説明

最中の皮の印刷方法

【課題】 最中菓子自体に風景や絵、図形、文字を表示することを可能とし、商品価値の高い最中の皮及び最中菓子を提供する。
【解決手段】 図形、文字等を皮の外面に印刷する最中の皮の印刷方法であって、印刷用インクとして少なくとも3原色の可食インクを使用し、プリンタを用いて最中の皮の外面に、図形、文字等を印刷することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は最中の皮の印刷方法に関し、より詳細には最中の皮の外面に図形あるいは文字等を印刷する最中の皮の印刷方法に関する。
【背景技術】
【0002】
最中菓子は和菓子として古くから親しまれてきている商品であり、最中菓子に用いられる最中の皮には、四角形、楕円形、扇形といった形のものから、花などの自然物や動物をかたどったものなどいろいろな形のものが提供されている。
この最中菓子に用いられる最中の皮は、米の粉をこねて餅状にしたものを型に入れて焼いて形成される。したがって、成形用の型を適宜製作することによって種々の形の最中の皮を作ることができる。また、最中の皮に使用する材料を着色することによって、いろいろに着色された最中の皮を得ることが可能である。
【0003】
また、単色ではなく、最中の皮の一枚の中で複数色に着色する方法として、一般的な食品用着色料(食紅)を用いて着色した餅を複数色用意し、これらの餅を棒状にして、密に並べ、圧延して薄い板状にしたものをチップ状に裁断し、この複数色からなるチップ状の餅を焼成することによって複数色に着色された最中の皮を得ることができる。得られた最中の皮は、複数色で複雑な模様のものとなる。なお、前述した工程で、角形の餅を用いた場合は、餅が重なり合う糊代となる部分が十分に得られないことから、複雑な模様で複数色を有するチップ状の餅が形成できず、したがって複数色で複雑な模様の最中の皮が得られない。
また、食品用着色料を用いて着色した複数色の棒状の餅を縄状に捻り合わせるようにすると、さらに複雑な模様で複数色の最中の皮を作ることが可能になる。
このように、従来方法においても、抽象的なデザインや複雑な模様で複数色に着色された最中の皮を製作することが可能である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、最中の皮は、皮の表面に凹凸を設けて図形を表したり、栗の形や菊の花などをかたどった立体的な形状に形成したりすることができ、最中の皮によっていろいろな形態を表現したり、いろいろに着色して提供することが可能であるが、最中の皮自体による表現には限界がある。したがって、最中菓子の商品としての特徴、あるいは見栄えは、最中菓子を包装する包装袋や包装箱を特徴的にデザインするといったことと合わせて行われている。
これらの最中菓子の包装袋などには、いろいろな図形や文字、絵などが印刷され、きわめて見栄えのよい商品として提供されている。本発明者は、従来の最中菓子では包装袋等においてはすぐれたデザインがなされているのに対して、最中菓子自体では特徴的なデザインがなされていないことに鑑み、最中菓子自体にいろいろな風景や絵、図形、文字等を直接表示し、最中菓子を表現媒体としての機能を発揮させ、従来にない新規な最中菓子とすることで、最中菓子の商品価値を高めることに想到したものである。
【0005】
すなわち、本発明は、従来の最中菓子が、それ自体では多様な表現形態をとり得なかったことに対して、最中菓子自体にいろいろな風景や絵、図形、文字等を直接表示することを可能とし、最中菓子の商品価値を高めることができる最中の皮の印刷方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記目的を達成するため次の構成を備える。
すなわち、図形、文字等を皮の外面に印刷する最中の皮の印刷方法であって、印刷用インクとして少なくとも3原色の可食インクを使用し、プリンタを用いて最中の皮の外面に、図形、文字等を印刷することを特徴とする。
また、印刷用のインクとして、前記3原色とその中間色と黒色とを含む少なくとも7色の基本色の可食インクを使用して印刷することにより、印刷時の可食インクの噴射量を抑えることができ、最中の皮の変質および劣化を抑えて印刷することができる。
また、最中の皮の外面の凹凸状態をセンサにより検知し、該センサの検知結果に基づいて、プリンタのヘッド部と最中の皮との離間距離を制御して印刷することにより、最中の皮の外面に形成された凹凸にならって印刷することが可能になる。プリンタのヘッド部および印刷位置にある最中の皮の少なくとも一方を、互いに対向する向きに可動とし、印刷時にヘッド部と最中の皮との離間間隔を制御して印刷する。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る最中の皮の印刷方法によれば、最中の皮の外面に風景や絵、図柄、文字等が可食インクを用いて直接印刷して提供することができ、従来にない最中菓子として提供することができ、土産品、祝い事用、贈答用等として好適に利用できる商品として提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の好適な実施の形態について添付図面にしたがって詳細に説明する。
図1は、本発明に係る最中の皮の印刷方法を用いて作製した最中菓子10の斜視図を示す。この最中菓子は2枚の最中の皮12、14の間に餡をはさみ、最中の皮12、14を合わせて作られている。本実施形態の最中菓子において特徴的な構成は、最中の皮の外面に直接、風景等の図形を印刷によって表示した点にある。すなわち、通常、最中の皮はその表面に凹凸を形成して図形や文字を表現しているのに対して、本実施形態の最中の皮は、印刷技術を利用して最中の皮の外面にじかに図形等が表示されている。
【0009】
図1に示す最中の皮12、14は平面形状が正方形状をなし、外表面が平坦状に形成されたものである。本実施形態の最中菓子10で印刷が施されているのは上側となる最中の皮12で、皮の外面で平坦状に形成されている領域に印刷が施されている。
最中の皮を被印刷体として風景等の図形、文字を印刷する場合は、紙を被印刷物として図形等を印刷表示する場合にくらべて、最中の皮がポーラス状で非常に吸湿しやすく、水性可食インクを用いて図形等を印刷した際に最中の皮の品質が劣化あるいは変質し、印刷した図形、文字のにじみ、ぼけが生じてしまうという問題と、最中の皮の表面には若干の凹凸があること、また、最中の皮は焼いて作るものであるため、僅かずつ形状にばらつきがあり、これによってプリンタのヘッド部と最中の皮の外面との離間間隔にばらつきが生じ、これが精細な図形等を印刷した際に図形等のにじみ、ぼけとなってあらわれるという問題がある。
【0010】
最中の皮に図形等を印刷によって表示する方法として、本実施形態では、インクジェットプリンタを用いて最中の皮の外表面に印刷する方法によった。
通常、紙等を被印刷物として図形、文字等を印刷する場合は、印刷用のインクを用いて印刷するが、本実施形態では、印刷用のインクに代えてインクジェットプリンタの印刷に使用できる水性可食インクを使用する。
これらの水性可食インクには青、赤、黄色等の種々の色が用意されており、これらの水性可食インクを使用することにより、印刷用インクを使用した場合とまったく同様に、種々の図形をカラー表示することが可能になる。水性可食インクであるから最中菓子を食する際に問題となることはない。
【0011】
図3はインクジェットプリンタを用いて最中の皮12に図形等を印刷する装置の主要部の構成を示す説明図である。
同図で30は最中の皮12を各々フック30aに支持して鉛直方向に収納するストッカー部である。32はストッカー部30の最下段に支持されている最中の皮12の側方に配置されたプッシャである。このプッシャ32は印刷終了後の最中の皮12をストッカー部30から横方向に突き出し、シュータ34から収納トレイに収納する作用をなす。プッシャ32によって最中の皮12を突き出す際にフック30aが開放し、各段の最中の皮12が1段降下する。ストッカー部30の最下段の最中の皮12は、ストッパ31によって外周縁部が支持され、印刷領域が下方に開放して支持される。
【0012】
36は最中の皮12に対向して配置されているヘッド部である。ヘッド部36には最中の皮12とヘッド部36との離間間隔を検知するセンサ40が設けられている。
42はヘッド部36を最中の皮12に対して進退動させる際のガイドブロック、44はセンサ40の検知結果に基づいてヘッド部36の進退動位置を制御する制御部である。46はガイドブロック42を送り方向にガイドするガイドバーであり、48はガイドブロック42の送り位置を制御する制御部である。ガイドバー46はベースフレーム50に対して水平方向に可動的に支持され、制御部52によりベースフレーム50に対する水平移動位置が制御される。54a、54b、54c、54dは水性可食インクの供給部である。本実施形態では赤、青、黄色の3原色と黒色の4色の水性可食インクを使用した。
【0013】
ガイドブロック42すなわちヘッド部36は、制御部48および制御部52によって水平面内におけるX−Y方向での移動位置が制御され、ガイドブロック42上におけるヘッド部36の進退位置が制御部44によって制御され、最中の皮12の印刷領域内の所定位置に移動制御される。
センサ40はプリント(印刷)を行っている段階で、ヘッド部36が左方から右方、あるいは右方から左方に移動し印刷をしながら最中の皮12の表面とヘッド部36との離間間隔を検知し、制御部44はその検知結果に基づいてヘッド部36と最中の皮12の印刷面との離間間隔が常に一定になるようにヘッド部36の進退位置を制御する。
【0014】
なお、ヘッド部36と最中の皮12との離間距離を制御する方法として、ヘッド部36をX−Y方向でのみ移動可能とし、前述したセンサ40によるヘッド部36との離間間隔の検知結果にしたがって最中の皮12の支持位置を上下方向に移動して制御することも可能である。たとえば、最中の皮12をトレイに支持して印刷位置に最中の皮12を供給するような場合に、トレイを上下方向に可動とし、トレイの高さ位置を制御することによってヘッド部36と最中の皮12との離間間隔が一定になるように制御することができる。
【0015】
さらに、最中の皮によっては、俵あるいは野菜などの形を実際の物と同様に立体的に表現したものがある。このような最中の皮の場合には、センサ40によって最中の皮の印刷領域を常に検知し、最中の皮を支持するトレイをヘッド部36と連動させて軸線の回りで回転させることにより、ヘッド部36と最中の皮との離間間隔を均一とし、かつ最中の皮の印刷領域とヘッド部36とを常に対向させた状態として印刷することによって、精細な印刷を施すことができる。この方法によれば、外面が平坦状に形成された最中の皮に限らず、円柱形や多角柱形等の立体的な形態を有する最中の皮であっても、正確に精細かつ精密な印刷が可能になる。
【0016】
前述したように、最中の皮12はひとつひとつの形状が僅かながらばらついている。センサ40を使用して最中の皮12の表面とヘッド部36との離間間隔が一定になるように制御することによって、最中の皮12の表面形状がばらついたり、最中の皮12の表面に凹凸が形成されて立体的な形状が外面にあらわれているような場合でも、正確に最中の皮12の表面に図形あるいは文字等を印刷することが可能になる。インクジェットプリンタの場合には、ヘッド部36と被印刷面との離間間隔がばらつくと被印刷面における印刷状態のにじみ、ボケが生じるためである。
【0017】
本実施形態では、一例として、最中の皮12として印刷面が平坦状のものを使用しているが、最中の皮の印刷面に凹凸が形成されているような場合、立体的な形状が外面にあらわれている最中の皮のような場合にもヘッド部36と最中の皮12との離間間隔を制御して印刷することにより写真のような精細な図形であっても精密に正確に表現することが可能になる。最中の皮の外面に凹凸で図形が表されているような場合に、凹凸の図形に合わせて印刷を施すことによって、さらに見栄えの良い商品として提供することが可能になる。
【0018】
最中の皮にインクジェットプリンタを用いて図形や文字等を印刷して表示する際に最も問題となるのは、最中の皮が水分を嫌うことである。したがって、水性可食インクを用いてインクジェットプリンタにより最中の皮に印刷する場合には、できるだけ最中の皮に噴射させる水性可食インクの量を減らす必要がある。
水性可食インクの量を減らす方法としては、インクジェットプリンタから噴射する水性可食インクのインク量を抑えるように調節する方法ももちろん有効であるが、インクの噴射量を抑えるようにすると精密な印刷ができなくなるという不利があり、水性可食インクの噴射量を減らす方法として最も有効な方法は、水性可食インクのインク色数を増やす方法である。
【0019】
カラー表示用としては、赤、青、黄色の3原色のインクがあれば可能である。しかしながら、この赤、青、黄色の3原色に、中間色として薄赤色、薄青色、薄黄色および黒色を加えた、7色を基本色とする7種の水性可食インクを使用することによって、水性可食インクの噴射量を効果的に減らすことが可能になる。インク色が3色の場合には、中間色のカラー表示をするために各々のインクを重ねて噴射する必要があり、結果的に噴射する(合計)インク量は多くなる。それに対し基本色のインク色が多くなると各々のインクを重ねて噴射する量(割合)を減らすことができるからである。実際に、上記の基本色とした7色の水性可食インクを用いて最中の皮に印刷を施したところ、最中の皮の品質の劣化や変質を生じさせることなく、3色の水性可食インクを使用した場合にくらべて明瞭な印刷を施すことができた。
【0020】
また、水性可食インクを噴射することによって最中の皮の品質の劣化や変質を生じさせたりすることを防止する方法として、最中の皮をあらかじめ加温しておいて印刷する方法も有効である。すなわち、ヘッド部36から水性可食インクを噴射する際に、最中の皮をあらかじめ温めた状態で印刷を行うとよい。本実施形態では、ストッカー部30にヒータを設けておき、最中の皮12がストッカー部30の上部から印刷位置まで移動する際に、50℃程度に加温されるようにし、最中の皮12が加温された状態で印刷を施すようにした。これによって、印刷時に最中の皮12の品質の劣化や変質を生じさせることがなく、いわゆる最中の皮が「かぜをひいた」状態にならずに確実に印刷することが可能になる。
【0021】
なお、上記実施形態の印刷装置では、最中の皮12をストッカー部30から印刷位置に移動させて印刷する方法によって行っているが、より量産可能な方法として、平面状のトレイに縦横に多数枚の最中の皮を配列しておき、トレイを一方向に動かしながら、インクジェットプリンタで一度に複数枚の最中の皮に印刷するといった構成とすることも可能である。このような印刷方法による場合も、前述した黒色を含む7種の基本色の水性可食インクを用いて印刷する方法や、トレイ上で最中の皮を50℃程度に加熱し、印刷位置では加温された状態の最中の皮に印刷する方法が有効に利用できる。
【0022】
なお、最中の皮の外面にインクジェットプリンタを用いて図形等を印刷する際に、印刷する図形あるいは文字等が最中の皮の地色と近似している等によって、図形等が明瞭に印刷されない場合には、最中の皮の外面の印刷領域に背景色となる色をあらかじめ下地色として印刷しておき、この下地色の上にプリンタで図形等を印刷するようにするとよい。下地色を印刷する方法の他に、最中の皮に下地となる色をコーティングしてから印刷することも可能である。図1では、16が下地色を設けた領域であり、一例として下地色を白色のぼかし状に印刷してその上に図形を印刷した。
【0023】
図2は、最中の皮の外面に図形を印刷した最中菓子10を包装箱20に詰めた状態を示す。最中の皮の外面に図形等を印刷して表示する方法であれば、最中の皮の形状に制限されることなく、任意の図形(風景、建造物、文字等)を印刷できるから、たとえば、風景を四季ごとに表現するといったことも可能であり、きわめて見栄えのよい新規な商品として提供することが可能となる。
最中の皮の外面に風景等を表示することから、最中菓子10に印刷されている図形が外部から見えるように、少なくとも印刷された図形部分については透明な包装袋を用いて最中菓子10を包装するのがよい。また、包装箱20に最中菓子10を詰めた状態で包装箱20の全体を透明な包装袋を用いて密封し、あるいは包装箱の蓋を透明な包装資材によって形成し、最中菓子10が外部から見えるようにして密封包装することも有効である。
【0024】
このように、最中の皮に風景や絵、図形等を印刷して表示する方法であれば、観光地の風景やお祝い事にふさわしい絵、図形等を任意に表現できるという利点がある。また、前述したインクジェットプリンタを用いて風景や図形等を表現する方法は、スキャナーやデジタルカメラといった電子機器を用いて図形、写真等を電子データに変換して印刷するから、きわめて多様な印刷が可能であり、写真のような精細かつ精密な図形であっても容易にかつ確実に印刷して表示することが可能である。これによって従来の最中菓子にはない新規な商品として提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の最中の皮の印刷方法によって形成した最中菓子の一実施形態を示す斜視図である。
【図2】最中菓子を包装箱に詰めた状態を示す説明図である。
【図3】最中の皮に図形等を印刷する印刷装置の概略構成を示す説明図である。
【符号の説明】
【0026】
10 最中菓子
12、14 最中の皮
20 包装箱
30 ストッカー部
31 ストッパ
32 プッシャ
34 シュータ
36 ヘッド部
40 センサ
44、48,52 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
図形、文字等を皮の外面に印刷する最中の皮の印刷方法であって、
印刷用インクとして少なくとも3原色の可食インクを使用し、
プリンタを用いて最中の皮の外面に、図形、文字等を印刷することを特徴とする最中の皮の印刷方法。
【請求項2】
印刷用のインクとして、前記3原色とその中間色と黒色とを含む少なくとも7色の基本色の可食インクを使用して印刷することを特徴とする請求項1記載の最中の皮の印刷方法。
【請求項3】
最中の皮の外面の凹凸状態をセンサにより検知し、
該センサの検知結果に基づいて、プリンタのヘッド部と最中の皮との離間間隔を制御して印刷することを特徴とする請求項1または2記載の最中の皮の印刷方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−180881(P2006−180881A)
【公開日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−14108(P2006−14108)
【出願日】平成18年1月23日(2006.1.23)
【分割の表示】特願2004−344005(P2004−344005)の分割
【原出願日】平成16年11月29日(2004.11.29)
【出願人】(397055436)
【Fターム(参考)】