点間の間隔が広くなり、曲線を修正するときに用いられる点が存在しない部分が発生・拡大し、曲線上に修正が行える位置が一部の領域に限られてしまうという問題がある。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑み、操作者による作業能率を向上させるとともに、常に曲線の任意の位置で修正が可能な曲線修正方法および装置並びにプログラムを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の曲線修正方法は、画像表示装置上に複数の点が配列されてなる曲線における、複数の点のうち選択された点を移動することによって曲線を修正する曲線修正方法において、曲線上の複数の点のうち上記移動の前における選択された点の近傍領域の外側に存在する点と、移動の後におけるその選択された点の位置とを通るように曲線の軌道の一部を修正し、修正された一部の軌道上に、該一部の軌道の長さに応じて複数の新たな点を配置することを特徴とするものである。
【0009】
ここで移動の前における選択された点の近傍領域とは、その選択された点の周囲に位置する所定の大きさの領域に限らず、その点から前記曲線に沿った所定距離の範囲、例えば修正前の曲線上で指定される距離の範囲であってもよい。
【0010】
本発明の曲線修正装置は、上記曲線修正方法を実施する軌道修正手段と、点配置手段とを備えたことを特徴とするものである。
【0011】
本発明の曲線修正プログラムは、上記曲線修正方法をコンピュータに実行させるものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明の曲線修正方法および装置並びにプログラムによれば、画像表示装置上に複数の点が配列されてなる曲線における、複数の点のうち選択された点を移動することによって曲線を修正するとき、曲線上の複数の点のうち上記移動の前における選択された点の近傍領域の外側に存在する点と、移動の後におけるその選択された点の位置とを通るように曲線の軌道の一部を修正し、修正された一部の軌道上に、該一部の軌道の長さに応じて複数の新たな点を配置するようにしたので、修正の前後において、曲線上の点を常に所定の分布状態に維持でき、操作者による作業能率を向上させることができる。また、これにより隣接する点間の間隔を所定の間隔以下に維持できるので、続く修正において、常に曲線の任意の位置で修正が可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の曲線修正装置の実施の形態について説明する。なお、図1に示す本発明の一実施形態である曲線修正装置は、補助記憶装置に読み込まれた曲線修正プログラムをコンピュータ(たとえばパーソナルコンピュータ等)上で実行することにより実現される。このとき、この画像処理プログラムは、CD−ROM等の情報記憶媒体に記憶され、もしくはインターネット等のネットワークを介して配布され、コンピュータにインストールされる。
【0014】
本実施の形態の曲線修正装置1は、ディスプレイ等の画像表示装置上に任意の位置を指定するマウスやキーボード等の位置指定手段による操作者の入力等に応じて、画像表示装置上に表示された複数の点か配列されてなる曲線C上の任意の点を選択・移動し、その選択された点の移動に追随して、曲線Cの一部を修正するものであり、領域決定手段10、位置取得手段20、軌道修正手段30、および点配置手段40を備えている。
【0015】
ここで、曲線Cは、図2に示すように、複数の点が所定の短い間隔で配列されてなるものであり、操作者がその間隔を意識することなく、その曲線C上の任意の位置を指定し、その指定された位置あるいはその位置から僅かに離れた位置に存在する点を選択することができる。
【0016】
領域決定手段10は、位置指定手段により選択された曲線C上の点Pkの近傍領域Rを決定するものであり、例えば、図3に示すように、その点Pkの位置にその範囲のおおまかな中心が位置する、所定の大きさの領域を近傍領域Rとして決定する。ここで、近傍領域Rは、その大きさを任意に設定できるとともに、その周縁形状として円形に限らず、矩形、楕円形等種々の形状を採用することができる。
【0017】
なお、点Pkの近傍領域Rとしては、点Pkの位置にその範囲のおおまかな中心が位置する、所定の大きさの上記各種形状の領域に限らず、その点Pkから曲線Cに沿った所定距離の範囲であってもよい。
【0018】
位置取得手段20は、点Pkが選択された後に位置指定手段60により点Pkの移動後の位置として指定された、位置Pk´を取得するものである。
【0019】
軌道修正手段30は、点Pkの移動の前における近傍領域Rの外側に存在する曲線C上の点と、点Pkの移動後の位置Pk´とを通るように、その曲線Cの軌道の一部を修正するものであり、例えば、図4に示すように、近傍領域R内に存在する曲線Cの軌道の一部Ckを、新たな軌道Ck´に修正する。この新たな軌道Ck´は、点Pkの移動後の位置Pk´と、点Pkの移動の前における近傍領域Rの外側に存在する曲線C上の点とを結ぶスプライン曲線等の滑らかな曲線であって、修正後の曲線Cの全体の軌道が滑らかに連続する曲線を形成するようになる。
【0020】
点配置手段40は、軌道修正手段30において修正された一部の軌道Ck´上に、その軌道の長さに応じて複数の新たな点を配置するものであって、図5に示すように、曲線Cの全体において、複数の点が略一定の短い間隔で配列されるように、修正された一部の軌道Ck´上に、その軌道Ck´の長さが長いほど多い数の新たな点を配置する。修正された一部の軌道Ck´が修正の前の軌道Ckより短くされた場合には、その短くされた分に応じた少ない数の新たな点が、長くされた場合には、その長くされた分に応じた多い数の新たな点が、軌道Ck´上に配置されるようになる。
【0021】
上記構成により、曲線Cの修正する際には、まず、位置指定手段により、その曲線C上の任意の位置が指定され(ステップ1)、その指定された位置あるいはその位置から僅かに離れた位置に存在する、曲線C上の点Pkが選択される(ステップ2)。そして、その選択された点Pkの位置にその範囲のおおまかな中心が位置する、所定の大きさの近傍領域Rが決定される(ステップ3)。次に、位置指定手段により、画像表示装置50上に任意の位置Pk´が指定され(ステップ4)、その指定された位置Pk´が、位置取得手段20により点Pkの移動後の位置として取得される(ステップ5)。その後、ステップ3において決定された近傍領域Rの外側に存在する曲線C上の点と、ステップ5において取得された点Pkの移動後の位置Pk´とを通るように、その曲線Cの軌道の一部Ckが、軌道修正手段30により新たな軌道Ckに修正される(ステップ6)。最後に、点配置手段40により、ステップ6において修正された軌道Ck´上に、その軌道Ck´の長さに応じて複数の新たな点が配置される(ステップ7)。
【0022】
上記実施の形態によれば、画像表示装置上に複数の点が配列されてなる曲線における、複数の点のうち選択された点を移動することによって曲線を修正するとき、複数の点のうち移動の前におけるその選択された点の近傍領域の外側に存在する点と、移動の後におけるその選択された点の位置とを通るように曲線の軌道の一部を修正し、修正された一部の軌道上に、その一部の軌道の長さに応じて複数の新たな点を配置するようにしているので、修正の前後において、曲線上の点を常に所定の分布状態に維持でき、操作者による作業能率を向上させることができる。また、隣接する点間の間隔を所定の間隔以下に維持できるので、続く修正において、常に曲線の任意の位置で修正が可能である。
【0023】
特に、ヘリカルスキャンやマルチスライスCT等により得られた複数の連続する断面画像の各々における所定の臓器領域や血管領域等の対象領域の輪郭を取得し、その対象領域を3次元的に再構成する場合、ある断層画像において取得した対象領域の輪郭を示す曲線を少しずつ変形していくことによって、次々と連続する各断面画像に適した輪郭が取得できる場面が多くあり、繰り返し行われる修正において、本発明の曲線修正装置によれば、常に曲線の任意の位置で修正が可能であるとともに、曲線上の点を常に所定の分布状態に維持できるため、各断層画像に適した輪郭の容易に取得することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の曲線修正装置の一実施の全体構成を示す概略構成図
【図2】図1の曲線修正装置における曲線の構成の一例を示す図
【図3】領域決定手段10により決定された近傍領域の一例を示す図
【図4】軌道修正手段30により修正された曲線の一部の軌道の一例を示す図
【図5】点配置手段40により配置された複数の新たな点の一例を示す図
【符号の説明】
【0025】
13 異常陰影検出装置
10 領域決定手段
20 位置取得手段
30 軌道修正手段
40 点配置手段
C 曲線
Pk 選択された点
Pk´ 点Pkの移動後の位置
Ck´ 修正された一部の軌道
R 近傍領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像表示装置上に複数の点が配列されてなる曲線における、前記複数の点のうち選択された点を移動することによって前記曲線を修正する曲線修正方法において、
前記複数の点のうち前記移動の前における前記選択された点の近傍領域の外側に存在する点と、前記移動の後における前記選択された点の位置とを通るように前記曲線の軌道の一部を修正し、
前記修正された一部の軌道上に、該一部の軌道の長さに応じて複数の新たな点を配置することを特徴とする曲線修正方法。
【請求項2】
画像表示装置上に複数の点が配列されてなる曲線における、前記複数の点のうち選択された点を移動することによって前記曲線を修正する曲線修正装置において、
前記複数の点のうち前記移動の前における前記選択された点の近傍領域の外側に存在する点と、前記移動の後における前記選択された点の位置とを通るように前記曲線の軌道の一部を修正する軌道修正手段と、
前記修正された一部の軌道上に、該軌道の長さに応じて複数の新たな点を配置する点配置手段と
を備えたことを特徴とする曲線修正装置。
【請求項3】
画像表示装置上に複数の点が配列されてなる曲線における、前記複数の点のうち選択された点を移動することによって前記曲線を修正するプログラムにおいて、
コンピュータに、
前記複数の点のうち前記移動の前における前記選択された点の近傍領域の外側に存在する点と、前記移動の後における前記選択された点の位置とを通るように前記曲線の軌道の一部を修正し、
前記修正された一部の軌道上に、該軌道の長さに応じて複数の新たな点を配置することを実行させるための曲線修正プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−262253(P2008−262253A)
【公開日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−102330(P2007−102330)
【出願日】平成19年4月10日(2007.4.10)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】