説明

書籍類陳列什器

【課題】例えば書店などにおいて、空きスペースを有効利用することにより、限られた店舗面積を大きく占有することなく、面陳列方式により書籍を効果的に陳列できるようにした書籍陳列什器を提供する。
【解決手段】平台1等の適宜の空き壁面1aに固定されるベース部材2と、該ベース部材2の前面に懸架され、かつ下端に、書籍類を支持する短寸の受け部3dを突設した面板状の面陳列台3とを備えるものとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、適宜の壁面に取付けられて、書籍類を、空きスペースを利用して、補助的に陳列しうるようにした書籍類陳列什器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、書店において使用される書籍陳列什器としては、店舗の壁面に沿って配置される壁面什器や、通路を挟んだ店舗の中央に一定間隔で配列される島什器や、店舗の出入口近傍において、島什器の端部に配置された平台等があり、平台の上面には新刊本等を平置きしている。
また、下記特許文献1に記載されているように、特定の新刊本などを、客の目に良く触れるように、表紙が前方を向くようにして支持する、いわゆる面陳列用のスタンド、すなわち面陳スタンドを、平置きした書籍の上方に突出するようにして支持するようにしたものもある。
【特許文献1】特開平9−276094号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、従来の面陳スタンドは、平置きした新刊本等の上方に面陳列するため、平置きされた新刊本等を取上げるときの邪魔になるとともに、平台の上方空間を妨げるという問題がある。
【0004】
本発明は、以上の課題を解決するためになされたものであり、例えば書店などにおいて、空きスペースを有効利用することにより、限られた店舗面積を大きく占有することなく、面陳列方式により書籍を効果的に陳列できるようにした書籍類陳列什器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によると、上記課題は次のようにして解決される。
(1)平台等の適宜の空き壁面に固定されるベース部材と、該ベース部材の前面に懸架され、かつ下端に、書籍類を支持する短寸の受け部を突設した面板状の面陳列台とを備えるものとする。
なお、「書籍類」とは、本、冊子などのほか、LD,DVD,CD,レコードなどの所定の縦横高さがあり、かつ 1枚当りの厚みが比較的薄いメディア媒体一般を言う。
【0006】
(2)上記(1)項において、前記面陳列台の背面に、前記ベース部材に設けた取付部に選択的に係合させることにより、前記面陳列台の高さを変更しうるようにした複数のブラケットを、上下方向に離間させて設ける。
【0007】
(3)上記(1)または(2)項において、前記面陳列台を、後方への傾斜角度変更手段を介して、前記ベース部材に連結する。
【0008】
(4)上記(3)項において、前記傾斜角度変更手段を、前記ベース部材側に形成された上下方向を向くガイド溝と、前記面陳列台の下部に一端が回動可能に取付けられ、かつ他端が前記ガイド溝に沿って摺動可能かつ回動可能として連結されたリンク板とを備えるものとし、前記ガイド溝から分岐された分岐溝に前記リンク板の他端が係合することにより、前記面陳列台を所望の後傾角度で支持するようにする。
【0009】
(5)上記(1)〜(4)項のいずれかにおいて、前記空き壁面を、平台の店舗入口側の端面とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、次のような作用効果を得ることができる。
請求項1の発明によれば、例えば書店などにおいて、平台の側面等空き壁面を利用することにより、売場面積を大きく占有することなく、大形本等の書籍類を、通行等の妨げとなることなく、効果的に陳列することができる。
【0011】
請求項2の発明によれば、請求項1の発明の作用及び効果に加え、面陳列台の高さを、書籍類の寸法やレイアウト等に応じて、適宜変更することができる。
【0012】
請求項3の発明によれば、請求項1または2の発明の作用・効果に加え、書籍類の自立性や、顧客の目線等に応じて、支持した書籍類の後傾角度を変更することができる。
【0013】
請求項4の発明は、請求項3の発明をより具体化したもので、所要角度位置に安定して固定できる。
【0014】
一般的に、平台は店舗の入口近傍にその端面を位置させた状態で配置され、かつ両側には、書籍類の収蔵用引出し等が設けられることが多いが、上記平台の端面は、単なる壁面とされており、何ら活用されていないのが現状である。
請求項5の発明によれば、このような平台の店舗入口側の端面を、書籍類陳列什器の取付壁面としてあるので、店舗内の最も目立つ位置に書籍類を陳列することができ、陳列効果を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の最良の実施の形態につき添付図面を参照して説明する。
図1〜図5に示すように、この書籍類陳列什器は、書店の店舗入口側に向けて配置された平台(1)の前端部壁面(1a)に固定され、かつ壁面(1a)の縦横寸法に応じた矩形枠組形状のベース部材(2)と、このベース部材(2)の前面に高さ及び角度調整可能として取付けられた面陳列台(3)とを備えている。
【0016】
ベース部材(2)は、断面L字形の左右1対の縦フレーム(4)と、縦フレーム(4)の上部にその両端をスポット溶接された断面ほぼ前向きコ字形の上部横フレーム(5)と、縦フレーム(4)の下部にその両端をスポット溶接された断面ほぼL字形の下部横フレーム(6)とを備えている。
【0017】
各縦フレーム(4)の上部内側面には、互いに内方を向く左右1対の支持ピン(7)が突設され、中間部には、上下方向を向く左右1対のガイド板(8)が固着されている。
【0018】
上下の横フレーム(5)(6)の両側部下面には、ベース部材(2)を壁面(1a)に吸着固定するための合計4個のマグネットチャック(9)がねじ止等により固着され、このマグネットチャック(9)により、ベース部材(2)は、壁面(1a)に吸着固定されている。
また下部横フレーム(6)の前部中央には、面陳列台(3)の背面下部が当接するようにしたストッパ部(6a)が、上向き突設されている。
【0019】
なお、本実施形態においては、平台(1)の壁面(1a)が鉄板などの磁性体で構成されているので、マグネットチャック(9)の使用が可能であるが、取付対象壁面が、木製などの非磁性体である場合には、他の固定手段として、例えば、両面粘着テープ、ねじ止め等の各種固定手段を採用することが可能である。
【0020】
面陳列台(3)は薄鋼板のプレス成形体であり、平板状の面板部(3a)の上部に、断面後向きコ字形をなして前方に突出する上枠部(3b)と、面板部(3a)の両側部より前向に折曲形成された左右1対の側片(3c)と、面板部(3a)の下端より前向に折曲形成され、かつ書籍類の下端を支持する短寸の受け部(3d)とを備えている。
【0021】
この面陳列台(3)における上枠部(3b)の両側部内面には、左右1対の上部ブラケット(10)が、また面板部(3a)の両側部背面における上下方向の中間部には、左右1対の中間ブラケット(11)が、さらに、面板部(3a)の両側部背面における下端部には、左右1対ののリンク板支持ブラケット(12)が、それぞれスポット溶接等により、固着されている。
各ブラケット(10)(11)の下縁には、図5に示すように、支持ピン(7)に選択的に係合するようにした、倒立U字状またはΩ形の係合孔(10a)(11a)が設けられている。
【0022】
リンク板支持ブラケット(12)には、リンク板(13)一端部が、左右方向を向くピン(14)をもって、回動可能に枢着されている。リンク板(13)の他端部は、ガイド板(8)に形成されたほぼ上下方向を向くガイド溝(8a)に、左右方向を向くピン(14)を介して係合し、このガイド溝(8a)に沿って移動可能である。
【0023】
図2に拡大して示すように、ガイド溝(8a)の下端部には、後下向き傾斜する傾斜溝(8b)が、また同じく中間部には、後上向傾斜する分岐溝(8c)が設けられている。
【0024】
ピン(14)は、図3に拡大して示すように、リンク板(13)の一方の側面に当接した有頭ピン(14a)を、同じく他方の側面から、固定ねじ(14b)をもって螺着することにより、形成されている。
【0025】
図5(a)は、基本状態を示すもので、このとき、上部ブラケット(10)の係合溝(10a)は、壁面(1a)に固定されたベース部材(2)の支持ピン(7)に係合し、リンク板(13)の他端は、真上を向き、その他端部に設けたピン(14)は、ガイド溝(8a)の上端部に位置している。
この状態で、面陳列台(3)は、ベース部材(2)の前面と平行、すなわち垂直をなし、その前面に書籍類をほぼ垂直状態で立て掛けて陳列することができる。
【0026】
この状態から、図5(b)に示すように、面陳列台(3)を、手で前方に引出し、ピン(14)が分岐溝(8c)に到達した後、若干後方に押し戻すことにより、ピン(14)を、分岐溝(8c)の後端に係合させて、面陳列台(3)を所望の後傾角度(θ)をもって、安定して支持することができる。この状態で、図4(a)及び図5(b)に示すように、複数の書籍類を面陳列台(3)に載置して、後傾状態で陳列することができる。
【0027】
平台(1)の高さは、一般的に成人の膝からももまでの高さであり、このままの状態では人が近づいた場合に、目線からはずれるおそれがある。
そこで、さらに目立たせたい場合には、図5(c)に示すように、上部ブラケット(10)を一旦支持ピン(7)より外し、中間ブラケット(11)の係合溝(11a)を支持ピン(7)に掛けなおした上で、リンク板(13)を下向き傾斜させて、ピン(14)を傾斜溝(8b)の下端に係合させる。そうすることによって、面陳列台(3)は、図4(b)及び図5(c)に示すように、図5(b)に示した状態より上方に位置し、かつ上記と同様に、後傾角度(θ)をもって後傾した状態で安定し、来店した顧客などの視野に十分入ることになる。
【0028】
図5(c)に示す姿勢から、さらに面陳列台(3)を大きく後傾させたい場合には、面陳列台(3)の下端部を手前に引き出して、リンク板(13)の下端部を引き上げ、ピン(14)を、図5(d)に示すように、ガイド溝(8a)の分岐溝(8c)の後端に係合させる。そうすることによって、面陳列台(3)は、上記の後傾角度(θ)より大きい後傾角度(θ1)をもって、安定して支持される。
なお、分岐溝を複数設ければ、微細な角度調整を行うことができることは勿論である。
【0029】
以上の説明においては、本発明の実施形態を、書店の店舗入口側に向けて配置された平台(1)の前端部の壁面(1a)に取り付けたものとした。これは、出入口近くに配設することで、注目度が増すこと、及び通常平台の端部壁面は有効利用されていない場合が多く、狭い店舗内の占有面積を大きく取ることなく、陳列に有効活用ができるからである。しかし、本発明はこれだけに限定適用されるものでなく、空き壁面であれば、例えば、陳列棚の側面や室内の壁面等、どのような場所にも取付けることができることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の一実施形態を、平台の前端面に取り付けた状態を示す分解斜視図である。
【図2】図1のA部の拡大図である。
【図3】図1のB部の拡大図である。
【図4】(a)(b)は、高さを異ならせて後傾させた互いに異なる使用状態を示す斜視図である。
【図5】(a)〜(d)は、高さと後傾角度を異ならせた使用状態を示す縦断側面図である。
【符号の説明】
【0031】
(1) 平台
(1a) 壁面
(2) ベース部材
(3) 面陳列台
(3a) 面板部
(3b) 上枠部
(3c) 側片
(3d) 受け部
(4) 縦フレーム
(5) 上部横フレーム
(6) 下部横フレーム
(6a) ストッパ部
(7) 支持ピン
(8) ガイド板
(8a) ガイド溝
(8b) 傾斜溝
(8c) 分岐溝
(9) マグネットチャック
(10) 上部ブラケット
(10a) 係合溝
(11) 中間ブラケット
(11a) 係合溝
(12) リンク板支持ブラケット
(13) リンク板
(14) ピン
(14a) 有頭ピン
(14b) 固定ねじ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平台等の適宜の空き壁面に固定されるベース部材と、該ベース部材の前面に懸架され、かつ下端に、書籍類を支持する短寸の受け部を突設した面板状の面陳列台とを備えることを特徴とする書籍類陳列什器。
【請求項2】
前記面陳列台の背面に、前記ベース部材に設けた取付部に選択的に係合させることにより、前記面陳列台の高さを変更しうるようにした複数のブラケットを、上下方向に離間させて設けたことを特徴とする請求項1記載の書籍類陳列什器。
【請求項3】
前記面陳列台を、後方への傾斜角度変更手段を介して、前記ベース部材に連結したことを特徴とする請求項1または2記載の書籍類陳列什器。
【請求項4】
前記傾斜角度変更手段を、前記ベース部材側に形成された上下方向を向くガイド溝と、前記面陳列台の下部に一端が回動可能に取付けられ、かつ他端が前記ガイド溝に沿って摺動可能かつ回動可能として連結されたリンク板とを備えるものとし、前記ガイド溝から分岐された分岐溝に前記リンク板の他端が係合することにより、前記面陳列台を所望の後傾角度で支持するようにしたことを特徴とする請求項3記載の書籍類陳列什器。
【請求項5】
前記空き壁面を、平台の店舗入口側の端面としたことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の書籍類陳列什器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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