説明

更に高い表面架橋及び更に高い親水性を備えた超吸収性ポリマー粒子、並びに、真空紫外線を用いてそれらを作る方法

本発明は、更に高い表面架橋及び更に高い親水性を備えた超吸収性ポリマー粒子、及び吸収性物品におけるその使用に関するものである。
本発明の超吸収性ポリマー粒子は、架橋ポリ(メタ)アクリル酸及びその塩から構成される。超吸収性ポリマー粒子に含まれるポリマー鎖は、直接共有結合を通じて相互に架橋され、アルコール性ヒドロキシル基を備えている。
更に本発明は、真空UV照射を使用して、超吸収性ポリマー粒子を表面架橋する方法に関するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、更に高い表面架橋を備えた超吸収性ポリマー粒子、及び吸収性物品において前記粒子を使用することに関するものである。更に本発明は、前記超吸収性ポリマー粒子を表面架橋する際に真空紫外線を使用する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
超吸収性ポリマー(SAP)は当該技術分野において周知である。SAPは一般に、おむつ、トレーニングパンツ、成人用失禁製品及び女性用ケア製品などの吸収性物品において、製品の吸収能力を増大させ、一方でそれらの全体容量を低下させる目的で適用する。SAPは一般に、その重量の何倍もの量に等しい水性流体を吸収、保持する機能を備えている。
【0003】
SAPの商業生産は1978年に日本で始まった。初期の超吸収体は、架橋させたデンプン−ポリアクリレートであった。SAPの商業生産においては、部分的に中和させたポリアクリル酸が最終的に初期の超吸収体に取って代わり、今日SAPとして用いられている主要なポリマーとなっている。SAPは一般に、部分的に中和させ、僅かに架橋させたポリマー網状組織から成り、このポリマー網状組織は親水性であり、水又は生理食塩水などの水溶液に浸漬させると膨張する。ポリマー鎖間の架橋によって、SAPが水に溶解しないようにする。SAPは、繊維又は顆粒のような小さい粒子の形態で適用されることが多い。
【0004】
水溶液の吸収後、膨潤したSAP粒子は非常に柔らかくなり、簡単に変形する。変形すると、SAP粒子間の空隙が塞がることがあり、それが液体の流動抵抗を劇的に増大させる。これは一般に「ゲルブロッキング」と呼ばれている。ゲルブロッキング状態において、液体は拡散によってしか膨張したSAP粒子の間を通って移動することができず、これはSAP粒子間の隙間を流動するよりもはるかに遅い。
【0005】
ゲルブロッキングを低減するために一般的に適用される方法の1つは粒子をより堅くすることであり、それによってSAP粒子が元の形状を保持し、従って粒子間に空隙を作り出すか、維持するかすることができる。剛性を高める周知の方法は、SAP粒子の表面上に露出しているカルボキシル基を架橋することである。この方法は一般に表面架橋と呼ばれている。
【0006】
欧州特許出願第EP0248437A2号により、表面架橋剤としては水溶性ペルオキシドラジカル反応開始剤が知られている。その表面架橋剤が含まれている水溶液をポリマーの表面上に適用する。表面架橋反応は、ペルオキシドラジカル反応開始剤を分解させるが、ポリマーは分解させないような温度まで加熱することによって達成される。
【0007】
欧州特許出願第EP1199327A2号には、表面架橋剤として、オキセタン化合物及び/又はイミダゾリジノン化合物を使用することが開示されている。表面架橋反応は加熱下で行い、温度は60℃〜250℃の範囲であるのが好ましい。あるいは、EP1199327A2号における表面架橋反応は、好ましくは紫外線を使用することによる光照射処置によって達成される。
【0008】
一般には表面架橋剤はSAP粒子の表面上に適用する。従って、反応はSAP粒子の表面上で起こるのが好ましく、その結果、粒子のコアには実質的な影響を及ぼすことなく、表面上に更に高い架橋がもたらされる。ゆえに、SAP粒子がより堅くなり、ゲルブロッキングが低減される。
【0009】
上述した工業用表面架橋プロセスの欠点は、比較的長時間、一般には少なくとも約30分間かかることである。しかし、表面架橋プロセスに必要な時間が長いほど、より多くの表面架橋剤がSAP粒子内に浸透し、結果として粒子内部の架橋が増加し、SAP粒子の能力に対し悪影響を及ぼす。従って、表面架橋プロセスの時間が短いことが望ましい。さらに、経済的なSAP粒子製造プロセス全体という点でも、短いプロセス時間が望ましい。
【0010】
一般的な表面架橋プロセスの別の欠点は、表面架橋プロセスが多くの場合約150℃以上の比較的高い温度下でしか起こらないことである。前記の温度では、表面架橋剤がポリマーのカルボキシル基と反応するだけでなく、他の反応、例えば、ポリマー鎖内又はポリマー鎖間の隣接カルボキシル基の無水物形成、及びSAP粒子に組み込まれたアクリル酸二量体の二量体開裂なども活性化される。それらの副反応もコアに影響を及ぼし、SAP粒子の能力を低下させる。さらに、高温にさらされることは、SAP粒子の褪色を引き起こすおそれもある。ゆえに、これらの副反応は一般に望ましくない。
【0011】
当該技術分野において既知のSAPは典型的には部分的に、例えば水酸化ナトリウムで中和される。しかし、当該技術分野において既知のプロセスでは、中和と表面架橋の必要性とのバランスを慎重に取るべきである。当該技術分野において既知の表面架橋剤は、ポリマー鎖に含まれている遊離のカルボキシル基とのみ反応するが、中和されたカルボキシル基とは反応できない。ゆえに、表面架橋又は中和のいずれかのためにカルボキシル基を適用することはできるが、同一のカルボキシル基を双方の課題を果たすために適用することはできない。当該技術分野において既知の表面架橋剤は一般に、カルボキシル基以外の化学基とは反応せず、例えば、脂肪族基とは反応しない。
【0012】
SAP粒子を製造するプロセスでは通常、遊離カルボキシル基の中和を初めに実施し、その後、表面架橋を行う。実際、中和工程は、モノマーを重合且つ架橋させてSAPを形成させる前に、プロセスの一番初めに行うことが多い。このようなプロセスは「プレ中和プロセス」と名づけられている。あるいは、SAPを重合の途中又は重合後に中和することもできる(「ポスト中和」)。さらに、これらの代替形態の組み合わせも可能である。
【0013】
SAP粒子の外面上にある遊離カルボキシル基の総数は、前述の中和によって制限されるので、表面架橋度が高く、従ってゲルブロッキングを低減するほど剛性が高い粒子を得ることは非常に困難である。さらに、残りの遊離カルボキシル基は、数が少ないだけでなく、一般に不規則的に分布しており、その結果、表面架橋がかなり密集した領域と表面架橋がまばらな領域を備えたSAP粒子を生じさせることがあるので、表面架橋が均一に分布しているSAP粒子を得ることも非常に困難である。
【0014】
従って、本発明の目的は、表面架橋度が高く、同時に高い中和度も可能にするSAP粒子を提供することである。
【0015】
本発明のさらなる目的は、均一に分布している均一な表面架橋を備えたSAP粒子を提供することである。更にSAP粒子は、更に高い親水性を備えているはずである。
【0016】
更に、本発明の目的は、前記の特性を備えたSAP粒子の製造方法を提供することである。
【0017】
本発明のさらなる目的は、SAP粒子を製造するための方法のうち、プロセスの効率を高めるために表面架橋のプロセス工程を迅速に実施できる方法を提供することである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
さらに、本発明のさらなる目的は、SAP粒子を製造するためのプロセスのうち、無水物形成及び二量体開裂など、高温によって開始される望ましくない副反応を低減するために中温で実施できるプロセスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明は、架橋ポリ(メタ)アクリル酸と、その塩とから成り、ポリマー鎖を含む超吸収性ポリマー粒子に関するものである。ポリマー鎖の少なくとも一部は、第1のポリマー鎖の主鎖内の炭素原子と、第2のポリマー鎖の主鎖内の炭素原子との間に直接形成される共有結合を通じて、相互に架橋される。更に、超吸収性ポリマー粒子が、ポリマー鎖の主鎖に含まれる炭素原子に直接共有結合しているアルコール性ヒドロキシル基を含んでなる。
【0020】
更に本発明は超吸収性ポリマー粒子の表面架橋方法に関するものであり、前記方法は、
a)ポリマー鎖セグメントを含む超吸収性ポリマー粒子を用意する工程であって、前記ポリマー鎖セグメントがポリ(メタ)アクリル酸及びその塩を含み、それぞれの超吸収性ポリマー粒子が表面及びコアを備えている工程と、
b)前記超吸収性ポリマー粒子を、100nm〜200nmの波長を有する真空紫外線の照射にさらす工程から構成される。
【0021】
これにより、異なるポリマー鎖の主鎖内に含まれる炭素原子間の直接共有結合を超吸収性ポリマー粒子の表面上に形成させる。
【0022】
本発明の実施形態では、真空紫外線へさらす前に、少なくとも2つのC=C二重結合を備えた表面架橋分子を超吸収性ポリマー粒子に添加し、超吸収性ポリマー粒子の表面に含まれているポリマー鎖間に、更なる共有結合を形成させる。これらの更なる共有結合には、前記表面架橋分子の反応生成物が含まれている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明によるSAPには、架橋ポリ(メタ)アクリル酸及びその塩、すなわち、α,β−不飽和カルボン酸モノマー類、アクリル酸モノマー類、及び/又はメタクリル酸モノマー類が重合したポリマーが含まれている。
【0024】
SAPには、部分的に中和させ、僅かに網状架橋させたポリアクリル酸(即ち、ポリ(アクリル酸ナトリウム/アクリル酸))が含まれているのが好ましい。SAPは、少なくとも50%、より好ましくは少なくとも70%、更により好ましくは少なくとも75%及び更により好ましくは75%〜95%中和させるのが好ましい。網状架橋は、ポリマーを実質的に非水溶性にし、ヒドロゲルを形成する吸収性ポリマー類の吸収能力を決定するという一面もある。前記ポリマーを網状架橋するための方法及び典型的な網状架橋剤は、米国特許第4,076,663号により詳細に記載されている。
【0025】
α,β−不飽和カルボン酸モノマー類を重合するための好適な方法は水溶液重合であり、これは当該技術分野において周知である。α,β−不飽和カルボン酸モノマー類と、重合反応開始剤が含まれている水溶液は、重合反応させる。この水溶液にはまた、更に、α,β−不飽和カルボン酸モノマー類と共重合可能であるモノマー類を含めてもよい。少なくとも、α,β−不飽和カルボン酸は、モノマー類の重合前、重合中又は重合後に、部分的に中和させなければならない。本発明のある好ましい実施形態では、モノマー類は、少なくとも50%、より好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも75%及びより好ましくは75%〜95%中和させる。
【0026】
水溶液中のモノマー類は、標準的な遊離ラジカル技法により、一般には紫外線(UV)などの活性化用の光開始剤を用いて重合させる。あるいは、レドックス反応開始剤を使用してもよい。しかしながらこの場合、高い温度が必要になる。
【0027】
吸水性樹脂は、好ましくは、非水溶性にするために僅かに(lightly)架橋させる。望ましい架橋構造は、選択した水溶性モノマーと、分子単位で少なくとも2つの重合可能二重結合を備えた架橋剤との共重合により形成させてもよい。架橋剤は、水溶性ポリマーを架橋するのに効果的な量で含有させる。好ましい架橋剤の量は、所望の吸収能力の程度及び吸収された流体を保持するのに望ましい力、即ち、負荷下での所望の吸収性によって決まる。典型的には、使用したモノマー100重量部に対し0.0005〜5重量部の量の架橋剤を使用する。100重量部につき5重量部を超える量の架橋剤を用いると、結果として生じるポリマー類の架橋密度は非常に高く、吸収能力が低下し、吸収された流体を保持する力が増大する。100重量部につき0.0005重量部未満の量で架橋剤を用いると、ポリマーの架橋密度は非常に低く、吸収すべき流体と接触すると、粘着性と水溶性が高くなり、特に負荷下では吸収性能が低下する。架橋剤は、典型的には水溶性である。
【0028】
架橋剤をモノマー類と共重合する代わりに、もしくはそれに加えて、重合後に別のプロセス工程でポリマー鎖を架橋することも可能である。
【0029】
重合、架橋及び部分的な中和の後、粘性を有するSAPを脱水(即ち、乾燥)し、乾燥したSAPを生成させる。脱水工程は、粘性を有するSAPを約1〜2時間、強制空気オーブン内で約120℃まで加熱するか、又は粘性を有するSAPを約60℃で一晩中加熱することによって行うことができる。乾燥後のSAP内の残留水の含有量は、主に乾燥時間及び乾燥温度に左右される。本発明の方法で使用する際には、乾燥したSAP粒子の残留水分含有量が、乾燥したSAPの5重量%未満であるのが好ましい。更により好ましくは、残留水分含有量が乾燥したSAPの1重量%未満、及び最も好ましくは、残留水分含有量が乾燥したSAPの0.5重量%未満である。
【0030】
SAP類は多数の形状の粒子へと移すことができる。「粒子」という用語は、顆粒、繊維、フレーク、球体、粉末、小板、並びにSAPの当業者に既知のその他の形状及び形態のことを指す。例えば粒子は、粒径約10μm〜1000μm、好ましくは約100μm〜1000μmの顆粒又はビーズ状とすることができる。他の実施形態において、SAPは、繊維状、すなわち細長く針状のSAP粒子とすることができる。こうした実施形態において、SAP繊維の小寸法(すなわち、繊維の直径)は、約1mm未満、通常は約500μm未満、好ましくは250μm未満〜50μmである。繊維の長さは、好ましくは約3〜約100mmである。繊維はまた、織ることのできる長いフィラメントの形態であることができる。
【0031】
本発明のSAP粒子にはポリマー鎖が含まれており、SAP粒子の表面上に含まれている前記ポリマー鎖の少なくとも一部は、ポリマー鎖間に直接形成される共有結合を通じて相互に架橋される。更に本発明のSAP粒子は、ポリマー鎖内に導入したアルコール性ヒドロキシル基により、更に高い親水性を備えている。アルコール性ヒドロキシル基は、それ自体の酸素を介して、ポリマー鎖の主鎖の炭素原子に直接共有結合する。注目すべきは、本発明がカルボキシル基に含まれているヒドロキシル基ではなく、アルコール性ヒドロキシル基に関することである。
【0032】
本発明による「直接共有結合」は、架橋分子に含まれている原子などの中間原子のない共有結合のみによってポリマー鎖が相互に結合される共有結合である。それとは反対に、ポリマー鎖間の既知の架橋反応は、常にこれらのポリマー鎖間に共有結合をもたらし、架橋分子の反応生成物がポリマー鎖間に組み込まれる。ゆえに、既知の架橋反応は、直接共有結合をもたらさず、架橋分子の反応生成物を含む間接共有結合をもたらす。直接共有結合は、第1のポリマー鎖の主鎖内の炭素原子と、第2のポリマー鎖の主鎖内の炭素原子との間に形成される。結合は、SAPポリマー内で微粒子内に形成され、より具体的には、結合は、SAP粒子の表面上に形成されるが、SAP粒子のコアは、そのような直接共有結合を実質的に含まない。
【0033】
本発明によるポリマー鎖間の直接共有結合では、異なるSAP粒子を相互に結合させることは意図していない。従って、本発明の方法は、異なるSAP粒子間の感知できるほどの粒子間直接共有結合を導くのではなく、結果として、SAP粒子内部に粒子内の直接共有結合のみをもたらす。従って、存在する場合、そのような微粒子間直接共有結合は、架橋分子など、追加の微粒子間架橋物質を必要とする。
【0034】
2つの炭素原子間の共有結合によってポリマー鎖を相互に直接結合させる本発明の方法は、従来の表面架橋の代わりに、又は従来の表面架橋に加えて、SAP粒子を表面架橋するために適用することができる。
【0035】
「表面」という用語は、粒子の外側に面した境界のことを指す。多孔質SAP粒子に関しては、内部露出面も表面とみなしてもよい。「表面架橋したSAP粒子」という用語は、相互に架橋した、粒子表面付近に存在するそのポリマー鎖を備えたSAP粒子を指す。表面架橋剤と呼ばれる化合物によって粒子表面付近に存在するポリマー鎖を表面架橋することは、当該技術分野において既知である。表面架橋剤は粒子表面に適用する。表面架橋させたSAP粒子では、SAP粒子の表面付近における架橋レベルは、一般にSAP粒子内部の架橋レベルよりも高い。
【0036】
一般に適用される表面架橋剤は、熱活性化される表面架橋剤である。「熱活性化される表面架橋剤」という用語は、典型的には約150℃の高温にさらすことによってのみ反応する表面架橋剤を指す。従来技術において既知の熱活性化される表面架橋剤は、例えば、SAP粒子の表面上に含まれているポリマー鎖セグメント間に更なる架橋を構築することができる二官能分子又は多官能分子である。熱活性化される表面架橋剤としては、例えば、二価アルコール若しくは多価アルコール、又は二価アルコール若しくは多価アルコールを形成できるそれらの誘導体が挙げられる。このような表面架橋剤の代表は、アルキレンカーボネート、ケタール、及びジ−又はポリグリシジルエーテルである。さらに、(ポリ)グリシジルエーテル、ハロエポキシ化合物、ポリアルデヒド、ポリオール、及びポリアミンも、また、周知の熱活性化される表面架橋剤である。架橋は、ポリマーに含まれる官能性基間の反応、例えばカルボキシル基(ポリマーに含まれている)とヒドロキシル基(表面架橋剤に含まれている)のエステル化反応に基づくものである。典型的には、ポリマー鎖のカルボキシル基の比較的大部分が重合工程前に中和されるので、一般には、当該技術分野において既知のこの表面架橋プロセスには、ほんの僅かなカルボキシル基しか利用できない。例えば、70%中和させたポリマーでは、共有表面架橋結合のために、10個のカルボキシル基のうちたった3個しか利用できない。
【0037】
本発明の方法によれば、表面架橋したSAP粒子を得るために、表面架橋分子を添加しなくてはならないわけではない。それとは反対に、本発明によれば、共有結合を通じてポリマー鎖が相互に直接結合することにより、SAP粒子の表面上に含まれるポリマー鎖の表面架橋が可能である。
【0038】
しかし好ましくは、表面架橋分子を添加してもよい。これらの実施形態では、架橋分子の反応生成物が含有される第2の種類の架橋を形成させることができる。架橋分子の追加使用により、反応時間がより短くなるため、反応効率を更に高めることができる。理論に束縛されるものではないが、表面架橋分子の非存在下で架橋反応が開始されるVUV照射の律速段階は、2つの炭素中心ラジカルのいわゆる再結合であり、2つの異なるポリマー鎖内に含まれる2つの炭素原子間の直接共有結合を形成すると考えられる。この再結合の後には速度法則の二次反応が続き、すなわち、前記結合反応の反応速度は、結合する2つの炭素中心ラジカルの濃度の積(product)に比例する。
【0039】
しかし、表面架橋分子を添加する場合、架橋分子又はその反応生成物、及びポリマー鎖内の炭素中心ラジカル間の反応は、共有結合を形成し、速度法則の疑似一次反応が続くと考えられ、すなわち、第2の反応相手、すなわち、表面架橋分子それぞれの反応生成物の濃度が非常に高いため、反応を通して一定であるとみなすことができることから、反応速度は、炭素中心ラジカルの濃度のみに比例する。擬似一次反応速度式の反応は、二次反応速度式の反応よりも速度論的に好ましいことが知られており、すなわち、特に反応ラジカル(この場合は、ポリマー鎖中の中間体である炭素中心ラジカル)の濃度が低ければ、これらはより高い反応速度を有する。その結果として、プロセス全体は、表面架橋の存在及び反応全体の律速段階におけるその速度論的に好ましい影響に起因して、より高いライン速度で反応を進めることができる。表面架橋分子の存在により、本方法を、乾燥したSAPの0.5重量%未満といった残留水分含有量が非常に低いSAP粒子を用いて実施することができる。その上、本発明の方法の際に表面架橋分子を追加的に適用する場合、本発明のVUV照射間に存在する酸素濃度を最低(さらにはゼロ)に維持してもよい。
【0040】
任意の表面架橋分子は、好ましくは本発明の方法に適用でき、少なくとも2つのC=C二重結合を備えている。より好ましくは、表面架橋分子には、2つ超のC=C二重結合が含まれている。
【0041】
本発明の好ましい表面架橋分子は多官能アリル及びアクリル化合物であり、例えば、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、トリメチルプロパントリクリレート(trimethylpropane tricrylate)又は他のトリアクリレートエステル類、ペンタエリスリトールトリアリルエーテル、ペンタエリスリトールテトラアリルエーテル、ブタンジオールジアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、テトラアリルオルトシリケート、ジペンタエリスリトールペンタアシラレート(pentaacyralate)、ジペンタペンタエリスリトールヘキサアシラレート(hexaacyralate)、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、テトラアリルオキシエタン、ジアリルフタレート、ジエチレングリコールジアクリレート、アリルメタクリレート、トリアリルアミン、1,1,1−トリメチロールプロパントリアクリレート、トリアリルシトレート、トリアリル−s−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン、又はトリアリルアミンである。
【0042】
あるいは、表面架橋分子は、スクアレン、N,N’−メチレンビスアクリルアミド、イコサ−ペンタエン酸、又はソルビン酸から成る群より選択する。
【0043】
本発明の最も好ましい表面架橋分子はペンタエリスリトールテトラアリルエーテルである。
【0044】
本発明の方法には、2つ又はそれ以上の異なる表面架橋分子の使用も可能である。
【0045】
真空UV照射
本発明によれば、表面架橋反応を誘起するために、SAP粒子は、100nm〜200nm(真空UV)の波長を有する真空紫外線の照射にさらす。より好ましくは、波長は100nm〜195nmであり、更により好ましくは、波長は140nm〜195nmである。真空UVは、電磁スペクトルの紫外(UV)領域の特定の範囲である。電磁スペクトル中、紫外線の波長は100nm〜400nmであり、紫外線は可視スペクトルの「紫」端を超えるエネルギー帯に位置する部分である。紫外スペクトルは一般に、UV−A(315〜400nm)、UV−B(280〜315nm)、UV−C(200〜280nm)、及び真空UV(VUV)(100〜200nm)に分けられる。
【0046】
理論に束縛されるものではないが、真空紫外線による照射は、ポリマー鎖に含まれる炭素中心ラジカルの形成を誘導すると考えられる。更に、ポリマー鎖内の反応は、ポリマー鎖に含まれる脂肪族基(C−H基)上で起こると考えられる。このような2つのポリマー鎖ラジカルが相互に反応するときには、ポリマー鎖間の直接共有結合が形成される。
【0047】
第2の段階では、炭素中心ラジカルの形成後、これらの炭素中心ラジカルが化合し、ポリマー鎖の主鎖内に含まれる2つの炭素原子間に、直接共有結合を形成することができる。表面架橋分子を添加する実施形態では、炭素中心ラジカルは表面架橋分子と反応でき、表面架橋分子の反応生成物を介して、少なくとも異なる2つのポリマー鎖を結合する架橋を形成する。
【0048】
VUV照射は、例えば、照射活性化可能なラジカル形成剤のような更なる反応開始剤分子を必要とせずに、表面上で高濃度で、前記炭素中心ラジカルの効率的な形成を可能にする。このような反応開始剤は、表面架橋したSAP粒子の製造コストに大幅に追加してよい。
【0049】
中間体炭素中心ラジカル形成のきっかけとなるVUV照射使用のその他の効果は、SAP粒子の表面内へのその低い浸透深さであり、SAP粒子の表面における薄い殻形成を可能にする。好ましくは、表面架橋は、SAP粒子の外側0.1μm〜3μmに制限され、より好ましくは、SAP粒子の外側0.1μm〜1μmである。
【0050】
反応機構
中間体炭素中心ラジカルの形成に寄与すると識別されうる機構はいくつかある。ある程度、これらの機構が平衡して起こる可能性がある。
【0051】
VUV照射により、O−H結合の均一開裂を介して水分子からヒドロキシルラジカルが発生する。この高反応性短命種は、ポリマー主鎖の炭素−水素結合(C−H結合)から水素原子を引き抜くことができ、その結果、前記炭素中心ラジカルが形成される。
【化1】

【0052】
水分子は、例えば、乾燥したSAP粒子中に含まれる残留水分子とすることができるが、噴霧適用、又は好ましくは、水蒸気として添加してもよい。本発明の方法で使用する際には、乾燥したSAP粒子の残留水分含有量は、乾燥したSAP粒子の5重量%未満であるのが好ましい。更により好ましくは、残留水分含有量が乾燥したSAP粒子の1重量%未満、及び最も好ましくは、残留水分含有量が乾燥したSAP粒子の0.5重量%未満である。
【0053】
あるいは、非常に低い残留水分含有量(乾燥したSAP粒子の0.5重量%未満)のSAP粒子を用いる場合、均一開裂に利用可能な水分子をより多く持たせるために、VUV照射へさらす前に、SAP粒子をわずかに湿らせることもできる。SAP粒子を湿らせるには、例えば、先行する製造工程からSAP粒子の表面上に残存する残留水を使用することができる。他の方法としては、噴霧適用により、又は水蒸気としての適用により、水分を加えることができる。
【0054】
水分子中のO−H結合の均一開裂は、200nm未満の波長を有するUV照射によってのみ、十分な程度まで実現させることができる。
【0055】
更に、分子酸素は均等に開裂することができ、高反応性の原子状酸素を生じ、炭素中心ラジカルの発生をもたらす方法と同様に反応する。
【化2】

【0056】
SAP粒子上に吸着された残留酸素は、反応が不活性ガス雰囲気下で行われる実施形態では、既に上記反応に寄与することができる。あるいは、制御条件下(すなわち、ラジカル反応中に存在する酸素分圧を制御し調節する)で、酸素を追加することができるであろう。
【0057】
引き続いて、SAP粒子に含まれるポリマー鎖の主鎖内に発生する2つの炭素中心ラジカルは、ポリマー鎖間に直接共有結合を形成するために化合する。
【0058】
あるいは、炭素中心ラジカルの一部を酸化させてよい。光化学的に開始される酸化は、SAP粒子の表面上で起こる可能性があり、ポリマー鎖中での新たなアルコール性ヒドロキシル基形成をもたらし、例えば、このようなヒドロキシル基は、O−Hラジカルを伴う炭素中心ラジカルの反応により形成できると考えられる。
【化3】

【0059】
ヒドロキシル基の形成をもたらす別の反応として、酸素存在下において、数段階で分解する四酸化物を形成するために化合することのできるペルオキシルラジカルが形成されると考えられ、最終的にアルコキシラジカルをもたらし、これは水素を容易に引き抜き、ポリマー鎖中にヒドロキシル基を形成する。
【化4】

【0060】
上述のアルコール性ヒドロキシル基は、それ自体の酸素を介して、ポリマー鎖の主鎖の炭素原子に直接共有結合する。
【0061】
水分子及び/又は酸素を含むこれらの反応により、アルコール性ヒドロキシル基がポリマー鎖内に導入される。当初のSAP粒子を、架橋ポリ(メタ)アクリル酸と、その塩とから成る本発明のプロセスに適用するため、このようなアルコール性ヒドロキシル基は、当初のSAP粒子中には存在していない。それ故に、本発明の方法は、SAP粒子に含まれるポリマー鎖間の直接共有結合の導入と、ポリマー鎖中へのアルコール性ヒドロキシル基の導入をもたらす。反応は、実質的にSAP粒子の表面で起こるため(VUV照射は、SAP粒子のコア内に十分な程度まで浸透しないため)、アルコール性ヒドロキシル基は、主にSAP粒子の表面で形成される。
【0062】
従って、本発明の方法は、直接共有結合により、高度に均一に表面架橋したSAP粒子を生成し、及び同時に、アルコール性ヒドロキシル基の形成により、SAP粒子の親水性を向上させる。
【0063】
異なる反応のそれぞれが炭素中心ラジカルの形成に寄与する程度については、反応条件、例えば、反応混合物の水分含有量、酸素分圧の選択により、又は最も好適なVUVランプ(ランプの動力、SAP粒子からの距離、暴露時間)の選択/調節により、影響を受ける可能性がある。
【0064】
VUVランプ及び反応装置
原則として、数種類のUVランプを真空紫外線を発生させるのに使用することができ、例えば、通常の定圧水銀ランプで185nmの発光ピークの光を上記反応のきっかけとして使用できる。
【0065】
好ましくは、パルス又は連続のキセノンエキシマ放射源を適用する。よく知られているエキシマレーザーとは対称的に、エキシマランプは、異なる物理的条件下で操作され、非干渉性の電磁放射線を放射する。レーザー源より放射される干渉性放射とは対称的に、非干渉性又は不干渉性放射は、空間的及び時間的に位相関係を持たない基本電磁波を特徴とする。電磁スペクトルの真空−UV領域における非干渉性エクシマ放射の発生は、例えば、マイクロ波放電、又はガス雰囲気下の無声放電により可能となる。後者の操作方式は、誘電体バリア放電(DBD)とも称される。
【0066】
好ましいキセノンエキシマ放射はVUV範囲中で比較的広帯域を示し、160nm〜200nの波長を有し、半値全幅(FWHM、半幅)が14nmである波長172nmで最大になる。
【0067】
反応装置の形状はランプの外観に適合しなくてはならないため、入手可能なほとんどのランプが決まった形状(通常は線形、管形、又はコイル形)をしており、反応装置のデザインの自由度を制限しているが、非干渉性エクシマVUV源の場合は異なり、様々な形状、円筒形、平面形、又は特殊な形状で容易に入手可能である。これらのデザインは、電極の配置とは無関係である。
【0068】
本発明の方法に最も好ましい反応装置は、中央に棒状の放射源を伴い、放射状、対照的に配置する流動床反応装置である。反応装置は、バッチプロセスにおいて操作してもよいが、連続プロセスが好ましい。流動床を発生するための必要な気体(例えば窒素)は、好ましくは底部より反応装置内に入る。連続プロセスでは、SAP粒子は気体と共に運ばれ、上端より反応装置を出る。バッチ運転方式では、SAP粒子が反応装置から出るのを防ぐため、反応装置上部にサイクロンを適用できる。ランプは、任意に気体により冷却することができ、この目的を達成するために、冷却スリーブ内にはめ込んでもよい。冷却スリーブは、VUV放射が透過できる合成石英ガラス、スプラシル(Suprasil)で作ることができる。反応装置の外壁は、例えば、パイレックス(Pyrex)ガラスで作ることができる。
【0069】
表面架橋分子を更に適用する実施形態においては、例えば、不活性溶媒(任意に蒸発させることができる)が含まれている溶液中での噴霧適用により、SAP粒子が反応装置に入る前に表面架橋分子を添加すべきである。表面架橋分子は、適用後直接蒸発するジクロロメタンなどの有機溶媒中で適用できる。SAP粒子を湿らせる実施形態では、水と共に(懸濁液として、又は、架橋分子が水溶性の場合は水溶液として)適用することも可能である。表面架橋分子は、好ましくは乾燥したSAP粒子の0.1重量%〜10重量%濃度で、より好ましくは乾燥したSAP粒子の1重量%〜5重量%濃度で適用する。
【0070】
水分含有量も、SAP粒子を反応装置に入れる前に調節すべきである。
【0071】
実験室での研究に好適なパルスVUV放射源は、オスラム(Osram)社(ミュンヘン、ドイツ)からセラデックス(Xeradex(登録商標))の商標名で、20W又は100Wの電力のものが市販されている。
【0072】
工業的応用には、電力が10kWまでの連続キセノンエキシマ放射源を適用できる(ヘレウス(Heraeus)社(アトランタ、ジョージア州、米国)から市販)。約15アインシュタイン/kWhの効率のランプが市販されている。
【0073】
SAP粒子は、好ましくは0.1秒〜30分、より好ましくは0.1秒〜15分、更に好ましくは0.1秒〜5分、最も好ましくは0.1秒〜2分、照射させる。VUVランプと架橋させるSAP粒子間の距離は、好ましくは2mm〜150mm、好ましくは2mm〜50mm、最も好ましくは2mm〜20mm間で変動する。
【0074】
従来技術の表面架橋は、SAP粒子の表面上に露出したポリマー鎖に含まれているカルボキシル基だけに限られていた。有益なことに、本発明の表面架橋プロセスには、カルボキシル基だけに限らず、また、SAPのポリマー鎖内の他の多数の化学基(官能基及び脂肪族基)も含まれている。ゆえに、本発明によれば、SAP粒子の表面架橋プロセスに利用可能な反応部位の数は、大幅に増大する。従って、当該技術分野において既知の表面架橋に比べて、はるかに均一且つ一様な表面架橋を達成することが可能である。さらに、従来技術において既知のSAPよりも高い程度までSAPを表面架橋することも可能である。これによって、SAP粒子をより堅くすることができ、従って、所与の中和度においてゲルブロッキング効果をより効果的に抑制することができる。
【0075】
SAP粒子の表面架橋は、実質的にSAP粒子の表面上でのみ起こる。それは、SAP粒子の表面付近に露出したポリマー鎖が架橋プロセスを経て、SAP粒子のコア内に含まれるポリマー鎖には実質的に影響を及ぼすことなく、前記粒子表面上の架橋度が高いSAP粒子をもたらすことを意味する。それ故に、ポリマー鎖間に直接形成される共有結合は、表面架橋分子を追加的に使用する場合、表面架橋分子の反応生成物が含まれている表面架橋が、主に前記超吸収体粒子の表面上に形成され、一方で、コアには実質的にこれらの架橋が含まれない。
【0076】
従来技術から既知である表面架橋と比較すると、本発明による表面架橋ははるかに迅速である。高温下で行われる従来技術の表面架橋反応は通常、最長45分かかる。時間がかかるこのプロセス工程では、SAP粒子の製造プロセスは、所望するよりも経済的ではなくなる。対称的に、本発明による架橋プロセスは非常に迅速に行うことができるので、製造プロセス全体がはるかに効果的で経済的となる。
【0077】
本発明の他の利点は、中和工程についてである。α,β−不飽和カルボン酸モノマーは、重合工程の前に中和されることが多い(プレ中和)。モノマーの酸性基を中和するのに有用な化合物は、典型的には、重合プロセスに有害な影響を及ぼさずに酸性基を十分に中和するものである。前記化合物としては、アルカリ金属の水酸化物類、炭酸及び重炭酸のアルカリ金属塩類が挙げられる。好ましくは、モノマー類の中和に使用する材料は、水酸化ナトリウム若しくはカリウム又は炭酸ナトリウム又はカリウムである。中和化合物は、好ましくは、α,β−不飽和カルボン酸モノマー類が含まれている水溶液に添加する(プレ中和)。結果として、α,β−不飽和カルボン酸モノマー類が含むカルボキシル基が少なくとも部分的に中和される。従って、重合工程後、ポリマーのα,β−不飽和カルボン酸に含まれるカルボキシル基もまた少なくとも部分的に中和される。水酸化ナトリウムを使用する場合、中和によってアクリル酸ナトリウムが生じ、これが水中でマイナスに帯電したアクリル酸モノマーとプラスに帯電したナトリウムイオンとに解離する。
【0078】
最終的なSAP粒子が水溶液を吸収した後で膨潤状態にある場合、ナトリウムイオンは、SAP粒子内を自由に移動することができる。おむつ又はトレーニングパンツなどの吸収性物品で使用する場合、SAP粒子は典型的には尿を吸収する。蒸留水と比較して、尿には、少なくとも部分的に解離した形態で存在する塩が比較的多く含まれている。尿に含まれる解離した塩のために、液体はSAP粒子内に吸収されにくくなる。それは、解離した塩のイオンに起因する浸透圧に逆らって液体を吸収しなければならないからである。SAP粒子内で自由に移動することができるナトリウムイオンは浸透圧を低下させるので、液体が粒子内に吸収されるのを大きく促進する。従って、高程度の中和は、概して、SAP粒子の能力及び液体吸収速度を大いに高めることができる。更に、より高程度の中和は、製造コストを著しく減少させる。なぜならば、大量生産の原理に基づき、より高価な(メタ)アクリル酸を少なくするほど、より安価な水酸化ナトリウムを出発原料としてより多く使用できるからである。
【0079】
当該技術分野において既知の表面架橋剤は、ポリマーのカルボキシル基と反応する。従って、いずれのプロセス工程でもカルボキシル基を使用するので、中和の程度は、表面架橋に対する必要性と調和を保たなければならない。
【0080】
本発明の方法によれば、真空紫外線により誘導される表面架橋反応には、カルボキシル基が存在する必要性がない。従って、後の表面架橋の可能性を著しく低下させることなく、より高い程度までモノマーを中和することが可能である。
【0081】
本発明のさらなる利点は、表面架橋プロセス中の望ましくない副反応の低減である。従来技術から知られている表面架橋は、通常約150℃以上の高温を必要とする。これらの温度では、表面架橋反応が達成されるだけでなく、他の多数の反応、例えば、ポリマー内での無水物形成、又はアクリル酸モノマーによって事前に形成された二量体の二量体開裂も起こる。これらの副反応は、能力の低下したSAP粒子をもたらすので、きわめて望ましくない。
【0082】
本発明による表面架橋プロセスは、必ずしも高温を必要とするわけではなく、電磁放射線を用いて中温でも実施できるので、前記の副反応は、ほぼなくなる。本発明によれば、真空UV照射による表面架橋反応は、好ましくは100℃未満の温度、好ましくは80℃未満の温度、より好ましくは50℃未満の温度、さらに好ましくは40℃未満の温度、最も好ましくは20℃〜40℃の間の温度で達成することができる。
【0083】
従来技術から知られている表面架橋プロセスにおいて一般的に適用される約150℃以上の高温では、SAP粒子の色が白色から黄味がかった色へと変化することがある。本発明の表面架橋プロセスによれば、中温下で表面架橋プロセスを実施することが可能であるので、SAP粒子の褪色の問題は大きく軽減される。
【0084】
別の方法として、本発明による表面架橋を、既知の表面架橋プロセスに加えて、その既知のプロセスの前に、同時に、又は後に実施することもできる。このため、真空UV照射により誘導される表面架橋工程は、1つ以上の熱活性化される表面架橋工程、例えば、1,4−ブタンジオールを用いる工程と組み合わせることができる。しかしこの実施形態では、SAP粒子は、カルボキシル基が含まれていなければならず、それらカルボキシル基の少なくとも一部が、SAP粒子の表面上に少なくとも部分的に露出しており、熱活性化された表面架橋剤が、SAP粒子の表面上に少なくとも部分的に露出したカルボキシル基の少なくとも一部に共有結合される。更に、この方法が行われる温度を、熱活性化される表面架橋分子の要件に合致するよう調節しなくてはならない。
【0085】
吸収性物品
本発明のSAP粒子は、好ましくは吸収性物品の吸収性コア内に適用する。本明細書で使用する時、吸収性物品とは、液体を吸収して収容する道具を指し、より具体的には、着用者の身体に接触させたり隣接させたりして、身体から排泄される様々な排出物を吸収して収容する道具を指す。吸収性物品としては、おむつ、成人用失禁ブリーフ、おむつホルダー及びおむつライナー、生理用ナプキン等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0086】
本発明の好ましい吸収性物品はおむつである。本明細書で使用する時、「おむつ」とは、一般に乳幼児及び失禁者が胴体下部の周囲に着用する吸収性物品を指す。
【0087】
本発明に特に好適な吸収性物品は、液体透過性トップシート、液体不透過性バックシート、一般には前記トップシートとバックシート間に配置した吸収性コアを備えた外側カバーから典型的には構成される。吸収性コアには、一般に圧縮可能かつ快適で、着用者の皮膚に刺激を与えず、尿及び他の体の排出物などの液体を吸収及び保持可能な吸収性材料を含有させてもよい。吸収性コアには、本発明のSAP粒子に加え、使い捨ておむつと他の吸収性物品で通常使用される、一般にエアフェルトと呼ばれる粉砕木材パルプなどの多種多様の液体吸収性材料を含有させてもよい。
【0088】
吸収性アセンブリとして使用するための代表的な吸収性構造については、1992年8月11日にヘロン(Herron)らに付与された米国特許第5,137,537号、名称「個別のポリカルボン酸架橋木材パルプセルロース繊維を含有する吸収性構造(Absorbent Structure Containing Individualized, Polycarboxylic Acid Crosslinked Wood Pulp Cellulose Fibers)」、1992年9月15日にヤング(Young)らに付与された米国特許第5,147,345号、名称「失禁管理のための高効率吸収性物品(High Efficiency Absorbent Articles For Incontinence Management)」、1994年8月30日にロウ(Roe)に付与された米国特許第5,342,338号、名称「低粘性の糞便物質のための使い捨て吸収性物品(Disposable Absorbent Article For Low-Viscosity Fecal Material)」、1993年11月9日にデマレ(DesMarais)らに付与された米国特許第5,260,345号、名称「水性体液のための吸収性フォーム材料及び該材料を含有する吸収性物品(Absorbent Foam Materials For Aqueous Body Fluids and Absorbent Articles Containing Such Materials)」、1995年2月7日にダイアー(Dyer)らに付与された米国特許第5,387,207号、名称「水性体液のための薄いユニット状湿潤吸収性フォーム材料及びそれらの製造プロセス(Thin-Until-Wet Absorbent Foam Materials For Aqueous Body Fluids And Process For Making Same)」、1995年3月14日にラボン(LaVon)らに付与された米国特許第5,397,316号、名称「拡張可能な吸収性材料で形成された、水性体液のためのスリット付き吸収性部材(Slitted Absorbent Members For Aqueous Body Fluids Formed Of Expandable Absorbent Materials)」、並びに米国特許第5,625,222号、名称「水性流体のための吸収性フォーム材料(Absorbent Foam Materials For Aqueous Fluids Made From high In al.、1997年7月22日)に記載されている。
【0089】
「発明を実施するための最良の形態」で引用したすべての文献は、関連部分において本明細書に参考として組み込まれるが、いずれの文献の引用も、それが本発明に関する先行技術であるとの容認と解釈すべきではない。
【0090】
本発明の特定の実施形態を説明及び記載してきたが、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく他の様々な変更及び修正を行えることが当業者には明白であろう。従って、本発明の範囲内にあるそのようなすべての変更及び修正を添付の特許請求の範囲で扱うものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
架橋ポリ(メタ)アクリル酸と、その塩とから成り、ポリマー鎖を含む超吸収性ポリマー粒子であって、前記ポリマー鎖の少なくとも一部が、共有結合を通じて互いに架橋され、前記共有結合が、前記超吸収性ポリマー粒子に含まれている第1のポリマー鎖の主鎖内の炭素原子と、第2のポリマー鎖の主鎖内の炭素原子との間に直接形成されることを特徴とし、更に、前記超吸収性ポリマー粒子が、ポリマー鎖の主鎖に含まれる炭素原子に直接共有結合しているアルコール性ヒドロキシル基を含んでなることを特徴とする超吸収性ポリマー粒子。
【請求項2】
前記ポリマー鎖の少なくとも一部が、少なくとも2つのC=C二重結合を有する表面架橋分子の反応生成物を含んでなる架橋を通じて、更に相互に共有架橋される、請求項1に記載の超吸収性ポリマー粒子。
【請求項3】
前記共有結合が、照射活性化可能ないかなるラジカル形成剤を使用せずに、真空紫外線照射により誘起される、請求項1又は2に記載の超吸収性ポリマー粒子。
【請求項4】
前記超吸収性ポリマー粒子が、表面と、コアとを備え、且つ、前記ポリマー鎖の間に直接形成される前記共有結合が、前記超吸収性粒子の前記表面上に形成される、一方、前記コアが、前記共有結合を実質的に含まない、請求項1〜3のいずれか一項に記載の超吸収性ポリマー粒子。
【請求項5】
前記超吸収性ポリマー粒子が、表面と、コアとを備え、且つ、前記アルコール性ヒドロキシル基が、前記超吸収性粒子の前記表面上に形成される、一方、前記コアが、前記アルコール性ヒドロキシル基を実質的に含まない、請求項1〜4のいずれか一項に記載の超吸収性ポリマー粒子。
【請求項6】
超吸収性ポリマー粒子の表面架橋方法であって、
a)ポリマー鎖セグメントを含む超吸収性ポリマー粒子を用意する工程であって、前記ポリマー鎖セグメントがポリ(メタ)アクリル酸及びその塩を含み、それぞれの超吸収性ポリマー粒子が表面及びコアを備えている工程と、
b)前記超吸収性ポリマー粒子を、100nm〜200nmの波長を有する真空紫外線の照射にさらす工程と
を含んでなる表面架橋方法。
【請求項7】
真空紫外線へさらす前に、少なくとも2つのC=C二重結合を備える表面架橋分子を前記超吸収性ポリマー粒子に添加する、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記方法でもたらされる前記超吸収性ポリマー粒子が、前記超吸収性ポリマー粒子の5重量%未満の残留水分含量を有する、請求項6又は7に記載の方法。
【請求項9】
真空紫外線へさらす前に、前記超吸収性ポリマー粒子を水で湿らせる、請求項6〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記真空紫外線が、160nm〜200nmの波長を有し、172nmの波長に放射ピークを有する、請求項6〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記方法が、100℃未満の温度で行われる、請求項6〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記超吸収性ポリマー粒子を0.1秒〜5分間真空紫外線へさらす、請求項6〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
実質的に液体透過性のトップシートと、実質的に液体不透過性のバックシートと、前記トップシート及び前記バックシートの間の吸収性コアとを備えた吸収性物品であって、前記吸収性コアが、請求項1〜5のいずれか一項に記載の超吸収性ポリマー粒子を含む、吸収性物品。
【請求項14】
請求項6〜12のいずれか一項に記載の方法に従って製造された、超吸収性ポリマー粒子を含んでなる吸収性物品。

【公表番号】特表2008−523173(P2008−523173A)
【公表日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−544641(P2007−544641)
【出願日】平成17年12月9日(2005.12.9)
【国際出願番号】PCT/US2005/044606
【国際公開番号】WO2006/063228
【国際公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.パイレックス
2.PYREX
【出願人】(590005058)ザ プロクター アンド ギャンブル カンパニー (2,280)
【Fターム(参考)】