説明

曲線引金具用アームパイプの接続構造および接続方法

【課題】 曲線引金具の重量の増加を抑えつつ、地震等の振動に対する強度の向上を図るアームパイプの接続構造を提供する。
【解決手段】 曲線引金具1を支持金具Sに枢着するための引手部材2と、トロリ線を支持するためのアームパイプ3との接続構造において、アームパイプ3の端部3aに芯棒9を挿入し圧縮固定し、この端部3aを引手部材2の接続筒部8に挿入し圧縮接続する。芯棒9は、アームパイプ3の内部に嵌合する丸棒材の長手方向両端から間隔を置いた中間部に六角柱状の縮小断面部9aを備える。アームパイプに引手部材を挿入する構造と比較して、接続筒部8内全体の断面積が拡大する。アームパイプ3の端部3aを圧縮すると芯棒9の縮小断面部9aに対応して縮小変形し段差が形成されるので、アームパイプ3と引手部材2とを抜け止めする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道線路の曲線区間等において、電車線をその延線方向に直交する水平方向の所定位置に定位させるために、支持構造物に対してトロリ線を引き留める曲線引装置のアームパイプの接続構造および接続方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の曲線引装置として、例えば特許文献1に記載されたものが知られている。この曲線引装置は、トロリ線の上方を横架する鋼管ビームや支柱の腕木などの支持構造物に支持された支持パイプに引手部材を介してアームパイプを連結し、その先端部にトロリ線を把持するためのイヤーを保持している。アームパイプの基端部は、これに引手部材から突出する接続軸部を挿入し、圧縮接続してからリベットを打ち込んで、引手部材と接続している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005-008042号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の曲線引金具においては、アームパイプに引手部材を挿入し圧縮接続する構造のため、引手部材の接続軸部の太さがアームパイプの内径に応じて決定されるが、地震等の突発的に大きな荷重が掛かった時に引手部材の接続軸部の根元で破断する事例が確認されている。
これに対して、引手金具の接続軸部の断面積を大きくすることにより補強することが考えられるが、これに対応してアームパイプの内径を拡大すると、アームパイプ自体の強度を維持するためにその外径も大きくせざるを得ず、その結果曲線引金具全体の重量が増してしまい、集電性能の悪化を招く。
そこで本発明は、重量の増加を抑えつつ、地震等の振動に対する強度の向上を図る曲線引金具用のアームパイプの接続構造及びその方法を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明においては、鉄道線路の側部の構造物に支持される支持金具Sに枢支される引手部材2と、一端部が引手部材2に圧縮接続され、鉄道線路の上方において側方から交差する方向に延び、他端部にトロリ線Tを支持するアームパイプ3との接続構造において、アームパイプ3の端部3a内に芯棒9を嵌合させ、アームパイプ3に突き合わせる引手部材2の端部に、アームパイプ3の端部3aを覆う接続筒部8を設け、一体に圧縮接続することとした。
芯棒9に、アームパイプ3の端部3aの引手部材2側を拡径するための縮小断面部9aを設け、この縮小断面部9aに対応するアームパイプ3の端部3aが接続筒部8に対して抜け止めされるようにした。
芯棒9は丸棒材に六角柱状の縮小断面部9aを形成して構成し、アームパイプ3の端部3aは、芯棒9の挿入後圧縮することにより芯棒9を嵌合させるようにした。
【発明の効果】
【0006】
本発明のアームパイプの接続構造及び接続方法においては、アームパイプの基端部内に芯棒を挿入した上で、その部分のアームパイプ周りに引手部材の接続筒部を覆わせるため、アームパイプの接続部の内部が充実し、アームパイプ自体の断面積を拡大することなく、実質的に接続部の断面積を拡大することがてき、地震時の過大な振動に対して、十分な強度を得ることができる。アームパイプ自体の断面積は変更しないため、パンタグラフの集電性能に悪影響を与えることのない重量に抑えることができる。
また、芯棒に縮小断面部を設けることにより、アームパイプが圧縮により縮小断面部の対応形状になりアームパイプが接続筒部に対して抜け止めされ、接続強度が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明に係るアームパイプの接続構造を適用した曲線引金具の正面図である。
【図2】アームパイプの接続部の縦断面図である。
【図3】アームパイプの接続工程を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の実施の一形態を図面について説明する。
図1において、曲線引金具1は、引手部材2と、引手部材2に接続されるアームパイプ3と、アームパイプ3の先端部に結合されるイヤー保持部材4と、イヤー保持部材4に支持されトロリ線Tを把持するイヤー5とを具備する。
【0009】
図2に示すように、引手部材2の基端部には、支持金具Sに枢着される断面ほぼH型のアイ部6を備える。アイ部6は、電車線の交差方向に渡る鋼管ビームなどの図示しない構築物に支持金具Sを介して鉛直平面上で自由な回転ができるように枢支される。引手部材2の中間部には、曲線引金具1を支持金具Sに対してアイ部6を中心に所定の角度範囲で上下に揺動自在に支持するためのばねユニット7を備える。ばねユニット7は、側面がアイ部6に一体に結合するばね受け筒7aと、このばね受け筒7aを軸線方向に貫通し、上端部を支持金具Sにアイ部6と異なる位置で枢支される引上げロッド7bと、ばね受け筒7a内で引上げロッド7b周りにばね受け筒7aと引上げロッド7bとの間に保持され、ばね受け筒7aを引上げロッド7bに対して上方に押し上げるばね7cとを具備する。ばね受け筒7aの側面には、アイ部6の反対側に伸びる接続筒部8が軸線方向に一体に結合している。接続筒部8は、アームパイプ3の基端部3aを挿入して外周を圧縮することにより結合するものである。
【0010】
アームパイプ3は水平方向から下方へ緩く湾曲した弓形のアルミ合金製管材で構成さる。アームパイプ3は、従来のものと同一寸法の内外径を有し、従って、これを流用できる。アームパイプ3の一端部3aは開口端から引手部材2の芯棒9が挿入され接続筒部8に圧縮接続され、他端部3bにはイヤー保持部材4の接続軸部が圧縮接続される。芯棒9は、アームパイプ3の内部に嵌合する丸棒材の長手方向両端から間隔を置いた中間部に六角柱状の縮小断面部9aを備え、さらに一端にアームパイプ3の開口径を越えて拡大した鍔部9bを有する。
【0011】
イヤー保持部材4の一端部はアームパイプ3の他端部3bに挿入され圧縮接続され、他端部にはトロリ線Tを把持するイヤー5が保持される。
【0012】
この曲線引金具1のアームパイプ3は、引手部材2に以下のようにして接続される。図3(A)に示すように、先ずアームパイプ3の端部3aに芯棒9を挿入し、同図(B)に示すように、鍔部9bが端面に突き当たる位置で端部3a周りを圧縮工具Dにより圧縮してアームパイプ3の端部3aを埋める。次いで同図(C)に示すように、アームパイプ3の端部3aを引手部材2の接続筒部8に挿入し、同図(D)に示すように、突き当たり位置で接続筒部8周りを圧縮工具Dにより圧縮して接続筒部8に端部3aを固定する。そして、接続筒部8に芯棒9の縮小断面部9aのほぼ中央の対応位置で直交方向にリベット10を打ち込みかしめて引手部材2とアームパイプ3とを固定する。
アームパイプ3の端部3aに芯棒9を挿入して端部3aの内部を充実させた上で、端部3aに引手部材2の接続筒部8が覆うので、従来のようなアームパイプ内に引手部材を挿入する構造と比較すると、アームパイプ3自体の断面積を拡大することなく、接続筒部8内全体の断面積が拡大し、アームパイプの振動に対して端部3aの強度が向上する。また、アームパイプ3の端部3aが圧縮により芯棒9の断面六角形状に縮小変形し、縮小断面部9aの両端の対応位置に段差が形成されるので、アームパイプ3と引手部材2とが抜け止めされ、抜けに対する強度が増す。アームパイプ3は、従来と同様のものをそのまま適用できるので、パンタグラフの集電性能に悪影響を与える重量に抑えることができる。
なお、本実施形態においては、芯棒9を挿入したアームパイプ3の端部3aを一旦圧縮してから接続筒部8を圧縮することとしたが、これら二度の圧縮工程を一度にまとめ、芯棒9を挿入したアームパイプ3の端部3aを接続筒部8と一体に圧縮してもよい。
また、アームパイプ3の端部3aと引手部材2の接続筒部8との接続にリベット10を差し込んだが、これを省略しても使用に耐える接続強度を有する。
【符号の説明】
【0013】
1 曲線引金具
2 引手部材
3 アームパイプ
3a 端部
4 イヤー保持部材
5 イヤー
6 アイ部
8 接続筒部
9 芯棒
9a 縮小断面部
T トロリ線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄道線路の側部の構造物に支持される支持金具に枢支される引手部材と、一端部が前記引手部材に圧縮接続され、鉄道線路の上方において側方から交差する方向に延び、他端部にトロリ線を支持するアームパイプとの接続構造であって、
前記アームパイプの端部内に嵌合する芯棒と、
前記アームパイプに突き合わせる前記引手部材の端部に設けられ、前記芯棒を嵌合させたアームパイプの端部周りを覆い、一体に圧縮接続される接続筒部とを具備することを特徴とする曲線引金具用アームパイプの接続構造。
【請求項2】
前記芯棒には、これを嵌合させるアームパイプの端部の前記引手部材側を拡径するための縮小断面部を備え、この縮小断面部に対応する前記アームパイプの端部が接続筒部に対して抜け止めされることを特徴とする請求項1に記載の曲線引金具用アームパイプの接続構造。
【請求項3】
前記芯棒は、丸棒材に六角柱状の縮小断面部が形成されてなり、
前記アームパイプの端部は、前記芯棒の挿入後圧縮することにより前記芯棒が嵌合することを特徴とする請求項2に記載の曲線引金具用アームパイプの接続構造。
【請求項4】
鉄道線路の側部の構造物に支持される支持金具に枢支される引手部材と、一端部が前記引手部材に圧縮接続され、鉄道線路の上方において側方から交差する方向に延び、他端部にトロリ線を支持するアームパイプとの接続方法であって、
前記アームパイプの端部内に芯棒を挿入し、このアームパイプの端部を前記引手部材の接続筒部に挿入し、この接続筒部をアームパイプの端部と一体に圧縮接続することを具備することを特徴とする曲線引金具用アームパイプの接続方法。
【請求項5】
前記アームパイプの端部は、前記芯棒の挿入後圧縮して芯棒と嵌合させることを特徴とする請求項4に記載の曲線引金具用アームパイプの接続方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−192796(P2012−192796A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−57140(P2011−57140)
【出願日】平成23年3月15日(2011.3.15)
【出願人】(000173784)公益財団法人鉄道総合技術研究所 (1,666)
【出願人】(000001890)三和テッキ株式会社 (134)