説明

最小微分群遅延の調整可能分散補償器

【課題】光システム内で分散補償を実現する方法およびシステムを提供する。
【解決手段】調整可能チャープ・ファイバ・ブラッグ格子が接続された少なくとも1つの経路が光システム内に結合され、そのような各格子がそれぞれの調整可能な量の分散を与える。そのような各格子に対するそれぞれの経路中に少なくとも1つのそれぞれのDGD要素が接続される。所与の経路中のこのようなそれぞれのDGD要素すべてからなる組が、格子の少なくとも1つの調整値に対して、格子によって導入される微分群遅延とほぼ等しい絶対値を有するバイアス微分群遅延DGD(bias)を導入する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に光ファイバのデバイスおよび方法に関し、詳細には、光伝送リンク内で最小微分群遅延の調整可能な分散補償を実現する改善されたシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本特許出願は、2008年1月17日出願の米国特許仮出願第61/021769号(整理番号Bubel 1−19−1−1−27)及び2009年1月11日出願の米国特許出願第12/351843号の優先権の利益を主張する。
【0003】
光ファイバ伝送システムの開発における継続的な問題は色分散である。光ファイバにより、波長に依存するある量の時間遅延が伝送データ中に導入される。波長に依存する関数の傾斜の大きさは、伝送線の長さに伴い増加する。現在の光ファイバ伝送システムでは、光ファイバを使用して異なる波長でデータを数百キロメートル、さらには数千キロメートルもの距離にわたって伝送することが可能である。適切な分散補償なしでは、色分散が、それぞれ異なる波長を有する各信号の到着時間に許容できない大きな差異をもたらすことがある。
【0004】
分散補償器は、波長に依存する遅延の相殺を光伝送リンク中に導入することによって分散の問題に対処し、それによって到着時間の差異が許容できる小さなレベルにまで低減する。分散補償を行うのに使用できる光デバイスの1つは、チャープ・ファイバ・ブラッグ格子(CFBG)である。例えば、Eggleton他、「Integrated Tunable Fiber Gratings for Dispersion Management in High−Bit Rate Systems」(Journal of Lightwave Technology、Vol.18、第1418頁以下、(2000))を参照されたい。
【0005】
ブラッグ格子は、高輝度紫外線光源を使用して光ファイバのセグメントの屈折率に周期的な一連の変化を「書き込む」ことによって形成される。特定の書込み方式を使用することによって、屈折が変わる一連の領域をつくり出すことが可能であり、そのそれぞれが、ある波長に特定的な誘電体ミラーとして機能し、これは、特定の波長の光はファイバ・セグメントの長さ方向に後方へ反射するが、他の波長の光は通過させる。「チャープ」ファイバ・ブラッグ格子(CFBG)が分散補償器として使用されることがある。CFBGでは、波長反射率と、屈折が変わる各領域間の間隔とが、光データ信号中に負の分散を導入するように選択され、それによって、色分散により引き起こされる到達時間の差異が大幅に低減され、あるいはなくなる。
【0006】
CFBGは一般に、ある量の複屈折を示す。この複屈折により、CFGBからの光応答は、ある量の偏波モード分散(PMD)を示す。光伝送リンク内にPMDが存在すると偏波依存遅延が導入され、それにより、偏波がそれぞれ異なる信号は、異なる時間に宛先点に到着することになる。本明細書では、「偏波モード分散」(または「PMD」)という用語は、到着時間に差異を生じさせる物理的現象を指す。この現象を定量化したものを本明細書では「微分群遅延」(または「DGD」)と呼ぶ。
【0007】
分散Dおよび複屈折Bを有し所与の波長λ(例えば1550nm)で動作する格子の最も簡単な場合では、格子は一次PMDを示し、これは、2つの偏波の主状態(PSP)間の微分群遅延(DGD)の、次式で表すことができる値の単一値によって特徴付けられる。

DGD=BDλ (1)
【0008】
所与のCFBGのDGDは、ある固定量の反対符号付きDGDを伝送リンク中に導入する要素をCFBGに接続することによって低減できることが知られている。例えば、Strasser他の米国特許第6137924号(以下では「924特許」と呼ぶ)を参照されたい。同特許では、スタティックCFBGへの光経路中に偏波面維持ファイバ(PMF)のセグメントを追加することによってDGDをなくす技法を開示している。PMFセグメントによって導入されるDGDの量は、その長さにより変化する。
【0009】
さらに当技術分野では、分散値の範囲にわたって調整可能なCFBGが知られている。調整は、例えば、勾配を正確に制御できる熱または歪み成分をCFBGに加えることを含む、いくつかの方法で実現することができる。さらに、より広い、またはより対称的な調整範囲を実現するために、2つ以上のCFBGを連結することが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許仮出願第61/021769号
【特許文献2】米国特許第6137924号
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Eggleton他、「Integrated Tunable Fiber Gratings for Dispersion Management in High−Bit Rate Systems」(Journal of Lightwave Technology、vol.18、第1418頁以下、(2000))
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
924特許に開示されているものなど、現在の技法は、固定DGD要素をスタティック(すなわち調整可能ではない)CFBGと組み合わせて使用することに向けられている。これらの技法は、その簡単さ故に魅力的であるが、1つまたは複数の調整可能格子を有する分散補償器にそれをどのように適用するかは知られていない。調整可能CFBGではDGDが、調整された分散の関数として変化する。したがって、調整可能格子と組み合わせてPMD補償を行うように固定DGD要素が使用される場合、固定DGD要素では、最善でもDGDを調整可能CFBGの1つの特定の設定でしか最小にできないことが理解されよう。他の設定ではいくらかのDGDが常に生じる。そのため、CFBGにおいて、その調整範囲全体にわたってDGDの最小値を実現する手段が必要とされている。
【0013】
2つ以上の格子が連結される場合では別の問題が起こる。そうした場合では、総分散に同一の値が得られる多くの調整電圧がある。したがって、効果的なDGD最小化技法は、様々な調整軌跡を考慮に入れなければならない。また、特定の調整軌跡が、例えば電力消費について考慮すべき事項などによって指示されることもある。この場合には、所与の調整軌跡に沿って最小DGDを実現するようにデバイスを構築する手段が必要になる。
【課題を解決するための手段】
【0014】
従来技術の上記およびその他の問題は、本発明によって対処され、その一態様では、光システム内で分散補償を実現する方法およびシステムを提供する。調整可能チャープ・ファイバ・ブラッグ格子が接続された少なくとも1つの経路が光システム内に結合され、このような各格子がそれぞれの調整可能な量の分散を与える。少なくとも1つのそれぞれのDGD要素は、そのような各格子のそれぞれの経路中に接続される。所与の経路中のこのようなそれぞれのDGD要素すべてからなる組は、格子の少なくとも1つの調整値に対して、格子によって導入される微分群遅延とほぼ等しい絶対値を有するバイアス微分群遅延DGD(bias)を導入する。
【0015】
本発明の別に記載の態様では、複数の格子、DGD要素、およびそれらへのそれぞれの経路がリンクに結合された光リンク中で調整可能分散補償を実現する方法およびシステムを対象とする。
【0016】
本発明のさらなる特徴および利点は、以下の詳細な説明および添付の図面を参照すれば明らかになろう。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1の態様による最小DGDの調整可能分散補償器の図である。
【図2】図1に示された調整可能分散補償器においてDGDを最小にする、本発明による技法を示すグラフである。
【図3】本発明の別の一態様による、複数の調整可能格子を有する調整可能分散補償器の図である。
【図4】図3に示された分散補償器の調整空間を示すグラフである。
【図5】本発明の別の一態様と組み合わせて使用される低電力調整軌跡を示すグラフである。
【図6】本発明の記載の態様による一般的な一技法を示す流れ図である。
【図7】本発明の記載の態様による一般的な一技法を示す流れ図である。
【図8】本発明の記載の態様による一般的な一技法を示す流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
上記およびその他の問題は本発明によって対処され、その諸態様では、調整可能格子の動作範囲全体にわたり最小DGDの分散補償を実現するためのシステムおよび方法を対象とし、あるいは調整可能チャープ・ファイバ・ブラッグ格子およびDGD要素を使用することを対象とする。
【0019】
本発明を、下記および添付の図面で示したいくつかの異なる例に関して説明する。本例は、限定的ではなく例示的なものであり、本明細書で主張するように、本発明は、記載例の改変形態に関して、ならびに本明細書には明確に記載されていない構造に関しても実施できることが理解されよう。
【0020】
図1は、本発明の第1の態様による、最小DGDの調整可能分散補償器(「TDC」)10の図を示す。TDC 10は、光データ信号を受け取る入力ファイバ12を含む。入力ファイバ12は、サーキュレータ14の第1ポート、または他の適切な結合デバイスに接続される。サーキュレータ14は、番号が付けられた3つのポートを有する光デバイスである。サーキュレータの第1ポートで受け取られた入力は、サーキュレータの第2ポートに伝送され、そこで、第2ポートに接続された光デバイスへの出力として供給される。同様に、第2ポートで受け取られた入力は、サーキュレータの第3ポートに伝送され、そこで出力として供給される。
【0021】
図1に示されるように、サーキュレータ14の第2ポートに、調整可能CFBG 20までの経路18を含むサブシステム16が接続される。経路18中にはDGD要素22が結合される。
【0022】
データ信号は、サーキュレータ・ポートを通って光サブシステム16に入り、DGD要素22を通過してから調整可能CFBG 20に入る。CFBG 20は、分散補償器として機能するいくつかの波長感応リフレクタ領域を含む。分散補償された信号は反射されて戻りDGD要素22を通ってサーキュレータ14中に戻る。次にサーキュレータ14は、分散補償された信号をその第3ポートまで伝送し、信号はそこから出力ファイバ24中に供給される。
【0023】
上記のように、調整可能CFBG 20は、分散に依存する量のDGDをデータ信号中に導入する。DGD要素22は、CFBG 20によって導入されるDGDを補償する量の反対符号付きDGDをデータ信号中に導入する。図1から、光データ信号がDGD要素22を2回通過することが理解されよう。したがって、調整されていない状態のCFBGによって導入されるある特定の量XのDGDを補償するために、DGD要素は、X/2のDGD、すなわちCFBGによって導入されるDGDの半分を反対符号付きで導入する。
【0024】
本説明を簡単にするために、DGD要素によって導入されるDGDについての言及があるときはいつも、言及が、DGD要素によってCFBGへの経路中に導入される総DGD、すなわち両方向のDGDの合計について行われているものと理解されたい。
【0025】
上述のように、DGD要素22は、偏波面維持ファイバ(PMF)のセグメントを使用して適切に実施することができる。このようなファイバは高い複屈折を有し、PMFのセグメントは、伝送における特定のDGDをセグメントの長さの関数として生じる。したがって、所望の量の反対符号付きDGDは、適切な長さのDGD要素を選択することによって得ることができる。DGD要素は、複屈折の結晶などを含む他のタイプの光デバイス、またはデバイスの組合せを使用しても実施できることに注意されたい。あるいは、DGD要素は、DGDの最小値と最大値の間で調整可能とすることもできる。
【0026】
上述のように、固定DGD要素を使用して、スタティック(すなわち調整可能ではない)CFBGにより導入されるDGDを補償することが知られている。しかし、調整可能なCFBGを用いると、調整された分散によりDGD量が変化する。DGD要素22が、ある固定量のDGDを伝送線中に導入し、調整可能なCFBGが、ある不定量のDGDを伝送線中に導入するものとすると、DGD要素が、最善でもデータ信号内のDGDをCFBGの動作範囲内の1つの設定でしか除去できず、CFBGの動作範囲内の他の設定ではいくらかのDGDが存在することになることが明らかであろう。
【0027】
その場合、対処すべき問題は、(1)CFBGの動作範囲全体にわたって総DGDを最小にする固定DGD要素によって導入されるべき、反対符号付きDGDの総量に見合う値をどのようにして選択するか、および(2)そのようにして総DGDが最小化された後で、総DGDの最大量をどのようにして定量化するか、である。
【0028】
図2は、原寸に比例して描かれていないが、本発明の一態様によるDGD最小化の手法を説明するグラフ30を示す。上述のように、調整可能CFBGはその動作範囲内で、便宜上ここに再掲した式(1)による1次PMDを示す。
【数1】

ここでBはCFBG複屈折、Dは調整された分散、λは信号波長(例えば1550nm)である。
【0029】
(min)およびD(max)は、それぞれCFBGの動作範囲の下限および上限と定義され、ΔDは、D(min)とD(max)間の間隔と定義されている。したがって、
【数2】

【0030】
DGD(FBG)は、CFBGによって導入されるDGDの量と定義され、グラフ30に上の線32で示されている。式(1)と(2)を組み合わせると次の関係が得られる。
【数3】

【0031】
上述のように、PMFセグメントなどのDGD要素は、反対符号付きDGDを伝送線中に導入してDGD(FBG)を補償する。この反対符号付きDGDを本明細書でDGD(bias)と呼ぶ。CFBGとDGD要素を合わせた総DGDは、本明細書でDGD(total)と呼び、次式で表すことができる。
【数4】

【0032】
式(1)と(4)を組み合わせると次式が得られる。
【数5】

【0033】
本明細書では、D(midpoint)はD(min)とD(max)の中間と定義されている。したがって、
【数6】

および
【数7】

である。
【0034】
図2で、D=D(midpoint)であるとき、あるいは
【数8】

または
【数9】

であるときのDGD(FBG)の量と等しいDGD(bias)を導入するDGD要素を選択することによって、CFBGの動作範囲全体にわたってDGD(total)を最小にできることが理解されよう。
【0035】
すなわち、
【数10】

である。
【0036】
図2で、下のグラフ線34は、DGD(bias)がB・D(midpoint)・λと等しい場合のDGD(total)を示す。図2に示すように、DGD(bias)をこのように設定することにより、線32が下方に移動して、線34の中間点でx軸と交差する。
【0037】
DGD(total)は、D(midpoint)でゼロになり、DがD(midpoint)から離れてD(min)に向かって移動するにつれ、またD(max)に向かって移動するにつれ大きくなることが理解されよう。さらに、DGD(min)でのDGD(total)の絶対値と、DGD(max)でのDGD(total)の絶対値とが互いに等しいことも理解されよう。
【0038】
したがって、図2で示されるように、調整範囲全体にわたって最大のDGD(total)は次式となる。
【数11】

【0039】
本発明の別の一態様では、許容できる程度にDGDが小さい調整可能分散補償を実現するための、より一般的な技法を提供する。図1に関して上述したように、DGD要素は、サブシステム経路中に相殺微分群遅延DGD(bias)を導入する。一般的な技法では、DGD(bias)は、CFBGの少なくとも1つの調整値に対して、CFBGによって導入されるDGDの絶対値とほぼ等しい絶対値を有するように選択される。その調整値では、格子およびDGD要素によって導入される総合微分群遅延DGD(total)がほぼゼロに等しくなる。
【0040】
図3は、連結された1対の調整可能格子CFBG1およびCFBG2によって分散補償が行われる、本発明のもう1つの態様による最小DGDの例示的な分散補償器50の図を示す。
【0041】
分散補償器50は、光データ信号を搬送する光ファイバ入力部52を含む。入力ファイバ52は、4ポート・サーキュレータ54の第1ポート、または他の適切な結合デバイスに接続される。DGD要素DGD1および第1のチャープ・ファイバ・ブラッグ格子CFBG1が接続された第1の経路58を含む第1のサブシステム56が、サーキュレータの第2ポートに接続され、第2のDGD要素DGD2および第2のチャープ・ファイバ・ブラッグ格子CFBG2が接続された第2の経路62を含む第2のサブシステム60が、サーキュレータの第3ポートに接続される。出力ファイバ64がサーキュレータの第4ポートに接続される。
【0042】
光信号は、入力ファイバ52を通ってサーキュレータの第1ポート内に伝わり、サーキュレータの第2ポートから出て経路58に沿って第1のサブシステム56内に伝わる。第1のサブシステム56では、信号はDGD1を介してCFBG1中に進み、CFBG1は、この信号を反射して戻し、DGD1を介してサーキュレータの第2ポート内に戻す。次に、サーキュレータ54は、信号をその第3ポートまで伝送し、信号はそこから第2のサブシステム60内に供給される。第2のサブシステム60では、信号は経路62に沿ってDGD2を通りCFBG2中に進み、CFBG2は、この信号を反射して戻し、DGD2を介してサーキュレータの第3ポート内に戻す。サーキュレータは信号をその第4ポートまで伝送し、信号はそこから出力ファイバ64中に供給される。
【0043】
サブシステム56および60は、前述の図1の分散補償器10内のサブシステム16と同じように機能する。格子CFBG1およびCFBG2は、色分散補償を行う。各格子CFBG1およびCFBG2は、それぞれ複屈折B1およびB2を有し、したがって、分散に依存する量のDGDを導入する。すなわち、
【数12】

および
【数13】

であり、要素DGD1およびDGD2は、DGD(FBG1)およびDGD(FBG2)に対して反対に符号が付けられた、それぞれの量の微分群遅延DGD1(bias)およびDGD2(bias)を与える。
【0044】
図4は、格子CFBG1およびCFBG2の例示的な調整空間102を示すグラフ100である。グラフ100では、y軸を用いて格子CFBG1の分散D1を示し、x軸を用いて格子CFBG2の分散D2を示す。グラフ100に示すように、CFBG1の動作範囲はD1(min)からD1(max)にまで及び、CFBG2の動作範囲はD2(min)からD2(max)にまで及ぶ。D1(max)とD1(min)間の間隔はΔD1であり、D2(max)とD2(min)間の間隔はΔD2である。
【0045】
図4に示したように、連結された2つの格子の場合では、最小DGD(total)を得るための調整軌跡はもはやただ1つではない。長方形の調整領域102は、D1(min)とD1(max)間、およびD2(min)とD2(max)間でそれぞれ調整された格子CFBG1およびCFBG2に対して可能なすべての調整点を含む。線104は、1つの可能な調整軌跡の一例を示す。
【0046】
調整領域102内の斜線106は総分散D(total)の様々な値を表し、この総分散は2つの格子それぞれの分散の合計になり、
【数14】

である。
【0047】
図1に示した単一CFBGの調整可能分散補償器に関する説明はまた、図3に示した2連CFBGの調整可能分散補償器内の各個別サブシステム56、58にも当てはまる。
【0048】
ある特定の調整軌跡について、それが長方形調整空間102の内部に含まれること以外は何も分かっていないと想定して、DGD(total)を最小化すること、およびMax{DGD(total)}を定量化することが可能である。両方の格子の合計では、任意のバイアス点に対する最大DGDは次式となる。
【数15】

【0049】
破線は、そのCFBGに対してDGD(total)がゼロになる色分散値を表す。前の説明をサブシステム56および58に当てはめると、格子CFBG1およびCFBG2のそれぞれが、そのそれぞれの動作範囲の中間点D1(midpoint)およびD2(midpoint)で総DGDがゼロになるようにバイアスされた場合に、DGD(total tow gratings)が最小化されることが理解されよう。
【0050】
この方法は、どんな軌跡も可能にするので有利であるが、それが唯一の可能性ではない。図5は、調整空間122を調整軌跡124が横切るグラフ120であり、低電力消費を達成するために熱TDCを通常この調整軌跡に従って動作させる。軌跡124は、以下で「点A」と呼ぶ点(D2(min)、D1(min))から始まる。次に、D1はD1(min)からD1(max)まで増加していくが、D2はD2(min)のままである。以下で「点B」と呼ぶ点(D2(min)、D1(max))から、D1はD(max)に維持され、今度はD2がD2(min)からD2(max)まで増加していく。調整軌跡は、以下で「点C」と呼ぶ点(D2(max)、D1(max))で終わる。
【0051】
この場合には、中間点でバイアスする必要がない。実際、DGD(bias)が設定される場合、D1(max)ではDGD(total FBG1)=0になり、D2(min)ではDGD(total FBG2)=0になる。その場合、次式となることが理解されよう。
【数16】

および
【数17】

【0052】
点Aで、格子CFGB2によって与えられるDGDは0から始まり、格子CFBG1によって与えられるDGDはB1・ΔD1・λから始まる。調整軌跡が点Aから点Bまで上向きに進むとき、格子CFGB2によって与えられるDGDは0のままであり、格子CFBG1によって与えられるDGDは0へと減少する。したがって、点Bでは、両方の格子によって与えられるDGDの合計量が0になる。
【0053】
調整軌跡が点Bから点Cまで左から右に進むとき、CFBG1によって与えられるDGDの量は0のままであるが、CFBG2によって与えられるDGDは、その最大値へと増加する。点Cでは、両方の格子によって与えられるDGDの合計量がB2・ΔD2・λになる。
【0054】
この関係は次式で表される。
【数18】

【0055】
一般に、2つの格子がΔD1=ΔD2およびB1=B2のように一致する場合には、Max{DGD}はどちらの場合でも同じで次式となる。
【数19】

【0056】
したがって、総DGDは、この特定の調整軌跡を用いて2連CFBGの調整可能分散補償器内で、CFBG1をその最大分散値に調整することによって、またCFBG2がその最小分散値に調整されて、最小化することができる。各格子には、調整された各格子によって生成されるDGDのそれぞれの量を補償するそれぞれのDGD要素が設けられる。より一般的には、電力消費を最小にするどの調整軌跡についても、例えば一度に1つだけ格子を調整することによって、総DGDは、格子の電力消費もまた最小化されている調整状態の所与の格子に対し最小化されるはずである。理想的には、総DGDと電力消費の両方が同時にゼロになるはずである。その場合、総DGDは、他の1つまたは複数の格子が調整されている限り、電力消費が増加するときだけ増加する。
【0057】
上記の技法では、正しいバイアス点でDGDがゼロであることを確実にするために、DGDの能動監視が必要なことがある。能動監視をしないでDGDを最小化できることもまた望ましい。
【0058】
本発明の他の一態様によれば、DGD(bias)またはB・D(midpoint)・λが高い精度では分からず、また測定されない場合でも、上記のDGD(max total)の理論最小値にかなり近づくことが可能である。
【0059】
次式の関係が調整領域の左上の四半分で満足されなければならない。
【数20】

【0060】
すなわち、次式が当てはまらなければならない。
【数21】

および
【数22】

【0061】
したがって、B・D・λおよびDGD(bias)が正確に知られていないとしても、それにもかかわらず、DGD(total FBG1)がその動作範囲の上半分内のある点でゼロであり、DGD(total FBG2)がその動作範囲の下半分内のある点でゼロであることを確実にすることによって、DGDを著しく低減することが可能である。その場合、2つの格子CFBG1とCFBG2に対する最大総DGDは次式となる。
【数23】

【0062】
図5は、調整空間の一例にすぎない。一般に、他の調整空間についてDGDを低減するには以下のことが必要になる。すなわち、DGDは、所与の調整電圧が固定されていて別の調整電圧が調整されるときには、その最大値の半分未満でなければならない。特別な場合として、電力消費を最小化する調整軌跡の場合を再び考えてみる。所与の電圧(図3のV1またはV2)が低電力消費状態に固定されているとき、DGD要素は、格子にDGD要素を加えた総DGDが、その調整時の最大値の半分未満になるように選択されなければならない。
【0063】
さらに、連結された調整可能CFBGにDGD要素を加えた所与の組合せに対するDGD(bias)またはBD(midopoint)・λが分かっていない場合には、経路全体に沿って最大DGD(total)を最小にする調整軌跡を見出すことによってDGDを最小化することも可能である。すなわち、デバイスをこの曲線上で調整して、DGD(total)の最小上限を得ることができる。
【0064】
図3〜5に関して上述した技法を拡張して、3つ以上のCFBGを含む分散補償器に適用できることに注意されたい。その場合には、図4及び図5に示した調整空間は、追加のCFBGに対応する追加の次元を有する。
【0065】
DGD要素に対して格子が適正に位置合わせられる必要があることに注意されたい。この位置合わせは、接続する前にファイバを回転させながら能動的にDGDを監視することによって実現することができる。別法としてそれを、書込みプロセスによって導入されCFBGに位置合わせされる複屈折軸が分かるように、書込み中にCFBGに印を付けることによって実現することもできる。OFSから入手可能なTruePhaseファイバなど、軸もまた容易に観察できるPMFを使用することもまた可能である。
【0066】
図6〜8は、本発明の上述の諸態様に応じた技法例の一連の流れ図である。示された技法およびその要素が例示的なものであること、および本明細書に記載の本発明がこれらの要素の改変またはそれらの組合せを含む技法を用いて実施できることを理解されよう。
【0067】
図6は技法200を示す流れ図であり、以下を含む。
【0068】
ボックス201:光伝送リンク内。
【0069】
ボックス202:少なくとも1つの調整可能チャープ・ファイバ・ブラッグ格子とそこへの経路とが結合され、格子が、リンクによって搬送される光伝送での分散を補償するための調整可能な量の分散Dを与え、格子が、Dの関数として変化する微分群遅延DGDをリンク内に導入する。
【0070】
ボックス203:格子への経路中に、相殺微分群遅延DGD(bias)を経路中に導入するDGD要素が接続され、DGD(bias)が、格子の少なくとも1つの調整値に対して、格子によって導入されるDGDの絶対値とほぼ等しい絶対値を有する。
【0071】
ボックス204:それによって、その調整値では、格子とDGD要素によって導入される総合微分群遅延DGD(total)がゼロにほぼ等しくなる。
【0072】
前述のように、図6の技法200は、いくつかの追加要素を含むことによって改変することができる。
【0073】
1つの改変技法では、格子は、最小値D(min)から、D(min)よりもΔD大きい最大値D(max)にまで及ぶ動作範囲内で調整可能であり、この格子が、伝送リンク内に、D(min)とD(max)間の中間の中間点分散D(midpoint)に対応する中間点微分群遅延DGD(midpoint)を導入し、DGD要素によって格子経路中に導入される微分群遅延DGD(bias)が、DGD(midpoint)の絶対値とほぼ等しい絶対値を有し、それによって、D(midpoint)において、格子とDGD要素によって導入される総合微分群遅延DGD(total)がゼロにほぼ等しくなり、それによってDGD(total)が格子の動作範囲全体にわたって最小化される。
【0074】
さらに、改変された技法は次の、格子、DGD要素、およびそれらへの経路をリンクに結合するためのサーキュレータを使用すること、DGD要素用に偏波面維持ファイバのセグメントを使用すること、調整可能DGD要素を使用すること、およびDGD要素用に複屈折結晶を使用すること、のうちのいくつかまたはすべてを含むことができる。
【0075】
図7は、技法220を示す流れ図であり、以下を含む。
【0076】
ボックス221:光リンク内。
【0077】
ボックス222:第1および第2の調整可能チャープ・ファイバ・ブラッグ格子とそれらへのそれぞれの経路とが結合され、各格子が、リンクによって搬送されるデータ伝送での分散を補償するためにそれぞれの調整可能な量の分散D1およびD2を与え、
分散D1が、最小値D1(min)から、D1(min)よりもΔD1大きい最大値D1(max)にまで及ぶ動作範囲内で調整可能であり、分散D2が、最小値D2(min)から、D2(min)よりもΔD2大きい最大値D2(max)にまで及ぶ動作範囲内で調整可能であり、分散D1および分散D2が調整空間を画定し、
第1の格子が、D1の関数として変化する第1の微分群遅延DGD1をリンク中に導入し、第2の格子が、D2の関数として変化する第2の微分群遅延DGD2をリンク中に導入し、
第1の格子が、D1(min)とD1(max)間の中間の中間点分散D1(midpoint)に対応する第1の中間点微分群遅延DGD1(midpoint)をリンク内に導入し、第2の格子が、D2(min)とD2(max)間の中間の中間点分散D2(midpoint)に対応する第2の中間点微分群遅延DGD2(midpoint)をリンク内に導入する。
【0078】
ボックス223:第1の格子への経路中に、第1の相殺微分群遅延DGD1(bias)をリンク中に導入する第1のDGD要素が接続され、DGD1(bias)が、D1(midpoint)の絶対値とほぼ等しい絶対値を有し、第2の格子への経路中に、第2の相殺微分群遅延DGD2(bias)をリンク中に導入する第2のDGD要素が接続され、DGD2(bias)が、D2(midpoint)の絶対値とほぼ等しい絶対値を有する。
【0079】
ボックス224:それによって、D1(midpoint)において、第1の格子と第1のDGD要素とによって導入される総合微分群遅延DGD(total FBG1)がゼロにほぼ等しくなり、D2(midpoint)において、第2の格子と第2のDGD要素によって導入される総合微分群遅延DGD(total FBG2)がゼロにほぼ等しくなり、それによって、第1の格子と第2の格子の総合DGDが、分散D1およびD2によって画定された調整空間にわたって最小化される。
【0080】
前述のように、図7の技法220は次の、第1および第2の格子、DGD要素、およびそれらへのそれぞれの経路をリンクに結合するためのサーキュレータを使用すること、第1および第2のDGD要素用に偏波面維持ファイバの第1および第2のセグメントを使用すること、第1および第2のDGD要素用に第1および第2の複屈折結晶を使用すること、ならびに複屈折およびΔDの等しい各値を有する第1および第2の格子を使用すること、のうちのいくつかまたはすべてを含むことによって改変することができる。
【0081】
図8は、技法240を示す流れ図であり、以下を含む。
【0082】
ボックス241:光伝送リンク内。
【0083】
ボックス242:第1および第2の調整可能チャープ・ファイバ・ブラッグ格子とそれらへのそれぞれの経路とが結合され、各格子が、リンクによって搬送されるデータ伝送での分散を補償するためにそれぞれの調整可能な量の分散D1およびD2を与え、
分散D1が、最小値D1(min)から、D1(min)よりもΔD1大きい最大値D1(max)にまで及ぶ動作範囲内で調整可能であり、分散D2が、最小値D2(min)から、D2(min)よりもΔD2大きい最大値D2(max)にまで及ぶ動作範囲内で調整可能であり、分散D1および分散D2が調整空間を画定し、
第1および第2の格子が、D2(min)およびD1(min)から始まりD2(max)およびD1(max)で終わる調整軌跡に従って調整可能であり、第2の格子がD2(min)からD2(max)まで調整される前に、第1の格子がD1(min)からD1(max)まで調整され、
第1の格子が、D1の関数として変化する第1の微分群遅延DGD1をリンク中に導入し、第2の格子が、D2の関数として変化する第2の微分群遅延DGD2をリンク中に導入する。
【0084】
ボックス243:第1の格子への経路中に、第1の相殺微分群遅延DGD1(bias)をリンク中に導入する第1のDGD要素が接続され、DGD1(bias)が、(D1(min)+ΔD1/2)に等しい値とD1(max)に等しい値との間の調整された分散値において第1の格子によって示されるDGDとほぼ等しい絶対値を有する。
【0085】
ボックス244:第2の格子への経路中に、第2の相殺微分群遅延DGD2(bias)をリンク中に導入する第2のDGD要素が接続され、DGD2(bias)が、D2(min)に等しい値と(D2(min)+ΔD1/2)に等しい値との間の調整された分散値において第2の格子によって示されるDGDとほぼ等しい絶対値を有する。
【0086】
ボックス245:それによって、第1の格子と第2の格子の総合DGDが調整軌跡にわたって最小化される。
【0087】
前述のように、図8の技法240は次の、分散D(max)において第1の格子によって生成されるDGDとほぼ等しくなるようにDGD1(bias)を選択し、分散D(min)において第2の格子によって生成されるDGDとほぼ等しくなるようにDGD2(bias)を選択すること、第1および第2の格子、DGD要素、およびそれらへのそれぞれの経路をリンク中に結合するためのサーキュレータを使用すること、第1および第2のDGD要素用に偏波面維持ファイバの第1および第2のセグメントを使用すること、第1および第2のDGD要素用に第1および第2の複屈折結晶を使用すること、ならびに複屈折およびΔDの等しい各値を有する第1および第2の格子を使用すること、のうちの1つ以上を含むことによって改変することができる。
【0088】
以上の記述は、本発明を当業者が実施できるようにする詳細を含むが、その記述は本質的に例示的なものであること、またそれについての多くの改変および変形が、これらの教示の利益を得る当業者には明らかであることを理解されたい。したがって、本発明は、添付の特許請求の範囲によってのみ定義されるものであり、特許請求の範囲は、従来技術によって許される限り広く解釈されるものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光システム内で分散補償を提供する方法であって、
調整可能チャープ・ファイバ・ブラッグ格子が接続された少なくとも1つの経路を光システム内に結合することを含み、このような各格子はそれぞれの調整可能な量の分散を与えるものであり、さらに、
そのような各格子に対する前記それぞれの経路中に少なくとも1つのそれぞれのDGD要素を接続することを含み、所与の経路中のこのようなそれぞれのDGD要素すべてからなる組が、固定のバイアス微分群遅延DGD(bias)を導入し、
これにより、各経路に対する総合微分群遅延DGD(total)のそれぞれが、経路格子によって導入される微分群遅延DGD(FBG)と経路DGD(bias)との和に等しいものであり、
各経路格子の少なくとも1つの調整値に対し、GDG(FBG)とDGD(bias)は、反対の符号を有し、そして、互いに実質的に等しい非ゼロの絶対値を有し、
これにより、各経路に対し、経路格子調整値における総合微分群遅延GDG(total)
が実質的にゼロに等しくなる、方法。
【請求項2】
各格子が、最小値D(min)から、D(min)よりもΔD大きい最大値D(max)にまでのそれぞれの動作範囲内で調整可能であり、
各格子が、そのそれぞれの経路に、D(min)とD(max)間の中間の中間点分散D(midpoint)に対応する中間点微分群遅延DGD(midpoint)を導入し、そして、
前記格子のそれぞれのDGD要素の組によって前記格子のそれぞれの経路中に導入される前記バイアス微分群遅延DGD(bias)が、DGD(midpoint)の絶対値とほぼ等しい絶対値を有し、
それによって、D(midpoint)において、前記格子とそのそれぞれのDGD要素の組とによって導入される総合微分群遅延DGD(total)が実質的にゼロに等しくなる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
光システム内で調整可能な分散補償を提供する方法であって、
第1および第2の調整可能チャープ・ファイバ・ブラッグ格子それぞれが接続された第1および第2の経路を前記システム内に結合することを含み、各格子がそれぞれの調整可能な量の分散D1およびD2を与えるものであり、
前記分散D1が、最小値D1(min)から、D1(min)よりもΔD1大きい最大値D1(max)にまで及ぶ動作範囲内で調整可能であり、前記分散D2が、最小値D2(min)から、D2(min)よりもΔD2大きい最大値D2(max)にまで及ぶ動作範囲内で調整可能であり、前記分散D1および前記分散D2が調整空間を画定し、
前記第1の格子が、D1の関数として変化する第1の微分群遅延DGD1を前記システム内に導入し、前記第2の格子が、D2の関数として変化する第2の微分群遅延DGD2を前記システム内に導入し、そして、
前記第1の格子が、D1(min)とD1(max)間の中間の中間点分散D1(midpoint)に対応する第1の中間点微分群遅延DGD1(midpoint)を前記システム内に導入し、前記第2の格子が、D2(min)とD2(max)間の中間の中間点分散D2(midpoint)に対応する第2の中間点微分群遅延DGD2(midpoint)を前記システム内に導入するものであり、前記方法がさらに、
D1(midpoint)の絶対値とほぼ等しい絶対値を有する第1のバイアス微分群遅延DGD1(bias)を前記システム内に導入する、少なくとも1つのDGD要素を含む第1の組のDGD要素を前記第1の経路中に接続し、そして、および、D2(midpoint)の絶対値とほぼ等しい絶対値を有する第2のバイアス微分群遅延DGD2(bias)を前記システム内に導入する、少なくとも1つのDGD要素を含む第2の組のDGD要素を前記第2の経路中に接続することを含み、
それによって、D1(midpoint)において、前記第1の格子と前記第1の組のDGD要素とによって導入される総合微分群遅延DGD(total FBG1)がゼロにほぼ等しくなり、D2(midpoint)において、前記第2の格子と前記第2の組のDGD要素とによって導入される総合微分群遅延DGD(total FBG2)がゼロにほぼ等しくなり、そして、
それによって、前記第1の格子と第2の格子の総合DGDが、分散D1およびD2によって画定された調整空間にわたって最小化される、方法。
【請求項4】
光システム内で調整可能な分散補償を提供する方法であって、
第1および第2の調整可能チャープ・ファイバ・ブラッグ格子それぞれが接続された第1および第2の経路を前記システム内に結合することを含み、
それぞれの格子の各々が、それぞれ最小値D1(min)、D2(min)から最大値D1(max)、D2(max)まで延びるそれぞれの動作範囲ΔD1、ΔD2内で調整可能であり、
各格子が、そのそれぞれの経路に、D1(min)、D2(min)とD1(max)、D2(max)間の中間のそれぞれの中間点分散D1(midpoint)、D2(midpoint)に対応するそれぞれの中間点微分群遅延DGD1(midpoint)、DGD2(midpoint)を導入し、
前記格子のそれぞれのDGD要素の組によって前記格子のそれぞれの経路中に導入されるそれぞれのバイアス微分群遅延DGD1(bias)、DGD2(bias)が、DGD1(midpoint)、DGD1(midpoint)のそれぞれのものとほぼ等しい絶対値を有し、
それによって、D1(midpoint)、D2(midpoint)のそれぞれにおいて、前記格子とそのそれぞれのDGD要素の組によって導入されるそれぞれの総合微分群遅延DGD1(total)、DGD2(total)が実質的にゼロに等しくなり、
前記分散D1および分散D2が調整空間を画定し、
前記第1および前記第2の格子が、D2(min)およびD1(min)から始まりD2(max)およびD1(max)で終わる調整軌跡に従って調整可能であり、前記第2の格子がD2(min)からD2(max)まで調整される前に、前記第1の格子がD1(min)からD1(max)まで調整され、
DGD1(bias)は、(D1(min)+ΔD1/2)に等しい値とD1(max)に等しい値との間の調整された分散値において、前記第1の格子によって示される前記DGDとほぼ等しい絶対値を有し、
DGD2(bias)は、D2(min)に等しい値と(D2(min)+ΔD1/2)に等しい値との間の調整された分散値において、前記第2の格子によって示される前記DGDとほぼ等しい絶対値を有し、
それによって、前記第1の格子と第2の格子の前記総合DGDが前記調整軌跡にわたって最小化される、方法。
【請求項5】
DGD1(bias)が、分散D1(max)において前記第1の格子によって生成されるDGD1にほぼ等しく、DGD2(bias)が、分散D2(min)において前記第2の格子によって生成されるDGD2にほぼ等しい、請求項に記載の方法。
【請求項6】
調整可能な分散補償器であって、
少なくとも1つの調整可能チャープ・ファイバ・ブラッグ格子と、光システム内に結合されたそこへの経路とを含み、前記格子が、前記システムによって搬送される伝送での分散を補償するための調整可能な量の分散Dを与え、そして前記格子が、Dの関数として変化する微分群遅延DGD(FBG)を前記システム内に導入するものであり、さらに、
前記格子への前記経路中に結合されたDGD要素を含み、前記DGD要素が、固定の相殺微分群遅延DGD(bias)を前記システム内に導入し、それによって、前記格子と前記微分群遅延素子とによって導入される総合微分群遅延DGD(total)がDGD(FBR)とDGD(bias)との和に等しく、
前記格子の少なくとも1つの調整値に対し、DGD(bias)とDGD(FBG)が反対の符号を有し、そして、互いに実質的に等しい非ゼロの絶対値を有し、
それによって、前記調整値において、総合微分群遅延DGD(total)がゼロにほぼ等しくなる、調整可能な分散補償器。
【請求項7】
第1および第2の調整可能チャープ・ファイバ・ブラッグ格子と、前記システム内に結合されたそこへのそれぞれの経路とをさらに含み、各格子がそれぞれの調整可能な量の分散D1およびD2を与えるものであり、
前記分散D1が、最小値D1(min)から、D1(min)よりもΔD1大きい最大値D1(max)にまで及ぶ動作範囲内で調整可能であり、前記分散D2が、最小値D2(min)から、D2(min)よりもΔD2大きい最大値D2(max)にまで及ぶ動作範囲内で調整可能であり、分散D1および分散D2が調整空間を画定し、そして、
前記第1の格子が、D1の関数として変化する第1の微分群遅延DGD1を前記システム内に導入し、前記第2の格子が、D2の関数として変化する第2の微分群遅延DGD2を前記システム内に導入するものであり、さらに、
(D1(min)+ΔD1/2)に等しい値とD1(max)に等しい値との間の調整された分散値において、前記第1の格子によって示される前記DGDとほぼ等しい絶対値を有する第1の相殺微分群遅延DGD1(bias)を前記システム内に導入する、前記第1の格子への前記経路中に接続された第1のDGD要素と、
D2(min)に等しい値と(D2(min)+ΔD1/2)に等しい値との間の調整された分散値において、前記第2の格子によって示される前記DGDとほぼ等しい絶対値を有する第2の相殺微分群遅延DGD2(bias)を前記システム内に導入する、前記第2の格子への前記経路中に接続された第2のDGD要素とを含み、
それによって、前記第1の格子と第2の格子の前記総合DGDが調整軌跡にわたって最小化される、請求項6に記載の調整可能な分散補償器。
【請求項8】
前記DGD1(bias)が、分散D1(max)において前記第1の格子によって生成されたDGD1に等しく、前記DGD2(bias)が、分散D2(min)において前記第2の格子によって生成されたDGD2に等しい、請求項7に記載の調整可能な分散補償器。
【請求項9】
調整可能な分散補償器であって、
少なくとも1つの調整可能チャープ・ファイバ・ブラッグ格子と、光システム内に結合されたそこへの経路とを備え、前記格子がそれぞれの調整可能な量の分散を与えるものであり、さらに、
前記格子への前記経路中に結合された少なくとも1つのDGD要素を備え、前記経路中のそのようなDGD要素すべてからなる組が、その格子の最少電力調整設定用に前記要素と前記格子の総DGDになる値を有するバイアス微分群遅延DGD(bias)を導入し、この値が、調整範囲全体にわたって総DGDがとる最大値の半分未満である、調整可能な分散補償器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−65045(P2013−65045A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−282016(P2012−282016)
【出願日】平成24年12月26日(2012.12.26)
【分割の表示】特願2009−7140(P2009−7140)の分割
【原出願日】平成21年1月16日(2009.1.16)
【出願人】(302003314)フルカワ エレクトリック ノース アメリカ インコーポレーテッド (75)
【Fターム(参考)】