説明

曲線状イオンガイドおよび関連方法

【課題】イオンを高い運動エネルギーで移送すると同時に複数の質量のイオンを移送することでき、さらには最適なイオンの移送条件を維持することが可能なイオンガイドを含む改良型曲線状イオンガイドを提供する。
【解決手段】イオンガイドは複数の曲線状電極と、イオン偏向装置とを備えている。上記電極は互いにおよび曲線状中心軸と平行に配列されており、上記曲線状中心軸は曲率半径を有する円形部の円弧に沿って延びている。上記複数の電極はそれぞれ上記曲線状中心軸から半径方向に離隔していて、上記曲線状中心軸の周りにおいて上記電極のうち対向する電極対間に配置された曲線状イオン誘導領域を画成している。上記イオン偏向装置は上記複数の電極のうちの少なくとも2個以上に対して半径方向にDC電界を印加する装置を備えていてもよい。上記イオン偏向装置はまた、曲線状で平行なイオン偏向電極対を有していてもよい。上記イオン偏向電極対は曲線状電極に加えてRFイオン誘導電界を印加するために用いられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に、例えば質量分析法等の分析化学の分野で用いられるイオンの誘導に関し、より詳細には、曲線状経路に対して半径方向にある偏向電界にイオンを曝しながら、イオンを曲線状経路に沿うよう誘導することに関する。
【背景技術】
【0002】
本出願は、2008年5月30日に出願された米国仮特許出願第61/057,750号の優先権を主張するものである。
イオンガイドを種々のタイプのイオン処理装置、一例として質量分析計(MS)においてイオンを移送するために用いてもよい。当業者には種々のタイプの質量分析計の理論、デザイン、および動作が公知であるため、本開示において詳述する必要はない。一般的に使用されるイオンガイドは多極構造、通常はRF(高周波)専用電極構造に基づくものである。RF専用電極構造において、イオンガイドを通過するイオンは2次元RFトラップ電界に曝され、電極構造を貫通する軸方向経路に沿うよう集束される。曲線状イオンガイドにおいて該イオンガイドを通過するイオンが沿うイオン軸は直線状経路ではなく、曲線状経路である。曲線状イオンガイドを好んで質量分析計等のイオン処理装置に実装する場合が多いが、その理由は曲線状イオンガイドによって質量分析計の感度およびロバスト性を改善することができるためである。このような状況下における曲線状イオンガイドの主要な利点は、ニュートラルノイズ、大きな液滴ノイズ、またはフォトンをイオンからライン・オブ・サイト分離し、それによってニュートラル成分がイオン光学系およびイオン検出器のより感度の高い部材にまで達することを防止する点にある。また、曲線状イオンガイドはイオン経路の折れ曲がりを可能にして、関連する機器の設置面積を縮小することができる。
【0003】
当業者が理解するように、曲線状イオンガイドにおいて、イオンは、イオンガイドのロッド(つまり電極)に印加されたRF電圧によって形成された半径方向トラップ電界内の振動により、曲線状イオン経路の周囲において移送される。RF電界が無ければ、イオンは直進して遂にはイオンガイドロッドに衝突してしまう。よって、曲線状イオンガイドにおいて、イオンはその飛行中、イオンガイドロッドに接近し過ぎて不安定になる前に最少量のRF復源力を受ける必要がある。イオンガイドが一度に一質量を移送する場合は、移送を最適化するようにRF電圧を質量の関数としてスキャンすれば、最高性能が得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第6,576,897号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら大抵の場合、イオンをもっと高いエネルギーで走行させるか、かつ/または複数の異なる質量(質量−電荷比またはm/z比)のイオンを移送することが望まれる。このような場合、イオンの中には最適な移送条件を備えることができずに失われるものもあり、光学機器の感度は最適値に及ばない。
このため、イオンを高い運動エネルギーで移送すると同時に複数の質量のイオンを移送することでき、さらには最適なイオンの移送条件を維持することが可能なイオンガイドを含む改良型曲線状イオンガイドが常に必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記問題および/または当業者が観察する可能性のある他の問題に全面的または部分的に対処するため、本開示は以下の実施態様において例として説明する方法、プロセス、システム、装置、器具、かつ/または機器を提供する。
ある実施態様によれば、イオンガイドは複数の曲線状電極と、イオン偏向装置とを備えている。上記曲線状電極は互いにかつ曲線状中心軸と平行に配列されており、上記曲線状中心軸は曲率半径を有する円形部の円弧に沿って延びている。上記複数の電極はそれぞれ上記曲線状中心軸から半径方向に離隔していて、上記曲線状中心軸の周りにおいて上記電極のうち対向する電極対間に曲線状イオン誘導領域を画成している。上記イオン偏向装置は半径方向DC電界を、上記イオン誘導領域を横切るように、上記曲率半径に沿うように印加するよう構成されている。
他の実施態様によれば、イオンをイオンガイドを通して誘導するための方法が提供される。上記イオンは上記イオンガイドの曲線状イオン誘導領域内へ移送される。上記イオン誘導領域は互いにかつ曲線状中心軸と平行に配列された複数の曲線状電極によって画成されており、上記曲線状中心軸は曲率半径を有する円形部の円弧に沿って延びて上記イオン誘導領域を貫通している。各電極は上記曲線状中心軸から半径方向に離隔していて、上記曲線状イオン誘導領域は上記曲線状中心軸の周りで上記電極のうち対向する電極対間にある。高周波電界がイオン誘導領域を横切るように発生されて上記イオンを上記曲線状中心軸にほぼ沿って動くよう集束する。半径方向DC電界が上記イオン誘導領域を横切るように上記曲率半径に沿うように発生されて上記曲率半径に沿う方向のイオン偏向力を供給する。
【0007】
本発明の他の機器、装置、システム、方法、特徴、および利点は、以下の図面および詳細な説明を精査することにより当業者に明らかとなろう。これら付加的なシステム、方法、特徴、および利点は全て当該説明および本発明の範囲に含まれ、また添付の特許請求の範囲によって保護されることが意図される。
本発明を、以下の図面を参照することによってより良く理解することができる。図中の構成部材は必ずしもその一定の比率の縮尺で描かれておらず、むしろ本発明の原則を説明することに重点が置かれている。図中、同じ参照符号は異なる全図を通じて対応する部材を示している。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本開示のある実施態様に係るイオンガイドの一例および関連するイオン処理システムの略模式図である。
【図2】本開示の一実施態様に係るイオンガイドの一部の一例の斜視図である。
【図3】図2に示されたイオンガイドに設けられた電極群の一例の略断面図である。
【図4】図2に示されたイオンガイドと併設し得る回路の一例の略模式図である。
【図5】イオン移送効率(%移送)を本開示のある実施態様により設けられた曲線状イオンガイドに印加されたピーク間RF電圧(VRFpp)の関数としてプロットすることにより得られた図である。
【図6】本開示の別の実施態様によって構成されたイオンガイドの一部の一例の斜視図である。
【図7】図6に示されたイオンガイドと併設し得る回路の一例の略模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
ここに開示された内容は一般に、イオンの誘導(案内)および偏向ならびに関連するイオン処理に関する。方法と、関連する機器、装置、および/またはシステムとの実施態様例については図1ないし図7を参照して以下に詳細に述べる。これらの実施例は少なくとも一部が質量分析(MS)と関連して説明されるが、イオンの誘導および偏向を伴ういかなるプロセスも本開示の範囲に含まれる。
【0010】
図1は本開示のある実施態様に係るイオンガイド(機器、装置、または組立品(アセンブリ)等)100の一例、およびさらにはイオンガイド100を含でいてもよいイオン処理システム(または機器、装置、または組立品等)110の一例の模式図である。イオンガイド100は、曲線状中心軸120の周りに配置された複数の曲線状電極(例えば図2参照)を含んでいる。以下、この中心軸120をz軸と称することもある。イオンガイド100は一般に、ハウジングまたはフレーム124および/または中心軸120に沿って固定配置された上記電極を支持するのに適した他の任意の構造を含んでいてもよい。想定されるイオン処理システム110のタイプによっては、ハウジング124が真空、低圧、または周囲圧力以下の環境を提供してもよい。以下の説明から、より明らかなように、上記電極は通常互いにかつ中心軸120と平行であり、中心軸120に沿う長手形状を有する曲線状ロッド群としての形態を有している。この構成により電極は通常、同様に曲線状で中心軸120に沿う長手形状を有する内部空間をイオンガイド100内に画成している。イオンガイド100の軸方向に関して反対側にある両端部はそれぞれ、イオンガイド100内への軸方向イオン導入口128およびイオンガイド100からの軸方向イオン導出口132として機能している。当業者が理解するように、RF電圧を適切に電極群に印加すると、電極群は2次元(本実施例ではx−y面)4重極復原電界を発生し、該電界は中心軸120に代表される曲線状経路にほぼ沿ってイオンを集束する。イオンガイド100が曲線状であるため、イオン導入口128およびイオン導出口132それぞれの軸は同一直線上にはない。よって、帯電粒子のみがRF電界の影響を受けるという事実を考慮すると、イオンおよび中性粒子(例えば気体分子または液滴等)を含む粒子流がイオン 導入口128からイオンガイド100内に進入する際、イオンは中心軸120近傍で動くよう制約され、一方中性粒子はほぼ直線状経路を辿り続ける。したがって、イオンのみがイオン導出口132を介してイオンガイド100を出る。
また図1に示されるように、中心軸120を曲率中心Cおよび曲率半径Rによって画成される円形部142の円弧に沿って延びるものとして概念化してもよい。曲率半径Rとは中心軸120と曲率中心Cとの間の半径方向距離である。よって、イオンガイド100とその対応する電極群とはこの曲率半径Rを有していることを特徴とする。中心軸120は、円形部142によって一部が構成される円の円弧沿いに任意の長さだけ延びていてもよい。例えば、図示された例において中心軸120は全円のうち丸々四分円を占める円形部142を画成する程度の長さを有しており、その場合イオン導入口128およびイオン導出口132のそれぞれの軸は90度オフセットされている。このように、本実施例においては、イオンガイド100が90度の肘形状のイオン経路沿いに移送される集束イオンビームを提供する。ただし、他の実施例において中心軸120の長さはこれより短くても長くてもよく、その結果円形部142が図示されているよりも大きくなったり小さくなったり、それに応じてイオン導入口128およびイオン導出口132のそれぞれの軸間の角度が90度を上回っても下回ってもよい。
【0011】
さらに、図示されたイオンガイド100が、それよりも上流および/または下流に位置する1つ以上の付加的な部分を含む、より大きなイオンガイド(図示せず)の一部またはセクションを表していてもよいことが理解されよう。イオンガイドのこれら付加的な部分は円形状であるか、または線形経路もしくは他のタイプの非円形経路を辿っていてもよい。よって、形状の異なる付加的イオンガイド群を備えているかまたは備えていない1つ以上のイオンガイド100を用いて、それによって集束されるイオンビーム用に任意の所望される経路を実現してもよい。よって、図示されない他の実施例において、イオンガイド100は集束イオン経路を180度曲折するよう、つまりU型のイオン経路を実現するよう構成されてもよい。また、他の実施例においてU型経路の「脚部」はそれぞれ、U型イオンガイドのイオン導入口およびイオン導出口に隣接した直線状のイオンガイド部分を設けることによって延長されてもよい。さらに、他の実施例において2つの90度イオンガイド100を互いに隣接配置してイオン経路を180度曲折させてもよい。また、他の実施例において、同様の形状の2つのイオンガイドを互いに隣接配置して、そのうち1つのイオンガイドの曲率半径を他のイオンガイドの曲率半径と反対の方向に向け、それによってS字状イオン経路を実現してもよい。当業者なら、本教示から他の様々な構成が導出されてもよいことを理解するであろう。
【0012】
図2は曲線状平行イオン誘導(ガイド)電極群202、204、206、および208を含むイオンガイド200の一部の一例の斜視図である。例えばイオンガイド200を、付随するイオン処理システム110の一部として図1に示される上述のイオンガイド100として用いてもよい。本実施例において、電極群は4個の電極202、204、206、および208から構成されて基本の2次元4重極イオン集束(またはイオン誘導)電界を形成する。他の実施態様において、付加的な電極が含まれてもよい(例えば、6重極または8重極構成)。各電極202、204、206、および208は通常、中心z軸から他の電極202、204、206、および208と半径方向に等距離だけ離隔している。この場合、イオンガイド200は電極202、204、206、および208の対称配列を含んでいると考えてもよい。図示された電極群は2組の対向電極対を含んでいると考えてもよい。つまり、電極202および208が中心z軸に関して互いに対向しており、電極204および206が中心z軸に関して互いに対向している。通常、一方の対向電極対202および208が互いに電気的に接続され、また他方の対向電極対204および206が互いに電気的に接続されて、以下に説明する2次元イオン誘導電界を駆動する適切なRF電圧信号の印加を容易にする。
また、ここに開示中の態様を説明する目的で、電極202および204を外側電極、電極206および208を内側電極と考えてもよい。外側電極202および204は内側電極206および208よりもイオンガイド200の曲率中心から遠くに位置している。以下に述べる様に、一つの実施態様において電極202、204,206、および208はイオン誘導電極としてだけではなく、イオン偏向電極としても機能する。この機能を外側電極202および204と内側電圧206および208との間に直流(DC)電圧差を発生させることによって実現してもよく、それによって静的DCイオン偏向電界は曲率半径Rに沿う方向に配向されて、イオンをほぼ曲率中心方向に(つまり、ほぼ外側電極202および204から離れてほぼ内側電極206および208へ向かう方向に)バイアスする。
【0013】
図2に例として示されるように、電極202、204、206および208それぞれの(中心z軸に直交する)断面図では、各電極202、204、206および208の外側面が、それぞれ少なくとも一つの曲面部212,214、216、よび218を含み、各曲面部212,214、216、および218は対向電極対202および208と対向電極対204および206との間にその大略的に画成された内部空間(またはイオン誘導領域)に面している。各曲面部212,214、216、および218を描く曲面の頂部は通常、中心z軸に最も近い外側面上の点である。理想的には、均衡の取れた4重極電界を発生するために、各曲面部212,214、216、および218は双曲的な外形を有している。図示された例において電極202、204、206および208を長手形状を有する円筒形ロッド状に構成することによって、双曲的な電極面に近似していてコストのより低い代替品を実現してもよい。電極202、204、206および208の断面図はそれぞれ、図2に示される中実の円筒形の場合には欠けがなくまたは中実であってもよい。あるいは、電極202、204、206および208は直線状の断面または平板から構成されて、双曲的もしくは半円状の外面部212,214、216、および218を構成するように曲げられるか、または平坦もしくは平面的であってもよい。例えば、他の実施態様において電極202、204、206および208は図3に示されるような方形の断面を有していてもよい。後者の場合、電極202、204、206および208をそれぞれの平坦面側がイオンガイド200の内部空間(またはイオン誘導領域)に内向きに面するよう配向してもよい。例えば、電極群を本開示の譲受人に譲渡された米国特許第6,576,897に示されるように構成してもよい。
【0014】
図3はイオンガイド200の電極202、204、206および208の断面図である。電極202、204、206および208は、図1に示され、上述したように曲線状の中心またはz軸120に沿って対称配置されている。概念的には、電極202、204、206および208はそれぞれの外側面が協働して、中心軸120から垂直に延びる内接半径rの円形302を画成するように配置されている。図2に示される実施態様では、曲線状の外形を有する電極202、204、206および208が同様の円形302を画成している。イオンガイド200の内部空間と、イオンの2次元(半径方向)偏位運動が印加されたRF集束電界によって制約されるイオン誘導領域とは通常、この内接円302内に画成される。イオン集束または誘導電界を発生させるには、一般形がVRF(ωt)の高周波(RF)電圧を2組の対向電極対202および208ならびに204および206に印加する。対向電極対204および206に印加される信号は、対向電極対202および208に印加される信号とは位相が180度ずれている。イオン集束、誘導またはトラッビングならびに質量フィルタリング、イオンフラグメンテーション、および他の関連する処理用の4重極RF電界発生に関する基本理論と応用については公知であるため、ここで詳述する必要はない。
【0015】
本教示によると、イオンガイド200はイオン誘導RF電界の他にイオン偏向DC電界を印加するためのイオン偏向装置または手段を含んでいる。イオン偏向電界は、DC電圧差をイオンガイド200のイオン誘導領域を横切るように印加することにより、イオンガイド200の扇形の中心に向かう半径方向に印加される。よって、DCイオン偏向電界は2次元または半径方向RFイオン誘導電界と同じx−y面方向に向いており、x−y面は中心z軸と直交している。この向きは、イオン偏向電極として機能し、また半径方向にイオン偏向電界を発生するよう適切に配置された少なくとも1組の対向電極を使用することによって実現される。
【0016】
図3に示される実施態様では、イオン偏向電界がイオンガイド200の曲率半径Rに沿って印加される。これは、本実施例において、電極202、204、206および208をイオン誘導電極のみならずイオン偏向電極としても用いることにより遂行される。したがって、電極202、204、206および208に印加されたRF電圧にDC電圧が重ね合わされる。具体的は、第1の大きさのDC電圧が外側の電極対202および204に印加され、第2の大きさのDC電圧が内側の電極対206および208に印加される。「外側」および「内側」という用語は電極202、204、206および208の曲線状イオンガイド200の曲率中心に対する相対的な半径位置を再度知らしめるためのものである。第1の大きさと第2の大きさとは選択された量だけ異なって静的(または直流)電位差を発生させ、第1および第2の大きさそれぞれの符号または極性は偏向されるのが正イオンであるか負イオンであるかによって定まる。図3に示される具体例において、DC電圧の大きさVdeflectの絶対値は外側の電極202および204ならびに内側の電極206および208の双方に対して同じであるが、極性が反対である。よって、電極202、204、206および208に印加された合成電圧の大きさはそれぞれVRF+Vdeflect、−VRF+Vdeflect、−VRF−Vdeflect、およびVRF−Vdeflectである。上記の電圧電位の組合せで、正(陽)イオンをイオンガイド200の曲線状イオン誘導領域を通して誘導中、外側の電極202および204から偏向するには十分である。同様に負(陰)イオンを偏向するためにDC電圧をどの様に変更すればよいのかは容易に理解されよう。よって、本実施例の一局面において、電極202、204、206および208をイオンガイド200のイオン偏向装置の一部と見なしてもよい。
ここで説明した構成の半径方向DC電界により、従来この種のイオンガイドに対して実現されたよりも高い運動エネルギーでイオンを効率よく曲線状イオンガイド200を通して移送することが可能となる。DC電界によってイオンに付与された偏向力が高い運動エネルギーを補償し、イオンガイド200によって形成された曲線状イオン経路の周りで高エネルギーイオンを誘導する一助となる。さらに、移送効率を維持しつつ、イオンの広い帯域幅(つまり、複数種の質量のより広い範囲)を同時にイオンガイド200を通して移送してもよい。高運動エネルギーおよび/またはより広い質量範囲にあっても、最適なイオン移送条件と、その結果高い機器感度とをイオンガイド200において維持してもよい。
【0017】
印加されたDCイオン偏向電圧Vdeflectの強度の大きさは、偏向力を必要とするイオンの運動エネルギー(KE)とほぼ関数関係にある。一例において、印加されたDCイオン偏向電圧Vdeflectはイオンの運動エネルギー(KE)に比例し、また対向電極202および208(または204および206)間の差し渡し距離の、イオンガイド200の曲率半径Rに対する比に比例する。図3に示される対称電極配置において、対向電極間の差し渡し距離は内接円302の半径rに比例する関数によって表されてもよい。よって、この例において、印加されたDCイオン偏向電圧の絶対値はVdeflect=k×KE×(r/R)という関係式に従って設定されてもよく、式中kは電極202、204、206および208の形状および大きさ(例えば断面および寸法)に従う比例定数である。
【0018】
図4はイオンガイド200の電極202、204、206および208と接続状態に置かれる可能性のある回路400の一例の略模式図である。回路400は一般に、2次元(または半径方向)RF誘導電界を電極202、204、206および208の配列内に画成されたイオン誘導領域を横切るように印加するための装置または手段と、半径方向DC偏向電界をイオン誘導領域を横切るように印加するための装置または手段とを含んでいる。これらの装置または手段を1つ以上のDCおよびRF電圧源または信号発生器として実現してもよい。このような電圧「源」または「発生器」は、上記装置または手段に所望される機能の実現に必要とされるハードウェア、ファームウェア、アナログおよび/もしくはデジタル回路、ならびに/またはソフトウェアを含んでいてもよい。上記DCおよびRF電界を実現するために用いられる具体的な構成部材および回路要素は当業者によって理解されるため、ここでは詳述しない。図4では様々なRFおよびDC電圧源が、対応する電極202、204、206、および208と電気信号による交信状態に置かれた組合せ機能要素402、404、406、および408に模式的に分類されており、それによって印加され重ね合わされたRFおよびDC電圧を図3と一貫して示している。したがって、電圧源402は合成電圧VRF+Vdeflectを電極202に印加し、電圧源404は合成電圧−VRF+Vdeflectを電極204に印加し、電圧源406は合成電圧−VRF−Vdeflectを電極206に印加し、また電圧源408は合成電圧VRF−Vdeflectを電極208に印加する。イオンガイド200に関連する回路400が電子制御装置(図示せず)、例えば1つ以上の演算または電子処理装置を含んでいてもよいことが理解されよう。このような電子制御装置はRFおよびDC電界の印加に用いられる種々の電圧源402、404、406、および408の動作パラメータを制御するように構成されてもよい。電子制御装置はまたイオンガイド200の動作を、イオンガイド200によってその一部が構成されるイオン処理システム、例えば図1に示されたイオン処理システム110の他の動作構成部材と連係させてもよい。
【0019】
半径方向DC電界の他に、軸方向DC電界を中心軸に沿ってイオンガイド200に印加してイオンエネルギー(例えば、軸方向イオン速度)を制御してもよい。軸方向DC電界は、イオンガイド200を通して移送されるイオンが中性気体分子(例えば、背景ガス)と衝突する場合には特に好適であるかもしれない。当業者が理解するように、このような衝突をイオンフラグメンテーションまたは衝突冷却用に用いてもよい。単一または複数個のDC電圧源を用いて軸方向DC電界を発生してもよい。単一または複数個のDC電圧源は電極202、204、206、および208のうち1個以上の電極と連係するか、またはイオンガイド200の頂部および/もしくは底部の外側、ならびに/もしくは上部電極202および206および/もしくは下部電極対204および206の間等にイオンガイド軸120に沿って配置された1つ以上の他の導電性部材(例えば抵抗トレース等)等の外部電界発生装置と連係してもよい。この「軸方向」DC電圧源を、図4に模式的に示された機能要素402、404、406、および408のうち1つ以上の要素の一部として概念化してもよい。
【0020】
図5はイオン移送効率(%移送)を、図2ないし図4に示す上記イオンガイド200と同様の構成の曲線状イオンガイドに印加されたピーク間(ピーク・トゥ・ピーク)RF電圧(VRFpp)の関数としてプロットすることにより得られた図である。2つの事象502および504からの比較データは、コンピュータシミュレーション(SIMION:登録商標)から得た。各事象502および504において、質量対電荷比(m/z)が69であるイオンが100eVの運動エネルギーで曲線状イオンガイドを通して移送された。第1の事象502においては、いかなるDC電界も印加されなかった。第2の事象504においては、8.5VのDC偏向電界が印加された。DC偏向電界によるイオン移送効率の改善は、曲線状イオンガイドに印加されたかもしれないRFイオン誘導電圧の大きさに係らず図5から明白である。
【0021】
図6は別の実施態様によって構成されたイオンガイド600の一部の一例の斜視図である。例えば、イオンガイド600を図1に示した上記イオンガイド100として、またイオン処理システム110の付随物の一部として用いてもよい。本実施例においてイオンガイド600の電極群は、上述の如く追加のイオン誘導電極を含んでいてもよいという了解の下に、4個の曲線状で平行なイオン誘導電極602、604、606、および608を含んで基本の2次元4重極イオン集束(またはイオン誘導)電界を形成する。イオン誘導電極602、604、606、および608は、中心z軸に対し図2および図3と関連して上述したのと同様に配列されていてもよい。よって、電極群は相互接続された対向電極対602および608と、相互接続された他の対向電極対604および606とを含んでいると考えてよい。さらに電極群は、曲率半径Rに対して外側電極対602および604ならびに内側電極対606および608を含んでいると考えてもよい。
【0022】
図6に示される本実施例において、イオンガイド600はイオン誘導電極602、604、606、および608の他に設けられた曲線状で平行なイオン偏向電極対652および654を含むイオン偏向装置を含んでいる。イオン偏向電極対652および654は互いにかつ中心z軸と平行に配列されている。よって、偏向電極対652および654はイオン誘導電極602、604、606、および608と平行であってもよい。イオン偏向電極対652および654は曲率半径Rと整合するように配置されている。すなわち、曲率半径Rまたはその延長線がイオン偏向電極対652および654を垂直に通過している。イオン偏向電極652および654は、イオン誘導電極602、604、606、および608によってイオンガイド600内に画成されるイオン誘導領域と干渉しないように、またイオン誘導電極602、604、606、および608によって形成された電気力学RF集束電界と干渉しないようにイオンガイド600内に配置されてもよい。したがって、図示された例において、イオン偏向電極対652および654はイオン誘導領域の外部に位置している。外側イオン偏向電極652は外側イオン誘導電極602および604よりもイオンガイド600の曲率中心から遠い(半径方向により大きい距離を隔てた)位置にあり、内側イオン偏向電極654は内側イオン誘導電極606および608よりもイオンガイド600の曲率中心に近い(半径方向により小さい距離を隔てた)位置にある。図6の例にも示されているように、イオン偏向電極対652および654はイオンガイド600の内側に面する外面が曲面状ではなく平坦となるような直線状断面を有していてもよく、それによってイオン偏向電極652および654は導電性材料から成る、長手形状を有するベルトまたは細長い帯として構成される。
【0023】
本実施例において、イオンガイド600はイオン偏向電極対652および654間に直流(DC)電圧差を発生させることによってイオンを偏向し、それによって静的DCイオン偏向電界が曲率半径に沿う方向に向けられてイオンをほぼ曲率中心方向に(つまり、ほぼ外側電極602および604から離れてほぼ内側電極606および608へ向かう方向に)バイアスする。印加されるDC電圧の大きさおよび極性は、イオンガイド200に係る実施態様および実施例と関連して上記した通りであってもよい。
【0024】
図7はイオンガイド200のイオン誘導電極602、604、606、および608とイオン偏向電極対652および654と接続状態に置かれる可能性のある回路700の一例の略模式図である。回路700は一般に2次元(または半径方向)RF誘導電界をイオン誘導電極602、604、606、および608の配列内に画成されたイオン誘導領域を横切るように印加するための装置または手段と、半径方向DC偏向電界をイオン誘導領域を横切るように印加するための装置または手段とを含んでいる。これらの装置または手段を1つ以上のDCおよびRF電圧源または信号発生器等として実現してもよい。本実施態様では半径方向DC偏向電界形成専用の電極対652および654を設けるため、RF電圧源のみをイオン誘導電極602、604、606、および608との信号による交信状態に置き、またDC電圧源のみをイオン偏向電極652および654との信号による交信状態に置く必要がある。このため、図7の模式図において電圧源702は電圧+VRFをイオン誘導電極対602および608に印加し、電圧源704は電圧−VRFをイオン誘導電極対604および606に印加し、電圧源752は電圧+Vdeflectを外側イオン偏向電極652に印加し、また電圧源754は電圧−Vdeflectを内側イオン偏向電極654に印加する。負イオンに対しては、DC電圧源752および754の極性を互いに反転してもよいことは言うまでもない。イオンガイド600は上記イオンガイド200と同様の長所利点をもたらす。
【0025】
図4と関連して上述した通り、半径方向DC電界に加えて軸方向DC電界を中心軸に沿ってイオンガイド600に印加してもよい。
ここに開示されたイオンガイド100、200、および600を、曲線状集束イオンビームがイオンを所定のイオン源から所定の誘導先に誘導すると想定されるいかなるプロセス、装置、機器、器具、システム等において利用してもよい。図1に模式的に示されるイオン処理システム110はイオンガイド100(または200または600)が動作する可能性のある上記環境のうち任意のものを表している。よって、例えばイオン処理システム110が通常1つ以上の上流側装置172および174および/または1つ以上の下流側装置176および178を含んでいてもよい。イオン処理システム110は所望のMS技術(例えば単ステージ式MS,タンデムMS,MS/MS、またはMS等)を実行するように構成された質量分析(MS)システム(装置または機器等)であってもよい。したがって、さらなる実施例として、上流側装置172がイオン源、下流側装置178はイオン検出器であってもよく、またその他の装置174および176はイオン蓄積もしくはトラップ装置、質量選別もしくは分析装置、衝突セルもしくは他のフラグメント化装置、またはイオン光学系および他のイオン誘導装置等1つ以上の他の構成部材に相当していてもよい。よって、例えば、イオンガイド100を質量分析器の前に(例えばQ0装置として)用いてもよく、それ自体をRF/DC質量分析器として用いもよく、または第1の質量分析器の後ろおよび第2の質量分析器の前に位置する衝突セルとして用いてもよい。よって、イオンガイドは真空引きされても、またはイオンと気体分子との間に衝突が起こる形態で(例えば、高真空GC/MSにおけるQ0装置として、LC/MSのイオン源領域内でQ0装置として、またはQ2装置として)作動されてもよい。
【0026】
本開示において説明された方法および装置を、以上大略的に例として説明したMSシステム等のイオン処理システムとして実現してもよい。しかしながら、本発明の内容はここに例示した特定のイオン処理システムまたはここに例示した回路および構成部材の特定の配列に限定されるものではない。さらに、本発明の内容は上述の如く、MSに基づく用途に限定されるものではない。
【0027】
一般に、「連係(接続)する」および「〜と連係(接続)している」等の用語(たとえば、第1の構成部材が第2の構成部材と「連係(接続)する」または「連係(接続)している」)は、ここでは2つ以上の構成部材または要素間の構造的、機能的、機械的、電気的、信号的、光学的、磁気的、電磁気的、イオン的、または流体的な関係を示すために用いられる。よって、ある構成部材が第2の構成部材と連係すると述べられていたとしても、さらなる部材が第1および第2の構成部材の間に存在しているか、かつ/またはさらなる部材が第1および第2の構成部材と動作的に関連または連動している可能性を排除することを意図するものではない。
【0028】
本発明の様々な局面または細部は発明の範囲から逸脱することなく変更してもよいことは言うまでもない。さらに、上記説明は例示のみを目的とし、限定を目的とするものではない。本発明は特許請求の範囲によって規定される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いにかつ曲線状中心軸と平行に配列された複数の曲線状電極を備え、上記曲線状中心軸は曲率半径を有する円形部の円弧に沿って延びており、上記複数の電極の各々は上記曲線状中心軸から半径方向に離隔していて、上記曲線状中心軸の周りにおいて上記電極のうち対向する電極対間に曲線状イオン誘導領域を画成しており、かつ
半径方向DC電界を、上記イオン誘導領域を横切るように上記曲率半径に沿って印加するよう構成されたイオン偏向装置を備えていることを特徴とするイオンガイド。
【請求項2】
上記イオン偏向装置は、上記複数の電極のうち少なくとも1対の電極と接続されたDC電圧源を備えていることを特徴とする、請求項1に記載のイオンガイド。
【請求項3】
上記曲線状中心軸に沿って軸方向DC電界を印加するよう構成された軸方向DC電圧源をさらに備えていることを特徴とする、請求項1に記載のイオンガイド。
【請求項4】
上記複数の電極のうち少なくとも1対の対向している電極と接続されたRF電圧発生器をさらに備えていることを特徴とする、請求項1に記載のイオンガイド。
【請求項5】
上記複数の曲線状電極は、外側電極対と内側電極対とを含み、上記外側電極対は上記曲率半径に対して上記内側電極対よりも半径方向外側に配置されており、また上記イオン偏向装置は上記外側および内側電極対の各電極と接続されたDC電圧源を備えており、上記DC電圧源は第1の大きさのDC電圧と第2の大きさのDC電圧とを上記外側電極対と上記内側電極対とにそれぞれ印加するよう構成されていることを特徴とする、請求項1に記載のイオンガイド。
【請求項6】
上記DC電圧源は、上記曲線状中心軸における電圧に対して、上記DC電圧を所定の極性で上記外側電極対に印加し、上記DC電圧を反対の極性で上記内側電極対に印加するよう構成されていることを特徴とする、請求項5に記載のイオンガイド。
【請求項7】
上記複数の曲線状電極は第1のイオン誘導対向電極対と第2のイオン誘導対向電極対とを含み、上記イオン偏向装置は曲線状のイオン偏向対向電極対を備え、上記イオン偏向電極は互いにかつ上記曲線状中心軸と平行に配列されて上記曲率半径方向に沿って位置していることを特徴とする、請求項1に記載のイオンガイド。
【請求項8】
上記イオン偏向装置はさらに、第1の大きさのDC電圧を上記イオン偏向電極対のうちの一方のイオン偏向電極に印加し、第2の大きさのDC電圧を他方のイオン偏向電極に印加するように構成されたDC電圧源を備えていることを特徴とする、請求項7に記載のイオンガイド。
【請求項9】
上記DC電圧源は、上記曲線状中心軸における電圧に対して、上記DC電圧を所定の極性で上記一方のイオン偏向電極に印加し、上記DC電圧を反対の極性で上記他方のイオン偏向電極に印加するよう構成されていることを特徴とする、請求項8に記載のイオンガイド。
【請求項10】
上記イオン誘導電極対のうち少なくとも1つのイオン誘導電極対と接続されているRF電圧発生器をさらに備えていることを特徴とする、請求項7に記載のイオンガイド。
【請求項11】
上記イオン偏向電極は上記イオン誘導領域の外側に配置されていることを特徴とする、請求項7に記載のイオンガイド。
【請求項12】
上記イオン偏向装置はDC電圧を印加するよう構成されており、上記DC電圧の大きさは、上記イオンの運動エネルギー(KE)と、上記複数の電極の上記中心軸周りの内接半径(r)と、上記曲率半径(R)とに、関係式Vdeflect=k×KE×(r/R)に従って比例する絶対値(Vdeflect)を有し、上記式中kは上記複数の電極の断面および寸法に応じて定まる比例定数であることを特徴とする、請求項1に記載のイオンガイド。
【請求項13】
イオンをイオンガイドを通して誘導するための方法であって、
上記イオンを上記イオンガイドの曲線状イオン誘導領域内へ移送する工程を含み、上記イオン誘導領域は互いにかつ曲線状中心軸と平行に配列された複数の曲線状電極によって画成されており、上記曲線状中心軸は曲率半径を有する円形部の円弧に沿って延びて上記イオン誘導領域を貫通しており、各電極は上記曲線状中心軸から半径方向に離隔していて、上記曲線状イオン誘導領域は上記曲線状中心軸の周りで上記電極のうち対向する電極対間にあり、かつ、
高周波電界を上記イオン誘導領域を横切るように発生させて、上記イオンを上記曲線状中心軸にほぼ沿って動くように集束する工程と、
半径方向DC電界を上記イオン誘導領域を横切るように上記曲率半径に沿うように発生させて、上記曲率半径に沿う方向のイオン偏向力を提供する工程とを含むことを特徴とする方法。
【請求項14】
上記DC電界を発生させる工程は、DC電圧電位を上記複数の電極のうち少なくとも1対の電極に印加する工程を含むことを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項15】
軸方向DC電界を上記曲線状中心軸に沿うように発生させて軸方向のイオン速度を制御する工程を更に含むことを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項16】
上記複数の曲線状電極は外側電極対と内側電極対とを含み、上記外側電極対は上記曲率半径に対して上記内側電極対よりも半径方向外側に配置されており、また上記DC電界を発生させる工程は、第1の大きさのDC電圧と第2の大きさのDC電圧とを上記外側電極対と上記内側電極対とにそれぞれ印加して、上記外側電極対と上記内側電極対との間にDC電位差を発生させる工程を含むことを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項17】
上記DC電界を発生させる工程は、上記曲線状中心軸における電圧に対して、上記DC電圧を所定の極性で上記外側電極に印加し、上記DC電圧を反対の極性で上記内側電極に印加する工程を含むことを特徴とする請求項16に記載の方法。
【請求項18】
上記複数の曲線状電極は第1のイオン誘導対向電極対と第2のイオン誘導対向電極対とを含み、上記高周波電界を発生させる工程は高周波電圧電位を上記イオン誘導電極のうちの2個以上に印加する工程を含み、また上記DC電界を発生させる工程はDC電圧電位を曲線状のイオン偏向対向電極対間に印加する工程を含み、上記イオン偏向電極は互いにかつ上記曲線状中心軸と平行に配列されて上記曲率半径方向に沿って位置していることを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項19】
上記DC電界を発生させる工程はDC電圧を印加する工程を含み、上記DC電圧の大きさは上記イオンの運動エネルギー(KE)と、上記複数の電極の上記中心軸周りの内接半径(r)と、上記曲率半径(R)とに、関係式Vdeflect=k×KE×(r/R)に従って比例する絶対値(Vdeflect)を有し、上記式中kは上記複数の電極の断面および寸法に応じて定まる比例定数であることを特徴とする、請求項13に記載の方法。
【請求項20】
上記イオンガイドを真空引きして、上記イオンを上記イオン誘導領域内に移送された1種または質量の異なる2種以上のイオンに関して質量分析するか、または気体分子を上記イオンガイド内へ導入して、上記イオンを上記気体分子のうちの1種以上の分子と衝突させる工程をさらに含むことを特徴とする請求項13に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−123561(P2010−123561A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2008−327139(P2008−327139)
【出願日】平成20年12月24日(2008.12.24)
【出願人】(599060928)バリアン・インコーポレイテッド (81)
【Fターム(参考)】